JP2015036364A - Mn−Zn−Ni系フェライトおよびその製法方法 - Google Patents

Mn−Zn−Ni系フェライトおよびその製法方法 Download PDF

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Abstract

【課題】例えば150〜170℃の高温度領域に鉄損の極小値が存在しかつその値が小さく、さらに150℃以上の高温域において飽和磁束密度が高いMn-Zn-Ni系フェライト材料を提供する。
【解決手段】Fe2O3:54.0〜55.0mol%、ZnO:5.0〜10.0mol%、NiO:0.1〜0.2mol%および残部MnOを基本成分とし、前記基本成分に対し、SiO2:50〜500massppm、CaO:200〜2000massppm、Nb2O5:50〜500massppmおよびBeO:10〜100massppmの副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Ni系フェライトであって、前記不可避的不純物中、炭素の含有量を50massppm以下に抑制する。
【選択図】なし

Description

本発明は、エネルギー損失の少ないMn-Zn-Ni系フェライト、特に、スイッチング電源用トランス等の磁心に用いて好適である、例えば150℃以上の高温度領域で高飽和磁束密度かつ低鉄損を示すMn-Zn-Ni系フェライトに関するものである。
酸化物磁性材料は、一般にフェライトと総称され、このフェライトは、Ba系フェライト、Sr系フェライト等の硬質磁性材料と、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト等の軟質磁性材料とに分けられる。軟質磁性材料は、非常にわずかな磁場に対しても十分に磁化する材料であり、電源、通信機器、計測制御機器、磁気記録、コンピュータなどの広い分野において用いられている。軟磁性材料に要求される特性としては、保磁力が小さく、透磁率が高いこと、飽和磁束密度が大きく、低鉄損であることなどが挙げられる。
なお、軟磁性材料としては、上記酸化物系のフェライト以外に、金属系のものがある。金属系軟磁性材料は、酸化物系と比べて飽和磁束密度が高いという特長を有する反面、電気抵抗が小さく、高周波領域で使用する際には、渦電流に起因する鉄損が大きくなってしまう。そのため、電子機器の小型化・高密度化の要請から使用周波数の高周波化が進んでいる近年では、スイッチング電源等に用いられている100kHz程度以上の高周波数帯において、従来の金属系材料を用いることは、ほとんど不可能となっている。
このような背景から、高周波域での電源用トランスの磁心材料としては、発熱の少ないMn−Zn系フェライトが主に用いられている。しかし、この材料も、電気抵抗率の値が0.01〜0.05Ω・m程度であるため、さらに高電気抵抗化して渦電流損を低減することにより、全体としての鉄損を低くし、発熱量を抑えることが望まれていた。
この間題に対して、例えば、特許文献1には、Mn−Zn系フェライトに、副成分としてSiO2やCaOなどの酸化物を微量添加し、粒界に偏析させて粒界抵抗を上げ、全体としての抵抗率を数Ω・m以上に高めることにより、発熱を抑制する技術が開示されている。
また、電源トランスに使用された場合に考慮しなければならないのは、組み込まれた機器内の温度(動作温度)と、トランス材料自体の鉄損の発熱によって起こる温度上昇である。例えば、鉄損が極小となる温度(以下、鉄損極小温度ともいう)が室温付近にある場合には、発熱による磁心の温度の上昇により鉄損は上昇し、それに伴いさらに発熱が大きくなり、これが繰り返されて温度上昇が加速する、いわゆる熱暴走を起こす危険性がある。トランスの動作温度は、通常、50〜70℃付近であるが、この危険性を回避するため、現行の材料では、鉄損が極小となる温度を約100℃として、室温付近における鉄損の温度係数を負とし、温度上昇とともに鉄損が減少するような材料設計がなされている。しかし、鉄損極小温度が100℃程度の材料では、温度が何らかの原因で100℃以上に上昇すると、やはり鉄損は増大してゆくので、熱暴走を起こす危険性が極めて大きい。
