JP6569694B2 - 高清浄度鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酸化物系非金属介在物量が少ない鋼、すなわち高清浄度鋼の製造方法に関するものである。
軸受け鋼に代表されるように、優れた転動疲労寿命や静粛性が求められる鋼材においては、鋼中の非金属介在物を極力低減することが必要である。鋼中の非金属介在物は、脱酸時に生成する酸化物系脱酸生成物、スラグや耐火物の巻き込みによる生成物、及び鋼中合金元素の炭・窒・硫化物が挙げられる。
溶鋼に対してAl脱酸を行って軸受け鋼など鋼製品を製造する場合、脱酸直後の介在物は基本的にAl2O3系である。しかし、Al2O3系が、例えば溶鋼中に懸濁したスラグ由来のCaO系介在物と凝集合体を形成してCaO-Al2O3系介在物となったり、溶鋼中のAlがスラグや耐火物中のMgOと反応して鋼中にMgが生成し、これが鋼中のAl2O3系介在物と反応することでMgO-Al2O3系介在物が形成されたりすることが知られている。中でも、MgO-Al2O3系介在物は硬質であるため、転動疲労寿命に及ぼす影響が大きく、その低減は重要な課題である。そのため、スラグや耐火物中のMgOの還元を抑制するために、脱酸材であるAlの添加態様を適切にすることが重要である。
このような高清浄度鋼の製造における脱酸材であるAlの添加態様に関して、以下の技術が知られている。特許文献1には、取鍋精錬工程において、Al以外でかつSiを含有する脱酸剤によって脱酸を行い、次いで溶鋼中の溶存酸素量が30ppm以下となった時点で、溶鋼中のAlが0.010%未満を満足するAl量を含有する脱酸剤により脱酸する方法が記載されている。特許文献2には、Al以外の元素により脱酸した溶鋼に、表面のスラグを除去した後、CaO、CaF2、MgOおよびCaCO3のうちの一種以上を含む非脱酸剤フラックスを吹き込んで予備脱酸を行い、次いで、フラックス精錬を行うとともにそのフラックス精錬の間にAlを添加して脱酸する方法が記載されている。特許文献3には、取鍋精錬工程の加熱撹拌処理中に、溶鋼にアルミニウムを添加しないか、又は、添加する場合は溶鋼のアルミニウム濃度を0.003質量%以下とする方法が記載されている。
特開2009−74151号公報 特開平10−298631号公報 特開2012−132094号公報
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。すなわち、特許文献1では、溶鋼中の溶存酸素量が30ppm以下となった時点で、溶鋼中のAlが0.010%未満を満足するAl量を含有する脱酸剤により脱酸すると規定しているが、Al濃度が低くともAl添加後の処理時間が長くなれば、スラグあるいは耐火物中のMgOが還元されて生成したMgがAl2O3系介在物と反応することで、MgO-Al2O3系介在物の生成が懸念される。
特許文献2では、Al以外の元素により脱酸した溶鋼に対して、取鍋精錬においてフラックスを吹き込んで予備脱酸を行い、その最中にAlを添加して脱酸する方法を提案しているが、特許文献1と同様にAlの添加時期が不明確であり、またAl濃度についても言及されていない。このため、スラグあるいは耐火物中のMgOが還元されて生成したMgがAl2O3系介在物と反応して、MgO-Al2O3系介在物が生成することは十分に起こり得る。
特許文献3では、加熱撹拌処理中に、溶鋼にAlを添加しないか、添加する場合には溶鋼のAl濃度を0.003質量%以下とすると規定しているが、Alを添加せずとも処理時間が長くなれば、スラグ中から還元されたAlがスラグや耐火物中のMgOを還元するようになり、MgO-Al2O3系介在物が生成する可能性がある。また、添加するAl濃度が0.003質量%以下と低くとも、特許文献1,2と同様に、Al添加時期に対して具体的に言及されておらず、加熱処理の時間や、Al添加後の時間が長くなれば、MgO-Al2O3系介在物の生成は十分に起こり得る。
そこで本発明は、上記課題に鑑み、MgO-Al2O3系介在物の生成を十分に抑制し、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]転炉又は電気炉より出鋼し取鍋精錬炉内に収容した溶鋼に対して、前記溶鋼をアーク放電で加熱しつつ前記溶鋼内にガスを導入する加熱撹拌処理を含む精錬を行う取鍋精錬工程と、
その後、前記溶鋼を真空脱ガス装置内で引き続き精錬する工程と、
を有する高清浄度鋼の製造方法であって、
前記取鍋精錬工程は、Al未添加の前記溶鋼にCaO、SiO2、Al2O3、およびMgOを含むフラックスを添加して行い、全処理時間を40〜80分とし、その精錬途中にAlを前記溶鋼中に添加し、その後30分以内に処理を終えることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法。
