JP6981589B1 - 高清浄度鋼の製造方法 - Google Patents

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Abstract

Description

本発明は、酸化物系非金属介在物量が少ない鋼、すなわち高清浄度鋼の製造方法に関するものである。
軸受け鋼に代表されるように、優れた転動疲労寿命や静粛性が求められる鋼材においては、鋼中の非金属介在物を極力低減することが必要である。鋼中の非金属介在物は、脱酸時に生成する酸化物系脱酸生成物、スラグ又は耐火物の巻き込みによる生成物、及び鋼中合金元素の炭・窒・硫化物が挙げられる。
溶鋼に対してAl脱酸を行って軸受け鋼など鋼製品を製造する場合、脱酸直後の介在物は基本的にAl23系である。しかし、Al23系が、例えば溶鋼中に懸濁したスラグ由来のCaO系介在物と凝集合体を形成してCaO−Al23系介在物となったり、溶鋼中のAlがスラグ又は耐火物中のMgOと反応して鋼中にMgが生成し、これが鋼中のAl23系介在物と反応することでMgO−Al23系介在物が形成されたりすることが知られている。中でも、MgO−Al23系介在物は硬質であり、転動疲労寿命に及ぼす影響が大きいため、その低減は重要な課題である。そのため、スラグ又は耐火物中のMgOの還元を抑制するために、脱酸剤であるAlの添加態様を適切にすることが重要である。
このような高清浄度鋼の製造における脱酸剤であるAlの添加態様に関して、以下の技術が知られている。特許文献1には、取鍋精錬工程において、Al以外でかつSiを含有する脱酸剤によって脱酸を行い、次いで溶鋼中の溶存酸素量が30ppm以下となった時点で、溶鋼中のAlが0.010%未満を満足するAl量を含有する脱酸剤により脱酸する方法が記載されている。特許文献2には、取鍋精錬工程の加熱撹拌処理中に、溶鋼にアルミニウムを添加しないか、又は、添加する場合は溶鋼のアルミニウム濃度を0.003質量%以下とする方法が記載されている。特許文献3には、取鍋精錬工程において、Al未添加の溶鋼にCaO、SiO2、Al23、およびMgOを含むフラックスを添加して精錬を行い、40〜80分の全処理時間内における精錬途中にてAlを溶鋼中に添加し、その後30分以内に処理を終える方法が記載されている。
特開2009−74151号公報 特開2012−132094号公報 特開2018−141221号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。すなわち、特許文献1では、溶鋼中の溶存酸素量が30ppm以下となった時点で、溶鋼中のAlが0.010%未満を満足するAl量を含有する脱酸剤により脱酸すると規定しているが、Al濃度が低くともAl添加後の処理時間が長くなれば、スラグ又は耐火物中のMgOが還元されて生成したMgがAl23系介在物と反応することで、MgO−Al23系介在物の生成が懸念される。
特許文献2では、加熱撹拌処理中に、溶鋼にAlを添加しないか、添加する場合には溶鋼のAl濃度を0.003質量%以下とすると規定しているが、Alを添加せずとも処理時間が長くなれば、スラグ中から還元されたAlがスラグ又は耐火物中のMgOを還元するようになり、MgO−Al23系介在物が生成する可能性がある。また、添加するAl濃度が0.003質量%以下と低くとも、特許文献1と同様に、Al添加時期に対して具体的に言及されておらず、加熱処理の時間や、Al添加後の時間が長くなれば、MgO−Al23系介在物の生成は十分に起こり得る。
特許文献3では、スラグ中のMgOの還元防止のため、取鍋精錬中におけるAl添加後の処理時間を30分以内と規定しているが、本発明者らの検討によると、Al添加後の処理時間が30分以内であっても、スラグ中MgOの還元を抑制して、MgO−Al23系介在物の生成を抑制する効果に関して、さらに改善の余地があることが判明した。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、MgO−Al23系介在物の生成をより十分に抑制し、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼の製造方法を提供することを目的とする。
