JP2015183290A - Ni基合金およびその製造方法 - Google Patents
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8000≦X2×Y+Z (但し10≦X≦50、1≦Y≦100、40≦Z≦85)
(1)最終仕上げである#2000のエメリー研磨紙は、試験片毎に新しい研磨紙に交換して研磨すること。
(2)湿式研磨工程の後、キシレンおよびエタノールにて脱脂を行うが、その後の乾燥は冷風で行うこと。
このように試行錯誤を繰り返し行った末に、図1に示す不動態皮膜の組成プロファイルを得るに至った。なお、図1〜3の横軸に示すスパッタ時間は、金属の厚さと関連しており、本実施形態においては、スパッタ時間1分がほぼ厚さ3.5nmに相当する。
不動態皮膜部におけるCr濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.2以上:
必要とされるCCT≧40℃以上の耐食性を有するためには、不動態皮膜中にNiに対するCrの濃度比は、0.2以上が必要である。そのため、不動態皮膜部におけるCr濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比を0.2以上と規定した。好ましくは0.22以上、より好ましくは、0.25以上である。
不動態皮膜中のMoは、特に皮膜の最深部に濃化して、耐食性を向上させる性質を持つ。上記のとおり、不動態皮膜部におけるCr濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.2以上を満たし、不動態皮膜部と母材側境界部におけるMo濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.1以上を満たすことにより、さらに耐食性を向上させることが出来る。具体的には、後述する酸素濃度、Al濃度、硫黄濃度が本発明の範囲を外れても、必要とされるCCT≧40℃以上を満たすことができる。そのため、不動態皮膜の母材側境界部におけるMo濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比を0.1以上と定めた。好ましくは、0.13以上、より好ましくは0.15以上である。
不動態皮膜最表層部における酸素濃度が55(at.%)以上となると、不動態皮膜部と母材側境界部におけるMo濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.1以上を満たし、より強固な不動態皮膜を構成することが出来る。そのため、不動態皮膜最表層部における酸素濃度は55(at.%)以上と規定した。より好ましくは、57(at.%)以上、さらに好ましくは、60(at.%)以上である。
8000≦X2×Y+Z
(X:硝酸濃度(%)、Y:浸漬時間(分)、Z:温度(℃)、ただし、硝酸濃度10〜50%、時間1〜100分、温度40〜85℃の範囲とする。)
C:0.002〜0.05%
Cは合金の強度を保つために有用な元素であるため、0.002%は必要である。しかしながら、熱処理過程や溶接時における熱影響部等において、CrやMoと結合し炭化物を析出する。Cr、Moは耐食性を維持するために有効な元素であり、析出物の周囲では欠乏層が生じてしまい、その部位の耐食性を低下させるとともに、析出物上には不動態皮膜が形成しにくくなるため、耐食性を損なう。そのため、Cは0.002〜0.05%以下と定めた。好ましくは、0.003〜0.03%以下、さらに好ましくは、0.004〜0.02%以下である。
Sは構造材の溶接時に湯流れ性を向上させるために有用な元素であるため、最低0.0001%は必要である。硫化物を形成する元素でもある。特にMnと結合してMnSを形成する。硫化物上には不動態皮膜が形成しにくくなるため、耐食性を損なう。そのため、0.0001〜0.005%とした。好ましくは、0.0001〜0.002%、より好ましくは、0.0002〜0.001%である。なお、S濃度を0.0001〜0.005%に制御するためには、精錬工程でAlを本発明で定める範囲0.01〜0.5%に制御して、脱酸することによって、酸素濃度を0.0001〜0.005%に制御することで達成できる。つまり、下記の反応を、より右辺に進行することで脱硫する。
2Al+3S+3(CaO)=3(CaS)+(Al2O3) …(1)
下線は溶鋼中成分、括弧はスラグ中の成分を示す。
Crは不動態皮膜を構成して耐食性を維持するために重要な元素である。母材のCr濃度は10%以上の含有、なおかつ、後述する本発明の表面処理を施すことで、不動態皮膜部におけるCr濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.2以上を有することが可能である。したがって、10%以上含有する必要がある。しかし、過剰な含有は炭化物を析出し易くする。25%を超えるとこの傾向が顕著となり、耐食性を低下させるため10〜25%と規定した。好ましくは、14〜23%であり、より好ましくは、16〜23%である。
Moは不動態皮膜を構成して耐食性を維持するために重要な元素である。母材のMo濃度は5%以上の含有、なおかつ、後述する本発明の表面処理を施すことで、不動態皮膜の最深部におけるMo濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.1以上を有することが可能である。したがって、5%以上含有する必要がある。しかし、過剰な含有は炭化物を析出し易くなることに加え、強度が高くなり加工性が悪化するため5〜20%と規定した。好ましくは、7〜15%であり、より好ましくは、9〜12%である。
Oは非金属介在物を形成する元素である。その非金属介在物が合金表面に存在すると、不動態皮膜が安定に形成されずに腐食の起点と成り得るために0.005%以下と定めた。しかし、低下させすぎると、介在物組成がMgO・Al2O3となり、連続鋳造機の浸漬ノズル内に堆積して、ノズルが閉塞してしまう。そのため、0.0001〜0.005%と定めた。好ましくは、0.0002〜0.002%以下、より好ましくは0.0002〜0.001%以下である。なお、酸素濃度を0.0001〜0.005%以下に制御するためには、精錬工程でAlを本発明で定める範囲0.01〜0.5%に制御すればよい。すなわち、下記の反応を、より右に進行することで酸素濃度を低下させる。
