JP2004108310A - エンジンの始動制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】エンジンを始動するときに、クランク軸を回転させるベルトの滑りを低減させて、不快音を低減させることを目的とする。
【解決手段】モータジェネレータ15の回転数を検出するモータ回転数センサ36と、クランク軸18の回転数を検出するクランク回転数センサ35と、モータジェネレータ15の出力トルクを原則的に規定の始動トルクマップに従って制御するモータ制御装置(ECU50)とを備え、モータ制御装置(ECU50)は、各センサ35,36が検出したクランク回転数Ncと、クランク回転数Ncに相当するモータ回転数Nmの差である回転数差DN1が回転数差基準S以上になった場合にモータジェネレータ15へ指示する出力トルクを減じるよう構成する。
【選択図】 図1
【解決手段】モータジェネレータ15の回転数を検出するモータ回転数センサ36と、クランク軸18の回転数を検出するクランク回転数センサ35と、モータジェネレータ15の出力トルクを原則的に規定の始動トルクマップに従って制御するモータ制御装置(ECU50)とを備え、モータ制御装置(ECU50)は、各センサ35,36が検出したクランク回転数Ncと、クランク回転数Ncに相当するモータ回転数Nmの差である回転数差DN1が回転数差基準S以上になった場合にモータジェネレータ15へ指示する出力トルクを減じるよう構成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの始動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンの始動時には、ベルトによりエンジンのクランクシャフトと連結されたスタータモータにより、クランクシャフトを駆動し、エンジンの回転数を上昇させる。この際、規定のトルクパターンに従ってエンジンの回転数を上昇させ、燃料噴射、点火を行い、アイドリングに至るのが一般的である。そして、前記したベルトは、滑りにくいように張力を高めてある。
【0003】
なお、エンジンの始動制御装置に関する技術としては、例えば次のものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−188548号公報
【特許文献2】
特開2002−021624号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、規定のトルクパターンに従ったクランクシャフトの駆動では、ベルトの状態によってベルトとプーリの間に滑りが発生することがある。例えば、雨による水の浸入によりベルトとプーリの摩擦係数が低下したり、経年使用によるベルトの伸びや、温度低下によるベルトの硬化などによりベルトとプーリの間で滑ることがある。そうすると、モータからのトルクがクランクシャフトに十分伝わらない上、不快な音が発生する原因となる。また、通常使用時よりも高い張力でベルトを固定しておくと、ベルトの寿命は低下し、補機の負荷が増大して燃費が低下するという問題も生じる。
このような問題から、本発明では、モータにより始動するエンジンにおいてベルトとプーリの滑りを抑制することができるエンジンの始動制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため、本発明では、エンジンと、このエンジンのクランクシャフトにベルトを介して連結されたモータと、前記モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、エンジンのクランクシャフトの回転数を検出するクランク回転数センサと、前記モータの出力トルクを原則的に規定の始動トルクマップに従って制御するモータ制御装置とを備え、前記モータ制御装置は、前記各センサが検出したクランク回転数と、クランク回転数に相当するモータ回転数の差が所定値以上になった場合に前記モータに指示する出力トルクを減じるよう構成されたエンジンの始動制御装置を提供する。
【0007】
ここで、クランク回転数と、クランク回転数に相当するモータ回転数の差とは、例えば、モータ回転数にモータからクランクへの減速比を乗じてモータ回転数をクランク回転数に換算した値をクランク回転数から引いた値である。もちろん、計算としては、クランク回転数をモータ回転数に換算した後モータ回転数との差をとってもよい。いずれにしても、この差は、ベルトとクランクシャフトのプーリ、またはベルトとモータの出力軸のプーリとの間の滑り速度を示している。そして、本発明では、この滑り速度が所定値以上になった場合に、モータに指示する出力トルクを減じることにより、過大なベルトの滑りを防止して動力伝達効率の向上と不快音の低減が図られる。
なお、規定の始動トルクマップは、標準的な環境で、エンジンを始動するのに良好なモータトルクの設定として決めたトルクマップである。
【0008】
また、前記モータ制御装置は、前記回転数差が微小値δ以下の場合には、徐々にモータの出力トルクを前記始動トルクマップで指示される出力トルクに近付けるよう構成するのが望ましい。
【0009】
このようなエンジンの始動制御装置では、回転数差が微小値δ以下である場合には、ベルトに滑りが発生していないと判断できるため、規定のトルクマップに近付けるようにモータのトルクが制御される。つまり、過大な滑りが発生しない範囲でなるべくエンジン回転数を速く高めることで、エンジンの始動を速く、確実にすることができる。
【0010】
また、前記モータ制御装置は、前記回転数差に応じてモータに指示する出力トルクの減速度を決定するよう構成することもできる。
【0011】
このようなエンジンの始動制御装置では、回転数差は、ベルトの滑り速度を意味しており、滑り速度の大きさに応じて、例えば、滑り速度が大きい場合は、大きな減速度で、滑り速度が小さい場合は、小さな減速度でモータへの指示トルクが減じられる。このようにして、ベルトの滑りを確実に小さくして、動力伝達効率の向上と不快音の低減を図ることができる。
【0012】
さらに、前記モータ制御装置は、エンジン始動時に実際にモータに指令したトルクパターンを新たな始動トルクマップとして記憶し、次回のエンジン始動時には、この新たな始動トルクマップを規定の始動トルクマップとして使用するよう構成してもよい。
【0013】
車両の始動時に実際にモータへ指示したトルクパターンは、ベルトの滑りの発生により補正したトルクパターンであり、よりその車両に適したトルクパターンであることが多いため、これを新たな始動トルクマップとして記憶させる。そして、次回のエンジン始動時から、新たな始動トルクマップを規定の始動トルクマップとすることで、徐々にその車両が使用される地域での温度、湿度などに応じた最良の始動トルクマップになり、エンジンの始動条件を良好にすることができる。
