JP6984803B1 - 高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法 - Google Patents

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Abstract

高疲労強度鋼の素材となる鋳片を安定して製造する方法を提供する。所定の化学成分を有する高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法であって、転炉または電気炉からの出鋼後、取鍋内のスラグを取鍋から除去し、その後、取鍋内に媒溶剤を添加して取鍋内の溶鋼を加熱撹拌処理し、加熱撹拌処理後に真空脱ガス処理を施し、次いで、連続鋳造して高疲労強度鋼の素材となる鋳片を製造するにあたり、加熱撹拌処理の前の溶鋼に含有されるチタン濃度を0.002質量%以下とし、媒溶剤を添加することによって生成される取鍋内スラグの量を10kg/ton以上30kg/ton以下とし、且つ、取鍋内スラグの組成を、比[(質量%CaO)/(質量%SiO2)]が5.0〜12.0、比[(質量%CaO)/(質量%Al2O3)]が1.5〜3.0、MgO含有量が4.0質量%以下、TiO2含有量が1.0質量%以下とする。

Description

本発明は、高い疲労強度を有する高疲労強度鋼の素材である鋳片の製造方法に関する。
軸受鋼などの高い疲労強度を必要とする鋼材は、従来から、高い清浄性が求められている。これは、金属疲労の主原因は鋼中の非金属介在物(以下、単に「介在物」と記す)によるからである。例えば、15μm以上の大きさの介在物が疲労強度に悪影響を及ぼすといわれており、従来から、介在物の「長径×短径」の平方根で整理した[area]1/2と呼ばれる指標が用いられて整理され、[area]1/2と疲労寿命との相関が高いことを示している。
この考えに基づき、鋼中の介在物を低減することを目的として、多数の提案がなされている。例えば、特許文献1には、アーク加熱取鍋精錬設備で昇熱及び成分調整を行なう際に、取鍋内スラグの組成を最適化するとともに、取鍋の溶鋼流出孔に詰める開孔用詰砂を連続鋳造機のタンディッシュ外に排出して、鋼の清浄度を向上させる方法が提案されている。
このような不断の努力によって鋼の清浄性は向上され、鋼製品の介在物を顕微鏡観察によって10mm×10mmの範囲を30視野調査したときに、観測される介在物の[area]1/2を極値統計して得られる予測最大径は20μm以下になってきている。
また、特許文献2には、凝集粗大化して疲労寿命に悪影響を及ぼすAl酸化物に着目し、炭素含有量が0.2質量%以上の溶鋼に、マグネシウム合金を添加し、溶鋼中のAlをAl−MgOに変化させ、介在物の粗大化を抑制する方法が提案されている。
更に特許文献3には、高い疲労強度を有する軸受材料として、被検面積が3000mmである場合に、[長さ×幅]1/2で算出される介在物平均径が3μm以上である酸化物系介在物及び硫化物含有酸化物系介在物の合計の個数が、1000mmあたり100個以下で、前記平均径が10μm以上の酸化物系介在物及び硫化物含有酸化物系介在物の合計の個数が、1000mmあたり2個以下で、且つ、前記平均径が3μm以上の酸化物系介在物及び硫化物含有酸化物系介在物の全体の90%以上は、MgO濃度が5質量%以下である軸受材料を提案している。また、この軸受材料を製造する方法として、加熱撹拌処理中及び加熱撹拌処理後のスラグの組成を、3.0≦(質量%CaO)/(質量%SiO)≦5.0、1.0≦(質量%CaO)/(質量%Al)≦2.0、(質量%MgO)≦3.0質量%、(質量%FeO)+(質量%MnO)≦1.5質量%とすることが提案されている。
特開2009−197285号公報 特開平5−311225号公報 特開2012−132094号公報
しかしながら、近年、需要家の要求は益々厳しくなり、更なる高寿命化が必要になっている。そのため、上記の方法を採用しても、要求を満足する水準に達しない場合が散見されるようになっている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高疲労強度鋼の素材となる鋳片を安定して製造する方法を提供することである。
本発明者らは、鋼製品の疲労強度を向上させるべく、特に疲労寿命低下の原因となる介在物について詳細に調査した。その結果、鋳片の熱間圧延によって伸展した介在物のうちで、内部にAl−MgOの微細介在物を含んでいる介在物は、[area]1/2が仮に20μm以下であっても、疲労寿命に悪影響を及ぼすことを付きとめた。即ち、Al−MgO介在物は、溶鋼中のカルシウム−オキシサルファイド系介在物(Ca(O,S))に複数吸着され、熱間圧延後には伸びて個々のAl−MgO間に隙間ができる。これは、Al−MgO介在物が硬い介在物であるために変形できず、隙間が生ずると考えられる。図1に、Al−MgO介在物を起因として圧延により生成する隙間の例を顕微鏡写真によって示す。
疲労試験時には、Al−MgO介在物により生成する隙間から100μm以上の長い疲労亀裂が発生して疲労寿命に至る。
そこで、介在物の予測最大径を低下させると同時に、Al−MgO介在物を低減させる方法を検討した。その結果、転炉または電気炉から出鋼した溶鋼に対してアーク加熱取鍋精錬設備で実施する加熱撹拌処理工程において、溶鋼と共存する取鍋内スラグの組成を最適化することが重要であることを知見した。特に、Al−MgO介在物のMgO源である取鍋内スラグのMgO含有量を低減することが効果的であることを知見した。更に、本発明者らは、Al−MgO介在物のみならず、TiN介在物も疲労寿命を低下させる原因になる場合があることを知見し、加熱撹拌処理前の溶鋼中のチタン濃度、及びスラグ中のTiO含有量の低減も疲労寿命向上に効果的であることを見出した。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
