JP2004112160A - 高周波回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】必要な基本周波数帯域での挿入損失を最小に抑え、不用な周波数帯域での高調波減衰量を最大にした高周波回路を提供する。
【解決手段】高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1と、前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2との関係が、Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1としたとき、Z2の位相θ2がθ1に対し180度±120度の関係にある高周波回路である。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は2つ以上の異なる周波数の信号を1つのアンテナを共用して送受信する無線通信システム等で用いられ、高周波増幅回路と次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路全般に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
携帯無線システムには、例えば主に欧州で盛んなEGSM(Extended Global System for Mobile Communications)方式およびDCS(Digital Cellular System)方式、米国で盛んなPCS(Personal Communication Service)方式、日本で採用されているPDC(Personal Digital Cellular )方式などの時分割マルチプルアクセス(TDMA)を用いた様々なシステムがある。昨今の携帯電話の急激な普及に伴い、特に先進国の主要な大都市部においては各システムに割り当てられた周波数帯域ではシステム利用者を賄いきれず、接続が困難であったり、通話途中で接続が切断するなどの問題が生じている。そこで、利用者が複数のシステムを利用できるようにして、実質的に利用可能な周波数の増加を図り、さらにサービス区域の拡充や各システムの通信インフラを有効活用することが提唱されている。
従来、複数のシステムに対応した小型軽量の高周波回路部品として、例えばEGSMとDCSの2つのシステムに対応した携帯通信機に用いられるデュアルバンド対応の高周波スイッチモジュールが特開平11−225088号公報に開示されている。また、EGSM、DCS、PCSの3つのシステムに対応した携帯通信機に用いられるトリプルバンド対応の高周波スイッチモジュールが特開2000−165288号公報で提案されている。
【0003】
図12にトリプルバンド高周波スイッチモジュールのブロック構成の一例を示す。アンテナANT端子に接続された分波器(ダイプレクサDip)によりEGSMの周波数帯の信号とDCS/PCSの周波数帯の信号を分波し(逆方向では合成するが、本明細書では分波で説明する。)、第1の高周波スイッチSW1はEGSM送信端子TxとEGSM受信端子Rxとを切り換え、第2の高周波スイッチSW2はDCS/PCS送信端子TxとDCS受信端子Rx及びPCS受信端子Rxとを切り換える。ローパスフィルタLPF1、LPF2は送信経路に挿入されパワーアンプで発生する高調波歪発生量を低減する。バンドパスフィルタSAW1、SAW2、SAW3はアンテナANTからの受信信号のうち不要周波数成分を除去し、必要成分だけをローノイズアンプに送る。従って、EGSM送信端子TxとDCS/PCS送信端子Txの前段にはパワーアンプHPA1、HPA2が設けられ、EGSM受信端子RxとDCS受信端子Rx及びPCS受信端子Rxの後段にはローノイズアンプLNA1、LNA2、LNA3が設けられている。
【0004】
携帯通信機の小型軽量化の要求は依然として強く、部品の共有化や機能を集約したモジュール化が進められている。例えば、図12の点線で囲まれた回路部品は、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)等の誘電体シートを多層に積み重ねた積層体内に伝送線路やコンデンサを電極パターンにより形成し、ダイオード等を積層体上に搭載したマルチバンド用アンテナスイッチモジュールとして実現されている(上記特許公報参照)。また、一点鎖線で囲まれた範囲のモジュール化についてもディスクリートのSAWフィルタを積層体上に搭載した形で実現されている。
【0005】
一方、携帯通信機の送信側では比較的大電力の信号を出力するために、数W程度のハイパワーアンプ(本発明ではパワーアンプ等と区別をせず高周波増幅器と言うがパワーアンプ等と記す場合がある。)が用いられる。携帯電話機等は小型で低消費電力にする必要があるため、DC電力の大部分を消費するハイパワーアンプには、DC−RF電力変換効率(電力付加効率とも言う。)が高く小型であることが求められる。特に携帯電話機等においては、機器が小型であることと、電池の1回充電当たりの通話時間の長さが製品の重要なセールス・ポイントであるために、ハイパワーアンプの小型化と高効率化が必須である。ハイパワーアンプまで含めた回路部品のモジュール化は検討課題であるが、実際LTCC等で積層モジュール化することは実現されていない。
【0006】
このアンプとアンテナ或いはアンテナスイッチモジュールに関与する従来技術として、受信専用アンテナとアンプを積層体上に搭載し両者間に位相調整回路を設けたアンテナ装置が特開2000−183612号公報にある。しかしながら、このものはアンプから漏れた電磁波を当該受信専用アンテナ(パッチアンンテナ)自身が受信した場合の閉ループの位相ずれを調整するためのものであった。即ち、高周波スイッチ機能を複合化したものではない。