【0014】
また、前記モータ制御装置は、前記回転数差に代えて、モータ回転数とクランク回転数の比と、前記モータと前記クランクシャフトの減速比との差である回転比差を用いることもできる。
【0015】
モータ回転数とクランク回転数の比は、ベルトに滑りが無い場合には、モータとクランクシャフトの減速比と一致するはずである。即ち、この比と減速比の差である回転比差は前記した回転数差と同様にベルトの滑り速度を意味する。従って、回転数差に代えて回転比差を使用しても同様な効果を得ることが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、適宜図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。参照する図において、図1は、実施形態に係るハイブリッド車両用のエンジンの正面図である。図1に示すように、ハイブリッド車両用のエンジンEは、エンジンブロック11の側面に取り付けた補機ブラケット12を備えている。補機ブラケット12には、空調用コンプレッサ13、ウォータポンプ14、モータジェネレータ15、アイドラプーリ16およびオートテンショナ17が支持されている。エンジンEのクランクシャフト18に設けたクランクプーリ19、空調用コンプレッサ13の回転軸20に設けた空調用コンプレッサプーリ21、ウォータポンプ14の回転軸24に設けたウォータポンププーリ23、モータジェネレータ15の回転軸24に設けたモータジェネレータプーリ25、回転軸26に設けた前記アイドラプーリ16、オートテンショナ17に設けたテンショナプーリ27には、ベルト28が巻き掛けられている。クランクプーリ19、空調用コンプレッサプーリ21、ウォータポンププーリ23、モータジェネレータプーリ25、アイドラプーリ16およびテンショナプーリ27の回転方向は矢印で示す。
なお、モータジェネレータ15が特許請求の範囲にいうモータに相当する。
【0017】
オートテンショナ17は伸縮自在なテンショナ本体29を備えており、その上端が支点ピン30を介して補機ブラケット12に枢支される。補機ブラケット12には、支点ピン31を介してベルクランク32の中間部が枢支されており、ベルクランク32の一端部がピン33を介してテンショナ本体29の下端に枢支され、ベルクランク32の他端部に回転軸34を介して前記テンショナプーリ27が枢支される。テンショナ本体29は、その内部に収納したスプリングで伸長方向に付勢されており、その付勢力でテンショナプーリ27をベルト28に押し付けて所定の張力を発生させる。
【0018】
クランクプーリ19の付近には、クランクプーリ19の角速度を検出するクランク回転数センサ35が設けられている。また、モータジェネレータプーリ25の付近には、モータジェネレータプーリ25の角速度を検出するモータ回転数センサ36が設けられている。これらの回転数センサは例えば磁性体の近接をパルスとして出力する磁性体センサ等を用いることができる。
また、クランクプーリ19の付近には、ベルト28の温度を間接的に検出するための温度センサ37が設けられている。温度センサ37は、可能であればクランクプーリ19に設けてもよいし、直接ベルト28の温度を検出するものであってもよい。
クランク回転数センサ35、モータ回転数センサ36、温度センサ37は、電子制御ユニット(ECU)50に接続されている。
【0019】
電子制御ユニット50は、前記したクランク回転数センサ35、モータ回転数センサ36、温度センサ37からの信号が入力されて、これらに基づいてモータコントローラ40に制御信号を出力し、インバータ41を介してモータジェネレータ15の出力トルクを制御する。また、燃料噴射弁38の燃料噴射量、点火プラグ39の点火時期など、エンジンEの始動のための各部のコントロールを司る。なお、電子制御ユニット50は、特許請求の範囲にいうモータ制御装置を有しているとともに、エンジンEの動作時の制御、モータジェネレータ15のジェネレータとしての制御などをも行っている。
【0020】
図2は、電子制御ユニット50のモータ制御装置部分の機能ブロック図である。
図2に示すように、電子制御ユニット50は、モータ回転数換算手段51、回転数差基準設定手段52、トルク補正値設定手段53、基本始動トルク設定手段54、トルク指令値設定手段55を有している。
【0021】
モータ回転数センサ36からのモータ回転数Nmは、電子制御ユニット50のモータ回転数換算手段51に入力される。
【0022】
モータ回転数換算手段51は、モータ回転数Nmにモータジェネレータ15とクランクシャフト18の減速比を乗じてクランク回転数に相当するモータ回転数Nm´を計算し、出力する。
【0023】
クランク回転数センサ35からのクランク回転数Ncは、電子制御ユニット50に入力され、前記したモータ回転数Nm´との差である回転数差が計算されて回転数差信号DN1がトルク補正値設定手段53へ出力される。なお、ここでは説明の容易のため、クランク回転数Ncとモータ回転数Nm´の差が正の値になるようにモータ回転数Nm´からクランク回転数Ncを引くこととするが、これは逆に引いて負の値で取り扱っても構わない。
【0024】
温度センサ37からの温度信号Tは、電子制御ユニット50の回転数差基準設定手段52に入力される。回転数差基準設定手段52は、電子制御ユニット50内の図示しないROM(Read Only Memory)に記憶されている、図3に示すような温度と回転数差基準値の関係を示した回転数差基準マップを参照し、温度信号Tに応じた回転数差基準値を検索して回転数差基準値Sをトルク補正値設定手段53へ出力する。回転数差基準値は、回転数差DN1がどれだけ大きくなったら、即ちベルト28がどれくらいの速さで滑り出したらモータジェネレータ15の出力トルクを減じるかの基準となる値であり、温度が高くなる程、徐々に(例えば線形的に)大きな基準値となるように設定されている。これは、温度が低い時ほどベルト28の硬化により、ベルト28の滑りによる不快音が出やすいためである。
【0025】
