JP5803815B2 - 軸受鋼鋼材の溶製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ベアリング等の機械構造部品に用いられる軸受鋼鋼材の溶製方法に関し、より具体的には、酸化物系介在物を小径化するとともに硫化物系介在物の組成を所定範囲内に制御することができる、転動疲労寿命に優れた軸受鋼鋼材の溶製方法に関する。
軸受鋼鋼材は、「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受に用いられており、近年のエンジンの高出力化および周辺部品の小型化のニーズによって、より一層長い転動疲労寿命が必要とされている。
転がり軸受において欠陥が生じる主な形態には、鋼中に存在する介在物に繰返し荷重が加わり、応力集中によって生じたき裂が繰り返し荷重によって徐々に進展し、最終的に剥離に至ることが挙げられる。
この欠陥の発生を減少させるために、鋼材面からの対策としては、一般的に軸受の剥離の原因となるようなAlに代表される非金属介在物を極力低減させ、転動疲労寿命の向上を図ることが行われてきた。
しかしながら、例えば、非特許文献1に記載されているように、近年の製鋼技術の進歩により酸化物系介在物が小径化した結果、相対的に硫化物系介在物のサイズが大きくなる場合があるため、酸化物系介在物のみだけでなく、硫化物系介在物に起因して転動疲労寿命のばらつきが大きくなることがある。そこで、酸化物系介在物を小径化するとともに硫化物系介在物を制御した軸受鋼鋼材の溶製が必要となってきている。
従来から、転動疲労寿命に優れた軸受鋼鋼材を溶製するために、種々の方法が提案されている。例えば、特許文献1では、フッ素源を含有しないCaO−SiO系フラックスを添加し、次いで、大気下において、Alにより脱酸された溶鋼と前記フラックスとを撹拌用ガスの溶鋼中への吹込みによって撹拌し、トータル酸素濃度が0.0030質量%以下となった後に、溶鋼にCa−Si合金、Ca−Fe合金などの金属Caを添加し、その後、真空脱ガス装置において溶鋼を減圧下で精錬することで清浄性を向上させ、転動疲労寿命を向上させる方法を提案している。
しかし、この技術は、ISO 683−17:1999(E)によると介在物の形態制御のためCa合金を意図的に添加する場合、注文者から特別に認められない限り許されず、手続き上、Ca合金添加不可で適用できない可能性がある。
また、特許文献2には、軸受鋼の成分組成からなる溶鋼を塩基度(%CaO/%SiO)5以上のCaO−Al−MgO系スラグを用いて精錬し、得られた溶鋼にAlを脱酸剤として添加することを特徴とする、転動疲労寿命特性に優れる軸受鋼の製造方法が提案されている。この技術は、酸化物系介在物を微細なAl−MgO系介在物にコントロールできており、転動疲労寿命向上に有効であるとは思われる。
しかし、この技術は硫化物系介在物を考慮していないため、硫化物系介在物が破壊の起点になる可能性が残されている。
また、特許文献3には、転炉で溶製された溶鋼を取鍋に出鋼する際に、脱酸および合金鉄、さらに質量比でSiO:10%以下、MgO:6〜15%未満、Al:25〜45%、CaO:35〜60%を含有するスラグが取鍋内溶鋼上に形成されるようにフラックスを添加し、次いで、前記フラックスと溶鋼とを混合・撹拌し、しかる後、真空脱ガス処理による溶鋼撹拌処理を行うことを特徴とする清浄鋼の精錬方法が提案されている。この技術は、生石灰(CaO)をフラックスとして添加することにより生成されるCaO−Al系介在物は低融点化するものの粗大化し、却って転動疲労寿命特性を劣化させるので、全ての介在物をAl−MgO系またはAl介在物として微細化させ、この介在物を前記フラックスと溶鋼とを混合・撹拌することによってフラックスに吸収させるという技術である。この技術においても、酸化物系介在物を微細なAl−MgO系介在物にコントロールできており、転動疲労寿命向上に有効であるとは思われる。
しかし、この技術も硫化物系介在物を考慮していないため、硫化物系介在物が破壊の起点になる可能性が残されている。
特開2010−196114号公報 特開2004−323938号公報 特開2004−169147号公報
長尾実佐樹ら:Sanyo Technical Report Vol.12(2005)No.1、p.38
そこで、本発明は、Ca添加処理を行わずに、酸化物系介在物を小径化するとともに硫化物系介在物の組成を所定範囲内に制御することにより、介在物サイズを小さくコントロールして転動疲労寿命に優れた軸受鋼鋼材を溶製することを目的とする。
転がり軸受において欠陥が生じる主な形態には、鋼中に存在する介在物に繰返し荷重が加わり、応力集中によって生じた亀裂が繰り返し荷重によって徐々に進展し、最終的に剥離に至ることが挙げられる。
