JP4069589B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、車両に搭載された内燃機関の燃費を向上する技術として、車両減速中に内燃機関の燃料カットを行うことが行われており、このような技術を採用した内燃機関が、例えば、特開平8−99564号公報にて開示されている。この公報記載の内燃機関は、モータ機能及び発電機能を兼備した電動発電機を備えている。そして、燃料カット中に機関回転速度が急速に低下したときには燃料カットを解除して燃料供給を再開するとともに、電動発電機を電動作動させることにより内燃機関の回転をアシストし機関回転速度が所定回転速度以下に低下しないようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記公報記載の内燃機関では、その回転速度が急速に低下したときに燃料カットを解除するようにしているものの、燃料カットを解除するための復帰回転速度についての考慮はなされていない。このように燃料カットを解除しても、実際に燃焼トルクが発生して機関回転速度の低下が抑えられるまでには遅れ時間が存在する。上記燃料カット解除からの遅れ時間内に、パワステ負荷、発電負荷等の外乱が入ると、機関回転速度の低下度合いが増加する。従って、バッテリの充電状態が低く電動発電機のアシスト能力が低下している(アシスト不可)場合、電動発電機によって内燃機関の回転をアシストするにも拘わらず、機関回転速度の落ち込みが発生する。この低下度合いが大きいときには、内燃機関がストールを起こすおそれがある。
【0004】
従って、あらゆる状況下においても内燃機関のストールを起こさないようにするために、燃料カットを解除する回転速度は、ある程度大きな値に設定せざるを得ない。燃料カットを解除する機関回転速度が高ければ高いほど、燃料カットが実行される時間は短くなる。
【0005】
しかしながら、バッテリ状態により電動発電機のアシスト能力が低下していない、つまり、電動発電機のアシスト能力が通常(アシスト可能)である場合においては電動発電機により内燃機関の回転アシストを行うことができる。そのため、燃料カットを解除する機関回転速度を、上記のようにある程度大きな値に設定する必要はない。従って、電動発電機のアシスト能力が高い場合に、燃料カットが実行される時間が無駄に短いものとなり、更なる燃費の向上を図ることができない。
【0006】
本発明は上記の事情を鑑みてなされたものであって、その目的は、燃料カット時における内燃機関のストールを防止しつつ、燃費向上を図ることができる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の回転をアシストするための回転電機と、前記内燃機関の燃料カットを行うとともに、燃料カット中に内燃機関の回転速度が復帰回転速度未満になった時に燃料カットを解除する供給制御手段とを備え、燃料カットの解除に際して前記内燃機関の回転速度が所定回転速度未満になったときに前記回転電機を駆動することにより前記内燃機関の回転をアシストするようにした内燃機関の制御装置において、前記回転電機のアシスト能力を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出されたアシスト能力に応じて前記復帰回転速度を可変設定するとともに、該検出されたアシスト能力が高ければ高いほど前記復帰回転速度を小さな値に設定する復帰設定手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項1の構成によれば、回転電機のアシスト能力が高ければ高いほど、内燃機関の燃料カットを解除する復帰回転速度を低い値に設定しても、燃料カット解除に際して機関回転速度が所定回転速度未満になったときに回転電機による回転アシストを行うことができる。従って、回転電機のアシスト能力が高ければ高いほど、復帰回転速度を低い値に設定するので、燃料カットの継続時間を長くすることができ、内燃機関のストールを防止しつつ、燃費をさらに向上することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、前記検出手段は、前記回転電機に電気エネルギーを供給するバッテリの電圧に基づいて前記回転電機のアシスト能力を検出するものであることを特徴とする。
【0010】