さらに、最近では、電子機器の小型化に対応するため、電子部品の積載密度が高くなり、発熱による温度上昇がより大きくなる傾向にある。また、ハイブリッドカーなどの最近の電子化された自動車用途に使用される部品は、たとえばエンジン付近に配置される場合、100℃を超えて150〜160℃といったこれまで想定していなかった高温度域での動作が余儀なくされている。従って、設計動作温度をこれまでの100℃付近から150℃以上に高めて、150〜160℃程度の高温度域で動作させる設計に変更する必要性も出てきている。このためにはフェライトコアの鉄損の温度依存性もこれらの設計に対応できる必要がある。
また、高温度域で動作させるよう鉄損極小温度を150〜160℃程度にした場合でも、温度が上昇するにしたがって飽和磁束密度が減少するため、トランスの稼働磁束密度が従来の100℃程度で設計していた値を維持できなくなり、その分コア形状を大きくするなどの設計変更やコストアップの問題等が生じる。従来のトランス用低損失材の100℃での飽和磁束密度は汎用材で380〜400mTであるのに対して、150℃では320〜350mT程度まで低下してしまう。従って、150〜160℃程度の高温度域で動作させる設計に変更する場合に、飽和磁束密度の大きさも従来材の100℃での値と同じ400mT程度又はそれ以上に維持する要求が非常に大きい。
ところで、鉄損を支配する因子としては、磁気異方性定数K1があり、鉄損は、磁気異方性定数K1の温度変化にともなって変化し、K1=0となる温度で極小となる。したがって、鉄損の温度依存性を変えるには、磁気異方性定数の温度依存性とその絶対値を変えることが必要となる。Mn−Zn系フェライトの場合、Coイオンを導入することにより磁気異方性定数の温度依存性を小さくし、鉄損温度係数の絶対値を小さくすることができる(例えば、非特許文献1および2参照)。これにより、100℃付近での鉄損が小さく、かつ、その前後の温度範囲でも鉄損の比較的小さい材料が得られる。しかし、CoOを加えることにより、鉄損極小温度が低下したり、あるいは、焼成温度や焼成雰囲気の酸素濃度の僅かな変動により、鉄損温度係数や極小温度が大きく変動したりするという問題が生じている。
ここに、特許文献2には、Fe2O3、ZnO、MnOを主成分とし、CoOを0.01〜0.5mol%未満含有するMn−Zn−Co系フェライトにおいては、従来よりも広い温度範囲でK1=0となるので、広範な温度領域で、高い透磁率と低鉄損が実現されることが開示されている。しかし、特許文献2の技術では、同文献の第1図に示されるように、鉄損の極小温度がかなり低温度側に移行し、最高使用温度付近での鉄損値は大きくなり、温度上昇が加速する危険性は未だ解消されていない。
上記した各文献に記載の技術はいずれも、電力損失の最小値を示す温度が100℃以下であり、鉄損の最小値を150℃〜160℃の高温域に移行する手段については何ら開示されていない。また、仮に鉄損極小温度が150℃以上の高温になったとしても、この鉄損極小温度が高温に移行するほど、飽和磁束密度が減少するため、その極小温度での鉄損絶対値が増大することも問題として残されている。このため150℃以上での熱暴走は抑えられても肝心の損失値が大きくなり発熱問題が解決できないという欠点があった。
特公昭36−2283号公報 特公平4−33755号公報
「The Effect of Cobalt subusutitutions on some properties of manganese zinc ferrites」、A.D.Giles and F.F.Westendorp:J.Phys.D:Appl.Phys.、9(1976)2117 「Low-loss Power Ferrites for frequencies up to 500kHz」、T.G.W.Stijintjes And J.J.Roelofsma;Adv.Cer.16(1986)493
