JP6675846B2 - 高温強度に優れたFe−Cr−Ni系合金 - Google Patents

高温強度に優れたFe−Cr−Ni系合金 Download PDF

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Description

本発明は、高い高温強度が要求される反応塔の構造材として使用されるようなFe-Cr-Ni系合金およびその製法に関するものである。具体的には、合金製造時の成分と析出物または晶出物を制御し、製品の合金板断面の析出物または晶出物の個数分布および長径を最適化することにより、高いクリープ破断特性を実現した技術に関するものである。
近年、太陽光発電によるクリーンエネルギーが注目されている。特に、二酸化炭素を放出しない点で、地球温暖化を防げるために、その注目度は年々増す一方である。太陽光発電設備を製造する際に、発電素子の原料としては、粗シリコンを原料として精製されたポリシリコンが使用されることが多い。このポリシリコンを精製するための反応塔内部は、反応ガスの圧力が100MPa以上の高圧力であり、なおかつ、800〜900℃ほどの高温度となり、非常に苛酷は環境となる。反応塔に利用される素材は、高温腐食性に優れるのみでなく、高温強度に優れていなければならない。高温強度で、最も重要な特性としては、優れたクリープ破断強度が要求される。このような特性を満足するために、Fe-Cr-Ni系合金が着目されている。
クリープ破断強度に着目すると、次世代火力発電プラントの構造材として開発されたフェライト系耐熱鋼が開示されている(例えば、特許文献1参照)。Co、Wを添加するとともに、調質熱処理、または時効熱処理を行って、マルテンサイト単相組織に制御する技術である。しかしながら、この技術では、Co、Wといった高価な元素を添加する必要があるという問題がある。さらに、調質熱処理、または時効熱処理を実施する必要があり、十分な特性を得るまでに工数とコストを要するという課題があった。
また、クリープ破断強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼が開示されている(例えば、特許文献2参照)。1180〜1250℃で固溶化熱処理を施し、700℃の使用環境でMo、W、Nの複合化合物の析出による析出強化機構により、高温強度を確保する技術である。ただし、Mo、Wといった高価な元素を添加せねばならないという問題があった。
さらに、ニッケル基超合金が開示されている(例えば、特許文献3参照)。W、Ta、Coを添加して固溶強化を図った合金である。なおかつ、N、O濃度を低く制御して、アルミナなどの酸化物系非金属介在物やTiNなどの窒化物を析出させないことで、クリープ破断寿命を高めたことが示されている。やはり、W、Ta、Coといった高価な元素を添加せねばならないため、コスト高であると言える。さらに、N、O濃度を低く制御せねばならないため、工数が掛かることと、コスト高になるという課題を抱えていた。
特開2013−64199号公報 特開2012−1749号公報 特開2011−46972号公報
ここに示した技術では、Co、W、Mo、Taなどの高価であり、かつ希少な元素を比較的高濃度含有させて、固溶強化機構、あるいは、析出効果機構を狙った技術が主流であることがわかる。そのため、安価で、なおかつ、充分なクリープ特性を確保する合金の開発が望まれていた。
そのため、本発明者らは、Niを利用して高温強度に有利なオーステナイト相を安定化させ、Nbおよび任意成分のTiとともに、C、Nを添加することで、固溶強化機構により高温強度を確保した合金を開発した。しかしながら、この手法のみでは析出強化機構は期待できず、クリープ特性を確保するためには、さらに、Nb、Tiの窒化物あるいは炭化物のサイズや個数を制御する必要があることが分かった。
そこで、本発明の目的は、クリープ特性に大きく影響を及ぼすNb、Tiの窒化物あるいは炭化物のサイズや個数を適正化した合金を開発することである。
