JP2004132059A - 浴室の防音構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】浴室ユニット内で発生した各種音による階下への騒音伝播を逓減するこのとのできる浴室の防音構造を提供することを目的とする。
【解決手段】階下に居住空間を有する浴室の防音構造において、浴室ユニット1の少なくとも防水床2または壁パネル3の裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シート5の片面が貼り合わせられ、該制振シート5の他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材6が貼り合わせられている。また、有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物である。
【選択図】 図1
【解決手段】階下に居住空間を有する浴室の防音構造において、浴室ユニット1の少なくとも防水床2または壁パネル3の裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シート5の片面が貼り合わせられ、該制振シート5の他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材6が貼り合わせられている。また、有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、階下に居住空間を有する浴室において入浴時に発生する騒音が階下に伝播するのを逓減させることができる浴室の防音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、浴室の防音構造としては、浴室ユニットの防水床に制振材としてゴムアスファル系シートを貼付し、更にその上にFRP製板材を貼付したり、また、防水床と建築躯体との間に多孔質状の吸音材を配設することにより、階下への騒音を防止していた(例えば、特許文献1参照。)。
また、浴室ユニットが載置される浴室下地材として、ロックウール成形パネル、発泡アルミパネル、磁気テープ成形パネル等の多孔質状のパネルから形成されたものが用いられていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8─120956号公報(第2〜3頁、第2図及び第5図)
【特許文献2】
特開平10─131347号公報(第2〜3頁、第1〜6図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1記載の浴室の防音構造では、制振材としてゴムアスファル系シートを貼付しているが、ゴムアスファル系シートは損失正弦がそれほど高くないために、十分な制振性を有するものではなく、十分な防音性能が得られない。
【0005】
ゴムアスファル系シートに代えて鉛シートを貼り合わせることも考えられるが水回りには環境規制物質が使用できない。また、ゴムアスファル系シートに加え、吸音材を併用して浴室ユニットと床下地との間に敷設しているが、足音やジャプ音、ボルトの落下音等の低周波帯域の固体伝播音を遮断するには効果が少なく防音性能が得られない。
【0006】
また、特許文献2に記載の浴室の防音構造では、浴室下地にロックウール成形パネルや磁気テープ成形パネル等の多孔質状のパネルを用いているが、この吸音材は、足音等の低周波帯域(125Hz〜250Hz)の固体伝播音を遮断するには効果が少なく十分な防音性能が得られない。浴室等の湿気が高く乾燥し難い場所での使用においては、施工の不具合によっては、多孔質パネルの孔に水分が浸み込み、十分な吸音性能を発現しないことがある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決し、浴室ユニット内で発生した各種音による階下への騒音伝播を逓減することのできる浴室の防音構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による浴室の防音構造は、階下に居住空間を有する浴室の防音構造において、浴室ユニットの少なくとも防水床または壁パネルの裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シートの片面が貼り合わせられ、該制振シートの他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材が貼り合わせられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明において、制振シート用の有機高分子材料は、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上であれば、特に限定されないが、極性基を有する高分子材料が好ましい。このような高分子材料の例として、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素系ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、フッ素系ポリマー、臭素系ポリマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0010】
有機高分子材料のハロゲン含有量は、少なすぎると制振性が低下し、多すぎると制振シートが硬くなりすぎて成形が難しくなるので、好ましくは20〜70重量%である。
【0011】
有機高分子材料には必要に応じて可塑剤が添加されてもよい。特に有機高分子材料が硬過ぎる場合、可塑剤を添加するのが好ましい。可塑剤としては、通常、塩化ビニル系樹脂に使用されるものが使用でき、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソノニル、テトラブロモフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のフタル酸系可塑剤;トリクレジンホスフェート、トリス(1,3−ジシクロ−2−プロピル)ホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;エポキシ系可塑剤;ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。植物油系の可塑剤も好ましい。塩素化パラフィンのブリードアウトを抑制するには、フタル酸系可塑剤が好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上組み合わせ用いてもよい。フタル酸系可塑剤以外の可塑剤を用いる場合には、これにフタル酸系可塑剤と併用するのが好ましい。
