JP4656007B2 - 溶鉄のNdおよびCa添加による処理方法 - Google Patents

溶鉄のNdおよびCa添加による処理方法 Download PDF

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本発明は、鋼中に溶解するP濃度または鋼中に固溶するP濃度を低減する溶鉄の精錬方法に関し、さらに詳しくは、溶鉄中にNd、次いでCaを添加してPをNd−P系介在物およびCa−P系介在物とすることにより、溶解または固溶するP濃度を低減する精錬方法に関する。
鋼中に固溶した燐(P)(以下、「固溶P」とも記す)は、結晶粒界あるいは鋳片中心部などにおいて濃化し、鋼材の高温延性、耐食性、溶接性などの特性を著しく悪化させるため、鋼中の固溶P濃度を低減することが重要とされている。固溶Pは、鋼中において単体の元素として存在するが、この固溶Pは、溶鉄中では溶解したP(以下、「溶解P」とも記す)として存在している。
一般に、鋼中の固溶P濃度を低減する方法として、製鋼段階において溶鉄から溶解Pを除去する脱燐処理が用いられている。脱燐処理は、脱燐に適したスラグあるいはフラックスを溶鉄に添加し、酸化雰囲気下で溶鉄中のPを酸化物としてスラグまたはフラックスに移行吸収させる方法である。
従来、脱燐効率をより高めるとともに、より低い溶解P濃度まで脱燐することを目的として、多数の溶銑脱燐技術、溶鋼脱燐技術が開発されてきた。一方、近年、鋼材に対する要求性能が高まると同時に、高級鋼の需要が増加している。この要求性能と需要に対応するためには、より簡便な方法により鋼中の固溶P濃度を従来以上に低減する必要が生じてきた。
しかしながら、従来の脱燐処理には、(a)低減可能なP濃度の下限に経済的および熱力学的限界がある、(b)徹底した脱燐処理を行うと排出スラグ量が増加する、(c)還元精錬条件下では脱燐ができない、などの課題があり、上記要求に応えることが困難であった。
上述したとおり、従来の考え方に基づくフラックスあるいはスラグを用いて溶解P濃度を低減する脱燐処理によって近年の低燐化に対応するには、(1)脱燐能力の限界からくる生産性の低下および精錬コストの上昇、(2)精錬末期において脱燐処置ができないことに起因する過剰脱燐処理、(3)排出スラグ量の増加による廃棄物量の増加、などが課題となっていた。
一方、脱燐に対する新しい考え方として、溶鉄中においてPとREMとからなる化合物(介在物)を生成さて、溶解Pの一部を化合物として固定することにより、溶解P濃度を低減させるという技術も開発された。例えば、特許文献1には、非酸化性雰囲気下に保持された溶融金属に、レアアースメタル(以下「REM」とも記す)を0.1質量%以上添加するとともに溶融金属を攪拌し、生成したスラグを除去した後に酸化精錬する脱燐方法が開示されている。この方法は、REMとPとの化合物を溶融金属中で生成させ、攪拌してこれを浮上させた後、P化合物を含むスラグを除去し、さらにその後、溶融金属中のREMを酸化精錬により除去する方法である。
しかしながら、REMを用いて溶解PをREMとの化合物とすることにより、溶解P濃度を低減させる従来の方法では、P化合物の生成および浮上処理やスラグの除去、ならびにその後の酸化精錬など複数の処理が必要であることから、処理コストの面で改善の余地があった。
上記の課題を解決すべく、本発明者らは、溶鉄にNdを添加した場合の溶鉄中におけるNdP介在物の生成反応について詳細に調査し、P濃度とNd濃度とを適正に制御することにより、介在物の浮上処理、スラグ除去および酸化精錬を行う必要のない新しい溶解P
濃度の低減方法を、先に特許文献2として提案した。さらに、溶解P濃度の低減に及ぼす溶鉄中酸素(以下、「O」とも記す)および硫黄(以下、「S」とも記す)の阻害作用を排除し、優れた溶解P濃度の低減効果を確保できる溶鉄の処理方法を特許文献3として提案した。
これらの方法は、生産性が高く、処理コストを低減でき、しかもP濃度の低減に及ぼすOおよびSの阻害作用を排除して鋼の清浄度を確保できる優れた処理方法であるが、さらに、連続鋳造性に優れた溶解P濃度の低減方法が望まれる。
特公平6−21288号公報(特許請求の範囲および3頁左欄8〜13行) 特願2006−003257号(特許請求の範囲など) 特願2006−003489号(特許請求の範囲など) 特開平5−43929号公報(特許請求の範囲および段落[0010]〜[0012 ])
本発明者らが前記の特許文献2および特許文献3に提案した溶鉄へのNd添加による処理方法によれば、溶鉄の清浄度を悪化させることなくNdP介在物を効率よく生成させ、溶解P濃度を低減させることができる。また、溶鉄中のNd濃度が過度に高くなることを回避するとともに、介在物やスラグの除去処理を不要としたため、生産性が高く、また処理コストを低減できる点で優れている。加えて、Nd添加効果に及ぼす溶鉄中のOおよびSによる阻害効果を回避して、さらに高い効率のもとに溶解P濃度の低減を達成することが可能である。
一方、これまでに提示された方法は、Ndのみによる溶解P濃度の低減技術であったため、溶鉄中のNd濃度を比較的高い濃度とする必要があった。Nd添加による溶鉄の処理方法は、徹底した溶鉄の脱燐処理を行うよりも精錬コストは低減できるが、これに加えてNdの使用量を低減できれば、溶鉄の処理コストをさらに一段と削減することができる。
また、溶鉄中のNd濃度を高めた場合には、P系のNd介在物とともに酸化物系のNd介在物が生成し、これらの介在物によって連続鋳造時にノズルの閉塞が発生しやすいといった課題があった。つまり、連続鋳造機による鋳造操業は可能であるものの、ノズルが閉塞傾向となる場合があり、このために連続鋳造回数に制約が発生し、生産性の確保に限界が生ずるという問題である。このため、Nd添加処理を行っても連続鋳造回数に制約を受けない処理方法、すなわち鋳造性に優れた溶鉄の処理方法を開発することができれば、さらにコスト低減および生産性の向上を図ることができる。