そこで、本発明者らは、上記に記述した問題点を解決するために、鋭意研究開発を行った。まず、実験室の高周波誘導炉において、10kgの成分組成を種々変化させた鋼塊を作製した。その後、熱間鍛造して、φ10mm×70mmの試験片を用意した。これを、816℃、110MPaの条件下でクリープ試験を実施し、破断時間で合金特性を評価した。このようにして、適正な合金成分範囲を決定するに至った。その上で、本願発明で最も重要となるNb、Tiの窒化物あるいは炭化物のサイズや個数を適正化した。そのためには、溶融合金を鋳造して鋼塊を製造する際に、冷却速度を緻密に制御する必要があることが判明した。冷却速度を10〜1000K/sの間に制御することで、デンドライト二次アーム間隔を1000μm以下に制御でき、これによって、Nb、Tiの窒化物あるいは炭化物のサイズと個数を最適化した。なお、図2の符号aで示す比較的大きい筋状の組織をデンドライト一次アームといい、これらデンドライト一次アーム間に形成された符号bで示す比較的小さい筋状の組織をデンドライト二次アームといい、隣接する二次アームの間隔をデンドライト二次アーム間隔という。
すなわち、本発明のFe-Cr-Ni系合金は、質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.1〜1%、Mn:0.05〜1.5%、Ni:30〜50%、Cr:19〜28%、Mo:0.1〜2.5%、Al:0.01〜0.2%、N:0.10〜0.32%、Nb:0.3〜0.6%、B:0.0005〜0.006%、任意成分としてTi:0.1%以下、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe-Cr-Ni系合金であり、該Fe-Cr-Ni系合金は、長径が0.5〜5μmのNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上をこれらの合計で任意の断面において20〜200個/mm 必ず含み、また、長径が5μm超のNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上を含む場合においてこれらの合計で任意の断面において10個/mm以下含むことを特徴とする。

本発明においては、以下各成分の質量%にて、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.1〜0.17であることを好ましい様態とする。
本発明においては、温度810〜820℃におけるクリープ破断時間x(Hr)と応力y(MPa)が、条件式y≧243.3x-0.168を満足することを好ましい様態とする。
さらに本願発明では、上記Fe-Cr-Ni系合金の製造方法も提供する。つまり、本発明のFe-Cr-Ni系合金の製造方法は、電気炉にてスクラップ、ニッケル、クロム、ニオブなどの原料を溶解して、その後AOD(Argon Oxygen Decarburization)にて、酸素とArの混合ガスを吹き込み脱炭し、その後、フェロシリコン合金および/またはアルミニウムを添加して、Cr還元し、その後石灰石、蛍石を添加して、脱酸、脱硫した後に、連続鋳造機にてスラブを製造するプロセスにより製造し、その後、熱間圧延して10〜80mmの厚みの合金板とすることを特徴とする。
本発明においては、上記の連続鋳造スラブのデンドライト二次アーム間隔が1000μm以下であることを好ましい様態とする。
クリープ破断時間と応力の関係を示すグラフである。 連続鋳造(CC)スラブの凝固組織を示す光学顕微鏡写真である(発明例2、表面から60mmにおける二次アーム間隔の平均値89μm、冷却速度84℃/分)。 普通造塊(IC)による凝固組織を示す光学顕微鏡写真である(比較例8、表面から60mmにおける二次アーム間隔の平均値212μm、冷却速度6℃/分)。 合金板のクリープ破断前の組織を示す電子顕微鏡写真である(発明例2、板厚50mmのうち深さ1/4の箇所)。 合金板のクリープ破断前の組織を示す電子顕微鏡写真である(比較例8、板厚50mmのうち深さ1/4の箇所)。 合金板のクリープ破断後の組織を示す電子顕微鏡写真である(発明例2)。 合金板のクリープ破断後の組織を示す電子顕微鏡写真である(比較例8)。 (a)は発明例、(b)は比較例の析出物を示す模式図である。
本発明は、Fe-Ni-Cr合金の高温特性を向上させるため、C:0.01〜0.1%、Si:0.1〜1%、Mn:0.05〜1.5%、Ni:30〜50%、Cr:19〜28%、Mo:0.1〜2.5%、Al:0.01〜0.2%、N:0.10〜0.32%、Nb:0.3〜0.6%、B:0.0005〜0.006%、任意成分としてTi:0.1%以下、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe-Cr-Ni系合金である。この範囲に規定した理由を説明する。
C:0.01〜0.1%
