JP2004079243A - 導電性被膜の作製方法及び導電性被膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜を提供する。
【解決手段】基材上に金属成分と有機成分からなる粒子を主成分とする金属コロイド液を塗布、乾燥して形成された、金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結する導電性被膜の作製方法。
【選択図】 なし
【解決手段】基材上に金属成分と有機成分からなる粒子を主成分とする金属コロイド液を塗布、乾燥して形成された、金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結する導電性被膜の作製方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
回路基板上に電極等を作製する方法としては、従来からフォトリソグラフィー法が広く用いられている。フォトリソグラフィー法では、基材の全面に形成された導電性被膜上にレジストを塗布し、マスクフィルムにより必要部分をマスクして露光した後、不要な導電性被膜部分をエッチングで除去することにより回路パターンを形成している。
【0003】
基材上に導電性被膜を作製する方法としては、例えば、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリング等が行われている。しかし、これらの方法は真空系又は密閉系での作業を必要とするため、操作が煩雑であったり、装置が大がかりになったりするためスペースを必要とし、投資に費用がかかるうえ、量産性に乏しい等の問題があった。
また、この他にも、メッキによって導電性被膜を作製する方法もあるが、この方法も材料ロスが大きく余分なコストがかかるうえ、大量の廃液を排出することから環境に対する負荷が大きいという問題があった。
更に、フォトリソグラフィー法自体も、レジストや除去された導電性被膜、それらを溶解させた廃液が大量に排出されるため、処理費用がかさみ、環境負荷が大きいという問題があった。
【0004】
これに対して、近年、導電性被膜を形成する液状材料からなるコーティング液をディスペンサーやスクリーン印刷で塗布することにより、導電性被膜による回路パターンを基材上に直接描画するコーティング法が提案されている。この方法では、特別な環境を設ける必要もなく簡単な設備で生産できるため、広いスペースを占有する必要もなく、投資も少なくて済む。また、材料ロスや廃液もほとんどないことから、コスト面でも有利であり、環境負荷も小さくできる。
【0005】
コーティング法では、コーティング液として、例えば、銀や他の金属粒子を樹脂成分や有機溶媒で練り混んだ金属ペースト、導電性インクを用いる。また、最近では粘度の低いコロイド状の金属分散液をコーティング液とすることも検討されている。しかしながら、従来の方法では、コーティング液を塗布し乾燥して塗膜を形成後、高導電率の導電性被膜を作製するためには、200℃以上の加熱処理を施す必要があった。樹脂をはじめとする高分子材料をこのような高温にさらすと、変形や溶融、劣化等の損傷を受けてしまうことから、基材としてはこの温度に耐えるものを選択せねばならず、回路基板の設計上の大きな制約条件となっているという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結する導電性被膜の作製方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の導電性被膜の作製方法では、基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜に通電することにより焼結して導電性被膜を得る。
上記通電の方法としては特に限定されず、塗膜に電気的刺激を加える方法であれば公知の方法を用いることができ、例えば、図1に示したように塗膜の両端に電源端子を接続し通電する方法等を挙げることができる。また、通電する電流としては特に限定されず、例えば、直流、交流、誘導電流、パルス通電等を挙げることができる。通電する時間としては特に限定されず、通常は数秒〜数十秒でよく、通電による昇温も100℃以下に抑えられる。
【0009】
上記基材としては特に限定されず、例えば、耐熱性の高い金属、ガラス、セラミックの他、高温により変形や分解の恐れのある高分子材料、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂等も用いることができる。
本発明においては、焼結に際して高温をかけることがないことから、耐熱性の高いものばかりでなく、耐熱性に劣る高分子材料であっても基材として用いることができる。
【0010】
上記基材には、導電性被膜との密着性を高めるために表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理等のドライ法による処理等を挙げることができるほか、予めプライマー層やコーティング剤受容層を設けてもよい。
また、上記基材の形状としては特に限定されず、例えば、板状、フィルム状を挙げることができる。
【0011】
上記基材上に金属微粒子を含有する塗膜を形成する方法としては特に限定されず、例えば、金属微粒子を含有するコーティング剤を基材上に塗布した後、乾燥させることによって形成する方法等が挙げられる。
上記コーティング剤としては、金属微粒子を媒質に分散させたものを用いることができ、その組成、固形分量、粘度等は特に限定されないが、金属成分と有機成分とからなる粒子(以下、金属コロイド粒子ともいう)を主成分とする固形分と溶媒とからなる金属コロイド液が好適に用いられる。このような金属コロイド液をコーティング剤として用いれば、粘度が低く、金属コロイド粒子の分散性が高いので極めて取り扱いが容易である。
