JP4609325B2 - 溶鉄のNd添加による処理方法 - Google Patents
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Description
なお、以下の説明において、鋼の成分組成表示における「%」の記載は、「質量%」を意味する。
1)溶鉄およびスラグ成分組成の適正範囲
1)−1 溶鉄の成分組成の適正範囲
P:0.0001%以上0.5%以下
Pは、鋼材の高温延性、耐食性、溶接性などの特性を悪化させる不純物元素であり、その濃度は低いほど好ましい。しかし、現実には、材料特性などの面から固溶P濃度が0.0001%未満においてさらに溶解P濃度の低減を必要とすることは殆どないことから、対象とするP濃度を0.0001%以上とした。一方、P濃度が0.5%を超えて高い場合には、本発明の方法を用いなくても、通常の脱燐処理により0.5%まで容易に低下させることができる。そこで、P濃度の適正範囲を0.0001%以上0.5%以下とした。
酸素(以下、単に「O」とも記す)は、溶鉄中において、PとNdとの親和力よりもNdとの強い親和力を有すると考えられる元素である。O濃度が0.005%を超えて高くなると、NdPの生成に優先して生成されるNd酸化物の生成量が多くなり、NdPの生成が抑制される。そこで、O濃度の適正範囲を0.005%以下とした。
硫黄(以下、単に「S」とも記す)は、溶鉄中において、PとNdとの親和力よりもNdとの強い親和力を有すると考えられる元素である。S濃度が0.005%を超えて高くなると、NdPの生成に優先して生成されるNd硫化物の生成量が多くなり、NdPの生成が抑制される。そこで、S濃度の適正範囲を0.005%以下とした。
スラグ中のCaOとAl2O3の質量濃度比である(CaO/Al2O3)の値を0.7以上9以下とし、CaOとSiO2の質量濃度比である(CaO/SiO2)の値を0.65以上とすることにより、再現性良くNdP化合物(介在物)が生成することが判明したので、スラグ成分組成の適正範囲を上記のとおり規定した。下記にその理由の詳細を説明する。
本発明者らは、先に特許文献2において、溶鉄中のPとNdとの反応によるNdP介在物の生成反応を起こさせるためには、溶鉄中のNd濃度:[Nd]と溶鉄中のP濃度:[P]との間に、下記(2)式により表される関係を満足させる必要があり、さらに、介在物の粗大化を抑止するためには、下記(3)式により表される関係を満足させる必要のあることを開示した。
4.8×10-5/[P]≦[Nd]≦9.6×10-3/[P] ・・・・(3)
一方、NdP介在物の生成反応に及ぼす酸素および硫黄の影響については全く知られていない。そこで、下記のとおりの推定を行い、その影響を評価することとした。
この比、すなわちNdP生成効率支配因子Aの値(以下、「A値」とも記す)には最適値あるいは適正範囲が存在すると考えられる。A値を物質収支に基づいて算出することも考えられるが、現実には物質収支から最適範囲を推定するのは難しい。その理由は、生成する介在物はNd−P−O−S系の複合介在物であり、介在物内の酸化物、燐化物および硫化物の活量が1ではないことから、各成分の活量が既知であることを前提とする物質収支に基づく計算は困難だからである。そこで、後述するとおり、実験によりA値の適正範囲を求めることとした。
C:0.0015〜3.5%、Si:0.01〜2.5%、Mn:0.2〜3%を含み、前記1)にて述べたP、OおよびSの各成分組成の範囲内で成分濃度を変化させた溶鉄を用いて、NdP生成効率支配因子Aの適正範囲を調査した。なお、スラグについても、前記1)にて示した範囲内の成分組成のものを使用した。
なお、本発明ではNdP介在物と同時にNdS介在物およびNd2O3介在物も生成することから、脱硫および脱酸も同時に行うことができる。
熱間工具鋼SKD61相当鋼を対象として、下記の試験を行い、介在物の制御効果を調査した。表1に示す化学成分組成を有する5種類の鋼を真空高周波誘導溶解炉を用いて20kg溶製し、インゴットを作製した。
本発明において、溶鉄中のNd濃度を溶鉄中のP濃度、O(酸素)濃度およびS濃度に応じて、前記(1)式により表される関係を満足するように制御する具体的方法について下記に説明する。
2)−1 溶鉄の好ましい成分組成範囲
本発明の方法は、前記のとおり、S濃度が0.005%以下、およびO濃度が0.005%以下の溶鉄を対象としているが、好ましくは、Nd添加前におけるS濃度を0.0025%以下、およびO濃度を0.0030%以下とすることにより、Nd添加量をさらに低減することができる。