トルク補正値設定手段53は、前記した回転数差DN1および回転数差基準値Sが入力され、これらの2つの値を比較して、回転数差DN1が回転数差基準値Sより大きければモータジェネレータ15の出力トルクを決定してトルク補正値信号Rsをトルク指令値設定手段55へ出力する。トルク補正値Rsは、回転数差DN1の大きさに応じて決定される。例えば、回転数差DN1に所定の比例定数kを乗じて補正ステップ量を決定してもよい。回転数差DN1が回転数差Sより小さい場合には、回転数差DN1が微小値δよりも小さいかどうかを判断し、小さい場合には、ベルト28の滑りが無いので、基本始動トルクに近付けるように出力トルクを増やすような補正ステップ量を設定し、回転数差DN1が微小値δよりも大きい場合には、補正ステップ量を0にして、トルク補正値Rsを前回と同じにする。
【0026】
基本始動トルク設定手段54は、原則としてモータジェネレータ15に指令すべき出力トルクを予め設定された始動トルクマップに従って、基本始動トルクBsを検索し、基本始動トルクBsをトルク指令値設定手段55へ出力する手段である。
図4に示すように、始動トルクマップは、モータ回転数とモータジェネレータ15に指令すべきトルクの関係を表したマップである。なお、始動トルクマップはクランク回転数と、モータジェネレータ15に指令すべきトルクの関係として表してもよい。図4に示した例では、モータ回転数が小さい時には一定の高いトルクであり、あるモータ回転数Nm1より大きな回転数では線形的にトルクを小さくするよう設定されている。始動トルクマップは、標準的な環境で、その車両に適当と考えられるトルク特性を予め設定したものであり、ベルト28に滑りが発生しない限りこの始動トルクマップに従ってモータジェネレータ15を制御すれば良い。本実施形態では、始動トルクマップは、モータ回転数のみを参照値としているが、温度等、他のパラメータをも考慮した複数次元のマップとすることも可能である。例えば、エンジン水温が低い時にはトルクを小さくしていく割合を小さくしてもよい。
なお、学習値としての始動トルクマップは、書換可能なフラッシュメモリ等の記憶手段に記憶されている。そして、トルク指令値設定手段55で実際に指令したトルクの値が基本始動トルク設定手段54にフィードバックされ、新たな基本始動トルクマップとして記憶されるようになっている。
【0027】
トルク指令値設定手段55は、前記したトルク補正値Rsと基本始動トルクBsとが入力され、これらの和を取ってモータジェネレータ15の出力トルクを決定し、モータコントローラ40へトルク指令値Msを出力する。
【0028】
次に、以上のような構成をしたエンジン始動制御装置の動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
本実施形態の動作において、モータ制御装置は、クランク回転数Nc、モータ回転数Nm、温度信号Tに基づいてモータジェネレータ15へのトルク指令値Msを決定する。
モータ制御装置は、まず、基本始動トルク設定手段54において、図4の始動トルクマップから現時点でのモータ回転数Nmに基づいて、基本始動トルクBsを検索する(ステップS1)。そして、基本始動トルクBsをより改善した学習値を記憶してあるかどうかを判断し(ステップS2)、学習値がある場合には(Yes)、規定トルクBs´を学習値で置き換える(ステップS3)。学習値がない場合には(No)、規定トルクBs´に基本始動トルクBsを代入する(ステップS4)。規定トルクBs´は、今回のエンジン始動におけるモータ出力トルクの基本パターンの値であり、前記した動作により、学習値がある場合には、学習値を持ち、学習値がない場合には、基本始動トルクBsを持つことになる。
【0029】
そして、モータ回転数換算手段51において、モータ回転数Nmにモータとクランクシャフトの減速比を乗じて、クランク回転数に相当するモータ回転数Nm´を計算する(ステップS5)。次に、モータ回転数Nm´からクランク回転数Ncを引いて回転数差DN1を計算する(ステップS6)。この回転数差DN1は、ベルトの滑り速度を意味しており、DN1が0であるときは、ベルトの滑りがないことになる。次に、回転数差基準設定手段52が、図3の回転数差基準マップから、温度に基づいて回転数差基準値Sを検索する(ステップS7)。
【0030】
次に、トルク補正値設定手段53が、回転数差DN1と回転数差基準値Sを比較した結果(ステップS8)、回転数差DN1が回転数差基準値Sよりも大きい場合には(>)、回転数差DN1に負の値の補正係数kを乗じて補正ステップ量Tsを算出する(ステップS9)。なお、この補正ステップ量Tsの決定の仕方は一例であって、必ずしも回転数差DN1に比例した補正ステップ量Tsとする必要はない。
一方、回転数差DN1が回転数差基準値S以下であった場合には、回転数差DN1が微小値δ以下か否かが判断される(ステップS10)。回転数差DN1が微小値δ以下のとき(Yes)、即ち、回転数差DN1がほぼ0の場合には、ベルトに滑りが生じていないので、モータジェネレータ15の出力トルクを基本始動トルクBsに徐々に近付けるように、補正ステップ量Tsに小さな正の値であるdを代入する(ステップS11)。また、回転数差DN1が微小値δより大きい場合には、補正ステップ量Tsに0を代入する。
【0031】
次に、トルク補正値設定手段53は、前回のトルク補正値Rsに、ステップS8からS12で決定された補正ステップ量Tsを足して、新たなトルク補正値Rsを算出する(ステップS13)。
【0032】
次に、トルク指令値設定手段55において、規定トルクBs´にトルク補正値Rsを足して、トルク指令値Msを算出する(ステップS14)。そして、基本始動トルクBsとトルク指令値Msとを比較して(ステップS15)、トルク指令値Msが基本始動トルクBs以上であった場合には(≦)、トルク指令値Msに基本始動トルクBsを代入する(ステップS16)。この動作により、ステップS11においてプラス側に補正しすぎても、トルク指令値Msが基本始動トルクBsを超えることがない。
【0033】
トルク指令値設定手段55は、決定したトルク指令値Msをモータコントローラ40へ出力し(ステップS17)、モータコントローラ40が、インバータ41を介してモータジェネレータ15の出力トルクを制御する。
モータ制御装置は、指令したトルク指令値Msと規定トルクBs´とを比較して(ステップS18)、一致しないときは(No)、新たな学習値として記憶する(ステップS19)。
そして、以上のステップを繰り返して、順次モータジェネレータ15の出力トルクを制御する。
【0034】
このようなモータ制御装置の動作によるクランク回転数とモータ回転数を図示すると、図6および図7のようになる。図6は、エンジン始動時において、ベルトの滑りが発生しているときのモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフであり、図7は、モータ制御装置が学習した後のモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフである。なお、図6、図7の双方において、モータ回転数は、クランク回転数相当に換算して表示してある。