[1]化学成分組成の炭素濃度が0.6〜1.4質量%、珪素濃度が0.80質量%以下、マンガン濃度が0.2〜0.5質量%、アルミニウム濃度が0.25質量%以下、クロム濃度が1.0〜2.0質量%、モリブデン濃度が0.30質量%以下、燐濃度が0.03質量%以下、硫黄濃度が0.03質量%以下である高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法であって、
転炉または電気炉から取鍋に溶鋼を出鋼し、出鋼後、転炉または電気炉から取鍋内に流出したスラグを取鍋から除去し、その後、取鍋内に媒溶剤を添加して取鍋内の溶鋼に加熱撹拌処理を施し、加熱撹拌処理後、取鍋内の溶鋼に真空脱ガス処理を施し、次いで、真空脱ガス処理によって得られた溶鋼を連続鋳造機で連続鋳造して高疲労強度鋼の素材となる鋳片を製造するにあたり、
前記加熱撹拌処理の前の溶鋼に含有されるチタン濃度を0.002質量%以下とし、
前記媒溶剤を添加することによって生成される取鍋内スラグの量を、取鍋内に収容された溶鋼質量1トンあたり10kg以上30kg以下とし、且つ、
前記媒溶剤を添加することによって生成される取鍋内スラグの組成を、比[(質量%CaO)/(質量%SiO)]が5.0〜12.0、比[(質量%CaO)/(質量%Al)]が1.5〜3.0、MgO含有量が4.0質量%以下、TiO含有量が1.0質量%以下とする、
高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
[2]前記取鍋内スラグの1600℃での粘度を1.3〜2.0poise(0.13〜0.20Pa・s)に調整して前記加熱撹拌処理を施す、上記[1]に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
[3]前記加熱撹拌処理を施した後の溶鋼の窒素含有量は0.014質量%以下である、上記[1]または上記[2]に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
[4]前記加熱撹拌処理において、処理開始から処理中の任意の時刻までの期間を第1期間、前記任意の時刻から処理終了までの期間を第2期間とし、下記の(1)式で算出される溶鋼の撹拌動力εを、前記第1期間では55W/ton超105W/ton以下、前記第2期間では25W/ton以上55W/ton以下として、前記加熱撹拌処理を施す、上記[1]から上記[3]のいずれかに記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
ε=6.18×(Qg×TL/W)×[ln{1+h/(1.46×10-5×P0)}+0.06×(1-298/TL)]……(1)
ここで、(1)式において、εは撹拌動力(W/ton)、Qは撹拌用ガスの流量(Nm/min)、Tは溶鋼温度(K)、Wは溶鋼量(ton)、hは取鍋内溶鋼の浴深さ(m)、Pは雰囲気圧力(Pa)である。
[5]前記第1期間の処理時間を、加熱撹拌処理の総処理時間に対して30%以上60%以下の範囲とする、上記[4]に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
[6]前記高疲労強度鋼の素材となる鋳片は、ISO683−17規格における100Cr6、JIS G4805規格におけるSUJ2、GB規格におけるGCr15、ASTM A295規格における52100及びDIN規格における100Cr6のうちの少なくとも一つの規格で規定された軸受鋼の素材である、上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
[7]前記鋳片の化学成分組成のスズ濃度が0.003質量%以下、ヒ素濃度が0.005質量%以下である、上記[1]から上記[6]のいずれかに記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
本発明によれば、鋼中の介在物量が少ないうえに、Al−MgO介在物の生成が抑制されるので、高寿命の高疲労強度鋼の素材となる鋳片を安定して製造することが実現される。
図1は、Al−MgO介在物を起因として熱間圧延により生成する隙間の例を示す顕微鏡写真である。 図2は、アーク加熱取鍋精錬設備の一例の縦断面模式図である。
以下、本発明に係る高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法を具体的に説明する。先ず、本発明で対象とする高疲労強度鋼の化学成分組成について説明する。
本発明で対象とする高疲労強度鋼の好適な化学成分組成は、炭素濃度が0.6〜1.4質量%、珪素濃度が0.80質量%以下、マンガン濃度が0.2〜0.5質量%、アルミニウム濃度が0.25質量%以下、クロム濃度が1.0〜2.0質量%、モリブデン濃度が0.30質量%以下、燐濃度が0.03質量%以下、硫黄濃度が0.03質量%以下である。以下、その理由をそれぞれの作用とともに説明する。
炭素(C):0.6〜1.4質量%
