JP2004137253A - 心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬 - Google Patents
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Abstract
【課題】心筋炎の予防及び/又は治療に有用な医薬を提供する。
【解決手段】下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、アルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同してアルキレン基を表し;R3は、水素原子、アルキル基などからなる群から選ばれる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬。
【選択図】なし
【解決手段】下記式(I):
(式中、R1は、水素原子、アリール基、アルキル基又はアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、アルキル基又はヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同してアルキレン基を表し;R3は、水素原子、アルキル基などからなる群から選ばれる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリーラジカルスカベンジャー、特にはピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む心筋症の予防及び/又は治療のための医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
心筋炎は、種々の原因により心筋が局所的又はびまん的に炎症性変化を起こした心筋障害をいう。心筋炎は、ウイルス、細菌、リケッチア、真菌、原虫等による感染性心筋炎と、膠原病、リウマチ、サルコイドーシス等による非感染性心筋炎に分類される。心筋炎のほとんどはウイルスによるものであり、コクサッキーB、エコー、単純ヘルペス、インフルエンザウイルスなどの感染によるものが多く、原因不明の特発性心筋炎もほとんどウイルス性であると考えられている。心筋炎は、炎症細胞の浸潤、心筋壊死・融解、間質の線維化・硬化などの病理学的特徴を有する。心筋炎は一般に急性に発症し、予後が良好でほぼ完全に治癒するものが多いが、重症不整脈、心不全などの心機能障害が長期にわたり持続するものもある。
心筋炎に対しては、抗ウイルス剤、ステロイドホルモン剤などの薬物療法があるがいずれもその効果が十分とはいえず、また副作用などの問題もある。また、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)などを利用する積極的療法も有効ではあるものの、これらは危機を乗り切るための一次的な対症療法にすぎず、原因療法ではないため急性期死亡が10%と重篤である。そのため、原因療法となりうる薬剤の検討がマウスの心筋炎モデルを用いて行われてきた。マウスにウイルスを接種すると接種第3日から心筋細胞内でウイルス増殖が始まり、第5から第9日にかけて炎症の極期となる。これまでにウイルス接種当日から投与すれば効果がある薬剤は見出されたが、多くが実際に心筋炎が発症してからでは無効であり、臨床的使用に供するには不十分である。
【0003】
一方、下記式(I):
【化2】
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報、例1の化合物)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、及び血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)等が知られている。
【0004】
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告される(Kawai, H., et al., J. Phamacol. Exp. Ther., 281(2), 921, 1997; Wu, TW. et al., Life Sci, 67(19), 2387, 2000)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。これまで実験的心筋炎において抗酸化因子チオレドキシンの発現が病変部で亢進し、臨床的には心筋炎の程度と比例して血漿チオレドキシン値が上昇していることが確認されている。従って、心筋炎では酸化ストレスの過負荷状態にあり、その急性期の病態の進展にフリーラジカルの関与が示唆される。しかしながら、フリーラジカルスカベンジャーが心筋炎に有効であるか否かの検討については従来全く報告がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、心筋炎の予防及び/又は治療に有用な医薬を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、マウス心筋炎モデル動物において血漿チオレドキシンの上昇を有意に抑制し、生存率を高めることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された。
【0007】
即ち、本発明によれば、フリーラジカルスカベンジャーを有効成分として含む心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、フリーラジカルスカベンジャーが下記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である上記医薬が提供される。
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
【0010】
本発明のさらに好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である上記医薬が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、心筋炎の予防及び/又は治療方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記医薬の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬は、フリーラジカルスカベンジャーを有効成分として含む。