請求項2の構成によれば、バッテリの電圧に基づいて回転電機のアシスト能力を容易に認識することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、前記検出手段は、前記バッテリの電圧が基準値以上の時にのみ前記回転電機による内燃機関のアシストが可能かどうかを検出するものであり、前記復帰設定手段は、前記回転電機によるアシスト可能であるときには回転電機によるアシスト不能であるときに比べて前記復帰回転速度を低く設定するものであることを特徴とする。
【0011】
回転電機によるアシスト可能である場合には、機関回転速度が低下しても回転電機の駆動に基づくアシストにより内燃機関のストールを防止することが可能である。そのため、回転電機によるアシスト可能であるときには回転電機によるアシスト不可である場合よりも復帰回転速度を低く設定することができる。従って、燃料カットの継続時間を長くすることができ、内燃機関のストールを防止しつつ、燃費をさらに向上することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、前記回転電機は、前記内燃機関の出力軸に対して断接可能に駆動連結されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の構成によれば、回転電機により内燃機関の始動を行うことができるとともに、内燃機関の出力が低いときに機関出力をアシストすることができる。請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、前記回転電機は、バッテリの電気エネルギーにより作動するモータ機能と、前記内燃機関の機械エネルギーにより作動する発電機能とを備えたモータジェネレータであることを特徴とする。
【0014】
請求項5の構成によれば、回転電機をいわゆるモータジェネレータとすることによって発電機としても利用可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1は、上述した発明が適用された内燃機関及びその制御装置のシステム構成図である。ここでは内燃機関としてガソリン式エンジン(以下、「エンジン」と称す)2が用いられている。このエンジン2は自動車駆動用として車両に搭載されている。
【0016】
エンジン2が発生する動力(機械エネルギー)は、エンジン2のクランク軸2aからトルクコンバータ4及びオートマチックトランスミッション(以下、「A/T」と称す)6を介して、出力軸6b側に出力され、最終的に車輪に伝達される。更に、エンジン2が発生する動力は、クランク軸2aに接続されている電磁クラッチ10及びプーリ12を介して、ベルト14に伝達される。そして、このベルト14により伝達された動力により、別のプーリ16,18,20が回転される。電磁クラッチ10は、必要に応じてプーリ12とクランク軸2aとの間で断接され、動力の非伝達・伝達を切り替え可能とするものである。
【0017】
上記プーリ16によってパワーステアリング用ポンプ22が駆動されて、パワーステアリング用の油圧を発生される。またプーリ18によりエアコン用コンプレッサ24が駆動される。
【0018】
プーリ20によってモータジェネレータ(以下、「M/G」と称す)26が駆動されてM/G26は発電機として機能する。M/G26はインバータ28に電気的に接続されている。このインバータ28はM/G制御用の電子制御装置(以下、「M/GECU」と称す)32から入力する発電指令に基づいてM/G26から電力源であるバッテリ30への電気エネルギーの充電を行わせる。また、エンジン2の停止状態の場合等において、M/G26はインバータ28からの制御信号に基づいて回転電機として機能する。この際、インバータ28はM/GECU32から入力する電流指令に基づいてバッテリ30からM/G26への電気エネルギーの供給を調整してM/G26の回転速度を可変とする機能を果たす。
【0019】
M/GECU32は電子制御装置(以下、「ECU」と称す)38と交信を行う。M/GECU32にはバッテリ30の充電量(SOC)の情報が入力されている。M/GECU32は、マイクロコンピュータを中心として構成されている。M/GECU32は内部のROMに書き込まれているプログラムに応じて必要な演算処理を実行し、その演算結果に基づいて電磁クラッチ10、インバータ28、M/G26類を駆動制御する。
【0020】
エンジン2の運転状態において、M/GECU32は電磁クラッチ10を接続してエンジン2の動力によりM/G26を回転させることにより発電を行わせる。この際、M/GECU32はバッテリ30のSOCに応じた要求発電量を算出し、この要求発電量に応じた発電指令をインバータ28に出力する。この発電司令に基づいてインバータ28によりM/G26の発電量が制御され、その発電エネルギーによってバッテリ30が充電される。