そのため、転動疲労寿命に及ぼす介在物の影響を調査し、転動疲労寿命に影響を与える介在物を検出するには、三次元的に十分な体積が確保された評価が必要であって、転動疲労寿命向上のためには、超音波疲労試験を用いた評価を通じて、鋼材の長手方向に認められる介在物の長さを短くすることが重要であるとの知見を得た。
そこで、さらに、介在物の転動疲労に及ぼす影響を詳細に調査し、その結果下記(a)および(b)の知見を得ることができた。
(a)硫化物の組成を制御することによって、すなわち硫化物中にCaSを1%以上含有するように組成を制御することによって介在物の長さを短くすることができ、このために転動疲労寿命が著しく向上する。
(b)転動疲労寿命は、超音波疲労破壊試験での破壊起点となる硫化物の種類および平均組成と相関を有する。
そこで、そのような硫化物に必要な種類および組成と、そのように硫化物の組成をコントロールするための製造条件について具体的に調査検討した。
従来は、特許文献2および3に開示されているように、軸受鋼の製造プロセスとしては、転炉あるいは電気炉で溶製した溶鋼を出鋼時にAlで脱酸し、フラックスを添加して溶鋼と撹拌して非金属介在物の組成等を制御し、併せてその除去を図った後、さらにRH真空脱ガス処理装置でガス成分を除去するとともに非金属介在物を除去するという溶製方法が多く行われてきた。
しかし、その溶製方法では酸化物系介在物を微細なサイズにコントロールできていても、硫化物系介在物まで制御することは格別意識されてこなかった。
硫化物系介在物を制御するためには、何らかの精錬操作の新たな工夫を必要とする。ただし、溶鋼上に形成させたスラグと溶鋼とを反応させる処理が酸化物系介在物の減少および微細化に効果的であることを考えると、その処理の効果を失わないように、硫化物系介在物を制御できる処理を考えることが得策である。
そのような処理として、転炉または電気炉より取鍋に出鋼した溶鋼に対して、フラックスを添加して溶鋼と撹拌する処理の前に、バブリングランスを介して溶鋼中に撹拌ガスと精錬フラックスを吹込む処理を挿入することが考えられる。
このバブリングランスを介して溶鋼中にフラックスを吹込む処理では、吹き込まれたフラックスが直接溶鋼中Sと反応し、硫化物を生成する。したがって、従来の添加されたフラックスが溶鋼上にスラグを形成し、そのスラグが溶鋼中成分および懸濁介在物と反応する際と比べて、溶鋼中に形成される介在物の組成や性状が異なることが期待できる。そのため、フラックス吹込み処理とフラックスを添加して溶鋼と撹拌する処理とを適切に組み合わせることにより、その両処理を経た溶鋼中の介在物組成や性状を、所望する範囲内に制御できるようになることが期待できる。
そこで、転動疲労寿命を向上させるための前記した硫化物の組成制御(すなわち、硫化物中にCaSを1%以上含有するように組成を制御すること)に関連する他の介在物構成成分の必要組成範囲を検討し、そのフラックス吹込み工程を、必要とする介在物組成に制御することができ、かつ、フラックスが浮上して溶鋼上のスラグの一部となった後にも、そのスラグにより酸化物系介在物を微細なサイズにコントロールする効果を失わないようにできる、適切なフラックス組成と量並びに適切な吹込み条件を検討した。
その後、適切な条件でフラックスおよびスラグと溶鋼とを撹拌するスラグ精錬処理を行い、さらに溶鋼環流型脱ガス装置にて介在物を除去する溶鋼環流処理を施せばよい。
本発明は、上記の着想に基づきバブリングランスを介して溶鋼中にフラックスを吹込む処理を中心に、その後のスラグ精錬を行う工程と溶鋼環流型脱ガス装置で溶鋼環流処理を行う工程とを組み合わせて検討し完成させたもので、その要旨は以下に示す軸受鋼鋼材の溶製方法である。
(1)質量%で、Oが0.0010%以下、かつSが0.0040%以下であるJIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の化学組成を満足する鋼材の溶製方法であって、次の工程1〜工程3の順に取鍋精錬処理を行うことにより、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が、質量%で、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%、かつ、CaS、MgSおよびMnSの3成分の合計が95%以上になるように硫化物系介在物を制御し、制御される前記硫化物系介在物は、工程1〜工程3の順に取鍋精錬処理を施した後に溶鋼を連続鋳造し、その後分塊圧延および棒鋼圧延して製造した棒鋼を対象として超音波疲労破壊試験を行った際に、その破壊起点となる硫化物系介在物であることを特徴とする高炭素クロム軸受鋼鋼材の溶製方法;
工程1:転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼中に、バブリングランスを介して、質量%で、CaO:40〜70%、Al:30%以下を含有するCaO系精錬フラックスを溶鋼1t当たり1.0〜2.6kg吹き込む工程。