【0013】
本発明において用いる「フリーラジカルスカベンジャー」とは、不対電子を有する化合物であるフリーラジカルを捕捉して消去する物質をいう。フリーラジカルには、代表的には活性酸素種であるスーパーオキシドアニオンラジカル(O2 −・)、ヒドロキシラジカル(・OH)をいうが、HOO・、LOO・、LO・、3O2、NO2等のラジカルのほか、ラジカルにすぐに転換するいわばラジカル予備軍であるH2O2、1O2、LOOH、O3、HOClなどをも含む。
【0014】
フリーラジカルスカベンジャーの具体例としては、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素系抗酸化物質、ビタミンE、ビタミンC、グルタチオン、カロチノイド、フラボノイド、ユビキノン、γ−オリザノール、メタロチオネイン、糖類、鉄キレート剤、尿酸、セルロプラスミン、トランスフェリン、フェリチン、ハプトグロビン、アルブミン、ピリルビン等の非酵素系抗酸化物質が挙げられる。また、既に市販され、臨床上使用される医薬で、スカベンジャー作用を有することが知られているものも同様に用いることができる。例えば、うっ血性心不全など循環器領域で使うユビキノン(コエンザイムQ)、降圧剤のカプトプリル、動脈硬化治療薬のプロブコール、高血圧や更年期障害に使用されるガンマ・オリザノール、脳圧降下剤のマンニトール、向精神薬のクロールプロマジン、リウマチ治療用金製剤のオーラノフィンや金チオリンゴ酸Na、D−ペニシラミン、胃潰瘍治療薬であるポラプレジンク等が挙げられる。
【0015】
本発明において好適に使用されるフリーラジカルスカベンジャーは、本明細書に定義する式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
また、本発明で用いる上記式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I’)又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の医薬の有効成分としては、下記の式(I’)又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。
【0016】
【化4】
【0017】
式(I)において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
【0018】
R1、R2及びR3の定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
【0019】
R1の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
【0020】
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
【0021】
R2及びR3の定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0022】
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
本発明の医薬の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0024】
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0025】
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0026】
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0027】
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0028】
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0029】
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
【0030】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合は、上記式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
【0031】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合は、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
【0032】
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
【0033】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合、投与量は特に限定されないが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の重量として一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5〜50mg/kg体重、であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
【0034】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合は、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と薬理学的及び製剤学的に許容される添加物を含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
【0035】
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。
【0036】
経口投与に適する医薬組成物には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
【0037】
注射あるいは点滴用に適する医薬組成物には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の添加物を用いることができる。