【0021】
また、エンジン2の自動停止後の停止状態において、パワーステアリング用ポンプ22及びエアコン用コンプレッサ24等の補機の駆動要求が発生すると、M/GECU32はその駆動要求に基づく電流指令をインバータ28に出力する。この電流司令に基づいてインバータ28によりM/G26が作動されて補機が駆動される。
【0022】
ECU38には、A/T6の出力軸6bの回転速度を検出する出力軸回転数センサ、アクセルペダルの踏み込み有無を検出するアイドルスイッチ、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ、エンジン2への吸気経路2bに設けられて吸入空気量を調整するスロットルバルブ2cの開度(スロットル開度TA)を検出するスロットル開度センサ、A/T6のシフト位置SHFTを検出するシフト位置センサ、エンジン回転速度NEを検出するエンジン回転数センサ、ブレーキペダルの踏み込み有無を検出するブレーキスイッチ、エンジン冷却水温THWを検出する水温センサあるいはその他のセンサ類の検出値が入力される。また、ECU38には、運転者がエコランシステムの作動を有効化するためのエコランスイッチ、エアコンの作動を有効化するためのエアコンスイッチの操作信号が入力される。エコランシステムとは、交差点等での車両停車状態において、燃料供給を停止してエンジン2を停止させることにより燃料消費を低減し、排気ガスの排出量を低減する運転制御システムである。
【0023】
ECU38は、マイクロコンピュータを中心として構成されており、前記M/GECU32と交信を行う。ECU38は内部のROMに書き込まれているプログラムに応じて必要な演算処理を実行する。ECU38はこの演算結果に基づいて、スロットルバルブ2cの開度を調整するスロットルバルブモータ2d、スタータ44、エンジン2の吸気ポート又は燃焼室内に燃料を噴射供給する燃料噴射弁42あるいはイグナイタ、その他のアクチュエータ類を駆動することにより、エンジン2やA/T6を好適に制御する。なお、スタータ44はバッテリ46の電気エネルギーにより駆動し、エンジン2の始動時のクランキングを行う。
【0024】
また、ECU38は運転者によってエコランスイッチがオン操作された場合に、車両が所定の運転状態になると、エンジン2の自動停止処理及び自動始動処理を実行する。
【0025】
エンジン2の自動停止処理に際して、ECU38は車両の運転状態、例えば、水温センサにて検出されるエンジン冷却水温THW、アイドルスイッチにて検出されるアクセルペダルの踏み込み有無、バッテリ30の電圧、ブレーキスイッチから検出されるブレーキペダルの踏み込み有無、及び出力軸回転数センサの検出値から換算して得られる車速SPD等に基づいて自動停止条件が成立したか否かを判定する。例えば、(1)エンジン2が暖機後でありかつ過熱していない状態(エンジン冷却水温THWが水温上限値THWmaxよりも低く、かつ水温下限値THWminより高い)、(2)アクセルペダルが踏まれていない状態(アイドルスイッチ・オン)、(3)バッテリ30の充電量(SOC)がある程度以上である状態(バッテリ電圧が基準電圧以上)、(4)ブレーキペダルが踏み込まれている状態(ブレーキスイッチ・オン)、及び(5)車両が停止している状態(車速SPDが0km/h)であるとの条件(1)〜(5)がすべて満足された場合に自動停止条件が成立したと判定する。なお、バッテリ30のSOC情報は前記M/GECU32との交信にて取得される。
【0026】
一方、運転者が交差点等にて自動車を停止させたことにより、自動停止条件が成立した場合には、ECU38はエンジン停止処理を実行する。例えば、燃料噴射弁42からの燃料噴射が停止され、更に点火プラグによるエンジン2の燃焼室内の混合気への点火制御も停止される。このことにより燃料噴射と点火とが停止して、直ちにエンジン2の運転は停止する。
【0027】
エンジン2の自動始動処理に際して、ECU38は車両の運転状態、ここでは、例えば、自動停止処理にて読み込んだデータと同じ、エンジン冷却水温THW、アクセル開度ACCP、バッテリ30の電圧、ブレーキスイッチの状態及び車速SPD等に基づいて自動始動条件が成立したか否かを判定する。例えば、自動停止処理によるエンジン停止状態にあるとの条件下で、(1)エンジン2が暖機後でありかつ過熱していない状態(エンジン冷却水温THWが水温上限値THWmaxよりも低く、かつ水温下限値THWminより高い)、(2)アクセルペダルが踏まれていない状態(アイドルスイッチ・オン)、(3)バッテリ30の充電量(SOC)がある程度以上である状態(バッテリ電圧が基準電圧以上)、(4)ブレーキペダルが踏み込まれている状態(ブレーキスイッチ・オン)、及び(5)車両が停止している状態(車速SPDが0km/h)であるとの条件(1)〜(5)の内の1つでも満足されなかった場合に自動始動条件が成立したと判定する。上述した自動始動条件の(1)〜(5)は、自動停止条件にて用いた各条件と同じ内容であったが、これに限る必要はなく、条件(1)〜(5)以外の条件を設定しても良く。また条件(1)〜(5)の内のいくつかに絞っても良い。