炭素は、焼入れ性の確保、鋼強度の確保のために、0.6質量%以上含有させることが必要である。一方、1.4質量%を超えて含有させると、粒界強度が低下し、それに伴って疲労強度も低下し、更に、切削性、冷間鍛造性、耐熱割れ性も低下する。したがって、炭素含有量を0.6〜1.4質量%に限定した。好ましくは0.8〜1.2質量%の範囲である。
珪素(Si):0.80質量%以下
珪素は、脱酸剤として機能するだけでなく、鋼強度の向上にも有効に寄与するが、含有量が0.8質量%を超えると、被削性及び鍛造性の低下を招く。したがって、珪素含有量を0.80質量%以下に限定した。尚、鋼強度の向上には、0.05質量%以上含有させることが好ましい。
マンガン(Mn):0.2〜0.5質量%
マンガンは、焼入れ性を向上させ、焼入れ時の硬化層深さを確保して疲労強度を向上させるので、非常に重要な成分であり、このためには、0.2質量%以上含有させる必要がある。一方、マンガン含有量が0.5質量%を超えると疲労強度の低下を招く。したがって、マンガン含有量を0.2〜0.5質量%に限定した。好ましくは0.2〜0.4質量%の範囲である。
アルミニウム(Al):0.25質量%以下
アルミニウムは、脱酸に有効な成分である。また、焼入れ加熱時におけるオーステナイト粒の成長を抑制することによって焼入れ硬化層の粒径を微細化させる上でも有用な成分である。しかしながら、0.25質量%を超えて含有させても、その効果は飽和し、むしろ成分コストの上昇を招く不利が生じるので、アルミニウムは0.25質量%以下の範囲で含有させる必要がある。脱酸のためには0.005質量%以上含有させることが好ましい。望ましくは、0.01〜0.10質量%の範囲である。
クロム(Cr):1.0〜2.0質量%
クロムは、焼入れ性の向上に有効であり、焼入れ硬化深さを確保する上で有用な成分であり、1.0質量%以上含有させる必要がある。しかし、2.0質量%を超えて含有させると、炭化物を安定化させて残留炭化物の生成を助長し、粒界強度を低下させて疲労強度を劣化させる。したがって、クロム含有量を1.0〜2.0質量%の範囲に限定した。
モリブデン(Mo):0.30質量%以下
モリブデンは、焼入れ性を高め、且つ、鋼強度の向上に有効な成分である。しかし、0.30質量%を超えて添加すると、被削性の劣化を招くので、モリブデン含有量を0.30質量%以下に限定した。焼入れ性及び鋼強度の向上には0.05質量%以上含有させることが好ましい。
燐(P):0.03質量%以下
燐は、不純物元素として粒界に偏析し、粒界強度を低下させるので、少ないほど好ましく、したがって、燐含有量を0.03質量%以下に限定した。
硫黄(S):0.03質量%以下
硫黄は、鋼中でMnSを形成し、切削性を向上させる成分であるが、0.03質量%以上を超えて含有させると粒界に偏析して粒界強度を低下させるので、硫黄の含有量を0.03質量%以下に限定した。
また、本発明で対象とする高疲労強度鋼の好適な成分組成としては、上記の元素の他に、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)のいずれか1種または2種以上を、各々0.30質量%以下であれば、含有してもよい。当然ではあるが、これらの元素を含有しなくともよい。
また更に、本発明で対象とする高疲労強度鋼の好適な化学成分組成として、スズ(Sn)を0.003質量%以下、ヒ素(As)を0.005質量%以下とすることが、更に好ましい。スズ及びヒ素の濃度が上記の好適範囲を超えると、熱間割れが生じやすくなり、製品加工時の良品歩留まりが低下するおそれがある。製造工程において利用する鉄スクラップや合金鉄などの副原料のスズ濃度及びヒ素濃度を管理・選別することで、スズ濃度及びヒ素濃度が上限値を超えないように管理することが可能となる。当然ではあるが、これらの元素は含有しなくともよい。
いずれの場合も、上記の成分以外の残部はチタン(Ti)、鉄(Fe)と不可避的不純物である。
チタン(Ti)は、不可避的不純物として分類することもでき、0.002質量%以下であることが必要である。チタンの含有量が0.002質量%を超えると、高疲労強度鋼の窒素含有量が高い場合にはTiN介在物が生成し、このTiN介在物が起点となって疲労寿命を低下させる原因となるためである。
不可避的不純物の代表としては、酸素(O)及び窒素(N)が挙げられる。鋼製品の窒素含有量が0.008質量%以下、酸素含有量が0.008質量%以下であれば材質的に問題はなく、したがって、酸素及び窒素は、前記の範囲であることが好ましい。
上記成分範囲を満足する高疲労強度鋼として、ISO(国際標準化機構)683−17規格で100Cr6として規定された軸受鋼、JIS(日本産業規格)G4805でSUJ2として規定された軸受鋼、GB(中国国家標準規格)でGCr15として規定された軸受鋼、ASTM(米国試験材料協会)A295規格で52100として規定された軸受鋼、及び、DIN(ドイツ規格協会)規格で100Cr6として規定された軸受鋼などが存在する。これらの軸受鋼を本発明に係る高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法を用いて製造することで、転動疲労寿命に優れた軸受鋼を安定して製造することが実現される。
因みに、ISO(国際標準化機構)683−17規格で100Cr6として規定された軸受鋼の成分範囲は、炭素濃度が0.95質量%以上1.10質量%以下、珪素濃度が0.15質量%以上0.35質量%以下、マンガン濃度が0.25質量%以上0.45質量%以下、燐濃度が0.030質量%以下、硫黄濃度が0.025質量%以下、クロム濃度が1.35質量%以上1.65質量%以下である。