工程2:工程2の処理終了時の溶鋼上スラグ組成が、質量%で、CaO:35〜65%、Al:10〜35%、SiO:10%以下(0%を含まない)、MgO:0〜15%、CaF:0〜30%、CaO/SiO:6.0以上およびCaO/Al:1.8〜3.5であって、かつ、そのスラグ量が、溶鋼1トン当たり5〜15kgになるように精錬剤を添加し、溶鋼および溶鋼上スラグをその添加した精錬剤とともに撹拌する工程。
工程3:溶鋼環流型真空脱ガス処理装置を用いて、溶鋼成分調整後に溶鋼を還流させる処理を20分間以上行う工程。
(2)前記工程1において、前記CaO系精錬フラックスを溶鋼1t当たり2.6〜3.6kg吹き込むことを特徴とする(1)項に記載された軸受鋼鋼材の溶製方法。
(3)項は、具体的には、制御される硫化物系介在物は、工程1〜3の順に取鍋精錬処理を施した後に溶鋼を連続鋳造して得られた鋳片を分塊圧延し、さらに棒鋼圧延して直径120〜70mm程度の棒鋼を、鋳片から棒鋼までの圧下比を10以上として製造し、この棒鋼から、長手方向横断面(つまり、棒鋼の圧延方向に直角に切断した面)に対して表面と中心の中間位置であるR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)を基準として、圧延方向と平行な方向に厚さ14mm、幅45mm、長さ200mm程度の板材を切り出し、その板材を、860℃で60分間保持した後に大気中で室温まで空冷する焼ならしを行い、さらに、795℃にて6時間保持した後、炉冷して球状化焼なましを行った後に、その板材から超音波疲労試験片を採取し、採取した粗形状の超音波疲労試験片を、830℃で30分間加熱した後、油焼入れし、さらに、180℃で1時間加熱した後、大気中で室温まで放冷して焼戻し、次いで、仕上げ加工して得られる超音波疲労試験用の試験片が破壊されるまで、株式会社島津製作所製の超音波疲労試験機USF−2000を用いて、周波数20kHz、応力振幅900MPa、応力比−1の条件で、超音波疲労試験を行った際に破壊起点となる硫化物系介在物であることを特徴とする(1)項または(2)項に記載された軸受鋼鋼材の溶製方法である。
本発明において「硫化物系介在物」は、鋼中の介在物粒が実質的にCaS、MgS、MnS等のS含有化合物のみで構成されているもののほか、質量比率で50%以上がCaS、MgS、MnS等のS含有化合物で構成されているものの、同じ介在物粒の一部にCaO、Al等の酸化物やTiNに代表される窒化物が併存しているものも該当する。
また「硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成」を計算する際、鋼中の介在物粒の一部に酸化物や窒化物が併存している場合には、CaS、MgS、MnS等のS含有化合物のみの部分を分析対象とする。なお、S含有化合物は、CaS、MgS、MnSの3種類のみであることも多く、残部はFeS等であるが、鋼中に存在する介在物のFeS濃度を正確に分析することは難しい。そこで、本発明では「硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が、CaS、MgSおよびMnSの3成分の合計で95質量%以上」である介在物を、組成制御する対象の介在物として定めた。
なお、各元素、酸化物および硫化物の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
本発明により、Ca添加処理を行わずに、酸化物系介在物を小径化するとともに硫化物系介在物の組成を所定範囲内に制御することにより、介在物サイズを小さくコントロールして転動疲労寿命に優れた軸受鋼鋼材を、効率よく溶製することが可能になる。
本発明を実施するための形態を説明する。
(A)鋼材の化学組成
「玉軸受」、「コロ軸受」等の転がり軸受の素材として用いるために、本発明の軸受鋼鋼材は、質量%で、Oが0.0010%以下であり、かつSが0.0040%以下であるJIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の化学組成を満足する鋼材、すなわち、OおよびSの含有量が上記範囲にあるSUJ2〜5でなければならない。本発明の軸受鋼鋼材は、上記のうちでも、その化学組成が、OおよびSの含有量が上記範囲にあるSUJ2であることが特に好ましい。
JIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材SUJ2〜5の化学組成を具体的に示すと、以下に列記の通りである。
[SUJ2]
C:0.95〜1.10%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50%以下、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Cr:1.30〜1.60%、残部Feおよび不純物