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題は、少ないNd添加量のもとで溶解P濃度の低減を達成でき、かつ連続鋳造性に優れた清浄度の高い溶鉄を製造できる溶鉄の処理方法を提供することにある。
本発明は、溶解Pをスラグ中などへ移行させて溶解P濃度を低減する一般的な脱燐処理方法には属さず、溶鉄中にNdを添加後さらにCaを添加してPの化合物を生成させることにより、溶解P濃度を低減し、その結果として固溶P濃度を低減させる精錬方法である。すなわち、本発明の要旨は、下記に示される溶鉄の処理方法にある。
「質量%で、P:0.0001%以上0.5%以下、S:0.005%以下、およびO(酸素):0.005%以下を含有する溶鉄にNdを添加した後に、Caを添加する溶鉄の処理方法であって、溶鉄中のP濃度、S濃度およびO濃度に応じて下記(1)式および(2)式により表される関係を満足するように溶鉄中のNd濃度を制御した後、溶鉄にCaを添加して、溶鉄中のNd濃度に応じて下記(3)式により表される関係を満足するように溶鉄中のCa濃度を制御することを特徴とする溶鉄の処理方法。
A=0.24[P]+0.82[S]+0.85[O] ・・・・(1)
A+0.005≦[Nd]≦A+0.03 ・・・・(2)
1.2×10-2×[Nd]2/3≦[Ca]≦1.6×10-2×[Nd]2/3+0.0015 ・・・・(3)
ここで、[P]、[S]、[O]、[Nd]および[Ca]は、溶鉄中における各元素
の濃度(質量%)を表す。」
なお、以下の説明において、鋼の成分組成表示における「%」の記載は、「質量%」を意味する。
本発明者らは、前述の課題を解決するために、Nd−P系化合物およびCa−P系化合物の効率的生成条件および介在物制御効果の調査および解析を行い、下記の(a)〜(c)の知見を得て、上記の本発明を完成させた。
(a)対象溶鉄のP、SおよびO濃度の適正範囲
P:0.0001%以上0.5%以下
Pは、鋼材の高温延性、耐食性、溶接性などの特性を悪化させる不純物元素であり、その濃度は低いほど好ましい。しかし、現実には、材料特性などの面から固溶P濃度が0.0001%未満においてさらに溶解P濃度の低減を必要とすることは殆どないことから、対象とするP濃度を0.0001%以上とした。一方、P濃度が0.5%を超えて高い場合には、本発明の方法を用いなくても、通常の脱燐処理により0.5%まで容易に低下させることができる。そこで、P濃度の適正範囲を0.0001%以上0.5%以下とした。
S:0.005%以下
硫黄(以下、単に「S」とも記す)は、溶鉄中において、PとNdとの親和力よりもNdとの強い親和力を有すると考えられる元素である。S濃度が0.005%を超えて高くなると、NdPの生成に優先して生成されるNd硫化物の生成量が多くなり、NdPの生成が抑制される。また、同様に、SはCaとも強い親和力を有するため、CaSの生成量が増加し、後述するCa濃度の増加を妨げる。そこで、S濃度の適正範囲を0.005%以下とした。
O(酸素):0.005%以下
酸素(以下、単に「O」とも記す)は、溶鉄中において、PとNdとの親和力よりもNdとの強い親和力を有すると考えられる元素である。O濃度が0.005%を超えて高くなると、NdPの生成に優先して生成されるNd酸化物の生成量が多くなり、NdPの生成が抑制される。また、同様に、OはCaとも強い親和力を有するため、CaOの生成量が増加し、後述するCa濃度の増加を妨げる。そこで、O濃度の適正範囲を0.005%以下とした。
(b)Ca−P系化合物の生成条件
1)酸素活量の低減による溶鉄中Ca濃度の上昇
鋳造性を改善するための方法として、例えば特許文献4に開示されたように、Caを溶鉄に添加して溶鉄中の介在物を低融点組成に改質する方法が公知である。しかし、Nd系介在物をCa−Nd系介在物に改質したとしても、その融点は溶鋼温度よりも高く、鋳造性を改善することは難しい。つまり、Ndを含有する溶鉄に単純にCaを添加しただけでは、従来鋼のように鋳造性を改善することはできない。
さらに、Ndを含有する溶鉄中では、Nd−O脱酸平衡により酸素活量が非常に低い値まで低下していると考えられる。Ca−O脱酸平衡による酸素活量よりも、Nd−O脱酸平衡による酸素活量が低い場合には、Nd含有鋼にCaを添加しても、Nd系介在物をCaにより改質することすらできない。したがって、上述のこれらの理由から、単純にCaを添加することのみでは鋳造性を改善することは困難である。
一方、CaとPとは、Ca32なる化合物を形成することが知られており、これは、CaもNdと同様に溶鉄中で燐化合物を生成し、溶解P濃度を低減する可能性を有することを示している。しかし、溶鉄中におけるCa−P介在物の生成あるいはその確認に関する報告はなされていない。
従来の知見を総括すると、下記のとおりとなる。すなわち、(1)Nd含有鋼に対して単純にCa添加処理を行っても、鋳造性の改善は期待できない、および、(2)Ndと同様にCa添加によりCa−P系介在物を生成させて溶解P濃度を低減できる可能性はあるものの、溶鉄中でのCa−P介在物の生成を確認したとの報告はない。以上の知見によれば、NdとCaとを併用しても、鋳造性の改善や溶解P濃度低減による改善効果はほとんど期待できないことになる。
これらに対して、本発明者らは、上述した従来の知見にとらわれずに検討を重ねた結果、下記の着想に至った。