Figure 0006569694
[3]前記取鍋精錬工程において、処理終了時の前記溶鋼中の溶存Al濃度を0.020質量%以下とする、上記[1]又は[2]に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[4]前記取鍋精錬工程において、フラックス添加後のスラグ組成が3.0≦CaO/SiO2≦6.0、かつ、1.0≦CaO/Al2O3≦2.2を満たす、上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[5]前記真空脱ガス装置による精錬後の、前記溶鋼中のトータル酸素濃度を0.0010質量%以下とする、上記[1]〜[4]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
[6]前記溶鋼は、前記転炉又は前記電気炉より出鋼した段階で炭素濃度が0.30質量%以上である、上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
本発明によれば、MgO-Al2O3系介在物の生成を十分に抑制し、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼を製造することが可能となる。
本発明者らは、軸受け鋼に代表される高清浄度鋼の疲労寿命調査試験を種々実施した。疲労試験時に発生した割れ部を観察すると、その起点にMgO-Al2O3系介在物の存在が確認された。さらに調査の結果、MgO-Al2O3系介在物は硬質であり、母相である鋼と変形能が異なるため、介在物の周囲に空隙が生じやすく、亀裂が発生することが分かった。特に介在物中のMgO濃度が10質量%以上のMgO-Al2O3介在物が硬質である。したがって、製品の疲労寿命向上のためには、このような鋼中のMgO-Al2O3系介在物の生成を抑止することが重要となる。
次に、MgO-Al2O3系介在物の生成機構は(2)式及び(3)式による。つまり、積極的なスラグ精錬が実施される取鍋精錬において、スラグあるいは耐火物中のMgOが溶鋼中のAlにより還元され、溶鋼中に生成したMgがAl2O3系介在物と反応することで、MgO-Al2O3系の介在物が生成する。
3(MgO) + 4[Al] = 3[Mg] + 2(Al2O3) ・・・(2)
3[Mg] + 4(Al2O3) = 3(MgO・Al2O3) + 2[Al] ・・・(3)
ここで、()内の酸化物は、スラグ中、耐火物中あるいは介在物中の酸化物であり、[]の成分は溶鋼中の成分である。これらの反応を右側へ進行させない、つまりMgO-Al2O3系介在物を生成させないためには、(2)式に示した溶鋼中Alとスラグあるいは耐火物中のMgOとを極力反応させないこと、つまりAlを取鍋精錬の初期から添加せず、添加時期を適切に制御し、MgOとの反応時間を極力短くすることが、溶鋼中へのMg生成、さらにはMgO-Al2O3系介在物生成の抑制に有効であると考えられる。
そこで本発明の一実施形態による高清浄度鋼の製造方法は、転炉又は電気炉より出鋼し取鍋精錬炉内に収容した溶鋼に対して、前記溶鋼をアーク放電で加熱しつつ前記溶鋼内にガスを導入する加熱撹拌処理を含む精錬を行う取鍋精錬工程と、その後、前記溶鋼を真空脱ガス装置内で引き続き精錬する工程と、を有し、前記取鍋精錬工程は、Al未添加の前記溶鋼にCaO、SiO2、Al2O3、およびMgOを含むフラックスを添加して行い、全処理時間を40〜80分とし、その精錬途中にAlを前記溶鋼中に添加し、その後30分以内に処理を終えることを特徴とする。ここで定める「全処理時間」とは、取鍋精錬における通電開始から、溶鋼成分・温度を最終調整後に底吹きArガスを停止するまでの時間である。
以下、全処理時間及びAl添加後の時間を定めた理由を説明する。取鍋精錬において、Alを比較的処理の前半に添加し、添加後30分より長く処理を続けると、溶鋼中のAlとスラグあるいは耐火物中のMgOとの反応が進み、溶鋼中のMgが増加し、このMgがAl2O3系の介在物と反応してMgO-Al2O3系介在物が多く生成してしまう。また、取鍋精錬の全処理時間が40分より短いと、スラグ滓化・スラグ精錬の時間が確保できず、脱硫や脱酸が不十分である。一方、取鍋精錬の全処理時間が80分より長くなると、鋼中酸素の低減は頭打ちとなり、むしろ操業コストがかさむことになる。加えて、処理時間が長くなると、溶鋼中のSiや電極のCによりスラグ中のAl2O3が還元され、溶鋼中のAlが増加し、そのAlがスラグ中のMgを還元し、脱酸生成物のAl2O3と反応してMgO-Al2O3系介在物の生成に至る。以上より、取鍋精錬において全処理時間を40〜80分とし、Alを処理途中に添加し30分以内に処理を終えることで、溶鋼中のMg生成及びMgO-Al2O3系介在物の生成を抑制することが可能である。