また、複数の誘電体層を積層してなる多層基板に高周波スイッチとアンプを構成する伝送線路やコンデンサを内蔵し、多層基板上にトランジスタ等を搭載してモジュール化することが特開平10−126307号公報に示されている。しかし、このものでは構想を示すだけで両者を一体化したときの現実的な問題点や手段は何ら開示されておらず実現困難なものであった。
さらに、ハイパワーアンプとこの出力電力をモニタするカプラを一体化し、両者間の整合をスプリアス周波数において非共役整合に設定した高周波用送信モジュールが特開2002−171137号公報に開示されている。しかしながら、この高周波用送信モジュールでは、高周波部品間の挿入損失低減と高調波減衰特性の劣化についての具体的な解決手段は提示されていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記したように高周波増幅回路の後段に接続される高周波回路としては、アンテナスイッチモジュールASMがある。あるいはパワーアンプの出力電力をモニタして補正をかけるカプラの場合もあり、アイソレータがあり、さらにはフィルタが接続される場合もある。
また従来、高周波増幅回路と、この高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路について種々提案はあるが、実現された例がないため具体的な問題とその解決手段は提示されていない。従い、携帯通信機の組立てメーカでは、既存の高周波増幅器回路と上記した既存の高周波回路とを種々組み合わせ、変換効率や高調波発生量等の送信特性もしくはアンテナ出力特性をモニタした結果、相性の良い組み合わせを選定する設計手法に留まっているのが実情である。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑み、高周波増幅回路と、その後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路において、必要な基本周波数帯域での挿入損失を最小に抑えると共に、不用周波数帯域での高調波減衰量を最大にして変換効率の高い高周波回路を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1と、前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2との関係が、Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1としたとき、Z2の位相θ2がθ1に対し180度±120度の関係にあることを特徴とする高周波回路である。
【0010】
本発明の高周波回路は、高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1、前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2、前記位相調整回路の前記後段の高周波回路側から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ3との関係が、Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1、θ1に対する180度の位相をθ0としたとき、Z3の位相θ3がθ0に対し時計回り方向にあり、前記位相調整回路としてハイパスフィルタ回路を用い、Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように調整されていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の高周波回路は、高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1、前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2、前記位相調整回路の前記後段の高周波回路側から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ3との関係が、Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1、θ1に対する180度の位相をθ0としたとき、Z3の位相θ3がθ0に対し反時計回り方向にあり、前記位相調整回路としてローパスフィルタ回路を用い、Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように調整されていることを特徴とするものである。
【0012】
前記位相調整回路としてハイパスフィルタの代わりに伝送線路を用いたときは、前記Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように、現在の伝送線路の長さよりも短くなる方向に調整するものである。
また、前記位相調整回路としてローパスフィルタの代わりに伝送線路を用いたときは、前記Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように、現在の伝送線路の長さよりも長くなる方向に調整するものである。
【0013】
前記後段の高周波回路としては、スイッチ回路、カプラ回路、アイソレータ回路、フィルタ回路などがある。また前記高周波増幅回路に代えてカプラ回路を対象とし、後段の高周波回路をスイッチ回路とした場合でも本発明は実施できる。
以下、本発明の実施形態の説明では、高周波増幅器の後段にスイッチ回路を含むアンテナスイッチモジュールを設ける場合を例にとり説明する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本願発明者は、高周波増幅器回路とアンテナスイッチモジュール回路間の位相関係がアンテナ出力特性に及ぼす影響について図11に示すモデルを用いて検討した。具体的には高周波増幅器回路の出力整合回路端とアンテナスイッチモジュールの送信端子との位相関係を、アンテナスイッチモジュールASMの前に移相器PSを置き、接続基準面から見た高周波増幅器側のインピーダンスZ1を固定し、アンテナスイッチモジュール側のインピーダンスZ2を変化させ、位相変化と挿入損失及び基本波周波数、2倍波周波数、3倍波周波数の減衰量とその傾向についてスミスチャート上にプロットした。