すなわち、Ca−O脱酸平衡により定まる酸素活量(以下、「Ca−O脱酸平衡酸素活量」と記し、他の平衡により定まる酸素活量についても同様の標記法を用いる)は、Nd−O脱酸平衡酸素活量よりも高いが、これは、溶解Nd濃度と溶解Ca濃度とのバランスによって変化する。例えば、溶解Ca濃度が非常に高く、他方、溶解Nd濃度が非常に低い場合には、Ca−O脱酸平衡酸素活量の方が低くなる。ただし、蒸発性の高い溶解Ca濃度を上記の条件が満足される程度まで高めることは、通常の方法では困難である。したがって、溶解Ca濃度を十分に高めることができれば、Caを添加することによりCa−P介在物を生成させ、その結果、溶解P濃度を低減することができる可能性がある。
ここで、問題となるのは、通常の方法では得られない高い溶解Ca濃度を確保する方法である。溶鉄中のCa濃度は、CaO=Ca+Oにより表される平衡反応により支配される。通常は、Caを添加することにより酸素活量が決定される。したがって、もし、Caの添加前に、別の手段により溶鉄中酸素活量をCa−O脱酸平衡酸素活量よりも低くすることが可能になれば、平衡Ca濃度を高めることができ、その結果、溶鉄中Ca濃度を非常に高い濃度にまで高めることができる。したがって、これが実現できれば、溶鉄へのCa添加により、鋳造性の改善および溶鉄中での溶解P濃度の低減を同時に達成することができる。
2)Ndの添加による溶解Ca濃度の上昇
Caの添加前に、Ca-O脱酸平衡酸素活量よりも溶鉄中の酸素活量を低下させる方法を検討した。Caの添加前にCa−O脱酸平衡酸素活量よりも溶鉄中酸素活量を低くするには、Caよりも強い脱酸力を有する元素を添加すればよい。その可能性を有する元素としては、NdおよびMgが挙げられる。Ndは、P化合物を生成するので、溶解P濃度を低減するためには、これを用いるのが好ましい。しかしながら、Ndを適切な方法で使用しない場合には、前述したような問題を生じる。つまり、Ndを用いるに際しては、適正なNdの濃度範囲が存在する。
この条件を熱力学的な計算により求めることは、下記の理由により困難である。すなわち、NdおよびCaは、いずれもOの他に、Sとも反応する。しかも、Caは非常に蒸発しやすい元素である。さらに、本発明の方法では、溶鉄中のPとの反応をも考慮する必要があるから、反応系は極めて複雑なものとなるが、このような複雑な多元系について計算を行うための熱力学的諸量も不足しているからである。
そこで、実験によりこれらの条件を求めることとした。実験の目的は、溶鉄中においてCa−P系介在物を生成させる条件を求めることである。
実験にはC:0.0015〜0.5%、Si:0.008〜0.8%、Mn:0.001〜1.5%を含み、Pを0.0001〜0.5%の範囲で、Ndを0.007〜0.1%の範囲で、Sを0.005%以下の範囲で、そしてOを0.005%以下の範囲で、それぞれ変化させた溶鉄15kgを用いた。
溶鉄温度を1560〜1630℃とし、Nd濃度を所定濃度に調整した後、Caを添加した。一定時間保持した後に溶鉄からサンプルを採取し、急冷凝固させた。また、サンプル採取終了後、溶鉄を20℃/minの速度で冷却し、得られた鋼塊からもサンプルを切り出した。上記の二種類の方法で採取したサンプル中の非金属介在物(以下、「介在物」とも記す)をSEMにより観察するとともにEPMAを用いて介在物の組成を定量した。
はじめに、Ca濃度の増加について説明する。図1は、溶鉄中のCa濃度と溶鉄から採取した急冷サンプル中に存在した介在物中のCaO濃度との関係を示す図である。同図に示される実験では、いずれも、溶鉄中のAl濃度を0.04%として溶鉄中酸素濃度を0.0011〜0.0045%に調整し、さらに、P濃度を0.001%、およびS濃度を0.0004%とし、Nd濃度については、▲印で示すとおり0.025%、および○印で示すとおり無添加の2ケースとした。
同図の結果に示されるとおり、Ndを添加しない場合には、溶鉄中のCa濃度の増加にともなって介在物中のCaO濃度が増加している。これは、Ca−O脱酸平衡酸素活量よりも溶鉄中酸素活量が高かったことからCaが酸素と反応したこと、およびCaが酸素と反応した結果、溶解Ca濃度が低下したことを示している。
一方、Nd濃度が0.025%の場合には、Ca濃度が0.002%未満の範囲ではCa濃度が増加しても介在物中のCaO濃度は増加せず、Ca濃度が0.0035%においても介在物中のCaO濃度は6%程度にすぎない。このことは、Ca−O脱酸平衡酸素活量よりも溶鉄中酸素活量が低かったこと、およびCaは介在物と反応せずに溶解Caとして存在していたことを示している。
溶鉄中の溶解Ca濃度は、溶鉄中Ca濃度から介在物中のCa濃度を減じたものである。したがって、上述の実験結果から、溶鉄中にNdを添加することにより、溶解Ca濃度は高められることが確認された。
3)P系介在物生成のためのNd濃度範囲
Ca−P系介在物を生成させるための条件について説明する。前述したとおり、対象とする反応系が複雑であるため、単に実験回数を増加させて調査を行うのみでは適切な条件を把握することはできない。そこで、以下の方法により実験を行い、その結果を整理することとした。
Ca濃度を増加させるため、Ca添加前において酸素活量を低くするためには、溶解Nd濃度の調整が重要である。しかし、Ca添加前に溶鉄中に添加されたNdは、Ca添加前に、溶鉄中のS、OおよびPと反応していると考えられる。したがって、溶解Nd濃度を求めるには、これらの元素と反応し、消費されたNd量を減じる必要がある。
上記の反応により消費されたNdの減少分をAとすると、Aは下記(1)式により表される。
A=0.24[P]+0.82[S]+0.85[O] ・・・・(1)
ここで、[P]、[S]および[O]は、溶鉄中における各元素の濃度(%)を表す。また、[S]および[O]の各係数は、硫化物および酸化物中のNd原子量をそれぞれ硫化物および酸化物の分子量により除した値である。しかし、[P]の係数は、燐化合物中のNd原子量を燐化合物の分子量により除した値にはならない。なぜなら、本発明者らが既に提示したように、NdとPとの反応には一定の限界があり、添加したNdがPの全量と反応するわけではないからである。そこで、Pの原子量をNdの原子量で除した値(0.21)に、さらにNdとPとの反応限界を考慮して、NdとPとの反応比率を0.24とし、[P]の係数を決定した。
