JP2004123432A - 高抵抗低損失フェライト - Google Patents
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Abstract
【課題】高抵抗で、かつ、300kHz以上の高周波領域で低損失であるMn−Zn系のフェライトを得ることを目的とする。
【解決手段】Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有することを特徴とした。
【選択図】 図1
【解決手段】Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有することを特徴とした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、チューブ溶接の溶接用フェライトロッド(インピーダコア)に用いるのに適したMn−Zn系の高抵抗低損失フェライトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶接用フェライトロッド材は、インピーダコアとも称され、パイプ(チューブ)を溶接で形成する際に用いられる。図2に示すように、図の左側から右側へ連続して供給される鋼板は、誘導コイル2の手前に設置される数段のロール(図示せず)により、鋼板の両端部にわずかに隙間がある状態にまでパイプの近似形状に丸められる。その鋼板4が誘導コイル2内を通る際に、鋼板の両端部に生じる渦電流による発熱のために高温となり、その直後の前記誘導コイル2の後段に設置されたロール6によって両端部同士が溶接されてパイプ4となる。
ここで、インピーダコア1は、磁気回路の効率を良くするためのヨークのように機能する。インピーダコア1はインピーダケース3内を流れる冷却水5によって冷却されるが、前記インピーダコア1は400kHzもの高周波で励磁され、インピーダコア1を構成する磁性材料がパワーロスの大きなものでは発熱が大きく問題となる。
【0003】
従来の低損失フェライトとしては、電源トランス用のMn−Zn系フェライトが良く知られており、CaO、及びSiO2を添加して結晶粒界に高抵抗層を形成し、高周波での損失を減少させている。例えば、特許文献1には、MnO,ZnO,Fe2O3を主成分とし、副成分としてCaOを0.03〜0.1重量%、SiO2を0.005〜0.05重量%、更にTiO2を0.1〜0.4重量%、Nb2O5を0.005〜0.06重量%複合添加含有したことを特徴とする電源トランス用低損失フェライトが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、MnO,ZnO,及びFe2O3を主成分とするMn−Zn系フェライト焼成体を酸化性雰囲気で熱処理することにより、表面が高抵抗で絶縁性に優れたフェライトを製造する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、MnO,ZnO,及びFe2O3を主成分とするMn−Znフェライトの焼成において、昇温過程および焼成温度保持過程の初期の雰囲気中の酸素濃度PO2を1%以下とし、かつ、焼成後下記の式で規定される範囲内の酸素雰囲気で冷却することを特徴とする低損失Mn−Znフェライトの製造方法が開示されている。
logPO2=a−2000/(T+273)
13.6≦a≦14.3、PO2≦10
PO2:酸素濃度(%)、T:温度(℃)、a:定数
【0006】
【特許文献1】
特開平7−297018号公報
【特許文献2】
特開平4−354304号公報
【特許文献3】
特開平5−217734号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
チューブ溶接の溶接用フェライトロッド(インピーダコア)等の高周波で用いられる用途では電気抵抗率が2Ω・m以上の高抵抗で、かつ電力揖失の小さい低損失フェライトが必要であるが、従来この様な高抵抗低損失なフェライトは無かった。
そこで、本発明は、上記の事を鑑みて、副成分としてのCaO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、及びV2O5の含有量に着目し、最適な含有量により、高抵抗で、かつ、300kHz以上の高周波領域で低損失であるMn−Zn系のフェライトを得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有する高抵抗低損失フェライトである。