Cは合金の高温強度を確保するために必要な元素であり、0.01%未満では必要な強度を得ることができない。一方、0.1%を超えると、NbCやTiCの個数が増加して、本願発明の範囲を超えてしまう。よって、Cの含有量は0.01〜0.1%と定めた。より好ましくは、0.03〜0.08%である。
Si:0.1〜1%
Siは脱酸剤として添加される元素であり、0.1%未満では十分な脱酸効果を得ることができない。一方、1%を超えて高いと、オーステナイト相の安定性が低下し、必要な高温強度が得られないため、0.1〜1%と定めた。より好ましくは、0.3〜0.7%である。
Mn:0.05〜1.5%
Mnは脱酸剤として添加される元素であり、0.05%未満では十分な脱酸効果を得ることができない。一方、1.5%を超えて高いとオーステナイト相の安定性が低下し、必要な高温強度が得られないため、0.05〜1.5%と定めた。より好ましくは、0.35〜1.35%である。
Ni:30〜50%
Niはオーステナイト相を安定化させ高温強度を維持するための重要な元素である。30%未満ではその効果が得られず、50%を超えると熱間加工性が悪化するだけではなく、高価になってしまう。そのため、30〜50%と定めた。より好ましくは、33〜45%である。さらに好ましくは、35〜40%である。
Cr:19〜28%
Crは高温で緻密な酸化皮膜を形成し、母材の高温強度を維持させる効果がある。19%未満ではその効果が得られない。一方、28%を超えるとオーステナイト相の安定性が低下し、必要な高温強度が得られない。そのため、19〜28%と定めた。より好ましくは、21〜27%である。
Mo:0.1〜2.5%
Moは粒界強化の効果がある。0.1%未満ではその効果が得られない。一方、2.5%を超えると、σ相が脆化し、熱間加工性が低下する。そのため、0.1〜2.5%と定めた。より好ましくは、0.3〜1.5%である。
Al:0.01〜0.2%
Alは、圧延後の酸化皮膜をより緻密にするために、有用な元素である。この観点で、0.01%の添加は必要である。さらに、脱酸剤としても有効な元素である。0.01%未満では十分な効果が得られず、酸化物系介在物が増加し、十分なクリープ特性を得られない。一方、0.2%を超えると、Nと結合しAl窒化物を形成するため、高温強度が低下する。そのため、0.01〜0.2%と定めた。より好ましくは、0.05〜0.15%である。
Nb:0.3〜0.6%
Nbは本願発明で、重要な元素である。つまり、窒化物、炭化物を形成するため、有用である。0.3%未満では、その効果が得られない。しかしながら、0.6%を超えての添加は、窒化物または炭化物の個数が増加して、本願発明の範囲を超えてしまう。そのため、0.3〜0.6%と定めた。より好ましくは、0.35〜0.55%である。
Ti:0.1%以下
Tiは窒化物、炭化物を形成するため、有用であるので添加しても構わない。0.1%を超えての添加は、窒化物または炭化物の個数が増加して、本願発明の範囲を超えてしまう。そのため、0.1%以下の添加に抑えるべきである。
N:0.1〜0.32%
Nは本願発明で重要な元素である。すなわち、NbおよびTiとの窒化物を形成するために有効な元素である。0.1%未満では十分な効果が得られず、必要なクリープ特性を得られない。一方、0.32%を超えると、窒化物または炭化物の個数が増加して、本願発明の範囲を超えてしまう。そのため、0.1〜0.32%と定めた。より好ましくは、0.05〜0.28%である。
B:0.0005〜0.006%
Bは高温で粒界強度を高める効果があり、重要な元素である。0.0005%未満ではその効果が得られず、0.006%を超えると熱間加工性が低下する。そのため、0.0005〜0.006%と定めた。より好ましくは、0.001〜0.005%である。
次いで、NbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上の個数分布および量を規定した理由を説明する。まず、長径が0.5〜5μmのNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上を、任意の断面において20〜200個/mm2含み、5μm超は10個/mm2以下と規定した理由は以下の通りである。