[SUJ3]
C:0.95〜1.10%、Si:0.40〜0.70%、Mn:0.90〜1.15%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Cr:0.90〜1.20%、残部Feおよび不純物
[SUJ4]
C:0.95〜1.10%、Si:0.15〜0.35%、Mn:0.50%以下、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Cr:1.30〜1.60%、Mo:0.10〜0.25%、残部Feおよび不純物
[SUJ5]
C:0.95〜1.10%、Si:0.40〜0.70%、Mn:0.90〜1.15%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Cr:0.90〜1.20%、Mo:0.10〜0.25%、残部Feおよび不純物
ただし、不純物として、Ni、Cuともそれぞれ0.25%を超えてはならず、不純物としてSUJ2、3のMoは0.08%を超えてはならず、上記されていない元素は、受渡当事者間の協定がない限り、溶鋼を仕上げる目的以外に意図的に添加してはならず、ただし、受渡当事者間の協定により、上記以外の元素を0.25%以下添加してもよい。
以下、本発明の軸受鋼鋼材において、OおよびSの含有量を上記の範囲に制限する理由について説明する。
O:0.0010%以下
Oは、酸化物を生成する元素であり、極力低下させる必要がある。Oの含有量が多くなって、特に0.0010%を上回ると、粗大な酸化物として残存し易くなり、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Oの含有量を0.0010%以下とする。Oの含有量は0.0008%以下であることが好ましい。
S:0.0040%以下
Sは、硫化物を形成する元素であり、その含有量が0.0040%を上回ると硫化物中のCa濃度が低下し、延伸した粗大な硫化物を形成し易くなって、転動疲労寿命の低下を招く。したがって、Sの含有量を0.0040%以下とする。Sの含有量は0.0030%以下とすることが好ましい。
本発明の軸受鋼鋼材において、脱酸元素であるAlの含有量は次の量にすることが好ましい。
Al:0.040%以下
Alは、精錬工程で脱酸を行うために使用する元素である。しかし、Alの含有量が0.040%を上回ると粗大な酸化物として残存し易くなり、転動疲労寿命の低下を招くことがあるので、Alの含有量は0.040%以下とするのが望ましい。
(B)硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成
本発明の軸受鋼鋼材は、上記した化学組成範囲を満たした上で、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が「CaS:1.0質量%以上、MgS:0〜20質量%、かつ、CaS、MgSおよびMnSの3成分の合計が95質量%以上」という条件を満たすことにより、延伸した粗大な硫化物の生成が抑制され、優れた転動疲労寿命を確保することが可能になる。
CaS:1.0質量%以上
CaSは、脱硫反応によって生成する硫化物である。CaS濃度が1.0%以上になると、延伸した粗大な硫化物の生成を抑制する効果が得られる。硫化物としてCaSだけが存在しても、つまり、CaS濃度が100%であっても構わない。したがって、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成におけるCaS濃度を、1.0質量%以上とした。
MgS:0〜20%
精錬段階にて鋼中にMgが取込まれ、硫化物系介在物中にMgSが混入する場合がある。MgS濃度が20%を上回るような条件では、鋼中に別に存在している酸化物系介在物中のMgO濃度が増加し、点列状の粗大な酸化物の生成を招くため、MgS濃度は20%以下に制限する。なお、硫化物系介在物中にMgSは存在していなくても構わない。したがって、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成におけるMgS濃度を、0〜20%とした。
なお、CaS濃度が1.0%以上になると、延伸した粗大な硫化物の生成が抑制される。このため、S含有化合物としてのCaS、MgSおよびMnSの3成分のうちの残部としてのMnSの濃度は、CaSとMnSの2種類しか存在しない場合には、CaS濃度が1.0%の場合の99.0%であってもよい。また、CaS、MgSとMnSの3種類とも存在する場合には、CaS濃度が1.0%で、MgO濃度が0%に近い値の場合の99.0%に近い値であってもよい。
