JP2004100005A - 冷間加工性および磁気特性に優れた極低炭素鋼線材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.0034%以下、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.10〜0.30%、P:0.01〜0.10%、S:0.006 %以下、Al:0.35%以下、N:0.01%以下、O:0.015 %以下を、Si,P,Alが次式
Si+P+Al≦0.6 %
を満足する範囲で含有し、 残部はFeおよび不可避的不純物の組成とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車および家電製品等の電装部品に使用される極低炭素鋼線材(棒鋼を含む。以下同じ)に関し、特にかかる部品の製造過程で要求される鍛造性等の冷間加工性および磁気特性の有利な改善を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車および家電製品等の電装部品の磁気回路を構成する部材には、磁界に順応し易い軟質磁性材料が使用される。すなわち、小さな外部磁場によって容易に磁化し、かつ保磁力が小さいという磁気特性が要求される。
従来、このような鋼材としては、炭素量が0.01〜0.1 mass%程度の低炭素鋼が用いられてきた。これらの鋼材は、熱間圧延したのち、焼鈍、潤滑処理を行ってから、伸線や鍛造などの冷間加工および切削加工を行い、ついで最終成形完了後に磁気焼鈍等が施されるのが一般的であった。
【0003】
しかしながら、近年、省エネルギーの観点から、焼鈍を施すことなしに冷間加工を施すことのできる鋼材に対する要求が高まりつつある。
すなわち,熱間加工後に焼鈍を行わずとも、良好な冷間加工性を有する鋼材の開発が望まれていた。
【0004】
また、これらの部材に要求される磁気応答性を確保するためには、低磁場での磁束密度例えば磁場:100 A/m 時における磁束密度が高い鋼材が有効である。
しかしながら、上記したような冷間加工性と低磁場域での高磁束密度は、鋼材の化学成分の観点からは相反する特性である。すなわち、Si,P,Alは固溶強化により鋼を硬くして冷間加工性を低下させる反面、 低磁場域での磁束密度は上昇させる。
従って、電装部品として、上記した2つの特性を兼ね備えた鋼材の開発が望まれていた。
【0005】
熱間加工鋼材の変形抵抗を低下させて冷間加工性を改善する技術として、CやNの低減を図ると共に、B等の特殊元素を添加する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この技術においては、Cが0.04〜0.10mass%程度含有されているため、ひずみ時効硬化の抑制にはそれなりの効果はあるが、加工硬化を低減するという観点からはなお不十分であり、変形抵抗を必ずしも極限まで低下させ得たものとは言えなかった。しかも、電装部材の応答性すなわち低磁場域での磁束密度の改善策については何も示されていない。
【0006】
また、圧延のままで良好な冷鍛性が得られ、かつ磁気焼鈍を施した製品段階で優れた磁気特性を示す鋼棒、線材を得る技術として、C,Si,P,S,Nを低減すると共に、AlやCr,Zrを添加する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、この技術においては、低磁場域での磁束密度を十分に得ることができない。
【0007】
なお、かかる鋼材は、磁気特性向上の観点からフェライト粒径を粗大化させて使用するのが一般的であった。しかしながら、結晶粒の粗大化は、鋼の延性および靭性を損なうために、加工性を低下させる。
従って、磁気特性と加工性を兼備するために,フェライト粒径の適正化も望まれていた。
【0008】
【特許文献1】
特開昭59−215463号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平4−285143号公報(特許請求の範囲)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実状に鑑み開発されたもので、熱間圧延ままで良好な冷間加工性が得られ、かつ磁気焼鈍後の製品段階で優れた低磁場特性を呈する、冷間加工性および磁気特性に優れた極低炭素鋼線材を提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
すわなち、本発明は、質量%で、
C:0.0034%以下、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.10〜0.30%、
P:0.01〜0.10%、
S:0.006 %以下、
Al:0.35%以下、
N:0.01%以下、
O:0.015 %以下
を、Si,P,Alが次式
Si+P+Al≦0.6 %
を満足する範囲で含有し、 残部はFeおよび不可避的不純物の組成になることを特徴とする、冷間加工性および磁気特性に優れた極低炭素鋼線材である。
【0011】
本発明において、フェライトの平均結晶粒径は 0.2mm未満とすることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において鋼の成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
C:0.0034%以下
Cは、鋼材の強度と延性のバランスを支配する基本的元素であり、含有量が少ないほど強度は低下し、冷間加工性は向上する。また磁気特性の面からしても極力低減することが望ましい。そこで、これらの観点から、C量は0.0034%以下に制限した。
【0013】
Si:0.10〜0.50%
Siは、低磁場域での鋼の磁束密度を向上させる作用があり、そのためには0.10%以上の添加が必要であるが、多すぎると固溶強化により鋼の冷間加工性が低下するので、Si量は0.10〜0.50%の範囲に限定した。
【0014】
Mn:0.10〜0.30%
Mnは、Sの固定により熱間加工性を向上させる効果があり、そのためには0.10%以上の添加を必要とするが、0.30%を超えて含有されると、鋼の強度が上昇して冷間加工性の低下を招くので、Mn量は0.10〜0.30%の範囲に限定した。
【0015】
P:0.01〜0.10%
Pは、Siと同様、低磁場域での磁束密度の向上に有効に寄与するので、0.01%以上含有させるが、多すぎると固溶強化により鋼の冷間加工性が低下するので、P量は0.01〜0.10%の範囲に限定した。
【0016】
S:0.006 %以下
Sは、硫化物系介在物を形成して延性を低下させるだけでなく、磁気特性の面でも有害な元素であるので、極力低減することが望ましいが、0.006 %以下であれば許容できる。
