JP6686796B2 - Fe−Ni系合金、軟磁性素材、軟磁性材料及び軟磁性材料の製造方法 - Google Patents

Fe−Ni系合金、軟磁性素材、軟磁性材料及び軟磁性材料の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、Fe−Ni系合金、軟磁性素材、軟磁性材料及び軟磁性材料の製造方法に関するものである。
Niを40〜50質量%含有するFe−Ni系合金であるPBパーマロイは、高い透磁率、低い保磁力を有することから、電流センサーやトランスコア、磁気シールドなどの用途に用いられる。PBパーマロイの最大の特徴である低い保磁力は、1100℃程度の磁気焼鈍によって発現される。一般的にその値は概ね10[A/m]程度であり、それ以上の磁気応答性を要する場合には、さらに高グレードのPCパーマロイが通常用いられる。
しかしながら、PCパーマロイは磁気特性に極めて優れるものの、Niを80質量%程度含むことからPBパーマロイ対比で非常に高価であるという欠点がある。それ故、安価なPBパーマロイの磁気特性向上の要望、特に保磁力の値を安定的に4[A/m]以下、更に好ましくは3.5[A/m]以下とする保磁力低減の要望が、コスト低減の観点から顕在化してきている。
パーマロイ合金の磁気特性を改善する手法として、下記特許文献1には、鋼塊やスラブにソーキング(均質化処理)を施してNi偏析を軽減することで、磁気特性を改善する手法が提案されている。更に、この特許文献1には鋼中に含まれる介在物のサイズと個数を規定することで磁気特性を改善せしめるとの記載がある。実際に、これらの手法によっても磁気特性の改善は認められるが、ソーキングが高温かつ長時間であるために製造に要するコストが大きくなってしまい、コスト低減という観点から好ましい手法とは言い難い。
特開2002−173745号公報
PBパーマロイは磁気焼鈍後の結晶組織が整粗粒であるほど、特性のばらつきが小さく且つ保磁力が小さくなる。通常、工業的に用いられる磁気焼鈍炉は、1100℃までの使用が一般的であり、それ以上の温度となると特殊な炉壁が必要となるため、1100℃の磁気焼鈍で低い保磁力が得られるPBパーマロイが望ましい。しかしながら、一般的なPBパーマロイでは1100℃の磁気焼鈍で安定的に整粗粒を得ることは容易ではなく、かねてより1100℃の磁気焼鈍で磁気特性に優れるPBパーマロイ(Fe−Ni系合金)が望まれていた。
本発明は以上のような事情を背景とし、1100℃の磁気焼鈍で容易に結晶粒を整粗粒化するFe−Ni系合金及び軟磁性素材を提供することを目的としてなされたものである。また本発明の他の目的は、低い保磁力を有し且つ安価な軟磁性材料及びその製造方法を提供することである。
而して請求項1はFe−Ni系合金に関するもので、質量%で、Si:0.02%≦Si≦0.50%、Mn:0.05%≦Mn≦0.20%、S:0.0004%≦S≦0.0020%、Ni:45.0%≦Ni≦50.0%、Al:0.020%<Al≦0.050%、N:0.0004%≦N≦0.0040%、を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、該不可避的不純物として、C:0.020%以下、P:0.030%以下、Cu:0.10%以下、Cr:0.10%以下、Mo:0.10%以下、Ti:0.010%以下、及び、O:0.0030%以下、を充足し、更に下記式(1)を満足することを特徴とする。
[Mn]+100[S]≦0.25・・・式(1)
(式(1)中[ ]は各元素の含有質量%を示す)
請求項2はFe−Ni系合金からなる軟磁性素材に関するもので、請求項1に記載の合金成分を含有し、組織中にはMn系硫化物が10mmの観察領域に10個以上含まれており、かつ、結晶粒界にAl系窒化物が析出していることを特徴とする。
請求項3はFe−Ni系合金からなる軟磁性材料に関するもので、請求項1に記載の合金成分を含有し、平均結晶粒径が200μm以上であることを特徴とする。
請求項4はFe−Ni系合金からなる軟磁性材料の製造方法に関するもので、請求項2に記載の軟磁性素材に磁気焼鈍を施し、平均結晶粒径を200μm以上としたことを特徴とする。
発明者らは、1100℃の磁気焼鈍で容易に整粗粒を得るための有効な手段を鋭意検証した結果、1100℃の磁気焼鈍時に素地に固溶するインヒビター(ここではMn系硫化物、Al系窒化物を指す)による2次再結晶を利用することによって、容易に整粗粒が得られることを見出した。なお、2次再結晶とは、1次再結晶が完了した後に、高温で焼鈍することにより、粗大粒に成長する現象である。そして、2次再結晶を安定して発現させるためには、1次再結晶の段階でインヒビターが粒界(結晶粒界)に析出すること、磁気焼鈍温度でインヒビターが素地に固溶しピン止め効果が失われること、の2点が重要であることを知得した。本発明はこのような知見に基づいたもので、本発明のFe−Ni系合金は、Mn系硫化物及びAl系窒化物による2次再結晶を利用し、1100℃の磁気焼鈍で容易に結晶粒を整粗粒化するのに最適な化学組成範囲を規定するものである。