Figure 0006981589
Figure 0006981589
[2]前記式(2)右辺の5パラメータの値を取得し、
取得した前記5パラメータの値を前記式(2)に代入して、前記式(2)を満たすように前記時間t(分)を決定し、
決定した前記時間tの条件下で前記取鍋精錬工程を終了する、上記[1]に記載の高清浄度鋼の製造方法。
Figure 0006981589
[4]前記取鍋精錬工程の全処理時間が50〜100分であり、当該全処理時間の40〜70%が前記第1の期間であり、残りの時間が前記第2の期間である、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[5]前記取鍋精錬工程中のスラグ組成が、
3.0≦CaO/SiO2≦12.0
1.0≦CaO/Al23≦3.0
MgO≦8.0質量%
T.Fe+MnO≦1.5質量%
を満たす、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[6]前記取鍋精錬工程中のスラグ組成が、
3.0≦CaO/SiO2≦6.0
1.5≦CaO/Al23≦2.5
をさらに満たす、上記[5]に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[7]前記真空脱ガス装置内での精錬を、真空度10torr以下で20分以上行う、上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[8]前記溶鋼は、前記転炉又は前記電気炉より出鋼した段階で炭素濃度が0.30質量%以上である、上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
本発明によれば、MgO−Al23系介在物の生成をより十分に抑制し、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼を製造することが可能となる。
本発明者らは、軸受け鋼に代表される高清浄度鋼の疲労寿命調査試験を種々実施した。疲労試験時に発生した割れ部を観察すると、その起点にMgO−Al23系介在物の存在が確認された。さらに調査の結果、MgO−Al23系介在物は硬質であり、母相である鋼と変形能が異なるため、介在物の周囲に空隙が生じやすく、亀裂が発生しやすいことが分かった。MgO濃度が10質量%以上のMgO−Al23介在物が有害であり、特に、MgO濃度が20質量%を超えるMgO−Al23介在物は、スピネル構造を有した硬質の介在物となるため、少なくとも介在物中の平均MgO濃度が10質量%を下回るように制御することが、疲労寿命を向上させる上で重要となる。
次に、MgO−Al23系介在物の生成機構は式(3)式及び式(4)による。つまり、積極的なスラグ精錬が実施される取鍋精錬において、スラグ又は耐火物中のMgOが溶鋼中のAlにより還元され、溶鋼中に生成した溶存MgがAl23系介在物と反応することで、MgO−Al23系の介在物が生成する。
3(MgO)+4[Al]=3[Mg]+2(Al23) ・・・(3)
3[Mg]+4(Al23)=3(MgO・Al23)+2[Al] ・・・(4)
ここで、()内の酸化物は、スラグ中、耐火物中又は介在物中の酸化物であり、[]の成分は溶鋼中の溶存成分である。これらの反応を右側へ進行させない、つまりMgO−Al23系介在物を生成させないためには、式(3)に示した溶鋼中Alとスラグ又は耐火物中のMgOとを極力反応させないこと、つまりAlを取鍋精錬の初期から添加せず、添加時期を適切に制御し、MgOとの反応時間を極力短くすることが、溶鋼中への溶存Mgの生成、さらにはMgO−Al23系介在物生成の抑制に有効であると考えられる。