【0035】
図6に示すように、エンジン始動時のモータ回転数のラインは、クランク回転数のラインから乖離して、ある回転数以上乖離したところからモータジェネレータ15が出力トルクを減じるように制御される。そして、滑りが少なくなって、徐々にクランク回転数と一致する。
【0036】
図7に示すように、モータ制御装置が学習して、ベルトの滑りを抑制するようにモータジェネレータ15の出力トルクを制御した後は、モータ回転数とクランク回転数が一致するようになる。
【0037】
図8、図9は、図6、図7のグラフの時間軸におよそ合うようにモータジェネレータ15へ指令する出力トルクを重ねて表示したグラフである。
図8に示すように、モータジェネレータ15は、始めに基本始動トルクBsに従ってトルクを出力し、モータ回転数Nmとクランク回転数Ncの回転数差DN1が一定値以上となったところで、出力トルクを低下させ、破線で示した補正後のトルク指令値Msでトルクを出力する。
補正後のトルク指令値Msは、回転数差DN1が小さくなるまで下がり続け、回転数差DN1が微小値δより小さくなったところで、トルク指令値Msを基本始動トルクBsに近付けるように上昇させる。このような動作で、出力トルクを制御していき、補正後のトルク指令値Msのラインが基本始動トルクBsのラインにぶつかったところで、トルク指令値Msが基本始動トルクBsを超えないように、基本始動トルクBsに倣った値を取る。
そして、このエンジン始動動作で使用した補正後のトルク指令値Msが、新たな規定トルクBs´のパターンとなるように記憶される。
【0038】
記憶された前回のトルク指令値Msは、次回のエンジン始動時に規定トルクBs´として利用される。図9に示すように、モータ制御装置は、原則として、学習した破線の出力トルク(学習トルク)に従ってモータジェネレータ15を作動させるが、動作中のモータの回転数Nmおよびクランクの回転数Ncの回転数の差が微小値δ以下である場合には、トルク指令値Msを基本始動トルクBsに徐々に近付けるように制御する。このようにして、学習トルクに基づき、さらに補正した再補正トルク(実線)は、徐々に基本始動トルクBsに近付いていくが、基本始動トルクBsを超えないように、再補正トルクのラインが基本始動トルクBsのラインにぶつかったところから基本始動トルクBsに倣った値を取る。
【0039】
以上のようにして、本実施形態のエンジン始動装置によれば、ベルト28に一定以上の滑りが発生した場合に、エンジンEを始動するモータジェネレータ15の出力トルクを減じるので、ベルト28の滑りを少なくして、動力の伝達効率を高めると同時にエンジン始動時の不快音を低減させることができる。この際、モータジェネレータ15へ指示する出力トルクの減速度(補正ステップ量Ts)を回転数差DN1に比例させて決定することで、早くベルト28の滑りを減少させることができる。また、モータジェネレータ15に対し実際に指令した出力トルクを記憶しておくことで、その車両が使用される環境、例えば、気温、季節、ベルト28の劣化具合等を加味した、より良い出力トルクの条件へと学習することができる。さらに、ベルト28の滑りがないときには、トルク指令値Msを基本始動トルクBsに近付けるように補正していくので、できるだけ速く、エンジンEの回転数を高め、エンジンEの始動を確実にすることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、モータジェネレータ15とクランクシャフト18を連結するベルト28にすべりが生じているかどうかを判定するのに、図10に示したように、回転比差演算手段59により、モータ回転数Nmとクランク回転数Ncの比Nm/Ncをとり、この比からモータジェネレータ15とクランクシャフト18の減速比を引いて回転比差DN2を演算しても良い。この回転比差DN2は、ベルト28に滑りが無いときには、前記比Nm/Ncが減速比と一致するので、0となり、滑りが多くなるほど正の大きい値を取る。従って、前記した実施形態と同様に、この回転比差DN2を所定の基準値と比較して、基準値以上となった時に、モータジェネレータ15の出力トルクを減じるように構成することができる。
また、実施形態においては、ハイブリッド車両用のエンジンの始動制御装置について説明したが、モータにより車両を駆動せず、エンジンのみで駆動する車両のエンジン始動装置としても同様に適用できる。
また、モータ制御装置の処理は、図5に示したフローチャートに限らず、他の処理順序をとることができるのは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、エンジンの始動時に、車両が利用される環境に応じて、適切な出力トルクでエンジンを回転させ、もって、動力伝達効率の向上と、不快音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るハイブリッド車両用のエンジンの正面図である。
【図2】電子制御ユニットのモータ制御装置部分の機能ブロック図である。
【図3】回転数差基準マップの一例である。
【図4】始動トルクマップの一例である。
【図5】エンジン始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】エンジン始動時において、ベルトの滑りが発生している時のモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフである。
【図7】モータ制御装置が学習した後のモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフである。
【図8】図6のグラフに、モータジェネレータへ指示するトルクを重ねて示したグラフである。
【図9】図7のグラフに、モータジェネレータへ指示するトルクを重ねて示したグラフである。
【図10】変形例に係る電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【符号の説明】
15 モータジェネレータ
18 クランクシャフト
28 ベルト
35 クランク回転数センサ
36 モータ回転数センサ
50 ECU
E エンジン