本発明は、最近の電子部品が100℃を超える150〜170℃という、これまで想定していなかった高温度域で使用されるようになってきた状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば150〜160℃の高温度領域に鉄損の極小値が存在しかつその値が小さく、さらに150℃以上の高温域において飽和磁束密度が高いMn-Zn-Ni系フェライト材料を提供することにある。
発明者らは、従来技術が抱える上記問題点を解決するために、基本成分であるFe2O3、ZnOの含有量が鉄損とその極小温度に及ぼす影響を調査すると共に、添加物として含有させる種々の金属酸化物について、最終コアの100℃以上の温度域での飽和磁束密度と鉄損に及ぼす影響を鋭意究明した。その結果、基本成分の組成範囲によって鉄損極小温度と飽和磁束密度が異なるため、Fe2O3と、ZnOおよびMnOさらにNiOを基本組成に加え、それらの組成範囲を絞り込み、その範囲に応じた最適添加物とその含有量を選択することにより、150℃以上の高温度域で高飽和磁束密度を維持し、かつ低損失なフェライトを得ることができること、さらに、不可避的不純物として入る炭素量を所定値の範囲内に抑制することにより、その効果はより改善されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の要旨構成は、次のとおりである。
(1)Fe2O3:54.0〜55.0mol%、
ZnO:5.0〜10.0mol%、
NiO:0.1〜0.2mol%および
残部MnOを基本成分とし、
前記基本成分に対し、
SiO2:50〜500massppm、
CaO:200〜2000massppm、
Nb2O5:50〜500massppmおよび
BeO:10〜100massppm
の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Ni系フェライトであって、
前記不可避的不純物中、炭素の含有量を50massppm以下に抑制したことを特徴とするMn-Zn-Ni系フェライト。
(2)150℃および磁化力1200A/mにおける飽和磁束密度が380mT以上、最大磁束密度200mTおよび周波数100kHzにおける鉄損極小温度が150〜170℃、かつ160℃における鉄損が450kw/m3以下であることを特徴とする前記(1)に記載のMn-Zn-Ni系フェライト。
(3)基本成分組成に従って酸化物原料を秤量し、混合したのち仮焼し、ついで副成分を添加して混合し、さらに粉砕後成形して得た成形品を、昇温し、焼成保持温度で焼成することにより前記(1)または(2)に記載のMn-Zn-Ni系フェライトを製造する方法において、
副成分としてのCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加すると共に、
前記昇温に際し、400℃から焼成保持温度に達するまでの雰囲気中の酸素濃度を5体積%以上とすることを特徴とするMn-Zn-Ni系フェライトの製造方法。
本発明によれば、150℃以上の高温度域で飽和磁束密度が高く、かつ鉄損の低いMn-Zn-Ni系フェライトを提供することができる。本発明のフェライトは、スイッチング電源等のトランスコア材に用いて好適である。
さて、本発明のMn-Zn-Ni系フェライトは、飽和磁束密度、キュリー温度及び鉄損の極小温度を最適にする観点から、その基本成分がFe2O3:54.0〜55.0mol%、ZnO:5.0〜10.0mol%、NiO:0.01〜0.1mol%および残部MnOからなるものとする。
各成分を上記範囲に制限する理由について、以下に具体的に説明する。
Fe2O3:54.0〜55.0mol%
Fe2O3は、鉄損極小温度を150℃以上として、さらに150℃の飽和磁束密度を高く維持するために、54.0mol%以上とする必要がある。しかし、55.0mol%を超えると、室温付近の鉄損上昇が大きくなるため、上限を55.0mol%とする。好ましくは、54.0〜54.5mol%の範囲である。
ZnO:5.0〜10.0mol%
軟磁性フェライトに求められる磁気特性としては、前述したように、飽和磁束密度が大きいこと、キュリー温度が高いこと、鉄損が小さいことおよび透磁率が高いこと、が挙げられる。このうち、飽和磁束密度およびキュリー温度は、基本成分であるMnO、ZnOおよびFe2O3の比でほぼ決定される。