また、本発明者らは溶鋼の撹拌動力に着目した。取鍋精錬においては、鍋底よりガス撹拌を実施しつつ、アーク加熱を行うことで、フラックスや合金の添加による溶鋼成分調整や、溶鋼温度の調整を行う。さらに、溶鋼に付与される撹拌動力は、介在物の凝集合体の形成や、介在物の浮上分離に影響を与えるとともに、介在物の組成変化にも影響を与えるものと考えられる。本発明者らは、取鍋精錬工程の初期段階では撹拌動力を比較的高く設定して、フラックス添加後の造滓を促進し、その後撹拌動力を低く変更して、スラグの巻き込みを抑制しつつ、Al添加後のスラグ中MgOの還元を抑制することが有効であることを見出した。
その上で、Alの添加から取鍋精錬工程の終了までの時間が、(I)溶鋼の体積、(II)溶鋼/スラグ反応界面積、(III)溶鋼の撹拌動力、(IV)Al添加後における溶鋼中の酸素活量、及び(V)撹拌動力を低下した時点におけるスラグ中のMgO活量の5パラメータに基づいて決定される所定の上限値よりも短くなることが、MgO−Al23系介在物生成の抑制と、介在物中の平均MgO濃度の低下に有効であることを、本発明者らは見出した。
Figure 0006981589
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以下、Al添加から取鍋精錬工程の終了までの時間を上記のとおり定めた理由を説明する。取鍋精錬は、まず溶鋼にフラックスを添加し、その後、加熱処理を行いながら造滓し、スラグ精錬を行うことが特徴である。このとき、底吹きガスにより溶鋼を強撹拌することで造滓を促進するが、Alを添加してしまうとスラグとの反応も促進されることとなり、スラグ中MgOが還元されかねない。そのため、取鍋精錬の第1の期間ではAlを溶鋼に未添加のまま処理するのが良い。他方で、取鍋精錬の第2の期間において、溶鋼脱酸反応や脱硫反応を促進させるため、Alを添加する必要がある。しかしながら、Al添加後の時間が長いと、スラグ中MgOの還元が進み、溶鋼中のMg濃度が増加するため、MgO−Al23系介在物の生成が促進される可能性がある。そこで、Al添加後の時間、溶鋼中Mg濃度、及び介在物組成の関係について、溶鋼組成、スラグ組成、及び撹拌条件に着目して、検討した。その結果、溶鋼の撹拌動力が大きいほど、Al添加後短時間でMgO−Al23系介在物生成に至るとの知見を得た。
また、スラグ中MgO活量が高く、溶鋼中酸素活量が低いほど、同様に短時間でMgO−Al23系介在物生成する傾向にあった。さらに、溶鋼/スラグ反応界面積に対する溶鋼体積の比が小さいほど、溶鋼/スラグ間反応速度が大きくなるため、スラグ中MgOの還元が速く、溶鋼中Mg濃度の増加が起こり、MgO−Al23系介在物が短時間で生成する結果であった。これらの種々の検討結果に基づき、Al添加から取鍋精錬工程の終了までの時間t(分)が式(2)を満たす場合に、MgO−Al23系介在物の生成を抑制することができ、式(2)を満たさない場合に、MgO−Al23系介在物が多数生成することが分かった。なお、Alは取鍋精錬の第2の期間の開始時又は途中に添加してもよい。
以上の知見から、本実施形態では、式(2)右辺の5パラメータの値を既述の方法で取得し、取得した5パラメータの値を式(2)に代入して、式(2)を満たすように前記時間t(分)を決定し、決定した時間tの条件下で取鍋精錬工程を終了することが好ましい。これにより、MgO−Al23系介在物の生成をより十分に抑制して、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼を確実に製造することが可能となる。
また、取鍋精錬工程の第1及び第2の期間において、撹拌動力に最適な範囲があることが分かった。第1の期間においては、フラックス添加後に造滓を促進させるために、撹拌動力は55W/tより大きいことが好ましい。撹拌動力が55W/t以下であると、造滓や脱硫反応が進まず、第2の期間においてもスラグ精錬不良が起こり得る。他方で、撹拌動力を増加し過ぎても、造滓促進の効果は頭打ちとなることや、過剰にスラグを溶鋼中へ巻き込むことになる。このため、第1の期間において、撹拌動力は105W/t以下であることが好ましい。第2の期間においては、溶鋼脱硫促進のため、撹拌動力は25W/t以上であることが好ましい。また、撹拌動力が過大の場合、スラグの巻き込みが起こるとともに、Al添加後にスラグ中MgOの還元が進みMgO−Al23系介在物の生成が促進されてしまう。このため、第2の期間において、撹拌動力は55W/t以下とするのが好ましい。