次に、溶解Ca濃度を増加させるための溶解Nd濃度を求めた。溶解Nd濃度は、溶鉄中のNd濃度から上記のAの値を減じた値であることから、この([Nd]−A)の値と溶解Ca濃度との関係を求めた。ここで、溶解Ca濃度を直接分析するのは困難であるため、溶鉄中Ca濃度と介在物中に含まれるCa濃度との差を溶鉄中Ca濃度により除した値、すなわち、B=(溶鉄中Ca濃度−介在物に含まれるCa濃度)/(溶鉄中Ca濃度)の値により評価した。上記のBの値が1の場合には、溶鉄中Ca濃度が溶解Ca濃度に等しく、溶解Ca濃度が高いことを示し、逆に、Bの値が小さい場合には、溶解Ca濃度は低いことを示す。
図2は、溶解Nd濃度([Nd]−A)と溶解Ca濃度(B)との関係を示す図である。同図において、Bは、前記のとおり、(溶鉄中Ca濃度−介在物に含まれるCa濃度)/(溶鉄中Ca濃度)の値を意味する。
同図の結果から、([Nd]−A)の値が0.005以上においてBの値が1近傍まで増加することから、([Nd]−A)の値は0.005以上にする必要があることがわかる。一方、([Nd]−A)の値が0.03を超えて高くなると、Bの値はやや低下することから、([Nd]−A)の値は0.03以下とする必要のあることがわかる。なお、([Nd]−A)の値が0.03を超えた範囲においてBの値が若干低下する理由は、溶解Nd濃度が増加することによりCa活量が変化したことによると考えられるが、定かではない。
上述の結果から、溶鉄中のNd濃度の適正範囲は下記(2)式により表される。
A+0.005≦[Nd]≦A+0.03 ・・・・(2)
4)Ca−P系介在物生成のためのCa濃度範囲
Ca−P系介在物を生成させるための条件について説明する。前記のとおり、溶解Ca濃度に及ぼす溶鉄中のP、SおよびOの各濃度ならびに溶解Nd濃度の影響については、(1)式および(2)式により考慮されているので、最終的には、(1)式および(2)式を満足する濃度条件下において、Ca濃度とNd濃度との関係を求めればよい。
図3は、Ca−P系介在物の生成の有無に及ぼす溶鉄中Ca濃度ならびに(1)式および(2)式の関係を満足するNd濃度の影響を実験により求めた結果を示す図である。同図において、○印は、Ca−P系介在物、すなわち、CaP、Ca−O−P、Ca−O−P−S、Ca−P−Nd−O、Ca−P−Nd−O−X(−S)(ここで、XはSiまたはAlを表す)が生成したことを、また、×印は、Ca−P系介在物が生成しなかったことを、それぞれ示す。
同図の結果から、Ca−P系介在物の生成する領域と生成しない領域との境界線は、下記(4A)式により表されることが判明した。また、Ca−P系介在物が生成するためには、(1)式および(2)式の関係を満たした溶鉄中Nd濃度、および溶鉄中Ca濃度が下記(4)式により表される関係を満足する必要のあることが確認された。
1.2×10-2×[Nd]2/3=[Ca] ・・・・(4A)
1.2×10-2×[Nd]2/3≦[Ca] ・・・・(4)
したがって、溶鉄中のP、S、O、NdおよびCaの各成分が前記(1)式、(2)式および(4)式で表される関係を同時に満足するように制御することにより、下記の(1)〜(3)効果が得られる。
(1)溶鉄中でCa−P系介在物を生成させることにより、溶解P濃度を低減できる。
(2)Caにより溶解P濃度を低減できるので、従来の溶鉄の処理方法に比較して溶鉄中のNd濃度を低く抑えることができる。
(3)溶鉄中に生成する介在物はCa系介在物であるため、鋳造用ノズルを閉塞するおそれがない。
上述したとおり、添加Caの補助的役割としてNdを適正条件で添加使用することにより、これまで確認されていなかったCaの添加による溶解P濃度の低減を図ることができる。
さらに、本発明者らは、前記図3において、Ca濃度の適正範囲がNd濃度の適正範囲よりも一桁小さいことに着目した。溶鉄中でCa−P系介在物が生成した後に、溶鉄は鋳造され凝固するので、この時の温度降下にともない溶鉄中のCaとPとの反応はさらに進む。このとき、Caの濃度は低いため、ある温度まで低下した時点で、Caは反応により消費されて消失することとなる。その後も、P濃度を低減し続けるには、Caに代わってNdがPと反応すればよい。つまり、Caに代わってNdがPと反応し始めるためには、Ca濃度は高すぎない方が有利である。
そこで、この条件を調査するために、前記実験により得られた鋼塊中の介在物を調査した。その結果、Ca濃度が所定濃度以下の場合には、溶鉄中で生成したCa−P系介在物の他に、鋳造凝固による温度降下時に生成したNd−P系介在物が共存していることを見出した。この現象は、溶鉄段階ではCaによりCa−P系介在物を生成させて溶解P濃度を低減させ、さらに、凝固過程ではNdによりNd−P系介在物を生成させて固溶P濃度を低減させるという「二段階によるP濃度低減」が達成可能なことを示している。
図4は、Ca−P系介在物およびNd−P系介在物の生成の有無に及ぼす溶鉄中Ca濃度ならびに(1)式および(2)式の関係を満足するNd濃度の影響を示す図である。同図の結果は、前記図3に示した実験と同一実験において凝固後の鋼塊から採取したデータに基づいているため、Ca濃度およびCa濃度は図3の場合と同一濃度となっている。同図において、○印は、Ca−P系介在物(すなわち、CaP、Ca−O−P、Ca−O−P−S、Ca−P−Nd−O、Ca−P−Nd−O−X(−S)(ここで、XはSiまたはAlを表す))とともに、Nd−P系介在物が生成したことを、また、△印は、Ca−P系介在物のみが生成したことを、そして、×印は、Ca−P系介在物が生成しなかったことを、それぞれ示す。