【0038】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合、本発明の医薬の形態は特に限定されず、当業者に利用可能な種々の形態をとることができる。経口投与に適する医薬として、例えば、固体の製剤用添加物を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、又はトローチ剤などを調製することができ、液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤などを調製することができる。また、非経口投与に適する医薬として、注射剤、点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の医薬において上記市販製剤をそのまま用いることができる。
【0039】
本発明の医薬は、心筋炎に有効である。すなわち、本発明の医薬は、心筋炎を防止する予防剤としての作用、及び/又は心筋炎を正常な状態に回復させる治療剤としての作用を有している。
本発明の医薬はまた、心筋炎に起因する病態の改善に有効である。
【0040】
本明細書において、「心筋炎」とは、主にはウイルスが感染することによって心筋に炎症が起こり、心筋の破壊などの器質的障害と心収縮力低下などの機能的障害を呈する病態をいう。心筋炎はウイルス、細菌、リケッチア、真菌、原虫等による感染性心筋炎と、リウマチ、サルコイドーシス等による非感染性心筋炎に大きく分けることができる。本明細書における「心筋炎」とはこれらの感染性心筋炎と非感染性心筋炎のいずれをも含み、発症原因により限定はされないが、好ましくは感染性心筋炎、より好ましくはウイルスによる感染性心筋炎である。
【0041】
また、「心筋炎に起因する病態」としては、具体的には、心不全、不整脈、胸痛、動悸、呼吸困難、むくみ、顔面蒼白、チアノーゼ、失神発作、四肢末梢の冷感、関節痛、筋肉痛、発疹、心原性ショック等が挙げられる。これらの用語は、上記の定義に合致するかぎり最も広義に解釈されるべきである。
【0042】
本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与することができる。例えば、上記各疾患の治療に先立って予防的に本発明の医薬を経口投与しておくことができ、注射若しくは点滴などの非経口的投与によって手術中又はその前後に予防的に投与することもできる。また、上記各疾患の患者に対しては、症状の悪化の防止ないしは症状の軽減などを目的として、静脈内、動脈内、心臓内に注射により投与することもできる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0044】
合成例:3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5〜128.5℃
【0045】
実施例1
(1)実験方法
▲1▼心筋炎モデル作製法
3週齢の雄性C3H/HeマウスにコクサッキーBウイルス(0.1ml of 106 TCID50/ml)を接種し、心筋炎を惹起させた。
【0046】
▲2▼薬物投与
心筋炎発症後の接種5日目から亜急性期である接種14日目までの間、エダラボン投与群にはエダラボン(30mg/kg体重)を、コントロール群には生理食塩水を腹腔内投与した。
【0047】
▲3▼投与効果の評価
エダラボンの投与効果を評価するために、各群5匹についてウイルス接種9日目に血漿TBARS(チオバルビタール酸反応物)、体重、及び心重量を測定した。また、各群10匹についてウイルス接種5日目から14日目にかけて生存率を測定し、心筋組織観察を行った。またウイルス接種9日目に、炎症の指標として心筋内TNF−α、iNOS、IFN−γ、ならびに心不全の指標としてBNP(Brain Natriuretic Peptide:脳性ナトリウムペプチド)のmRNA発現量をリアルタイム定量的PCR法で測定した。
【0048】
(2)実験結果
生存率の結果を表1に示す。第14日目の生存率はエダラボン投与群が70%であるのに対してコントロール群は20%であった(p=0.025)。
また、第9日目におけるTBARS、体重及び心重量を表2に示す。第9日目の血漿中のTBARSはエダラボン投与群が3.0nmol/mlであるのに対してコントロール群は4.0nmol/mlであり、エダラボン投与群では有意に抑制された(p=0.035)。体重や心重量に差はなく、両心室横断面切片における心筋炎病巣の半定量でも両群に有意差はなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
心筋内TNF−α、iNOS、IFN−γ、BNPのmRNA発現量(正常心臓のtarget mRNA/control mRNAに対する対象心臓のtarget mRNA/control mRNAの比)を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
心筋内mRNAについては、BNPとTNF−αは両群で差がなく、iNOS及びIFN−γはエダラボン投与群ではコントロール群より発現量が少ない傾向にあった。
マウス心筋炎においてエダラボンはTBARSを有意に抑制したが、心筋組織観察やBNPに差がないことから推察すると、エダラボンがフリーラジカルを抑えることにより、心室性頻拍(VT:ventricular tachycardia)、完全房室ブロック(Complete A−V Block)などの致死的不整脈を抑制し、生存率を改善した可能性が考えられる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の医薬は心筋炎の予防及び/又は治療に有用である。特に、本発明の医薬は心筋炎発症後の投与で生存率を改善したことは臨床上非常に意義深く、臨床的使用に供するに十分である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリーラジカルスカベンジャー、特にはピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含む心筋症の予防及び/又は治療のための医薬に関する。
【0002】
【従来の技術】
心筋炎は、種々の原因により心筋が局所的又はびまん的に炎症性変化を起こした心筋障害をいう。心筋炎は、ウイルス、細菌、リケッチア、真菌、原虫等による感染性心筋炎と、膠原病、リウマチ、サルコイドーシス等による非感染性心筋炎に分類される。心筋炎のほとんどはウイルスによるものであり、コクサッキーB、エコー、単純ヘルペス、インフルエンザウイルスなどの感染によるものが多く、原因不明の特発性心筋炎もほとんどウイルス性であると考えられている。心筋炎は、炎症細胞の浸潤、心筋壊死・融解、間質の線維化・硬化などの病理学的特徴を有する。心筋炎は一般に急性に発症し、予後が良好でほぼ完全に治癒するものが多いが、重症不整脈、心不全などの心機能障害が長期にわたり持続するものもある。