尚、本発明では便宜上、高周波増幅器側のインピーダンスZ1を固定し、アンテナスイッチモジュール側のインピーダンスZ2を変化調整した例に基づいて説明するが、逆にアンテナスイッチモジュール側のインピーダンスZ2を固定し、高周波増幅器側のインピーダンスZ1を変化調整することでも本発明は実施できる。さらに、両側(高周波増幅器HPA、アンテナスイッチモジュールASM)を適宜調整することでも本発明は実施できる。これらは特許請求の範囲についても言えることである。
【0015】
以上の検討の結果、位相の変化量とアンテナ出力特性(挿入損失や高調波減衰量など)には密接な関係があり、n次高調波帯域での相互のインピーダンス特性も全体特性に強く影響を与えることを知見した。図1を参照してまとめると、
(1)基準面から見たアンテナスイッチモジュール側の位相が、高周波増幅器側の位相θの符号を反転させた位相θ1(−θ)のとき挿入損失及び減衰量は最小となる。即ち、インピーダンスZ1の共役整合に相当する位相θ1で挿入損失が最小となる。しかし減衰量も最小となる。
(2)基準面から見たアンテナスイッチモジュール側の位相が、θ1の逆位相θ0(θ1±180度)で挿入損失及び減衰量は最大となる。即ち、共役インピーダンスに相当する位相θ1の逆位相θ0で減衰量が最大となる。しかし、挿入損失も最大となる。
尚、共役インピーダンスとは、あるインピーダンスに対して複素共役の関係にあるインピーダンスである。等しい抵抗成分と大きさが等しく符号が反対のリアクタンス分をもつインピーダンスの関係をいい、θのインピーダンス(R+jX)とθ1のインピーダンス(R−jX)は複素共役である。このような関係を共役整合と言いインピーダンス整合が実現する。ここで(R+jX)と(R−jX)による共役整合が理想的で最適であるが、(R’−jX)というリアクタンス部分のみを考慮し調整するだけでも効果があることを本検討により知見した。また、インピーダンス(R+jX)全てを合わせるのは難しいが、少なくとも位相を考慮すれば十分な効果があり、且つ現実的な調整手段であることを見出した。
【0016】
本発明ではこの共役整合の関係を位相で捉え、必要な基本周波数帯域においては(1)を満足させて、挿入損失を最小に抑え、インピーダンスZ1の共役整合に相当する位相関係を設定することが第1の指針となる。即ち、高周波増幅器とアンテナスイッチモジュールを繋ぐ位相調整回路によりLCを調整し両者間を略50Ωかつ共役整合となし挿入損失を最小にする。
次に、不要な2倍波、3倍波のn次周波数帯域においては高調波減衰量を最大にするため(2)を満足するように、インピーダンスZ2を非共役整合に相当する位相θ2に調整する。非共役整合とは共役整合以外の状態である。これはθ1に対して逆位相にあるθ0が最も望ましい位置であることを知見し、且つ許容範囲があることを見出した。この点が本発明の特徴の一つであり、これを最大減衰量に対し5dB劣化を許容するθ0±120度の位相θ2の領域とした。好ましくは3dB劣化を許容するθ0±90度であり、更に好ましくはθ0±45度である。領域としたのは個々の場合によって条件が異なるし移動する方向も異なるので±の範囲としてとらえた。よって、まずは共役整合に相当する位相θ1から逆位相の方向に位相をずらすことを行い、より具体的にはθ2の領域内に位相調整することが第2の指針となる。
【0017】
ここで位相調整を行う位相調整回路は伝送線路あるいはLC回路で実施できる。例えば、図5は伝送線路での実施例である。増幅器出力側には半導体素子FET(電界効果型トランジスタ)Q1があり、このトランジスタQ1のドレイン端子Dには伝送線路あるいはインダクタSL1を介して電源供給端子Vdd1より電源が供給される。ドレイン端子Dは伝送線路ASL1と直流カットコンデンサCa2を介し出力端子P0に繋がっている。アンテナスイッチ送信側は送信端子P1に直流カットコンデンサCa1と伝送線路ASL2が接続され、その後方には送信系回路の一部である伝送線路L5とLC回路からなるローパスフィルタLPFが繋がっている。出力端子P0と送信端子P1を接続する際にはコンデンサCa1、Ca2の一方を省略できる。そして、ここにLC回路を挿入する及び/又は伝送線路ASL1、ASL2を位相調整回路とするものである。伝送線路ASL2は送信端子P1とローパスフィルタLPFを積層体内で接続するために必要とされるのでこれを同時に利用する。実際の設定にあたっては、先ず、増幅器出力側の伝送線路ASL1の長さあるいは幅を調整しながら適切な位置に適切な容量のコンデンサCa3、Ca4を挿入し、アンテナスイッチの入力インピーダンスの略50Ω整合を図る。次に、必要に応じて伝送線路ASL2の長さあるいは幅を調整する。更に、必要に応じてL5の長さ、幅、LPF送信端子側の並列Cの容量値等も調整しても良い。
【0018】
また、調整手段については以下のことが明らかになった。図2に示すように、
(a)位相調整回路のアンテナスイッチ側からアンテナスイッチを見たときのインピーダンスZ3の位相θ3がスミスチャート上でθ0に対し反時計回り方向にある場合は、狙いの位相領域θ2がθ3よりも最良位相θ0に近づくように、図3▲1▼〜▲4▼のLC回路からなるローパスフィルタを挿入する。ここで直流カットコンデンサCa1、Ca2のどちらか一方は省略できるので、ここではCa1を省略し点線で示している。また、▲2▼、▲4▼でアンテナスイッチ側のコンデンサCa1を省略すればグランドに落ちる伝送線路L5と並列共振を作ることが出来る。この場合伝送線路L5が短くてすみ、積層時のレイアウト調整に都合が良い。