まず、ZnOの量が比較的少ない領域においては、ZnO量が増加するのにともなって室温での飽和磁束密度が単調に増加するが、キュリー温度も低下する。150℃程度の高温域での飽和磁束密度を高く維持するには、キュリー温度を高くすることが重要である。従って、キュリー温度とのバランスでZnO量を決定する必要がある。すなわち、ZnO量が5.0mol%より少ないと、キュリー温度は高いが飽和磁束密度がまだ低く、鉄損値もかなり高く透磁率も低くなる。一方、ZnO量が10.0mol%より多いと、150℃における飽和磁束密度が380mT以下まで低下する。従って、150℃程度での飽和磁束密度を380mT以上に維持し、鉄損極小温度を150〜170℃にするには、ZnO量を5.0〜10.0mol%の範囲とする。より高い飽和磁束密度とキュリー点を得るためには、6.0〜9.0mol%の範囲とするのが好ましい。
NiO:0.1〜0.2mol%
鉄損極小温度を150℃以上として、さらに150℃の飽和磁束密度を高く維持するためにFe2O3およびZnOの組成を上記のとおりにした場合、鉄損値が他の組成域より増大することは避けられず、この鉄損値の増大を抑えるにはNiOを0.1〜0.2mol%の範囲で基本組成として加えると効果的であることを新たに見出した。すなわち、NiOはMn-Zn系フェライトのスピネル相を構成し、ZnおよびMn元素とともに磁気異方性に影響し、高い飽和磁束密度と低損失を実現するのに寄与する。この点につき種々検討したところ、上記のFe2O3およびZnO組成の下で効果を発揮するのは0.1mol%以上であり、鉄損極小温度を150〜170℃として低損失となるのは0.2mol%までであることから、NiOの範囲は0.1〜0.2mol%とする。好ましくは、0.15〜0.19mol%の範囲である。
本発明のフェライトは、Fe2O3-ZnO-MnO-NiOの4元系フェライトであり、上記Fe2O3、ZnO、NiO以外の残部の基本成分は、MnOである。MnO量は、35〜42mol%の範囲であることが好ましい。なお、Fe2O3、ZnO、NiOおよびMnOの合計は100mol%である。
本発明の、フェライトは、上記基本成分のほかに、副成分として下記の成分を添加することが必要である。すなわち、本発明のフェライトの基本成分であるFe2O3、ZnO、MnOおよびNiOは、スピネル構造を形成するものであり、これにスピネルを形成しない、SiO2、CaOおよびNb2O5、そしてBeOの微量添加成分を加えて、鉄損の低い高性能なMn-Zn-Ni系フェライト材料とすることができる。中でもSiO2、CaO、Nb2O5およびBeOの複合添加は効果的であり、その作用は以下の通りである。
SiO2:50〜500massppm
CaO:200〜2000massppm
SiO2は、CaOとともに粒界を形成して粒界を高抵抗化し、鉄損の低減に寄与する。しかし、添加量が50massppm未満ではその寄与は小さく、また、500massppmを超えて含むと焼結時に異常粒成長を生じせしめて鉄損を大幅に増大させる。CaOも、SiO2と共存した場合に粒界抵抗を高めて低鉄損化に寄与するが、添加量が200massppmより少ないとその効果は小さく、また2000massppmより多くなると鉄損は逆に増大する。従って、SiO2ならびにCaOの添加量はSiO2:50〜500massppmおよびCaO:200〜2000massppmの範囲で添加するのが好ましい。より低損失を得るためには、SiO2:50〜300massppm、CaO:200〜1500massppmの範囲が好ましい。
Nb2O5:50〜500massppm
Nb2O5は、SiO2およびCaOの共存下で、比抵抗の増大に有効に寄与するが、含有量が50massppmに満たないとその添加効果に乏しく、一方、500massppmを超えると逆に鉄損の増大を招く。従って、Nb2O5は50〜500massppmの範囲で添加する。より低損失を得るためには、50〜300massppmの範囲が好ましい。