心筋炎に対しては、抗ウイルス剤、ステロイドホルモン剤などの薬物療法があるがいずれもその効果が十分とはいえず、また副作用などの問題もある。また、大動脈内バルーンパンピング(IABP)、経皮的心肺補助装置(PCPS)などを利用する積極的療法も有効ではあるものの、これらは危機を乗り切るための一次的な対症療法にすぎず、原因療法ではないため急性期死亡が10%と重篤である。そのため、原因療法となりうる薬剤の検討がマウスの心筋炎モデルを用いて行われてきた。マウスにウイルスを接種すると接種第3日から心筋細胞内でウイルス増殖が始まり、第5から第9日にかけて炎症の極期となる。これまでにウイルス接種当日から投与すれば効果がある薬剤は見出されたが、多くが実際に心筋炎が発症してからでは無効であり、臨床的使用に供するには不十分である。
【0003】
一方、下記式(I):
【化2】
(式中、R1は水素原子、アリール、炭素数1〜5のアルキル又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキルを表し、R2は、水素原子、アリールオキシ、アリールメルカプト、炭素数1〜5のアルキル又は1〜3のヒドロキシアルキルを表し、あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレンを表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル、炭素数5〜7のシクロアルキル、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、ベンジル、ナフチル又はフェニル、又は炭素数1〜5のアルコキシ、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル、炭素数1〜3のアルキルメルカプト、炭素数1〜4のアルキルアミノ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ、ハロゲン原子、トリフルオロメチル、カルボキシル、シアノ、水酸基、ニトロ、アミノ、及びアセトアミドからなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニルを表す。)で表されるピラゾロン誘導体については、医薬の用途として、脳機能正常化作用(特公平5−31523号公報)、過酸化脂質生成抑制作用(特公平5−35128号公報、例1の化合物)、抗潰瘍作用(特開平3−215425号公報)、及び血糖上昇抑制作用(特開平3−215426号公報)等が知られている。
【0004】
また、上記式(I)の化合物のうち、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンを有効成分とする製剤は、2001年6月以来、脳保護剤(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)として上市されている。この「エダラボン」は、活性酸素に対して高い反応性を有することが報告される(Kawai, H., et al., J. Phamacol. Exp. Ther., 281(2), 921, 1997; Wu, TW. et al., Life Sci, 67(19), 2387, 2000)。このように、エダラボンは活性酸素をはじめとする種々のフリーラジカルを消去することで、細胞障害などを防ぐ働きをするフリーラジカルスカベンジャーである。これまで実験的心筋炎において抗酸化因子チオレドキシンの発現が病変部で亢進し、臨床的には心筋炎の程度と比例して血漿チオレドキシン値が上昇していることが確認されている。従って、心筋炎では酸化ストレスの過負荷状態にあり、その急性期の病態の進展にフリーラジカルの関与が示唆される。しかしながら、フリーラジカルスカベンジャーが心筋炎に有効であるか否かの検討については従来全く報告がない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、心筋炎の予防及び/又は治療に有用な医薬を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々の検討を行った結果、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物が、マウス心筋炎モデル動物において血漿チオレドキシンの上昇を有意に抑制し、生存率を高めることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成された。
【0007】
即ち、本発明によれば、フリーラジカルスカベンジャーを有効成分として含む心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬が提供される。
本発明の好ましい態様によれば、フリーラジカルスカベンジャーが下記式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である上記医薬が提供される。
【0008】
【化3】
【0009】
(式中、R1は、水素原子、アリール基、炭素数1〜5のアルキル基又は総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基を表し;R2は、水素原子、アリールオキシ基、アリールメルカプト基、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を表し;あるいは、R1及びR2は、共同して炭素数3〜5のアルキレン基を表し;R3は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、ベンジル基、ナフチル基、フェニル基、又は炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基、炭素数1〜4のアルキルアミノ基、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基及びアセトアミド基からなる群から選ばれる同一若しくは異なる1〜3個の置換基で置換されたフェニル基を表す。)