さらに、本発明では、転動疲労寿命は、超音波疲労破壊試験の破壊起点となる硫化物の種類および平均組成と相関を有するとの知見に基づき、超音波疲労破壊試験の破壊起点となる硫化物の種類および平均組成を制御することが特に重要といえる。その制御対象としての超音波疲労破壊試験の破壊起点となる硫化物は、次のように試験片を作製して特定することが好適である。
先ず、前記した化学組成を有する溶鋼を連続鋳造して得た鋳片を分塊圧延し、さらに棒鋼圧延して直径120〜70mm程度の棒鋼を製造する。この鋳片から棒鋼までの圧下比は、後述するように10以上とすることが好ましい。その棒鋼から、長手方向横断面(つまり、棒鋼の圧延方向に直角に切断した面)に対して表面と中心の中間位置であるR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)を基準として、圧延方向と平行な方向に厚さ14mm、幅45mm、長さ200mm程度の板材を切り出し、超音波疲労試験用の試験片とする。
次に、超音波疲労試験機を用いてその試験片が破壊されるまで疲労試験を実施し、超音波疲労試験の破壊起点となった介在物の組成を、エネルギー分散型X線分光法によって測定する。この試験を各棒鋼について8回以上行い、その介在物が硫化物系介在物であるもの8個以上について、その介在物を構成するS含有化合物の平均組成を算術平均により求める。
(C)精錬条件
前述した硫化物組成は、次に述べる製造方法によって所定の範囲内に制御する。
先ず、転炉または電気炉で酸化精錬を行った後、転炉または電気炉からの出鋼時にAlを添加して脱酸処理を行い、その後さらに除滓処理を実施してから、工程1〜工程3の取鍋精錬処理を順次行う。
(1)工程1(フラックス吹込み処理)
取鍋内の溶鋼を粉体吹込み装置まで搬送した後、溶鋼にバブリングランスを介してArガスとともに精錬フラックスを吹込み、溶鋼を撹拌する。このフラックス吹込み工程で、CaO系精錬フラックスを溶鋼1tあたり1.0〜3.6kg吹き込む。
ここで、「CaO系精錬フラックス」は、CaOを40〜70質量%、Alを30質量%以下含み、最大粒径1.0mm以下の粉末のものを使用する。このようなフラックスを用いることで、吹き込まれたフラックスが溶鋼中で速やかに溶融し、その浮上中に溶鋼中Sと反応してS含有介在物を生成し易くなるからである。また、その吹込み量は、溶鋼1tあたり1.0kg未満では、溶鋼中Sの脱硫用としても、溶鋼中介在物のCaSを中心とする組成の制御用としても不十分である。一方、溶鋼1tあたり3.6kgを超える量は、溶鋼中介在物のCaSを中心とする組成の制御用としては多過ぎ、むしろ生成するスラグが溶融し難くなるため処理時間がかかる上に、フラックス吹込みによる精錬コストも嵩んでしまうので不適当といえる。
なお、吹きこむ撹拌ガス流量は、(1)式から求まる撹拌動力密度εが180W/t以上370W/t以下とすることが好ましい。フラックス吹込みによる精錬効果を十分に上げるためには、180W/t程度以上の撹拌強度(撹拌動力密度)が一般に好ましいからである。一方、大きな撹拌動力密度εで操業すると、撹拌が激しいために溶鋼が取鍋から溢れることがあり、取鍋のフリボードを下げて操業しなければならず生産性低下となる場合があり得る。そこで、撹拌動力密度εを370W/t程度以下に制限しておくことが、操業面から好ましい。
ε=(0.006183×Q×T)/W×ln[1+(9.8×ρ×H)/P+{1−(T/T)}]・・・(1)
ε:ガス撹拌に伴う溶鋼1t当たりの撹拌動力密度(W/t)
Q:吹込みガス流量(L(Normal)/min)
T:溶鋼温度(K)
W:溶鋼量(t)
ρ:溶鋼の密度(7000kg/m
H:ガス吹込み深さ(m)
P:雰囲気圧力(N/m
:吹込みガス温度(K)
また、フラックス吹込み時間は、溶鋼脱硫および介在物組成制御の効果と、溶鋼温度低下抑制の観点から5分間程度が適当である。
(2)工程2(スラグ精錬処理)
工程1を終了後、CaO:35〜65%、Al:10〜35%、SiO:10%以下(0%を含まない)、MgO:0〜15%、CaF:0〜30%、CaO/SiO:6以上およびCaO/Al:1.8〜3.5を含有するスラグが、溶鋼1トン当たり5〜15kgの範囲で生成されるように、精錬剤を適宜調整して添加し、溶鋼中に浸漬した上吹きランスや取鍋底からArガスを吹き込んで、溶鋼および溶鋼上のスラグを追添加した精錬剤とともに撹拌して精錬処理する。
この撹拌を行うスラグ精錬処理には、アーク式加熱装置付き取鍋精錬装置(LF、VAD等)を用いることが好ましく、中でもアーク式加熱装置付き真空溶鋼撹拌装置(以下、「VAD」という。)を用いて、溶鋼を加熱するとともに溶鋼および溶鋼上のスラグ等を強撹拌することが最も好ましい。
この上記成分のスラグ組成は、工程1でも行った溶鋼の脱酸および脱硫をさらに促進し、かつ、そこで生成させた硫化物の組成制御を維持しつつ促進する目的であるから、それに適した条件を選定したものである。