(b)位相調整回路のアンテナスイッチ側からアンテナスイッチを見たときのインピーダンスZ3の位相θ3がスミスチャート上でθ0に対し時計回り方向にある場合は、狙いの位相領域θ2がθ3よりも最良位相θ0に近づくように、図4▲1▼〜▲4▼のLC回路からなるハイパスフィルタを挿入する。この場合もどちらか一方の直流カットコンデンサCa1、Ca2は省略できるし、他方のCは実質無くても動作するので、結局、高周波増幅器側のコンデンサCa2あるいはCだけを残しておき、他端が接地されたインダクタLあるいは伝送線路SLの一端をアンテナスイッチ側に接続して構成すれば良い。従って、ハイパスフィルタを挿入する場合の位相調整は回路が簡略されて望ましい。
また(a)(b)の手段はモジュール化後に微調整ができる点で望ましい。
【0019】
また伝送線路の長さあるいは幅を調整する手段でも実施できる。
(c)位相調整回路のアンテナスイッチ側からアンテナスイッチを見たときのインピーダンスZ3の位相θ3がスミスチャート上でθ0に対し反時計回り方向にある場合は、狙いの位相領域θ2がθ3よりも最良位相θ0に近づくように、現在の伝送線路の長さよりも長くする方向に調節し、必要に応じてL5の長さ、幅、LPF送信端子側の並列Cの容量値等も調整して、θ3を時計回り方向に移動させて調整する。尚、ここで伝送線路の幅を細くしても良いが、定性的にはこのときの位置がスミスチャートの上半円にいるときは時計回りの動きをするが、下半円にいるときは反時計回りに近い動きをする。よって、幅を細くする手段は現在位置と回転方向の考慮が必要となる。
(b)同じく位相θ3がθ0に対し時計回り方向にある場合は、狙いの位相領域θ2がθ3よりも最良位相θ0に近づくように、現在の伝送線路の長さよりも短くする方向に調節し、必要に応じてL5の長さ、幅、LPF送信端子側の並列Cの容量値等も調整して、θ3を反時計回り方向に移動させる。尚、伝送線路ASL1側は太く短くする調整の方が望ましい。但し、伝送線路の幅を太くする場合は、細くする場合とは反対にスミスチャートの上半円にいるときは反時計回りの動きをするが、下半円にいるときは時計回りに近い動きをするので、この場合も現在位置と回転方向の考慮が必要となる。これらの調整手段も本発明の特徴である。
【0020】
以上のことより、高周波増幅器を含む高周波複合部品の回路設計にあたって、これに含まれる半導体素子、例えばトランジスタの出力整合回路からアンテナスイッチ部との接続部までを基本波周波数だけでなく高調波成分をも考慮して設計すれば、従来の基本波周波数だけを考慮して設計する手法に比べて、アンテナからの送信出力特性が格段に向上することを確認した。
【0021】
以下、図面を参照しながらマルチバンド用高周波複合部品を例にとり説明する。図6にEGSM、DCS、PCSトリプルバンド用アンテナスイッチモジュールの等価回路図を示す。図7に同じく高周波増幅器の等価回路図を示す。図5に両者を繋ぐ位相整合回路周辺を示す。また、本実施例では図12の実線で示す範囲を一つの積層体内に複合化した積層モジュールとするものである。図10はその積層体シートの一部展開図である。
【0022】
図6においてダイプレクサDipは、伝送線路L1〜L4および容量C1〜C4により構成される。伝送線路L2と容量C1は直列共振回路を形成し、DCS帯域(送信周波数:1710〜1785MHz、受信周波数:1805〜1880MHz)およびPCS帯域(送信周波数:1850〜1910MHz、受信周波数:1930〜1990MHz)に共振周波数を持つように設計する。本例では1.8GHzに減衰極をあわせた。また、伝送線路L4と容量C3は直列共振回路を形成し、EGSM帯域(送信周波数:880〜915MHz、受信周波数:925〜960MHz)に共振周波数を持つように設計する。本例では0.9GHzに減衰極をあわせた。この回路により、EGSM系の信号とDCS/PCS系の信号とを分波合成することが可能となる。伝送線路L1、L3はDCS/PCS系の信号の周波数にとって高インピーダンスになるようにある程度の長さに設定するのが好ましい。これによりDCS/PCS系の信号がEGSM系の経路へ伝送しにくくなる。逆に容量C2、C4はEGSM系の信号の周波数にとって高インピーダンスになるように比較的小さい容量値に設定されるのが好ましい。これによりEGSM系の信号がDCS/PCS系の経路へ伝送しにくくなる。
【0023】
第1のスイッチ回路SW1は、容量C5、C6、伝送線路L5、L6、PINダイオードD1、D2、および抵抗R1により構成される。伝送線路L5、L6はEGSMの送信周波数帯においてλ/4共振器となるように伝送線路の長さを設定する。ただし、伝送線路L5はEGSMの送信周波数においてグランドレベルがオープン(高インピーダンス状態)に見える程度のチョークコイルでも代用可能である。この場合インダクタンス値は10〜100nH程度が望ましい。抵抗R1はコントロール電源VC1がHigh状態での第1、第2のダイオードD1、D2に流れる電流を決定する。本例では100Ω〜200Ωを使用した。容量C5、C6はコントロール電源のDCカットのために必要である。コントロール電源VC1がHighの時にはPINダイオードD2には接続ワイヤなどの寄生インダクタンスが存在するため、これを打ち消すように容量C6と直列共振させる。容量C6の容量値は適宜設定する。
【0024】