【0012】
可塑剤の配合量は、有機高分子材料100重量部に対し50〜200重量部、好ましくは60〜180重量部、より好ましくは100重量部以下である。この範囲でブリードアウトが抑制でき、制振効果も発現できる。
【0013】
有機高分子材料には必要に応じて充填材が添加されてもよい。特に、樹脂組成物にある程度の硬さを付与したいときは、充填材を添加するのがよい。充填材としては、鉄粉、アルミニウム粉、銅粉等の金属粉;マイカ、カオリン、モンモリロナイト、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、結晶性炭素(グラファイト等)、バーミキュライト等の無機質充填材などが例示される。これらは、単独で用いられても、2種類以上併用されてもいい。充填材の量は、多すぎると樹脂組成物の制振性が低下するので、有機高分子材料100重量部に対して、好ましくは300重量部以下である。
【0014】
有機高分子材料からなる制振シートの作製方法は、特に限定されず、例えば押出成形法、カレンダー成形法、溶剤キャスト法等の一般的なシート成形方法であってよい。得られたシートを所要サイズにカットして浴室の防音構造の構成に供する。
【0015】
請求項1の発明において、拘束部材は、縦弾性係数が1GPa以上であるものであれば特に限定されないが、制振シート用の有機高分子材料より縦弾性係数が大きい材料がよく、十分な制振効果を奏するためには、10GPa以上であることが好ましい。
【0016】
このような拘束部材の例として、鉛、鉄、鋼材(ステンレス鋼を含む)、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)等の金属材料;コンクリート、石膏ボード、大理石、スレート板、砂板、ガラス等の無機材料;ポリカーボネート、ポリサルフォン等のビスフエノールA変性樹脂;ポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂;塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂等の塩素系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系ゴム等のゴム系材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の飽和ポリエステル;スチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド系樹脂;メラミン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ウレタン系樹脂;ジシクロペンタジエン、ベークライト等の熱硬化性樹脂;木、紙等のセルロース系材料;キチン、キトサンなどからなる板材またはシートが挙げられる。
【0017】
これらは単独で用いても、2以上の組み合わせで用いてもよい。拘束部材はガラス繊維、カーボン繊維、液晶などで補強されていてもよく、互いに異なる材料からなる複合板であってもよく、さらに、これらの材料からなる発泡体であってもよい。
【0018】
拘束部材の形状は、好ましくはシート状である。金属製の拘束部材の場合には、メッキや塗装等の防錆処理を施すのが好ましい。平滑な金属板からなる拘束部材は反射率が大きくなる傾向を有するので、表面に凹凸を設ける、孔を開ける、拘束部材を無機材にする、などにより反射率を低減させるのが好ましい。孔径は、孔が汚れなどで塞がれないようにまた孔内に水が浸透しないように、直径3〜20mm程度にするのがよい。拘束部材が振動していても、拘束部材の縦弾性係数があまり低下しなければ、表面の凹凸や孔開けなどで防音効果は増す傾向にある。
【0019】
請求項1の発明において、制振シートおよび拘束部材の厚みは任意であってよいが、薄すぎると制振性能が劣り、厚すぎると浴室の防水床や壁パネルの厚みが大きくなるので、制振シートの厚みは好ましくは0.1〜5.0mmである。
また、拘束部材の厚みは好ましくは0.05〜5.0mmであり、縦弾性係数が10GPa以上の硬い拘束部材の場合は、厚みは好ましくは0.05〜2.0mmである。
【0020】
請求項2の発明による浴室の防音構造は、請求項1の発明において、有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項2の発明において、有機高分子材料を構成する塩素系高分子材料は、請求項1の制振シート用の有機高分子材料のうち塩素系のものが挙げられ、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリエチレン系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0022】
塩素系高分子材料の塩素含有量は、少なすぎると制振性が低下し、多すぎると制振シートが硬くなりすぎて成形が難しくなるので、20〜70重量%とするのがよい。
【0023】
請求項2の発明において、有機高分子材料を構成する塩素化パラフィンは、炭素数が10〜50で、塩素含有量が30〜70重量%であるものであれば、限定されず、液状のものでも固体のものでもよい。塩素化パラフィンは、単一物質からなるものでも、2以上の物質の混合物でもよい。
【0024】
塩素化パラフィンの炭素数は、小さすぎると塩素化パラフィンがブリードアウトしてしまい、大きすぎると十分な制振性が発現しないため、好ましくは12〜50であり、塩素化パラフィンが1種類で使用される場合、好ましくは12〜20、より好ましくは12〜16である。
【0025】
