JP2004115776A - ガスバリア性塗料 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の課題は、構造中に塩素を含有せず、高湿度下での酸素ガスバリア性に優れるフィルム及びその積層物を、従来よりも温和な条件で得ることにある。
【解決手段】ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)と2価以上の金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア層形成用塗料(C)。
【選択図】 なし
【解決手段】ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)と2価以上の金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア層形成用塗料(C)。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高湿度下においても優れたガスバリア性を有するガスバリア性積層体を形成し得るガスバリア性塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、強度、透明性、成形性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかし、これらの熱可塑性樹脂フィルムは酸素等のガス透過性が大きいので、一般食品、レトルト処理食品、化粧品、医療用品、農薬等の包装に使用した場合、長期間保存する内にフィルムを透過した酸素等のガスにより内容物の変質が生じることがある。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂の表面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略記する)のエマルジョン等をコーティングし、ガスバリア性の高いPVDC層を形成せしめた積層フィルムが食品包装等に幅広く使用されてきた。しかし、PVDCは焼却時に酸性ガス等の有機物質を発生するため、近年環境への関心が高まるとともに他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
PVDCに代わる材料としてポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)は有毒ガスの発生もなく、低湿度雰囲気下でのガスバリア性も高いが、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下するので、水分を含む食品等の包装には用いることが出来ない場合が多い。
【0005】
PVAの高湿度下でのガスバリア性の低下を改善したポリマーとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)が知られている。しかし、高湿度でのガスバリア性を実用レベルに維持するためにはエチレンの共重合比をある程度高くする必要があり、このようなポリマーは水に難溶となる。
そこで、エチレンの共重合比の高いEVOHを用いてコーティング剤を得るには、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒を用いる必要があり、環境問題の観点からも望ましくなく、また有機溶媒の回収工程などを必要とするため、コスト高になるという問題がある。
【0006】
水溶性のポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高湿度下でも高いガスバリア性を発現させる方法として、PVAとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とからなる水溶液をフィルムにコートし熱処理することにより、両ポリマーをエステル結合により架橋する方法が提案されている(特許文献1:特開平06−220221号公報、特許文献2:同07−102083号公報、特許文献3:同07−205379号公報、特許文献4:同07−266441号公報、特許文献5:同08−041218号公報、特許文献6:同10−237180号公報、特許文献7:同特開2000−000931号公報等参照)。
しかし、上記公報に提案される方法では、高度なガスバリア性を発現させるためには高温での加熱処理もしくは長時間の加熱処理が必要であり、製造時に多量のエネルギーを要するため環境への負荷が少なくない。
また、高温で熱処理すると、バリア層を構成するPVA等の変色や分解の恐れが生じる他、バリア層を積層しているプラスチックフィルム等の基材に皺が生じるなどの変形が生じ、包装用材料として使用できなくなる。プラスチック基材の劣化を防ぐためには、高温加熱に十分耐え得るような特殊な耐熱性フィルムを基材とする必要があり、汎用性、経済性の点で難がある。
一方、熱処理温度が低いと、非常に長時間処理する必要があり、生産性が低下するという問題点が生じる。
【0007】
【特許文献1】
特開平06−220221号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平07−102083号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平07−205379号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平07−266441号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平08−041218号公報
【0012】
【特許文献6】
特開平10−237180号公報
【0013】
【特許文献7】
特開2000−000931号公報
【0014】
また、PVAに架橋構造を導入することで、上記PVAフィルムの問題点を解決するための検討がなされている。しかし、一般的に架橋密度の増加と共にPVAフィルムの酸素ガスバリア性の湿度依存性は小さくなるが、その反面PVAフィルムが本来有している乾燥条件下での酸素ガスバリア性が低下してしまい、結果として高湿度下での良好な酸素ガスバリア性を得ることは非常に困難である。
尚、一般にポリマー分子を架橋することにより耐水性は向上するが、ガスバリア性は酸素等の比較的小さな分子の侵入や拡散を防ぐ性質であり、単にポリマーを架橋してもガスバリア性が得られるとは限らず、たとえば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの三次元架橋性ポリマーはガスバリア性を有していない。
【0015】
PVAのような水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下でも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも低温もしくは短時間の加熱処理で提る方法が提案されている(特許文献8:特開2001−323204号公報、特許文献9:同2002−020677号公報、特許文献10:同2002−241671号公報参照)。
【0016】
【特許文献8】
特開2001−323204号公報
【0017】
【特許文献9】
特開2002−020677号公報
【0018】
【特許文献10】
特開2002−241671号公報
【0019】
特許文献8〜10に記載される塗料は、水溶性のポリマーを用いながらも特許文献1〜7に記載される塗料よりも低温もしくは短時間の加熱で高湿度下で従来よりも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を形成し得る。
しかし、特許文献1〜10に記載される、加熱によって、PVA中の水酸基とポリアクリル酸中もしくはエチレン−マレイン酸共重合体中のCOOHとをエステル化反応させたり、金属架橋構造を導入するという方法では、高湿度下におけるガスバリア性の向上には限界があった。即ち、加熱条件をより高温長時間にしてもある一定の値以上酸素透過度は小さくはならず、むしろ大きくなってしまうと逆転現象が生じた。過酷な加熱条件によって、プラスチック基材や形成されつつあるバリア層が熱劣化したためと考えられる。また、高温長時間という加熱条件は、プラスチック基材や形成されつつあるバリア層の着色やカールをも生起し、この点でも好ましくない。
以上の結果、高湿度下におけるガスバリア性のさらなる向上が益々要求されつつある今日、特許文献1〜10に記載される塗料を加熱、硬化するだけでは、より厳しい要求には応えられなかった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下で従来よりも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも温和な条件で提ることにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)と2価以上の金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア性塗料に関し、
また本発明は、2価以上の金属化合物(D)が、水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得ることを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関し、
さらに本発明は、2価以上の金属が、Mgであることを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関する。
【0022】
さらに本発明は、エチレン−マレイン酸共重合体(B)中のカルボキシル基に対して、Mg化合物を当量で0.05〜12.5%含有することを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関し、
また本発明は、ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)との重量比が90/10〜10/90であることを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関する。
【0023】
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ガスバリア層形成用塗料(C)]
ガスバリア層形成用塗料(C)は、後述するプラスチック基材等に塗布し、ガスバリア性を付与するためのものであり、PVA(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(以下、EMAという)(B)とを含有するものである。
【0025】
<PVA(A)>
本発明において用いられるPVAは、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0026】
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0027】
本発明において、フィルム表面にガスバリア性を付与するために積層されるポリマーは水溶性とすることが生産上好ましく、疎水性の共重合成分を多量に含有させると水溶性が損なわれるので好ましくない。
【0028】
なお、ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。ケン化度は100%に近いほどガスバリア性の観点から好ましく、ケン化度が低すぎるとバリア性能が低下する。ケン化度は通常約95%以上が好ましく、98%以上であることがより好ましい。平均重合度は50〜4000が好ましく、200〜3000のものがより好ましい。
【0029】
<EMA(B)>
本発明において用いられるエチレン−マレイン酸共重合体(B)は、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られるものである。また、本発明の目的を損なわない範囲で他のビニル化合物を少量共重合することも可能である。ビニル化合物としては例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数3〜30のオレフィン類や、PVAの水酸基などと反応する反応性基を有する化合物を挙げることができる。
【0030】
本発明におけるEMA(B)中のマレイン酸単位は、10モル%以上含有することが好ましく、マレイン酸単位がほぼ等モルのエチレンと無水マレイン酸との交互共重合体が好ましい。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、PVA単位との反応による架橋構造の形成が不十分でありガスバリア性が低下する。
また、本発明で用いられるEMA(B)は重量平均分子量が3000〜1000000であることが好ましく、5000〜900000であることがより好ましく、10000〜800000であることが更に好ましい。
【0031】
なお、本発明で用いられるEMA(B)中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、一方、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。
【0032】
本発明において用いられるガスバリア層形成用塗料(C)は、PVA(A)とEMA(B)の重量比が(A)/(B)=90/10〜10/90であることが好ましく、70/30〜25/85であることがより好ましく、60/40/〜20/80であることがさらに好ましく、50/50〜35/75であることが特に好ましい。相対的にPVA(A)もしくはEMA(B)のいずれかが極端に多いと、水の存在下に加熱処理しても、バリア性向上の効果が小さい。
【0033】
本発明において用いられるガスバリア層形成用塗料(C)は、PVA(A)とEMA(B)の他に、2価以上の金属化合物(D)を含有することが好ましい。2価以上の金属化合物(D)を含有することによって、バリア層中に架橋構造を形成し得る。2価以上の金属化合物(D)は、水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得るものであることが好ましい。水酸基もしくはカルボキシル基と反応することによって、好適に架橋構造を形成する。ここで生じる架橋構造は、イオン結合、共有結合はもちろん配位的な結合であってもよい。
【0034】
水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得る金属化合物(D)としては、
2価以上の金属のハロゲン化物、水酸化物、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩もしくは亜硫酸塩(D1)、
ジルコニウム錯塩、ハロゲン化ジルコニウム、無機酸のジルコニウム塩もしくは有機酸のジルコニウム塩(D2)等が挙げられ、金属化合物(D1)が好ましい。2価以上の金属化合物(D)としては、各群から選ばれる1種を単独で使用することもできるし、各郡内の2種以上を併用することもできるし、各群から選ばれる1種以上を併用することもできる。
【0035】
金属化合物(D1)としては、2価以上の金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩が好ましい。
2価以上の金属としては、Mg、Ca、Zn、Cu、Co、Fe、Ni、AlもしくはZrが好ましく、Mg、Caがより好ましく、Mgがさらに好ましい。
Mg化合物としては、MgO、Mg(OH)2、MgSO4、MgCl2、MgCO3等が挙げられ、MgO、Mg(OH)2、MgSO4が好ましい。これらMg化合物は、EMA(B)中のカルボキシル基に対し、当量で0.05〜12.5%含有することが好ましく、0.1〜10%含有することがより好ましく、0.15〜7.5%であることがさらに好ましく、0.5〜7.5%であることが特に好ましい。
【0036】
金属化合物(D2)としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸のジルコニウム塩、蟻酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムなどの有機酸のジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、蓚酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩、などがあげられ、炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。炭酸ジルコニウムアンモニウムとしては、ニューテックス(株)製の「ジルコゾールAC−7」が挙げられる。
