JP2010180459A - 2相ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】希少元素の添加を極力低減し、かつ容易に微細結晶粒組織を作製できる2相ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】オーステナイト相とフェライト相を含む2相ステンレス鋼の製造に際し、圧下率80%以上で冷間圧延を行い、その後、焼鈍を行う。フェライト相の体積率が30〜60%であって、該フェライト相のアスペクト比が0.40未満で、前記オーステナイト相の結晶粒径が5μm以下である2相ステンレス鋼が得られる。オーステナイト相の微細結晶がバラツキなく得られ、高強度、高靭性の優れた機械的特性が得られる。好適組成は、C:0.10%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:5.0〜15.0%、Cr:16.0〜28.0%、Mo:5%以下を含有し、さらに所望によりNを0.20質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものである。
【選択図】図6

Description

この発明は、例えば原子力装置用部材、クラッド鋼板及び配管用部材等の強度、延性、耐食性を必要とする素材に用いられる2相ステンレス鋼および、特に冷間圧延後の焼鈍処理においても、結晶粒の粗大化を防止できる2相ステンレス鋼の製造方法に関するものである。
2相ステンレス鋼は、オーステナイト相とフェライト相の混在した材料であるため、強度、延性バランスに優れた材料である。近年では、さらなる強度、延性の向上が求められており、特に結晶粒微細化プロセスを利用した発明が数多く報告されている。例えば、Ti、Zr、Nb、V、W、Cuといった析出物生成元素を積極的に材料に付与させることで、炭化物、窒化物といった微細析出物を利用し、強度、延性の向上が図られている(特許文献1参照)。また、従来技術には焼鈍温度を選択的に変化させることで、フェライト相の粗大化を抑制した熱処理方法も提案されている(特許文献2参照)。さらに、冷間圧延後の焼鈍処理工程における冷却速度を20℃/分以上に制御した熱処理プロセスを実施することで、微細粒鋼を得る製造方法も提案されている(特許文献3参照)。さらに、冷間圧延後の1次焼鈍処理をフェライト+オーステナイト2相組織あるいはフェライト単相領域となる温度に設定後、再度2次焼鈍を行うことで、微細化材を得る方法も提案されている。(特許文献4参照)。
特開2005−48203号公報 特報昭60−45251号公報 特報昭61−59382号公報 特開平3−191025号公報
ところで近年は、原材料費のコスト急上昇に伴い、製造コストが軒並み増加している。したがって、今後新材料を開発していく上で、レアメタル元素Ti、Zr、Nb、V、Wといった析出物生成元素の使用は極力抑えていかなければならない。また従来2相ステンレス鋼の冷間圧延後における焼鈍条件は、フェライト相における再結晶促進を意図して、1050℃〜1200℃に設定されている。この結果、オーステナイト相は、著しく粗大化してしまうのが現状である。そこでオーステナイト相の結晶粒微細化方法として、焼鈍処理工程での冷却速度の増加や2回焼鈍処理を適用する方法も提案されているが、熱処理設備の改良や熱処理工程の稼働時間増加に伴う製造コストの増大また大型部材への適用が困難である等の問題がある。
このような観点から、希少元素を極力低減し、かつ容易に微細結晶粒組織を作製できる2相ステンレス鋼の開発が望まれる。
本発明は、上記の実状に鑑みなされたものであり、フェライト相の体積率を30〜60%、その組織形態のアスペクト比を0.40未満に制御することで、冷間圧延後の焼鈍処理で形成される微細粒組織を容易に作製できる2相ステンレス鋼およびその製造方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の2相ステンレス鋼のうち、第1の本発明は、オーステナイト相とフェライト相を含み、該フェライト相の体積率が30〜60%であって、該フェライト相のアスペクト比が0.40未満で、前記オーステナイト相の結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする。