図4の結果から、Ca濃度が高い領域においてCa−P系介在物だけしか生成しなかったのは、CaがPとの反応で消失する温度が低くなりすぎ、代わって反応するNdとPとの充分な反応速度が得られなかったことによると推定される。また、CaおよびNdにより二段階で鋼中のP濃度の低減を図るには、Ca濃度が、(1)式および(2)式の関係を満たすNd濃度に対して、下記(5A)式により表される曲線よりもCa濃度が低い領域に存在する必要があることが判明した。すなわち、(1)式および(2)式の関係を満たした溶鉄中Nd濃度、および溶鉄中Ca濃度が下記(5)式により表される関係を満足する必要のあることが確認された。
[Ca]=1.6×10-2×[Nd]2/3+0.0015 ・・・・(5A)
[Ca]≦1.6×10-2×[Nd]2/3+0.0015 ・・・・(5)
前記(4)式および上記(5)式の関係をまとめることにより、前記(3)式の関係が得られる。したがって、(1)式および(2)式の関係を満足するように溶鉄中のNd濃度を制御した後、Caを添加して、(3)式により表される関係を満足するようにCa濃度を制御することにより、低いNd濃度により良好な鋳造性を確保するとともに、溶鉄の段階ではCaによりCa−P系介在物を生成して溶解P濃度を低減し、さらに凝固過程ではNdによりNd−P系介在物を生成して固溶P濃度を低減する「二段階によるP濃度低減」を達成できる。これにより、Ndを単独で添加使用する場合に比較して、一段と高い生産性のもとに固溶P濃度をさらに一層低減した鋼材を製造することができる。
(c)介在物制御効果の確認
構造用高強度CrMo鋼SCM430相当鋼を対象として下記の試験を行い、介在物の制御効果を確認した。表1および表2に示す化学成分組成を有する5種類の鋼を真空高周波誘導溶解炉を用いて20kg溶製し、インゴットを作製した。
Figure 0004656007
Figure 0004656007
同表において、(6)式および(7)式は、前記特許文献2において発明者らが開示した関係式を示している。すなわち、(6)式は、溶鉄中のPとNdとの反応によりNdP介在物が生成するために必要な溶鉄中のNd濃度:[Nd]とP濃度:[P]との間の関係を、そして、(7)式は、さらに加えて、介在物の粗大化を抑止するために必要な両濃度間の関係を示す。
同表において、試験番号A1に用いた供試鋼は、予め徹底して脱燐した極低燐鋼であってCa添加を行ったものであるが、本発明で規定する(2)式および(3)式により表される関係を満足しない供試鋼であり、(6)式および(7)式の関係も満たしていない。試験番号A2に用いた供試鋼は、NdおよびCaを添加した供試鋼であり、(6)式および(7)式の関係は満足するが、本発明で規定する(2)式および(3)式の関係を満足しない供試鋼である。試験番号A3に用いた供試鋼は、NdおよびCaを添加した供試鋼であって、(6)式および(7)式の関係は満足するが、本発明で規定する(3)式の関係を満たさない供試鋼である。また、試験番号A4に使用した供試鋼は、本発明で規定する(1)式および(2)式の関係を満足するようにNd濃度を制御した後、(3)式の関係を満足するようにCa濃度を制御した供試鋼であり、もちろん、(6)式および(7)式の関係をも満足している。そして、試験番号A5に用いた供試鋼は、一般に用いられているP濃度の高い鋼であり、(6)式および(7)式ならびに(2)式および(3)式のいずれの関係をも満たさない供試鋼である。
得られたインゴットを1000℃にて2時間の均熱処理後、熱間プレスにより厚さ25mm、幅60mmの板材に鍛伸し、試験用素材とした。その素材を820℃にて1時間の均熱後、油焼入れした後、550℃にて1時間保持し空冷する焼き戻し処理を行って、供試材とした。供試材から鍛伸方向と直角方向に、JIS Z 2202で規定されるシャルピー衝撃試験片(10mm×10mm×55mm、深さ2mmのVノッチ付き)を採取し、試験温度を0℃〜100℃の間で変えて衝撃試験を行って、衝撃特性(衝撃吸収エネルギー)を評価した。
表3に、各衝撃試験温度毎の衝撃吸収エネルギーを示した。
Figure 0004656007
また、図5には、各供試鋼毎のシャルピー衝撃試験温度と衝撃吸収エネルギーとの関係を示した。
表3および図5に示された結果から、下記のことが明らかとなった。焼戻し後の材料の衝撃特性は、通常の高P濃度鋼を用いた試験番号A5の場合に、衝撃吸収エネルギーが最も低く、劣った衝撃特性となっている。これに対して、予め脱燐した極低燐鋼であってCa添加を行ったものの、本発明で規定する(2)式および(3)式の関係を満足しない供試鋼を用いた試験番号A1では、衝撃吸収エネルギーが増加し、衝撃特性は顕著に改善されている。さらに、NdおよびCaが添加され、(6)式および(7)式の関係を満足するが、本発明で規定する(2)式および(3)式の関係を満足しない供試鋼を用いた試験番号A2では、衝撃吸収エネルギーがさらに一層増加し、衝撃特性が向上している。
また、NdおよびCaを添加した供試鋼であって、(6)式および(7)式の関係は満たすものの、本発明で規定する(3)式の関係を満たさない供試鋼を使用した試験番号A3では、試験番号A2とほぼ同程度の衝撃特性が得られた。そして、(6)式および(7)式の関係はもちろんのこと、本発明で規定する(1)〜(3)式の関係を満足するように、Nd濃度制御後にCa濃度制御を行った供試鋼を使用した試験番号A4では、衝撃吸収エネルギーが一段と増加して最も高くなっており、遷移温度の上昇に加えて上部棚エネルギーの値も上昇して、極めて良好な衝撃特性を示している。