塩素化パラフィンの塩素含有量は、少なすぎると、充分な制振性が発現せず、且つ、塩素化パラフィンが塩素系高分子材料と相溶しにくくブリードアウトする恐れがあり、多すぎると、やはり塩素化パラフィンが塩素系高分子材料と相溶しにくくブリードアウトする恐れがあるので、30〜70重量%とするのがよい。塩素化パラフィンの塩素含有量が塩素系高分子材料の塩素含有量に近いほど、制振性が良くなるので、塩素系高分子材料の塩素含有量に従って、塩素化パラフィンの塩素含有量を決めればよい。
【0026】
請求項2の発明の有機高分子材料において、塩素系高分子材料に対する塩素化パラフィンの量は、少なすぎると十分な制振性が得られず、多すぎると強度が小さくなって樹脂組成物が形態を保持しにくくなるため、塩素系高分子材料100重量部に対して100〜400重量部であることが好ましい。
【0027】
請求項2の発明において、樹脂組成物には必要に応じて可塑剤、充填材等が添加されてもよい。可塑剤、充填材の例示および添加量は請求項1におけるものと同じであってよい。
【0028】
請求項3の発明による浴室の防音構造は、請求項1の発明において、有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物(ただし第1塩素化パラフィンの割合が全塩素パラフィン中40重量%以上である)とからなる樹脂組成物であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項3の発明において、有機高分子材料を構成する塩素系高分子材料は、請求項1の制振シート用の有機高分子材料のうち塩素系のものであってよく、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリエチレン系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0030】
塩素系高分子材料の塩素含有量は、少なすぎると制振性が低下し、多すぎると制振シートが硬くなりすぎて成形が難しくなるので、20〜70重量%とするのがよい。
【0031】
請求項3の発明の有機高分子材料において、塩素化パラフィンは、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物である。このように炭素数が互いに異なる2種の塩素化パラフィンを用いることにより、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させ、すぐれた制振性を得ることができる。
【0032】
この場合、第1塩素化パラフィンの割合を全塩素パラフィン中40重量%以上にすると、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させるとともに長期に亘って維持することができ、且つ、塩素化パラフィンの制振シートからのブリードアウトを抑制させることができるので好ましい。
【0033】
請求項3の発明の有機高分子材料において、塩素系高分子材料に対する塩素化パラフィン混合物の量は、少なすぎると十分な制振性が得られず、多すぎると強度が小さくなって樹脂組成物が形態を保持しにくくなるため、塩素系高分子材料100重量部に対して50〜400重量部であることが好ましい。
【0034】
請求項3の発明の樹脂組成物には必要に応じて可塑剤、充填材等が添加されてもよい。可塑剤、充填材の例示および添加量は請求項1におけるものと同じであってよい。
【0035】
請求項1〜3の発明による浴室の防音構造を有した浴室ユニットを設置する方法は任意であってよい。すなわち、予め浴室ユニットの防水床および壁パネルの裏面に、制振シートおよび拘束部材を貼り合わせておき、これを現場に搬入して組み立て設置してもよく、あるいは防水床および壁パネルを現場に搬入してから、制振シートおよび拘束部材を貼り合わせて、浴室ユニットを組み立てて設置してもよい。いずれの場合にも施工性を良くするためには、予め制振シートと拘束部材を貼り合せて遮音部材を作製しておき、この遮音部材を防水床と壁パネルのの裏面に、制振シート、拘束部材の順になるように貼付けて組み立て部材を形成しておくのがよい。
【0036】
(作用)
請求項1の発明による浴室の防音構造は、浴室ユニットの少なくとも防水床または壁パネルの裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シートの片面が貼り合わせられ、該制振シートの他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材が貼り合わせられているので、浴室ユニットの重量増加を最小限に抑えて、優れた制振性能を有する制振シートが振動を吸収し、高い防音性能を有する。
【0037】
請求項2の発明による浴室の防音構造では、有機高分子材料として、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物を用いるので、一層優れた制振性能を有する浴室の防音構造が得られる。
【0038】
請求項3の発明による浴室の防音構造では、有機高分子材料として、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物(ただし第1塩素化パラフィンの割合が全塩素パラフィン中40重量%以上である)とからなる樹脂組成物を用いるので、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させるとともに長期に亘って維持することができ、且つ、塩素化パラフィンの制振シートからのブリードアウトを抑制させることができる。
【0039】
請求項2および3の樹脂組成物は塩素化パラフィンを含むので、適度な粘着性を有し、制振シートと拘束部材とを貼り合わせる際、および制振シートと拘束部材との貼り合わせ体を、防水床や壁パネルに制振シート側で貼り合わせる際、粘着剤や両面テープが必要でなく施工性が良い。特に、防水床のコーナー部等の曲面に馴染しで貼り合わせることができ、水分による密着性の低下がなく、湿気が回り込むような環境にある浴室等には好適に使用できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明による浴室の防音構造を示すもので、浴室ユニット1は階上(2F)の浴室に設置されている。この浴室ユニット1は防水床2と浴槽3と壁パネル4と図示しない天井パネルから構成されている。