第2の本発明の2相ステンレス鋼は、前記第1の本発明において、質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:5.0〜15.0%、Cr:16.0〜28.0%、Mo:5%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする。
第3の本発明の2相ステンレス鋼は、前記第1または第2の本発明において、前記組成に、質量%で、さらにNを0.20%以下を含有することを特徴とする。
第4の本発明の2相ステンレス鋼の製造方法は、圧下率80%以上で冷間圧延を行い、その後、焼鈍を行うことを特徴とする。
第5の本発明の2相ステンレス鋼の製造方法は、前記第4の本発明において、前記冷間圧延後、前記焼鈍前のフェライト相のアスペクト比が0.40未満であることを特徴とする請求項4記載の2相ステンレス鋼の製造方法。
第6の本発明の2相ステンレス鋼の製造方法は、前記第4または第5の本発明において、前記焼鈍は、オーステナイト相の再結晶が生じ、かつ該相の結晶粒成長が生じない温度で行うことを特徴とする。
第7の本発明の2相ステンレス鋼の製造方法は、前記第4〜第6の本発明のいずれかにおいて、前記焼鈍の温度が900〜1050℃であることを特徴とする。
第8の本発明の2相ステンレス鋼の製造方法は、前記第6または第7の本発明において、前記焼鈍後のオーステナイト相の結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする。
第9の本発明の2相ステンレス鋼の製造方法は、前記第4〜第8の本発明のいずれかにおいて、前記焼鈍時の昇温速度が0.3℃/秒以上であることを特徴とする。
すなわち、本発明の2相ステンレス鋼によれば、フェライト相のピン止め効果によって結晶粒の粗大化が確実に防止された微細結晶粒を有しており、高強度、高靭性の優れた機械的特性を示す。
ここで、フェライト相のアスペクト比が0.4以上であると、フェライト相のピン止め効果が小さくなって、オーステナイト相の結晶粒粗大化抑制効果が十分に得られておらず、オーステナイト相の結晶粒径のバラツキが大きくなる。このため、本発明の2相ステンレス鋼では、フェライト相のアスペクト比が0.4未満を満たしていることが必要とされる。
また、オーステナイト相とフェライト相とを含む本発明の2相ステンレス鋼では、前記フェライト相の体積率を、30〜60%に規制する。フェライト体積率を適正に定めることで、延靭性、強度、耐食性をバランスよく確保することができる。
なお、本発明の2相ステンレス鋼では、好適な組成として、質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:5.0〜15.0%、Cr:18.0〜28.0%、Mo:5%以下を含有し、さらに所望によりNを0.20質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなるものを示すことができる。以下に、該好適組成における各成分の限定理由を説明する。なお、以下における含有量はいずれも質量%を意味している。
C:0.10%以下
CはCr、Moと結合し、MC、M及びM23タイプの炭化物を形成することで、粒界でのピン止め効果に寄与する。またオーステナイト相に対しては、固溶強化能を向上させる作用をもつ。これらの作用のために、Cを極力積極添加する。しかし炭素を過剰に含有させると、安定化処理時に粒界へ析出するCr炭化物が多くなり、粒界を脆弱化させ、延性を低下させる。したがってCの添加量は、0.10%以下に限定する。なお、上記作用を十分に得るためにはCの下限を0.01%とするのが望ましく、また、上記と同様の理由でCの上限を0.05%とするのが望ましい。
Si:2.0%以下
Siは耐酸化性、耐食性、強度を高める上で必須元素であると同時に、金属間化合物の析出による結晶粒微細化に寄与する。しかし過剰な添加は、製造性を劣化させるとともに、金属間化合物の粗大化による脆化をもたらす。したがって含有量は、2.0%以下の範囲に限定する。なお、上記作用を十分に得るためにはSiの下限を0.4%とするのが望ましく、また、上記と同様の理由でSiの上限を1.0%とするのが望ましい。
Mn:2.0%以下
Mnは脱酸剤として添加されるとともに、MnS等の析出物を生成させることで、結晶粒の微細化に寄与する。しかし、過剰な含有は、加工性、耐食性を劣化させる。したがって含有量は2.0%以下とする。なお、上記作用を十分に得るためにはMnの下限を0.5%とするのが望ましく、また、上記と同様の理由でMnの上限を1.5%とするのが望ましい。
