JP5735353B2 - MnZnAlCo系フェライト - Google Patents

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Description

本発明は、数十kHz〜数十MHzの高周波帯域で使用される表面実装パワーインダクタなどに好適に用いられるMnZnAlCo系フェライトに関し、特に初透磁率μiおよび飽和磁束密度Bsが高く、比抵抗が10Ωm以上であり、10kHz〜1MHzまでのμiが平坦な周波数特性を有する高抵抗高飽和磁束密度のMnZnAlCo系フェライトに関する。
表面実装パワーインダクタ用磁芯としては、従来から、電気抵抗の高いNiZn系フェライトの低背型ドラムコアが広く用いられている。しかし、近年のCPU駆動電圧低下に伴う大電流化の進展により、飽和磁束密度Bsが低いNiZn系フェライトでは、磁気飽和を起こし易いという問題が生じている。そのため、NiZn系フェライトをよりBsの高いMnZn系フェライトへ置き換えることが検討されている。
NiZn系フェライトの比抵抗は10Ωm以上であり絶縁性が高いため、これを表面実装パワーインダクタ用磁芯として使用する場合には、ドラム形状のコアに直接巻線を施したり、ドラムの鍔部(フランジ部)に直接電極端子を付けたりすることができる。しかし、MnZn系フェライトの比抵抗は10Ωm以下と低いため、直接巻線を施したり、直に電極を形成したりすることは難しく、何らかの絶縁処理が必要となっていた。そのため、NiZn系フェライトコアをそのままMnZn系フェライトコアに置き換えることは従来困難とされていた。そこで、MnZn系フェライトの高い飽和磁束密度Bsと初透磁率μiを維持しつつ、NiZn系フェライト並みの比抵抗(10Ωm以上)を有する高抵抗高飽和磁束密度のMnZn系フェライトの開発が求められていた。
ここで、MnZn系フェライトの比抵抗を高める従来技術としては、MnZnCoフェライトのFe配合比を50mol%未満の鉄欠乏組成とする方法が開示されている(特許文献1,2参照)。
特許文献1,2の技術によれば、10Ωm程度まで比抵抗を高め、2MHz程度の高周波のコアロスの低減効果や100kHzにおける初透磁率μiの増大効果を得ることができる。しかし、フェライトコアに直接巻線を施すためには、さらに2桁以上の比抵抗の増大が必要とされる。また、コアロス低減やμi増大に特化した上記従来技術では、昨今の表面実装インダクタ用磁芯に求められている電磁気特性、すなわち、Bs≧450mTで、比抵抗≧10Ωmであり、かつ、10kHz〜1MHzの高周波帯域において高く平坦なμiの周波数特性を有するという電磁気特性を全て満たすフェライトコアを得ることはできなかった。
特許文献3には、初透磁率が広い周波数帯域で維持されたMnZn系フェライトとして、基本成分が、Fe:44.0〜50.0mol%(ただし、50.0mol%は除く)、ZnO:4.0〜26.5mol%、残部MnOからなり、1kHzにおける複素比誘電率実数部ε´が20000以下でかつ1MHzにおける複素比誘電率実数部ε´が50以下であることを特徴とするMnZn系フェライトが開示されている。
しかし、特許文献3の技術によっても、10Ωm程度まで比抵抗を高められるに過ぎない。
特開2001−261344号公報 特開2001−220221号公報 特開2003− 59712号公報
そこで本発明は、上記課題に鑑み、Bs≧450mTで、比抵抗≧10Ωmであり、かつ、10kHz〜1MHzの高周波帯域において高く平坦なμiの周波数特性を有するという電磁気特性を全て満たす、表面実装インダクタ磁芯に適した高抵抗高飽和磁束密度のMnZnAlCo系フェライトを提供することを目的とする。
発明者らは、基本成分の中でも配合量の多いFe,MnOおよびZnOの配合比を決定するために、比抵抗の高いFe<50mol%の組成域で、MnOとZnOの配合比を種々に変化させてフェライトコアを作製し、それぞれの成分が飽和磁束密度Bs、比抵抗、初透磁率μiに及ぼす影響を調べた。その結果、高い比抵抗の得られるFe<50mol%の組成域では、10kHz付近の低周波帯域では周波数に依存しない一定のμi値が得られるが、100kHz付近から徐々にμiが低下し始め、1MHz程度の高周波域まで平坦なμiの周波数特性を得ることができないことがわかった。
そこで、発明者らは、μiが高周波域で低下する原因を詳細に調べた結果、Fe<50mol%の組成域では、周波数と温度に依存する損失成分tanδのピークが100kHzを超える高周波帯域に存在し、その影響で100kHzを超える高周波帯域のμi値が低下することが明らかになった。この高周波損失が発生する原因について、発明者らは以下のように推測している。Fe<50mol%の組成域では、Feが50mol%の化学量論組成よりもFe含有量が少ないために、スピネル構造のBサイトのFe3+が欠乏しており、本来はMn2+としてBサイトに分布しているMnイオンの一部が電気的中性を維持するためにMn3+となり、100kHzを超える高周波帯域で励磁されたときに、Mn2+−Mn3+間の電子の拡散現象が起こり、この結果として、周波数と温度に依存した高周波損失が発生するものと考えられる。
