JP2019039021A - Ni−Cr−Mo−Nb合金およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
固溶強化によって合金強度を高める効果を有するので、常温および高温での強度を確保するため必要な元素である。一方、Cは、耐食性を改善する効果の大きいCrと炭化物を形成し、その近傍にCr欠乏層を生じさせることによって、耐食性の低下等を引き起こす元素でもあるので、添加量の上限は0.1%とする必要がある。このように、0.1%以下と規定した。好ましくは0.08%以下である。
Siは本発明で重要な元素である。脱酸に寄与して、酸素濃度を0.0001〜0.005%に調整する役割を持つ。また、合金中のMg濃度を0.001〜0.01%、Ca濃度を0.005%以下に調節する役割も持つ。これは、下記の反応による。
2(MgO)+Si=2Mg+(SiO2) …(1)
2(CaO)+Si=2Ca+(SiO2) …(2)
ここで、括弧はスラグ中の成分であり、下線は溶融合金中の成分であることを示している。Si濃度が0.02%未満だと酸素濃度が0.005%を超えて高くなる。またSiが1%を超えて高いと、酸素濃度が0.0001%未満と低くなり、上記の(1)、(2)の反応がより進行してしまう。それによって、Mg濃度が0.01%よりも高くなってしまうと同時に、Ca濃度も0.005%を超えて高くなる。したがって、Siは0.02〜1%と定めた。
MnはNi−Cr−Mo−Nb合金中の不純物元素であるSを固着して無害化するために、必要な元素である。そのため、0.02%の添加は必要である。しかし、多量の添加は、耐酸化性を損なうので1%を上限とした。好ましくは、0.05〜0.6%である。
Pは、粒界に偏析し、熱間加工時に割れを発生させる有害元素であるため、極力低減するのが好ましく、0.03%以下に制限する。
Sは、粒界に偏析して低融点化合物を形成し、製造時に熱間割れ等を引き起こす有害元素であるため、極力低減するのが好ましく0.001%以下に制限する。好ましくは0.0008%以下である。
Crは、耐食性を確保するのに必要な不動態皮膜を合金板表面に形成させる元素であり、耐酸性、耐孔食性、耐隙間腐食性ならびに耐応力腐食割れ性を改善するための母材の構成成分として不可欠の元素でもある。斯かる効果を得るためには、20%以上の添加が必要である。しかし、23%を超える過剰の添加は脆化を招く。よって、Crの含有量は20〜23%の範囲とする。
Moは、耐酸性や、耐孔食性、耐隙間腐食性、耐応力割れ性といった耐食性を改善するために不可欠な元素であり、8%以上の添加を必要とする。しかし、10%を超える添加は母材を脆化させる。よって、Moの含有量は8〜10%の範囲とする。
Nbは固溶して強度を高めるため、重要な元素である。さらに、Cと結合して鋭敏化を防止するために、耐食性を向上する元素である。そのため、2.5%の添加は必要である。逆に高すぎると、低融点相を形成してしまい熱間加工性を悪化させるので、5%の添加に留める必要がある。さらに、5%を超えて高いとMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物が生成する。よって、Nbの含有量は2.5〜5%の範囲とする。
Alは脱酸のために重要な元素であり、酸素濃度を0.0001〜0.005%に調整する役割を持つと共に、酸化物系介在物を無害なMgOに制御する役割もある。また、合金中のMg濃度を0.001〜0.01%、Ca濃度を0.005%以下に調節する役割も持つ。これは、下記の反応による。
3(MgO)+2Al=3Mg+(Al2O3) …(3)
3(CaO)+2Al=3Ca+(Al2O3) …(4)
Al濃度が0.05%未満だと脱酸が進行せず、酸素濃度が0.005%を超えて高くなってしまう。さらに、脱酸が進行しないために、S濃度も0.001%を超えて高くなってしまう。逆に、0.4%を超えて高いと、上記の(3)、(4)の反応により、Mg濃度が0.01%を超えて高くなり、Ca濃度も0.005%を超えて高くなってしまう。したがって、0.05〜0.4%と規定する。
TiはNb同様、Cと固着して鋭敏化を防止するため、耐食性を維持する重要な元素である。そのため、0.15%の添加は必要であるが、高すぎるとクラスター化する傾向にある(Ti,Nb)Nが形成しやすくなる。そのため、0.4%以下に抑える必要がある。よって、Tiの含有量は0.15〜0.4%と規定する。