Nd、P、SおよびO以外の溶鉄成分であってこれらの成分組成に影響を及ぼさない合金成分については、Nd添加後にそれらの成分調整を行ってもよい。
CおよびSiは、その濃度が高いと、鋼中におけるPの活量を高める作用を有する元素である。C濃度が3.5%を超えて高いと、Pの活量に与える影響が顕著となり、P化合物の生成条件が変化するおそれがあることから、C濃度は3.5%以下であることが好ましい。同様の理由により、Si濃度は2.5%以下であることが好ましい。
Mnは、その濃度が高いと鋼中におけるPの活量を低下させる作用を有する元素である。Mn濃度が3%を超えて高いと、Pの活量が著しく低下するため、P化合物の生成が困難となるおそれがある。したがって、Mn濃度は3%以下であることが好ましい。なお、Mn濃度は、鋼材強度を確保する観点から、0.2%以上の範囲であることがさらに好ましい。
Alは、鋼中の溶解酸素との平衡関係から、溶解酸素濃度に極めて大きな影響を及ぼす。Al濃度が3%を超えて高くなると、平衡溶解酸素濃度が急激に高くなり、アルミナ系酸化物介在物が増加して鋼の清浄性が悪化するおそれがあることから、Al濃度は3%以下であることが好ましい。また、Al濃度は、Ndの歩留まり向上およびその安定性確保の観点から、0.0035%以上の範囲であることがさらに好ましい。
溶鉄中のN濃度は0.0075%以下とすることが好ましい。N濃度が上記の濃度を超えて高くなると、Nが、添加したNdと反応してNdが消費されることから、前記(1)式の関係が満足されるだけでは、溶解P濃度の十分な低減効果が得られなくなるおそれがある。なお、N濃度は、低ければ低いほど好ましいが、生産性の確保およびコスト低減の観点から、0.0015%以上の範囲であることが好ましい。
スラグの成分組成は、本発明で規定する条件を満足する必要があるが、(CaO/Al2O3)の値は1以上2以下であることが好ましい。その理由は、スラグの液相率(全スラグに占める液相スラグの存在分率)が高くなることにより反応性がさらに安定化するとともに、介在物の吸収能が増加するからである。また、(CaO/SiO2)の値は、高くなりすぎるとスラグの液相率が低下しすぎるおそれがあるため、6以下とすることが好ましい。スラグ中のT.Fe濃度とMnO濃度との合計であるスラグ中の低級酸化物の濃度は10%以下であることが好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。スラグ中の低級酸化物の濃度が低いほど、Ndの酸化ロス量が低減し、Ndの歩留まりが向上するからである。
C:0.07〜0.5%、Si:0.1〜0.7%、Mn:0.1〜0.3%、Cr:0.05〜5%なる成分組成を有する鋼180kgを真空高周波誘導溶解炉により溶解し、鋼中のS、O、PおよびNd濃度を変化させたインゴットを作製した。溶解に際しては、CaO−Al2O3−SiO2系スラグを360g用い、スラグ中の(CaO/Al2O3)および(CaO/SiO2)の値は、本発明で規定する範囲内の値に制御した。溶解温度は1600℃とし、鋼中のO、SおよびPの順に濃度調整を行った後に、金属Ndを添加してNd濃度を調整した。酸素濃度の調整は、酸素ガスの上吹きにより酸素濃度を上昇させた後、Cによる脱酸またはAlによる脱酸により酸素濃度を低減させる方法により、実施した。
試験条件および試験結果を表3に示した。
Claims (1)
- 質量%で、P:0.0001%以上0.5%以下、O(酸素):0.005%以下、S:0.005%以下を含有する溶鉄にNdを添加して、溶鉄中のNd濃度を0.001%以上1%以下とするに際し、スラグ中のCaOとAl2O3の質量濃度比である(CaO/Al2O3)の値を0.7以上9以下、およびスラグ中のCaOとSiO2の質量濃度比である(CaO/SiO2)の値を0.65以上とすることによって酸素活量を制御し、かつ、溶鉄中のNd濃度である[Nd](質量%)を、溶鉄中のP濃度である[P](質量%)、溶鉄中のO濃度である[O](質量%)および溶鉄中のS濃度である[S](質量%)に応じて、下記(1)式により表される関係を満足するように制御することを特徴とする溶鉄の処理方法。
0.2<{[Nd]−0.8([S]+[O])}/(0.8[P])<20・・・(1)
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