BeO:10〜100massppm
BeOは、150℃以上の高温度域で低鉄損を安定して実現するために有効な成分である。BeOの添加が、最終焼結体の磁気特性に影響を及ぼす機構については、未だ明確に解明されたわけではないが、BeOは比抵抗が高く、低い比誘電率と誘電損失を有する酸化物のため、最終焼結体の特性、特に150℃以上の高温度側での鉄損に好影響を及ぼすものと考えられる。その添加量は10massppmより少ないと効果が得られず,また100massppmより多く添加すると、逆に異常粒成長を生じせしめて鉄損を大幅に増大させるため、BeO:10〜100massppmの範囲で添加する。
上記のように、基本成分であるFe2O3、ZnO、MnOおよびNiOの組成範囲を決定することと、副成分としてSiO2、CaO、Nb2O5およびBeOを複合して添加することが重要である。さらに、150℃以上の高温度域で低鉄損を安定して実現するためには、不純物の特に炭素(C)を適正な範囲内に含有させることが効果的であることを見出した。
すなわち、不純物の炭素(C)は、フェライトの製造工程において不可避的に混入し、焼成後も残留Cとして含まれる。この残留C量と鉄損との関係について種々検討した結果、C量が50massppm以下であれば100kHzまでの周波数帯域において鉄損改善に有効であるとの新たな知見を得るに到った。残留C量が鉄損に影響する理由は、未だ十分に解明できていないが、Cが結晶粒内にあれば磁壁移動の妨げになって鉄損を増大させることになり、また結晶粒界に偏折すると、導電性付与の核となり高周波域においてフェライトをコアとして使用する際の比抵抗を減少させ、その結果、渦電流損失が増大して150℃以上の高温度側での鉄損に影響を及ぼすものと考えられる。
具体的には、不可避的不純物中の炭素の含有量を50massppm以下に抑制する必要がある。すなわち、炭素の含有量が50massppmを超えると、鉄損値の改善効果がなくなるため、50massppm以下であれば、従来材に比べて鉄損値が十分に改善されるからである。なお、その他の不純物は、上記したCの他、(塩素Cl、硫黄S)等が挙げられるが、これらは混入量が合計で0.01質量%以下であれば、特性上、何ら問題はない。
ここで、フェライトの製造工程で混入するCには、(i)Nb2O5、MnOおよびZnOの主原料に含有されるC、(ii)副原料の各種添加物に含有されるC、(iii)粉砕時に使用する鋼鉄製の容器や粉砕ビーズに含有されるC、(iv)造粒時に混合されるバインダーである有機物のPVA(ポリビニルアルコール)に含有されるC、が挙げられる。このうち(iv)の製造の最終工程に添加されるPVAはフェライト粒子の外側に接触している状態であるから、焼成昇温途中で分解・燃焼してコア外部にほとんどが排出されるため、この段階で完全に燃焼する条件とすればよい。(i)の主原料に含まれるCや(iii)の粉砕装置から混入するCは、量が多いがやはり大部分は仮焼や焼成工程で燃焼して外部に排出される。
従って、上記(i)(iii)および(iv)におけるCについては、焼成条件をうまく制御すれば残留C量を低減可能であることがわかったが、上記(ii)における、特にCaOの添加において一般的である、炭素を含有するCaCO3の形態で添加した場合、CaCO3は焼成工程で分解され排出されるが、結晶粒内あるいは粒界に残留することが多く、この分、最終的な残留Cが増加することを見出した。そこで、添加物のCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加することによって、残留C量を50massppm以下に抑制可能であることを見出した。具体的には、CaOを添加する際に一般的に行われている炭酸化物のCaCO3の形態ではなく、酸化物のCaOの形態で添加することによって、残留C量を50massppm以下に抑制可能になる。なお、炭素を含有しない形態のCa化合物としては、CaOの形態のほか、水酸化カルシウム (Ca(OH)2)やフッ化カルシウム (CaF2)などの形態でもよい。但し、コスト等の観点からは、CaOの形態での添加が好ましい。