防水床2の洗い場21の側方の浴槽載置部22に浴槽3が載置され、防水床2の四方周辺には壁パネル4が立設されている。
【0042】
防水床2および壁パネル4の裏面に、図2に示すように、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シート5が貼り合わせられており、且つ縦弾性係数が1GPa以上であるシート状拘束部材6が制振シート5に貼り合わせられている。なお、制振シート5とシート状拘束部材6とは、予め貼り合わされて遮音部材7を形成し、防水床2および壁パネル4の裏面に貼り合わされてもよい。
【0043】
以下、本発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。
【0044】
実施例1
塩素化ポリエチレン(昭和電工社製、商品名「エラスレン402NA」、塩素含有量40重量%)100重量部と、塩素化パラフィン(旭電化社製、品番「E500」、塩素含有量50重量%、平均炭素数14、炭素数12〜16=99重量%)200重量部と、塩素化パラフィン(味の素ファインテクノ社製、商品名「エンパラ70」、塩素含有量70重量%、平均炭素数26、炭素数20〜50=99重量%)100重量部とをロール練り機で混練し、得られた樹脂混練物を120℃でプレスして、厚み0.5mmの制振シート5を得た。樹脂混練物の損失正弦(tanδ)のピーク値は3.5であった。
【0045】
制振シート5に、シート状拘束部材6として厚み0.2mmの鋼板(中村商事社製、縦弾性係数250GPa)を、制振シート5の粘着性を利用して貼り合わせ、遮音部材7を作製した。
【0046】
この遮音部材7を、浴室ユニット(セキスイ浴室ユニットFPN─1216:積水化学工業株式会社製)の防水床2と壁パネル4の裏面に、制振シート5を片面側にして制振シート5の粘着性を利用して貼り合わせ、浴室の防音構造を形成した。
【0047】
この遮音部材7が浴室ユニット1の裏側に来るように防水床2と壁パネル4を組み立てて、建物躯体のスラブ10の厚さが150mmで、横×奥行き×高さが4m×5.5m×2.5mの大きさの上階(2F)の部屋に設置した。
【0048】
実施例2
壁パネル4に遮音部材7を貼り合わせなかった以外は実施例1と同じである。
【0049】
実施例3
厚み1.0mmの制振シート5に、シート状拘束部材6として厚み0.4mmの鋼板を貼り合わせたこと以外は実施例2と同じである。
【0050】
上記実施例1〜3において、浴槽3には水180リットルを張って、床衝撃音レベルの測定を行った。
加振の方法は、JIS A 1418─1に基づく標準軽量衝撃源によるもので、防水床2の洗い場21の中央にタッピングマシン(型式F1−01、リオン社製)を置き加振した。
騒音レベルの計測は、階下(1F)の天井9から2mの高さ位置で騒音計によりオールパス騒音レベルを計測した。その結果は表1に示す通りである。
【0051】
また、制振シートの防水床2への密着性の耐久性試験を行った。
防水床2の湾曲部Cの曲面に100×200mmの大きさの制振シート5と拘束部材6を貼付て、80℃の温水に20日間親戚した後、剥がれの状態を目視で評価した。その結果は表1に示す通りである。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1
浴室ユニット1の防水床2および壁パネル4には遮音部材7を貼り合わせなかった。それ以外は実施例1と同じである。
【0054】
比較例2
遮音部材7に代えて、厚さが1.5mmのゴムシート(商品名:サンダムDM、ゼオン化成社製)を防水床2の裏面に貼り合わせた。それ以外は実施例2と同じである。
【0055】
比較例3
遮音部材7に代えて、厚さが0.5mmの鉛シート(東邦亜鉛社製AP−2)を防水床2の裏面に貼り合わせた。それ以外は実施例2と同じである。
【0056】
比較例4
浴室ユニット1の防水床2および壁パネル4には遮音部材7を貼り合わせず、浴室の床下地上に50mmの吸音材としてのグラスウール(密度40キログラム/立方メートル)を敷設した。それ以外は実施例1と同じである。
【0057】
比較例1〜4について、前記実施例と同様の条件で等価騒音レベルを求めた。また,比較例2〜3について、前記実施例と同様の条件で、シートの密着性の耐久性試験を行った。その結果は表2に示す通りである。
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、優れた制振性能を有する制振シートが振動を吸収し、高い防音性能を有する。しかも、優れた防音効果を有するので、浴室の防音構造の薄肉化が可能になる。
【0060】
請求項2の発明によれば、一層優れた制振性能を有する浴室の防音構造が得られる。特に、防水床のコーナー部等の曲面に馴染しで貼り合わせることができ、水分による密着性の低下がなく、湿気が回り込むような環境にある浴室等には好適に使用できる。
【0061】
請求項3の発明によれば、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させるとともに長期に亘って維持することができ、且つ、塩素化パラフィンの制振シートからのブリードアウトを抑制させることができる。特に、防水床のコーナー部等の曲面に馴染しで貼り合わせることができ、水分による密着性の低下がなく、湿気が回り込むような環境にある浴室等には好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による浴室の防音構造を説明する断面図である。
【図2】図1における浴室の防音構造の要部を拡大した図で、同図(a) は防水床のA部を示し、同図(b) は壁パネルのB部を示し、同図(c) は防水床のコーナー部Cを示した断面図である。
【符号の説明】
1 浴室ユニット
2 防水床
3 浴槽
4 壁パネル
5 制振シート
6 拘束部材
7 遮音部材
【発明の属する技術分野】