長径が0.5〜5μmのNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上の個数が20個未満と少ないと、製品の焼鈍温度1150〜1250℃において、結晶粒が粗大化してしまい、充分なクリープ強度が確保できない。なお、0.5〜5μmのNbN、NbC、TiN、TiC炭窒化物は、結晶粒成長抑制に寄与することから、サイズは0.5〜5μmとした。逆に200個/mm2を超えて多く含まれると、ボイドの起点が増加していまい、この起点が連結してクリープ破断に至ってしまう。そのため、長径が0.5〜5μmのNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上を、任意の断面において20〜200個/mm2と規定した。5μm超の炭窒化物は、直接クリープ破断の起点となってしまう。そのため、10個/mm2以下と規定した。このことを図8に模式図で示した。(a)のように析出物2が小さい(0.5〜5μm)と、その周囲にできるクリープボイド3も小さくなり、スラブ組織1に対する応力集中が小さくなり、結果としてスラブが破断しにくくなる。一方、(b)のように析出物2が大きい(5μm超)と、クリープボイド3も大きくなり、スラブ組織のボイド間の部分において応力集中が(a)の場合より大きくなり、結果としてスラブが破断し易くなる。
Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.1〜0.17:
Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値は、炭窒化物の量を表している。0.1未満だと、製品の焼鈍温度1150〜1250℃において、結晶粒が粗大化してしまい、充分なクリープ強度が確保できない。一方、0.17を超えて高いと、ボイドの起点が増加していまい、この起点が連結してクリープ破断に至ってしまう。
上記の通り、合金成分および炭窒化物のサイズと量を制御することで、温度810〜820℃におけるクリープ破断時間x(Hr)と応力y(MPa)が、y≧243.3x-0.168を満足することができる。
本願発明では、上記合金の製造方法も提示する。電気炉にてスクラップ、ニッケル、クロム、ニオブなどの原料を溶解して、その後AOD(Argon Oxygen Decarburization)にて、酸素とArの混合ガスを吹き込み脱炭し、その後、フェロシリコン合金および/またはアルミニウムを添加して、Cr還元し、その後、石灰石、蛍石を添加して、脱酸、脱硫した後に、連続鋳造機にてスラブを製造するプロセスにより製造する。その後、熱間圧延して10〜80mmの厚みの合金板とする。
ここで、石灰石、蛍石を添加する理由は、CaO-SiO2-Al2O3-MgO-F系スラグを形成し、脱硫を有効に進めることができる。さらに、化学成分を、C:0.01〜0.1%、Si:0.1〜1%、Mn:0.05〜1.5%、Ni:30〜50%、Cr:19〜28%、Mo:0.1〜2.5%、Al:0.01〜0.2%、N:0.10〜0.32%、Nb:0.3〜0.6%、B:0.0005〜0.006%、任意成分としてTi:0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる成分に調整することができるからである。さらには、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値の範囲を0.1〜0.17に制御することも可能となる。なお、本願発明は10〜80mmの厚みを有する合金板にて有効である。
連続鋳造スラブのデンドライト二次アーム間隔は、1000μm以下に制御すべきである。その理由は、炭窒化物のサイズおよび個数分布は、鋳造時におけるデンドライト二次アーム間隔に依存するためである。すなわち、スラブ内部のデンドライト二次アーム間隔の最大値を1000μm以下に制御すれば、本願発明の範囲を満足するサイズと個数分布を確保できる。1000μmを超えると、長径が5μmより大きい炭窒化物が形成してしまい、充分な高温強度を得ることができない。デンドライト二次アーム間隔を1000μm以下に制御するには、冷却速度を10〜1000K/sとする。なお、冷却速度が高いと、デンドライト二次アーム間隔は狭くなり、冷却速度が低いと、デンドライト二次アーム間隔は広くなるため、同一のスラブ内であっても、例えば表面近傍部分と中心部とでデンドライト二次アーム間隔は異なる。そこで、本発明の実施例では、デンドライト二次アーム間隔として、スラブ中心部の値を採用している。
次に、本発明の効果を、実施例を示して説明する。