取鍋精錬工程の全処理時間は50〜100分であり、当該全処理時間の40〜70%が第1の期間であり、残りの時間が第2の期間であることが好ましい。まず溶鋼にフラックスを添加し、その後、底吹きガスの導入を開始し、その後、通電を開始する。本明細書では、底吹きガスの導入開始時点で取鍋精錬工程(すなわち第1の期間)が開始するものとする。また、取鍋精錬の末期では、まず通電を停止し、その後底吹きガスを停止する。本明細書では、底吹きガスの停止時点で取鍋精錬工程(すなわち第2の期間)が終了するものとする。よって、ここで定める「全処理時間」とは、取鍋精錬における底吹きガスの導入開始から、底吹きガスを停止するまでの時間である。取鍋精錬の全処理時間が50分より短いと、スラグ滓化・スラグ精錬の時間が確保できず、脱硫や脱酸が不十分である。他方、取鍋精錬の全処理時間が100分より長くなると、鋼中酸素の低減は頭打ちとなり、むしろ操業コストがかさむことになる。加えて、処理時間が長くなると、溶鋼中のSiや電極のCによりスラグ中のAl23が還元され、溶鋼中のAlが増加し、そのAlがスラグ中のMgOを還元し、脱酸生成物のAl23と反応してMgO−Al23系介在物の生成に至る。全処理時間のうち第1の期間の割合が40%未満の場合、スラグ滓化不良が起こり、脱硫などのスラグ精錬が不十分となる。他方、全処理時間のうち第1の期間の割合が70%超えの場合、スラグの巻き込みが著しく増えるため、後工程の真空脱ガスプロセスでスラグを除去するのが難しくなる。
さらに、取鍋精錬工程におけるスラグ組成にも適正範囲があることが分かった。CaO/SiO2が3.0より小さくなると、スラグがAl添加後の溶鋼に対して再酸化源となり得るとともに、脱硫不良が起こり得る。他方、CaO/SiO2が12.0より大きいと、スラグ中MgO活量が大きくなり、溶鋼中にMgが生成しやすくなる。したがって、取鍋精錬工程中におけるスラグのCaO/SiO2は3.0以上12.0以下の範囲で制御することが好ましく、3.0以上8.0以下であることがより好ましく、3.0以上6.0以下であることがさらに好ましい。
CaO/Al23が1.0より小さくなると、スラグ粘度が高くなり電極に付着することで加熱阻害の要因となることや、Al23系介在物の吸収能が低下して清浄性を悪化させる懸念がある。また、CaO/Al23が3.0より大きくなると、スラグ中MgO活量の増加、およびスラグ中Al23活量の減少により、式(3)に示したような溶鋼中Alによるスラグ中MgOの還元が起こり易くなり、MgO−Al23系介在物生成の要因となる。従って、取鍋精錬工程中におけるCaO/Al23は1.0以上3.0以下の範囲で制御することが好ましく、1.5以上2.5以下であることがより好ましい。
MgO濃度が8.0質量%より高くなると、式(3)に示す溶鋼中Alによるスラグ中MgOの還元が起こりやすくなり、MgO−Al23系介在物生成の要因となる。したがって、取鍋精錬工程中におけるMgO濃度は8.0質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。MgO濃度は低いほど望ましいため、下限は特に設けない。すなわち、MgO濃度は0.0質量%以上とすることができる。
T.Fe濃度とMnO濃度の合計値が1.5質量%より高いと、溶鋼に酸素が供給され介在物が生成するため、溶鋼を汚染する原因となり、清浄性が著しく悪化する。したがって、取鍋精錬工程中におけるT.Fe濃度とMnO濃度の合計値は、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。当該合計値は低いほど望ましいため、下限は特に設けない。すなわち、当該合計値は0.0質量%以上とすることができる。なお、スラグ中のMnOは、フラックス原料の不純物として混入したり、溶鋼中Mnが酸化したりすることにより生成する。