また、JIS(日本産業規格)G4805でSUJ2として規定された軸受鋼の成分範囲は、炭素濃度が0.95質量%以上1.10質量%以下、珪素濃度が0.15質量%以上0.35質量%以下、マンガン濃度が0.50質量%以下、燐濃度が0.025質量%以下、硫黄濃度が0.025質量%以下、クロム濃度が1.30質量%以上1.60質量%以下、モリブデン濃度が0.08質量%以下、ニッケル濃度が0.25質量%以下、銅濃度が0.25質量%以下である。
また、GB(中国国家標準規格)でGCr15として規定された軸受鋼の成分範囲は、炭素濃度が0.95質量%以上1.05質量%以下、珪素濃度が0.15質量%以上0.35質量%以下、マンガン濃度が0.25質量%以上0.45質量%以下、燐濃度が0.025質量%以下、硫黄濃度が0.025質量%以下、クロム濃度が1.40質量%以上1.65質量%以下、モリブデン濃度が0.10質量%以下、ニッケル濃度が0.30質量%以下、銅濃度が0.25質量%以下である。
また、ASTM(米国試験材料協会)A295規格で52100として規定された軸受鋼の成分範囲は、炭素濃度が0.98質量%以上1.10質量%以下、珪素濃度が0.15質量%以上0.35質量%以下、マンガン濃度が0.25質量%以上0.45質量%以下、燐濃度が0.025質量%以下、硫黄濃度が0.025質量%以下、クロム濃度が1.30質量%以上1.60質量%以下、モリブデン濃度が0.10質量%以下、ニッケル濃度が0.25質量%以下、銅濃度が0.35質量%以下である。
また更に、DIN(ドイツ規格協会)規格で100Cr6として規定された軸受鋼の成分範囲は、炭素濃度が0.93質量%以上1.05質量%以下、珪素濃度が0.15質量%以上0.35質量%以下、マンガン濃度が0.25質量%以上0.45質量%以下、燐濃度が0.025質量%以下、硫黄濃度が0.015質量%以下、アルミニウム濃度が0.050質量%以下、クロム濃度が1.35質量%以上1.60質量%以下、銅濃度が0.30質量%以下である。
次いで、高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法について説明する。以下、高炉から出銑された溶銑を、転炉で精錬して溶鋼を得て鋳片を製造する場合を例として説明するが、本発明は、鉄スクラップをアーク炉などの電気炉で溶解して精錬し、得られた溶鋼を用いて連続鋳造機で鋳片を製造する場合でも、同様に適用できる。
本発明では、上記化学成分の高疲労強度鋼の素材となる鋳片を製造するにあたり、高炉で溶製された溶銑を転炉で脱炭精錬して溶鋼を溶製し、該溶鋼を転炉から取鍋に出鋼する。出鋼後、転炉から取鍋内に流出した転炉スラグを取鍋から除去(除滓)し、転炉スラグの除滓後に、所定の組成及び粘度のスラグを形成するための媒溶剤を取鍋内に添加し、その後、取鍋内の溶鋼に加熱撹拌処理を施す。加熱撹拌処理後、真空脱ガス処理を施し、次いで、得られた溶鋼を連続鋳造機で連続鋳造して高疲労強度鋼の素材となる鋳片を製造する。この場合に、高炉で溶製された溶銑に対して、転炉で脱炭精錬する前に、脱硫処理や予備脱燐処理を実施してもよい。脱硫処理や予備脱燐処理を実施することで、硫黄濃度及び燐濃度の低い高疲労強度鋼の素材となる鋳片を得ることができる。
化学成分の具体的な調整方法は、次の通りである。転炉からの出鋼時に取鍋内に炭材や、合金鉄、純金属などの合金材を投入し、これらを出鋼流によって溶鋼中に溶解させ、前記加熱撹拌処理工程の前までに、上記化学成分の範囲近傍に調整する。尚、モリブデンについては、転炉にモリブデン源を装入して転炉脱炭精錬でモリブデンの濃度を調整する場合がある。その後の加熱撹拌処理工程及び真空脱ガス処理工程では溶鋼の成分分析結果に基づき、不足する成分を追加投入する程度とする。このようにして成分調整することで、成分外れのリスクを、より少なくしつつ清浄性の高い鋳片を得ることが可能となる。
但し、クロム成分の含有量は高いので、クロム源の投入量が多くなる。このため、出鋼時に全量投入すると、出鋼時の溶鋼温度の低下が大きくなり過ぎ、加熱撹拌処理工程での昇熱負荷が大きくなるので、投入予定量の1/2程度のクロム源は、加熱撹拌処理工程で溶鋼を加熱しながら添加しても構わない。
また、アルミニウムについては、加熱撹拌処理設備の状態により、適宜成分調整方法を決めることができる。例えば、転炉からの出鋼時に金属アルミニウムを添加して前記加熱撹拌処理工程の前までに上記化学成分の範囲近傍に調整してもよいし、転炉からの出鋼時には金属アルミニウムを添加せず、加熱撹拌処理工程で金属アルミニウムを添加して上記化学成分の範囲近傍に調整してもよい。
これは、アルミニウムは特に酸化されやすい元素のため、加熱撹拌処理設備の状態が、溶鋼の酸化がされ易い状態だと、転炉からの出鋼時に添加した金属アルミニウムの大部分が、加熱撹拌処理中に酸化されて酸化物になり、溶鋼の清浄性を損なう場合があるからである。また、後述するように、取鍋内スラグに含有されるMgOは、溶鋼中のアルミニウムで還元されて溶鋼中の溶存マグネシウムとなり、その後、再酸化されてAl−MgO介在物を形成することがある。このような介在物の生成を抑制するべく、アルミニウムの添加時期は、適宜決めればよい。
加熱撹拌処理前の溶鋼のチタン含有量は0.002質量%以下とする。これは、溶鋼にチタンが含有されると、溶鋼中の窒素含有量が高い場合にはTiN介在物が生成し、このTiN介在物が起点となって疲労寿命を低下させる原因となるためである。この観点から、加熱撹拌処理前の溶鋼のチタン含有量は低いほど望ましく、溶鋼がチタンを含有したとしても、加熱撹拌処理前の段階で0.002質量%以下とすることが必要である。加熱撹拌処理前の段階で溶鋼中のチタン含有量が0.002質量%を超えると、加熱撹拌処理以降でチタンが溶鋼から酸化除去される機会がないため、連続鋳造段階まで0.002質量%を超える濃度で溶鋼中に残留し、TiN介在物を生成させるおそれがあるからである。