Feは固溶して強度を高める効果があるため、1%の添加は必要である。高すぎると耐食性を低下させるため、5%以下に抑える必要がある。よって、1〜5%の範囲と定める。
Nはクラスター化する傾向にある(Ti,Nb)Nを形成しやすくするために、有害な元素である。そのため、0.02%以下と規定する。
Mgは非金属介在物を無害なMgO単体に制御するために必要な元素である。そのため、0.001%以上は必要である。一方、高すぎるとクラスター化する傾向にある(Ti,Nb)Nが形成する核として作用するようになる。つまり、MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物を形成し易くするので、0.01%以下に抑える。よって、Mg濃度は0.001〜0.01%と規定する。この添加については、上記の(1)〜(4)式の反応により調節するか、あるいはNiMgなどの副原料を添加しても良い。
Caはクラスター化する傾向にあるCaO介在物を形成するために、0.005%以下に抑制しなければならない。この調節は上記の(1)〜(4)式の反応により実現する。
酸素濃度が0.005%を超えて高いと、脱硫が弱くなってS濃度が0.001%を超えて高くなり、熱間加工性が悪化してしまう。一方で0.0001%未満と低すぎると、上記の(1)〜(4)式の反応が進行し過ぎてしまい、Mgが0.01%を超えて高くなるとともに、Caも0.005%を超えてしまう。よって、0.0001〜0.005%の範囲とする。この制御は、上記のSiとAlの含有量により実現する。
残部はNiであり、凡そ58%以上である。
Ni−Cr−Mo−Nb合金の製造にあたり、まず電気炉で原料を溶解する。原料は当該合金のスクラップ、Ni、Cr、Moなどである。次いで、AODおよび/またはVODにおいて、酸素を吹精して脱炭精錬する。酸素吹精の際に、COガスが発生して脱炭が進むが、その時に溶融合金中の窒素も低下し、0.02%以下に調整することが出来る。
CaOは脱硫に必要であるために不可欠である。生石灰を投入して調節する。50%未満では脱硫が進まなく、合金中のSが0.001%を超えて高くなってしまう。一方、70%を超えると、CaO介在物を形成しクラスターを形成してしまう。そのため、50〜70%と規定する。
SiO2はスラグが溶融状態になるために必要な成分であるが、溶融合金を酸化する成分として作用し、脱酸や脱硫を阻害する他に、溶鋼中Si濃度が1%を超えて上昇してしまう。このように有害な側面もあるため、10%以下に規定する。
MgOはMgO介在物を形成するために有効な成分であるが、過剰だとMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物の形成を促進してしまう。そのため、7〜15%とした。
Al2O3は溶融合金中のAl濃度を0.05〜0.4%の範囲に保つために必要である。しかし、過剰に添加するとスラグの粘度が高くなりすぎて、除滓できなくなってしまう。そのため、10〜20%と定めた。
Fはスラグ精錬を行う際に、スラグを溶融状態に保つ役割があるため、少なくとも4%の添加は必要である。4%未満と低いと、スラグが溶けない状態となってしまう。逆に、15%を超えて高いと粘度が低下しすぎて、流動性が付きすぎてしまい、煉瓦の溶損が顕著となる。よって、4〜15%と規定した。
(1)合金の化学成分およびスラグ組成:蛍光X線分析装置を用いて定量分析を行い、合金の酸素濃度、窒素濃度は不活性ガスインパルス融解赤外線吸収法で定量分析を行った。なお、合金に関して、残部はNiである。また、スラグについて、合計が100%以下であるのは、残部にFe2O3、Sなどの不純物を含むためである。
(2)介在物組成:スラブから採取したサンプルを用いて分析した。SEM−EDSを用いて、サイズ5μm以上の非金属介在物を20個の介在物をランダムに測定した。検出された介在物種は、MgO、CaO、MgO・Al2O3(スピネル)、およびMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物であった。MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物は二相に分かれている箇所を両方分析して判断した。
(3)MgOの個数割合:上記の測定結果から、個数比率を求めた。
(4)品質評価:長さ100mの冷延板表面を目視で観察し、クラスター起因の表面欠陥の個数をカウントした。評価は以下の通り行った。ここでの欠陥は、圧延方向に長さ10mm以上の欠陥である。
○:欠陥なし
△:欠陥4個以下
×:欠陥5個以上