【0012】
上記金属微粒子としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムからなるもの等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、銀とその他の金属とを併用することが好ましい。銀を用いることにより、その金属コロイド液を用いて形成される被膜の導電率が良好となるが、電子材料として銀のみを用いると、マイグレーションが起こることがある。銀とその他の金属とを併用することにより、マイグレーションが起こりにくくなる。上記その他の金属としては、例えば、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等を挙げることができる。なかでも、銅、白金、パラジウムが好ましい。
【0013】
上記金属微粒子として銀とその他の金属とを併用する場合、銀とその他の金属との比率は、銀とその他の金属との重量比において99:1〜30:70であることが好ましい。銀の比率が99重量%を超えると、マイグレーションを解決することが困難となり、銀の比率が30重量%未満であると、得られる金属コロイド液の導電性が低下することがある。より好ましくは95:5〜40:60であり、90:10〜60:40であるのが特に好ましい。
【0014】
コーティング剤として上記金属コロイド液を用いる場合、上記金属コロイド粒子の有機成分としては特に限定されず、例えば、分散剤として用いられる有機化合物を挙げることができる。上記分散剤としては、適当な溶媒に溶解し、分散効果を示すものであれば特に限定されず、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、りんご酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等のイオン性化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等の界面活性剤;セラチン、アラビアゴム、アルブミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルセルロース類、アルカンチオール類等の高分子等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記金属コロイド粒子中の有機成分量は0.5〜30重量%であることが好ましい。0.5重量%未満であると、金属コロイド液の貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、30重量%を超えると、その金属コロイド液を用いた導電性被膜の導電率が悪くなる傾向がある。より好ましくは1〜20重量%である。
なお、本発明において、上記金属コロイド粒子の「有機成分」とは、金属成分とともに実質的に粒子を構成する有機化合物のことであり、金属中に最初から不純物として含まれる微量有機化合物、後述する製造過程で混入した微量の有機化合物が金属成分に付着したもの、洗浄過経で除去しきれなかった残留還元剤、残留分散剤等の有機化合物が微量、金属成分に付着したもの等は含まれない。また、上記「微量」とは、具体的には、金属コロイド粒子中1重量%未満を意味する。
【0016】
上記金属コロイド粒子の形態としては特に限定されず、例えば、金属成分からなる粒子の表面に有機成分が付着しているもの、金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されているもの、金属成分と有機成分とが均一に混合されているもの等を挙げることができる。なかでも、上記金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されているもの、金属成分と有機成分とが均一に混合されているものが好ましい。
【0017】
上記溶媒としては特に限定されず、無機物、有機物、溶剤、水等を目的に応じて用いればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、テトラヒドロキシフラン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記溶媒として水又は水溶性溶剤を用いる場合には、得られる金属コロイド液の乾燥時に溶剤臭が強くなく、環境に対する悪影響が少ない。
【0018】
上記金属コロイド液における固形分の濃度は1〜70重量%であることが好ましい。なお、上記固形分の濃度は、金属コロイド液から大部分の水をシリカゲル等により取り除いた後、70℃以下の温度で乾燥させたときの残留分から算出されるものであり、通常、この残留分は、金属コロイド粒子、残留分散剤及び残留還元剤等からなる。
上記固形分の濃度が1重量%未満であると、金属の含有量が少なすぎるので、導電性被膜を形成する際、必要な厚みを出すために何度も重ね塗りする必要が生じ、70重量%を超えると、粘性が上昇し取扱いにくくなるので、いずれも工業的に好ましくない。より好ましくは3〜50重量%である。
【0019】
上記固形分の熱重量分析による室温〜500℃までの加熱減量は1〜25重量%であることが好ましい。上記固形分を500℃まで加熱すると、上記有機成分、残留分散剤、残留還元剤等が酸化分解され、大部分のものはガス化されて消失する。残留分散剤や残留還元剤の量は、僅かであると考えられるので、500℃までの加熱による減量は、ほぼ金属コロイド粒子中の有機成分の量に相当すると考えてよい。