【0010】
本発明のさらに好ましい態様によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である上記医薬が提供される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の予防及び/又は治療有効量をヒトを含む哺乳動物に投与する工程を含む、心筋炎の予防及び/又は治療方法が提供される。本発明のさらに別の側面によれば、上記医薬の製造のための式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用が提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬は、フリーラジカルスカベンジャーを有効成分として含む。
【0013】
本発明において用いる「フリーラジカルスカベンジャー」とは、不対電子を有する化合物であるフリーラジカルを捕捉して消去する物質をいう。フリーラジカルには、代表的には活性酸素種であるスーパーオキシドアニオンラジカル(O2 −・)、ヒドロキシラジカル(・OH)をいうが、HOO・、LOO・、LO・、3O2、NO2等のラジカルのほか、ラジカルにすぐに転換するいわばラジカル予備軍であるH2O2、1O2、LOOH、O3、HOClなどをも含む。
【0014】
フリーラジカルスカベンジャーの具体例としては、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、ペルオキシダーゼ等の酵素系抗酸化物質、ビタミンE、ビタミンC、グルタチオン、カロチノイド、フラボノイド、ユビキノン、γ−オリザノール、メタロチオネイン、糖類、鉄キレート剤、尿酸、セルロプラスミン、トランスフェリン、フェリチン、ハプトグロビン、アルブミン、ピリルビン等の非酵素系抗酸化物質が挙げられる。また、既に市販され、臨床上使用される医薬で、スカベンジャー作用を有することが知られているものも同様に用いることができる。例えば、うっ血性心不全など循環器領域で使うユビキノン(コエンザイムQ)、降圧剤のカプトプリル、動脈硬化治療薬のプロブコール、高血圧や更年期障害に使用されるガンマ・オリザノール、脳圧降下剤のマンニトール、向精神薬のクロールプロマジン、リウマチ治療用金製剤のオーラノフィンや金チオリンゴ酸Na、D−ペニシラミン、胃潰瘍治療薬であるポラプレジンク等が挙げられる。
【0015】
本発明において好適に使用されるフリーラジカルスカベンジャーは、本明細書に定義する式(I)で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
また、本発明で用いる上記式(I)で示される化合物は、互変異性により、以下の式(I’)又は(I”)で示される構造をもとりうる。本明細書の式(I)には、便宜上、互変異性体のうちの1つを示したが、当業者には下記の互変異性体の存在は自明である。本発明の医薬の有効成分としては、下記の式(I’)又は(I”)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を用いてもよい。
【0016】
【化4】
【0017】
式(I)において、R1の定義におけるアリール基は単環性又は多環性アリール基のいずれでもよい。例えば、フェニル基、ナフチル基などのほか、メチル基、ブチル基などのアルキル基、メトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、又は水酸基等の置換基で置換されたフェニル基等が挙げられる。アリール部分を有する他の置換基(アリールオキシ基など)におけるアリール部分についても同様である。
【0018】
R1、R2及びR3の定義における炭素数1〜5のアルキル基は直鎖状、分枝鎖状のいずれでもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル部分を有する他の置換基(アルコキシカルボニルアルキル基)におけるアルキル部分についても同様である。
【0019】
R1の定義における総炭素数3〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としては、メトキシカルボニルメチル基、エトキシカルボニルメチル基、プロポキシカルボニルメチル基、メトキシカルボニルエチル基、メトキシカルボニルプロピル基等が挙げられる。
【0020】
R2の定義におけるアリールオキシ基としては、p−メチルフェノキシ基、p−メトキシフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、p−ヒドロキシフェノキシ基等が挙げられ、アリールメルカプト基としては、フェニルメルカプト基、p−メチルフェニルメルカプト基、p−メトキシフェニルメルカプト基、p−クロロフェニルメルカプト基、p−ヒドロキシフェニルメルカプト基等が挙げられる。
【0021】
R2及びR3の定義における炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。R3の定義における炭素数5〜7のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
【0022】
R3の定義において、フェニル基の置換基における炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられ、総炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等が挙げられ、炭素数1〜3のアルキルメルカプト基としては、メチルメルカプト基、エチルメルカプト基、プロピルメルカプト基等が挙げられ、炭素数1〜4のアルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基等が挙げられ、総炭素数2〜8のジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等が挙げられる。
【0023】
本発明の医薬の有効成分として好適に用いられる化合物(I)として、例えば、以下に示す化合物が挙げられる。
3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(2−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(3,4−ジメチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロピルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0024】