次に本発明における各化学成分等の限定理由を以下に説明する。
C:C≦0.020%
Cは、その存在状態に依らず磁気特性に悪影響を与えるため、可能な限り低減するのが望ましい。しかしながらCは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.020%とした。より好ましくは0.010%以下である。
Si:0.02%≦Si≦0.50%
Siは、脱酸剤として有効であり、その効果を得るには0.02%以上の添加が必要である。しかしながら、Siの添加量が過剰な場合、磁気特性に悪影響を与えるため、その上限を0.50%とした。より好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.05%≦Mn≦0.20%
Mnは、本発明における重要な元素である。Mnは熱間加工性確保のために0.05%以上の添加が必須である。また、MnはSと結合することで硫化物を形成するが、鋼中に含有されるMn量とS量によって、Mn系硫化物の固溶温度が変化するという特徴がある。一般的に磁気焼鈍温度は1100℃程度であり、この温度で、粒界に析出した微細なMnSが固溶することで、粒界のピン止め効果が無くなり整粗粒が得られる。したがって、固溶温度が1100℃以下のMn系硫化物とする必要があるため、Mnの添加上限を0.20%以下にする。より好ましくは0.15%以下である。なお、上記の効果は、Sの添加量との兼合いで影響を受けるため、式(1)を同時に満足する必要がある。
P:P≦0.030%
Pは、その存在状態に依らず磁気特性に悪影響を与えるため、可能な限り低減するのが望ましい。しかしながら、Pは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.030%とした。より好ましくは0.020%以下である。
S:0.0004%≦S≦0.0020%
Sは、Mn同様に本発明における重要な元素である。しかしながら、過度な添加は熱間加工性を著しく低下させる。また、SはMnと結合することで硫化物を形成する。S量が多いほど形成される硫化物の量が増加し磁気特性に悪影響を与える。
尚、上述のように鋼中に含有されるMn量とS量によって硫化物の固溶温度が変化するという特徴がある。一般的に磁気焼鈍温度は1100℃程度であり、この温度で、粒界に析出した微細なMnSが固溶することで、粒界のピン止め効果が無くなり整粗粒が得られる。したがって、固溶温度が1100℃以下のMn系硫化物とする必要があるため、Sの添加下限を0.0004%以上、添加上限を0.0020%以下にする。より好ましくは0.0015%以下である。なお、上記の効果は、Mnの添加量との兼合いで影響を受けるため、式(1)を同時に満足する必要がある。
Cu:0.10%以下
Cuは、その存在状態に依らず磁気特性に悪影響を与えるため、可能な限り低減するのが望ましい。しかしながらCuは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.10%とした。より好ましくは0.05%以下である。
Ni:45.0%≦Ni≦50.0%
Niは、磁気特性を確保する上で必須となる元素である。その効果を得るには45.0%以上の添加が必要である。一方で添加量が過剰であると磁気特性が劣化するため、その上限を50.0%とした。より好ましくは47.0%以上で49.0%以下である。
Cr:0.10%以下
Crは、その存在状態に依らず磁気特性に悪影響を与えるため、可能な限り低減するのが望ましい。しかしながらCrは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.10%とした。より好ましくは0.05%以下である。
Mo:0.10%以下
Moは、その存在状態に依らず磁気特性に悪影響を与えるため、可能な限り低減するのが望ましい。しかしながらMoは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.10%とした。より好ましくは0.05%以下である。
Ti:0.010%以下