上記固形分の熱重量分析による室温〜500℃までの加熱減量が1〜25重量%であると、その金属コロイド液は分散安定性に優れており、また、有機成分等の導電性を悪化させる原因となる成分の量も適切であるので、導電性に優れた導電性被膜を形成することができる。上記加熱減量が、1重量%未満であると、金属成分に対する有機成分の量が少ないので金属コロイド粒子の分散性が不充分であることがあり、25重量%を超えると、金属成分に対する有機成分の量が多すぎるので、得られる導電性被膜の導電性がかなり悪くなることがある。有機成分の量が多すぎる場合、成膜後に加熱焼成して有機成分を分解消失させることで導電性をある程度改善することができるが、導電性被膜にひび割れ等が起こり易くなるので好ましくない。より好ましくは1〜10重量%である。
【0020】
上記金属コロイド粒子の平均粒子径は1〜400nmであることが好ましい。1nm未満であっても、良好なコーティング液として用いることはできるが、一般的にそのような微粒子の製造はコスト高で実用的でない。一方、400nmを超えると、金属コロイド粒子の分散安定性が経時的に変化しやすい。より好ましくは1〜70nmである。
【0021】
上記金属コロイド液は、必要に応じて、更に消泡剤、レベリング剤、増粘剤、揮発抑制剤、界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
【0022】
上記金属コロイド液を製造する方法としては、例えば、まず上記金属コロイド粒子を含む溶液を作製し、次いで、その溶液を洗浄する方法等を挙げることができる。上記金属コロイド粒子を含む溶液を作製する方法としては、化学還元法による方法であれば特に限定されず、例えば、上記分散剤を用いて溶液中に分散させた金属塩(金属イオン)を、何らかの方法により還元させればよい。
【0023】
上記金属塩としては、適当な溶媒中に溶解でき、何らかの手段で還元できるものであれば特に限定されず、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩;その他の白金属塩等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記金属塩を還元させる方法としては特に限定されず、還元剤を用いて還元させてもよく、UV等の光、電子線、熱エネルギーを用いて還元させてもよい。上記還元剤としては、適当な溶媒に溶解し、上記の金属塩を還元させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;水酸化ホウ素ナトリウム、ヨウ化水素、水素ガス等の水素化合物;一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;硫酸第一鉄、塩化鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸錫、塩化錫、ニリン酸錫、シュク酸錫、酸化錫、硫酸錫等の低原子価金属塩;ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の糖等の有機化合物等を挙げることができる。これらの化合物を使用する際には、光や熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
【0025】
上記金属塩、分散剤及び還元剤を用いて金属コロイド粒子を含む溶液を製造する方法としては、例えば、上記金属塩を純水等に溶かして金属塩溶液を調製し、その金属塩溶液を徐々に分散剤と還元剤とが溶解した水溶液中に滴下する方法等を挙げることができる。
【0026】
上記のようにして得られる金属コロイド粒子を含む溶液中には、金属コロイド粒子の他に、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体の電解質濃度が高くなっている。このような状態の液は、電導度が高いので、金属コロイド粒子の凝析が起こり、沈殿しやすい。上記金属コロイド粒子を含む溶液を洗浄して余分な電解質を取り除くことにより、電導度が10mS/cm以下の金属コロイド液を得ることができる。
【0027】
上記洗浄の方法としては、例えば、得られた金属コロイド粒子を含む液を一定期間静置して、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、更に一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等を挙げることができる。なかでも、脱塩する方法が好ましい。また、脱塩等により電導度を10mS/cm以下とした液は、適宜濃縮してもよい。
【0028】
複数の金属からなる混合コロイド液を作製する方法としては特に限定されず、例えば、銀とその他の金属との混合コロイド液を作製する場合には、上記の方法で、銀コロイド液とその他の金属のコロイド液とを別々に作製し、その後混合して混合コロイド液としてもよく、銀イオン溶液とその他の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよい。
【0029】
上記金属コロイド液は、電導度が10mS/cm以下であることが好ましい。従来の金属コロイド液は、存在する電解質成分の濃度に敏感に反応して金属粒子が凝集沈降し、貯蔵安定性が損なわれることがあったが、電導度が10mS/cm以下であると、この影響を充分に排除することができ、ガラス容器中の保管によるアルカリ分の流出や、空気中の炭酸ガスの溶解による経時的な電解質濃度の上昇による貯蔵安定性の悪化を防止することができる。更に、金属コロイド液の電導度が10mS/cm以下であると、金属コロイド液の分散安定性が高いので、固形分濃度が高い金属コロイド液の作製が容易となり、容積を減らすことができ、流通や運搬時の取り扱いが容易である。高濃度の金属コロイド液は、後で適当な溶媒を用いて、使用に最適な濃度に調整することができる。