【0017】
Al:0.35%以下
Alは、低磁場域における磁束密度を向上させる上で有効な元素である。しかしながら、含有量が多すぎると固溶強化により鋼の冷間加工性が低下するので、Alは0.35%以下で含有させるものとした。
【0018】
N:0.01%以下
Nは、固溶により冷間加工性の低下を引き起こすので、できるだけ少ない方が好ましい。従って、上限を0.01%とした。
【0019】
O:0.015 %以下
Oは、鋼の清浄化に有害であるだけでなく、磁気特性も低下させるので、できるだけ少ない方が望ましい。従って、上限を0.015 %とした。
【0020】
Si+P+Al≦0.6 %
上述したとおり、Si,PおよびAlはいずれも、鋼の低磁場域における磁束密度を向上させるのに有効な元素であり、それぞれ上述した範囲で含有させる必要がある。しかしながら、いずれも固溶強化により鋼の冷間加工性を低下させるので、合計量の上限を 0.6%とした。
【0021】
フェライトの平均結晶粒径:0.2 mm未満
本発明では、鋼の成分組成を上述した適正範囲に制御することによってその効果が発揮されるが、さらにフェライトの平均結晶粒径を小さくすることにより、その効果が一層向上する。
すなわち、線材のフェライト粒径を微細化することにより、鋼の延性および靭性が向上して、鋼の冷間加工性が一層向上する。そのためには、フェライトの平均結晶粒径を 0.2 mm 未満にすることが重要である。
【0022】
なお、フェライトの平均結晶粒径を 0.2mm未満にする方法としては、鋼を線材に圧延するに際し、900 ℃以下での圧下量を断面減少率で20%以上とする方法が挙げられる。
【0023】
【実施例】
表1に示す組成になる溶鋼100kg を、真空炉で溶製したのち、150mm 角ビレットに熱間鍛造し、これを加熱後、直径:50mmの棒鋼に圧延した。なお、表1中、No.3については、圧延終了温度が 900℃を超えるようにして、フェライト粒径が大きめになるようにした。No.3以外については、900 ℃以下で20%以上の断面減少率が得られるように圧延温度を調整した。
かくして得られた棒鋼の冷間加工性および磁気特性について調べた結果を、表1に併記する。
なお、棒鋼の冷間加工性については、得られた棒鋼から、該棒鋼の表面から径方向に12.5mmの深さ位置が中心軸となるように、平行部の直径:6mm,長さ:30mmの丸棒引張試験片を作成し、引張試験を行って求めた引張強さおよび破断絞り値により評価した。
また、得られた棒鋼から組織観察用の試料を採取し、光学顕微鏡観察により、フェライトの平均結晶粒径を求めた。
一方、磁気的応答性の指標としては、棒鋼から外径:45mmφ、内径:33mmφ、高さ:5mmのリング状試験片を作成し、800 ℃, 1時間の焼鈍を施した後、印加磁場:100 A/m の時の磁束密度(B1 )により評価した。
【0024】
【表1】
【0025】
同表に示したとおり、No.1, 2の発明例はそれぞれ、引張強さも十分に低値であり、絞り値も良好であるだけでなく、低磁場域での磁束密度も高い値を示している。また、No.3の発明例は、フェライト粒径が好適範囲を外れているため、絞り値がやや低いけれども、依然として良好な値を示しており、また磁束密度B1も高い値であった。
【0026】
これに対し、No.4の比較例は、個々の成分は本発明の適正範囲を満足しているものの、Si+P+Al量が本発明の上限値を超えているため、磁束密度は優れているが、 鋼の強度が高くなり、 絞り値が大きく低下しており、 冷間加工性が劣化している。
No.5〜7 の比較例はそれぞれ、Si,Al, Pのいずれかが本発明の適正範囲を逸脱しているため、磁束密度は優れているものの、鋼の強度が高くなり、絞り値が大きく低下しており、冷間加工性が劣化している。
No.8,9の比較例は、C,Mn,S,N, O等が本発明の適正範囲を逸脱しているため、磁束密度が低下すると共に、絞り値も大きく低下しており、磁気特性および冷間加工性がともに劣化していることが分かる。
No.10 の比較例は、Si量が本発明の下限に満たないので、磁束密度が低下している。
【0027】
【発明の効果】
かくして、本発明によれば、自動車や家電製品等の電装部品に供して好適な、冷間加工性と磁気特性に優れた極低炭素鋼線材を安定して得ることができる。
Claims (2)
- 質量%で、
C:0.0034%以下、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:0.10〜0.30%、
P:0.01〜0.10%、
S:0.006 %以下、
Al:0.35%以下、
N:0.01%以下、
O:0.015 %以下
を、Si,P,Alが次式
Si+P+Al≦0.6 %
を満足する範囲で含有し、 残部はFeおよび不可避的不純物の組成になることを特徴とする、冷間加工性および磁気特性に優れた極低炭素鋼線材。 - フェライトの平均結晶粒径が 0.2mm未満であることを特徴とする請求項1記載の極低炭素鋼線材。
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JP2002265693A JP4103513B2 (ja) | 2002-09-11 | 2002-09-11 | 冷間加工性および磁気特性に優れた極低炭素鋼線材 |
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---|---|---|---|---|
JP2005320630A (ja) * | 2004-04-09 | 2005-11-17 | National Institute For Materials Science | 冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼、高強度成形品並びにそれらの製造方法 |
CN112442631A (zh) * | 2019-08-30 | 2021-03-05 | 宝山钢铁股份有限公司 | 一种含钛超低碳钢冷轧钢质缺陷的控制方法 |
-
2002
- 2002-09-11 JP JP2002265693A patent/JP4103513B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005320630A (ja) * | 2004-04-09 | 2005-11-17 | National Institute For Materials Science | 冷間加工性に優れた高強度鋼線又は棒鋼、高強度成形品並びにそれらの製造方法 |
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