以上によりコントロール電源VC1がHighの時には、第1、第2のダイオードD1、D2は共にONとなり、第2のダイオードD2と伝送線路L6の接続点がグランドレベルとなり、λ/4共振器である伝送線路L6の反対側のインピーダンスが無限大となる。したがって、コントロール電源VC1がHighの時にはダイプレクサDip〜EGSM Rx間の経路では信号は通過できず、ダイプレクサDip〜EGSM Tx間の経路では信号が通過しやすくなる。一方、コントロール電源VC1がLowの時には第1のダイオードD1もOFFとなりダイプレクサDip〜EGSM Tx間の経路では信号は通過できず、また第2のダイオードD2もOFFであるので、ダイプレクサDip〜EGSM Rx間の経路では信号が通過しやすくなる。以上の構成により、EGSM信号の送受信の切り換えが可能となる。
【0025】
第2のスイッチ回路SW2は、容量C7〜C10、伝送線路L7〜L10、PINダイオードD3〜D6、および抵抗R2、R3により構成される。伝送線路L7〜L10はDCS/PCSの信号の周波数においてλ/4共振器となるように伝送線路の長さを設定する。ただし、伝送線路L7、L9はそれぞれDCSの送信周波数において、PCSの送信周波数においてグランドレベルがオープン(高インピーダンス状態)に見える程度のチョークコイルでも代用可能である。この場合インダクタンス値は5〜60nH程度が望ましい。抵抗R2はコントロール電源VC2がHigh状態での第3、第4のダイオードD3、D4に流れる電流を決定する。本例では100Ω〜200Ωを使用した。抵抗R3はコントロール電源VC3がHigh状態での第5、第6のダイオードD5、D6に流れる電流を決定する。本実施例では100Ω〜2kΩを使用した。容量C7、C8、C10はコントロール電源のDCカットのために必要である。またコントロール電源VC2がHighの時にはPINダイオードD4には接続ワイヤなどの寄生インダクタンスが存在するため、容量C7と直列共振するように容量C7の容量値を設定する。
【0026】
以上によりコントロール電源VC2がHighの時には、第3、第4のダイオードD3、D4は共にONとなり、第4のダイオードD4と伝送線路L8の接続点がグランドレベルとなり、λ/4共振器である伝送線路L8の反対側のインピーダンスが無限大となる。したがって、コントロール電源VC2がHighの時にはダイプレクサDip〜PCS RxおよびダイプレクサDip〜DCS Rx間の経路では信号は通過できず、ダイプレクサDip〜DCS/PCS Tx間の経路では信号が通過しやすくなる。一方、コントロール端子VC2がLowの時には第3のダイオードD3もOFFとなりダイプレクサDip〜DCS/PCSTx間の経路では信号は通過できず、また第4のダイオードD4もOFFであるのでダイプレクサDip〜PCS RxおよびダイプレクサDip〜DCS Rx間の経路では信号が通過しやすくなる。
【0027】
また、コントロール端子VC3がHighの時には、PINダイオードD6には接続ワイヤなどの寄生インダクタンスが存在するため、容量C10と直列共振するように容量C10の容量値を設定する。これによりコントロール端子VC3がHighの時には、第5、第6のダイオードD5、D6は共にONとなり、第6のダイオードD6と伝送線路L10の接続点がグランドレベルとなり、λ/4共振器である伝送線路L10の反対側のインピーダンスが無限大となる。したがって、コントロール端子VC3がHighの時にはDCS Rx間の経路には信号は通過できず、また第6のダイオードD6もOFFであるのでPCS Rx間の経路では信号が通過しやすくなる。逆にコントロール端子VC3がLowの時には第5のダイオードD5もOFFとなり、PCS Rx間の経路には信号は通過できず、DCS Rx間の経路では信号が通過しやすくなる。以上の構成により、コントロール端子VC2がHighの時にはDCS/PCS Txへ、コントロール端子VC2、VC3がそれぞれLow、Highの時にはPCS Rxへ、コントロール端子VC2およびコントロール端子VC3がLowの時にはDCS Rxへの切り換えが可能となる。
【0028】
第1のローパスフィルタLPF1は、伝送線路L11および容量C11〜C13より構成されるπ型のローパスフィルタである。ここでL11とC11は並列共振回路を構成し、その共振周波数はEGSMの送信周波数の2倍もしくは3倍の周波数に設定する。本実施例では3倍の2.7GHzに設定した。以上の構成によりパワーアンプから入力されるEGSM側の送信信号に含まれる高調波歪みを除去できる。
第1のローパスフィルタLPF1は第1の高周波スイッチSW1の第1のダイオードD1と伝送線路L5の間に配置しているが、これはダイプレクサDipと第1の高周波スイッチSW1との間に配置しても良いし、前記伝送線路L5とEGSM Txとの間に配置しても良い。前記第1のローパスフィルタLPF1のグランドに接続する容量を伝送線路L5と並列に配置すれば、並列共振回路を構成することとなり、伝送線路L5の線路長をλ/4よりも短く構成でき、またチョークコイルのインダクタンス値を小さくすることが出来る。
【0029】
第2のローパスフィルタLPF2は、伝送線路L12および容量C14〜C16より構成されるπ型のローパスフィルタである。ここで伝送線路L12と容量C14は並列共振回路を構成し、その共振周波数はDCS/PCS送信周波数の2倍もしくは3倍の周波数に設定する。本実施例では2倍の3.6GHzに設定した。以上の構成によりパワーアンプから入力されるDCS/PCS側の送信信号に含まれる高調波歪みを除去できる。
第2のローパスフィルタLPF2も第1のローパスフィルタLPF1と同様に、ダイプレクサDipと第2の高周波スイッチSW2との間に配置しても良いし、前記伝送線路L7とDCS送信端子DCS Txとの間に配置しても良い。第1、第2のローパスフィルタLPF1、LPF2は、ダイオードD1と伝送線路L5との間、及びダイオードD3と伝送線路L7との間に構成されて、スイッチ回路の中に設けられている。これは回路設計上好ましいが必須ではない。ローパスフィルタは送信信号が通過するダイプレクサ〜送信端子との間の送信経路のどこかの位置に設けてあれば良い。
【0030】