本発明のMn-Zn-Ni系フェライトは、通常、各粉末原料を所定の最終組成になるように混合して仮焼したのち、得られたフェライト仮焼粉に添加成分を混合して粉砕した後、造粒して圧縮成形し、次いで焼成することにより製造される。このような通常法において、特に、本発明では、焼成工程で昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%から(大気における濃度である)21体積%以下にして焼成する点に特徴がある。
焼成開始から400℃までで、フェライト仮焼粉に添加されたPVAはほぼ分解・燃焼する。その後、焼成保持温度に達するまでの酸素濃度を低減すると結晶粒成長が急激に進み、その結果、高い初透磁率が得られ、鉄損も低減することがわかっている。しかしながら、400℃から焼成保持温度までの酸素濃度をあまり低くすると、今度は、先に述べたように各工程で混入したCが十分燃焼・分解されず結晶内に取り込まれるため、残留C量が低減せず、かえって初透磁率や鉄損の改善効果を阻害することになる。このことに鑑みて種々検討した結果、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%以上に制御すれば、粒成長と残留C量のバランスがとれ、150℃以上の高温度側での低い鉄損を実現できることが判明した。
なお、酸素濃度を大気中での濃度を超える高濃度にすることはコスト面で大きな問題があることから、上限は大気中酸素濃度の21体積%とすることが好ましい。
Fe2O3:54.5mol%、ZnO:6.5mol%、NiO:0.17 mol%、残部 MnOを混合後、大気中において925℃で3時間仮焼した。この仮焼粉に微量添加成分としてSiO2、CaO、Nb2O5およびBeOをそれぞれ100massppm、700massppm、200massppmおよび60massppmとなるように添加し、ボールミルで12時間粉砕した後、焼成後に外径31mm、内径19mm、高さ7mmのリング状となるように成形し、次いで、大気中で400℃まで250℃/hで昇温し、400℃から保持温度1330℃までを、表1に示す種々の酸素濃度の下、昇温速度 600℃/hで昇温した。その後、保持温度1330℃に達してからは、酸素濃度を10体積%以下に制御して2時間焼成した。
このようにして得たリング状試料に対し、交流BHループトレーサーを用いて、25℃〜180℃の温度範囲における、周波数100kHzで磁束密度200mTまで励磁したときの鉄損を測定し、同じく直流BHループトレーサーを用いて、25℃〜180℃の温度範囲における飽和磁束密度を測定した。なお、飽和磁束密度は、磁化力1200A/mのときの磁束密度として測定した値である。残留C量は、試料を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO2ガスを赤外線検出器により検出し、炭素量に換算する、高周波燃焼式・赤外線吸収法で測定した。
得られた焼結体の残留C量と磁気特性を、それぞれ表1に示す。表1において、本発明の範囲内のものは発明例とし、範囲外のものを比較例としている。なお、発明例では添加物のうちCaOを、酸化物であるCaOの形態で添加しているが、比較例の一部では炭酸化物であるCaCO3の形態で添加した。
Figure 2015036364
表1に示すように、発明例によれば、昇温途中の400℃から焼成保持温度に達するまで焼成雰囲気中の酸素濃度を5体積%以上に制御することにより、残留C量が50massppm以下に低減でき、そのとき150℃での飽和磁束密度が380mT以上であり、また最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損極小温度が150〜170℃であり、かつ160℃における鉄損が450kW/m3以下が得られる。したがって、かかるフェライトコアをトランスコアとして搭載すれば、150℃以上の高温域で優れた電源特性を発揮することができる。