本発明において、Fe2O3:52.5〜54.5mol%、MnO:36〜40mol%、ZnO:7〜11mol% とするのが好ましい。そして、電気抵抗率が2.0Ω・m以上であり、100℃で400kHzにおける電力損失が2000W/kg以下の高抵抗低損失フェライトである。本発明の高抵抗低損失フェライトは、溶接用ロッド材として最適である。
【0009】
第2の発明は、Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5を含有する高抵抗低損失フェライトの製造方法であって、焼成昇温工程、焼成温度保持工程において焼成雰囲気中の酸素濃度PO2を10〜21%とし、焼成冷却工程における酸素濃度を下記式に示す範囲で制御する高抵抗低損失フェライトの製造方法である。
酸素濃度PO2(%)の上限が、
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が、
logPO2=7.1−9400/(T+273)
第2の発明において、前記焼成温度保持工程にける焼成保持温度は1240〜1290℃であり、焼成冷却工程の焼成保持温度〜900℃の温度範囲において、焼成雰囲気中の酸素濃度PO2を前記のように制御することにより、高抵抗低損失フェライトを得ることが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の高抵抗低損失フェライトは、Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有する。
前記高抵抗低損失フェライトは、焼成後に前記組成となるように調整された出発原料を乾燥後、バインダを1.0wt%添加し、造粒、成形して成形体とし、これを焼成保持温度1240〜1290℃、酸素濃度(PO2)10〜21%の雰囲気中にて焼成し、その後、雰囲気中の酸素濃度を下記の式に示す範囲で制御しながら冷却を行ない作製される。
酸素濃度PO2(%)の上限が、
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が、
logPO2=7.1−9400/(T+273)
【0011】
本発明において、添加物の各成分範囲を限定した理由は以下のとおりである。CaOが150ppmより少ないと電気抵抗が低下するため、高周波領域における渦電流損失が増大し電力損失が大きくなり、600ppmより多いと軟磁気特性が劣化するため電力損失が大きくなる。SiO2が60ppmより少ないと電気抵抗が低下し、400ppmより多いと異常焼結が起こり電力損失が増大する。Nb2O3及びTa2O5が本発明の範囲より少ないと、電気抵抗が低下し、高周波領域における損失が増大し、本発明の範囲より多いと、異常焼結し、損失が増大する。また、V2O5は結晶粒成長を促進し、低損失を達成するために添加したが、200ppm未満ではその添加効果が得られず、1000ppmより多いと損失が増大する。また、上記添加物の内で主にCaO、およびSiO2が結晶粒界に高抵抗層を形成し、高周波での損失を減少させることに有効であるが、チューブ溶接のヨーク材等に用いるMn−Zn系フェライトにおいては、一般に300kHz以上の高周波で、かつ、大きな励磁電流が印加された状態で使用されるため、結晶粒界の高抵抗層のみでは材料全体の抵抗値が十分な大きさにはならず、渦電流損失による発熱が多くなり長時間の使用に耐えることができない。従って、本発明では結晶粒界ばかりではなく結晶粒自体も高抵抗とするため、焼成保持温度、焼成雰囲気中の酸素濃度、およびその後の冷却雰囲気中の酸素濃度を制御することによって、高抵抗材料を得た。
また主成分組成をFe2O3:52.5〜54.5mol%、MnO:36〜40mol%、ZnO:7〜11mol% として各成分範囲を限定した理由は、下記のとおりである。Fe2O3が52.5mol%より少ないと実際にチューブ溶接のヨーク材等として使用される際に、その動作温度付近での損失が大きくなり、Fe2O3が54.5mol%より多いと高周波領域における渦電流損失が増大し電力損失が大きくなる。MnOが36mol%より少ないとヨーク材等に必要な動作温度付近での高磁束密度が得られず、MnOが40mol%より多いと必要な材料強度を満たすだけの焼結密度を得ることが難しくなる。
ZnOが7mol%より少ないと材料の焼結が進みにくく、11mol%より多いと動作温度付近での高磁束密度を得にくくなる。
【0012】