【0037】
本発明において用いられる塗料(C)は、さらに無機層状化合物を含有することもできる。無機層状化合物を含有することにより、バリア層やガスバリア性積層体のガスバリア性をさらに向上させることができる。
ガスバリア性という観点からは、無機層状化合物の含有量は多い方が好ましい。しかし、無機層状化合物は、水親和性が強く吸湿しやすい。また無機層状化合物を含有する塗料は、高粘度化しやすいので塗装性を損ないやすい。さらに無機層状化合物の含有量が多いと、形成されるガスバリア層やガスバリア性積層体の透明性が低下する。
そこで、これらの観点から無機層状化合物は、PVA(A)とEMA(B)との合計100重量部に対して、1〜300重量部であることが好ましく、2〜200重量部であることがより好ましく、多くとも100重量部であることがさらに好ましい。
【0038】
ここでいう無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物であり、特に溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
無機層状化合物の好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素
雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどがあり、膨潤性フッ素雲母又はモンモリロナイトが特に好ましい。
【0039】
これらの無機層状化合物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0040】
膨潤性フッ素雲母系鉱物は白色度の点で最も好ましく、次式で示されるものである。
α(MF)・β(aMgF2・bMgO)・γSiO2(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1 ≦α≦2、2≦β≦3.5 、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
【0041】
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば、酸化珪素と酸化マグネシウムと各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0042】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法がある(特開平2−149415号公報)。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約 700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物を得ることができる。
【0043】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35重量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成収率が低下するので好ましくない。
【0044】
珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムとすることが好ましい。これらのアルカリ金属は単独で用いてもよいし併用してもよい。また、アルカリ金属のうち、カリウムの場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られないが、ナトリウムあるいはリチウムと併用し、かつ限定された量であれば膨潤性を調節する目的で用いることも可能である。
【0045】
さらに、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。
【0046】
モンモリロナイトは、次式で示されるもので、天然に産出するものを精製することにより得ることができる。
MaSi4(Al2−aMga)O10(OH)2・nH2O(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、式中ではnH2Oで表す。)
またモンモリロナイトには次式群で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
MaSi4(Al1.67−aMg0.5+a)O10(OH)2・nH2O
MaSi4(Fe2−a 3+Mga)O10(OH)2・nH2O
MaSi4(Fe1.67−a 3+Mg0.5+a)O10(OH)2・nH2O
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。)
【0047】
通常、モンモリロナイトはその層間にナトリウムやカルシウム等のイオン交換性カチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。本発明においては、イオン交換処理等によって層間のイオン交換性カチオンがナトリウムに置換されていることが好ましい。また、水処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0048】
無機層状化合物は、PVA(A)及びEMA(B)に直接混合することもできるが、混合する前に予め液状媒体に膨潤、分散しておくことが好ましい。膨潤、分散用の液状媒体としては、特に限定されないが、例えば天然の膨潤性粘土鉱物の場合、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられ、水やメタノール等のアルコール類がより好ましい。
【0049】
本発明において用いられる塗料(C)には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを添加してもよい。
【0050】
熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
次に本発明において用いられる塗料(C)の製造方法について説明する。
たとえば、PVA(A)とEMA(B)を別々に水溶液とし、使用前に混合して用いる方法が好ましい。
2価以上の金属化合物(D)を用いる場合には、種々の方法で塗料(C)を得ることができる。例えば、
(1)PVA(A)の水溶液とEMA(B)の水溶液とを混合する際に2価以上の金属化合物(D)もしくは2価以上の金属化合物(D)の水溶液を混合する、
(2)EMA(B)の水溶液に2価以上の金属化合物(D)を予め溶解しておき、これとPVA(A)の水溶液とを混合する、
(3)PVA(A)の水溶液に2価以上の金属化合物(D)を予め溶解しておき、これとEMA(B)の水溶液とを混合する、
等の方法が挙げられ、(2)の方法が好ましい。
【0052】
塗料(C)の濃度(=固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料(C)の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。この様な観点から、塗料(C)の濃度(=固形分)は、5〜50重量%の範囲にすることが好ましい。
【0053】
[ プラスチック基材 ]
上述のガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材上に直に、又はアンダーコート層(以下、UC層ともいう)を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理した後、さらに水の存在下に加熱処理することによって優れたガスバリア性積層体を形成することができる。
ここで用いられるプラスチック基材は、熱成形可能な熱可塑性樹脂から押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いは絞り成形等の手段で製造された、フィルム状基材の他、ボトル、カップ、トレイ等の各種容器形状を呈する基材であってもよく、フィルム状であることが好ましい。
また、プラスチック基材は、単一の層から構成されるものであってもよいし、あるいは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによって複数の層から構成されるものであってもよい。
【0054】
プラスチック基材を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリカーボネート等が挙げられ、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0055】
オレフィン系共重合体としては、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が、
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等が、
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;
スチレン系共重合体としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が、
塩化ビニル系共重合体としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が、
アクリル系共重合体としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等がそれぞれ挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合し使用しても良い。
【0056】
前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、本発明のガスバリア性積層体を用いて後述するように包装材を形成する場合、包装材としての強度を確保するために、ガスバリア性積層体を構成するプラスチック基材として、各種補強材入りのものを使用することができる。即ち、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
【0057】
[ アンダーコート層 ]
本発明のガスバリア性積層体は、上述のガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材上に直に、又はUC層を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理した後、さらに水の存在下に加熱処理して形成されたものである。そこで本発明において用いられるUC層について説明する。UC層は、ガスバリア層とプラスチック基材との間に位置し、ガスバリア層の密着性向上の役割を主として担う。
UC層は、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系等種々のポリマーから形成され得、ウレタン系のUC層が好ましい。
【0058】
例えば、ウレタン系のUC層の場合、
(1) ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等のポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有するUC用組成物をプラスチック基材上に塗工、加熱し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させ、ウレタン系のUC層を形成することができる。該UC層上に、前記塗料(C)の溶液を塗工し、これを加熱すれば基材/UC層/ガスバリア層からなる積層体を得ることができる。
(2) UC用組成物をプラスチック基材上に塗工、乾燥し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応が完了していない、UC層の前駆体を得、該前駆体上に前記塗料(C)の溶液を塗工し、加熱することによってUC層の形成とガスバリア層の形成とを一度に行って、基材/UC層/ガスバリア層を得ることもできる。
(3) あるいは、UC用組成物をプラスチック基材上に塗工後、加熱せずに、前記ガスバリア層形成用塗料を塗工し、加熱することによってUC層の形成とガスバリア層の形成とを一度に行って、基材/UC層/バリア層からなる積層体を得ることもできる。
UC用組成物に含まれるポリイソシアネートが,ガスバリア層との界面領域において,PVA(A)中の水酸基とも反応し、密着性向上に寄与する他、ガスバリア層の架橋を補助し、耐水性の向上にも効果があると考えられるので、(2)、(3)の方法が好ましい。
【0059】
UC層の形成に供されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0060】
これらのポリエステルポリオールは,ガラス転移温度(以下、Tgという)−50℃〜120℃のものが好ましく,−20℃〜100℃のものがより好ましく,0℃〜90℃のものがさらに好ましい。ポリエステルポリオールの好適なTgは、塗料(C)を塗布後加熱硬化する際の加熱硬化条件とも関係する。比較的低温で加熱硬化する場合には、比較的高Tgのポリエステルポリオールが好ましく、比較的高温で加熱硬化する場合には、低温から高温まで比較的幅広いTgのポリエステルポリオールが好適に使用できる。例えば、180℃で塗料(C)を加熱硬化する場合には、70〜90℃程度のTgのポリエステルポリオールが好ましい。一方、200℃で塗料(C)を加熱硬化する場合には、0〜90℃程度のTgのポリエステルポリオールを使用することができる。
また,これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000〜10万のものが好ましく,3000〜5万のものがより好ましく,1万〜4万のものがさらに好ましい。
【0061】
UC層の形成に供されるポリイソシアネートとしては、
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フエニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフエニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジ イソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、
上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HMDIともいう)の三量体である3官能イソシアヌレート体が好ましい。
【0062】
ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの重量比は10:90〜99:1のものが好ましく,30:70〜90:10のものがより好ましく,50:50〜85:15のものがさらに好ましい。
【0063】
UC層の膜厚は使用する用途に応じて適宜決めることが出来るが、0.1μm〜10μmの厚みであることが好ましく、0.1μm〜5μmの厚みであるとより好ましく、0.1μm〜1μmの厚みであることが特に好ましい。0.1μm未満の厚みでは接着性を発現する事が困難となり、一方10μmを越える厚みになると塗工等の生産工程において困難を生じやすくなる。
【0064】
UC用組成物中のポリエステルオールとポリイソシアネートとの濃度は適切な溶剤を用いて調節することができ,その濃度は両者を足して0.5〜80重量%の範囲であることが好ましく、1〜70重量%の範囲であることがより好ましい。溶液の濃度が低すぎると,必要な膜厚の塗膜を形成することが困難となり,また,乾燥時に余分な熱量を必要としてしまうので好ましくない.溶液の濃度が高すぎると溶液粘度が高くなりすぎて,混合、塗工時などにおける操作性の悪化を招く問題が生じる。
【0065】
UC用組成物に使用できる溶剤としては、例えば,トルエン,MEK,シクロヘキサノン,ソルベッソ,イソホロン,キシレン,MIBK,酢酸エチル,酢酸ブチルがあげられるが,これらに限定されるものではない.