さらに、取鍋精錬後の真空脱ガス装置を用いた精錬工程において、高清浄度鋼を得るには真空度と処理時間に関係があることが分かった。取鍋精錬の第2の期間においてAlを添加することから、続く真空脱ガス装置を用いた精錬工程において、除去しきれなかった介在物を速やかに除去する必要がある。真空槽内の圧力が10torr以下のとき、十分な溶鋼撹拌力が得られるため、介在物の浮上分離を効率的に実施することができる。一方で、その時間が短時間であると鋼製品において有害である比較的粗大な介在物を除去しきれない。このため、10torr以下の高真空操業を20分以上実施するのが好ましい。さらに、5torr以下で40分以上処理するのがより好ましい。真空度は高ければ高いほど望ましいため、真空槽内の圧力の下限は設けないが、真空槽内の圧力が0.1torr未満の場合、真空度を高くすることの効果が飽和する傾向にあるため、当該圧力は0.1torr以上とすることが好ましい。処理時間についても特に上限を設けないが、処理コストや温度降下の観点から、処理時間は60分以下であることが好ましい。このとき、真空脱ガス処理について、RHプロセスやVODプロセス等の真空処理機能を有したものであれば、本発明に記載の効果が得られる。
本発明は高清浄度鋼全般に適用可能であるが、特に、転炉又は電気炉より出鋼した段階で炭素を0.30質量%以上含む鋼に適用することが望ましい。本発明では前述したように、取鍋精錬の最中にAlを添加し脱酸を行うが、Al添加前の酸素は予め下げておくことが清浄度鋼の溶製には効果的である。つまり、Cを0.30質量%以上含有することで、Cによる予備脱酸効果が期待でき、Al脱酸後の生成介在物量を最小化することができる。転炉又は電気炉より出鋼した段階でのC量の上限は特に限定されないが、取鍋精錬以降は基本的に脱炭処理を行うことが難しいため、製品成分規格におさめるため、当該C量は1.00質量%以下であることが好ましい。
以上の本発明により、製品段階で平均径が3μm以上の酸化物系介在物個数が70個/1000mm2以下の高清浄度鋼を得ることができる。
1チャージの溶鋼量が約200トンの規模の実機にて、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス炉−連続鋳造の工程で高清浄度鋼の代表として挙げられる軸受け鋼を製造した。軸受け鋼の成分組成は、炭素濃度0.90質量%以上1.10質量%以下、ケイ素濃度0.15質量%以上0.25質量%以下、マンガン濃度0.45質量%以下、リン濃度0.020質量%以下、イオウ濃度0.0050質量%以下、アルミニウム濃度0.030質量%以下、クロム濃度1.4質量%以上1.7質量%以下、窒素濃度0.0050質量%以下、残部は鉄及び不可避的不純物である。
取鍋精錬工程は、既述の式(1)で計算される溶鋼の撹拌動力が表1に示す値である第1の期間と、これに続き、同撹拌動力が表1に示す値である第2の期間とからなるものとし、溶鋼をアーク放電で加熱しつつ溶鋼内にガスを導入する加熱撹拌処理を含む精錬を行った。なお、撹拌動力はArガスの流量で制御した。第1の期間及び第2の期間の処理時間も表1に示した。第1の期間は、溶鋼にCaO、SiO2、Al23、及びMgOを含むフラックスが添加され、前記溶鋼と接触してスラグが存在する状態で行われ、第2の期間の開始時又は途中で溶鋼にAlを添加した。そして、第2の期間におけるAlの添加から取鍋精錬工程の終了までの時間tを表1に示すように種々変更した。なお、式(2)右辺の5パラメータの値と、これらから計算した式(2)右辺の値も表1に示した。また、各水準にて添加フラックス組成を変化させることで、取鍋精錬工程中におけるスラグ組成を表2に示すように種々変更した。その後、真空度10torr以下の処理時間を表2に示すようにしたRH真空脱ガス処理を経て、連続鋳造によりブルーム鋳片(300×400mm断面)を製造した。
ブルーム鋳片に対して、熱処理を施した後、直径215mmのビレットに圧延した。このビレットをさらに熱間圧延により直径60mmの棒鋼とし、焼鈍処理を経て、製品丸棒とした。この製品丸棒の1/4厚部における圧延方向の縦断面を、検鏡法により観察した。被検面積は3000mm2とした。検鏡法での介在物測定と併せて、SEM(走査型電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)により介在物組成を特定し、MgO−Al23系介在物の個数を測定して、清浄度を評価した。長さと幅の積の1/2乗で計算される平均径が3μm以上のMgO−Al23系介在物の個数と10μm以上のMgO−Al23系介在物の個数(1000mm2あたり)、および介在物の平均MgO濃度を表3に示す。ここで、「平均MgO濃度」とは、検出した介在物のMgO濃度を検出個数により平均化した値である。