Mn−Zn系フェライトにおいては、焼成雰囲気ばかりではなく、冷却雰囲気における酸素濃度の制御も重要であることは従来から知られていたが、本発明の高抵抗低損失フェライトでは、焼成時および冷却時に使用されていた従来の酸素濃度の範囲よりも高濃度側の領域で、所定の酸素濃度範囲となるように焼成、および冷却の雰囲気を精密に制御することにより、高抵抗低損失フェライトの外表面のみならず内側まで高抵抗化し、さらに300kHz以上の高周波で低損失な材料を実現した。
本発明の高抵抗低損失フェライトの作製において、焼成温度、焼成雰囲気中の酸素濃度、および冷却雰囲気中の酸素濃度の範囲を限定した理由は以下のとおりである。
焼成温度が1240℃未満では、焼結密度が低いために十分な軟磁気特性が得られず損失が大で、1290℃を超えると電気抵抗率が低くなる。焼成雰囲気中の酸素濃度が10%未満では電気抵抗率が低く、21%を超えると損失が大となる。また、冷却雰囲気中の酸素濃度が前記した範囲の上限より高い場合は損失が大となり、その範囲の下限より低い場合は電気抵抗率が低くなる。
【0013】
【実施例】
(実施例1)
Fe2O3(53mol%),MnO(38mol%),ZnO(9mol%)を主成分とする原料をボールミルにて混合後、900℃にて仮焼成し、副成分として、CaOに換算して250ppmとなる適量のCaCO3,SiO2を100ppm,Ta2O5を50ppm、Nb2O5を150ppm、V2O5を500ppm複合添加し、ボールミルにて12時間粉砕した.但し、CaO,SiO2のように、予め原料に含有されている副成分については、仮焼成後に添加する量をその分だけ減じ、全体として上記成分の割合に一致する様にした。この粉砕原料を乾燥後、バインダを1.0wt%添加し、造粒、成形した。この成形体を焼成保持温度1240〜1290℃、酸素濃度10〜21%の雰囲気中にて4時間焼成し、その後雰囲気中の酸素濃度を下記の式に示す範囲で制御しながら冷却を行なった。
酸素濃度PO2(%)の上限が
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が
logPO2=7.1−9400/(T+273)
なお、焼成体の形状は、外径29mm、内径19mm、高さ10mmのリング状とした。
また同様の試料作製工程において、添加量を変えて各試料を作製した。その特性評価の結果を表1に、冷却過程における雰囲気中の酸素濃度の制御範囲を図1に示す。上記5種類の添加物の量、昇温過程における雰囲気中の酸素濃度、焼成における保持温度と雰囲気中の酸素濃度、および冷却過程における雰囲気中の酸素濃度を適切な範囲に制御することによって、高抵抗で、かつ、高周波で低損失な材料を得ることができた。
【0014】
【表1】
【0015】
実施例1と同様の試料作製工程によって、焼成体の形状が外径10mm、長さ200mmの棒状としチューブ溶接のヨークを作製した。得られた試料を、チューブ溶接のヨーク材として用いた場合の温度上昇について表2に示す。表1における実施例の試料に対応するヨーク材は温度上昇が小さく、高抵抗で、かつ、高周波で低損失な材料の特長が生かされていることが分かった。
【0016】
【表2】
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、CaO、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5の添加量を各々適切な値に設定し、焼成保持温度、焼成雰囲気中の酸素濃度、および冷却雰囲気中の酸素濃度を制御することにより、高抵抗で、かつ、300kHz以上の高周波領域であっても電力損失の小さい低損失Mn−Zn系フェライトを得ることができ、チューブ溶接の溶接用フェライトロッド(インピーダコア)等の高周波で用いられる用途に適した高抵抗で電力揖失の小さい材料を実用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る高抵抗低損失フェライト製造での冷却過程における雰囲気中の酸素濃度の制御範囲を示す図。
【図2】フェライトロッドによるチューブ溶接を説明するための模式図。
【符号の説明】
1 インピーダコア
2 誘導コイル
3 インピーダケース
4 鋼板(パイプ)
5 冷却水
6 ロール
【発明の属する技術分野】
本発明は、チューブ溶接の溶接用フェライトロッド(インピーダコア)に用いるのに適したMn−Zn系の高抵抗低損失フェライトに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