UC層には上記成分の他に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
【0066】
UC層、バリア層を形成するには,各層を形成するための組成物を,ロールコーター方式,グラビア方式,グラビアオフセット方式,スプレー塗装方式,あるいはそれらを組み合わせた方式などにより,それぞれプラスチック基材上、UC層上に、所望の厚さに塗布することができるが,これらの方式に限定されるものではない。
また、未延伸フィルムに塗布して乾燥した後、延伸処理することもできる。例えば、乾燥後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)、熱処理することもできる。あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後に塗料等を塗布し、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることも可能である。
本発明におけるガスバリア層の厚みは、積層体のガスバリア性を十分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましい。
【0067】
[ ガスバリア性積層体 ]
本発明のガスバリア性積層体は、上述のガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材上に直に、又はUC層を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理した後、さらに水の存在下に加熱処理して形成されたものである。
即ち、塗料(C)を塗布した後、一端加熱処理することによって、PVA(A)とEMA(B)とのエステル化反応、及び塗料(C)が2価以上の金属化合物(D)を含有する場合には該金属化合物(D)とPVA(A)、もしくは該金属化合物(D)とEMA(B)との反応が生起し、最終のガスバリア性積層体の前駆体ともいうべきガスバリア性積層体(以下、この前駆体を「ガスバリア性積層体(1)」ということもある)が生成される。該前駆体を水の存在下に加熱処理することによって、飛躍的にガスバリア性の向上したガスバリア性積層体を得ることができる(以下、水の存在下に加熱処理したガスバリア性積層体を「ガスバリア性積層体(2)」ということもある)。
従来の技術の欄で述べたように、塗料を塗布した後、加熱することによって、PVA中の水酸基とポリアクリル酸中もしくはEMA中のCOOHとを十分にエステル化反応させたり、上記官能基と金属とを架橋反応させたりするためには、これまではより高温もしくは長時間加熱する必要があると考えられていた。しかし、熱による各種架橋構造の導入で高湿度下におけるガスバリア性を向上させるには、プラスチック基材自体及び形成されつつあるバリア層の耐熱性等の観点からも現実的には限界があった。
これに対し、何故バリア性が向上するのかその詳細な機構はまだ不明ではあるが、上述したように、塗料(C)を塗布、加熱処理した後、水の存在下に加熱処理することによって、プラスチック基材自体及びバリア層の熱劣化を伴うことなく、従来よりもはるかにガスバリア性に優れたガスバリア性積層体(2)を得ることができる。
【0068】
PVA(A)とEMA(B)との比や、2価以上の金属化合物(D)の含有の有無、そして2価以上の金属化合物(D)を含有する場合にはその含有量等によっても影響を受け得るので、塗料(C)の好ましい加熱処理条件は一概には言えないが、100℃以上300℃以下の温度で行うことが好ましく、120℃以上250℃以下がより好ましく、140℃以上240℃以下がさらに好ましく、160℃以上220℃以下が特に好ましい。
詳しくは、100℃以上140℃未満の温度範囲で90秒以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で1分以上、または180℃以上250℃未満の温度範囲で30秒以上の熱処理を行うことが好ましく、
100℃以上140℃未満の温度範囲で2分以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で90秒以上、または180℃以上240℃以上の温度範囲で1分以上の熱処理を行うことがより好ましく、
100℃以上140℃未満の温度範囲で4分以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で3分以上、または180℃以上220℃未満の温度範囲で2分程度の熱処理を行うことが特に好ましい。
【0069】
加熱処理の温度が低すぎるあるいは時間が短すぎると、架橋反応が不十分となり、ガスバリア性積層体(1)の耐水性が不十分となる。また、加熱処理を300℃を超える温度で行うと、形成されるバリア層及びプラスチック基材に変形、皺熱分解等が生じ、その結果ガスバリア性等の物性低下が引き起こされ易い。
また、加熱処理時間が長いほど、高湿度下でのガスバリア性は向上する傾向にあるが、生産性および基材フィルムの熱による変形、劣化等を考慮すると加熱処理時間は1時間以内であることが好ましく、30分以内であるとより好ましく、20分以内であることが特に好ましい。
例えば、PVA(A)/EMA(B)=30/70(重量比)、Mg(OH)2をEMA(B)中のCOOHに対して1〜5%となるように含有した場合には、160〜200℃で15秒〜10分程度加熱処理することが好ましい。
【0070】
次いで得られたガスバリア性積層体(1)を水の存在下に加熱処理すればよい。
ガスバリア性積層体(1)を水の存在下に加熱処理する方法としては、以下に示すような種々の方法が挙げられる。
(1) ガスバリア性積層体(1)を水(湯)に浸漬する。
(2) ガスバリア性積層体(1)に水(湯)を霧状、シャワー状にして吹き付ける。
(3) ガスバリア性積層体(1)を高湿度下におく。
(4) ガスバリア性積層体(1)を水蒸気にさらす。水蒸気を吹き付けつつ、熱ロールで加熱してもよい。
これら複数の方法を組み合わせることもできる。
処理に使用する水の温度や環境温度は、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましく、110〜130℃であることが最も好ましい。また、処理時間は、1分以上であることが好ましく、10分以上であるとさらに好ましく、20分以上であることが最も好ましい。水の温度や環境温度はより高く、処理時間はより長い方が好ましいが、生産性、経済性、省エネルギー等の観点から、温度は高くても140℃程度、時間は長くても1時間程度が現実的である。
【0071】
処理条件によっても異なるので一概には言えないが、水の存在下に加熱処理することによって、高湿度下における酸素透過度を処理前のレベルの1/1.5〜1/70程度にまで小さくし、酸素ガスバリア性を向上することができる。
例えば、25℃、80%相対湿度の条件下で測定した酸素透過度が、処理前は13cc・μm/m2・24h・atm以下、良くても3.1cc・μm/m2・24h・atm程度だった透過度が、水の存在下に加熱処理することによって、1.5cc・μm/m2・24h・atm以下に、そして良い場合には0.05cc・μm/m2・24h・atm程度にまで酸素透過度を低下することができる。
【0072】
また、食品を収容する容器(包装材)のうち、食品を容器(=包装材)に収容した後、加圧下に水蒸気でレトルト処理(殺菌処理)する必要がある場合には、このレトルト処理を利用して包装材を構成するガスバリア層の性能を向上することもできる。
即ち、ガスバリア性積層体(1)を得、これを用いて食品包装容器を得、食品を収容した後、加圧下に水蒸気で120℃、30分程度レトルト処理(殺菌処理)することによって、食品包装容器を構成していたガスバリア性積層体(1)のガスバリア性を向上させ、ガスバリア性積層体(2)とすることができる。
【0073】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
<酸素透過度>
熱処理のみを行ったフィルムは25℃、80%RHの雰囲気下に放置した後Modern Control社製、酸素透過試験器OX−TRAN TWINを用い、25℃、80%RHにおける酸素透過度を求めた。また同様にして、熱処理後、水の存在下に加熱処理したフィルムは、処理後25℃、80%RHにおける酸素透過度を求めた。具体的には、25℃、80%RHに加湿した酸素ガス及び窒素ガス(キャリアーガス)を用いた。
【0075】
PVA(A)とEMA(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されたフィルム(=バリア層)の酸素透過度は以下の計算式により求めた。
1/Ptotal=1/Pfilm+1/PPET
但し、
Ptotal:PVA(A)とEMA(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されたフィルム(=バリア層)、及び基材フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)層とからなる積層フィルムの酸素透過度。UC層を有する場合には、フィルム(=バリア層)、UC層及び基材フィルムの酸素透過度。
Pfilm:PVA(A)とEMA(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されたフィルム層の酸素透過度。
PPET:基材フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)層の酸素透過度。UC層を有する場合には、UC層及び基材フィルムの酸素透過度。
【0076】
[実施例1−前・後]
ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロン200(Tg67℃)、Mn=17000)をトルエン/MEK混合溶媒に溶解したものと、ポリイソシアネート(住友化学(株)製、スミジュール3300)を、ポリエステルとポリイソシアネートの重量比が60/40になるように調整し、混合溶液を得た。この混合溶液にジブチルすずラウリレート1%MEK溶液、MEKおよび酢酸エチルを混合し、固形分約14%のプライマー組成物(=UC層形成用組成物)を得た。
【0077】
PVA(クラレ(株)製、ポバール124(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約2400))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、PVA水溶液を得た。別途、対COOH当量が4.4%になるようMg(OH)2を溶解したEMA(重量平均分子量100000)水溶液を調整した。
PVAとEMAの重量比が表1に示すようになるように、上記PVA水溶液と上記EMA水溶液とを混合し、固形分10重量%の混合液(=バリア層形成用塗料)を得た。
【0078】
2軸延伸ポリエステルフィルム(厚み12μm)上に、上記プライマー組成物をバーコーターNo.4を用いて塗工し、電気オーブンで80℃30秒の条件で乾燥し、厚さ0.5μmの皮膜を形成し、積層フィルムを得た。この積層フィルム上に上記PVA、EMA混合液をバーコーターNo.6を用いて塗工し、電気オーブンで80℃2分乾燥した後、電気オーブンで200℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ2μmの皮膜を形成し、積層フィルム1を得た(実施例1−前)。
実施例1−後で得た積層フィルム1を、オートクレーブを用いて熱水中(120℃、1.2kgf/cm2)で30分間処理し、積層フィルム2を得た(実施例1−後)。