Tiは、CやNと結合することで炭化物や窒化物を形成する。Ti系炭化物や窒化物は磁気焼鈍温度である1100℃付近で安定的に存在し、粒界をピン止めするため結晶粒の粗大化を阻害する。したがって、可能な限り低減するのが望ましい。しかしながらTiは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.010%とした。より好ましくは0.005%以下である。
Al:0.020%<Al≦0.050%
Alは、Nと結合することで窒化物を形成する。Fe−Ni系合金におけるAl系窒化物は磁気焼鈍温度である1100℃以下で固溶し、粒界のピン止めが外れるため整粗粒化が促進される。その効果を得るには0.020%以上の添加が必要である。一方で添加量が過剰であると磁気特性が劣化するため、その上限を0.050%とした。より好ましくは0.020%≦Al≦0.040%である。
O:0.0030%以下
Oは、種々の元素と高温でも安定な酸化物系介在物を形成し、磁気特性に悪影響を与える。しかしながらOは製造都合上不可避的に混入するため、磁気特性とのバランスを考慮し上限を0.0030%とした。より好ましくは0.0020%以下である。
N:0.0004%≦N≦0.0040%
Nは、本発明において重要なインヒビターであるAl系窒化物の構成元素であるため所定の量を添加する必要がある。その添加下限は0.0004%である。その一方で、NそのものはFe−Ni系合金の磁気特性を劣化させるため、可能な限り低減するのが望ましい。そこで添加上限を0.0040%とした。より好ましくは0.0030%以下である。
Mn:0.05%≦Mn≦0.20%かつS:0.0020%以下の範囲で[Mn]+100[S]≦0.25・・・式(1)
式(1)は、磁気焼鈍温度である1100℃で、粒界に析出した微細なMnSが固溶し、整粗粒化が起こる成分範囲を規定するものである。その効果を得るには、本願に規定するMn量、S量を満たしつつ、かつ式(1)を満たす必要がある。
本発明では、上記のような合金組成を有するFe−Ni系合金を用い、組織中にはMn系硫化物が10mmの観察領域に10個以上含まれ、かつ、結晶粒界にAl系窒化物が析出している軟磁性素材とすることで、1100℃の磁気焼鈍で容易に整粗粒化させることができる。
そして本発明では、上記軟磁性素材に磁気焼鈍を施すことで、平均結晶粒径を200μm以上とするFe−Ni系合金からなる軟磁性材料を得ることができる。
以上のような本発明によれば、1100℃の磁気焼鈍で容易に結晶粒を整粗粒化することができるFe−Ni系合金及び軟磁性素材を提供することができる。また、本発明によれば、低い保磁力を有し且つ安価な軟磁性材料及びその製造方法を提供することができる。
次に本発明の一実施形態のFe−Ni系合金からなる軟磁性素材及び軟磁性材料について説明する。本発明のFe−Ni系合金からなる軟磁性素材は、例えば溶解・鋳造→熱間加工→焼鈍→冷間加工、の製造工程を経て製造することができる。
そしてこのようにして得られた軟磁性素材に、磁気焼鈍を施すことで、本発明の軟磁性材料を得ることができる。
まず、所定の組成を有するFe−Ni系合金の溶解を行い、得られたインゴットを分塊し、熱間加工(詳しくは熱間鍛造及び/又は熱間圧延)を行う。Mn系硫化物およびAl系窒化物は、インゴッドでは全面(粒内及び粒界)に析出しているが、熱間加工により固溶する。
次いで、焼鈍を行い、Mn系硫化物およびAl系窒化物を粒界に析出させる。焼鈍温度が高いと、結晶粒の粗大化が起こり、続く冷間加工による加工歪が均一にならない場合があるため、焼鈍温度は、650〜900℃とするのが好ましい。
次いで、焼鈍後のFe−Ni系合金に冷間加工を行い、加工歪を導入する。Fe−Ni系合金において優れた磁気特性を得るためには、磁気焼鈍における結晶粒の整粗粒化が必要であり、結晶粒の整粗粒化のためには、冷間加工によって磁気焼鈍前に加工歪を与えることが有効である。好ましい加工歪の目安としては、磁気焼鈍前(冷間加工後)の硬さがビッカース硬さで200HV以上となるように冷間加工を行えばよく、より好ましくは220HV以上となるように冷間加工を行えばよい。
冷間加工方法としては、特に限定されず、冷間圧延や冷間引抜きなどの公知の冷間加工を適用することができる。また、冷間加工を行い難いときや冷間加工率を大きなものとしたいとき等は、冷間加工を複数回に分けて、その間に中間焼鈍を行ってもよい。中間焼鈍は加工歪が残留する温度以下とすることが好ましく、例えば、600〜950℃とすることができる。このような工程を経て、Mn系硫化物およびAl系窒化物を粒界に析出させたFe−Ni系合金からなる軟磁性素材を得ることができる。