溶接用フェライトロッド材は、インピーダコアとも称され、パイプ(チューブ)を溶接で形成する際に用いられる。図2に示すように、図の左側から右側へ連続して供給される鋼板は、誘導コイル2の手前に設置される数段のロール(図示せず)により、鋼板の両端部にわずかに隙間がある状態にまでパイプの近似形状に丸められる。その鋼板4が誘導コイル2内を通る際に、鋼板の両端部に生じる渦電流による発熱のために高温となり、その直後の前記誘導コイル2の後段に設置されたロール6によって両端部同士が溶接されてパイプ4となる。
ここで、インピーダコア1は、磁気回路の効率を良くするためのヨークのように機能する。インピーダコア1はインピーダケース3内を流れる冷却水5によって冷却されるが、前記インピーダコア1は400kHzもの高周波で励磁され、インピーダコア1を構成する磁性材料がパワーロスの大きなものでは発熱が大きく問題となる。
【0003】
従来の低損失フェライトとしては、電源トランス用のMn−Zn系フェライトが良く知られており、CaO、及びSiO2を添加して結晶粒界に高抵抗層を形成し、高周波での損失を減少させている。例えば、特許文献1には、MnO,ZnO,Fe2O3を主成分とし、副成分としてCaOを0.03〜0.1重量%、SiO2を0.005〜0.05重量%、更にTiO2を0.1〜0.4重量%、Nb2O5を0.005〜0.06重量%複合添加含有したことを特徴とする電源トランス用低損失フェライトが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、MnO,ZnO,及びFe2O3を主成分とするMn−Zn系フェライト焼成体を酸化性雰囲気で熱処理することにより、表面が高抵抗で絶縁性に優れたフェライトを製造する方法が開示されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、MnO,ZnO,及びFe2O3を主成分とするMn−Znフェライトの焼成において、昇温過程および焼成温度保持過程の初期の雰囲気中の酸素濃度PO2を1%以下とし、かつ、焼成後下記の式で規定される範囲内の酸素雰囲気で冷却することを特徴とする低損失Mn−Znフェライトの製造方法が開示されている。
logPO2=a−2000/(T+273)
13.6≦a≦14.3、PO2≦10
PO2:酸素濃度(%)、T:温度(℃)、a:定数
【0006】
【特許文献1】
特開平7−297018号公報
【特許文献2】
特開平4−354304号公報
【特許文献3】
特開平5−217734号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
チューブ溶接の溶接用フェライトロッド(インピーダコア)等の高周波で用いられる用途では電気抵抗率が2Ω・m以上の高抵抗で、かつ電力揖失の小さい低損失フェライトが必要であるが、従来この様な高抵抗低損失なフェライトは無かった。
そこで、本発明は、上記の事を鑑みて、副成分としてのCaO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、及びV2O5の含有量に着目し、最適な含有量により、高抵抗で、かつ、300kHz以上の高周波領域で低損失であるMn−Zn系のフェライトを得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有する高抵抗低損失フェライトである。
本発明において、Fe2O3:52.5〜54.5mol%、MnO:36〜40mol%、ZnO:7〜11mol% とするのが好ましい。そして、電気抵抗率が2.0Ω・m以上であり、100℃で400kHzにおける電力損失が2000W/kg以下の高抵抗低損失フェライトである。本発明の高抵抗低損失フェライトは、溶接用ロッド材として最適である。
【0009】
第2の発明は、Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5を含有する高抵抗低損失フェライトの製造方法であって、焼成昇温工程、焼成温度保持工程において焼成雰囲気中の酸素濃度PO2を10〜21%とし、焼成冷却工程における酸素濃度を下記式に示す範囲で制御する高抵抗低損失フェライトの製造方法である。
酸素濃度PO2(%)の上限が、
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が、
logPO2=7.1−9400/(T+273)
第2の発明において、前記焼成温度保持工程にける焼成保持温度は1240〜1290℃であり、焼成冷却工程の焼成保持温度〜900℃の温度範囲において、焼成雰囲気中の酸素濃度PO2を前記のように制御することにより、高抵抗低損失フェライトを得ることが出来る。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の高抵抗低損失フェライトは、Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有する。