【0030】
上記基材上に上記コーティング剤を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ディップイング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、刷毛による方法等を挙げることができる。
このようにして塗布した後、乾燥させることにより金属微粒子を含有する被膜が基材上に形成される。
上記乾燥の方法としては特に限定されず、例えば、風乾や加熱等を挙げることができる。加熱により乾燥を行う場合には、加熱する温度は40〜80℃の比較的低温であることが、焼結後に得られる導電性被膜の割れが生じにくいことから好ましい。
【0031】
本発明の導電性被膜の作製方法では、このようにして得られた金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結することにより導電性被膜を作製する。
本発明の導電性被膜の作製方法により得られる導電性被膜もまた、本発明の1つである。
【0032】
本発明の導電性被膜の作製方法により得られる導電性被膜の導電率は、1×103S/cm以上であることが好ましい。1×103S/cm未満であると、導電性が要求される用途、即ち、回路基板上に形成する電極等に用いることが困難となる。より好ましくは1×104S/cm以上である。
【0033】
本発明の導電性被膜の製造方法によれば、基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜を加熱することなく焼結して導電性被膜が得られることから、耐熱性に劣る高分子材料であっても基材として用いることができ、材料選択の幅が飛躍的に向上する。
本発明により得られる導電性被膜の用途としては特に限定されないが、例えば、ブラウン管の電磁波遮蔽用、建材又は自動車の赤外線遮蔽用、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止剤用、曇ガラスの熱線用、回路基板やICカードの配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング用、スルーホール又は回路自体用等の被膜を挙げることができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1〜3)
(1)コーティング剤の調製
グリシン1.75g、タンニン酸0.23gを水300mLに溶解した後、10N水酸化ナトリウム水溶液を3mL添加してアルカリ性に調整した。この溶液に3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌して銀コロイド水溶液を得た。
得られた銀コロイド水溶液を、導電率が100μm/cm以下になるまで透析して脱塩を行った。透析終了後、3000rpm、10分間遠心分離を行うことにより凝集物を除去した。更に、揮発の抑制と増粘の目的で、グリセリンを水100重量部に対して20重量部の割合で添加した。これをコーティング剤とした。
【0036】
(2)塗膜の形成
得られたコーティング剤をシリンジに入れ、コーティング剤を押し出しながら低速で移動させることにより、表1に示した各基材上に描画した。60℃、120分間乾燥させて線状塗膜を形成させた。
【0037】
(3)導電性被膜の形成
図1に示したように、得られた線状塗膜の両端間に0.25Aの直流電流を1秒間流すことにより焼結させて、導電性被膜を得た。なお、電源としてはH10K1 7005 PROGRAMABLE DC STANDARDを用いた。得られた導電性被膜について線幅及び膜厚を測定した。
【0038】
(比較例1〜2)
ギアオーブン中で200℃1時間加熱することにより焼結した以外は、実施例2〜3と同様の方法により導電性被膜を得た。得られた導電性被膜について線幅及び膜厚を測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
<評価>
実施例1〜3及び比較例1〜2で作製した導電性被膜について、以下の方法により体積抵抗値、導電率、基材及び導電性被膜の損傷を評価した。
結果を表2に示した。
【0041】
(体積抵抗値の測定)
各導電性被膜について表2に示した抵抗測定端子間距離で抵抗値を測定し、導電性被膜の厚さから体積抵抗値を算出した。
【0042】
(導電率の測定)
横川M&C者製の携帯型ホイートストンブリッジTYPE L−3Cを用いて測定を行った。
【0043】
(基材及び導電性被膜の損傷の評価)
目視により、基材及び導電性被膜の損傷の有無を評価した。
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材上に形成された塗膜に通電する方法の1実施態様を示す模式図である。
【符号の説明】
1 塗膜
2 基材
3 電源
4 電圧計
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜に関する。
【0002】
【従来の技術】
回路基板上に電極等を作製する方法としては、従来からフォトリソグラフィー法が広く用いられている。フォトリソグラフィー法では、基材の全面に形成された導電性被膜上にレジストを塗布し、マスクフィルムにより必要部分をマスクして露光した後、不要な導電性被膜部分をエッチングで除去することにより回路パターンを形成している。
【0003】