そこで、本発明者らは、Fe<50mol%の組成域におけるMn3+の生成を抑制する方法を検討した。その結果、Mn3+よりもBサイト選択性が高い成分として、スピネル構造の名前の由来であるスピネルMgAlのBサイトに位置するAlをMnZn系フェライトに導入すれば、Mn2+−Mn3+間の電子の拡散現象を抑え、高周波磁気損失を低減できることを見出した。
さらに、Fe<50mol%の組成域では比抵抗が高いとはいえ、10Ωm程度であり、これを10Ωm以上とするべく鋭意検討した。その結果、Fe<50mol%の鉄欠乏組成に対して、上記の所定量Al添加に加えて、SiOおよびCaOを副成分として所定量添加することで、10Ωm以上の比抵抗が得られることを見出した。さらに、このような副成分を添加する場合でも、AlをMnZn系フェライトに導入することで高周波磁気損失を低減する効果は維持できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、上記課題に鑑み、本発明の要旨構成は以下の通りである。
(1)酸化鉄(Fe換算):46.0〜49.8mol%、
酸化亜鉛(ZnO換算):2.0〜18.0mol%、
酸化アルミニウム(Al換算):0.1〜1.5mol%、
酸化コバルト(CoO換算):0.1〜3.0mol%、
酸化マンガン(MnO換算):残部
からなる基本成分中に、さらに副成分として、
酸化ケイ素(SiO換算)と酸化カルシウム(CaO換算)を、合計で100〜2500質量ppm含有し、かつ、酸化ケイ素(SiO換算)と酸化カルシウム(CaO換算)の混合比率を、モル%にして、酸化ケイ素(SiO換算):0超え40以下に対し、酸化カルシウム(CaO換算):60以上100未満とすることを特徴とするMnZnAlCo系フェライト。
(2)前記基本成分として、酸化マンガンの一部に代えて、酸化スズ(SnO換算)、酸化チタン(TiO換算)および酸化ゲルマニウム(GeO換算)から選ばれる少なくとも1種を合計で0.05〜2.2mol%含有する上記(1)に記載のMnZnAlCo系フェライト。
本発明によれば、Bs≧450mTで、比抵抗≧10Ωmであり、かつ、10kHz〜1MHzの高周波帯域において高く平坦なμiの周波数特性を有するという電磁気特性を全て満たす、表面実装インダクタ磁芯に適した高抵抗高飽和磁束密度のMnZnAlCo系フェライトを提供することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
まず、本発明のMnZnAlCo系フェライトは、基本組成を酸化鉄(Fe換算):46.0〜49.8mol%、酸化亜鉛(ZnO換算):2.0〜18.0mol%、酸化アルミニウム(Al換算):0.1〜1.5mol%、酸化コバルト(CoO換算):0.1〜3.0mol%、酸化マンガン(MnO換算):残部とすることで、Bs,比抵抗,μiの優れたMnZnAlCo系フェライトを実現する。以下、本発明のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成について説明する。なお、基本成分の含有量はmol%で示すものとし、これらの含有量の合計は100mol%である。
酸化鉄(Fe換算):46.0〜49.8mol%
Feは、飽和磁束密度Bsおよび比抵抗に大きく影響する成分である。Feの配合量が46.0mol%未満では高周波帯域のμi値が低下し、49.8mol%を超えると比抵抗が急激に低下する。そのため、Feの配合量は、46.0〜49.8mol%の範囲内とする。より好ましくは47.0〜49.6mol%である。
酸化亜鉛(ZnO換算):2.0〜18.0mol%
ZnOは、Bs,初透磁率μiおよびキュリー温度Tcに大きく影響する成分である。ZnOの配合量が2.0mol%未満では、全帯域を通して初透磁率μiの値自体が小さくなり、一方、18.0mol%を超えるとBs≧450mTを得ることができない。また、TcはZnOの配合量が多いほど低下し、ZnOが18.0mol%を超えると150℃以下となり、100℃におけるBsが低下してしまう。よって、ZnOの配合量は、2.0〜18.0mol%の範囲内とする。より好ましくは6.0〜13.0mol%であり、最も好ましくは8.0〜13.0mol%である。
酸化コバルト(CoO換算):0.1〜3.0mol%
少量のCoOを含有することでBsを大きく増大させる効果がある。CoOの配合量が0.1mol%未満ではBsの改善効果が小さく、一方、3.0mol%を超えると全帯域を通してμi値自体が低下する傾向があるため好ましくない。よって、CoOの配合量は、0.1〜3.0mol%の範囲内とする。より好ましくは0.2〜2.5mol%である。