これらの合金は、電気炉にてスクラップ、ニッケル、クロム、ニオブなどの原料を溶解して、その後AOD(Argon Oxygen Decarburization)にて、酸素とArの混合ガスを吹き込み脱炭し、その後、フェロシリコン合金および/またはアルミニウムを添加して、Cr還元し、その後、石灰石、蛍石を添加して、脱酸、脱硫した後に、連続鋳造機にてスラブを製造するプロセスにより製造する(CC: Continuous casting)。このように連続鋳造して200mm厚×1600mm幅のスラブを製造した。一部、比較のために、400mm厚×800mm幅×2000mm高さの普通造塊(IC: Ingot casting)も行った。普通造塊の鋼塊は鍛造して、200mm厚×1600mm幅のスラブに仕上げた。
これらのスラブ表面を研削した後に、再加熱し1000〜1300℃の温度で熱間圧延し、厚さ10〜80mmの厚板材(プレート)とした後、焼鈍・矯正・酸洗を行った。表1および2に発明例および比較例を示すとともに、図1にクリープ破断時間と応力の関係を示す。表中、[ ]で示す数値は本発明の好ましい範囲外であることを示す。
Figure 0006675846
Figure 0006675846
なお、各項目の評価方法は、下記により行った。
1.化学成分:
溶鋼からサンプルを採取して、蛍光X線分析装置により分析した。
2.鋼塊中のデンドライト二次アーム間隔:
鋼塊を切断して、鏡面研磨し、10%蓚酸電解エッチングを施して、凝固組織を検出した。この試料を用いて、デンドライト二次アーム間隔を測定した。
3.炭窒化物の測定:
合金板を切断して、鏡面研磨し、SEM-EDSにより観察と組成分析を行った。倍率1000倍にて、100枚写真を撮影して個数をカウントした。さらに、EDSにより、化学組成を特定した。この倍率では、0.5μmの炭窒化物が目視できたので、本発明では0.5μmを下限としている。
4.クリープ破断特性の評価方法:
試験片は次の通り採取した。板厚10〜20mm、20〜80mm厚みの場合で採取位置が異なるので説明する。板厚10〜20mmの場合は断面中心部から、φ10mm×70mmの試験片を採取した。板厚20〜80mmの場合は、表面から深さ方向に1/4にあたる位置において、φ10mm×70mmの試験片を採取した。なお、採取したサンプルの方向は、圧延方向に平行な方向である。高温強度の測定方法は、AMS 5968Aに準じて行った。つまり、810〜820℃の条件で、応力を50〜130MPaの範囲から選択した応力負荷により、クリープラプチャー試験を行った。
表1および2の発明例は、いずれも本願発明の範囲を満足しているために、クリープラプチャー試験結果y≧243.3x-0.168(y:応力、x:破断時間)を満足した。ただし、No.6は、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.179となり、0.17を若干超えたために、図1の*でマークしたプロットとなった。すなわち、他の発明例よりも、y=243.3x-0.168の曲線に近い位置にプロットされる結果となった。一方の比較例は、本願発明のいずれかの範囲を外れたために、y≧243.3x-0.168(y:応力、x:破断時間)を満足できなかった。
No.1およびNo.2と同様の成分を有するNo.8、およびNo.3およびNo.4と同様の成分を有するNo.9は、No.1〜4の連続鋳造に対して、普通造塊でスラブを作製した。そのため、デンドライト二次アーム間隔が1000μmを超えて広がり、0.5〜5μmの炭窒化物個数が20個/mm2よりも少なく、逆に5μm超の炭窒化物が10個/mm2を超えて多く形成した。
No.10は、Nbが0.72%と高く外れ、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.197と高く外れた。その結果、0.5〜5μmの炭窒化物個数が200個/mm2よりも多く、かつ、5μm超の炭窒化物が10個/mm2を超えて多く形成した。
No.11は、Cが0.156%と高く外れたとともに、Nも0.52%と高く外れた。そのため、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.277と高く外れた。その結果、0.5〜5μmの炭窒化物個数が200個/mm2よりも多く、かつ、5μm超の炭窒化物が10個/mm2を超えて多く形成した。
No.12は、Nbが0.21%と低く外れたために、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.091と低く外れた。そのため、0.5〜5μmの炭窒化物個数が20個/mm2よりも少なくなった。