更に、製品寿命評価のため転動疲労寿命試験を実施した。試験は上記製品丸棒を輪切りにして円盤に粗加工し、通常の焼入れ及び低温焼戻しの熱処理を施した後に、表面を機械仕上げ加工して試験片を製作した。この試験片を用いて転動疲労寿命試験を行った。この転動疲労寿命試験には森式スラスト型転動疲労試験機を用い、ヘルツ最大接触応力:5260MPa、繰り返し応力数:30Hz、潤滑油:#68タービン油の条件で行った。試験は、試験片が剥離するまでの負荷回数を測定し、その試験結果がワイブル分布に従うものとして、試験片数の10%が疲労破壊する寿命(B10寿命)をワイブル確率紙により求めた。結果を表3に示す。
Figure 0006981589
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本発明例においては、3μm以上のMgO−Al23系介在物個数は26〜62個/1000mm2、10μm以上のMgO−Al23系介在物個数は0.3〜1.3個/1000mm2と低位であり、B10寿命は8.0〜10.8×107回と高位であった。一方、比較例においては、3μm以上のMgO−Al23系介在物個数は75〜99個/1000mm2、10μm以上のMgO−Al23系介在物個数は1.4〜1.9個/1000mm2と高位であり、B10寿命は4.4〜6.9×107回と低位であった。
本発明によれば、MgO−Al23系介在物の生成をより十分に抑制し、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼を製造することが可能となる。

Claims (8)

  1. Figure 0006981589
    Figure 0006981589
  2. 前記式(2)右辺の5パラメータの値を取得し、
    取得した前記5パラメータの値を前記式(2)に代入して、前記式(2)を満たすように前記時間t(分)を決定し、
    決定した前記時間tの条件下で前記取鍋精錬工程を終了する、請求項1に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  3. Figure 0006981589
  4. 前記取鍋精錬工程の全処理時間が50〜100分であり、当該全処理時間の40〜70%が前記第1の期間であり、残りの時間が前記第2の期間である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  5. 前記取鍋精錬工程中のスラグ組成が、
    3.0≦CaO/SiO2≦12.0
    1.0≦CaO/Al23≦3.0
    MgO≦8.0質量%
    T.Fe+MnO≦1.5質量%
    を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  6. 前記取鍋精錬工程中のスラグ組成が、
    3.0≦CaO/SiO2≦6.0
    1.5≦CaO/Al23≦2.5
    をさらに満たす、請求項5に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  7. 前記真空脱ガス装置内での精錬を、真空度10torr以下で20分以上行う、請求項1〜6のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  8. 前記溶鋼は、前記転炉又は前記電気炉より出鋼した段階で炭素濃度が0.30質量%以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
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