なお、Co2+の磁気モーメントは3μであり、Mn2+の5μより小さいため、理論上はCoOの添加によるBsの増大効果は期待できない。しかしながら、本発明者らの検討によれば、少量のCoO添加でBs増大効果が確認された。この原因は、現時点ではまだ十分に明らかではないが、Co2+は他の2価金属イオンと比べて著しく結晶磁気異方性が大きいため、周囲の金属イオンと磁気的に強く相互作用することで、2価金属イオンの磁気モーメントから推算する理論値よりも高い磁化が得られるものと考えられる。
酸化アルミニウム(Al換算):0.1〜1.5mol%
さらに、本発明のMnZnAlCo系フェライトは、基本成分としてAlを0.1〜1.5mol%含有することで、高周波磁気損失tanδを低減してμiの高周波特性を平坦化する効果と、粒界の絶縁性を改善して比抵抗を増大させる相乗効果が得られる。Alの含有量が0.1mol%未満ではtanδを低減する効果が十分でなく、1.5mol%を超えると、焼結密度が低下してBsが低下し、さらに比抵抗も低下する。よって、Alの配合量は、0.1〜1.5mol%の範囲内とする。より好ましくは0.2〜1.0mol%である。
本発明のMnZnAlCo系フェライトは、上記の基本成分中に、さらに副成分として、酸化ケイ素(SiO換算)と酸化カルシウム(CaO換算)を、合計で100〜2500質量ppm含有し、かつ、酸化ケイ素(SiO換算)と酸化カルシウム(CaO換算)の混合比率を、モル%にして、酸化ケイ素(SiO換算):0超え40以下に対し、酸化カルシウム(CaO換算):60以上100未満とすることで、600℃以上の昇温速度≧500℃/hr、最高温度1300℃以上の高速連続炉で焼成しても、均一かつ緻密な結晶組織を得ることができる。よって、SiOとCaOを上記適正範囲で複合添加することによって、表面実装インダクタ用磁芯に適した電磁気特性を有するMnZnAlCo系フェライトを、従来のMnZn系フェライトと同様、生産性よく製造することが可能となる。
また、これらの副成分は粒界に偏析して、粒界絶縁層を形成するため、比抵抗を増大させる効果がある。よって、主成分においてFe配合量を46.0〜49.8mol%(50mol%未満)とし、上記所定量のAlを添加するのと併せて、上記の副成分を複合添加することによって、10Ωm以上の高い比抵抗を得ることができる。なお、酸化ケイ素および酸化カルシウムは、単独で添加された場合でも、粒界に偏析して、粒界絶縁層を形成する性質であり、若干比抵抗を増大させる効果があるが、10Ωm以上の比抵抗を得ることはできず、2つの副成分をともに添加することにより、初めて10Ωm以上の比抵抗を得ることができる。
SiOとCaOの合計添加量を100〜2500質量ppmの範囲とする理由は、以下の通りである。まず、100質量ppm未満では、高速焼成で緻密かつ均一な結晶組織を得る効果が不十分なために、高周波帯域でのμi値が低下する。また、添加量が少ないと粒界絶縁層が薄くなるため、比抵抗≧10Ωmが得られず、コアに直接巻線や電極形成をすることができない。一方、2500質量ppmを超えると、異常粒が発生するようになり、全帯域を通してμi値自体が低下する。上記の観点からより好ましい合計添加量は1000〜2000質量ppmである。なお、副成分の含有量は質量ppmで示すものとし、これは、基本成分の合計量を100質量%とした場合の添加量を意味する。
SiOとCaOの混合比率は、モル%にして、酸化ケイ素(SiO換算):0超え40以下に対し、酸化カルシウム(CaO換算):60以上100未満として、SiOとCaOを複合添加する必要がある。SiOとCaOが共存することで、昇温過程および焼成中に粒界に液相を生成して結晶組織を均一化する効果が得られるが、SiOの比率が40mol%を超えると、異常粒が発生しやすくなり、特に高周波帯域でのμi値が低下し、比抵抗も小さくなるからである。好ましい混合比は、SiO:CaO=5〜35:95〜70(mol%)である。
このようにして、本発明のMnZnAlCo系フェライトは、昨今の表面実装インダクタ用磁芯に求められている電磁気特性として、以下の4つの条件を満たすものである。
1.室温での印加磁場1.2kA/mにおけるBs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHz〜1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
条件4は、1MHzにおける初透磁率が、10kHzにおける初透磁率を基準とした減少幅が、4%以内であることを意味する。