表2および表3に示すような種々のFe2O3、ZnO、NiOの組成を有し、残部がMnOとなるように、原料を混合した後、大気中、930℃で3時間の仮焼を行い、この仮焼粉に、表2および表3に併記したように、添加成分として種々の量のSiO2、CaO、Nb2O5およびBeOを添加し、ボールミルで10時間粉砕した後、外径31mm、内径19mm、高さ7mmのリング状に成形した。その後、400℃から1340℃までの昇温速度を650℃/hおよび酸素濃度を12体積%とし、その後、酸素濃度を1〜5体積%の範囲に制御した窒素・空気混合ガス中で1340℃×2時間の焼成を行った。
かくして得られたリング状試料に対し、交流BHループトレーサーを用いて、25℃〜180℃の温度範囲における、周波数100kHzで磁束密度200mTまで励磁したときの鉄損と、同じく直流BHループトレーサーを用いて、25℃〜180℃の温度範囲における、磁化力1200A/mのときの飽和磁束密度を測定した。残留C量は、試料を酸素気流中で燃焼させ、発生したCO2ガスを赤外線検出器により検出し、炭素量に換算する、高周波燃焼式・赤外線吸収法で測定した。
上記測定結果に基づき、残留C量と磁気特性を、鉄損が極小となる温度と150℃での鉄損値を表2および表3に併記して示した。なお、発明例では添加物のうちCaOを、酸化物であるCaOの形態で添加しているが、比較例の一部では炭酸化物であるCaCO3の形態で添加した。
ここで、表2のNo.2-1〜34は本発明に従う発明例を、表3のNo.2-35〜76は、本発明の比較例を示したものである。
Figure 2015036364
Figure 2015036364
表2および3からわかるように、本発明例は、Fe2O3、ZnO、MnO、NiOの基本組成とSiO2、CaO、Nb2O5、BeOの添加成分の組成を適切に選んだ上でさらに、不純物C量を50massppm以下に制御した結果、いずれの条件でも、最大磁束密度200mT、周波数100kHzで測定した鉄損極小温度が150〜170℃の範囲にあり、150℃における飽和磁束密度が380mT以上で、かつ160℃での鉄損が450kW/m3以下、あるいは400kw/m3以下となっており、150℃以上の高温度範囲で、高飽和磁束密度かつ低損失のMn-Zn-Ni系フェライト材が得られている。
本発明のフェライトは、150℃以上の高温度範囲で飽和磁束密度が高く鉄損が小さいため、稼働温度が通常の電子機器よりも高温となる自動車用各種電源トランスコア、チョークコイル等に用いることができる。

Claims (3)

  1. Fe2O3:54.0〜55.0mol%、
    ZnO:5.0〜10.0mol%、
    NiO:0.1〜0.2mol%および
    残部MnOを基本成分とし、
    前記基本成分に対し、
    SiO2:50〜500massppm、
    CaO:200〜2000massppm、
    Nb2O5:50〜500massppmおよび
    BeO:10〜100massppm
    の副成分を含有し、残部が不可避的不純物からなるMn-Zn-Ni系フェライトであって、
    前記不可避的不純物中、炭素の含有量を50massppm以下に抑制したことを特徴とするMn-Zn-Ni系フェライト。
  2. 150℃および磁化力1200A/mにおける飽和磁束密度が380mT以上、最大磁束密度200mTおよび周波数100kHzにおける鉄損極小温度が150〜170℃、かつ160℃における鉄損が450kw/m3以下であることを特徴とする請求項1に記載のMn-Zn-Ni系フェライト。
  3. 基本成分組成に従って酸化物原料を秤量し、混合したのち仮焼し、ついで副成分を添加して混合し、さらに粉砕後成形して得た成形品を、昇温し、焼成保持温度で焼成することにより請求項1または2に記載のMn-Zn-Ni系フェライトを製造する方法において、
    副成分としてのCaOは、炭素を含有しない形態のCa化合物として添加すると共に、
    前記昇温に際し、400℃から焼成保持温度に達するまでの雰囲気中の酸素濃度を5体積%以上とすることを特徴とするMn-Zn-Ni系フェライトの製造方法。
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