溶鋼に加熱撹拌処理を施す設備としては、アーク加熱取鍋精錬設備を用いることが好ましい。図2に、アーク加熱取鍋精錬設備の一例の縦断面模式図を示す。
図2において、符号1はアーク加熱取鍋精錬設備、2は取鍋、3は上蓋、4は電極、5は鉄皮、6は内張り耐火物、7は永久耐火物、8は底吹きプラグ、9は溶鋼、10は取鍋内スラグである。溶鋼9を収容する取鍋2は、外殻を鉄皮5とし、鉄皮5の内側に永久耐火物7、内張り耐火物6の順で耐火物が施工されており、内張り耐火物6の少なくとも一部(主にスラグライン)はMgO系耐火物で施工されている。また、取鍋2の底部には、底吹きプラグ8が設置されている。取鍋2のスラグラインの内張り耐火物6をMgO系耐火物とする理由は、MgO系耐火物はスラグに対する耐蝕性が高いことに基づく。
アーク加熱取鍋精錬設備1は、アーク発生用の電極4を備えており、この電極4で発生するアーク熱により、溶鋼9を加熱したり、取鍋内に添加した媒溶剤を滓化(スラグ化)したりすることが可能である。また、アーク加熱取鍋精錬設備1では、取鍋底部に設置した底吹きプラグ8から溶鋼中に撹拌用ガスを吹き込み、非酸化性雰囲気の条件下で、溶鋼9と溶鋼上に存在するスラグ10とを撹拌−混合し、溶鋼9をスラグ10によって精錬することが可能である。ここで、図2では、底吹きプラグ8から撹拌用ガスを吹き込んでいるが、溶鋼9に浸漬させたインジェクションランス(図示せず)を介して撹拌用ガスを吹き込んでもよい。
本発明では、溶鋼をスラグで精錬する際に、溶鋼よりも酸素ポテンシャルの低いスラグを使用するので、溶鋼中の介在物はスラグに吸収されて溶鋼の清浄性が向上する。尚、脱硫能を有するスラグを使用すれば溶鋼は脱硫される。
真空脱ガス処理を施す設備としては、RH真空脱ガス装置、DH真空脱ガス装置、VAD炉などの真空脱ガス処理に適した設備を選択すればよい。
本発明では、溶鋼に加熱撹拌処理を施す際に、取鍋内スラグに含有されるMgOが溶鋼中のアルミニウムで還元されて、還元して生成したマグネシウムが溶鋼中に溶出することを防止するために、取鍋内スラグのMgO含有量を4.0質量%以下に調整する。つまり、取鍋内スラグに含有されるMgOの還元による溶存マグネシウムの生成を防止するために、取鍋内スラグのMgO含有量を4.0質量%以下に調整する。
取鍋内スラグに含有されるMgOは主に前工程のスラグに由来するので、したがって、転炉から取鍋への出鋼後、取鍋内に流出した転炉スラグを取鍋から除去(除滓)する。例えば、転炉脱炭精錬では、MgO系炉体耐火物の溶損防止を目的として、一般的に、媒溶剤としてドロマイトなどのMgO含有物質が使用されており、このMgO含有物質が転炉スラグの一部分を形成している。
取鍋内スラグの除滓方法は、収容した溶鋼が流出しない程度に傾斜させた取鍋からスラグドラッカーを用いてスラグを掻き出す方法を用いることができ、その他、真空吸引装置でスラグを吸引する方法も採用することができる。どのような除滓方法であっても、全ての転炉スラグを除去することは不可能であるので、流出した転炉スラグの量の1/2程度以上(目視観察による)好ましく2/3程度以上(目視観察による)が除滓できたなら、作業を終了してよい。
取鍋内のスラグを除滓したならば、取鍋内にCaO系媒溶剤、SiO系媒溶剤、及び、Al系媒溶剤のいずれか1種または2種以上を添加する。取鍋内に残留する転炉スラグと添加した媒溶剤とが混合して形成されるスラグの量を、当該取鍋に収容された溶鋼質量1トンあたり10kg以上30kg以下とする。
ここで、スラグ量が溶鋼質量1トンあたり10kg(10kg/ton)未満では、スラグ量が少なく、取鍋内溶鋼の溶鋼面が露出しやすくなるなどによって、溶鋼の酸化や窒化が起こりやすくなるために溶鋼の清浄性が低下する。スラグ量が溶鋼質量1トンあたり30kg(30kg/ton)を超えると、スラグ量が多いことによってスラグの滓化に時間を費やし、処理時間が長くなる。処理時間が長くなると、内張耐火物6からのMgOの溶出が顕著になり、溶鋼の清浄性が低下する。
更に、形成されるスラグの組成が、比[(質量%CaO)/(質量%SiO)]が5.0〜12.0、比[(質量%CaO)/(質量%Al)]が1.5〜3.0、MgO含有量が4.0質量%以下、TiO含有量が1.0質量%以下となるように、媒溶剤の添加量を調整する。媒溶剤の添加後、次工程の加熱撹拌処理を実施する。
添加した媒溶剤は、次工程の加熱撹拌処理におけるアーク加熱によって滓化し、且つ溶鋼と撹拌されて溶鋼から熱を得ることも相まって、均一な組成のスラグが取鍋内に形成される。使用するCaO系媒溶剤としては生石灰、石灰石など、SiO系媒溶剤としては珪石、珪砂など、Al系媒溶剤としてはボーキサイト、仮焼アルミナ、焼結アルミナなどを用いる。
取鍋内のスラグの組成を上記の範囲に調整する理由は、以下の通りである。比[(質量%CaO)/(質量%SiO)]を5.0以上にすることで、スラグの酸素ポテンシャルが低下し、スラグによる溶鋼の酸化が防止される。比[(質量%CaO)/(質量%Al)]を1.5以上にすることで、介在物のスラグへの吸収能が高くなる。但し、比[(質量%CaO)/(質量%SiO)]が12を超える範囲、及び、比[(質量%CaO)/(質量%Al)]が3.0を超える範囲は、スラグが溶鋼中に巻き込まれやすくなり、溶鋼の清浄性が阻害される。