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの始動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車のエンジンの始動時には、ベルトによりエンジンのクランクシャフトと連結されたスタータモータにより、クランクシャフトを駆動し、エンジンの回転数を上昇させる。この際、規定のトルクパターンに従ってエンジンの回転数を上昇させ、燃料噴射、点火を行い、アイドリングに至るのが一般的である。そして、前記したベルトは、滑りにくいように張力を高めてある。
【0003】
なお、エンジンの始動制御装置に関する技術としては、例えば次のものがある。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−188548号公報
【特許文献2】
特開2002−021624号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、規定のトルクパターンに従ったクランクシャフトの駆動では、ベルトの状態によってベルトとプーリの間に滑りが発生することがある。例えば、雨による水の浸入によりベルトとプーリの摩擦係数が低下したり、経年使用によるベルトの伸びや、温度低下によるベルトの硬化などによりベルトとプーリの間で滑ることがある。そうすると、モータからのトルクがクランクシャフトに十分伝わらない上、不快な音が発生する原因となる。また、通常使用時よりも高い張力でベルトを固定しておくと、ベルトの寿命は低下し、補機の負荷が増大して燃費が低下するという問題も生じる。
このような問題から、本発明では、モータにより始動するエンジンにおいてベルトとプーリの滑りを抑制することができるエンジンの始動制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記した課題を解決するため、本発明では、エンジンと、このエンジンのクランクシャフトにベルトを介して連結されたモータと、前記モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、エンジンのクランクシャフトの回転数を検出するクランク回転数センサと、前記モータの出力トルクを原則的に規定の始動トルクマップに従って制御するモータ制御装置とを備え、前記モータ制御装置は、前記各センサが検出したクランク回転数と、クランク回転数に相当するモータ回転数の差が所定値以上になった場合に前記モータに指示する出力トルクを減じるよう構成されたエンジンの始動制御装置を提供する。
【0007】
ここで、クランク回転数と、クランク回転数に相当するモータ回転数の差とは、例えば、モータ回転数にモータからクランクへの減速比を乗じてモータ回転数をクランク回転数に換算した値をクランク回転数から引いた値である。もちろん、計算としては、クランク回転数をモータ回転数に換算した後モータ回転数との差をとってもよい。いずれにしても、この差は、ベルトとクランクシャフトのプーリ、またはベルトとモータの出力軸のプーリとの間の滑り速度を示している。そして、本発明では、この滑り速度が所定値以上になった場合に、モータに指示する出力トルクを減じることにより、過大なベルトの滑りを防止して動力伝達効率の向上と不快音の低減が図られる。
なお、規定の始動トルクマップは、標準的な環境で、エンジンを始動するのに良好なモータトルクの設定として決めたトルクマップである。
【0008】
また、前記モータ制御装置は、前記回転数差が微小値δ以下の場合には、徐々にモータの出力トルクを前記始動トルクマップで指示される出力トルクに近付けるよう構成するのが望ましい。
【0009】
このようなエンジンの始動制御装置では、回転数差が微小値δ以下である場合には、ベルトに滑りが発生していないと判断できるため、規定のトルクマップに近付けるようにモータのトルクが制御される。つまり、過大な滑りが発生しない範囲でなるべくエンジン回転数を速く高めることで、エンジンの始動を速く、確実にすることができる。
【0010】
また、前記モータ制御装置は、前記回転数差に応じてモータに指示する出力トルクの減速度を決定するよう構成することもできる。
【0011】
このようなエンジンの始動制御装置では、回転数差は、ベルトの滑り速度を意味しており、滑り速度の大きさに応じて、例えば、滑り速度が大きい場合は、大きな減速度で、滑り速度が小さい場合は、小さな減速度でモータへの指示トルクが減じられる。このようにして、ベルトの滑りを確実に小さくして、動力伝達効率の向上と不快音の低減を図ることができる。
【0012】
さらに、前記モータ制御装置は、エンジン始動時に実際にモータに指令したトルクパターンを新たな始動トルクマップとして記憶し、次回のエンジン始動時には、この新たな始動トルクマップを規定の始動トルクマップとして使用するよう構成してもよい。
【0013】
車両の始動時に実際にモータへ指示したトルクパターンは、ベルトの滑りの発生により補正したトルクパターンであり、よりその車両に適したトルクパターンであることが多いため、これを新たな始動トルクマップとして記憶させる。そして、次回のエンジン始動時から、新たな始動トルクマップを規定の始動トルクマップとすることで、徐々にその車両が使用される地域での温度、湿度などに応じた最良の始動トルクマップになり、エンジンの始動条件を良好にすることができる。
【0014】
また、前記モータ制御装置は、前記回転数差に代えて、モータ回転数とクランク回転数の比と、前記モータと前記クランクシャフトの減速比との差である回転比差を用いることもできる。
【0015】
モータ回転数とクランク回転数の比は、ベルトに滑りが無い場合には、モータとクランクシャフトの減速比と一致するはずである。即ち、この比と減速比の差である回転比差は前記した回転数差と同様にベルトの滑り速度を意味する。従って、回転数差に代えて回転比差を使用しても同様な効果を得ることが可能である。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、適宜図面を参照して本発明の第1実施形態を説明する。参照する図において、図1は、実施形態に係るハイブリッド車両用のエンジンの正面図である。図1に示すように、ハイブリッド車両用のエンジンEは、エンジンブロック11の側面に取り付けた補機ブラケット12を備えている。補機ブラケット12には、空調用コンプレッサ13、ウォータポンプ14、モータジェネレータ15、アイドラプーリ16およびオートテンショナ17が支持されている。エンジンEのクランクシャフト18に設けたクランクプーリ19、空調用コンプレッサ13の回転軸20に設けた空調用コンプレッサプーリ21、ウォータポンプ14の回転軸24に設けたウォータポンププーリ23、モータジェネレータ15の回転軸24に設けたモータジェネレータプーリ25、回転軸26に設けた前記アイドラプーリ16、オートテンショナ17に設けたテンショナプーリ27には、ベルト28が巻き掛けられている。クランクプーリ19、空調用コンプレッサプーリ21、ウォータポンププーリ23、モータジェネレータプーリ25、アイドラプーリ16およびテンショナプーリ27の回転方向は矢印で示す。