【0028】
自動停止処理によるエンジン停止状態において上記条件(1)〜(5)の一つでも満足されなくなった場合にはECU38はエンジン2の自動始動処理を行う。この自動始動処理において、ECU38は、M/GECU32に対して自動始動司令を転送する。この自動始動司令に基づいてM/GECU32は電磁クラッチ10を接続するとともに、インバータ28に電流司令を出力してM/G26を回転させることによりエンジン2のクランク軸2aを強制的に回転させる。本実施形態においてM/GECU32によりエンジン2のクランク軸2aを強制回転させることをモータリングという。このモータリング時においてエンジン回転速度が所定回転速度に達すると、ECU38は、始動時の燃料噴射処理と点火時期制御処理とを実行して、エンジン2を自動始動する。本実施形態においてモータリング後に燃料噴射処理と点火時期制御処理とを実行してエンジン2を燃焼させることをファイヤリングという。そして、エンジン2の始動が完了すれば、ECU38は通常の燃料噴射量制御処理、点火時期制御処理、その他のエンジン運転に必要な処理を開始する。
【0029】
また、車両の通常走行中において車速がある程度の高速度域にあるときにアクセルペダルがオフ(踏込量が「0」)とされて車両が減速走行状態になると、ECU38は、エンジン2への燃料噴射を停止して燃料カット(以下、F/Cと称す)を行う。このようにF/C制御を行うことにより、エンジン2の燃費向上を図ることができる。
【0030】
こうした車両減速中のF/C制御時においてエンジン2の回転速度はいずれ低下する。エンジン回転速度がアイドル回転速度付近まで低下するとエンジン2のストールを起こすこととなる。そのため、ECU38はエンジン回転速度が所定の回転速度(復帰回転速度)よりも低下した場合に、F/Cを解除して燃料噴射を再開させることによりエンジン2を燃焼させ、エンジン回転速度をアイドル回転速度に安定化させる。
【0031】
このF/C解除に際して、M/G26によるエンジン2の回転アシストが可能な状態であれば、エンジン回転速度NEが予め設定されたアシスト回転速度NEA(この場合、450rpm)未満になった場合に、M/GECU32はM/G26を駆動することによりエンジン2の回転をアシストするようになっている。
【0032】
バッテリ30の充電量(SOC)がある程度以上である状態(バッテリ電圧が基準電圧以上)であればM/G26によるエンジン2の回転アシストを行うことができる。従って、M/G26によるエンジン2の回転アシストを行うに先立ち、M/GECU32はエンジン2の始動時において検出されたバッテリ30の電圧が所定電圧値以上であればM/G26のアシスト可能であると判定し、そうでなければM/G26のアシスト不可であると判定する。また、M/GECU32はM/G26のアシスト可能であると判定した場合には、図5及び図6に示すようにアシスト可能フラグとしてオンを設定する。
【0033】
また、ECU38はF/C解除時における復帰回転速度NRを前記M/G26の回転アシスト能力に応じて異なる値に設定するようにしている。すなわち、ECU38は、M/G26のアシスト可能であるときの復帰回転速度NRを第1の回転速度NE1(この場合、600rpm)に設定し、M/G26のアシスト不可であるときの復帰回転速度NRを第1の回転速度NE1よりも高い第2の回転速度NE2(この場合、800rpm)に設定するようになっている。このようにF/C解除しても、実際に燃焼トルクが発生してエンジン回転速度の低下が抑えられるまでには遅れ時間が存在する。この燃料カット解除からの遅れ時間内に、パワステ負荷、発電負荷等の外乱が入ると、エンジン回転速度の低下度合いが増加する。従って、M/G26によるエンジン2の回転アシスト不可の場合にはF/C解除の復帰回転速度NRは高い回転速度である第2の回転速度NE2に設定され、エンジン2のストールを防止するようにしている。また、M/G26によるエンジン2の回転アシスト可能である場合には、エンジン回転速度が所定回転速度未満になったときM/G26によりエンジン2の回転アシストを行うことができる。そのため、F/C解除の復帰回転速度NRは低い回転速度である第1の回転速度NE1に設定してもエンジン2のストールを防止しつつ、復帰回転速度NRが低い回転速度に設定されることによりF/Cの実行時間を長くして更なる燃費の向上を図ることができる。