以上の結果から、Nd添加処理、またはNdおよびCa添加処理を行ってP化合物を含む介在物を生成させることにより、溶解P濃度および固溶P濃度の良好な低減効果を得ることができること、および、本発明で規定する方法により溶鉄を処理してNd−P系化合物およびCa−P系化合物を効率的に生成させることにより、鋼材のさらに一段と高い衝撃特性を達成できる良好な介在物制御効果が得られることが確認された。
本発明の溶鉄の処理方法によれば、溶鉄中のP、SおよびO濃度に応じて溶鉄中のNd濃度を制御した後、Nd濃度に応じて溶鉄中のCa濃度を制御することにより、低いNd濃度のもとに溶鉄中にCa−P系介在物およびNd−P系介在物を効率よく生成させて溶解P濃度ひいては製品中の固溶P濃度を効果的に低減することができるので、Pによる鋼品質の阻害作用を従来にない極めて低い水準にまで低減することができる。また、本発明の方法は、溶鉄中にCa系介在物を生成させるので、鋳造用ノズルの閉塞防止効果を有する連続鋳造性に優れた溶鉄を製造できる。
本発明は、前記のとおり、P:0.0001%以上0.5%以下、S:0.005%以下、およびO(酸素):0.005%以下を含有する溶鉄にNdを添加した後に、Caを添加する溶鉄の処理方法であって、溶鉄中のP濃度、S濃度およびO濃度に応じて前記(1)式および(2)式により表される関係を満足するように溶鉄中のNd濃度を制御した後、溶鉄にCaを添加して、溶鉄中のNd濃度に応じて前記(3)式により表される関係を満足するように溶鉄中のCa濃度を制御する溶鉄の処理方法である。以下に本発明の方法についてさらに詳しく説明する。
(a)NdおよびCaの添加方法
本発明において、溶鉄中のP、SおよびO濃度に応じて(1)式および(2)式の関係を満足するように溶鉄中のNd濃度を制御した後、溶鉄にCaを添加して、溶鉄中のNd濃度に応じて(3)式の関係を満足するように溶鉄中のCa濃度を制御する具体的方法について下記に説明する。
一般に、溶鉄中のP濃度の制御には最も高いコストを要し、次いで脱硫処理を施すS濃度の制御に高いコストを要する。脱酸剤を添加する脱酸処理は比較的容易であり、Ndを添加するだけで処理が可能なNd添加処理が最も容易である。したがって、溶鉄へのNdの添加前もしくはP濃度が変化する溶銑予備処理、または転炉、AODもしくはVOD処理後に、溶鉄中のP濃度を発光分光分析法などにより迅速分析し、その値を把握する。同様にして、S濃度についても測定する。溶鉄中の酸素濃度に規制がない場合には、Al、Siなどの脱酸剤を投入して溶鉄中の酸素濃度を調整する。
このようにして、Ndの添加に先立って、溶鉄の処理中にP濃度およびS濃度を測定し、脱酸剤を添加することにより酸素濃度を調整した後に、前記(1)式および(2)式により求められるNd濃度範囲となるように、溶鉄中にNdを添加すればよい。溶鉄中における脱酸元素濃度と酸素濃度、あるいは添加したNdの歩留まりは、処理装置毎に過去の操業実績などから求めることができる。溶鉄中の酸素濃度に規格がある鋼種の場合には、従来法により、その酸素濃度規格を満足するように酸素濃度の調整を行った後、その調整後の酸素濃度を用いて、(1)式および(2)式によりNdの添加量を求めればよい。
例えば、転炉を用いたプロセスでは、溶鉄は、溶銑予備処理、転炉吹錬、RHなどの真空脱ガス処理、および連続鋳造の順に処理されるので、RH処理中に溶鉄中P濃度およびS濃度を測定する。さらに、脱酸条件から酸素濃度を求め、これらの各濃度に基づいて(1)式および(2)式からNdの添加量を求め、RH処理末期にNdを添加すればよい。また、RH処理後にP濃度およびS濃度はほとんど変化しないので、RH処理後に取鍋精錬装置を用いた処理中にNdを添加してもよいし、さらに、連続鋳造機のタンディッシュ内の溶鋼にNd添加を行ってもよい。
電気炉、AODまたはVODを用いる場合においても同様である。すなわち、鋳造前の処理工程の末期に溶鉄中P濃度を測定してNdの添加量を決定し、その後、上記処理の終了期あるいは鋳造直前にNdを添加すればよい。ただし、Ndの添加は、前述したNd添加作用から明らかなとおり、Caの添加に先立って行う必要がある。
添加するNdの形態としては、総添加量を削減する目的から、金属Ndを用いることが好ましいが、Al、Si、FeなどとNdとの合金や混合物を用いてもよい。また、Ndの添加方法は、ホッパーなどの装入装置を用いた一括添加、インジェクションによる添加、ワイヤ供給方式よる添加など、一般に用いられている方法を用いることができる。
一方、Caは蒸発性の高い金属であることから、その添加量は、各設備毎の添加歩留まりを考慮して決定すればよい。Caは、Ndの添加後であれば鋳造までの間のどの時点で添加してもよく、精錬装置内の溶鉄に添加しても、タンディッシュ内の溶鉄に添加してもよい。
添加するCaの形態としては、金属Caのほかに、一般的なCa−Si合金などの合金、または金属CaもしくはCa合金とフラックスとを混合した混合物を用いてもよい。また、Caの添加方法は、Ndの場合と同様に、ホッパーなどの装入装置を用いた一括添加、インジェクションによる添加、ワイヤ供給方式よる添加など、一般に用いられている方法を用いることができる。
本発明の方法を実施するに際して、P濃度を大幅に低減するほどの脱燐処理を行う必要はないが、CaおよびNdの添加量を削減するために、溶銑予備処理などにおいて脱燐処理を行ってもよい。また、CaおよびNdの添加歩留まりを向上させるために、Ndの添加前にスラグの改質を行っておくことが好ましい。
(b)溶鉄およびスラグの好ましい成分組成範囲
1) 溶鉄の好ましい成分組成範囲
本発明の方法は、前記のとおり、S濃度が0.005%以下、およびO濃度が0.005%以下の溶鉄を対象としているが、好ましくは、Nd添加前におけるS濃度を0.0025%以下、およびO濃度を0.0030%以下とすることにより、Nd添加量およびCa添加量をさらに低減することができる。