実施例1−前・後で得た積層フィルム及びフィルム層(=ガスバリア層)の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2−前・後]
熱水処理条件を105℃、0.3kgf/cm2にしたこと以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0080】
[実施例3−前・後]
対COOH当量が2.5%になるようCa(OH)2を溶解したEMA水溶液を調整した。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1−前・後]
金属化合物を溶解していないEMA水溶液を調整した。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0082】
[実施例4−前・後]
プライマー層を用いないこと以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0083】
[実施例5−前・後]
ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロンGK−880(Tg84℃)、Mn=23000)をトルエン/MEK混合溶媒に溶解したものと、ポリイソシアネート(住友化学(株)製、スミジュール3300)を、ポリエステルとポリイソシアネートの重量比が60/40になるように調整し、混合溶液を得た。この混合溶液にジブチルすずラウリレート1%MEK溶液、MEKおよび酢酸エチルを混合し、固形分約14%のプライマー組成物を得た。
【0084】
PVA(クラレ(株)製、ポバール124(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約2400))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、PVA水溶液を得た。別途、対COOH当量を4.4%になるようMg(OH)2を溶解したEMA(重量平均分子量100000)水溶液を調整した。
PVAとEMAの重量比が表1に示すようになるように、上記PVA水溶液と上記EMA水溶液とを混合し、固形分10重量%の混合液を得た。
【0085】
2軸延伸ポリエステルフィルム(厚み12μm)上に、上記プライマー組成物をバーコーターNo.4を用いて塗工し、電気オーブンで80℃30秒の条件で乾燥し、厚さ0.5μmの皮膜を形成し、積層フィルムを得た。この積層フィルム上に上記PVA、EMA混合液をバーコーターNo.6を用いて塗工し、電気オーブンで80℃2分乾燥した後、電気オーブンで200℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ2μmの皮膜を形成し、積層フィルム1を得た(実施例5−前)。
実施例5−前で得た積層フィルム1を、オートクレーブを用いて熱水中(120℃、1.2kgf/cm2)で30分間処理し、積層フィルム2を得た(実施例5−後)。
実施例5−前・後で得た積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0086】
[実施例6−前・後]
乾燥及び熱処理条件を表1に示すように180℃2分にしたこと以外は、実施例5−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0087】
[実施例7−前・後]〜[実施例9−前・後]
PVAとEMAの重量比が表1に示すようになるように、実施例1で用いたPVA水溶液と実施例1で用いたEMA水溶液とを混合し、固形分10重量%の混合液を得た。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0088】
[実施例10−前・後]〜[実施例11−前・後]
対COOH当量を表1に示すように1.1%または8.8%になるようMg(OH)2を溶解したEMA水溶液を調整した。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0089】
[実施例12−前・後]
乾燥及び熱処理条件を240℃2分にしたこと以外は実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0090】
[実施例13−前・後]
乾燥及び熱処理条件を240℃2分にしたこと以外は実施例5−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【発明の効果】
本発明により、構造中に塩素を含有せず、高湿度下での酸素ガスバリア性の点で優れ、さらに従来よりも著しく高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体の製造方法を提供することが出来た。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高湿度下においても優れたガスバリア性を有するガスバリア性積層体を形成し得るガスバリア性塗料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリアミドフィルム、ポリエステルフィルム等の熱可塑性樹脂フィルムは、強度、透明性、成形性に優れていることから、包装材料として幅広い用途に使用されている。しかし、これらの熱可塑性樹脂フィルムは酸素等のガス透過性が大きいので、一般食品、レトルト処理食品、化粧品、医療用品、農薬等の包装に使用した場合、長期間保存する内にフィルムを透過した酸素等のガスにより内容物の変質が生じることがある。
【0003】
そこで、熱可塑性樹脂の表面にポリ塩化ビニリデン(以下PVDCと略記する)のエマルジョン等をコーティングし、ガスバリア性の高いPVDC層を形成せしめた積層フィルムが食品包装等に幅広く使用されてきた。しかし、PVDCは焼却時に酸性ガス等の有機物質を発生するため、近年環境への関心が高まるとともに他材料への移行が強く望まれている。
【0004】
PVDCに代わる材料としてポリビニルアルコール(以下PVAと略記する)は有毒ガスの発生もなく、低湿度雰囲気下でのガスバリア性も高いが、湿度が高くなるにつれて急激にガスバリア性が低下するので、水分を含む食品等の包装には用いることが出来ない場合が多い。
【0005】
PVAの高湿度下でのガスバリア性の低下を改善したポリマーとして、ビニルアルコールとエチレンの共重合体(EVOH)が知られている。しかし、高湿度でのガスバリア性を実用レベルに維持するためにはエチレンの共重合比をある程度高くする必要があり、このようなポリマーは水に難溶となる。
そこで、エチレンの共重合比の高いEVOHを用いてコーティング剤を得るには、有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒を用いる必要があり、環境問題の観点からも望ましくなく、また有機溶媒の回収工程などを必要とするため、コスト高になるという問題がある。
【0006】
水溶性のポリマーからなる液状組成物をフィルムにコートし、高湿度下でも高いガスバリア性を発現させる方法として、PVAとポリアクリル酸またはポリメタクリル酸の部分中和物とからなる水溶液をフィルムにコートし熱処理することにより、両ポリマーをエステル結合により架橋する方法が提案されている(特許文献1:特開平06−220221号公報、特許文献2:同07−102083号公報、特許文献3:同07−205379号公報、特許文献4:同07−266441号公報、特許文献5:同08−041218号公報、特許文献6:同10−237180号公報、特許文献7:同特開2000−000931号公報等参照)。
しかし、上記公報に提案される方法では、高度なガスバリア性を発現させるためには高温での加熱処理もしくは長時間の加熱処理が必要であり、製造時に多量のエネルギーを要するため環境への負荷が少なくない。
また、高温で熱処理すると、バリア層を構成するPVA等の変色や分解の恐れが生じる他、バリア層を積層しているプラスチックフィルム等の基材に皺が生じるなどの変形が生じ、包装用材料として使用できなくなる。プラスチック基材の劣化を防ぐためには、高温加熱に十分耐え得るような特殊な耐熱性フィルムを基材とする必要があり、汎用性、経済性の点で難がある。
一方、熱処理温度が低いと、非常に長時間処理する必要があり、生産性が低下するという問題点が生じる。
【0007】
【特許文献1】
特開平06−220221号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平07−102083号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平07−205379号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平07−266441号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平08−041218号公報
【0012】
【特許文献6】
特開平10−237180号公報
【0013】
【特許文献7】
特開2000−000931号公報
【0014】
また、PVAに架橋構造を導入することで、上記PVAフィルムの問題点を解決するための検討がなされている。しかし、一般的に架橋密度の増加と共にPVAフィルムの酸素ガスバリア性の湿度依存性は小さくなるが、その反面PVAフィルムが本来有している乾燥条件下での酸素ガスバリア性が低下してしまい、結果として高湿度下での良好な酸素ガスバリア性を得ることは非常に困難である。
尚、一般にポリマー分子を架橋することにより耐水性は向上するが、ガスバリア性は酸素等の比較的小さな分子の侵入や拡散を防ぐ性質であり、単にポリマーを架橋してもガスバリア性が得られるとは限らず、たとえば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの三次元架橋性ポリマーはガスバリア性を有していない。
【0015】
PVAのような水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下でも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも低温もしくは短時間の加熱処理で提る方法が提案されている(特許文献8:特開2001−323204号公報、特許文献9:同2002−020677号公報、特許文献10:同2002−241671号公報参照)。
【0016】
【特許文献8】
特開2001−323204号公報
【0017】
【特許文献9】
特開2002−020677号公報
【0018】
【特許文献10】
特開2002−241671号公報
【0019】
特許文献8〜10に記載される塗料は、水溶性のポリマーを用いながらも特許文献1〜7に記載される塗料よりも低温もしくは短時間の加熱で高湿度下で従来よりも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を形成し得る。
しかし、特許文献1〜10に記載される、加熱によって、PVA中の水酸基とポリアクリル酸中もしくはエチレン−マレイン酸共重合体中のCOOHとをエステル化反応させたり、金属架橋構造を導入するという方法では、高湿度下におけるガスバリア性の向上には限界があった。即ち、加熱条件をより高温長時間にしてもある一定の値以上酸素透過度は小さくはならず、むしろ大きくなってしまうと逆転現象が生じた。過酷な加熱条件によって、プラスチック基材や形成されつつあるバリア層が熱劣化したためと考えられる。また、高温長時間という加熱条件は、プラスチック基材や形成されつつあるバリア層の着色やカールをも生起し、この点でも好ましくない。