本発明は、階下に居住空間を有する浴室において入浴時に発生する騒音が階下に伝播するのを逓減させることができる浴室の防音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、浴室の防音構造としては、浴室ユニットの防水床に制振材としてゴムアスファル系シートを貼付し、更にその上にFRP製板材を貼付したり、また、防水床と建築躯体との間に多孔質状の吸音材を配設することにより、階下への騒音を防止していた(例えば、特許文献1参照。)。
また、浴室ユニットが載置される浴室下地材として、ロックウール成形パネル、発泡アルミパネル、磁気テープ成形パネル等の多孔質状のパネルから形成されたものが用いられていた(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開平8─120956号公報(第2〜3頁、第2図及び第5図)
【特許文献2】
特開平10─131347号公報(第2〜3頁、第1〜6図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1記載の浴室の防音構造では、制振材としてゴムアスファル系シートを貼付しているが、ゴムアスファル系シートは損失正弦がそれほど高くないために、十分な制振性を有するものではなく、十分な防音性能が得られない。
【0005】
ゴムアスファル系シートに代えて鉛シートを貼り合わせることも考えられるが水回りには環境規制物質が使用できない。また、ゴムアスファル系シートに加え、吸音材を併用して浴室ユニットと床下地との間に敷設しているが、足音やジャプ音、ボルトの落下音等の低周波帯域の固体伝播音を遮断するには効果が少なく防音性能が得られない。
【0006】
また、特許文献2に記載の浴室の防音構造では、浴室下地にロックウール成形パネルや磁気テープ成形パネル等の多孔質状のパネルを用いているが、この吸音材は、足音等の低周波帯域(125Hz〜250Hz)の固体伝播音を遮断するには効果が少なく十分な防音性能が得られない。浴室等の湿気が高く乾燥し難い場所での使用においては、施工の不具合によっては、多孔質パネルの孔に水分が浸み込み、十分な吸音性能を発現しないことがある。
【0007】
本発明の目的は、上記問題を解決し、浴室ユニット内で発生した各種音による階下への騒音伝播を逓減することのできる浴室の防音構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明による浴室の防音構造は、階下に居住空間を有する浴室の防音構造において、浴室ユニットの少なくとも防水床または壁パネルの裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シートの片面が貼り合わせられ、該制振シートの他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材が貼り合わせられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項1の発明において、制振シート用の有機高分子材料は、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上であれば、特に限定されないが、極性基を有する高分子材料が好ましい。このような高分子材料の例として、クロロプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、フッ素系ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、クロロスルフォン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、フッ素系ポリマー、臭素系ポリマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0010】
有機高分子材料のハロゲン含有量は、少なすぎると制振性が低下し、多すぎると制振シートが硬くなりすぎて成形が難しくなるので、好ましくは20〜70重量%である。
【0011】
有機高分子材料には必要に応じて可塑剤が添加されてもよい。特に有機高分子材料が硬過ぎる場合、可塑剤を添加するのが好ましい。可塑剤としては、通常、塩化ビニル系樹脂に使用されるものが使用でき、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジイソノニル、テトラブロモフタル酸ジ−2−エチルヘキシル等のフタル酸系可塑剤;トリクレジンホスフェート、トリス(1,3−ジシクロ−2−プロピル)ホスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル系可塑剤;エポキシ系可塑剤;ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。植物油系の可塑剤も好ましい。塩素化パラフィンのブリードアウトを抑制するには、フタル酸系可塑剤が好ましい。これらは単独で用いても、2種類以上組み合わせ用いてもよい。フタル酸系可塑剤以外の可塑剤を用いる場合には、これにフタル酸系可塑剤と併用するのが好ましい。
【0012】
可塑剤の配合量は、有機高分子材料100重量部に対し50〜200重量部、好ましくは60〜180重量部、より好ましくは100重量部以下である。この範囲でブリードアウトが抑制でき、制振効果も発現できる。
【0013】
有機高分子材料には必要に応じて充填材が添加されてもよい。特に、樹脂組成物にある程度の硬さを付与したいときは、充填材を添加するのがよい。充填材としては、鉄粉、アルミニウム粉、銅粉等の金属粉;マイカ、カオリン、モンモリロナイト、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸マグネシウム、結晶性炭素(グラファイト等)、バーミキュライト等の無機質充填材などが例示される。これらは、単独で用いられても、2種類以上併用されてもいい。充填材の量は、多すぎると樹脂組成物の制振性が低下するので、有機高分子材料100重量部に対して、好ましくは300重量部以下である。
【0014】
有機高分子材料からなる制振シートの作製方法は、特に限定されず、例えば押出成形法、カレンダー成形法、溶剤キャスト法等の一般的なシート成形方法であってよい。得られたシートを所要サイズにカットして浴室の防音構造の構成に供する。