Ni:5.0〜15.0%
Niは、オーステナイト相安定化元素であるが、過剰な添加は原料コストの増大を招く。したがって含有量は、5.0〜15.0%とする。なお、前記作用を十分に得るためにはNiの下限を7.0%とするのが望ましく、また、上記と同様の理由でNiの上限を13.0%とするのが望ましい。
Cr:16.0〜28.0%
Crは、耐食性向上のため、16.0%以上の添加が必要である。またフェライトの生成を促進させることで、オーステナイト相の粗大化抑制に寄与する。しかし過剰な添加は、熱間加工性も著しく低下する。したがって含有量は、16.0〜28.0%とする。望ましくは18.0〜26.0%である。
Mo:5%以下
Moはマトリックスへの固溶強化に寄与する元素であるとともに、MoC等の析出物を生成させることで、結晶粒の微細化に寄与するが、偏析性の強い元素であり大型鋼塊製造には不適な元素である。したがって、含有量は5.0%以下とする。望ましくは2.0〜4.0%の範囲である。
N:0.20%以下
Nは耐食性を向上させる元素であり、フェライト体積率をコントロールする上でも有用な元素であり、所望により添加される。しかし、多量に含有させるとブローホールの原因になるため、含有量は0.2%以下とする。望ましくは0.16%以下である。
Ti、Zr、Nb、V、W、Cuは、CやNと結合することで、炭化物、窒化物を生成することにより、結晶粒微細化に寄与するが、本発明合金では、これら生成物を利用せずとも、結晶粒微細化を成し遂げられる。したがって、Ti、Zr、V、W、Cuの添加は不要であるが、所望により1種以上を添加することも可能である。例えば、Ti、Zr、Vを各0.5%以下、W3.0%以下、Cu2.0%以下を含有することができる。
冷間圧延圧下率:80%以上
2相ステンレス鋼の製造に際し、冷間圧延での圧下率を80%以上にする。これにより焼鈍前のフェライト相のアスペクト比を小さくして、焼鈍時にフェライト相のピン止め効果によりオーステナイト相の粗大化を阻止してオーステナイト相を実質的に5μm以下にする結晶粒微細化が達成される。冷間圧延での圧下率が80%未満では、結晶粒の微細化が十分でなく、オーステナイト相を実質的に5μm以下にすることが難しくなる。同様の理由で冷間圧延圧下率は90%以上が望ましい。なお、実質的に5μm以下とは、希に5μmを越えるものを除いて結晶粒径が5μm以下であることを意味しており、さらには全ての結晶粒径において5μm以下であるのが望ましい。
アスペクト比:0.40未満
上記圧下率を80以上%にし、さらにフェライト体積率を30%以上に制御することでフェライト相のアスペクト比を0.40%未満にして、上記ピン止め効果を確実なものにすることができる。アスペクト比が0.40%未満であると、オーステナイト相の結晶粒粗大化の抑制効果が小さくなる。
焼鈍温度
冷間圧延後には、靭性の改善を目的に焼鈍熱処理を行う。焼鈍温度の設定によりオーステナイト相:フェライト相の体積比を調整することができる。焼鈍条件はオーステナイト相の再結晶が生じ、結晶粒粗大化が起きない条件であれば良いが、例えば900〜1050℃の温度範囲とすることができる。
焼鈍時昇温速度
焼鈍時には、昇温過程において0.3℃/秒まで焼鈍速度を遅くしても結晶粒成長を抑制することができる。これにより肉厚20mm〜150mmの大型部材においても微細で結晶粒径にバラツキの少ない材料を作製することができる。
以上、説明したように本発明の2相ステンレス鋼によれば、オーステナイト相とフェライト相を含み、該フェライト相の体積率が30〜60%であって、該フェライト相のアスペクト比が0.40未満で、前記オーステナイト相の結晶粒径が5μm以下であるので、オーステナイト相の微細結晶がバラツキなく得られており、高強度、高靭性の優れた機械的特性が得られる。
また、本発明の2相ステンレス鋼の製造方法によれば、圧下率80%以上で冷間圧延を行い、その後、焼鈍を行うことにより、レアメタルなどを用いることなく、また、過大な熱処理工程の負担を伴うことなく、フェライト相組織形態制御のみで、オーステナイト相の微細化が可能になる。したがって高強度、高靭性に優れた2相ステンレス鋼を安価かつ効率的に製造することが可能となる。