この工程2で添加する精錬剤は、工程1で添加した精錬用フラックスとも合計して、工程2終了後に上記した組成範囲のスラグが溶鋼上に5〜15kg/t生成されるように、CaOやAlを主要構成成分とする生石灰や前記した精錬用フラックス等を適宜選定して、溶鋼上方から添加すればよい。CaFは使用しなくてもよいが、使用すれば添加した精錬剤の滓化が促進され、スラグ精錬処理効果が高まることは当然である。
(3)工程3(溶鋼環流処理)
工程2を終了後、RH(溶鋼環流型真空脱ガス処理装置)を用いて、溶鋼の脱ガスおよび介在物量低減を図る溶鋼環流処理を行う。RHでの処理時間は、溶鋼成分を微調整するための合金鉄等の添加完了後に溶鋼を還流させる処理の時間が20分間以上必要であり、それを25分間以上行うことが溶鋼中介在物の存在量を十分低減するために好ましい。
ただし、溶鋼環流処理時間を長くすると溶鋼温度が低下するため、この後に行う連続鋳造に支障のない温度を確保する観点から、この処理時間は30分間程度に留めることが適当と言える。RHでの処理時間は、溶鋼成分の微調整処理を含めるとおよそ30〜40分間となる。
(4)連続鋳造および圧延等
その後、連続鋳造して横断面が300mm×400mm程度の鋳片にし、さらに、鋳片を分塊圧延および棒鋼圧延で、圧下比が10以上の熱間圧延を実施することが好ましい。圧下比とは鋳片の断面積を最終の圧下によって得られた圧延軸受鋼鋼材の断面積で除した値を示す。圧下比を10以上とすることによって、複数からなる群にて存在する介在物間の距離を大きくし、一体として判断される介在物が低減されるからである。
(5)超音波疲労試験
例えば、上記したように製造した棒鋼から、その長手方向横断面(つまり、棒鋼の圧延方向に直角に切断した面)に対して表面と中心の中間位置であるR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)を基準として、圧延方向と平行な方向に適当な形状の板材を切り出して、その板材を、適宜焼きならし、球状化焼きなましを行った後、その板材から適当な形状の超音波疲労試験片を複数作製する。
その試験片を用いて、破壊が起こるまで超音波疲労試験を実施し、その破壊起点となった介在物をエネルギー分散型X線分光法によって組成分析して、その内でその介在物が硫化物系介在物であるものについて、それを構成するS含有化合物の平均組成を算術平均により求める。
この試験は、各棒鋼について8回以上行い、その破壊起点が硫化物系化合物であったサンプルを4個以上得た上で、それらを構成するS含有化合物の算術平均を求めて組成制御の成否を判断することが望ましい。
先ず、高炉から出銑された溶銑を溶銑予備処理にて脱硫し、70t転炉にて脱りんおよび脱炭処理した後、取鍋に出鋼した。取鍋に出鋼する際にはAlを添加して溶鋼を脱酸し、合金元素を添加し、その後取鍋内の溶鋼上にあるスラグを除去してから保温用のフラックスを添加した。
次に、取鍋精錬処理として、工程1:フラックス吹込み処理、工程2:スラグ精錬処理、工程3:溶鋼環流処理を順次行った後、連続鋳造、分塊圧延、棒鋼圧延を行って、Oが0.0010質量%以下、かつSが0.0040質量%以下であるJIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の化学組成を満足する鋼材(棒鋼)を製造した。
このとき、比較例として、工程1:フラックス吹込み処理を省略した処理も行った。表1に、本発明と比較例の鋼材の成分をまとめて示す。
Figure 0005803815
表1に記載した鋼は、全てJIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材のSUJ2の化学組成を満たしたものであるが、比較例として挙げた鋼15と鋼16は、本発明に規定するSが0.0040%以下の範囲から外れている。
(1)工程1:フラックス吹込み処理
取鍋内の溶鋼を粉体吹込み装置まで搬送した後、溶鋼にバブリングランスを介してArガスとともにCaO系精錬フラックスを吹込み、溶鋼を撹拌した。
ここで、「CaO系精錬フラックス」は、CaOを45〜55質量%、Alを30質量%以下含み、最大粒径が1.0mm以下の粉末のものを使用した。
表2に、本発明と比較例のフラックス吹込み処理条件を纏めて示す。
Figure 0005803815
本発明の実施例である鋼1〜鋼9の処理では、CaO系精錬フラックスを溶鋼1tあたり1.0〜2.6kgを、5分間かけて吹き込んだ。このうち、鋼1〜鋼8の処理では、(1)式から求まる撹拌動力密度が180W/t以上370W/t以下の条件で吹き込み、鋼9の処理ではそれが380W/tの条件で吹き込んだ。
さらに、本発明の実施例である鋼10〜鋼14の処理では、CaO系精錬フラックスを溶鋼1tあたり2.8〜3.6kgを、5分間かけて吹き込んだ。このとき、(1)式から求まる撹拌動力密度が180W/t以上370W/t以下の条件で吹き込んだ。