なお、モータジェネレータ15が特許請求の範囲にいうモータに相当する。
【0017】
オートテンショナ17は伸縮自在なテンショナ本体29を備えており、その上端が支点ピン30を介して補機ブラケット12に枢支される。補機ブラケット12には、支点ピン31を介してベルクランク32の中間部が枢支されており、ベルクランク32の一端部がピン33を介してテンショナ本体29の下端に枢支され、ベルクランク32の他端部に回転軸34を介して前記テンショナプーリ27が枢支される。テンショナ本体29は、その内部に収納したスプリングで伸長方向に付勢されており、その付勢力でテンショナプーリ27をベルト28に押し付けて所定の張力を発生させる。
【0018】
クランクプーリ19の付近には、クランクプーリ19の角速度を検出するクランク回転数センサ35が設けられている。また、モータジェネレータプーリ25の付近には、モータジェネレータプーリ25の角速度を検出するモータ回転数センサ36が設けられている。これらの回転数センサは例えば磁性体の近接をパルスとして出力する磁性体センサ等を用いることができる。
また、クランクプーリ19の付近には、ベルト28の温度を間接的に検出するための温度センサ37が設けられている。温度センサ37は、可能であればクランクプーリ19に設けてもよいし、直接ベルト28の温度を検出するものであってもよい。
クランク回転数センサ35、モータ回転数センサ36、温度センサ37は、電子制御ユニット(ECU)50に接続されている。
【0019】
電子制御ユニット50は、前記したクランク回転数センサ35、モータ回転数センサ36、温度センサ37からの信号が入力されて、これらに基づいてモータコントローラ40に制御信号を出力し、インバータ41を介してモータジェネレータ15の出力トルクを制御する。また、燃料噴射弁38の燃料噴射量、点火プラグ39の点火時期など、エンジンEの始動のための各部のコントロールを司る。なお、電子制御ユニット50は、特許請求の範囲にいうモータ制御装置を有しているとともに、エンジンEの動作時の制御、モータジェネレータ15のジェネレータとしての制御などをも行っている。
【0020】
図2は、電子制御ユニット50のモータ制御装置部分の機能ブロック図である。
図2に示すように、電子制御ユニット50は、モータ回転数換算手段51、回転数差基準設定手段52、トルク補正値設定手段53、基本始動トルク設定手段54、トルク指令値設定手段55を有している。
【0021】
モータ回転数センサ36からのモータ回転数Nmは、電子制御ユニット50のモータ回転数換算手段51に入力される。
【0022】
モータ回転数換算手段51は、モータ回転数Nmにモータジェネレータ15とクランクシャフト18の減速比を乗じてクランク回転数に相当するモータ回転数Nm´を計算し、出力する。
【0023】
クランク回転数センサ35からのクランク回転数Ncは、電子制御ユニット50に入力され、前記したモータ回転数Nm´との差である回転数差が計算されて回転数差信号DN1がトルク補正値設定手段53へ出力される。なお、ここでは説明の容易のため、クランク回転数Ncとモータ回転数Nm´の差が正の値になるようにモータ回転数Nm´からクランク回転数Ncを引くこととするが、これは逆に引いて負の値で取り扱っても構わない。
【0024】
温度センサ37からの温度信号Tは、電子制御ユニット50の回転数差基準設定手段52に入力される。回転数差基準設定手段52は、電子制御ユニット50内の図示しないROM(Read Only Memory)に記憶されている、図3に示すような温度と回転数差基準値の関係を示した回転数差基準マップを参照し、温度信号Tに応じた回転数差基準値を検索して回転数差基準値Sをトルク補正値設定手段53へ出力する。回転数差基準値は、回転数差DN1がどれだけ大きくなったら、即ちベルト28がどれくらいの速さで滑り出したらモータジェネレータ15の出力トルクを減じるかの基準となる値であり、温度が高くなる程、徐々に(例えば線形的に)大きな基準値となるように設定されている。これは、温度が低い時ほどベルト28の硬化により、ベルト28の滑りによる不快音が出やすいためである。
【0025】
トルク補正値設定手段53は、前記した回転数差DN1および回転数差基準値Sが入力され、これらの2つの値を比較して、回転数差DN1が回転数差基準値Sより大きければモータジェネレータ15の出力トルクを決定してトルク補正値信号Rsをトルク指令値設定手段55へ出力する。トルク補正値Rsは、回転数差DN1の大きさに応じて決定される。例えば、回転数差DN1に所定の比例定数kを乗じて補正ステップ量を決定してもよい。回転数差DN1が回転数差Sより小さい場合には、回転数差DN1が微小値δよりも小さいかどうかを判断し、小さい場合には、ベルト28の滑りが無いので、基本始動トルクに近付けるように出力トルクを増やすような補正ステップ量を設定し、回転数差DN1が微小値δよりも大きい場合には、補正ステップ量を0にして、トルク補正値Rsを前回と同じにする。
【0026】
基本始動トルク設定手段54は、原則としてモータジェネレータ15に指令すべき出力トルクを予め設定された始動トルクマップに従って、基本始動トルクBsを検索し、基本始動トルクBsをトルク指令値設定手段55へ出力する手段である。
図4に示すように、始動トルクマップは、モータ回転数とモータジェネレータ15に指令すべきトルクの関係を表したマップである。なお、始動トルクマップはクランク回転数と、モータジェネレータ15に指令すべきトルクの関係として表してもよい。図4に示した例では、モータ回転数が小さい時には一定の高いトルクであり、あるモータ回転数Nm1より大きな回転数では線形的にトルクを小さくするよう設定されている。始動トルクマップは、標準的な環境で、その車両に適当と考えられるトルク特性を予め設定したものであり、ベルト28に滑りが発生しない限りこの始動トルクマップに従ってモータジェネレータ15を制御すれば良い。本実施形態では、始動トルクマップは、モータ回転数のみを参照値としているが、温度等、他のパラメータをも考慮した複数次元のマップとすることも可能である。例えば、エンジン水温が低い時にはトルクを小さくしていく割合を小さくしてもよい。