図1は、Fe−19Cr−12Niにおける90%冷間圧延後、1050℃、1300℃焼鈍材のEBSD観察結果を示す図である。 図2は、Fe−22Cr−12Niにおける90%冷間圧延後、1050℃、1300℃焼鈍材のEBSD組織観察結果を示す図である。 図3は、2相ステンレス鋼Fe−25Cr−7Niにおける90%冷間圧延後、1050℃焼鈍材のEBSD組織観察結果を示す図である。 図4は、Fe−22Cr−12Niにおける70%冷間圧延後、1050℃、1300℃焼鈍材のEBSD組織観察結果を示す図である。 図5は、図1〜4に示した材料のフェライト相体積率変化に伴うオーステナイト相結晶粒径を示す図である。 図6は、図1〜4に示した材料のフェライト相アスペクト比変化に伴うオーステナイト相結晶粒径を示す図である。 図7は、比較鋼SUS316L及びFe−22Cr−12Ni材における950℃焼鈍時の昇温速度増加に伴うオーステナイト相結晶粒径を示す図である。 図8は、比較鋼SUS316L及びFe−22Cr−12Ni材における昇温速度3.1℃/秒でのEBSD組織観察結果を示す図である。
以下に、本発明の一実施形態を説明する。
好適には、質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:5.0〜15.0%、Cr:18.0〜28.0%、Mo:5%以下を含有し、さらに所望によりN:0.20%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成に調整して鋼を溶製する。但し、本発明としては、2相ステンレス鋼の組織を得られるものであればよく、上記組成に限定をされるものではない。
また、上記鋼の溶製方法は、常法により行うことができ、その製造方法が特に限定されるものではない。
上記2相ステンレス鋼は、まず熱間鍛造を行う。例えば1150℃〜1250℃に加熱して鍛造を行うことができ、鍛造工程における条件について本発明に特に限定されない。
熱間鍛造後には、溶体化処理を施すことができる。熱処理条件としては、例えば1050〜1200℃の加熱温度、1〜3時間の保持時間が例示される。
上記溶体化処理後には、圧縮率80%以上の冷間圧延を行う。一パスまたは複数パスで圧延を行うことにより、所定形状とする。この際のパス数は本発明としては特に限定されない。冷間圧延後の2相ステンレス鋼では、好適には、フェライト相のアスペクト比が0.40未満になっている。
冷間圧延後には、焼鈍処理を行う。例えば、950℃〜1050℃の加熱温度、1分〜1時間の保持が例示される。該焼鈍においては、フェライト鋼のピン止め効果によってオーステナイト相の粗大化が阻止され、好適には、実質的に粒径5μm以下のオーステナイト相が得られる。
本発明の2相ステンレス鋼は、原子力装置用部材、クラッド鋼板及び配管用部材等の強度、延性、耐食性を必要とする素材に好適であり、特に冷間圧延後の焼鈍処理においても、結晶粒の粗大化を防止できる材料として好適である。
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
表1に示す組成(残部:不純物)を有する4つの合金を真空誘導溶解炉により溶製し、25kg鋼塊を得た。得られた鋼塊を、熱間鍛造(加熱温度1250℃)により厚さ30mm×120mm×Lの板材とした。各供試材について、1050℃×3hの溶体化処理を施し、20mm×20mm×Lの材料に切断した。これを圧下率70%及び90%で冷間圧延し、冷間圧延材とした。さらに、これらに950℃〜1300℃で焼鈍処理を実施し、各種フェライト相体積率を変化させた合金を作製した。
図1、2にFe−19Cr−12Ni及びFe−22Cr−12Ni材に対して圧下率90%で冷間圧延後、1050℃〜1300℃で1時間保持した各供試材のEBSD(Electron Back Scattering diffraction pattern)観察結果を示す。焼鈍温度の上昇とともに、フェライト相の体積率は7.7〜64.4%まで変化するとともに、その際のオーステナイト相の結晶粒径は、3.86〜16.4μmまで変化した。なおこれらの結晶粒径は、いずれも双晶の除去と方位差角15度以上の大傾角粒界のみを取り出す画像解析を行うことにより導出した。観察の結果、特に、焼鈍温度1050℃のFe−22Cr−12Niでは、フェライト相組織形態がアスペクト比0.38と棒状組織となっていた。