また、S濃度については、Nd−P系介在物およびCa−P系介在物のより一層の分散を図るために、0.0003%以上であることが、また、O濃度については、同様の理由により0.0005%以上であることが、それぞれ好ましい。
Nd、P、SおよびO以外の溶鉄成分であってこれらの成分組成に影響を及ぼさない合金成分については、Nd添加後にそれらの成分調整を行ってもよい。
また、酸素濃度を効果的に低減することができるAl、Si、Mgなどは、Ndの添加前に添加することが好ましい。これらの元素をNdの添加前に添加することにより、溶鉄中の酸素濃度を低減できるため、酸素濃度の変動を小さくするとともに、NdおよびCaの添加量を削減することができる。さらに、前記(2)式および(3)式の関係を満足させやすい酸素濃度の範囲内であれば、Nd−P系介在物およびCa−P系介在物の生成を促進させることができる。
次に、C、Si、Mn、Si、Alその他の成分組成の好ましい範囲について述べる。
C:3.5%以下およびSi:2.5%以下
CおよびSiは、その濃度が高いと、鋼中におけるPの活量を高める作用を有する元素である。C濃度が3.5%を超えて高いと、Pの活量に与える影響が顕著となり、P化合物の生成条件が変化するおそれがあることから、C濃度は3.5%以下であることが好ましい。同様の理由により、Si濃度は2.5%以下であることが好ましい。
なお、C濃度は、鋼材特性の確保および安定した脱酸作用の確保の観点から、0.0015%以上の範囲であることがさらに好ましく、また、Si濃度は、予備脱酸を行う観点から0.01%以上の範囲であることがさらに好ましい。
Mn:3%以下
Mnは、その濃度が高いと鋼中におけるPの活量を低下させる作用を有する元素である。Mn濃度が3%を超えて高いと、Pの活量が著しく低下するため、P化合物の生成が困難となるおそれがある。したがって、Mn濃度は3%以下であることが好ましい。なお、Mn濃度は、鋼材強度を確保する観点から、0.2%以上の範囲であることがさらに好ましい。
Al:3%以下
Alは、鋼中の溶解酸素との平衡関係から、溶解酸素濃度に極めて大きな影響を及ぼす。Al濃度が3%を超えて高くなると、平衡溶解酸素濃度が急激に高くなり、アルミナ系酸化物介在物が増加して鋼の清浄性が悪化するおそれがあることから、Al濃度は3%以下であることが好ましい。また、Al濃度は、Ndの歩留まり向上およびその安定性確保の観点から、0.0035%以上の範囲であることがさらに好ましい。
なお、本発明において、Al濃度とは、酸可溶Al(sol.Al)の濃度を意味する。
上記の溶鉄において、鉄の一部に替えて下記のNi、Mo、V、Ti、Crなどの元素が含有されていてもよい。これらの元素は、溶鉄中におけるNdとPとの反応にほとんど影響を及ぼさないからである。すなわち、0.01〜30%の濃度範囲のNi、0.01〜1%の濃度範囲のMo、0.001〜0.1%の濃度範囲のV、0.005〜0.3%の濃度範囲のTi、0.001〜35%の濃度範囲のCrなどである。
2)スラグの好ましい成分組成範囲
本発明は、Ndとともに反応性の高いCaを併用使用することから、Ndを単独添加する場合と異なり、スラグの成分組成を制御する必要はないが、一層再現性良くNd−P系介在物を生成させる観点から、スラグ中のCaOとAl23の質量濃度比である(CaO/Al23)の値は0.7以上9以下であることが好ましく、上記の値は1以上2以下であることがさらに好ましい。また、CaOとSiO2の質量濃度比である(CaO/SiO2)の値は0.65以上であることが好ましい。スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計であるスラグ中の低級酸化物の濃度は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。NdやCaの酸化ロス量が低減し、添加金属の歩留まりが向上するからである。
本発明では、スラグ成分組成が溶鉄の処理効果に及ぼす影響は少ないが、上記のスラグ成分組成の範囲に調整することにより、一層安定した処理効果が得られる。
(試験方法)
鋼成分中のC、Si、Mn、Cr、MoおよびV濃度を前記表1に記載された供試鋼の成分濃度範囲と同範囲として、P、S、O、NdおよびCa濃度を変化させた鋼180kgを真空高周波誘導溶解炉により溶製した。溶製に際しては、溶解温度を1600℃とし、鋼中のP、SおよびO濃度を調整後に金属Ndを添加し、次いで金属Caを添加して成分濃度の調整を行った。なお、O濃度の制御は、酸素ガスの上吹きによりO濃度を上昇させた後、Cによる脱酸またはAlによる脱酸処理を行ってO濃度を低減させ、目標値とする方法により行った。溶鋼の成分組成を調整後、内径16mm、長さ200mmの耐火物性鋳造用ノズルを介して鋳型内に鋳造し、インゴットを作成した。
得られたインゴットは、1000℃にて2時間の均熱処理後、熱間プレスにて厚さ25mm、幅60mmの板材に鍛伸し、試験素材とした。その後、この試験素材を820℃にて1時間の均熱後、油焼入れした後、550℃にて1時間保持し空冷する焼戻し処理を行って、供試材とした。供試材から鍛伸方向と直角方向に、JIS Z 2202で規定されるシャルピー衝撃試験片(10mm×10mm×55mm、深さ2mmのVノッチ付き)を採取し、試験温度20℃にて、シャルピー衝撃試験を行って、衝撃吸収エネルギーを評価した。また、別途切り出したサンプル中の介在物についてSEMによる観察およびEPMAによる成分組成の定量を行うとともに、鋳造ノズルの内面を観察し、付着物の有無を調査確認した。
(試験結果)
表4に、試験条件として、鋼中のP、S、O、NdおよびCa濃度、(1)式により算出されるA値、(2)式におけるNd濃度の下限値および上限値、(2)式の満足性、(3)式におけるCa濃度の下限値および上限値、ならびに(3)式の満足性を示した。