No.13は、Nが0.07%と低く外れた。そのため、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.058と低く外れた。そのため、0.5〜5μmの炭窒化物個数が20個/mm2よりも少なくなった。
No.14は、Tiを高く添加しすぎたため、Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.230と高く外れた。その結果、0.5〜5以下の炭窒化物個数が200個/mm2よりも多く、かつ、5μm超の炭窒化物が10個/mm2を超えて多く形成した。
図2および図3にNo.2およびNo.8の組織の表面から60mmの光学顕微鏡写真を示す。本発明例では、デンドライト一次アーム間隔、デンドライト二次アーム間隔が小さくなっていることが分かる。なお、実施例ではスラブ中心部のデンドライト二次アーム間隔を測定しているので、図2および3の値とは異なっている。
また、図4および図5にNo.2およびNo.8のクリープ破断前、図6および図7にそれぞれのクリープ破断後のSEM写真を示す。クリープ破断前では、本発明例では合金板の断面組織の粗大化が抑制されており、また、析出物も微細化していることが分かる。クリープ破断後では、灰色の部分がスラブ組織、白色が析出物、黒色がボイドであるが、すでに図8の模式図を用いて説明したとおり、比較例ではボイド部分が破断起点となり、大きく破断しているのに対し、本発明例では、ボイド部分から破断が広がっていることがほとんど確認できない。
本発明は、合金製造時の成分と析出物または晶出物を制御し、製品の合金板断面の析出物または晶出物の個数分布および長径を最適化することにより、製品化後の合金板において調質熱処理や時効熱処理などの余工程を必要とせず、高いクリープ破断特性を実現可能とした。
a:デンドライト1次アーム、b:デンドライト2次アーム、1:スラブ母材組織、2:析出物、3:ボイド

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.1%、Si:0.1〜1%、Mn:0.05〜1.5%、Ni:30〜50%、Cr:19〜28%、Mo:0.1〜2.5%、Al:0.01〜0.2%、N:0.10〜0.32%、Nb:0.3〜0.6%、B:0.0005〜0.006%、任意成分としてTi:0.1%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Cr−Ni系合金であり、該Fe−Cr−Ni系合金は、長径が0.5〜5μmのNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上をこれらの合計で任意の断面において20〜200個/mm 必ず含み、また、長径が5μm超のNbN、NbC、TiN、TiCの1種または2種以上を含む場合においてこれらの合計で任意の断面において10個/mm以下含むことを特徴とするFe−Cr−Ni系合金。
  2. 以下各成分の質量%で
    Nb×N+Nb×C+Ti×N+Ti×Cの値が0.1〜0.17であることを特徴とする請求項1に記載のFe−Cr−Ni系合金。
  3. 温度810〜820℃におけるクリープ破断時間x(Hr)と応力y(MPa)が、y≧243.3x−0.168を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のFe−Cr−Ni系合金。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のFe−Cr−Ni系合金を製造するにあたり、電気炉にてスクラップ、ニッケル、クロム、ニオブなどの原料を溶解して、その後AOD(Argon Oxygen Decarburization)にて、酸素とArの混合ガスを吹き込み脱炭し、その後、フェロシリコン合金および/またはアルミニウムを添加して、Cr還元し、その後石灰石、蛍石を添加して、脱酸、脱硫した後に、連続鋳造機にてスラブを製造するプロセスにより製造し、その後、熱間圧延して10〜80mmの厚みの合金板とすることを特徴とするFe−Cr−Ni系合金の製造方法。
  5. 前記連続鋳造スラブのデンドライト二次アーム間隔が1000μm以下であることを特徴とする請求項4に記載のFe−Cr−Ni系合金の製造方法。
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