【0015】
請求項1の発明において、拘束部材は、縦弾性係数が1GPa以上であるものであれば特に限定されないが、制振シート用の有機高分子材料より縦弾性係数が大きい材料がよく、十分な制振効果を奏するためには、10GPa以上であることが好ましい。
【0016】
このような拘束部材の例として、鉛、鉄、鋼材(ステンレス鋼を含む)、アルミニウム(アルミニウム合金を含む)等の金属材料;コンクリート、石膏ボード、大理石、スレート板、砂板、ガラス等の無機材料;ポリカーボネート、ポリサルフォン等のビスフエノールA変性樹脂;ポリ(メタ)アクリレートなどのアクリル樹脂;塩化ビニル系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂等の塩素系樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系ゴム等のゴム系材料;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の飽和ポリエステル;スチレン系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、アラミド(芳香族ポリアミド)等のポリアミド系樹脂;メラミン系樹脂;ポリイミド系樹脂;ウレタン系樹脂;ジシクロペンタジエン、ベークライト等の熱硬化性樹脂;木、紙等のセルロース系材料;キチン、キトサンなどからなる板材またはシートが挙げられる。
【0017】
これらは単独で用いても、2以上の組み合わせで用いてもよい。拘束部材はガラス繊維、カーボン繊維、液晶などで補強されていてもよく、互いに異なる材料からなる複合板であってもよく、さらに、これらの材料からなる発泡体であってもよい。
【0018】
拘束部材の形状は、好ましくはシート状である。金属製の拘束部材の場合には、メッキや塗装等の防錆処理を施すのが好ましい。平滑な金属板からなる拘束部材は反射率が大きくなる傾向を有するので、表面に凹凸を設ける、孔を開ける、拘束部材を無機材にする、などにより反射率を低減させるのが好ましい。孔径は、孔が汚れなどで塞がれないようにまた孔内に水が浸透しないように、直径3〜20mm程度にするのがよい。拘束部材が振動していても、拘束部材の縦弾性係数があまり低下しなければ、表面の凹凸や孔開けなどで防音効果は増す傾向にある。
【0019】
請求項1の発明において、制振シートおよび拘束部材の厚みは任意であってよいが、薄すぎると制振性能が劣り、厚すぎると浴室の防水床や壁パネルの厚みが大きくなるので、制振シートの厚みは好ましくは0.1〜5.0mmである。
また、拘束部材の厚みは好ましくは0.05〜5.0mmであり、縦弾性係数が10GPa以上の硬い拘束部材の場合は、厚みは好ましくは0.05〜2.0mmである。
【0020】
請求項2の発明による浴室の防音構造は、請求項1の発明において、有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物であることを特徴とするものである。
【0021】
請求項2の発明において、有機高分子材料を構成する塩素系高分子材料は、請求項1の制振シート用の有機高分子材料のうち塩素系のものが挙げられ、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリエチレン系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0022】
塩素系高分子材料の塩素含有量は、少なすぎると制振性が低下し、多すぎると制振シートが硬くなりすぎて成形が難しくなるので、20〜70重量%とするのがよい。
【0023】
請求項2の発明において、有機高分子材料を構成する塩素化パラフィンは、炭素数が10〜50で、塩素含有量が30〜70重量%であるものであれば、限定されず、液状のものでも固体のものでもよい。塩素化パラフィンは、単一物質からなるものでも、2以上の物質の混合物でもよい。
【0024】
塩素化パラフィンの炭素数は、小さすぎると塩素化パラフィンがブリードアウトしてしまい、大きすぎると十分な制振性が発現しないため、好ましくは12〜50であり、塩素化パラフィンが1種類で使用される場合、好ましくは12〜20、より好ましくは12〜16である。
【0025】
塩素化パラフィンの塩素含有量は、少なすぎると、充分な制振性が発現せず、且つ、塩素化パラフィンが塩素系高分子材料と相溶しにくくブリードアウトする恐れがあり、多すぎると、やはり塩素化パラフィンが塩素系高分子材料と相溶しにくくブリードアウトする恐れがあるので、30〜70重量%とするのがよい。塩素化パラフィンの塩素含有量が塩素系高分子材料の塩素含有量に近いほど、制振性が良くなるので、塩素系高分子材料の塩素含有量に従って、塩素化パラフィンの塩素含有量を決めればよい。
【0026】
請求項2の発明の有機高分子材料において、塩素系高分子材料に対する塩素化パラフィンの量は、少なすぎると十分な制振性が得られず、多すぎると強度が小さくなって樹脂組成物が形態を保持しにくくなるため、塩素系高分子材料100重量部に対して100〜400重量部であることが好ましい。
【0027】
請求項2の発明において、樹脂組成物には必要に応じて可塑剤、充填材等が添加されてもよい。可塑剤、充填材の例示および添加量は請求項1におけるものと同じであってよい。
【0028】
請求項3の発明による浴室の防音構造は、請求項1の発明において、有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物(ただし第1塩素化パラフィンの割合が全塩素パラフィン中40重量%以上である)とからなる樹脂組成物であることを特徴とするものである。
【0029】
請求項3の発明において、有機高分子材料を構成する塩素系高分子材料は、請求項1の制振シート用の有機高分子材料のうち塩素系のものであってよく、例えば、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩素化ポリエチレン系樹脂、塩素化塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。