また、EGSM系をさらにGSM850(送信周波数:824〜849MHz、受信周波数:869〜894MHz)とEGSMに分けて、クワッドバンド対応とすることもできる。この場合、送信系は共通端子を用いることができ、受信系は前記トリプルバンド対応アンテナスイッチのEGSM受信端子部にGSM850とEGSMを切り替えるスイッチを接続することにより構成できる。また、前記スイッチの代わりにGSM850、EGSM帯のλ/4共振器である伝送線路を用いて、両者間の周波数を分けることでも実現できる。
【0031】
図7はマルチバンド用高周波複合部品を構成する高周波増幅器側の回路図を示す。高周波増幅器側の整合回路端の出力端子P0を図6のアンテナスイッチモジュールの例えばEGSM Txの送信端子P1に接続し、増幅した送信信号をアンテナスイッチ側に送る役割を果たす。出力端子P0には、直流カットコンデンサCa2を介して、伝送線路ASL1の一端が接続される。伝送線路ASL1には一端を接地されたコンデンサCa3、Ca4が接続されて出力整合回路を構成する。伝送線路ASL1の他端は、半導体素子の一種である電界効果スイッチングトランジスタ(FET)Q1のドレインに接続される。また、FETQ1のソースは接地され、ゲートはバイポーラスイッチング素子(B−Tr)Q2のコレクタに接続される。
【0032】
他方、伝送線路ASL1の他端と電界効果スイッチングトランジスタFET Q1のドレインDとの接続点は、λ/4ストリップライン等からなるインダクタSL1とコンデンサCa5との直列回路を介して接地され、インダクタSL1とコンデンサCa5との接続点はドレイン電圧端子Vdd1に接続されている。また、電界効果スイッチングトランジスタFET Q1のゲートとバイポーラスイッチング素子Q2のコレクタとの接続点は、コンデンサCa6を介して接地されると共にゲート電圧端子Vgにも接続される。
【0033】
更に、バイポーラスイッチング素子Q2のエミッタは接地され、ベースは伝送線路SL3の一端に接続される。バイポーラスイッチング素子Q2のコレクタは、ストリップライン等からなるインダクタSL2とコンデンサCa7との直列回路を介して接地され、インダクタSL2とコンデンサCa7との接続点は、コレクタ電圧端子Vcに接続される。また、インダクタSL2とコンデンサCa7との接続点は、バイポーラスイッチング素子Q2のベースと伝送線路SL3の一端との接続点にも接続される。伝送線路SL3の他端は、コンデンサCa8を介して接地されると共に入力端子Pinに接続される。
尚、図6及び図7の等価回路において伝送線路及びインダクタはストリップラインで構成されることが多いものの、マイクロストリップライン、コプレーナガイドライン等で構成されていてもよい。また、トランジスタはQ1をFET、Q2をB−Trとしたが、それぞれ他の種類のトランジスタでも良い。例えば、Si−MOSFET、GaAsFET、Siバイポーラトランジスタ、GaAsHBT(ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)、HEMT(高電子移動度トランジスタ)等があげられる。もちろん、いくつものトランジスタを集積化したMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路)を用いても良い。また、本実施例では伝送線路SL3とトランジスタQ2の間を直接繋いでいるが、抵抗を介して接続しても良い。
【0034】
図5に位相調整回路の周辺を図示している。位相調整回路は伝送線路またはハイパスフィルタやローパスフィルタ等のLC回路を挿入することで実施でき、その設定指針と調整方法については上述した通りである。ここではEGSM Tx端子P1−P0間に図4▲2▼のハイパスフィルタを挿入した実施態様について説明を加える。図8は高周波増幅器側を固定しアンテナスイッチモジュール側を調整したときの基本波(f)、2倍高調波(2f)、3倍高調波(3f)の動向をスミスチャート上にプロットしたものである。パワーアンプ側を見た位相は2倍高調波(2f)、3倍高調波(3f)共にθの領域にある。出力整合回路の伝送線路ASL1の長さとコンデンサ付加を調整して共役整合の関係となし、アンテナスイッチモジュール側の基本波(f)はほぼ中心の略50Ωで共役整合関係に調整されている。2倍高調波(2f)、3倍高調波(3f)の現在位置は共役整合のθ1の領域にあるが、これをえば18nHのインダクタと6pFのコンデンサで構成したハイパスフィルタを挿入したことにより上述した位相θ2の領域に移動させる。本例では2fの方が目標とするθ0により近いθ0−90度の領域に、3fはθ0−120度の領域に調整することが出来ている。尚、調整する位相や方向は場合によって種々異なるが、不要高調波の主要成分である2fを優先させてθ0に近づけることを基本とし、場合によっては3fは犠牲にしてθ2の許容範外でも良いと見なせる。
【0035】
EGSM(880〜960MHz)での2倍波(2f)、3倍波(3f)の位相と減衰量の関係は図9に示すようであった。即ち(A)は2倍波の位相―減衰量特性を、(B)は3倍波の位相―減衰量特性を示し、縦軸に減衰量(dB)を、横軸にアンテナスイッチモジュール側の入力位相(deg)を表している。(A)によれば最大減衰量を示す位相θ0は−73(dB)の30度付近にある。この位相まで調整できれば申し分無いが、実際の設計上は許容範囲を設けることが相当である。例えば3dB程度の減衰量の劣化を許容できる範囲は180度(θ0±90度)あり、5dB程度の劣化を許容できる範囲は240度(θ0±120度)であることが分かる。これは(B)の3倍波の減衰量特性においても同様の結果であった。実際3dB劣化でも−70(dB)を、5dB劣化でも−65(dB)以上を確保しているのでベストのθ0位相に対し±120度以内に位相調整すれば十分効果があることが分かった。そして、好ましくは±90度、更に好ましくは±45度程度であると言える。また、DCS/PCS系についても同様の範囲で効果が得られることが分かった。