さらに、本発明のMnZnAlCo系フェライトは、基本成分として、酸化マンガンの一部に代えて、酸化スズ(SnO換算)、酸化チタン(TiO換算)および酸化ゲルマニウム(GeO換算)から選ばれる少なくとも1種を合計で0.05〜2.2mol%含有することで、さらにBs,μiおよび比抵抗を改善することができる。SnOはμiおよびBsを増大させる効果があり、TiOはμiを増大させ、μiの周波数特性を平坦化する効果があり、GeOは比抵抗を増大させる効果がある。上記の効果を発現させるためには、かつ、合計添加量が0.05mol%以上とするのが好ましい。しかし、合計添加量が2.2mol%を超えると、比抵抗が10Ωm未満に低下したり、高周波帯域でのμi値が低下したりするため好ましくない。より好ましい合計添加量は0.1〜1.5mol%である。
次に、本発明のMnZnAlCo系フェライトの製造方法について説明する。
本発明のMnZnAlCo系フェライトは、焼成後の成分組成が上記適正範囲となるように出発原料を配合しさえすれば、特に限定されるものではなく、通常のフェライト製造方法を適用することができる。好ましい製造方法としては、例えば、出発原料となるFe,MnまたはMnCO,ZnO,CoOまたはCo,Al,(必要によりSnO,TiO,GeO)を適正量秤量し、これらをアトライターやボールミルなどの混合機を用いて、湿式または乾式で混合した後、800〜1000℃で仮焼する。その後、その仮焼粉に上記適正範囲の副成分を添加し、アトライターやボールミルなどの混合機を用いて、湿式または乾式で混合し、粉砕して粒径が0.8〜1.6μm程度の原料粉とする。その後、その原料粉にPVA(ポリビニルアルコール)などの結合剤(バインダー)を添加し、スプレードライヤーや篩を用いて造粒した後、その造粒粉を所定形状の金型に充填してプレス成形する。その後、その成形体を焼成することによって、本発明のMnZnAlCo系フェライトを製造することができる。なお、上記の焼成は、鉄過剰組成を有する一般的なMnZn系フェライトと同様のヒートパターンおよび雰囲気で行うことができ、特別な条件は必要とされない。したがって、従来のMnZn系フェライトと同様、高い生産性で製造することが可能である。
なお、CoOまたはCo,Alなどの比較的少量の基本成分は、仮焼粉の粉砕時に、他の副成分と同時に添加しても良い。また、上記製造方法は、一般的なフェライトの製造方法であるが、本発明のMnZnAlCo系フェライトの製造方法は、上記方法に限定されるものではなく、例えば、成形前の原料粉の製造方法として、混合焙焼法や共沈法などの特殊な方法を用いてもよい。また、成形方法についても、プレス成形に限定されるものではなく、例えば、射出成形法、フェライトペースト印刷法、グリーンシート法など、種々の方法を適用することができる。
(実施例1)
焼成後のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成が表1に示した値となるように、基本成分の原料であるFe,ZnO,Mn,CoO,Alを秤量し、これをボールミルで湿式混合した後、900℃で仮焼した。次いで、上記仮焼粉に、副成分としてSiO,CaCOを、基本成分中への不純物としての混合量とも併せてSiO=150質量ppm,CaO=1800質量ppmとなるように添加し、ボールミルでさらに湿式粉砕して平均粒径1.1μm(空気透過法で測定)の原料粉を得た。これにバインダーとしてPVAを加え、目開き500μmの篩を通して造粒した後、リング型試料に成形した。その後、上記成形体を、電気炉を用いて、酸素分圧を制御した雰囲気中で1340℃×3時間の焼成を行い、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZnAlCo系フェライトコアを得た。
上記のようにして得られたフェライトコアについて、高抵抗計(アドバンテスト社製R8340A)を用いて、印加電圧10Vで比抵抗を測定した。また、フェライトコアに0.6mmφの被覆銅線を10回巻き、LCRメータ(アジレント・テクノロジー社製4284Aおよび4285A)を用いて、室温での1kHz〜30MHzにおけるμiの周波数特性を測定した。さらに、直流BHアナライザー(理研電子社製)を用いて、室温での印加磁場強度1.2kA/mにおける飽和磁束密度Bsを測定した。
Figure 0005735353
上記測定の結果を表1中に併記して示した。なお、μiについては、10kHzと1MHzの値を代表値として示した。表1から、本発明に適合した発明例のフェライトコアは、いずれも、以下の条件を満たしていることがわかる。
1.Bs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHzおよび1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
(実施例2)