【0030】
塩素系高分子材料の塩素含有量は、少なすぎると制振性が低下し、多すぎると制振シートが硬くなりすぎて成形が難しくなるので、20〜70重量%とするのがよい。
【0031】
請求項3の発明の有機高分子材料において、塩素化パラフィンは、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物である。このように炭素数が互いに異なる2種の塩素化パラフィンを用いることにより、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させ、すぐれた制振性を得ることができる。
【0032】
この場合、第1塩素化パラフィンの割合を全塩素パラフィン中40重量%以上にすると、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させるとともに長期に亘って維持することができ、且つ、塩素化パラフィンの制振シートからのブリードアウトを抑制させることができるので好ましい。
【0033】
請求項3の発明の有機高分子材料において、塩素系高分子材料に対する塩素化パラフィン混合物の量は、少なすぎると十分な制振性が得られず、多すぎると強度が小さくなって樹脂組成物が形態を保持しにくくなるため、塩素系高分子材料100重量部に対して50〜400重量部であることが好ましい。
【0034】
請求項3の発明の樹脂組成物には必要に応じて可塑剤、充填材等が添加されてもよい。可塑剤、充填材の例示および添加量は請求項1におけるものと同じであってよい。
【0035】
請求項1〜3の発明による浴室の防音構造を有した浴室ユニットを設置する方法は任意であってよい。すなわち、予め浴室ユニットの防水床および壁パネルの裏面に、制振シートおよび拘束部材を貼り合わせておき、これを現場に搬入して組み立て設置してもよく、あるいは防水床および壁パネルを現場に搬入してから、制振シートおよび拘束部材を貼り合わせて、浴室ユニットを組み立てて設置してもよい。いずれの場合にも施工性を良くするためには、予め制振シートと拘束部材を貼り合せて遮音部材を作製しておき、この遮音部材を防水床と壁パネルのの裏面に、制振シート、拘束部材の順になるように貼付けて組み立て部材を形成しておくのがよい。
【0036】
(作用)
請求項1の発明による浴室の防音構造は、浴室ユニットの少なくとも防水床または壁パネルの裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シートの片面が貼り合わせられ、該制振シートの他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材が貼り合わせられているので、浴室ユニットの重量増加を最小限に抑えて、優れた制振性能を有する制振シートが振動を吸収し、高い防音性能を有する。
【0037】
請求項2の発明による浴室の防音構造では、有機高分子材料として、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物を用いるので、一層優れた制振性能を有する浴室の防音構造が得られる。
【0038】
請求項3の発明による浴室の防音構造では、有機高分子材料として、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物(ただし第1塩素化パラフィンの割合が全塩素パラフィン中40重量%以上である)とからなる樹脂組成物を用いるので、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させるとともに長期に亘って維持することができ、且つ、塩素化パラフィンの制振シートからのブリードアウトを抑制させることができる。
【0039】
請求項2および3の樹脂組成物は塩素化パラフィンを含むので、適度な粘着性を有し、制振シートと拘束部材とを貼り合わせる際、および制振シートと拘束部材との貼り合わせ体を、防水床や壁パネルに制振シート側で貼り合わせる際、粘着剤や両面テープが必要でなく施工性が良い。特に、防水床のコーナー部等の曲面に馴染しで貼り合わせることができ、水分による密着性の低下がなく、湿気が回り込むような環境にある浴室等には好適に使用できる。
【0040】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0041】
図1は、本発明による浴室の防音構造を示すもので、浴室ユニット1は階上(2F)の浴室に設置されている。この浴室ユニット1は防水床2と浴槽3と壁パネル4と図示しない天井パネルから構成されている。
防水床2の洗い場21の側方の浴槽載置部22に浴槽3が載置され、防水床2の四方周辺には壁パネル4が立設されている。
【0042】
防水床2および壁パネル4の裏面に、図2に示すように、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シート5が貼り合わせられており、且つ縦弾性係数が1GPa以上であるシート状拘束部材6が制振シート5に貼り合わせられている。なお、制振シート5とシート状拘束部材6とは、予め貼り合わされて遮音部材7を形成し、防水床2および壁パネル4の裏面に貼り合わされてもよい。
【0043】
以下、本発明の具体的実施例を比較例とともに説明する。
【0044】
実施例1
塩素化ポリエチレン(昭和電工社製、商品名「エラスレン402NA」、塩素含有量40重量%)100重量部と、塩素化パラフィン(旭電化社製、品番「E500」、塩素含有量50重量%、平均炭素数14、炭素数12〜16=99重量%)200重量部と、塩素化パラフィン(味の素ファインテクノ社製、商品名「エンパラ70」、塩素含有量70重量%、平均炭素数26、炭素数20〜50=99重量%)100重量部とをロール練り機で混練し、得られた樹脂混練物を120℃でプレスして、厚み0.5mmの制振シート5を得た。樹脂混練物の損失正弦(tanδ)のピーク値は3.5であった。
【0045】
制振シート5に、シート状拘束部材6として厚み0.2mmの鋼板(中村商事社製、縦弾性係数250GPa)を、制振シート5の粘着性を利用して貼り合わせ、遮音部材7を作製した。