1−(4−トリフルオロメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−プロポキシフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジクロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0025】
1−(4−ブロモフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−フルオロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−クロロ−4−メチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルメルカプトフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(3−メチル−5−オキソ−2−ピラゾリン−1−イル)安息香酸;
1−(4−エトキシカルボニルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ニトロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−エチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−3−プロピル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0026】
1,3−ジフェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−フェニル−1−(p−トリル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3,4−ジメチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−イソブチル−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
4−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェノキシ−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−4−フェニルメルカプト−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0027】
3,3’,4,5,6,7−ヘキサヒドロ−2−フェニル−2H−インダゾール−3−オン;
3−(エトキシカルボニルメチル)−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1,3−ジメチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−エチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ブチル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキエチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−シクロヘキシル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−ベンジル−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0028】
1−(α−ナフチル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−メチル−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
3−メチル−1−(4−メチルフェニル)−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブトキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−クロロフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(2−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
【0029】
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(3,4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシフェニル)−3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ヒドロキシメチルフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−アミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−メチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−エチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ブチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(4−ジメチルアミノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;
1−(アセトアミドフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン;及び
1−(4−シアノフェニル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン
【0030】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合は、上記式(I)で表される遊離形態の化合物のほか、生理学的に許容される塩を用いてもよい。生理学的に許容される塩としては、塩酸、硫酸、臭化水素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸、グリコール酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、アスコルビン酸、クエン酸、サリチル酸、ニコチン酸、酒石酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)ピペラジン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、エタノールアミン、N−メチルグルタミン、L−グルタミン等のアミンとの塩が挙げられる。また、グリシンなどのアミノ酸との塩を用いてもよい。
【0031】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合は、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の水和物、又は上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩の溶媒和物を用いてもよい。溶媒和物を形成する有機溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどを例示することができる。また、上記式(I)で表される化合物は、置換基の種類により1以上の不斉炭素を有する場合があり、光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体が存在する場合がある。本発明の医薬の有効成分としては、純粋な形態の立体異性体、立体異性体の任意の混合物、ラセミ体などを用いてもよい。
【0032】
式(I)で表される化合物はいずれも公知の化合物であり、特公平5−31523号公報などに記載された方法により当業者が容易に合成できる。
【0033】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合、投与量は特に限定されないが、通常は、有効成分である式(I)で示される化合物の重量として一般に経口投与の場合には一日あたり0.1〜1000mg/kg体重、好ましくは一日あたり0.5〜50mg/kg体重、であり、非経口投与の場合には一日あたり0.01〜100mg/kg体重、好ましくは0.1〜10mg/kg体重である。上記投与量は1日1回又は2〜3回に分けて投与するのが好ましく、年齢、病態、症状により適宜増減してもよい。
【0034】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合は、上記式(I)で表される化合物若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をそのまま投与してもよいが、一般的には、有効成分である上記の物質と薬理学的及び製剤学的に許容される添加物を含む医薬組成物を調製して投与することが好ましい。
【0035】
薬理学的及び製剤学的に許容しうる添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、及び粘着剤等を用いることができる。
【0036】
経口投与に適する医薬組成物には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D−マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又はゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、又はハードファット等の基剤を用いることができる。
【0037】
注射あるいは点滴用に適する医薬組成物には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D−マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等のpH調節剤等の添加物を用いることができる。
【0038】
本発明の医薬の有効成分として上記式(I)で表される化合物を用いる場合、本発明の医薬の形態は特に限定されず、当業者に利用可能な種々の形態をとることができる。経口投与に適する医薬として、例えば、固体の製剤用添加物を用いて錠剤、散剤、顆粒剤、硬ゼラチンカプセル剤、坐剤、又はトローチ剤などを調製することができ、液状の製剤用添加物を用いてシロップ剤、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤などを調製することができる。また、非経口投与に適する医薬として、注射剤、点滴剤、吸入剤、坐剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤などを調製することができる。なお、上記の式(I)の化合物を有効成分とする脳保護剤(点滴剤)が、すでに臨床において使用されているので(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット」:三菱ウェルファーマ株式会社製造・販売)、本発明の医薬において上記市販製剤をそのまま用いることができる。
【0039】
本発明の医薬は、心筋炎に有効である。すなわち、本発明の医薬は、心筋炎を防止する予防剤としての作用、及び/又は心筋炎を正常な状態に回復させる治療剤としての作用を有している。
本発明の医薬はまた、心筋炎に起因する病態の改善に有効である。
【0040】
本明細書において、「心筋炎」とは、主にはウイルスが感染することによって心筋に炎症が起こり、心筋の破壊などの器質的障害と心収縮力低下などの機能的障害を呈する病態をいう。心筋炎はウイルス、細菌、リケッチア、真菌、原虫等による感染性心筋炎と、リウマチ、サルコイドーシス等による非感染性心筋炎に大きく分けることができる。本明細書における「心筋炎」とはこれらの感染性心筋炎と非感染性心筋炎のいずれをも含み、発症原因により限定はされないが、好ましくは感染性心筋炎、より好ましくはウイルスによる感染性心筋炎である。
【0041】
また、「心筋炎に起因する病態」としては、具体的には、心不全、不整脈、胸痛、動悸、呼吸困難、むくみ、顔面蒼白、チアノーゼ、失神発作、四肢末梢の冷感、関節痛、筋肉痛、発疹、心原性ショック等が挙げられる。これらの用語は、上記の定義に合致するかぎり最も広義に解釈されるべきである。
【0042】