前記高抵抗低損失フェライトは、焼成後に前記組成となるように調整された出発原料を乾燥後、バインダを1.0wt%添加し、造粒、成形して成形体とし、これを焼成保持温度1240〜1290℃、酸素濃度(PO2)10〜21%の雰囲気中にて焼成し、その後、雰囲気中の酸素濃度を下記の式に示す範囲で制御しながら冷却を行ない作製される。
酸素濃度PO2(%)の上限が、
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が、
logPO2=7.1−9400/(T+273)
【0011】
本発明において、添加物の各成分範囲を限定した理由は以下のとおりである。CaOが150ppmより少ないと電気抵抗が低下するため、高周波領域における渦電流損失が増大し電力損失が大きくなり、600ppmより多いと軟磁気特性が劣化するため電力損失が大きくなる。SiO2が60ppmより少ないと電気抵抗が低下し、400ppmより多いと異常焼結が起こり電力損失が増大する。Nb2O3及びTa2O5が本発明の範囲より少ないと、電気抵抗が低下し、高周波領域における損失が増大し、本発明の範囲より多いと、異常焼結し、損失が増大する。また、V2O5は結晶粒成長を促進し、低損失を達成するために添加したが、200ppm未満ではその添加効果が得られず、1000ppmより多いと損失が増大する。また、上記添加物の内で主にCaO、およびSiO2が結晶粒界に高抵抗層を形成し、高周波での損失を減少させることに有効であるが、チューブ溶接のヨーク材等に用いるMn−Zn系フェライトにおいては、一般に300kHz以上の高周波で、かつ、大きな励磁電流が印加された状態で使用されるため、結晶粒界の高抵抗層のみでは材料全体の抵抗値が十分な大きさにはならず、渦電流損失による発熱が多くなり長時間の使用に耐えることができない。従って、本発明では結晶粒界ばかりではなく結晶粒自体も高抵抗とするため、焼成保持温度、焼成雰囲気中の酸素濃度、およびその後の冷却雰囲気中の酸素濃度を制御することによって、高抵抗材料を得た。
また主成分組成をFe2O3:52.5〜54.5mol%、MnO:36〜40mol%、ZnO:7〜11mol% として各成分範囲を限定した理由は、下記のとおりである。Fe2O3が52.5mol%より少ないと実際にチューブ溶接のヨーク材等として使用される際に、その動作温度付近での損失が大きくなり、Fe2O3が54.5mol%より多いと高周波領域における渦電流損失が増大し電力損失が大きくなる。MnOが36mol%より少ないとヨーク材等に必要な動作温度付近での高磁束密度が得られず、MnOが40mol%より多いと必要な材料強度を満たすだけの焼結密度を得ることが難しくなる。
ZnOが7mol%より少ないと材料の焼結が進みにくく、11mol%より多いと動作温度付近での高磁束密度を得にくくなる。
【0012】
Mn−Zn系フェライトにおいては、焼成雰囲気ばかりではなく、冷却雰囲気における酸素濃度の制御も重要であることは従来から知られていたが、本発明の高抵抗低損失フェライトでは、焼成時および冷却時に使用されていた従来の酸素濃度の範囲よりも高濃度側の領域で、所定の酸素濃度範囲となるように焼成、および冷却の雰囲気を精密に制御することにより、高抵抗低損失フェライトの外表面のみならず内側まで高抵抗化し、さらに300kHz以上の高周波で低損失な材料を実現した。
本発明の高抵抗低損失フェライトの作製において、焼成温度、焼成雰囲気中の酸素濃度、および冷却雰囲気中の酸素濃度の範囲を限定した理由は以下のとおりである。
焼成温度が1240℃未満では、焼結密度が低いために十分な軟磁気特性が得られず損失が大で、1290℃を超えると電気抵抗率が低くなる。焼成雰囲気中の酸素濃度が10%未満では電気抵抗率が低く、21%を超えると損失が大となる。また、冷却雰囲気中の酸素濃度が前記した範囲の上限より高い場合は損失が大となり、その範囲の下限より低い場合は電気抵抗率が低くなる。
【0013】
【実施例】
(実施例1)
Fe2O3(53mol%),MnO(38mol%),ZnO(9mol%)を主成分とする原料をボールミルにて混合後、900℃にて仮焼成し、副成分として、CaOに換算して250ppmとなる適量のCaCO3,SiO2を100ppm,Ta2O5を50ppm、Nb2O5を150ppm、V2O5を500ppm複合添加し、ボールミルにて12時間粉砕した.但し、CaO,SiO2のように、予め原料に含有されている副成分については、仮焼成後に添加する量をその分だけ減じ、全体として上記成分の割合に一致する様にした。この粉砕原料を乾燥後、バインダを1.0wt%添加し、造粒、成形した。この成形体を焼成保持温度1240〜1290℃、酸素濃度10〜21%の雰囲気中にて4時間焼成し、その後雰囲気中の酸素濃度を下記の式に示す範囲で制御しながら冷却を行なった。