基材上に導電性被膜を作製する方法としては、例えば、金属の真空蒸着、化学蒸着、イオンスパッタリング等が行われている。しかし、これらの方法は真空系又は密閉系での作業を必要とするため、操作が煩雑であったり、装置が大がかりになったりするためスペースを必要とし、投資に費用がかかるうえ、量産性に乏しい等の問題があった。
また、この他にも、メッキによって導電性被膜を作製する方法もあるが、この方法も材料ロスが大きく余分なコストがかかるうえ、大量の廃液を排出することから環境に対する負荷が大きいという問題があった。
更に、フォトリソグラフィー法自体も、レジストや除去された導電性被膜、それらを溶解させた廃液が大量に排出されるため、処理費用がかさみ、環境負荷が大きいという問題があった。
【0004】
これに対して、近年、導電性被膜を形成する液状材料からなるコーティング液をディスペンサーやスクリーン印刷で塗布することにより、導電性被膜による回路パターンを基材上に直接描画するコーティング法が提案されている。この方法では、特別な環境を設ける必要もなく簡単な設備で生産できるため、広いスペースを占有する必要もなく、投資も少なくて済む。また、材料ロスや廃液もほとんどないことから、コスト面でも有利であり、環境負荷も小さくできる。
【0005】
コーティング法では、コーティング液として、例えば、銀や他の金属粒子を樹脂成分や有機溶媒で練り混んだ金属ペースト、導電性インクを用いる。また、最近では粘度の低いコロイド状の金属分散液をコーティング液とすることも検討されている。しかしながら、従来の方法では、コーティング液を塗布し乾燥して塗膜を形成後、高導電率の導電性被膜を作製するためには、200℃以上の加熱処理を施す必要があった。樹脂をはじめとする高分子材料をこのような高温にさらすと、変形や溶融、劣化等の損傷を受けてしまうことから、基材としてはこの温度に耐えるものを選択せねばならず、回路基板の設計上の大きな制約条件となっているという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結する導電性被膜の作製方法である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の導電性被膜の作製方法では、基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜に通電することにより焼結して導電性被膜を得る。
上記通電の方法としては特に限定されず、塗膜に電気的刺激を加える方法であれば公知の方法を用いることができ、例えば、図1に示したように塗膜の両端に電源端子を接続し通電する方法等を挙げることができる。また、通電する電流としては特に限定されず、例えば、直流、交流、誘導電流、パルス通電等を挙げることができる。通電する時間としては特に限定されず、通常は数秒〜数十秒でよく、通電による昇温も100℃以下に抑えられる。
【0009】
上記基材としては特に限定されず、例えば、耐熱性の高い金属、ガラス、セラミックの他、高温により変形や分解の恐れのある高分子材料、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂等も用いることができる。
本発明においては、焼結に際して高温をかけることがないことから、耐熱性の高いものばかりでなく、耐熱性に劣る高分子材料であっても基材として用いることができる。
【0010】
上記基材には、導電性被膜との密着性を高めるために表面処理が施されていてもよい。上記表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理、電子線処理等のドライ法による処理等を挙げることができるほか、予めプライマー層やコーティング剤受容層を設けてもよい。
また、上記基材の形状としては特に限定されず、例えば、板状、フィルム状を挙げることができる。
【0011】
上記基材上に金属微粒子を含有する塗膜を形成する方法としては特に限定されず、例えば、金属微粒子を含有するコーティング剤を基材上に塗布した後、乾燥させることによって形成する方法等が挙げられる。
上記コーティング剤としては、金属微粒子を媒質に分散させたものを用いることができ、その組成、固形分量、粘度等は特に限定されないが、金属成分と有機成分とからなる粒子(以下、金属コロイド粒子ともいう)を主成分とする固形分と溶媒とからなる金属コロイド液が好適に用いられる。このような金属コロイド液をコーティング剤として用いれば、粘度が低く、金属コロイド粒子の分散性が高いので極めて取り扱いが容易である。
【0012】
上記金属微粒子としては特に限定されず、例えば、金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムからなるもの等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、銀とその他の金属とを併用することが好ましい。銀を用いることにより、その金属コロイド液を用いて形成される被膜の導電率が良好となるが、電子材料として銀のみを用いると、マイグレーションが起こることがある。銀とその他の金属とを併用することにより、マイグレーションが起こりにくくなる。上記その他の金属としては、例えば、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム等を挙げることができる。なかでも、銅、白金、パラジウムが好ましい。
【0013】
上記金属微粒子として銀とその他の金属とを併用する場合、銀とその他の金属との比率は、銀とその他の金属との重量比において99:1〜30:70であることが好ましい。銀の比率が99重量%を超えると、マイグレーションを解決することが困難となり、銀の比率が30重量%未満であると、得られる金属コロイド液の導電性が低下することがある。より好ましくは95:5〜40:60であり、90:10〜60:40であるのが特に好ましい。