以上の結果、高湿度下におけるガスバリア性のさらなる向上が益々要求されつつある今日、特許文献1〜10に記載される塗料を加熱、硬化するだけでは、より厳しい要求には応えられなかった。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、水溶性のポリマーを用いながらも高湿度下で従来よりも高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体を、従来よりも温和な条件で提ることにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)と2価以上の金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア性塗料に関し、
また本発明は、2価以上の金属化合物(D)が、水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得ることを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関し、
さらに本発明は、2価以上の金属が、Mgであることを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関する。
【0022】
さらに本発明は、エチレン−マレイン酸共重合体(B)中のカルボキシル基に対して、Mg化合物を当量で0.05〜12.5%含有することを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関し、
また本発明は、ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)との重量比が90/10〜10/90であることを特徴とする上記発明に記載のガスバリア性塗料に関する。
【0023】
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
[ガスバリア層形成用塗料(C)]
ガスバリア層形成用塗料(C)は、後述するプラスチック基材等に塗布し、ガスバリア性を付与するためのものであり、PVA(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(以下、EMAという)(B)とを含有するものである。
【0025】
<PVA(A)>
本発明において用いられるPVAは、ビニルエステルの重合体を完全または部分ケン化するなどの公知の方法を用いて得ることができる。
ビニルエステルとしては、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、中でも酢酸ビニルが工業的に最も好ましい。
【0026】
本発明の効果を損ねない範囲で、ビニルエステルに対し他のビニル化合物を共重合することも可能である。他のビニル系モノマーとしては、クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸およびそのエステル、塩、無水物、アミド、ニトリル類や、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸およびその塩、炭素数2〜30のα−オレフィン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルピロリドン類などが挙げられる。
【0027】
本発明において、フィルム表面にガスバリア性を付与するために積層されるポリマーは水溶性とすることが生産上好ましく、疎水性の共重合成分を多量に含有させると水溶性が損なわれるので好ましくない。
【0028】
なお、ケン化方法としては公知のアルカリケン化法や酸ケン化法を用いることができ、中でもメタノール中で水酸化アルカリを使用して加アルコール分解する方法が好ましい。ケン化度は100%に近いほどガスバリア性の観点から好ましく、ケン化度が低すぎるとバリア性能が低下する。ケン化度は通常約95%以上が好ましく、98%以上であることがより好ましい。平均重合度は50〜4000が好ましく、200〜3000のものがより好ましい。
【0029】
<EMA(B)>
本発明において用いられるエチレン−マレイン酸共重合体(B)は、無水マレイン酸とエチレンとを溶液ラジカル重合などの公知の方法で重合することにより得られるものである。また、本発明の目的を損なわない範囲で他のビニル化合物を少量共重合することも可能である。ビニル化合物としては例えば、アクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタアクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数3〜30のオレフィン類や、PVAの水酸基などと反応する反応性基を有する化合物を挙げることができる。
【0030】
本発明におけるEMA(B)中のマレイン酸単位は、10モル%以上含有することが好ましく、マレイン酸単位がほぼ等モルのエチレンと無水マレイン酸との交互共重合体が好ましい。マレイン酸単位が10モル%より少ないと、PVA単位との反応による架橋構造の形成が不十分でありガスバリア性が低下する。
また、本発明で用いられるEMA(B)は重量平均分子量が3000〜1000000であることが好ましく、5000〜900000であることがより好ましく、10000〜800000であることが更に好ましい。
【0031】
なお、本発明で用いられるEMA(B)中のマレイン酸単位は、乾燥状態では隣接カルボキシル基が脱水環化した無水マレイン酸構造となりやすく、一方、湿潤時や水溶液中では開環してマレイン酸構造となる。
【0032】
本発明において用いられるガスバリア層形成用塗料(C)は、PVA(A)とEMA(B)の重量比が(A)/(B)=90/10〜10/90であることが好ましく、70/30〜25/85であることがより好ましく、60/40/〜20/80であることがさらに好ましく、50/50〜35/75であることが特に好ましい。相対的にPVA(A)もしくはEMA(B)のいずれかが極端に多いと、水の存在下に加熱処理しても、バリア性向上の効果が小さい。
【0033】
本発明において用いられるガスバリア層形成用塗料(C)は、PVA(A)とEMA(B)の他に、2価以上の金属化合物(D)を含有することが好ましい。2価以上の金属化合物(D)を含有することによって、バリア層中に架橋構造を形成し得る。2価以上の金属化合物(D)は、水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得るものであることが好ましい。水酸基もしくはカルボキシル基と反応することによって、好適に架橋構造を形成する。ここで生じる架橋構造は、イオン結合、共有結合はもちろん配位的な結合であってもよい。
【0034】
水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得る金属化合物(D)としては、
2価以上の金属のハロゲン化物、水酸化物、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩もしくは亜硫酸塩(D1)、
ジルコニウム錯塩、ハロゲン化ジルコニウム、無機酸のジルコニウム塩もしくは有機酸のジルコニウム塩(D2)等が挙げられ、金属化合物(D1)が好ましい。2価以上の金属化合物(D)としては、各群から選ばれる1種を単独で使用することもできるし、各郡内の2種以上を併用することもできるし、各群から選ばれる1種以上を併用することもできる。
【0035】
金属化合物(D1)としては、2価以上の金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硫酸塩が好ましい。
2価以上の金属としては、Mg、Ca、Zn、Cu、Co、Fe、Ni、AlもしくはZrが好ましく、Mg、Caがより好ましく、Mgがさらに好ましい。
Mg化合物としては、MgO、Mg(OH)2、MgSO4、MgCl2、MgCO3等が挙げられ、MgO、Mg(OH)2、MgSO4が好ましい。これらMg化合物は、EMA(B)中のカルボキシル基に対し、当量で0.05〜12.5%含有することが好ましく、0.1〜10%含有することがより好ましく、0.15〜7.5%であることがさらに好ましく、0.5〜7.5%であることが特に好ましい。
【0036】
金属化合物(D2)としては、例えば、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、4塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウム等のハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸のジルコニウム塩、蟻酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、プロピオン酸ジルコニウム、カプリル酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウムなどの有機酸のジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、蓚酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩、などがあげられ、炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。炭酸ジルコニウムアンモニウムとしては、ニューテックス(株)製の「ジルコゾールAC−7」が挙げられる。
【0037】
本発明において用いられる塗料(C)は、さらに無機層状化合物を含有することもできる。無機層状化合物を含有することにより、バリア層やガスバリア性積層体のガスバリア性をさらに向上させることができる。
ガスバリア性という観点からは、無機層状化合物の含有量は多い方が好ましい。しかし、無機層状化合物は、水親和性が強く吸湿しやすい。また無機層状化合物を含有する塗料は、高粘度化しやすいので塗装性を損ないやすい。さらに無機層状化合物の含有量が多いと、形成されるガスバリア層やガスバリア性積層体の透明性が低下する。
そこで、これらの観点から無機層状化合物は、PVA(A)とEMA(B)との合計100重量部に対して、1〜300重量部であることが好ましく、2〜200重量部であることがより好ましく、多くとも100重量部であることがさらに好ましい。
【0038】
ここでいう無機層状化合物とは、単位結晶層が重なって層状構造を形成する無機化合物であり、特に溶媒中で膨潤、劈開するものが好ましい。
無機層状化合物の好ましい例としては、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、バーミキュライト、フッ素
雲母、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、レピドライト、マーガライト、クリントナイト、アナンダイト、緑泥石、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、テトラシリリックマイカ、タルク、パイロフィライト、ナクライト、カオリナイト、ハロイサイト、クリソタイル、ナトリウムテニオライト、ザンソフィライト、アンチゴライト、ディッカイト、ハイドロタルサイトなどがあり、膨潤性フッ素雲母又はモンモリロナイトが特に好ましい。