スラグ中のMgO含有量が4.0質量%を超えると、スラグから溶鋼中へ還元−溶出した溶存マグネシウムがAlと反応して、疲労寿命に悪影響を与えるAl−MgO介在物が生成される。これに対して、スラグ中のMgO含有量を4.0質量%以下にすることで、スラグから溶鋼中へのマグネシウムの還元−溶出が抑制され、Al−MgO介在物の生成が防止される。また、スラグ中のTiO含有量を1.0質量%以下とすることで、溶鋼中のチタン濃度が低位になり、疲労寿命を低下させるTiN介在物の生成を抑制することができる。
また、スラグの1600℃における粘度は、1.3〜2.0poise(0.13〜0.20Pa・s)になるように調整することが好ましい。スラグ組成の比[(質量%CaO)/(質量%SiO)]及び比[(質量%CaO)/(質量%Al)]を上記範囲に調整することで、スラグの1600℃における粘度は1.3〜2.0poiseの近傍になる。但し、粘度が高い場合には、スラグ粘度を低下させるための媒溶剤としてCaF(蛍石)を添加することも可能である。
スラグの1600℃における粘度が1.3poise未満になると、鋳片の熱間圧延時に伸長する介在物が増加する傾向があるので、1.3poise以上を確保することが好ましい。一方、1600℃における粘度が2.0poiseを超えると、スラグの滓化性が著しく低下して、スラグの介在物吸収速度が低下するので、2.0poise以下に抑えることが好ましい。
尚、上述のスラグの組成や物性は、加熱撹拌処理工程の総処理時間の少なくとも後半40%以上の期間で、本発明の条件を満足することが好ましい。つまり、加熱撹拌処理の予定された総処理時間の少なくとも60%の時点から加熱撹拌処理の終了までの期間で、スラグ組成を上記範囲に制御することが好ましい。
更に、加熱撹拌処理後の溶鋼中の窒素含有量は、0.014質量%以下であることが好ましい。加熱撹拌処理後の溶鋼中の窒素含有量が0.014質量%以下であれば、次工程の真空脱ガス処理で、TiN介在物が生成するおそれがない窒素含有量(0.008質量%以下)まで、溶鋼の脱窒素が可能である。
即ち、加熱撹拌処理工程において、加熱撹拌処理前の溶鋼に含有されるチタン濃度を0.002質量%以下とし、上記スラグ量及び上記組成のスラグを用いて溶鋼を撹拌精錬することで、疲労寿命に悪影響を与えるAl−MgO介在物及びTiN介在物の生成が抑制される。同時に、溶鋼中の介在物がスラグに吸収されるので、介在物の少ない清浄性に優れる溶鋼を溶製することが実現される。
更に、本発明者らは、加熱撹拌処理における溶鋼の撹拌動力に着目した。加熱撹拌処理では、一般的に、希ガスによるガス撹拌を行いつつ、精錬用フラックス及び合金材の添加による溶鋼の酸化物系介在物の形態制御及び成分調整と、電極での通電加熱による溶鋼の温度調整とを、行っている。溶鋼の撹拌力は一般に撹拌動力という指標で表される。溶鋼に付与される撹拌動力は、例えば、溶鋼上に存在するスラグの巻き込みや溶鋼中介在物の凝集−浮上など、介在物の生成挙動にも影響を及ぼす。なかでも、溶鋼上に存在するスラグの巻き込みについては、スラグの粘性や界面張力などの物性値も重要な因子となるため、スラグ組成に応じた最適な撹拌動力があると考えられる。
そこで、本発明において提案したスラグ組成の条件下で、撹拌用ガス流量を変化させて、溶鋼の清浄度及び鋼材の疲労寿命を評価する試験を行った。その結果、加熱撹拌処理の前半では、比較的強い撹拌力を与えてスラグの溶融を促進させて、直ちに目的のスラグ組成を造り込むことが好ましいことがわかった。一方、加熱撹拌処理の後半では、必要最低限の撹拌力として溶鋼上に存在するスラグの巻き込みを防止することが、疲労寿命の向上に効果的であることが明らかとなった。
具体的には、加熱撹拌処理の処理開始から処理中の任意の時刻までの処理前半の期間を第1期間、前記任意の時刻から処理終了までの処理後半の期間を第2期間とする。ここで、前記第1期間の処理時間は、予定された加熱撹拌処理の総処理時間の30%以上60%以下であることが好ましい。第1期間の処理時間を予定された総処理時間の30%以上とすることにより、目的のスラグ組成を造り込むのに十分な時間が確保できる。また、第1期間の処理時間を予定された総処理時間の60%以下とすることで、第1期間で溶鋼内に巻き込んだスラグを、第2期間中に溶鋼上面まで再浮上させて、溶鋼上のスラグに取り込むのに必要な時間が確保できる。
この場合に、下記の(1)式で算出される撹拌動力εを、前記第1期間では55W/ton超105W/ton以下、前記第2期間では25W/ton以上55W/ton以下とすることで、鋼製品の疲労寿命の向上が認められた。
ε=6.18×(Qg×TL/W)×[ln{1+h/(1.46×10-5×P0)}+0.06×(1-298/TL)]……(1)
ここで、(1)式において、εは撹拌動力(W/ton)、Qは撹拌用ガスの流量(Nm/min)、Tは溶鋼温度(K)、Wは溶鋼量(ton)、hは取鍋内溶鋼の浴深さ(m)、Pは雰囲気圧力(Pa)である。溶鋼温度Tは、測温用プローブ(熱電対)を取鍋内の溶鋼に浸漬(浸漬深さ20cm以上)させて測定される温度である。
第1期間での撹拌動力εが55W/ton以下のときには、撹拌力が弱すぎて成分調整や温度調整が効率的に行えず、また、スラグの溶融が遅くなる場合が発生した。一方、第1期間での撹拌動力εが105W/tonを超えたときには、撹拌力が強すぎて、溶鋼浴面の振動が激しくなり、操業安全性に問題が生じる場合が発生した。また、撹拌力が強すぎて、溶鋼表面を覆うスラグが偏在し、電極と溶鋼とが直接接触して電極からの加炭(溶鋼の炭素濃度の上昇)が生じる場合や、スラグ巻き込みが増大して溶鋼清浄性が悪化する場合が発生した。