【0014】
コーティング剤として上記金属コロイド液を用いる場合、上記金属コロイド粒子の有機成分としては特に限定されず、例えば、分散剤として用いられる有機化合物を挙げることができる。上記分散剤としては、適当な溶媒に溶解し、分散効果を示すものであれば特に限定されず、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三リチウム、りんご酸二ナトリウム、酒石酸二ナトリウム、グリコール酸ナトリウム等のイオン性化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等の界面活性剤;セラチン、アラビアゴム、アルブミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルセルロース類、アルカンチオール類等の高分子等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記金属コロイド粒子中の有機成分量は0.5〜30重量%であることが好ましい。0.5重量%未満であると、金属コロイド液の貯蔵安定性が悪くなる傾向があり、30重量%を超えると、その金属コロイド液を用いた導電性被膜の導電率が悪くなる傾向がある。より好ましくは1〜20重量%である。
なお、本発明において、上記金属コロイド粒子の「有機成分」とは、金属成分とともに実質的に粒子を構成する有機化合物のことであり、金属中に最初から不純物として含まれる微量有機化合物、後述する製造過程で混入した微量の有機化合物が金属成分に付着したもの、洗浄過経で除去しきれなかった残留還元剤、残留分散剤等の有機化合物が微量、金属成分に付着したもの等は含まれない。また、上記「微量」とは、具体的には、金属コロイド粒子中1重量%未満を意味する。
【0016】
上記金属コロイド粒子の形態としては特に限定されず、例えば、金属成分からなる粒子の表面に有機成分が付着しているもの、金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されているもの、金属成分と有機成分とが均一に混合されているもの等を挙げることができる。なかでも、上記金属成分からなる粒子をコアとして、その表面が有機成分で被覆されているもの、金属成分と有機成分とが均一に混合されているものが好ましい。
【0017】
上記溶媒としては特に限定されず、無機物、有機物、溶剤、水等を目的に応じて用いればよく、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、グリセリン、トルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルエチルケトン、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、テトラヒドロキシフラン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、上記溶媒として水又は水溶性溶剤を用いる場合には、得られる金属コロイド液の乾燥時に溶剤臭が強くなく、環境に対する悪影響が少ない。
【0018】
上記金属コロイド液における固形分の濃度は1〜70重量%であることが好ましい。なお、上記固形分の濃度は、金属コロイド液から大部分の水をシリカゲル等により取り除いた後、70℃以下の温度で乾燥させたときの残留分から算出されるものであり、通常、この残留分は、金属コロイド粒子、残留分散剤及び残留還元剤等からなる。
上記固形分の濃度が1重量%未満であると、金属の含有量が少なすぎるので、導電性被膜を形成する際、必要な厚みを出すために何度も重ね塗りする必要が生じ、70重量%を超えると、粘性が上昇し取扱いにくくなるので、いずれも工業的に好ましくない。より好ましくは3〜50重量%である。
【0019】
上記固形分の熱重量分析による室温〜500℃までの加熱減量は1〜25重量%であることが好ましい。上記固形分を500℃まで加熱すると、上記有機成分、残留分散剤、残留還元剤等が酸化分解され、大部分のものはガス化されて消失する。残留分散剤や残留還元剤の量は、僅かであると考えられるので、500℃までの加熱による減量は、ほぼ金属コロイド粒子中の有機成分の量に相当すると考えてよい。
上記固形分の熱重量分析による室温〜500℃までの加熱減量が1〜25重量%であると、その金属コロイド液は分散安定性に優れており、また、有機成分等の導電性を悪化させる原因となる成分の量も適切であるので、導電性に優れた導電性被膜を形成することができる。上記加熱減量が、1重量%未満であると、金属成分に対する有機成分の量が少ないので金属コロイド粒子の分散性が不充分であることがあり、25重量%を超えると、金属成分に対する有機成分の量が多すぎるので、得られる導電性被膜の導電性がかなり悪くなることがある。有機成分の量が多すぎる場合、成膜後に加熱焼成して有機成分を分解消失させることで導電性をある程度改善することができるが、導電性被膜にひび割れ等が起こり易くなるので好ましくない。より好ましくは1〜10重量%である。
【0020】
上記金属コロイド粒子の平均粒子径は1〜400nmであることが好ましい。1nm未満であっても、良好なコーティング液として用いることはできるが、一般的にそのような微粒子の製造はコスト高で実用的でない。一方、400nmを超えると、金属コロイド粒子の分散安定性が経時的に変化しやすい。より好ましくは1〜70nmである。
【0021】