【0036】
次に、図10は図6の等価回路で示されるアンテナスイッチモジュールと図7の等価回路で示される高周波増幅器を一つの積層体内に収めた複合積層モジュールのうち上部2層と下部2層のグリーンシートを抜き出した展開図である。グリーンシートは▲1▼が最上層で以下順に15層で構成され、最後のシート(15)は積層体の裏面を示している。本実施例で使用したグリーンシートは950℃以下の低温焼成が可能なLTCC材料からなる。例えば、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下のAl,Si,Sr,Tiと、Bi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CuO換算で0.01〜5質量%、MnO換算で0.01〜5質量%のBi、Na、K、Cu、Mnをそれぞれ含有した誘電体組成物が用いられる。
グリーンシートは伝送線路や容量を形成しやすいようにシート厚みは40〜200μmのものを使用した。電極材は銀系のものを用いた。このセラミックグリーンシートの各層に伝送線路やコンデンサ容量を電極パターンにより形成し、適宜スルーホールを設けて回路を構成した。このセラミックグリーンシートを順次積層圧着し、950℃で焼成することにより高周波部品が複合化された積層体モジュールが得られる。積層体の大きさは横13.75mm×縦8mm×高さ0.75mm程度であり、積層体の上面にはダイオードやトランジスタ及びチップインダクタ、チップコンデンサを搭載し、その上に金属ケースを被せて完成品とする。完成後の全高は1.8mm程度である。ただし、金属ケースの代わりに、樹脂封止パッケージとしても良く、この場合の全高は1.5mm程度である。
【0037】
積層体内の概略構成は、アンテナスイッチモジュール側は、上部層に分波器及びローパスフィルタを構成する伝送線路を、中部層に分波器、スイッチ回路及びローパスフィルタを構成するコンデンサ容量を、下部層にスイッチ回路を構成する伝送線路が主に形成されている。一方高周波増幅器側は、上部層に初段整合回路の主に伝送線路を、中部層に初段、後段整合回路の主にコンデンサ容量を、下部層にサーマルビアや後段整合回路の主に伝送線路、電源供給用ラインが主に形成されている。高周波増幅器とアンテナスイッチモジュールの接続は上層にあり、相互干渉を避けるためにグリーンシート▲1▼の伝送線路ASL1とグリーンシート▲2▼の伝送線路ASL2とは層を変えて且つ上下に重ならないような位置に形成している。両者の間に介在させるハイパスフィルタは、LC回路をチップインダクタとチップコンデンサで構成し積層体の上面に搭載する。これにより積層体モジュールを作成した後でも調整が出来るので、試作調整に時間がかからず望ましい。
【0038】
この積層体モジュールは、高周波増幅器を構成する電極パターンは左側領域に、他方アンテナスイッチモジュールを構成する電極パターンは右側領域に形成し、グリーンシートは積層方向全てに渡って2つの領域に区分して構成している。さらに左右の領域の間に帯状のグランド電極G0を設け、以上により各電極パターンの配置設計が比較的簡易にできるし、高周波部品間の相互干渉が抑制できる。寸法配置的に余裕がある場合は全部のグリーンシートにこのようなグランド電極G0を設けることが望ましいが、多くの場合それが出来ないのでグリーンシート▲2▼に示すようにグランド電極G0に繋がるスルーホール電極HGを間欠的に設けることでグランド電極G0の作用をなすことができる。ここでスルーホール電極HGは簾状であるので間隔を考慮する必要があり、スルーホール電極HGの間隔gを干渉を防ぎたい最も高い周波数の波長(λ)の1/10以下とする必要がある。好ましくはλ/10〜λ/50程度で遮蔽効果が高まることが分かった。この実施例では間隔gは不等間隔であるが、おおよそDCS帯の3倍波のλ/20(略1mm)〜λ/25程度とした。
以上により、グランド電極G0及びスルーホール電極HGによるグランドによって両者間の干渉が無くなり、高周波増幅器の発振等の不安定動作を防止できる。また必要信号(送信信号)と不要信号とのスプリアス発生を抑えることができ、通過特性の悪化を防止できるものである。
【0039】
図6に示したアンテナスイッチモジュールの等価回路、図7に示した高周波増幅器の等価回路は一例であり、上記した以外にもPDC800帯域(810〜960MHz)、GPS帯域(1575.42MHz)、PHS帯域(1895〜1920MHz)、Bluetooth帯域(2400〜2484MHz)や、米国で普及が見込まれるCDMA2000、中国で普及が見込まれるTD−SCDMAなどを組み合わせたマルチバンドアンテナスイッチ回路の場合も同様の効果が期待できる。これらの場合の回路を用いてデュアルバンド、3バンド、4バンド、5バンド等のマルチモードマルチバンドのアンテナスイッチ回路が得られる。また、増幅回路は多段となしハイパワーアンプとして構成できる。
【0040】
【発明の効果】
本発明によれば、必要な基本周波数帯域での挿入損失を最小に抑えると共に、不用周波数帯域での高調波減衰量を最大にした、損失が無く変換効率の高いアンテナ出力特性の優れた高周波回路、また高周波複合部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマルチバンド用高周波複合部品の位相調整を説明するスミスチャート上の説明図である。
【図2】同じく位相調整の手順を説明する簡略的なスミスチャートの説明図である。
【図3】位相調整の具体的手段の一つであるローパスフィルタを示す回路図である。
【図4】位相調整の具体的手段の一つであるハイパスフィルタを示す回路図である。
【図5】位相調整の具体的手段の一つである伝送線路の場合を示す高周波増幅器の出力整合回路端子とアンテナスイッチモジュール側の送信端子付近の回路図である。