次に、冷間加工を行ったFe−Ni系合金からなる軟磁性素材に対して、磁気焼鈍を行い、結晶粒を整粗粒化させることで低い保磁力を発現させて本発明のFe−Ni系合金からなる軟磁性材料を得ることができる。磁気焼鈍の条件は、公知のものとすればよく、例えば、真空又はアンモニア分解ガス等の非酸化性雰囲気下において、1100℃程度とすることができる。
次に本発明の実施例及び比較例を以下に詳しく説明する。真空誘導炉または大気アーク炉にて下記表1に示す化学成分の鋼塊3.6tを溶製し、これに熱間鍛造、熱間圧延を施し、板厚3.5mmのコイルを製造した。スケール除去後のコイルを窒素雰囲気下700〜750℃の温度範囲で10時間焼鈍した後、冷間圧延、中間焼鈍、冷間圧延を施し、板厚0.5mmの板(軟磁性素材)を作製した。その後、1100℃で2時間、アンモニア分解ガス雰囲気中で光輝焼鈍(磁気焼鈍)を施し、軟磁性材料を作製した。その際、各工程における板材の一部を試験片として各種特性評価を行った。
Figure 0006686796
<熱間加工性評価>
上記工程中の鋳造まま材より、平行部φ4.5×20L、つかみ部M6×10Lのグリーブル試験片を採取し、900〜1200℃での引張に対する絞り量評価を行った。熱履歴は1200℃まで100秒間で昇温し60秒保持した後、所定の温度(具体的には、1200℃.1150℃,1100℃,1050℃,1000℃,950℃,900℃)まで10℃/sで変化させ60s保持後に引張速度50.8mm/sで引張った。その後、破断面の絞り量を測定し、上記温度域での熱間加工性を評価した。その結果、900〜1200℃での絞り量が50%以上であれば合格で「A」判定、50%未満であれば不合格で「C」判定とした。
<Mn系硫化物評価>
光輝焼鈍前の軟磁性素材の組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、10mmの領域を観察領域として、倍率10,000倍で観察し、Mn系硫化物の10mm当たりの個数を測定した。そして得られた10mm当たりの個数を以下の基準に従い評価した。
○:Mn系硫化物の10mm当たりの個数が10個以上(合格)
×:Mn系硫化物の10mm当たりの個数が10個未満(不合格)
<Al系窒化物評価>
光輝焼鈍前の軟磁性素材の組織を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、粒界におけるAl系窒化物の析出の有無を調査し、以下の基準に従い評価した。
○:粒界への析出が少なくとも1箇所有(合格)
×:粒界への析出無(不合格)
<平均結晶粒径評価>
光輝焼鈍後の軟磁性材料の組織を光学顕微鏡にて観察し、倍率25倍×5視野での平均結晶粒径を求積法により求め、以下の基準に従い評価した。
A:平均結晶粒径が250μm以上(合格)
B:平均結晶粒径が200μm以上、250μm未満(合格)
C:平均結晶粒径が200μm未満(不合格)
−:熱間割れにつき評価できず
<混粒評価>
光輝焼鈍後の組織を光学顕微鏡にて観察し、JIS G 0551に則り、1視野内で最大頻度をもつ粒度番号の粒から3以上異なった粒度番号の粒が偏在し、これらの粒が20%以上の面積を占める状態にあるものを混粒と定義した。そして、混粒でない場合は合格で「A」判定、混粒である場合は不合格で「C」判定とした。尚、熱間割れにつき評価できない場合は「−」とした。
<保磁力評価>
光輝焼鈍を施した後の板材から、外径45mm、内径33mmのリングを作製し、直流磁気測定を実施し、以下の基準に従い評価した。
A:保磁力の値が3.5[A/m]未満(合格)
B:3.5[A/m]以上、4.0[A/m]未満(合格)
C:4.0[A/m]以上(不合格)
−:熱間割れにつき評価できず
これらの結果が表2に示してある。
Figure 0006686796
表2により、以下のことが分かる。
比較例1は、一般的なPBパーマロイ市中品に相当し、Mn、Alが本発明にて規定する範囲から逸脱している。また式(1)の左辺の値が上限値0.25を上回っている。したがって、インヒビターの効果が得られず、磁気焼鈍後の結晶粒が十分に粗大化せず平均結晶粒径の評価が「C」で、その結果、保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例2は、Mn量が本発明の下限値よりも低い。このため熱間加工性に劣り(熱間加工性の評価が「C」)、加工不可能であった。
比較例3は、Mn量が本発明の上限値よりも高い。また式(1)の左辺の値が上限値0.25を上回っている。このため1100℃の磁気焼鈍で固溶しないMnSが存在し、磁気焼鈍後の結晶粒が十分に粗大化しないため平均結晶粒径の評価が「C」で、保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例4は、S量が本発明の上限値よりも高い。このため熱間加工性に劣り(熱間加工性の評価が「C」)、加工不可能であった。