上記金属コロイド液は、必要に応じて、更に消泡剤、レベリング剤、増粘剤、揮発抑制剤、界面活性剤等の添加剤を含有してもよい。
【0022】
上記金属コロイド液を製造する方法としては、例えば、まず上記金属コロイド粒子を含む溶液を作製し、次いで、その溶液を洗浄する方法等を挙げることができる。上記金属コロイド粒子を含む溶液を作製する方法としては、化学還元法による方法であれば特に限定されず、例えば、上記分散剤を用いて溶液中に分散させた金属塩(金属イオン)を、何らかの方法により還元させればよい。
【0023】
上記金属塩としては、適当な溶媒中に溶解でき、何らかの手段で還元できるものであれば特に限定されず、例えば、硝酸銀、硫酸銀、塩化銀、酸化銀、酢酸銀、亜硝酸銀、塩素酸銀、硫化銀等の銀塩;塩化金酸、塩化金カリウム、塩化金ナトリウム等の金塩;塩化白金酸、塩化白金、酸化白金、塩化白金酸カリウム等の白金塩;硝酸パラジウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、酸化パラジウム、硫酸パラジウム等のパラジウム塩;その他の白金属塩等を挙げることができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0024】
上記金属塩を還元させる方法としては特に限定されず、還元剤を用いて還元させてもよく、UV等の光、電子線、熱エネルギーを用いて還元させてもよい。上記還元剤としては、適当な溶媒に溶解し、上記の金属塩を還元させることができるものであれば特に限定されず、例えば、ジメチルアミノエタノール、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、フェニドン、ヒドラジン等のアミン化合物;水酸化ホウ素ナトリウム、ヨウ化水素、水素ガス等の水素化合物;一酸化炭素、亜硫酸等の酸化物;硫酸第一鉄、塩化鉄、フマル酸鉄、乳酸鉄、シュウ酸鉄、硫化鉄、酢酸錫、塩化錫、ニリン酸錫、シュク酸錫、酸化錫、硫酸錫等の低原子価金属塩;ホルムアルデヒド、ハイドロキノン、ピロガロール、タンニン、タンニン酸、サリチル酸、D−グルコース等の糖等の有機化合物等を挙げることができる。これらの化合物を使用する際には、光や熱を加えて還元反応を促進させてもよい。
【0025】
上記金属塩、分散剤及び還元剤を用いて金属コロイド粒子を含む溶液を製造する方法としては、例えば、上記金属塩を純水等に溶かして金属塩溶液を調製し、その金属塩溶液を徐々に分散剤と還元剤とが溶解した水溶液中に滴下する方法等を挙げることができる。
【0026】
上記のようにして得られる金属コロイド粒子を含む溶液中には、金属コロイド粒子の他に、還元剤の残留物や分散剤が存在しており、液全体の電解質濃度が高くなっている。このような状態の液は、電導度が高いので、金属コロイド粒子の凝析が起こり、沈殿しやすい。上記金属コロイド粒子を含む溶液を洗浄して余分な電解質を取り除くことにより、電導度が10mS/cm以下の金属コロイド液を得ることができる。
【0027】
上記洗浄の方法としては、例えば、得られた金属コロイド粒子を含む液を一定期間静置して、生じた上澄み液を取り除いた上で、純水を加えて再度攪拌し、更に一定期間静置して生じた上澄み液を取り除く工程を幾度か繰り返す方法、上記の静置の代わりに遠心分離を行う方法、限外濾過装置やイオン交換装置等により脱塩する方法等を挙げることができる。なかでも、脱塩する方法が好ましい。また、脱塩等により電導度を10mS/cm以下とした液は、適宜濃縮してもよい。
【0028】
複数の金属からなる混合コロイド液を作製する方法としては特に限定されず、例えば、銀とその他の金属との混合コロイド液を作製する場合には、上記の方法で、銀コロイド液とその他の金属のコロイド液とを別々に作製し、その後混合して混合コロイド液としてもよく、銀イオン溶液とその他の金属イオン溶液とを混合し、その後に還元してもよい。
【0029】
上記金属コロイド液は、電導度が10mS/cm以下であることが好ましい。従来の金属コロイド液は、存在する電解質成分の濃度に敏感に反応して金属粒子が凝集沈降し、貯蔵安定性が損なわれることがあったが、電導度が10mS/cm以下であると、この影響を充分に排除することができ、ガラス容器中の保管によるアルカリ分の流出や、空気中の炭酸ガスの溶解による経時的な電解質濃度の上昇による貯蔵安定性の悪化を防止することができる。更に、金属コロイド液の電導度が10mS/cm以下であると、金属コロイド液の分散安定性が高いので、固形分濃度が高い金属コロイド液の作製が容易となり、容積を減らすことができ、流通や運搬時の取り扱いが容易である。高濃度の金属コロイド液は、後で適当な溶媒を用いて、使用に最適な濃度に調整することができる。
【0030】
上記基材上に上記コーティング剤を塗布する方法としては特に限定されず、例えば、ディップイング、スクリーン印刷、スプレー方式、バーコート法、スピンコート法、刷毛による方法等を挙げることができる。
このようにして塗布した後、乾燥させることにより金属微粒子を含有する被膜が基材上に形成される。
上記乾燥の方法としては特に限定されず、例えば、風乾や加熱等を挙げることができる。加熱により乾燥を行う場合には、加熱する温度は40〜80℃の比較的低温であることが、焼結後に得られる導電性被膜の割れが生じにくいことから好ましい。
【0031】
本発明の導電性被膜の作製方法では、このようにして得られた金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結することにより導電性被膜を作製する。
本発明の導電性被膜の作製方法により得られる導電性被膜もまた、本発明の1つである。
【0032】