なお、学習値としての始動トルクマップは、書換可能なフラッシュメモリ等の記憶手段に記憶されている。そして、トルク指令値設定手段55で実際に指令したトルクの値が基本始動トルク設定手段54にフィードバックされ、新たな基本始動トルクマップとして記憶されるようになっている。
【0027】
トルク指令値設定手段55は、前記したトルク補正値Rsと基本始動トルクBsとが入力され、これらの和を取ってモータジェネレータ15の出力トルクを決定し、モータコントローラ40へトルク指令値Msを出力する。
【0028】
次に、以上のような構成をしたエンジン始動制御装置の動作について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
本実施形態の動作において、モータ制御装置は、クランク回転数Nc、モータ回転数Nm、温度信号Tに基づいてモータジェネレータ15へのトルク指令値Msを決定する。
モータ制御装置は、まず、基本始動トルク設定手段54において、図4の始動トルクマップから現時点でのモータ回転数Nmに基づいて、基本始動トルクBsを検索する(ステップS1)。そして、基本始動トルクBsをより改善した学習値を記憶してあるかどうかを判断し(ステップS2)、学習値がある場合には(Yes)、規定トルクBs´を学習値で置き換える(ステップS3)。学習値がない場合には(No)、規定トルクBs´に基本始動トルクBsを代入する(ステップS4)。規定トルクBs´は、今回のエンジン始動におけるモータ出力トルクの基本パターンの値であり、前記した動作により、学習値がある場合には、学習値を持ち、学習値がない場合には、基本始動トルクBsを持つことになる。
【0029】
そして、モータ回転数換算手段51において、モータ回転数Nmにモータとクランクシャフトの減速比を乗じて、クランク回転数に相当するモータ回転数Nm´を計算する(ステップS5)。次に、モータ回転数Nm´からクランク回転数Ncを引いて回転数差DN1を計算する(ステップS6)。この回転数差DN1は、ベルトの滑り速度を意味しており、DN1が0であるときは、ベルトの滑りがないことになる。次に、回転数差基準設定手段52が、図3の回転数差基準マップから、温度に基づいて回転数差基準値Sを検索する(ステップS7)。
【0030】
次に、トルク補正値設定手段53が、回転数差DN1と回転数差基準値Sを比較した結果(ステップS8)、回転数差DN1が回転数差基準値Sよりも大きい場合には(>)、回転数差DN1に負の値の補正係数kを乗じて補正ステップ量Tsを算出する(ステップS9)。なお、この補正ステップ量Tsの決定の仕方は一例であって、必ずしも回転数差DN1に比例した補正ステップ量Tsとする必要はない。
一方、回転数差DN1が回転数差基準値S以下であった場合には、回転数差DN1が微小値δ以下か否かが判断される(ステップS10)。回転数差DN1が微小値δ以下のとき(Yes)、即ち、回転数差DN1がほぼ0の場合には、ベルトに滑りが生じていないので、モータジェネレータ15の出力トルクを基本始動トルクBsに徐々に近付けるように、補正ステップ量Tsに小さな正の値であるdを代入する(ステップS11)。また、回転数差DN1が微小値δより大きい場合には、補正ステップ量Tsに0を代入する。
【0031】
次に、トルク補正値設定手段53は、前回のトルク補正値Rsに、ステップS8からS12で決定された補正ステップ量Tsを足して、新たなトルク補正値Rsを算出する(ステップS13)。
【0032】
次に、トルク指令値設定手段55において、規定トルクBs´にトルク補正値Rsを足して、トルク指令値Msを算出する(ステップS14)。そして、基本始動トルクBsとトルク指令値Msとを比較して(ステップS15)、トルク指令値Msが基本始動トルクBs以上であった場合には(≦)、トルク指令値Msに基本始動トルクBsを代入する(ステップS16)。この動作により、ステップS11においてプラス側に補正しすぎても、トルク指令値Msが基本始動トルクBsを超えることがない。
【0033】
トルク指令値設定手段55は、決定したトルク指令値Msをモータコントローラ40へ出力し(ステップS17)、モータコントローラ40が、インバータ41を介してモータジェネレータ15の出力トルクを制御する。
モータ制御装置は、指令したトルク指令値Msと規定トルクBs´とを比較して(ステップS18)、一致しないときは(No)、新たな学習値として記憶する(ステップS19)。
そして、以上のステップを繰り返して、順次モータジェネレータ15の出力トルクを制御する。
【0034】
このようなモータ制御装置の動作によるクランク回転数とモータ回転数を図示すると、図6および図7のようになる。図6は、エンジン始動時において、ベルトの滑りが発生しているときのモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフであり、図7は、モータ制御装置が学習した後のモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフである。なお、図6、図7の双方において、モータ回転数は、クランク回転数相当に換算して表示してある。
【0035】
図6に示すように、エンジン始動時のモータ回転数のラインは、クランク回転数のラインから乖離して、ある回転数以上乖離したところからモータジェネレータ15が出力トルクを減じるように制御される。そして、滑りが少なくなって、徐々にクランク回転数と一致する。
【0036】
図7に示すように、モータ制御装置が学習して、ベルトの滑りを抑制するようにモータジェネレータ15の出力トルクを制御した後は、モータ回転数とクランク回転数が一致するようになる。
【0037】
図8、図9は、図6、図7のグラフの時間軸におよそ合うようにモータジェネレータ15へ指令する出力トルクを重ねて表示したグラフである。
図8に示すように、モータジェネレータ15は、始めに基本始動トルクBsに従ってトルクを出力し、モータ回転数Nmとクランク回転数Ncの回転数差DN1が一定値以上となったところで、出力トルクを低下させ、破線で示した補正後のトルク指令値Msでトルクを出力する。
補正後のトルク指令値Msは、回転数差DN1が小さくなるまで下がり続け、回転数差DN1が微小値δより小さくなったところで、トルク指令値Msを基本始動トルクBsに近付けるように上昇させる。このような動作で、出力トルクを制御していき、補正後のトルク指令値Msのラインが基本始動トルクBsのラインにぶつかったところで、トルク指令値Msが基本始動トルクBsを超えないように、基本始動トルクBsに倣った値を取る。