【0039】
これらの無機層状化合物は、天然に産するものであっても、人工的に合成あるいは変性されたものであってもよく、またそれらをオニウム塩などの有機物で処理したものであってもよい。
【0040】
膨潤性フッ素雲母系鉱物は白色度の点で最も好ましく、次式で示されるものである。
α(MF)・β(aMgF2・bMgO)・γSiO2(式中、Mはナトリウム又はリチウムを表し、α、β、γ、a及びbは各々係数を表し、0.1 ≦α≦2、2≦β≦3.5 、3≦γ≦4、0≦a≦1、0≦b≦1、a+b=1である。)
【0041】
このような膨潤性フッ素雲母系鉱物の製造法としては、例えば、酸化珪素と酸化マグネシウムと各種フッ化物とを混合し、その混合物を電気炉あるいはガス炉中で1400〜1500℃の温度範囲で完全に溶融し、その冷却過程で反応容器内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法がある。
【0042】
また、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法がある(特開平2−149415号公報)。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約 700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物を得ることができる。
【0043】
この際、タルクと混合する珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリの量は、混合物全体の10〜35重量%の範囲とすることが好ましく、この範囲を外れる場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物の生成収率が低下するので好ましくない。
【0044】
珪フッ化アルカリ又はフッ化アルカリのアルカリ金属は、ナトリウムあるいはリチウムとすることが好ましい。これらのアルカリ金属は単独で用いてもよいし併用してもよい。また、アルカリ金属のうち、カリウムの場合には膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られないが、ナトリウムあるいはリチウムと併用し、かつ限定された量であれば膨潤性を調節する目的で用いることも可能である。
【0045】
さらに、膨潤性フッ素雲母系鉱物を製造する工程において、アルミナを少量配合し、生成する膨潤性フッ素雲母系鉱物の膨潤性を調整することも可能である。
【0046】
モンモリロナイトは、次式で示されるもので、天然に産出するものを精製することにより得ることができる。
MaSi4(Al2−aMga)O10(OH)2・nH2O(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。また、層間のイオン交換性カチオンと結合している水分子の数は、カチオン種や湿度等の条件に応じて変わりうるので、式中ではnH2Oで表す。)
またモンモリロナイトには次式群で表される、マグネシアンモンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、鉄マグネシアンモンモリロナイトの同型イオン置換体も存在し、これらを用いてもよい。
MaSi4(Al1.67−aMg0.5+a)O10(OH)2・nH2O
MaSi4(Fe2−a 3+Mga)O10(OH)2・nH2O
MaSi4(Fe1.67−a 3+Mg0.5+a)O10(OH)2・nH2O
(式中、Mはナトリウムのカチオンを表し、aは0.25〜0.60である。)
【0047】
通常、モンモリロナイトはその層間にナトリウムやカルシウム等のイオン交換性カチオンを有するが、その含有比率は産地によって異なる。本発明においては、イオン交換処理等によって層間のイオン交換性カチオンがナトリウムに置換されていることが好ましい。また、水処理により精製したモンモリロナイトを用いることが好ましい。
【0048】
無機層状化合物は、PVA(A)及びEMA(B)に直接混合することもできるが、混合する前に予め液状媒体に膨潤、分散しておくことが好ましい。膨潤、分散用の液状媒体としては、特に限定されないが、例えば天然の膨潤性粘土鉱物の場合、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられ、水やメタノール等のアルコール類がより好ましい。
【0049】
本発明において用いられる塗料(C)には、その特性を大きく損わない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、強化材、顔料、劣化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤、滑剤などを添加してもよい。
【0050】
熱安定剤、酸化防止剤及び劣化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール類、リン化合物、ヒンダードアミン類、イオウ化合物、銅化合物、アルカリ金属のハロゲン化物あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0051】
次に本発明において用いられる塗料(C)の製造方法について説明する。
たとえば、PVA(A)とEMA(B)を別々に水溶液とし、使用前に混合して用いる方法が好ましい。
2価以上の金属化合物(D)を用いる場合には、種々の方法で塗料(C)を得ることができる。例えば、
(1)PVA(A)の水溶液とEMA(B)の水溶液とを混合する際に2価以上の金属化合物(D)もしくは2価以上の金属化合物(D)の水溶液を混合する、
(2)EMA(B)の水溶液に2価以上の金属化合物(D)を予め溶解しておき、これとPVA(A)の水溶液とを混合する、
(3)PVA(A)の水溶液に2価以上の金属化合物(D)を予め溶解しておき、これとEMA(B)の水溶液とを混合する、
等の方法が挙げられ、(2)の方法が好ましい。
【0052】
塗料(C)の濃度(=固形分)は、塗装装置や乾燥・加熱装置の仕様によって適宜変更され得るものであるが、あまりに希薄な溶液ではガスバリア性を発現するのに充分な厚みの層をコートすることが困難となり、また、その後の乾燥工程において長時間を要するという問題を生じやすい。他方、塗料(C)の濃度が高すぎると、均一な塗料を得にくく、塗装性に問題を生じ易い。この様な観点から、塗料(C)の濃度(=固形分)は、5〜50重量%の範囲にすることが好ましい。
【0053】
[ プラスチック基材 ]
上述のガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材上に直に、又はアンダーコート層(以下、UC層ともいう)を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理した後、さらに水の存在下に加熱処理することによって優れたガスバリア性積層体を形成することができる。
ここで用いられるプラスチック基材は、熱成形可能な熱可塑性樹脂から押出成形、射出成形、ブロー成形、延伸ブロー成形或いは絞り成形等の手段で製造された、フィルム状基材の他、ボトル、カップ、トレイ等の各種容器形状を呈する基材であってもよく、フィルム状であることが好ましい。
また、プラスチック基材は、単一の層から構成されるものであってもよいし、あるいは例えば同時溶融押出しや、その他のラミネーションによって複数の層から構成されるものであってもよい。
【0054】
プラスチック基材を構成する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミド、スチレン系共重合体、塩化ビニル系共重合体、アクリル系共重合体、ポリカーボネート等が挙げられ、オレフィン系共重合体、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0055】
オレフィン系共重合体としては、低−、中−或いは高−密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−共重合体、アイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が、
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリエチレンナフタレート等が、
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、メタキシリレンアジパミド等のポリアミド;
スチレン系共重合体としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ABS樹脂)等が、
塩化ビニル系共重合体としては、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等が、
アクリル系共重合体としては、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレート・エチルアクリレート共重合体等がそれぞれ挙げられる。
これらの熱可塑性樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合し使用しても良い。
【0056】
前記の溶融成形可能な熱可塑性樹脂には、所望に応じて顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤などの添加剤の1種或いは2種類以上を樹脂100重量部当りに合計量として0.001部乃至5.0部の範囲内で添加することもできる。
また、本発明のガスバリア性積層体を用いて後述するように包装材を形成する場合、包装材としての強度を確保するために、ガスバリア性積層体を構成するプラスチック基材として、各種補強材入りのものを使用することができる。即ち、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、カーボン繊維、パルプ、コットン・リンター等の繊維補強材、或いはカーボンブラック、ホワイトカーボン等の粉末補強材、或いはガラスフレーク、アルミフレーク等のフレーク状補強材の1種類或いは2種類以上を、前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として2乃至150重量部の量で配合でき、更に増量の目的で、重質乃至軟質の炭酸カルシウム、雲母、滑石、カオリン、石膏、クレイ、硫酸バリウム、アルミナ粉、シリカ粉、炭酸マグネシウム等の1種類或いは2種類以上を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
さらに、ガスバリア性の向上を目指して、鱗片状の無機微粉末、例えば水膨潤性雲母、クレイ等を前記熱可塑性樹脂100重量部当り合計量として5乃至100重量部の量でそれ自体公知の処方に従って配合しても何ら差支えない。
【0057】
[ アンダーコート層 ]
本発明のガスバリア性積層体は、上述のガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材上に直に、又はUC層を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理した後、さらに水の存在下に加熱処理して形成されたものである。そこで本発明において用いられるUC層について説明する。UC層は、ガスバリア層とプラスチック基材との間に位置し、ガスバリア層の密着性向上の役割を主として担う。