酸素濃度PO2(%)の上限が
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が
logPO2=7.1−9400/(T+273)
なお、焼成体の形状は、外径29mm、内径19mm、高さ10mmのリング状とした。
また同様の試料作製工程において、添加量を変えて各試料を作製した。その特性評価の結果を表1に、冷却過程における雰囲気中の酸素濃度の制御範囲を図1に示す。上記5種類の添加物の量、昇温過程における雰囲気中の酸素濃度、焼成における保持温度と雰囲気中の酸素濃度、および冷却過程における雰囲気中の酸素濃度を適切な範囲に制御することによって、高抵抗で、かつ、高周波で低損失な材料を得ることができた。
【0014】
【表1】
【0015】
実施例1と同様の試料作製工程によって、焼成体の形状が外径10mm、長さ200mmの棒状としチューブ溶接のヨークを作製した。得られた試料を、チューブ溶接のヨーク材として用いた場合の温度上昇について表2に示す。表1における実施例の試料に対応するヨーク材は温度上昇が小さく、高抵抗で、かつ、高周波で低損失な材料の特長が生かされていることが分かった。
【0016】
【表2】
【0017】
【発明の効果】
本発明によれば、CaO、TiO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5の添加量を各々適切な値に設定し、焼成保持温度、焼成雰囲気中の酸素濃度、および冷却雰囲気中の酸素濃度を制御することにより、高抵抗で、かつ、300kHz以上の高周波領域であっても電力損失の小さい低損失Mn−Zn系フェライトを得ることができ、チューブ溶接の溶接用フェライトロッド(インピーダコア)等の高周波で用いられる用途に適した高抵抗で電力揖失の小さい材料を実用に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る高抵抗低損失フェライト製造での冷却過程における雰囲気中の酸素濃度の制御範囲を示す図。
【図2】フェライトロッドによるチューブ溶接を説明するための模式図。
【符号の説明】
1 インピーダコア
2 誘導コイル
3 インピーダケース
4 鋼板(パイプ)
5 冷却水
6 ロール
Claims (6)
- Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaOを150〜600ppm、SiO2を60〜400ppm、Ta2O5を20〜100ppm、Nb2O5を100〜500ppm、及びV2O5を200〜1000ppm含有することを特徴とする高抵抗低損失フェライト。
- 請求項1に記載の高抵抗低損失フェライトであって、Fe2O3:52.5〜54.5mol%、MnO:36〜40mol%、ZnO:7〜11mol% であることを特徴とする高抵抗低損失フェライト。
- 請求項1又は2に記載の高抵抗低損失フェライトであって、電気抵抗率が2.0Ω・m以上であり、100℃で400kHzにおける電力損失が2000W/kg以下であることを特徴とする高抵抗低損失フェライト。
- 請求項1乃至3のいずれかに記載の高抵抗低損失フェライトを用いることを特徴とするチューブ溶接用フェライトロッド。
- Fe2O3、MnO、ZnOを主成分とし、副成分としてCaO、SiO2、Ta2O5、Nb2O5、V2O5を含有する高抵抗低損失フェライトの製造方法であって、焼成昇温工程、焼成温度保持工程において焼成雰囲気中の酸素濃度PO2を10〜21%とし、焼成冷却工程における酸素濃度を下記式に示す範囲で制御することを特徴とする高抵抗低損失フェライトの製造方法。
酸素濃度PO2(%)の上限が、
logPO2=4.23−4500/(T+273)
酸素濃度PO2(%)の下限が、
logPO2=7.1−9400/(T+273) - 前記焼成温度保持工程にける焼成保持温度が1240〜1290℃であり、焼成冷却工程の焼成保持温度〜900℃の温度範囲において、焼成冷却工程の雰囲気中の酸素濃度PO2を制御することを特徴とする高抵抗低損失フェライトの製造方法。
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