また、表5には、試験結果として、Ca−P系介在物およびNd−P系介在物生成の有無、衝撃吸収エネルギー、ならびに鋳造ノズル内の付着物の有無を示した。
Figure 0004656007
Figure 0004656007
試験番号1〜8は、前記(1)〜(3)式により表される関係を全て満足する本発明例についての試験である。これに対して、比較例1の試験番号9〜15は、Nd濃度の適正範囲を規定した(1)式および(2)式の関係は満足するものの、Ca濃度の適正範囲を規定した(3)式の関係を満足しない試験であり、また、比較例2の試験番号16〜23は、Nd濃度の適正範囲を規定した(1)式および(2)式の関係も、Ca濃度の適正範囲を規定した(3)式の関係をも満足しない試験である。また、比較例3の試験番号24は、予め極低燐レベルまでP濃度を低下させたがNdを添加しなかった試験である。
鋼中のNd濃度を本発明で規定する(1)式および(2)式の関係を満たすように添加調整した後、Ca濃度を同(3)式の関係を満足するように制御した本発明例についての試験である試験番号1〜8では、Ca−P系介在物およびNd−P系介在物がともに生成し、衝撃吸収エネルギーの高い極めて衝撃特性の良好な鋼材が得られた。さらに、鋳造後のノズル内面の調査結果によれば、付着物の生成が全く認められず、鋳造性にも優れた方法であることが確認された。これは、溶解P濃度の効率的低減効果に加えて、溶鋼中におけるCa−P系介在物の生成によるノズル閉塞防止効果が発揮されたことによる。
これに対して、Nd濃度の適正範囲を規定した(1)式および(2)式の関係は満足するものの、Ca濃度の適正範囲を規定した(3)式の関係を満足しない比較例1の試験である試験番号9〜15では、Ca−P系介在物またはNd−P系介在物のいずれか一方の介在物しか生成せず、得られた鋼材の衝撃吸収エネルギーは、本発明例である試験番号1〜8に比較して低くなっている。また、Nd−P系介在物しか生成していない試験番号9、11および14では、ノズル内に付着物が認められ、鋳造性が劣る結果となった。
比較例2の試験のうち、Nd濃度が(1)式および(2)式で規定される濃度範囲よりも低く、Ca濃度も(3)式で規定される濃度範囲を外れる試験番号16〜19では、Nd−P系介在物およびCa−P系介在物のいずれの介在物も生成せず、得られた鋼材の衝撃吸収エネルギーは著しく低くなっている。
さらに、比較例2の試験のうち、試験番号20〜23では、Nd−P系介在物は生成されたものの、Nd濃度が(2)式で規定される濃度範囲の上限を超えていることから、鋼の清浄度が悪化し、その結果、比較例1の場合よりも衝撃吸収エネルギーが低くなっている。また、試験番号20〜23ではノズル内に付着物が生成した。
本発明例を比較例3の試験番号24と比較すると、本発明例では、予めP濃度を極低レベルまで低減した試験番号24よりも高い鋼材の衝撃吸収エネルギーが得られており、高いコストをかけて徹底した脱燐処理を行うよりも、本発明の方法を用いて溶鉄を処理する方が安価にして高性能の鋼材を供給できることがわかる。
以上の試験結果から、本発明の溶鉄の処理方法を用いることにより、連続鋳造性に優れ、かつ、固溶P濃度を大幅に低減した鋼材を高い生産性のもとに製造できることか確認された。
本発明の溶鉄の処理方法によれば、溶鉄中のP、SおよびO濃度に応じて溶鉄中のNd濃度を制御した後、Nd濃度に応じて溶鉄中のCa濃度を制御することにより、低いNd濃度のもとに溶鉄中にCa−P系介在物およびNd−P系介在物を効率よく生成させて溶解P濃度ひいては製品中の固溶P濃度を効果的に低減することができるので、Pによる鋼品質の阻害作用を従来にない極めて低い水準にまで低減することができる。また、本発明の方法は、溶鉄中にCa系介在物を生成させるので、鋳造用ノズルの閉塞防止効果を有する連続鋳造性に優れた溶鉄を製造できる。したがって、本発明の方法は、高い生産性のもとに溶解P濃度を低減し、かつ、連続鋳造性の良好な溶鉄を精錬供給できる溶鉄の処理方法として製鋼技術分野において広範に適用できる。
溶鉄中のCa濃度と溶鉄から採取した急冷サンプル中に存在した介在物中のCaO濃度との関係を示す図である。 溶解Nd濃度([Nd]−A)と溶解Ca濃度(B)との関係を示す図である。 Ca−P系介在物の生成の有無に及ぼす溶鉄中Ca濃度ならびに(1)式および(2)式の関係を満足するNd濃度の影響を示す図である。 Ca−P系介在物およびNd−P系介在物の生成の有無に及ぼす溶鉄中Ca濃度ならびに(1)式および(2)式の関係を満足するNd濃度の影響を示す図である。 シャルピー衝撃試験温度と衝撃吸収エネルギーとの関係を示す図である。

Claims (1)

  1. 質量%で、P:0.0001%以上0.5%以下、S:0.005%以下、およびO(酸素):0.005%以下を含有する溶鉄にNdを添加した後に、Caを添加する溶鉄の処理方法であって、溶鉄中のP濃度、S濃度およびO濃度に応じて下記(1)式および(2)式により表される関係を満足するように溶鉄中のNd濃度を制御した後、溶鉄にCaを添加して、溶鉄中のNd濃度に応じて下記(3)式により表される関係を満足するように溶鉄中のCa濃度を制御することを特徴とする溶鉄の処理方法。
    A=0.24[P]+0.82[S]+0.85[O] ・・・・(1)
    A+0.005≦[Nd]≦A+0.03 ・・・・(2)
    1.2×10-2×[Nd]2/3≦[Ca]≦1.6×10-2×[Nd]2/3+0.0015 ・・・・(3)
    ここで、[P]、[S]、[O]、[Nd]および[Ca]は、溶鉄中における各元素
    の濃度(質量%)を表す。
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