本発明の医薬の投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与することができる。例えば、上記各疾患の治療に先立って予防的に本発明の医薬を経口投与しておくことができ、注射若しくは点滴などの非経口的投与によって手術中又はその前後に予防的に投与することもできる。また、上記各疾患の患者に対しては、症状の悪化の防止ないしは症状の軽減などを目的として、静脈内、動脈内、心臓内に注射により投与することもできる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明は下記の実施例により限定されるものではない。
【0044】
合成例:3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン(以下、エダラボンと称す)の合成
エタノール50ml中にアセト酢酸エチル13.0g及びフェニルヒドラジン10.8gを加え、3時間還流攪拌した。反応液を放冷後、析出した結晶をろ取し、エタノールより再結晶して、表題の化合物11.3gを無色結晶として得た。
収率 67%
融点 127.5〜128.5℃
【0045】
実施例1
(1)実験方法
▲1▼心筋炎モデル作製法
3週齢の雄性C3H/HeマウスにコクサッキーBウイルス(0.1ml of 106 TCID50/ml)を接種し、心筋炎を惹起させた。
【0046】
▲2▼薬物投与
心筋炎発症後の接種5日目から亜急性期である接種14日目までの間、エダラボン投与群にはエダラボン(30mg/kg体重)を、コントロール群には生理食塩水を腹腔内投与した。
【0047】
▲3▼投与効果の評価
エダラボンの投与効果を評価するために、各群5匹についてウイルス接種9日目に血漿TBARS(チオバルビタール酸反応物)、体重、及び心重量を測定した。また、各群10匹についてウイルス接種5日目から14日目にかけて生存率を測定し、心筋組織観察を行った。またウイルス接種9日目に、炎症の指標として心筋内TNF−α、iNOS、IFN−γ、ならびに心不全の指標としてBNP(Brain Natriuretic Peptide:脳性ナトリウムペプチド)のmRNA発現量をリアルタイム定量的PCR法で測定した。
【0048】
(2)実験結果
生存率の結果を表1に示す。第14日目の生存率はエダラボン投与群が70%であるのに対してコントロール群は20%であった(p=0.025)。
また、第9日目におけるTBARS、体重及び心重量を表2に示す。第9日目の血漿中のTBARSはエダラボン投与群が3.0nmol/mlであるのに対してコントロール群は4.0nmol/mlであり、エダラボン投与群では有意に抑制された(p=0.035)。体重や心重量に差はなく、両心室横断面切片における心筋炎病巣の半定量でも両群に有意差はなかった。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
心筋内TNF−α、iNOS、IFN−γ、BNPのmRNA発現量(正常心臓のtarget mRNA/control mRNAに対する対象心臓のtarget mRNA/control mRNAの比)を表3に示す。
【0052】
【表3】
【0053】
心筋内mRNAについては、BNPとTNF−αは両群で差がなく、iNOS及びIFN−γはエダラボン投与群ではコントロール群より発現量が少ない傾向にあった。
マウス心筋炎においてエダラボンはTBARSを有意に抑制したが、心筋組織観察やBNPに差がないことから推察すると、エダラボンがフリーラジカルを抑えることにより、心室性頻拍(VT:ventricular tachycardia)、完全房室ブロック(Complete A−V Block)などの致死的不整脈を抑制し、生存率を改善した可能性が考えられる。
【0054】
【発明の効果】
本発明の医薬は心筋炎の予防及び/又は治療に有用である。特に、本発明の医薬は心筋炎発症後の投与で生存率を改善したことは臨床上非常に意義深く、臨床的使用に供するに十分である。
Claims (6)
- フリーラジカルスカベンジャーを有効成分として含む心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬。
- フリーラジカルスカベンジャーが下記式(I):
で示されるピラゾロン誘導体若しくはその生理学的に許容される塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である請求項1に記載の医薬。 - 式(I)で示されるピラゾロン誘導体が3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オンである請求項2に記載の医薬。
- 心筋炎がウイルスによる感染性心筋炎である請求項1から3のいずれかに記載の医薬。
- 心筋炎に起因する病態を改善するための請求項1から4のいずかに記載の医薬。
- 心筋炎に起因する病態が、心不全、不整脈、胸痛、動悸、呼吸困難、むくみ、顔面蒼白、チアノーゼ、失神発作、四肢末梢の冷感、関節痛、筋肉痛、発疹、及び心原性ショックから成る群から選ばれる病態である請求項5に記載の医薬。
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JP2003196173A JP2004137253A (ja) | 2002-07-15 | 2003-07-14 | 心筋炎の予防及び/又は治療のための医薬 |
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JP (1) | JP2004137253A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2010087306A1 (ja) | 2009-01-29 | 2010-08-05 | 株式会社林原生物化学研究所 | 抗神経変性疾患剤 |
-
2003
- 2003-07-14 JP JP2003196173A patent/JP2004137253A/ja active Pending
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WO2010087306A1 (ja) | 2009-01-29 | 2010-08-05 | 株式会社林原生物化学研究所 | 抗神経変性疾患剤 |
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