一方、比較例である鋼15と鋼16の処理では、実施例と同じフラックスを溶鋼1tあたり0.8kg、0.9kgと、本発明の規定範囲である1.0kg以上を満たさない量を、(1)式から求まる撹拌動力密度がそれぞれ170W/t、400W/tの条件で、5分間かけて吹きこんだ。
その結果、鋼15ではフラックス吹込み量が少なく、かつ、撹拌動力密度も低くしたために、鋼材中のSが0.007%と高め外れになる一因となった。また、後述するように、介在物中のCaS濃度が0.2%と低く外れて、転動疲労寿命が低くなる原因となった。
鋼16ではフラックス吹込み量は少なくしたものの、撹拌動力密度は本発明の規定範囲より大きく設定したが、やはり鋼材中のSが0.006%と高め外れの一因となり、かつ、介在物中のCaS濃度が0.8%と低く外れて、転動疲労寿命が低くなる原因となった。したがって、フラックス吹込み量が不足している場合、撹拌動力密度を高くしても介在物組成を改善する効果を上げることができないと分かった。
ところで、本発明の実施例である鋼9の処理と比較例である鋼16の処理では、吹き込み時の撹拌動力密度をそれぞれ380W/tおよび400W/tと高くしたところ、吹き込み中に溶鋼が溢れるトラブルが発生した。他の実施例である鋼1から鋼8および鋼10〜鋼14の処理では、撹拌動力密度が180W/t以上370W/t以下の条件で吹き込んで、溶鋼が溢れるトラブルもなく、後述するように所期の効果をあげることができていたことから、撹拌動力密度は370W/t程度以下が通常好適であると考えられる。
なお、比較例として記載した鋼17〜19の処理は、フラックス吹込みを行わずに、従来のVAD処理とRH処理だけを行って製造した例である。
フラックス吹込み処理を行わなくても、表1に記載したように本発明で規定する化学成分を満たす鋼の溶製は可能であるが、後述するように介在物中のCaS濃度が1%未満の例が発生して、転送疲労寿命が十分改善されないことがあるので、別途注意を必要とする。
(2)工程2:スラグ精錬処理
その後、VADを用いてスラグメタル反応を伴うスラグ精錬処理を行い、溶鋼組成および介在物組成を調整するとともに、溶鋼温度を調整した。この時、追加する精錬剤として生石灰および工程1で吹き込んだ精錬用フラックスをCaO/Al質量比で2〜3程度になるように調整したものと、CaF源としての蛍石とを合計して6〜14kg/t添加した。VADではおよそ40分間処理し、その間に溶鋼温度はおよそ1550℃から1580℃で推移させた。
表3に、本発明と比較例のVAD処理条件を、処理後のスラグ組成と共に纏めて示す。
Figure 0005803815
実施例、比較例を通じて、比較例である鋼18の処理でCaO/SiO質量比が4.8とやや低めに外れていたほかは、所定のスラグ成分範囲に制御されていた。
(3)工程3:溶鋼環流処理
さらにRH(溶鋼環流型真空脱ガス処理装置)を用いて、溶鋼の脱ガスおよび介在物量低減を図る溶鋼環流処理を行った。RHでの処理時間は、溶鋼成分を微調整するための合金鉄等の添加完了後に溶鋼環流処理を25〜30分間行い、溶鋼温度調整や成分微調整のための処理を含めて、全部でおよそ40分間であった。この時、溶鋼温度はおよそ1520℃から1550℃で推移させた。
(4)連続鋳造、分塊圧延、棒鋼圧延
その後、連続鋳造法により鋳込み、300mm×400mmサイズの鋳片を得た。
上記のようにして得た鋳片を均熱炉で1250℃に保持した後、1100℃〜1050℃の温度域で分塊圧延して160mm×160mmの鋼片とし、さらにその鋼片を1200℃に加熱した後、1100℃〜1020℃の温度域で棒鋼圧延して直径70mmの棒鋼を製造した。この分塊圧延および棒鋼圧延を通じた圧下比は、31.2である。
(5)超音波疲労試験
先ず、上記した直径70mmの棒鋼から、その長手方向横断面(つまり、棒鋼の圧延方向に直角に切断した面)に対して表面と中心の中間位置であるR/2部(「R」は棒鋼の半径を表す。)を基準として、圧延方向と平行な方向に厚さ14mm、幅45mm、長さ200mmの板材を切り出して、その板材を、860℃で60分間保持した後に大気中で室温まで空冷する焼ならしを行い、さらに、795℃にて6時間保持した後、炉冷して球状化焼なましを行った後に、その板材から超音波疲労試験片を各鋼19本ずつ採取した。
上記のようにして採取した粗形状の超音波疲労試験片を、830℃で30分加熱した後、油焼入れし、さらに、180℃で1時間加熱した後、大気中で室温まで放冷して焼戻しを行った。
次いで、仕上げ加工して超音波疲労試験片とし、それを用いて超音波疲労試験を実施した。具体的には、株式会社島津製作所製の超音波疲労試験機USF−2000を用いて、周波数20kHz、応力振幅900MPa、応力比−1の条件で、破壊が起こるまで疲労試験を行った。なお、繰り返し数が1.0×10となっても破壊しなかった場合は、応力を20MPaずつ増加させることによって、破壊が起こるまで疲労試験を実施した。