第2期間での撹拌動力εが25W/ton未満のときには、撹拌力が弱すぎて成分調整や温度調整が効率的に行えない場合が発生した。一方、第2期間での撹拌動力εが55W/tonを超えたときには、撹拌力が強すぎてスラグの巻き込みが多くなり、溶鋼清浄性が悪化する場合が見られた。
次工程の真空脱ガス処理工程の処理時間は、40分間以上更には60分間以上とすることが好ましい。これは、真空脱ガス処理工程も溶鋼中に懸濁する介在物の浮上−分離に寄与しており、真空脱ガス処理時間が40分間未満では、介在物の浮上−分離が十分に行なわれないことが起こるからである。
このようにして鋳片を製造することで、高寿命の高疲労強度鋼の素材となる鋳片を安定して製造することが実現される。
JIS G4805−SUJ2鋼(化学成分:C:1.01質量%、Si:0.20質量%、Mn:0.40質量%、Al:0.020質量%、Cr:1.55質量%、Mo:0.05質量%、P:0.015質量%、S:0.003質量%)の鋳片を1チャージの溶鋼量が約200トン規模の実機にて製造する際に、本発明を適用した(本発明例)。鋳片の製造方法は、溶銑の転炉脱炭精錬、転炉から出鋼後の排滓処理、その後のアーク加熱取鍋精錬設備での加熱撹拌処理、加熱撹拌処理後のRH真空脱ガス装置での真空脱ガス処理、真空脱ガス処理後のブルーム連続鋳造機での連続鋳造工程の順である。また、比較のために、加熱撹拌処理における溶鋼組成、スラグ量、スラグ組成のうちの少なくとも一部を本発明の範囲外に調整した試験も実施した(比較例)。スラグ組成及びスラグ粘度は、加熱撹拌処理終了時に取鍋内から採取したスラグサンプルの測定値を代表値とした。
本発明例及び比較例では、製造工程で使用する鉄スクラップや合金鉄などのスズ濃度及びヒ素濃度を管理・選別して行なった。その結果、いずれの鋳片においても、スズ濃度は、分析下限値(0.001質量%)未満〜0.003質量%の範囲内であった。また、ヒ素濃度は、分析下限値(0.001質量%)〜0.005質量%の範囲内であった。
アーク加熱取鍋精錬設備では、電極への通電によるアーク加熱を施しつつ、精錬用フラックス、脱酸用金属アルミニウム、成分調整用の合金材を投入し、溶鋼成分及び溶鋼温度の調整を実施した。加熱撹拌処理中、取鍋底に設けた底吹きプラグから、撹拌用ガスのアルゴンガス(Arガス)を吹き込んで溶鋼の撹拌を行った。RH真空脱ガス装置での真空脱ガス処理時間は60分間の一定とした。
アーク加熱取鍋精錬設備での溶鋼の撹拌動力εは、撹拌用ガスの流量Qが0.2〜1.7Nm/min、溶鋼温度Tが1840〜1860K、溶鋼量Wが195〜205ton、取鍋内溶鋼の浴深さhが3.0〜3.3m、雰囲気圧力Pが101325Paの条件において、上記の(1)式を用いて算出した。
本発明例及び比較例のいずれの操業も、アルミニウム以外の溶鋼の成分調整は、転炉内へのモリブデン源の添加及び転炉からの出鋼時の炭材、合金材の添加により、加熱撹拌処理工程の前までに上記目標成分の90%の範囲内に調整した。アルミニウムを含めて上記目標成分への最終調整は、加熱撹拌処理及び真空脱ガス処理において実施した。
連続鋳造工程によって得られたブルーム鋳片(横断面サイズ:短辺300mm、長辺400mm)を加熱して170mm直径のビレットに熱間圧延し、その後、再度加熱して60mm直径の棒鋼に熱間圧延した。得られた棒鋼に780℃で30時間の熱処理を施した後、直径60mm、厚み5.5mmのスラスト転動疲労試験片をそれぞれ10枚ずつ作製した。この試験片を830℃で40分間加熱した後、60℃の油に焼入れし、その後、厚みを5.0mmに仕上げ、スラスト転動疲労試験に供した。スラスト転動疲労試験はヘルツ応力5230MPaで実施し、10%破断寿命(B10寿命)で評価した。
試験結果を表1に示す。ここで、表1に示すスラグの粘度は1600℃における粘度である。また、表1に示すスラグ組成は、加熱撹拌処理の処理終了時点の値を記載しているが、加熱撹拌処理工程の総処理時間の少なくとも後半50%以上の期間で同等のスラグ組成となっていることを確認している。
加熱撹拌処理における溶鋼組成、スラグ量及びスラグ組成が本発明の範囲内であり、且つ、スラグの粘度が本発明の好適な範囲内である本発明例1〜5では、6.5〜7.3×10回の長い疲労寿命が安定的に得られた。また、本発明例6〜8は、スラグ粘度または加熱処理後の溶鋼中窒素濃度が本発明の好適範囲を外れてはいるものの、5.7〜6.1×10回とまずまずの疲労寿命が安定的に得られた。
一方、比較例1〜7は、加熱撹拌処理における溶鋼組成、スラグ量及びスラグ組成のいずれかが本発明の範囲外であり、疲労寿命値は、3.0〜3.8×10回で、本発明例と比較して低位であった。
実施例1と同様に、JIS―SUJ2鋼の鋳片を1チャージの溶鋼量が約200トン規模の実機にて製造する際に、本発明を適用した(本発明例)。
実施例2では、加熱撹拌処理における溶鋼成分、スラグ量、スラグ組成を本発明の範囲内に制御するとともに、スラグの粘度を本発明の好適範囲に制御した。更に、加熱撹拌処理の総処理時間を変化させるとともに、加熱撹拌処理工程を第1期間及び第2期間に区分し、第1期間と第2期間とで、撹拌動力を仔細に制御した。アーク加熱取鍋精錬設備での溶鋼の撹拌条件は実施例1と同等とした。