UC層は、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、エポキシ系等種々のポリマーから形成され得、ウレタン系のUC層が好ましい。
【0058】
例えば、ウレタン系のUC層の場合、
(1) ポリエステルポリオールやポリエーテルポリオール等のポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含有するUC用組成物をプラスチック基材上に塗工、加熱し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを反応させ、ウレタン系のUC層を形成することができる。該UC層上に、前記塗料(C)の溶液を塗工し、これを加熱すれば基材/UC層/ガスバリア層からなる積層体を得ることができる。
(2) UC用組成物をプラスチック基材上に塗工、乾燥し、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応が完了していない、UC層の前駆体を得、該前駆体上に前記塗料(C)の溶液を塗工し、加熱することによってUC層の形成とガスバリア層の形成とを一度に行って、基材/UC層/ガスバリア層を得ることもできる。
(3) あるいは、UC用組成物をプラスチック基材上に塗工後、加熱せずに、前記ガスバリア層形成用塗料を塗工し、加熱することによってUC層の形成とガスバリア層の形成とを一度に行って、基材/UC層/バリア層からなる積層体を得ることもできる。
UC用組成物に含まれるポリイソシアネートが,ガスバリア層との界面領域において,PVA(A)中の水酸基とも反応し、密着性向上に寄与する他、ガスバリア層の架橋を補助し、耐水性の向上にも効果があると考えられるので、(2)、(3)の方法が好ましい。
【0059】
UC層の形成に供されるポリオール成分としては、ポリエステルポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、グリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
多価カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸,シクロヘキサンジカルボン酸の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
グリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0060】
これらのポリエステルポリオールは,ガラス転移温度(以下、Tgという)−50℃〜120℃のものが好ましく,−20℃〜100℃のものがより好ましく,0℃〜90℃のものがさらに好ましい。ポリエステルポリオールの好適なTgは、塗料(C)を塗布後加熱硬化する際の加熱硬化条件とも関係する。比較的低温で加熱硬化する場合には、比較的高Tgのポリエステルポリオールが好ましく、比較的高温で加熱硬化する場合には、低温から高温まで比較的幅広いTgのポリエステルポリオールが好適に使用できる。例えば、180℃で塗料(C)を加熱硬化する場合には、70〜90℃程度のTgのポリエステルポリオールが好ましい。一方、200℃で塗料(C)を加熱硬化する場合には、0〜90℃程度のTgのポリエステルポリオールを使用することができる。
また,これらのポリエステルポリオールの数平均分子量は1000〜10万のものが好ましく,3000〜5万のものがより好ましく,1万〜4万のものがさらに好ましい。
【0061】
UC層の形成に供されるポリイソシアネートとしては、
例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フエニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフエニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジ イソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、
上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート、ビューレット、アロファネート等の多官能ポリイソシアネート化合物、あるいはトリメチロールプロパン、グリセリン等の3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HMDIともいう)の三量体である3官能イソシアヌレート体が好ましい。
【0062】
ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの重量比は10:90〜99:1のものが好ましく,30:70〜90:10のものがより好ましく,50:50〜85:15のものがさらに好ましい。
【0063】
UC層の膜厚は使用する用途に応じて適宜決めることが出来るが、0.1μm〜10μmの厚みであることが好ましく、0.1μm〜5μmの厚みであるとより好ましく、0.1μm〜1μmの厚みであることが特に好ましい。0.1μm未満の厚みでは接着性を発現する事が困難となり、一方10μmを越える厚みになると塗工等の生産工程において困難を生じやすくなる。
【0064】
UC用組成物中のポリエステルオールとポリイソシアネートとの濃度は適切な溶剤を用いて調節することができ,その濃度は両者を足して0.5〜80重量%の範囲であることが好ましく、1〜70重量%の範囲であることがより好ましい。溶液の濃度が低すぎると,必要な膜厚の塗膜を形成することが困難となり,また,乾燥時に余分な熱量を必要としてしまうので好ましくない.溶液の濃度が高すぎると溶液粘度が高くなりすぎて,混合、塗工時などにおける操作性の悪化を招く問題が生じる。
【0065】
UC用組成物に使用できる溶剤としては、例えば,トルエン,MEK,シクロヘキサノン,ソルベッソ,イソホロン,キシレン,MIBK,酢酸エチル,酢酸ブチルがあげられるが,これらに限定されるものではない.
UC層には上記成分の他に、公知である硬化促進触媒,充填剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、粘着付与性樹脂、繊維類、顔料等の着色剤、可使用時間延長剤等を使用することもできる。
【0066】
UC層、バリア層を形成するには,各層を形成するための組成物を,ロールコーター方式,グラビア方式,グラビアオフセット方式,スプレー塗装方式,あるいはそれらを組み合わせた方式などにより,それぞれプラスチック基材上、UC層上に、所望の厚さに塗布することができるが,これらの方式に限定されるものではない。
また、未延伸フィルムに塗布して乾燥した後、延伸処理することもできる。例えば、乾燥後、テンター式延伸機に供給してフィルムを走行方向と幅方向に同時に延伸(同時2軸延伸)、熱処理することもできる。あるいは、多段熱ロール等を用いてフィルムの走行方向に延伸を行った後に塗料等を塗布し、乾燥後、テンター式延伸機によって幅方向に延伸(逐次2軸延伸)してもよい。また、走行方向の延伸とテンターでの同時2軸延伸を組み合わせることも可能である。
本発明におけるガスバリア層の厚みは、積層体のガスバリア性を十分高めるためには少なくとも0.1μmより厚くすることが望ましい。
【0067】
[ ガスバリア性積層体 ]
本発明のガスバリア性積層体は、上述のガスバリア層形成用塗料(C)をプラスチック基材上に直に、又はUC層を介してプラスチック基材上に塗布し、加熱処理した後、さらに水の存在下に加熱処理して形成されたものである。
即ち、塗料(C)を塗布した後、一端加熱処理することによって、PVA(A)とEMA(B)とのエステル化反応、及び塗料(C)が2価以上の金属化合物(D)を含有する場合には該金属化合物(D)とPVA(A)、もしくは該金属化合物(D)とEMA(B)との反応が生起し、最終のガスバリア性積層体の前駆体ともいうべきガスバリア性積層体(以下、この前駆体を「ガスバリア性積層体(1)」ということもある)が生成される。該前駆体を水の存在下に加熱処理することによって、飛躍的にガスバリア性の向上したガスバリア性積層体を得ることができる(以下、水の存在下に加熱処理したガスバリア性積層体を「ガスバリア性積層体(2)」ということもある)。
従来の技術の欄で述べたように、塗料を塗布した後、加熱することによって、PVA中の水酸基とポリアクリル酸中もしくはEMA中のCOOHとを十分にエステル化反応させたり、上記官能基と金属とを架橋反応させたりするためには、これまではより高温もしくは長時間加熱する必要があると考えられていた。しかし、熱による各種架橋構造の導入で高湿度下におけるガスバリア性を向上させるには、プラスチック基材自体及び形成されつつあるバリア層の耐熱性等の観点からも現実的には限界があった。
これに対し、何故バリア性が向上するのかその詳細な機構はまだ不明ではあるが、上述したように、塗料(C)を塗布、加熱処理した後、水の存在下に加熱処理することによって、プラスチック基材自体及びバリア層の熱劣化を伴うことなく、従来よりもはるかにガスバリア性に優れたガスバリア性積層体(2)を得ることができる。
【0068】
PVA(A)とEMA(B)との比や、2価以上の金属化合物(D)の含有の有無、そして2価以上の金属化合物(D)を含有する場合にはその含有量等によっても影響を受け得るので、塗料(C)の好ましい加熱処理条件は一概には言えないが、100℃以上300℃以下の温度で行うことが好ましく、120℃以上250℃以下がより好ましく、140℃以上240℃以下がさらに好ましく、160℃以上220℃以下が特に好ましい。
詳しくは、100℃以上140℃未満の温度範囲で90秒以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で1分以上、または180℃以上250℃未満の温度範囲で30秒以上の熱処理を行うことが好ましく、
100℃以上140℃未満の温度範囲で2分以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で90秒以上、または180℃以上240℃以上の温度範囲で1分以上の熱処理を行うことがより好ましく、
100℃以上140℃未満の温度範囲で4分以上、または140℃以上180℃未満の温度範囲で3分以上、または180℃以上220℃未満の温度範囲で2分程度の熱処理を行うことが特に好ましい。
【0069】
加熱処理の温度が低すぎるあるいは時間が短すぎると、架橋反応が不十分となり、ガスバリア性積層体(1)の耐水性が不十分となる。また、加熱処理を300℃を超える温度で行うと、形成されるバリア層及びプラスチック基材に変形、皺熱分解等が生じ、その結果ガスバリア性等の物性低下が引き起こされ易い。
また、加熱処理時間が長いほど、高湿度下でのガスバリア性は向上する傾向にあるが、生産性および基材フィルムの熱による変形、劣化等を考慮すると加熱処理時間は1時間以内であることが好ましく、30分以内であるとより好ましく、20分以内であることが特に好ましい。
例えば、PVA(A)/EMA(B)=30/70(重量比)、Mg(OH)2をEMA(B)中のCOOHに対して1〜5%となるように含有した場合には、160〜200℃で15秒〜10分程度加熱処理することが好ましい。
【0070】
次いで得られたガスバリア性積層体(1)を水の存在下に加熱処理すればよい。
ガスバリア性積層体(1)を水の存在下に加熱処理する方法としては、以下に示すような種々の方法が挙げられる。
(1) ガスバリア性積層体(1)を水(湯)に浸漬する。
(2) ガスバリア性積層体(1)に水(湯)を霧状、シャワー状にして吹き付ける。
(3) ガスバリア性積層体(1)を高湿度下におく。