実施例1とは異なる比率と量の副成分として、実施例1と同様の実験を行った。具体的には、焼成後のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成が表2に示した値となるように、基本成分の原料であるFe,ZnO,Mn,CoO,Alを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、950℃で仮焼した。次いで、上記仮焼粉に、副成分としてSiO,CaCOを、基本成分中への不純物としての混合量とも併せてSiO=200質量ppm,CaO=1500質量ppmとなるように添加し、ボールミルで湿式粉砕して平均粒径1.2μm(空気透過法)の原料粉を得た。実施例1と同様にリング型試料に成形した後、電気炉を用いて、酸素分圧を制御した雰囲気中で1330℃×5時間の焼成を行い、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZnAlCo系フェライトコアを得た。
比抵抗、μi、Bsの測定は実施例1と同様にして行った。
Figure 0005735353
上記測定の結果を表2中に併記して示した。表2から、本発明に適合した発明例のフェライトコアは、いずれも、以下の条件を満たしていることがわかる。
1.Bs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHzおよび1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
(実施例3)
主成分を固定し、副成分の添加量を種々の値として、実施例1と同様の実験を行った。具体的には、焼成後のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成がFe:ZnO:MnO:CoO:Al=47.5:10:41:1:0.5(mol%)の組成となるように、基本成分の原料であるFe,ZnO,Mn,CoO,Alを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、950℃で仮焼した。次いで、上記仮焼粉に、副成分としてSiO,CaCOを、基本成分中への不純物としての混合量とも併せて表3に示す含有量となるように添加し、ボールミルで湿式粉砕して平均粒径1.2μm(空気透過法)の原料粉を得た。実施例1と同様にリング型試料に成形した後、電気炉を用いて、酸素分圧を制御した雰囲気中で1320℃×2時間の焼成を行い、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZnAlCo系フェライトコアを得た。
比抵抗、μi、Bsの測定は実施例1と同様にして行った。
Figure 0005735353
上記測定の結果を表3中に併記して示した。表3から、本発明に適合した発明例のフェライトコアは、いずれも、以下の条件を満たしていることがわかる。
1.Bs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHzおよび1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
(実施例4)
主成分の比率を実施例3とは異ならせ、副成分の添加量を種々の値として、実施例3と同様の実験を行った。具体的には、焼成後のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成がFe:ZnO:MnO:CoO:Al=48.8:9.5:39.35:1.6:0.75(mol%)の組成となるように、基本成分の原料であるFe,ZnO,Mn,CoO,Alを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、900℃で仮焼した。次いで、上記仮焼粉に、副成分としてSiO,CaCOを、基本成分中への不純物としての混合量とも併せて表4に示す含有量となるように添加し、ボールミルで湿式粉砕して平均粒径1.1μm(空気透過法)の原料粉を得た。実施例1と同様にリング型試料に成形した後、電気炉を用いて、酸素分圧を制御した雰囲気中で1350℃×1時間の焼成を行い、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZnAlCo系フェライトコアを得た。
比抵抗、μi、Bsの測定は実施例1と同様にして行った。
Figure 0005735353
上記測定の結果を表4中に併記して示した。表4から、本発明に適合した発明例のフェライトコアは、いずれも、以下の条件を満たしていることがわかる。
1.Bs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHzおよび1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
(実施例5)