図3に、Fe−25Cr−7Ni2相ステンレス鋼の1050℃焼鈍後のEBSD観察結果を示す。該2相ステンレス鋼では、フェライト相体積率59.4%を有している。この際のフェライト相におけるアスペクト比は0.39と棒状組織形態を帯びていた。またその際のオーステナイト相の結晶粒径は、4.47μmとなっていた。
図4に、上記でオーステナイト相の微細化が確認されたFe−22Cr−12Ni材に対して圧下率を70%に変更して冷間圧延した後、1050℃〜1300℃で1時間保持した各供試材のEBSD観察結果を示す。焼鈍温度の上昇とともに、フェライト相の体積率は26.2〜52.6%まで変化するとともに、その際のオーステナイト相の結晶粒径は、6.22〜20.6μmまで変化した。特にオーステナイト相の結晶粒径6.22μmが得られた焼鈍温度1050℃の材料では、フェライト相組織形態がアスペクト比0.40となっていた。
図5に図1〜4に示した材料(この図面ではCW+ANと称する)のオーステナイト相結晶粒径に及ぼすフェライト相体積率の影響をまとめたものを示す。例えば、フェライト相のアスペクト比が0.40未満の材料ではオーステナイト相結晶粒径5μm以下となっている。
図6に図5に示した材料のオーステナイト相結晶粒径に及ぼすフェライト相のアスペクト比をまとめたものを示す。明らかに、フェライト相のアスペクト比増加に伴い、オーステナイト相結晶粒径は粗大化していることがわかる。特に、オーステナイト相結晶粒径5μm以下の材料においては、アスペクト比が0.40未満と他の材料に比べ、低い値を示していた。
図7に比較鋼SUS316L及びFe−22Cr−12Ni材における焼鈍温度950℃までの昇温速度変化に伴うオーステナイト相の結晶粒径変化を示し、図8にこれらを3.1℃/秒で昇温したときのEBSD組織観察結果を示す。各材料は、圧下率90%で冷間圧延をしたものである。
なお950℃まで昇温した後は、オーバーシュートを防止するため、1分間保持した。SUS316L鋼では昇温速度9.3℃/秒以上になると、結晶粒径が急激に増加した。一方でFe−22Cr−12Ni材では、0.3℃/秒の昇温速度においても、図2(b)で認められるような棒状組織が観察された。なおその際のオーステナイト相の結晶粒径は昇温速度によらず、1μm程度と非常に微細であることが明らかとなった。つまり棒状組織となったフェライト相はオーステナイト相の長時間組織安定性を維持する上で有効であることが明らかになった。

Claims (9)

  1. オーステナイト相とフェライト相を含み、該フェライト相の体積率が30〜60%であって、該フェライト相のアスペクト比が0.40未満で、前記オーステナイト相の結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする2相ステンレス鋼。
  2. 質量%で、C:0.10%以下、Si:2.0%以下、Mn:2.0%以下、Ni:5.0〜15.0%、Cr:16.0〜28.0%、Mo:5%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1記載の2相ステンレス鋼。
  3. 前記組成に、質量%で、さらにNを0.20%以下を含有することを特徴とする請求項2記載の2相ステンレス鋼。
  4. 圧下率80%以上で冷間圧延を行い、その後、焼鈍を行うことを特徴とする2相ステンレス鋼の製造方法。
  5. 前記冷間圧延後、前記焼鈍前のフェライト相のアスペクト比が0.40未満であることを特徴とする請求項4記載の2相ステンレス鋼の製造方法。
  6. 前記焼鈍は、オーステナイト相の再結晶が生じ、かつ該相の結晶粒成長が生じない温度で行うことを特徴とする請求項4または5に記載の2相ステンレス鋼の製造方法。
  7. 前記焼鈍の温度が900〜1050℃であることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の2相ステンレス鋼の製造方法。
  8. 前記焼鈍後のオーステナイト相の結晶粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の2相ステンレス鋼の製造方法。
  9. 前記焼鈍時の昇温速度が0.3℃/秒以上であることを特徴とする請求項4〜8のいずれかに記載の2相ステンレス鋼の製造方法。
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