(4) ガスバリア性積層体(1)を水蒸気にさらす。水蒸気を吹き付けつつ、熱ロールで加熱してもよい。
これら複数の方法を組み合わせることもできる。
処理に使用する水の温度や環境温度は、90℃以上であることが好ましく、95℃以上であることがより好ましく、100〜140℃であることがさらに好ましく、110〜130℃であることが最も好ましい。また、処理時間は、1分以上であることが好ましく、10分以上であるとさらに好ましく、20分以上であることが最も好ましい。水の温度や環境温度はより高く、処理時間はより長い方が好ましいが、生産性、経済性、省エネルギー等の観点から、温度は高くても140℃程度、時間は長くても1時間程度が現実的である。
【0071】
処理条件によっても異なるので一概には言えないが、水の存在下に加熱処理することによって、高湿度下における酸素透過度を処理前のレベルの1/1.5〜1/70程度にまで小さくし、酸素ガスバリア性を向上することができる。
例えば、25℃、80%相対湿度の条件下で測定した酸素透過度が、処理前は13cc・μm/m2・24h・atm以下、良くても3.1cc・μm/m2・24h・atm程度だった透過度が、水の存在下に加熱処理することによって、1.5cc・μm/m2・24h・atm以下に、そして良い場合には0.05cc・μm/m2・24h・atm程度にまで酸素透過度を低下することができる。
【0072】
また、食品を収容する容器(包装材)のうち、食品を容器(=包装材)に収容した後、加圧下に水蒸気でレトルト処理(殺菌処理)する必要がある場合には、このレトルト処理を利用して包装材を構成するガスバリア層の性能を向上することもできる。
即ち、ガスバリア性積層体(1)を得、これを用いて食品包装容器を得、食品を収容した後、加圧下に水蒸気で120℃、30分程度レトルト処理(殺菌処理)することによって、食品包装容器を構成していたガスバリア性積層体(1)のガスバリア性を向上させ、ガスバリア性積層体(2)とすることができる。
【0073】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明について具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
<酸素透過度>
熱処理のみを行ったフィルムは25℃、80%RHの雰囲気下に放置した後Modern Control社製、酸素透過試験器OX−TRAN TWINを用い、25℃、80%RHにおける酸素透過度を求めた。また同様にして、熱処理後、水の存在下に加熱処理したフィルムは、処理後25℃、80%RHにおける酸素透過度を求めた。具体的には、25℃、80%RHに加湿した酸素ガス及び窒素ガス(キャリアーガス)を用いた。
【0075】
PVA(A)とEMA(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されたフィルム(=バリア層)の酸素透過度は以下の計算式により求めた。
1/Ptotal=1/Pfilm+1/PPET
但し、
Ptotal:PVA(A)とEMA(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されたフィルム(=バリア層)、及び基材フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)層とからなる積層フィルムの酸素透過度。UC層を有する場合には、フィルム(=バリア層)、UC層及び基材フィルムの酸素透過度。
Pfilm:PVA(A)とEMA(B)とを含有するガスバリア層形成用塗料(C)から形成されたフィルム層の酸素透過度。
PPET:基材フィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)層の酸素透過度。UC層を有する場合には、UC層及び基材フィルムの酸素透過度。
【0076】
[実施例1−前・後]
ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロン200(Tg67℃)、Mn=17000)をトルエン/MEK混合溶媒に溶解したものと、ポリイソシアネート(住友化学(株)製、スミジュール3300)を、ポリエステルとポリイソシアネートの重量比が60/40になるように調整し、混合溶液を得た。この混合溶液にジブチルすずラウリレート1%MEK溶液、MEKおよび酢酸エチルを混合し、固形分約14%のプライマー組成物(=UC層形成用組成物)を得た。
【0077】
PVA(クラレ(株)製、ポバール124(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約2400))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、PVA水溶液を得た。別途、対COOH当量が4.4%になるようMg(OH)2を溶解したEMA(重量平均分子量100000)水溶液を調整した。
PVAとEMAの重量比が表1に示すようになるように、上記PVA水溶液と上記EMA水溶液とを混合し、固形分10重量%の混合液(=バリア層形成用塗料)を得た。
【0078】
2軸延伸ポリエステルフィルム(厚み12μm)上に、上記プライマー組成物をバーコーターNo.4を用いて塗工し、電気オーブンで80℃30秒の条件で乾燥し、厚さ0.5μmの皮膜を形成し、積層フィルムを得た。この積層フィルム上に上記PVA、EMA混合液をバーコーターNo.6を用いて塗工し、電気オーブンで80℃2分乾燥した後、電気オーブンで200℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ2μmの皮膜を形成し、積層フィルム1を得た(実施例1−前)。
実施例1−後で得た積層フィルム1を、オートクレーブを用いて熱水中(120℃、1.2kgf/cm2)で30分間処理し、積層フィルム2を得た(実施例1−後)。
実施例1−前・後で得た積層フィルム及びフィルム層(=ガスバリア層)の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2−前・後]
熱水処理条件を105℃、0.3kgf/cm2にしたこと以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0080】
[実施例3−前・後]
対COOH当量が2.5%になるようCa(OH)2を溶解したEMA水溶液を調整した。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1−前・後]
金属化合物を溶解していないEMA水溶液を調整した。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0082】
[実施例4−前・後]
プライマー層を用いないこと以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0083】
[実施例5−前・後]
ポリエステル(東洋紡(株)製、バイロンGK−880(Tg84℃)、Mn=23000)をトルエン/MEK混合溶媒に溶解したものと、ポリイソシアネート(住友化学(株)製、スミジュール3300)を、ポリエステルとポリイソシアネートの重量比が60/40になるように調整し、混合溶液を得た。この混合溶液にジブチルすずラウリレート1%MEK溶液、MEKおよび酢酸エチルを混合し、固形分約14%のプライマー組成物を得た。
【0084】
PVA(クラレ(株)製、ポバール124(ポリビニルケン化度98〜99%、平均重合度約2400))を熱水に溶解後、室温に冷却することにより、PVA水溶液を得た。別途、対COOH当量を4.4%になるようMg(OH)2を溶解したEMA(重量平均分子量100000)水溶液を調整した。
PVAとEMAの重量比が表1に示すようになるように、上記PVA水溶液と上記EMA水溶液とを混合し、固形分10重量%の混合液を得た。
【0085】
2軸延伸ポリエステルフィルム(厚み12μm)上に、上記プライマー組成物をバーコーターNo.4を用いて塗工し、電気オーブンで80℃30秒の条件で乾燥し、厚さ0.5μmの皮膜を形成し、積層フィルムを得た。この積層フィルム上に上記PVA、EMA混合液をバーコーターNo.6を用いて塗工し、電気オーブンで80℃2分乾燥した後、電気オーブンで200℃2分乾燥及び熱処理を行い、厚さ2μmの皮膜を形成し、積層フィルム1を得た(実施例5−前)。
実施例5−前で得た積層フィルム1を、オートクレーブを用いて熱水中(120℃、1.2kgf/cm2)で30分間処理し、積層フィルム2を得た(実施例5−後)。
実施例5−前・後で得た積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0086】
[実施例6−前・後]
乾燥及び熱処理条件を表1に示すように180℃2分にしたこと以外は、実施例5−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0087】
[実施例7−前・後]〜[実施例9−前・後]
PVAとEMAの重量比が表1に示すようになるように、実施例1で用いたPVA水溶液と実施例1で用いたEMA水溶液とを混合し、固形分10重量%の混合液を得た。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0088】
[実施例10−前・後]〜[実施例11−前・後]
対COOH当量を表1に示すように1.1%または8.8%になるようMg(OH)2を溶解したEMA水溶液を調整した。得られた水溶液を用いた以外は、実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。
得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0089】
[実施例12−前・後]
乾燥及び熱処理条件を240℃2分にしたこと以外は実施例1−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0090】
[実施例13−前・後]
乾燥及び熱処理条件を240℃2分にしたこと以外は実施例5−前・後と同様にして、積層フィルムを得た。得られた積層フィルム及びフィルム層の酸素透過度を測定した結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
【発明の効果】
本発明により、構造中に塩素を含有せず、高湿度下での酸素ガスバリア性の点で優れ、さらに従来よりも著しく高いガスバリア性を有するガスバリア性積層体の製造方法を提供することが出来た。
Claims (5)
- ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)と2価以上の金属化合物(D)を含有することを特徴とするガスバリア性塗料。
- 2価以上の金属化合物(D)が、水酸基もしくはカルボキシル基と反応し得ることを特徴とする請求項1記載のガスバリア性塗料。
- 2価以上の金属が、Mgであることを特徴とする請求項2記載のガスバリア性塗料。
- エチレン−マレイン酸共重合体(B)中のカルボキシル基に対して、Mg化合物を当量で0.05〜12.5%含有することを特徴とする請求項3記載のガスバリア性塗料。
- ポリビニルアルコール(A)とエチレン−マレイン酸共重合体(B)との重量比が90/10〜10/90であることを特徴とする請求項1ないし4いずれか記載のガスバリア性塗料。
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