主成分として、MnOの一部に代えてSnO,TiO,GeOから選ばれる少なくとも1種を含めて、同様の実験を行った。具体的には、焼成後のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成がFe:ZnO:MnO:CoO:Al=47.5:10:(残部):1:0.5(mol%)の組成となるように、基本成分の原料であるFe,ZnO,Mn,CoO,Alを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、950℃で仮焼した。次いで、上記仮焼粉に、副成分として表3のNo.3−3と同じSiO=180質量ppm,CaO=2000質量ppmとなるように、SiO,CaCOを加えて、表5に示す量のSnO,TiO,GeOを添加し、ボールミルで湿式粉砕して平均粒径1.2μm(空気透過法)の原料粉を得た。実施例3と同じ条件で成形、焼成を行い、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZnAlCo系フェライトコアを得た。なお、上記のMnO:残部とは、SnO,TiO,GeOをも含めたものである。
比抵抗、μi、Bsの測定は実施例1と同様にして行った。
Figure 0005735353
上記測定の結果を表5中に併記して示した。表5から、本発明に適合した発明例のフェライトコアは、いずれも、以下の条件を満たしていることがわかる。
1.Bs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHzおよび1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
(実施例6)
SnO,TiO,GeOから選ばれる追加の基本成分の比率を実施例5と同様にして、それ以外の主成分の比率と副成分の添加量を実施例5とは異ならせ、実施例5と同様の実験を行った。具体的には、焼成後のMnZnAlCo系フェライトの基本成分組成がFe:ZnO:MnO:CoO:Al=48.8:9.5:(残部):1.6:0.75(mol%)の組成となるように、基本成分の原料であるFe,ZnO,Mn,CoO,Alを秤量し、ボールミルで湿式混合した後、900℃で仮焼した。次いで、上記仮焼粉に、副成分として表4のNo.4−1と同じSiO=200質量ppm,CaO=600質量ppmとなるように、SiO,CaCOを加えて、表6に示す量のSnO,TiO,GeOを添加し、ボールミルで湿式粉砕して平均粒径1.1μm(空気透過法)の原料粉を得た。実施例5と同じ条件で成形、焼成を行い、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのMnZnAlCo系フェライトコアを得た。なお、上記のMnO:残部とは、SnO,TiO,GeOをも含めたものである。
比抵抗、μi、Bsの測定は実施例1と同様にして行った。
Figure 0005735353
上記測定の結果を表6中に併記して示した。表6から、本発明に適合した発明例のフェライトコアは、いずれも、以下の条件を満たしていることがわかる。
1.Bs≧450mT
2.比抵抗≧10Ωm
3.10kHzおよび1MHzにおけるμi≧780
4.μi(1MHz)≧0.96×μi(10kHz)
以上の実施例で示した通り、本発明により、μiが高く、Bs≧450mTで、比抵抗≧10Ωmであり、周波数10kHz〜1MHzで平坦なμiの周波数特性を有する、表面実装インダクタ用磁芯に適したMnZnAlCo系フェライトを生産性良く製造できる。
本発明によれば、Bs≧450mTで、比抵抗≧10Ωmであり、かつ、10kHz〜1MHzの高周波帯域において高く平坦なμiの周波数特性を有するという電磁気特性を全て満たす、表面実装インダクタ磁芯に適した高抵抗高飽和磁束密度のMnZnAlCo系フェライトを提供することができる。

Claims (2)

  1. 酸化鉄(Fe換算):46.0〜49.8mol%、
    酸化亜鉛(ZnO換算):2.0〜18.0mol%、
    酸化アルミニウム(Al換算):0.1〜1.5mol%、
    酸化コバルト(CoO換算):0.1〜3.0mol%および
    酸化マンガン(MnO換算):残部
    からなる基本成分中に、さらに副成分として、
    酸化ケイ素(SiO換算)と酸化カルシウム(CaO換算)を、合計で100〜2500質量ppm含有し、かつ、酸化ケイ素(SiO換算)と酸化カルシウム(CaO換算)の混合比率を、モル%にして、酸化ケイ素(SiO換算):0超え40以下に対し、酸化カルシウム(CaO換算):60以上100未満とすることを特徴とするMnZnAlCo系フェライト。
  2. 前記基本成分として、酸化マンガンの一部に代えて、酸化スズ(SnO換算)、酸化チタン(TiO換算)および酸化ゲルマニウム(GeO換算)から選ばれる少なくとも1種を合計で0.05〜2.2mol%含有する請求項1に記載のMnZnAlCo系フェライト。
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