比較例5〜8は、各元素の成分範囲は満たすものの、式(1)の左辺の値が上限値0.25を上回っている。したがって、1100℃で固溶しないMnSが存在し、磁気焼鈍後の結晶粒が十分に粗大化しないため平均結晶粒径の評価が「C」で、保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例9は、Al量が本発明の下限値を下回っている。この例では、インヒビターとなるMn系硫化物及びAl系窒化物のうち、磁気焼鈍前のMn系硫化物の個数は、実施例6よりも多かったが、粒界にAl系窒化物が存在しない(Al系窒化物の評価が「×」)ため、磁気焼鈍後の平均結晶粒径が200μm以上とならず(平均結晶粒径の評価が「C」)、保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例10は、Ti量が本発明の上限値を上回っている。このためTi系の窒化物が生成され粒界をピン止めして結晶粒の粗大化が阻害される。このため磁気焼鈍後の組織が微細混粒(平均結晶粒径の評価が「C」で、混粒評価の結果が「C」)となり、保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例11は、Al量が本発明の上限値を上回っている。このため1100℃で固溶しないAl系の窒化物が存在し、磁気焼鈍後の結晶粒が十分に粗大化しないため保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例12は、S量が本発明の下限値を下回っている。したがって、インヒビターとなるMn系硫化物が磁気焼鈍前に十分に生成されず(Mn硫化物の評価が「×」)、磁気焼鈍後の結晶粒が十分に粗大化しないため保磁力の評価が「C」と劣っている。
比較例13は、N量が本発明の下限値を下回っている。このため比較例9と同様に、磁気焼鈍前のMn系硫化物の個数は実施例6よりも多かったが、粒界にAl系窒化物が存在しない(Al系窒化物の評価が「×」)ため、磁気焼鈍後の平均結晶粒径が200μm以上とならず(平均結晶粒径の評価が「C」)、保磁力の評価が「C」と劣っている。
一方、実施例1〜15は、各元素の成分範囲を満たし、かつ、Mn及びSは式(1)を満足するように添加されており、インヒビターとなるMn系硫化物及びAl系窒化物が適正に生成され、1100℃の磁気焼鈍で安定的に整粗粒を得ることができている。このため保磁力の評価は「A」又は「B」と良好で、低い保磁力が得られている。特に各元素が、より好ましい範囲を満たす実施例2,5,7,8,10,15においては、磁気焼鈍後の平均結晶粒が250μm以上(平均結晶粒径の評価が「A」)となり、3.5[A/m]未満の低い保磁力が得られている(保磁力の評価が「A」)。
以上、本発明のFe−Ni系合金について詳しく説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    Si:0.02%≦Si≦0.50%、
    Mn:0.05%≦Mn≦0.20%、
    S:0.0004%≦S≦0.0020%、
    Ni:45.0%≦Ni≦50.0%、
    Al:0.020%<Al≦0.050%、
    N:0.0004%≦N≦0.0040%、
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    該不可避的不純物として、
    C:0.020%以下、
    P:0.030%以下、
    Cu:0.10%以下、
    Cr:0.10%以下、
    Mo:0.10%以下、
    Ti:0.010%以下、及び、
    O:0.0030%以下、
    を充足し、
    更に下記式(1)を満足することを特徴とするFe−Ni系合金。
    [Mn]+100[S]≦0.25・・・式(1)
    (式(1)中[ ]は各元素の含有質量%を示す)
  2. 請求項1に記載の合金成分を含有し、組織中にはMn系硫化物が10mmの観察領域に10個以上含まれており、かつ、結晶粒界にAl系窒化物が析出していることを特徴とするFe−Ni系合金からなる軟磁性素材。
  3. 請求項1に記載の合金成分を含有し、平均結晶粒径が200μm以上であることを特徴とするFe−Ni系合金からなる軟磁性材料。
  4. 請求項2に記載の軟磁性素材に磁気焼鈍を施し、平均結晶粒径を200μm以上としたことを特徴とするFe−Ni系合金からなる軟磁性材料の製造方法
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