2Al+3O=(Al2O3) …(2)
Alは脱酸および脱硫のために重要な元素である。脱酸、脱硫を行い、本発明の範囲であるS:0.005%以下、O:0.005%以下を満足するためには0.01%は必要であるが、0.5%を超えての添加は、非金属介在物をMgO・Al2O3に変化させてしまい、浸漬ノズルの閉塞を引き起こす危険性がある。そのため、0.01〜0.5%と規定した。好ましくは、0.02〜0.3、より好ましくは0.03〜0.25%である。なお、精錬工程時に、スラグ中のSiO2濃度を10%以下に抑えることで、Alを本発明で定める範囲0.01〜0.5%に制御し易くなる。この理由は、スラグ中のSiO2濃度が10%を超えて高いと、下記の反応が右側に進行して溶鋼中のAlを消費してしまうためである。
4Al+3(SiO2)=2(Al2O3)+3Si …(3)
Feは製造コストを低減させるために添加されることがある。0.5%未満の添加ではコストが著しく上昇する。また、不動態皮膜中のFe濃度が高くなると耐食性を低下させるために、0.5〜10%と定めた。
Si:0.01〜1%
Siは脱酸のために有効な元素であり、0.01〜1%の範囲で添加しても構わない。
Mnは脱酸のために有効な元素であり、0.01〜1%の範囲で添加しても構わない。
Tiは炭素と結合しTiCを形成するため、Crと炭素の結合を防ぐ。そのため、耐食性を高める性質を持つため、0.01〜1%の範囲で添加しても構わない。
Nbは強度を高める元素である。さらに、炭素と結合しNbCを形成するため、Crと炭素の結合を防ぐため、耐食性を高める役割もある。そのため、0.5〜5%の範囲で添加しても構わない。
Wは、Moと同様に不動態皮膜を構成して耐食性を維持するために重要な元素である。そのため、0.5〜10%の範囲で添加しても構わない。
原料を電気炉で溶解し、AOD(Argon Oxygen Decarburization)および/またはVOD(Vacuum Oxygen Decarburization)にて脱炭を行い、C濃度を0.05%以下とする。AODおよびVODは、送酸速度が高く発生するCOガス分圧を低下できるため、Cr含有合金の精錬に適している。その後、スラグ中に移行したCr酸化物を還元するCr還元を行う。還元剤は、特に限定しないが、FeSi合金またはAlが好適である。同時に、石灰石および蛍石を添加するとともに、脱酸に必要なAlを添加する。
耐食性の評価は、基本的にASTM G48 Method Dにしたがい行った。試験片は、上記の冷延板から、厚み2mm、幅25mm、長さ50mmのサイズを切り出して、平面中央に直径7mmの孔を空けた。その後、エメリー紙#120番まで湿式研磨を行い、アルコールによる脱脂後、冷風によってアルコールを除去し、表3に示すように各発明例・比較例毎に定めた硝酸溶液への浸漬による表面処理A〜Gを施した。なお、処理A〜Gの実施条件は下記表2に示した。
耐食性試験と同様に、エメリー紙#2000番まで湿式研磨を行い、アルコールによる脱脂後、冷風によってアルコールを除去した。表3に示すように上記の表面処理A〜Gを施した後、AESを用いて不動態皮膜厚みと組成を測定した。AESは、日本電子製 JAMP−9500F、測定条件は、加速電圧10kV、試料電流量0.01μAを用いて深さ方向に1kVでスパッタしながら、測定した各元素のプロファイルからその原子比を求めた。求められた各元素の比から、Cr/Ni比、Mo/Ni比、不動態皮膜最表層部の酸素濃度を求め、表3に示した。その他の測定方法は、以下の通りとした。
蛍光X線分析により行った。ただし、CとSは燃焼重量法、Oは不活性ガスインパルス融解赤外線吸収法によった。
(4)スラグ成分
蛍光X線分析により行った。
Claims (7)
- 合金の表面に形成される不動態皮膜部におけるCr濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.2以上であり、ASTM G48 Method D試験において臨界隙間腐食発生温度(CCT)が40℃以上であることを特徴とするNi基合金。
- 不動態皮膜の母材側境界部におけるMo濃度(at.%)/Ni濃度(at.%)の比が0.1以上、かつ、不動態皮膜最表層部における酸素濃度が55(at.%)以上であることを特徴とする請求項1に記載のNi基合金。
- 前記Ni基合金は、C:0.002〜0.05%、S:0.0001〜0.005%、Cr:10〜25%、Mo:5〜20%、O:0.0001〜0.005%、Al:0.01〜0.5%、Fe:0.5〜10%、残部Niおよび不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1または2に記載のNi基合金。
- Si:0.01〜1%、Mn:0.01〜1%、Ti:0.01〜1%、Nb:0.5〜5%、W:0.5〜10%のいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のNi基合金。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のNi基合金を製造する方法であって、原料を電気炉で溶解し、AODおよび/またはVODにて脱炭、Cr還元、脱硫を行い、溶融合金を、C:0.002〜0.05%、S:0.0001〜0.005%、O:0.0001〜0.005%、Al:0.01〜0.5%に調整することを特徴とするNi基合金の製造方法。
- 前記Ni基合金を所望の形状に成形した後、硝酸溶液に浸漬して不動態化処理を行うことを特徴とする請求項5に記載のNi基合金の製造方法。
- 前記不動態化処理は、X:硝酸濃度(%)、Y:浸漬時間(分)、Z:温度(℃)とした場合、下記式を満足するように行うことを特徴とする請求項6に記載のNi基合金の製造方法。
8000≦X2×Y+Z
(10≦X≦50、1≦Y≦100、40≦Z≦85)
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