【0034】
次に、ECU38が実行するF/C制御処理及び及びM/GECU32が実行するアシスト制御処理について詳細に説明する。
図2はECU38が実行するF/C制御処理を示すフローチャートである。本処理は予め設定されている短時間毎に周期的に繰り返し実行される処理である。本処理が開始されると、まず、ステップ100でM/Gアシストが可能かどうかが前記アシスト可能フラグ(図4参照)の値に基づいて判定される。アシスト可能フラグがオンであればM/Gアシスト可能であると判定されてステップ110に進み、アシスト可能フラグがオフであればM/Gアシスト不能であると判定されてステップ120に進む。
【0035】
ステップ110では復帰回転速度NRとして第1の回転速度NE1(この場合、600rpm)が設定される。ステップ120では復帰回転速度NRとして前記第1の回転速度NE1よりも高い第2の回転速度NE2(この場合、800rpm)が設定される。
【0036】
ステップ110又はステップ120において復帰回転速度NRが設定されると、次にステップ130においてそのときのエンジン回転速度NEが復帰回転速度NR未満かどうかに基づいてF/C復帰条件が成立したかどうかが判定される。エンジン回転速度NEが復帰回転速度NR未満である場合にはF/C復帰条件が成立したと判定され、次のステップ140にて燃料噴射が再開されてF/Cから復帰し、本処理を終了する。
【0037】
またステップ130において、エンジン回転速度NEが復帰回転速度NR以上である場合にはF/C復帰条件が未成立であると判定されて処理はステップ150に移行する。ステップ150では、そのときのエンジン回転速度NEが燃料カットを開始する燃料カット回転速度NFC以上かどうかに基づいてF/C実行条件が成立したかどうかが判定される。エンジン回転速度NEが燃料カット回転速度NFC以上である場合にはF/C実行条件が成立したと判定され、次のステップ160にてF/Cが実行される。エンジン回転速度NEが燃料カット回転速度NFC未満である場合にはF/C実行条件が未成立であると判定され、F/Cは実行されず本ルーチンが一旦終了される。
【0038】
図3はM/GECU32が実行するアシスト制御処理を示すフローチャートである。本処理は予め設定されている短時間毎に周期的に繰り返し実行される処理である。
【0039】
本処理が開始されると、まず、ステップ200でアシスト要求フラグXASSTがONかどうかが判定される。このアシスト要求フラグXASSTはエンジン回転速度NEがアシスト回転速度NET以下になった場合にM/GECU32によってONに設定される。アシスト要求フラグXASSTがONであればステップ210に進み、アシスト要求フラグXASSTがOFFであればステップ220に進む。
【0040】
ステップ210ではアシスト回転速度NETのヒステリシス回転幅HYSとして所定値N1(この場合、>0rpm)が設定される。ステップ220ではヒステリシス回転幅HYSとして0rpmが設定される。
【0041】
ステップ210又はステップ220においてヒステリシス回転幅HYSが設定されると、次にステップ230において、アシスト回転速度の初期値NEAに対してヒステリシス回転幅HYSを加えることによりアシスト回転速度NETが算出される。従って、エンジン回転速度NEがアシスト回転速度初期値NEA未満になっておらずアシスト要求フラグXASSTがOFFの場合にはアシスト回転速度NETはNEAとなる。エンジン回転速度NEが一旦アシスト回転速度初期値NEA未満になってアシスト要求フラグXASSTがONになった場合にはアシスト回転速度NETは(NEA+N1)となる。
【0042】
次のステップ240においてそのときのエンジン回転速度NEがアシスト回転速度NET未満かどうかが判定される。エンジン回転速度NEがアシスト回転速度NET未満である場合にはM/G26による回転アシストが必要であると判定され、次のステップ250にてアシスト要求フラグXASSTがONに設定されて本処理を終了する。
【0043】
またステップ240において、エンジン回転速度NEがアシスト回転速度NET以上である場合にはM/G26による回転アシストが不要であると判定され、次のステップ260にてアシスト要求フラグXASSTがOFFに設定されて本処理を終了する。
【0044】