【0046】
この遮音部材7を、浴室ユニット(セキスイ浴室ユニットFPN─1216:積水化学工業株式会社製)の防水床2と壁パネル4の裏面に、制振シート5を片面側にして制振シート5の粘着性を利用して貼り合わせ、浴室の防音構造を形成した。
【0047】
この遮音部材7が浴室ユニット1の裏側に来るように防水床2と壁パネル4を組み立てて、建物躯体のスラブ10の厚さが150mmで、横×奥行き×高さが4m×5.5m×2.5mの大きさの上階(2F)の部屋に設置した。
【0048】
実施例2
壁パネル4に遮音部材7を貼り合わせなかった以外は実施例1と同じである。
【0049】
実施例3
厚み1.0mmの制振シート5に、シート状拘束部材6として厚み0.4mmの鋼板を貼り合わせたこと以外は実施例2と同じである。
【0050】
上記実施例1〜3において、浴槽3には水180リットルを張って、床衝撃音レベルの測定を行った。
加振の方法は、JIS A 1418─1に基づく標準軽量衝撃源によるもので、防水床2の洗い場21の中央にタッピングマシン(型式F1−01、リオン社製)を置き加振した。
騒音レベルの計測は、階下(1F)の天井9から2mの高さ位置で騒音計によりオールパス騒音レベルを計測した。その結果は表1に示す通りである。
【0051】
また、制振シートの防水床2への密着性の耐久性試験を行った。
防水床2の湾曲部Cの曲面に100×200mmの大きさの制振シート5と拘束部材6を貼付て、80℃の温水に20日間親戚した後、剥がれの状態を目視で評価した。その結果は表1に示す通りである。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1
浴室ユニット1の防水床2および壁パネル4には遮音部材7を貼り合わせなかった。それ以外は実施例1と同じである。
【0054】
比較例2
遮音部材7に代えて、厚さが1.5mmのゴムシート(商品名:サンダムDM、ゼオン化成社製)を防水床2の裏面に貼り合わせた。それ以外は実施例2と同じである。
【0055】
比較例3
遮音部材7に代えて、厚さが0.5mmの鉛シート(東邦亜鉛社製AP−2)を防水床2の裏面に貼り合わせた。それ以外は実施例2と同じである。
【0056】
比較例4
浴室ユニット1の防水床2および壁パネル4には遮音部材7を貼り合わせず、浴室の床下地上に50mmの吸音材としてのグラスウール(密度40キログラム/立方メートル)を敷設した。それ以外は実施例1と同じである。
【0057】
比較例1〜4について、前記実施例と同様の条件で等価騒音レベルを求めた。また,比較例2〜3について、前記実施例と同様の条件で、シートの密着性の耐久性試験を行った。その結果は表2に示す通りである。
【0058】
【表2】
【0059】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、優れた制振性能を有する制振シートが振動を吸収し、高い防音性能を有する。しかも、優れた防音効果を有するので、浴室の防音構造の薄肉化が可能になる。
【0060】
請求項2の発明によれば、一層優れた制振性能を有する浴室の防音構造が得られる。特に、防水床のコーナー部等の曲面に馴染しで貼り合わせることができ、水分による密着性の低下がなく、湿気が回り込むような環境にある浴室等には好適に使用できる。
【0061】
請求項3の発明によれば、損失正弦(tanδ)のピーク値をより上昇させるとともに長期に亘って維持することができ、且つ、塩素化パラフィンの制振シートからのブリードアウトを抑制させることができる。特に、防水床のコーナー部等の曲面に馴染しで貼り合わせることができ、水分による密着性の低下がなく、湿気が回り込むような環境にある浴室等には好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による浴室の防音構造を説明する断面図である。
【図2】図1における浴室の防音構造の要部を拡大した図で、同図(a) は防水床のA部を示し、同図(b) は壁パネルのB部を示し、同図(c) は防水床のコーナー部Cを示した断面図である。
【符号の説明】
1 浴室ユニット
2 防水床
3 浴槽
4 壁パネル
5 制振シート
6 拘束部材
7 遮音部材
Claims (3)
- 階下に居住空間を有する浴室の防音構造において、浴室ユニットの少なくとも防水床または壁パネルの裏面に、損失正弦(tanδ)のピーク値が1.5以上である有機高分子材料からなる制振シートの片面が貼り合わせられ、該制振シートの他面に、縦弾性係数が1GPa以上である拘束部材が貼り合わせられていることを特徴とする浴室の防音構造。
- 有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数10〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の少なくとも1種の塩素化パラフィンとからなる樹脂組成物であることを特徴とする請求項1記載の浴室の防音構造。
- 有機高分子材料が、塩素含有量20〜70重量%の塩素系高分子材料と、炭素数12〜16で且つ塩素含有量30〜70重量%の第1塩素化パラフィンおよび炭素数20〜50で且つ塩素含有量30〜70重量%の第2塩素化パラフィンの混合物(ただし第1塩素化パラフィンの割合が全塩素パラフィン中40重量%以上である)とからなる樹脂組成物であることを特徴とする請求項1記載の浴室の防音構造。
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KR20060009528A (ko) * | 2004-07-26 | 2006-02-01 | 김원대 | 건식공법용 방수판 및 그 제조방법 |
JP2011202466A (ja) * | 2010-03-26 | 2011-10-13 | Cci Corp | 浴室の床構造 |
JP2017036548A (ja) * | 2015-08-07 | 2017-02-16 | フクビ化学工業株式会社 | 制振体及びそれを用いた天井構造 |
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