発明例のNo.1〜5は、本願発明の範囲を全て満たしたので、欠陥がなく良好な表面品質○評価であった。
No.6はN濃度が範囲内であるが0.016%と高めであったために、MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物が多く、MgO介在物の割合が45%と、50%より低く△評価であった。
No.7はMg濃度が範囲内であるが0.0078%と高く、MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物が多く、MgO介在物の割合が40%と、50%より低く△評価であった。
No.8はN濃度が0.025%と高く、MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物とMgO・Al2O3となってしまった。
No.9はNbとTiの含有量が範囲を外れて高いため、全てがMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物となってしまった。
No.10は、Si濃度、Al濃度が低く、かつ、スラグ組成も不適切で、脱酸がうまく進行しなかった。そのため、酸素濃度が0.0061%と高く、脱硫も進行しなくて0.0015%と高くなってしまった。また、Mg濃度も範囲より低くなってしまった。続く熱間圧延では割れも見られ、歩留も低かった。介在物組成もMgO・Al2O3となってしまった。
No.11はスラグ中のMgO濃度が高く、Al2O3濃度が低かった。さらに、Al濃度が高く、Mg濃度が高くなってしまった。また、N濃度も高く外れてしまった。その結果、全てがMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物となった。
No.12はAlが高かったために、MgとCa濃度が高く外れた。さらに、Ti濃度も高く外れた。MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物と共にCaO介在物も形成した。また、スラグのFが低かったため、流動性が悪くて除滓がうまく出来なかった。
No.13はSi濃度が高くなり、かつスラグ中のCaO濃度が高かったために、Ca濃度が高めに外れた。その結果、全てがCaO介在物となった。
No.14はAl濃度が高かったため、Mg、Ca濃度ともに高くなった。さらにN濃度も高かった。MgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物とCaOが主体となってしまった。
このように、比較例では全て許容できない数の欠陥を発生させてしまい、×評価となってしまった。
2:(Ti,Nb)N
3:MgO
Claims (4)
- 以下質量%にて、C:0.1%以下、Si:0.02〜1%、Mn:0.02〜1%、P≦0.03%、S≦0.001%、Cr:20〜23%、Mo:8〜10%、Al:0.05〜0.4%、Ti:0.15〜0.4%、Nb:2.5〜5%、Fe:1〜5%、N≦0.02%、さらに、Mg:0.001〜0.01%、Ca≦0.005%、O:0.0001〜0.005%、残部はNiおよび不可避的不純物からなり、非金属介在物としてMgO単体およびMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物を含むことを特徴とするNi−Cr−Mo−Nb合金。
- 前記非金属介在物であるMgO単体およびMgOと(Ti,Nb)Nの複合酸窒化物のうち、MgO単体の個数割合が50%以上であることを特徴とする請求項1に記載のNi−Cr−Mo−Nb合金。
- 請求項1あるいは2に記載のいずれかのNi−Cr−Mo−Nb合金の製造にあたり、電気炉で原料を溶解し、次いで、AODおよび/またはVODにおいて脱炭した後に、SiおよびAlを投入し、石灰、蛍石を投入して、CaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグを形成することによって、Cr還元、脱酸、脱硫し、その後、Nb、Tiを添加して、連続鋳造機にてスラブを製造することを特徴とするNi−Cr−Mo−Nb合金の製造方法。
- 前記CaO−SiO2−MgO−Al2O3−F系スラグの組成は、CaO:50〜70%、SiO2:10%以下、MgO:7〜15%、Al2O3:10〜20%、F:4〜15%であることを特徴とする請求項3に記載のNi−Cr−Mo−Nb合金の製造方法。
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