【図6】本発明の一実施例のトリプルバンド用アンテナスイッチモジュールの等価回路図である。
【図7】本発明の一実施例の高周波増幅器の等価回路図である。
【図8】本発明の一実施例であってハイパスフィルタを用いた場合の位相調整の状況を示すスミスチャート図である。
【図9】本発明による位相調整と減衰量の関係を示すもので(A)は位相−2倍波減衰量、(B)は位相−3倍波減衰量の特性線図である。
【図10】本発明のマルチバンド用複合積層モジュールの一実施例を示す、積層体のグリーンシート展開図である。
【図11】本発明の位相調整を検討したモデルのブロック図である。
【図12】本発明のマルチバンド用高周波複合部品、複合積層モジュールの形態を説明するブロック図である。
【符号の説明】
ASM:アンテナスイッチモジュール
HPA:ハイパワーアンプ
Dip:ダイプレクサ(分波器)
SW:スイッチ回路
LPF:ローパスフィルタ回路
SAW:弾性表面波フィルタ
L、SL、ASL:インダクタ、伝送線路
C、Ca:コンデンサ
Q1、Q2:半導体スイッチング素子
G0:グランド電極
HG:スルーホールによるグランド電極

Claims (10)

  1. 高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、
    前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1と、
    前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2との関係が、
    Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1としたとき、
    Z2の位相θ2がθ1に対し180度±120度の関係にあることを特徴とする高周波回路。
  2. 高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、
    前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1、
    前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2、
    前記位相調整回路の前記後段の高周波回路側から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ3との関係が、
    Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1、
    θ1に対する180度の位相をθ0としたとき、
    Z3の位相θ3がθ0に対し時計回り方向にあり、
    前記位相調整回路としてハイパスフィルタ回路を用い、Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように調整されていることを特徴とする高周波回路。
  3. 前記位相調整回路として伝送線路を用いたときは、前記Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように、現在の伝送線路の長さよりも短くなる方向に調整されていることを特徴とする請求項2記載の高周波回路。
  4. 高周波増幅回路と、その高周波増幅回路で増幅された高周波信号が次ぎに処理される後段の高周波回路とを位相調整回路を介して接続した高周波回路であって、
    前記高周波増幅回路にて増幅される高周波の基本周波数のn倍(nは2以上の自然数)の周波数における、前記位相調整回路の前記高周波増幅回路側の基準面から前記高周波増幅回路を見たときのインピーダンスZ1、
    前記基準面から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ2、
    前記位相調整回路の前記後段の高周波回路側から前記後段の高周波回路を見たときのインピーダンスZ3との関係が、
    Z1の位相θの共役整合の関係にある位相をθ1、
    θ1に対する180度の位相をθ0としたとき、
    Z3の位相θ3がθ0に対し反時計回り方向にあり、
    前記位相調整回路としてローパスフィルタ回路を用い、Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように調整されていることを特徴とする高周波回路。
  5. 前記位相調整回路として伝送線路を用いたときは、前記Z2の位相θ2がθ3よりもθ0に近づくように、現在の伝送線路の長さよりも長くなる方向に調整されていることを特徴とする請求項4記載の高周波回路。
  6. 前記後段の高周波回路がスイッチ回路であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の高周波回路。
  7. 前記後段の高周波回路がカプラ回路であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の高周波回路。
  8. 前記後段の高周波回路がアイソレータ回路であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の高周波回路。
  9. 前記後段の高周波回路がフィルタ回路であることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の高周波回路。
  10. 前記高周波増幅回路に代えてカプラ回路とし、後段の高周波回路をスイッチ回路としたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の高周波回路。
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