そして、このエンジン始動動作で使用した補正後のトルク指令値Msが、新たな規定トルクBs´のパターンとなるように記憶される。
【0038】
記憶された前回のトルク指令値Msは、次回のエンジン始動時に規定トルクBs´として利用される。図9に示すように、モータ制御装置は、原則として、学習した破線の出力トルク(学習トルク)に従ってモータジェネレータ15を作動させるが、動作中のモータの回転数Nmおよびクランクの回転数Ncの回転数の差が微小値δ以下である場合には、トルク指令値Msを基本始動トルクBsに徐々に近付けるように制御する。このようにして、学習トルクに基づき、さらに補正した再補正トルク(実線)は、徐々に基本始動トルクBsに近付いていくが、基本始動トルクBsを超えないように、再補正トルクのラインが基本始動トルクBsのラインにぶつかったところから基本始動トルクBsに倣った値を取る。
【0039】
以上のようにして、本実施形態のエンジン始動装置によれば、ベルト28に一定以上の滑りが発生した場合に、エンジンEを始動するモータジェネレータ15の出力トルクを減じるので、ベルト28の滑りを少なくして、動力の伝達効率を高めると同時にエンジン始動時の不快音を低減させることができる。この際、モータジェネレータ15へ指示する出力トルクの減速度(補正ステップ量Ts)を回転数差DN1に比例させて決定することで、早くベルト28の滑りを減少させることができる。また、モータジェネレータ15に対し実際に指令した出力トルクを記憶しておくことで、その車両が使用される環境、例えば、気温、季節、ベルト28の劣化具合等を加味した、より良い出力トルクの条件へと学習することができる。さらに、ベルト28の滑りがないときには、トルク指令値Msを基本始動トルクBsに近付けるように補正していくので、できるだけ速く、エンジンEの回転数を高め、エンジンEの始動を確実にすることができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、モータジェネレータ15とクランクシャフト18を連結するベルト28にすべりが生じているかどうかを判定するのに、図10に示したように、回転比差演算手段59により、モータ回転数Nmとクランク回転数Ncの比Nm/Ncをとり、この比からモータジェネレータ15とクランクシャフト18の減速比を引いて回転比差DN2を演算しても良い。この回転比差DN2は、ベルト28に滑りが無いときには、前記比Nm/Ncが減速比と一致するので、0となり、滑りが多くなるほど正の大きい値を取る。従って、前記した実施形態と同様に、この回転比差DN2を所定の基準値と比較して、基準値以上となった時に、モータジェネレータ15の出力トルクを減じるように構成することができる。
また、実施形態においては、ハイブリッド車両用のエンジンの始動制御装置について説明したが、モータにより車両を駆動せず、エンジンのみで駆動する車両のエンジン始動装置としても同様に適用できる。
また、モータ制御装置の処理は、図5に示したフローチャートに限らず、他の処理順序をとることができるのは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、エンジンの始動時に、車両が利用される環境に応じて、適切な出力トルクでエンジンを回転させ、もって、動力伝達効率の向上と、不快音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態に係るハイブリッド車両用のエンジンの正面図である。
【図2】電子制御ユニットのモータ制御装置部分の機能ブロック図である。
【図3】回転数差基準マップの一例である。
【図4】始動トルクマップの一例である。
【図5】エンジン始動制御装置の処理を示すフローチャートである。
【図6】エンジン始動時において、ベルトの滑りが発生している時のモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフである。
【図7】モータ制御装置が学習した後のモータ回転数とクランク回転数の時間経過を示したグラフである。
【図8】図6のグラフに、モータジェネレータへ指示するトルクを重ねて示したグラフである。
【図9】図7のグラフに、モータジェネレータへ指示するトルクを重ねて示したグラフである。
【図10】変形例に係る電子制御ユニットの機能ブロック図である。
【符号の説明】
15 モータジェネレータ
18 クランクシャフト
28 ベルト
35 クランク回転数センサ
36 モータ回転数センサ
50 ECU
E エンジン
Claims (5)
- エンジンと、このエンジンのクランクシャフトにベルトを介して連結されたモータと、前記モータの回転数を検出するモータ回転数センサと、エンジンのクランクシャフトの回転数を検出するクランク回転数センサと、前記モータの出力トルクを原則的に規定の始動トルクマップに従って制御するモータ制御装置とを備え、
前記モータ制御装置は、前記各センサが検出したクランク回転数と、クランク回転数に相当するモータ回転数の差である回転数差が基準値以上になった場合に前記モータに指示する出力トルクを減じるよう構成されたことを特徴とするエンジンの始動制御装置。 - 前記モータ制御装置は、前記回転数差が微小値δ以下の場合には、徐々にモータの出力トルクを前記始動トルクマップで指示される出力トルクに近付けるよう構成されたことを特徴とする請求項1に記載のエンジンの始動制御装置。
- 前記モータ制御装置は、前記回転数差に応じてモータに指示する出力トルクの減速度を決定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンジンの始動制御装置。
- 前記モータ制御装置は、エンジン始動時に実際にモータに指令したトルクパターンを新たな始動トルクマップとして記憶し、次回のエンジン始動時には、この新たな始動トルクマップを規定の始動トルクマップとして使用するよう構成されたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のエンジンの始動制御装置。
- 前記モータ制御装置は、前記回転数差に代えて、モータ回転数とクランク回転数の比と、前記モータと前記クランクシャフトの減速比との差である回転比差を用いて前記モータを制御することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のエンジンの始動制御装置。
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