実施例2では、実施例1と同様に、製造工程で使用する鉄スクラップや合金鉄などのスズ濃度、ヒ素濃度を管理・選別した。その結果、いずれの鋳片においても、スズ濃度は、分析下限値(0.001質量%)未満〜0.003質量%の範囲内であった。また、ヒ素濃度は、分析下限値(0.001質量%)〜0.005質量%の範囲内であった。
実施例2において、鋳片の製造方法、溶鋼の成分調整方法、スラスト転動疲労試験片の作成方法、スラスト転動疲労試験は、実施例1に準拠した。スラグ組成及びスラグ粘度は、加熱撹拌処理終了時に取鍋内から採取したスラグサンプルの測定値を代表値とした。
試験結果を表2に示す。ここで、表2に示すスラグの粘度は1600℃における粘度である。また、表2に示すスラグ組成は、加熱撹拌処理の処理終了時点の値を記載しているが、加熱撹拌処理工程の総処理時間の少なくとも後半50%以上の期間で同等のスラグ組成となっていることを確認している。
本発明例9〜19は、加熱撹拌処理における第1期間の時間比率と、第1期間及び第2期間での撹拌動力とを本発明の好適範囲に制御した例である。これらについては疲労寿命値が8.3〜9.2×10回になり、非常に良好な結果を得ることができた。
また、本発明例20〜31は、加熱撹拌処理における第1期間の時間比率や、第1期間または第2期間での撹拌動力が本発明の好適範囲を外れたものであるが、これらについても疲労寿命値は6.8〜8.0×10回であり、良好な結果を得ることができた。
1 アーク加熱取鍋精錬設備
2 取鍋
3 上蓋
4 電極
5 鉄皮
6 内張り耐火物
7 永久耐火物
8 底吹きプラグ
9 溶鋼
10 取鍋内スラグ

Claims (7)

  1. 化学成分組成の炭素濃度が0.6〜1.4質量%、珪素濃度が0.80質量%以下、マンガン濃度が0.2〜0.5質量%、アルミニウム濃度が0.25質量%以下、クロム濃度が1.0〜2.0質量%、モリブデン濃度が0.30質量%以下、燐濃度が0.03質量%以下、硫黄濃度が0.03質量%以下である高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法であって、
    転炉または電気炉から取鍋に溶鋼を出鋼し、出鋼後、転炉または電気炉から取鍋内に流出したスラグを取鍋から除去し、その後、取鍋内に媒溶剤を添加して取鍋内の溶鋼に加熱撹拌処理を施し、加熱撹拌処理後、取鍋内の溶鋼に真空脱ガス処理を施し、次いで、真空脱ガス処理によって得られた溶鋼を連続鋳造機で連続鋳造して高疲労強度鋼の素材となる鋳片を製造するにあたり、
    前記加熱撹拌処理の前の溶鋼に含有されるチタン濃度を0.002質量%以下とし、
    前記媒溶剤を添加することによって生成される取鍋内スラグの量を、取鍋内に収容された溶鋼質量1トンあたり10kg以上30kg以下とし、且つ、
    前記媒溶剤を添加することによって生成される取鍋内スラグの組成を、比[(質量%CaO)/(質量%SiO)]が5.0〜12.0、比[(質量%CaO)/(質量%Al)]が1.5〜3.0、MgO含有量が4.0質量%以下、TiO含有量が1.0質量%以下とする、
    高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
  2. 前記取鍋内スラグの1600℃での粘度を1.3〜2.0poise(0.13〜0.20Pa・s)に調整して前記加熱撹拌処理を施す、請求項1に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
  3. 前記加熱撹拌処理を施した後の溶鋼の窒素含有量は0.014質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
  4. 前記加熱撹拌処理において、処理開始から処理中の任意の時刻までの期間を第1期間、前記任意の時刻から処理終了までの期間を第2期間とし、下記の(1)式で算出される溶鋼の撹拌動力εを、前記第1期間では55W/ton超105W/ton以下、前記第2期間では25W/ton以上55W/ton以下として、前記加熱撹拌処理を施す、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
    ε=6.18×(Qg×TL/W)×[ln{1+h/(1.46×10-5×P0)}+0.06×(1-298/TL)]……(1)
    ここで、(1)式において、εは撹拌動力(W/ton)、Qは撹拌用ガスの流量(Nm/min)、Tは溶鋼温度(K)、Wは溶鋼量(ton)、hは取鍋内溶鋼の浴深さ(m)、Pは雰囲気圧力(Pa)である。
  5. 前記第1期間の処理時間を、加熱撹拌処理の総処理時間に対して30%以上60%以下の範囲とする、請求項4に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
  6. 前記高疲労強度鋼の素材となる鋳片は、ISO683−17規格における100Cr6、JIS G4805規格におけるSUJ2、GB規格におけるGCr15、ASTM A295規格における52100及びDIN規格における100Cr6のうちの少なくとも一つの規格で規定された軸受鋼の素材である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
  7. 前記鋳片の化学成分組成のスズ濃度が0.003質量%以下、ヒ素濃度が0.005質量%以下である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の高疲労強度鋼の素材となる鋳片の製造方法。
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