次に、上記のように構成された車両の減速中のF/C制御及び回転アシスト制御を図4〜図6に従って説明する。
図4はバッテリ30の充電量が低くM/G26によるアシスト不可である場合を示している。車両走行時において車速がある程度の高速度域にあり、エンジン回転速度NEが燃料カット回転速度NFC以上であるタイミングt1以前においてアクセルペダルがオフ(踏み込み量が「0」)とされて車両が減速されると、F/Cが実行される。F/Cの実行によってエンジン2の回転速度NEが低下する。
【0045】
このとき、アシスト可能フラグがオフに設定されているため、M/G26による回転アシストが不可となり、復帰回転速度NRは第2の回転速度NE2(800rpm)に設定される。従って、エンジン回転速度NEが第2の回転速度NE2に達するタイミングt2においてF/Cが解除されて燃料噴射が開始され、エンジン2が再燃焼される。復帰回転速度NRは第2の回転速度NE2に設定されているので、F/C解除後の遅れ時間内にパワステ負荷、発電負荷等の外乱が入っても、エンジン2のストールは防止され、エンジン回転速度NEはアイドル回転速度Ni(この場合、570rpm)に安定するようになる。
【0046】
図5はバッテリ30の充電量が高くM/G26によるアシスト可能であり、エンジン回転速度に影響を与える外乱はなく、M/Gアシストが実行されない場合を示している。車両走行時において車速がある程度の高速度域にあり、エンジン回転速度NEが燃料カット回転速度NFC以上であるタイミングt1以前においてアクセルペダルがオフ(踏み込み量が「0」)とされて車両が減速されると、F/Cが実行される。F/Cの実行によってエンジン2の回転速度NEが低下する。
【0047】
また、タイミングt1以降においてアシスト可能フラグがオンに設定されているため、M/G26による回転アシストが可能となり、復帰回転速度NRは第1の回転速度NE1(600rpm)に設定される。従って、エンジン回転速度NEが第1の回転速度NE1に達するタイミングt3においてF/Cが解除されて燃料噴射が開始され、エンジン2が再燃焼される。F/C解除後の遅れ時間内にパワステ負荷、発電負荷等の外乱がないため、エンジン2のストールは防止され、エンジン回転速度NEはアイドル回転速度Niに安定するようになる。
【0048】
図6はバッテリ30の充電量が高くM/G26によるアシスト可能であり、エンジン回転速度に影響を与える外乱があり、M/Gアシストが実行される場合を示している。車両走行時において車速がある程度の高速度域にあり、エンジン回転速度NEが燃料カット回転速度NFC以上であるタイミングt1以前においてアクセルペダルがオフ(踏み込み量が「0」)とされて車両が減速されると、F/Cが実行される。F/Cの実行によってエンジン2の回転速度NEが低下する。
【0049】
また、タイミングt1以降においてアシスト可能フラグがオンに設定されているため、M/G26による回転アシストが可能となり、復帰回転速度NRは第1の回転速度NE1(600rpm)に設定される。従って、エンジン回転速度NEが第1の回転速度NE1に達するタイミングt3においてF/Cが解除されて燃料噴射が開始され、エンジン2が再燃焼される。F/C解除後の遅れ時間内にパワステ負荷、発電負荷等の外乱が入るとエンジン回転速度NEは低下し続ける。エンジン回転速度NEがアシスト回転速度初期値NEA未満になるタイミングt4においてアシスト要求フラグがONに設定されてM/Gアシストが実行される。その結果、エンジン2のストールが防止され、エンジン回転速度NEはアイドル回転速度Niに安定するようになる。
【0050】
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
・ 本実施形態では、バッテリ30の電圧が基準値以上の時にのみM/G26によるエンジン2のアシストが可能であることを検出する。そして、F/C制御時において、M/G26のアシスト不可であるときの復帰回転速度NRとして第2の回転速度NE2を設定し、M/G26のアシスト可能であるときの復帰回転速度NRとして第2の回転速度NE2よりも低い第1の回転速度NE1を設定するようにした。従って、F/C解除時にエンジン2のストールを防止することができる。特にM/G26によるアシスト可能である場合において、エンジン回転速度NEが第2の回転速度NE2から第1の回転速度NE1に低下するまでの期間分、F/Cの継続時間を長くすることができ、更なる燃費の向上を図ることができる。
【0051】
・ また、本実施形態では、エンジン2の始動時において検出したバッテリ30の充電量(SOC)に基づいてM/G26のアシスト能力を容易に検出することができる。