本発明の導電性被膜の作製方法により得られる導電性被膜の導電率は、1×103S/cm以上であることが好ましい。1×103S/cm未満であると、導電性が要求される用途、即ち、回路基板上に形成する電極等に用いることが困難となる。より好ましくは1×104S/cm以上である。
【0033】
本発明の導電性被膜の製造方法によれば、基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜を加熱することなく焼結して導電性被膜が得られることから、耐熱性に劣る高分子材料であっても基材として用いることができ、材料選択の幅が飛躍的に向上する。
本発明により得られる導電性被膜の用途としては特に限定されないが、例えば、ブラウン管の電磁波遮蔽用、建材又は自動車の赤外線遮蔽用、電子機器や携帯電話の静電気帯電防止剤用、曇ガラスの熱線用、回路基板やICカードの配線、樹脂に導電性を付与するためのコーティング用、スルーホール又は回路自体用等の被膜を挙げることができる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0035】
(実施例1〜3)
(1)コーティング剤の調製
グリシン1.75g、タンニン酸0.23gを水300mLに溶解した後、10N水酸化ナトリウム水溶液を3mL添加してアルカリ性に調整した。この溶液に3.87mol/L硝酸銀水溶液3mLを添加し、2時間攪拌して銀コロイド水溶液を得た。
得られた銀コロイド水溶液を、導電率が100μm/cm以下になるまで透析して脱塩を行った。透析終了後、3000rpm、10分間遠心分離を行うことにより凝集物を除去した。更に、揮発の抑制と増粘の目的で、グリセリンを水100重量部に対して20重量部の割合で添加した。これをコーティング剤とした。
【0036】
(2)塗膜の形成
得られたコーティング剤をシリンジに入れ、コーティング剤を押し出しながら低速で移動させることにより、表1に示した各基材上に描画した。60℃、120分間乾燥させて線状塗膜を形成させた。
【0037】
(3)導電性被膜の形成
図1に示したように、得られた線状塗膜の両端間に0.25Aの直流電流を1秒間流すことにより焼結させて、導電性被膜を得た。なお、電源としてはH10K1 7005 PROGRAMABLE DC STANDARDを用いた。得られた導電性被膜について線幅及び膜厚を測定した。
【0038】
(比較例1〜2)
ギアオーブン中で200℃1時間加熱することにより焼結した以外は、実施例2〜3と同様の方法により導電性被膜を得た。得られた導電性被膜について線幅及び膜厚を測定した。
【0039】
【表1】
【0040】
<評価>
実施例1〜3及び比較例1〜2で作製した導電性被膜について、以下の方法により体積抵抗値、導電率、基材及び導電性被膜の損傷を評価した。
結果を表2に示した。
【0041】
(体積抵抗値の測定)
各導電性被膜について表2に示した抵抗測定端子間距離で抵抗値を測定し、導電性被膜の厚さから体積抵抗値を算出した。
【0042】
(導電率の測定)
横川M&C者製の携帯型ホイートストンブリッジTYPE L−3Cを用いて測定を行った。
【0043】
(基材及び導電性被膜の損傷の評価)
目視により、基材及び導電性被膜の損傷の有無を評価した。
【0044】
【表2】
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、基材に加熱による損傷を与えることのない導電性被膜の作製方法及び導電性被膜を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】基材上に形成された塗膜に通電する方法の1実施態様を示す模式図である。
【符号の説明】
1 塗膜
2 基材
3 電源
4 電圧計
Claims (4)
- 基材上に形成された金属微粒子を含有する塗膜に通電して焼結することを特徴とする導電性被膜の作製方法。
- 金属微粒子を含有する被膜は、金属成分と有機成分とからなる粒子を主成分とする固形分及び溶媒からなる金属コロイド液を基材上に塗布した後、乾燥させることによって形成されることを特徴とする請求項1記載の導電性被膜の作製方法。
- 請求項1又は2記載の導電性被膜の作製方法によって作製されたものであることを特徴とする導電性被膜。
- 導電率が1×103S/cm以上であることを特徴とする請求項3記載の導電性被膜。
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JP2002235017A JP2004079243A (ja) | 2002-08-12 | 2002-08-12 | 導電性被膜の作製方法及び導電性被膜 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2007200775A (ja) * | 2006-01-27 | 2007-08-09 | Bando Chem Ind Ltd | 金属微粒子分散体および金属微粒子分散体を利用した導電材料 |
WO2007114076A1 (ja) | 2006-04-05 | 2007-10-11 | Toray Industries, Inc. | 導電性基板の製造方法および導電性基板 |
JP2012022833A (ja) * | 2010-07-13 | 2012-02-02 | Fujifilm Corp | 導電膜の製造方法 |
-
2002
- 2002-08-12 JP JP2002235017A patent/JP2004079243A/ja active Pending
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