超音波疲労試験の破壊起点となった介在物をエネルギー分散型X線分光法によって組成分析し、その内で硫化物系介在物であったものについてそれを構成するS含有化合物の平均組成を算術平均により求めた。
なお、各鋼において、硫化物系介在物と判定される介在物を構成していたS含有化合物の平均的組成は、超音波疲労試験の破壊起点となった介在物とほぼ同じであった。
(6)転動疲労試験
その後さらに、直径70mmの棒鋼の中心から、棒鋼の長手方向が素形材の厚みとなるように、直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材をスライスして採取した。
上記直径が60mmで厚みが5.5mmの素形材を、830℃で30分加熱した後、油焼入れし、さらに、180℃で1時間加熱した後、大気中で室温まで放冷して焼戻しを行った。このようにして焼入れ−焼戻しした素形材の表面をラッピング加工して転動疲労試験片を作製し、転動疲労試験に供した。
転動疲労試験は、スラスト型の転動疲労試験機を用いて、最大接触面圧5230MPa、繰り返し速度1800cpm(cycle per minute)の条件で、試験数を10として行った。
表4に、転動疲労試験の詳細条件を示す。
Figure 0005803815
転動疲労試験結果はワイブル分布確率紙上にプロットし、10%破損確率を示すL10寿命を「転動疲労寿命」として、転動疲労特性を評価した。
表5に転動疲労特性評価および超音波疲労試験の破壊起点となった硫化物組成評価の結果を纏めて示す。表5に記載した「硫化物平均組成」は、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成の意味であり、そのMnS濃度はCaS、MgSおよびMnSの3成分の合計が95%以上であるものに関し、便宜的に「100−(CaS濃度+MgS濃度)」を記載してある。
Figure 0005803815
本発明の実施例である鋼1〜鋼14は、いずれも介在物中で硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が、CaS:1.0質量%以上、MgS:0〜20質量%、かつ、CaS、MgSおよびMnSの3成分の合計が95質量%以上に制御されていて、転動疲労寿命も4.8×10以上と良好であった。
一方、比較例のうち、工程1の要件を満たさなかった鋼15および鋼16に関しては、既に説明したように各鋼において介在物組成の制御が不十分になった結果、硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が、CaS:1.0質量%以上とならず、転動疲労寿命が1.5×10以下に留まった。
また、比較例のうち、工程1を行わなかった鋼17〜鋼19は、今回の調査ではいずれも介在物の組成を所定範囲に制御することができていなかったものを記載した。

Claims (2)

  1. 質量%で、Oが0.0010%以下、かつSが0.0040%以下であるJIS G4805(2008)に規定された高炭素クロム軸受鋼鋼材の化学組成を満足する鋼材の溶製方法であって、
    下記工程1〜工程3の順に取鍋精錬処理を行うことにより、
    硫化物系介在物を構成するS含有化合物の平均組成が、質量%で、CaS:1.0%以上、MgS:0〜20%、かつ、CaS、MgSおよびMnSの3成分の合計が95%以上になるように、硫化物系介在物を制御し、制御される前記硫化物系介在物は、工程1〜工程3の順に取鍋精錬処理を施した後に溶鋼を連続鋳造し、その後分塊圧延および棒鋼圧延して製造した棒鋼を対象として超音波疲労破壊試験を行った際に、その破壊起点となる硫化物系介在物であること
    を特徴とする高炭素クロム軸受鋼鋼材の溶製方法。
    工程1:転炉または電気炉から取鍋に出鋼した溶鋼中に、バブリングランスを介して、質量%で、CaO:40〜70%、Al:30%以下を含有する精錬フラックスを、溶鋼1t当たり1.0〜2.6kg吹き込む工程。
    工程2:工程2の処理終了時の溶鋼上スラグ組成が、質量%で、CaO:35〜65%、Al:10〜35%、SiO:10%以下(0%を含まない)、MgO:0〜15%、CaF:0〜30%、CaO/SiO:6.0以上およびCaO/Al:1.8〜3.5であって、かつ、そのスラグ量が、溶鋼1トン当たり5〜15kgになるように精錬剤を添加し、溶鋼および溶鋼上スラグをその添加した精錬剤とともに撹拌する工程。
    工程3:溶鋼環流型真空脱ガス処理装置を用いて、溶鋼成分調整後に溶鋼を還流させる処理を20分間以上行う工程。
  2. 前記工程1において、前記CaO系精錬フラックスを溶鋼1t当たり2.6〜3.6kg吹き込むことを特徴とする請求項1に記載された軸受鋼鋼材の溶製方法。
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