【0052】
・ M/G26は、エンジン2のクランク軸2aに対して断接可能に駆動連結されているので、M/G26によりエンジン2の自動始動処理を行うことができるとともに、エンジン2の出力が低いときにM/G26によって出力をアシストすることができる。
【0053】
・ 本実施形態では回転電機をM/G26とすることによって発電機としても利用可能となる。
なお、実施の形態は以下のように変更することも可能である。
【0054】
・ 上記実施形態では、バッテリ30の電圧が基準値以上であるかどうかに基づいてM/G26によるエンジン2のアシストが可能であるかどうかを検出し、その検出結果に基づいてF/Cの復帰回転速度を異なる値に設定した。バッテリ30の電圧が高ければ高いほどM/G26のアシスト能力は高くなるので、バッテリ30の電圧が高ければ高いほど復帰回転速度を小さな値に設定するようにしてもよい。この場合にも、上記と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0055】
・ 上記実施形態では、燃料カット解除後においてM/G26によるエンジン2の回転アシストを行うように構成したが、燃料カット解除とM/G26によるエンジン2の回転アシストとを同時に行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態の内燃機関及びその制御装置のシステム構成図。
【図2】実施の形態の燃料カット制御処理を示すフローチャート。
【図3】実施の形態のアシスト制御処理を示すフローチャート。
【図4】実施の形態の制御の一例を示すタイムチャート。
【図5】実施の形態の制御の一例を示すタイムチャート。
【図6】実施の形態の制御の一例を示すタイムチャート。
【符号の説明】
2…エンジン、2a…クランク軸、2b…吸気経路、2c…スロットルバルブ、2d…スロットルバルブモータ、4…トルクコンバータ、6…A/T、6b…出力軸、10…電磁クラッチ、12…プーリ、14…ベルト、16,18,20…プーリ、22…パワーステアリング用ポンプ、24…エアコン用コンプレッサ、26…モータジェネレータ(M/G)、28…インバータ、30…バッテリ、32…M/GECU、38…ECU、42…燃料噴射弁、44…スタータ。
Claims (5)
- 内燃機関の回転をアシストするための回転電機と、
前記内燃機関の燃料カットを行うとともに、燃料カット中に内燃機関の回転速度が復帰回転速度未満になった時に燃料カットを解除する供給制御手段とを備え、
燃料カットの解除に際して前記内燃機関の回転速度が所定回転速度未満になったときに前記回転電機を駆動することにより前記内燃機関の回転をアシストするようにした内燃機関の制御装置において、
前記回転電機のアシスト能力を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出されたアシスト能力に応じて前記復帰回転速度を可変設定するとともに、該検出されたアシスト能力が高ければ高いほど前記復帰回転速度を小さな値に設定する復帰設定手段と
を備える内燃機関の制御装置。 - 請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記検出手段は、前記回転電機に電気エネルギーを供給するバッテリの電圧に基づいて前記回転電機のアシスト能力を検出するものである内燃機関の制御装置。 - 請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記検出手段は、前記バッテリの電圧が基準値以上の時にのみ前記回転電機による内燃機関のアシストが可能かどうかを検出するものであり、
前記復帰設定手段は、前記回転電機によるアシスト可能であるときには回転電機によるアシスト不能であるときに比べて前記復帰回転速度を低く設定するものである内燃機関の制御装置。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、
前記回転電機は、前記内燃機関の出力軸に対して断接可能に駆動連結されている内燃機関の制御装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置において、
前記回転電機は、バッテリの電気エネルギーにより作動するモータ機能と、前記内燃機関の機械エネルギーにより作動する発電機能とを備えたモータジェネレータである内燃機関の制御装置。
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