Figure 0006569694
Figure 0006569694
さらに、本発明者らは介在物組成に着目した。軸受け鋼の転動疲労寿命等に影響を及ぼすMgO-Al2O3系介在物について調査したところ、調査した介在物の平均MgO濃度が転動疲労寿命と相関をもつことが分かり、平均MgO濃度が高いほど疲労寿命が低下することが判明した。これは、MgO-Al2O3系介在物は、そのMgO濃度が高いほど硬質になるためであると考えられる。特に、MgO濃度が大よそ20質量%を超えると、スピネル型構造を有した硬質のMgO-Al2O3系介在物となるため、少なくとも平均MgO濃度が10質量%を下回ることが、疲労寿命を向上させる上で好ましい。ここで、「平均MgO濃度」とは、検出した介在物のMgO濃度を検出個数により平均化した値である。
取鍋精錬終了時における溶鋼中のAl濃度と、当該溶鋼から製造した製品丸棒または線材の長手方向断面にて検出された介在物中の平均MgO濃度との関係を調査した。すると、Al添加量を制御することにより、取鍋精錬終了時における溶鋼中のAl濃度を0.020質量%以下に制御することで、MgO-Al2O3系介在物中の平均MgO濃度が10質量%未満となることが分かった。溶鋼中Al濃度を0.020質量%以下にすることで、スラグあるいは耐火物中のMgOを還元する力が弱まり、溶鋼中でのMgの生成、さらにMgのAl2O3系介在物との反応が抑制されるためである。従って、取鍋精錬終了時における溶鋼中Al濃度を0.020質量%以下、望ましくは0.010質量%以下、さらに望ましくは0.005質量%以下に制御して、MgO-Al2O3系介在物の平均MgO濃度が10質量%を下回るように制御することが、転動疲労寿命向上に重要である。
また、更なる調査により取鍋精錬におけるスラグ中のCaO/SiO2及びCaO/Al2O3にも適切な範囲があることが分かった。CaO/Al2O3に関しては、1.0より小さくなると、スラグ粘度が高くなり電極に付着することで加熱阻害の要因となることや、Al2O3系介在物の吸収能が低下して清浄性を悪化させる懸念がある。一方、CaO/Al2O3が2.2より大きくなると、(2)式に示したような溶鋼中Alによるスラグ中MgOの還元が起こり易くなり、MgO-Al2O3系介在物生成の要因となる。従って、フラックス添加後の取鍋精錬中および取鍋精錬終了時におけるCaO/Al2O3は1.0〜2.2の範囲で制御するのが良い。
また、CaO/SiO2に関しては、3.0より小さくなると、溶鋼が再酸化により汚染される懸念がある。一方、CaO/SiO2が6.0より大きくなると、スラグ中MgOは固相飽和に近づくため活量が増大し、溶鋼中へMgが生成し易くなる。つまり、フラックス添加後の取鍋精錬中および取鍋精錬終了時におけるCaO/SiO2は3.0〜6.0の範囲で制御するのが良い。
なお、スラグ中のMgO濃度が増加すると、MgO活量が増大し溶鋼中にMgを生成させやすくなるため、スラグ中MgO濃度を5質量%以下にすることが好ましい。ここで、フラックス添加後のスラグ組成が3.0≦CaO/SiO2≦6.0、かつ、1.0≦CaO/Al2O3≦2.2を満たすとき、製品丸棒または線材の長手方向断面にて検出された介在物中の平均MgO濃度は5質量%より小さく、優れた転動疲労寿命を達成することができた。よって、スラグ組成範囲は上記に制御することが好ましい。
さらに、真空脱ガス装置による精錬後の溶鋼成分を調査したところ、溶鋼中のトータルMg濃度を2.0ppm以下にすることで、製品中における介在物中の平均MgO濃度が20質量%以下となり、スピネル組成を回避できることが分かった。ここで、「トータルMg濃度」とは、溶鋼を化学分析して求めた分析値であり、介在物中のMgと溶存Mgの合計を表す。一方、溶鋼中のトータルMg濃度が2.0ppm超えになると、製品中における介在物中の平均MgO濃度が20質量%超えになるため、スピネル安定となり転動疲労寿命が低下する。したがって、真空脱ガス装置による精錬後の溶鋼中トータルMg濃度は2.0ppm以下にすることが好ましく、より好ましくは1.0ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下である。なお、真空脱ガス装置による精錬後の溶鋼中のトータルMg濃度は、取鍋精錬工程におけるAl添加後の処理時間や、フラックスの成分組成を適正化することによって、制御することができる。
また、取鍋精錬を終えた後の溶鋼に真空脱ガス処理を施すことで、溶鋼中の介在物の浮上分離を促進し、鋼中のトータル酸素濃度を0.0010質量%以下に制御することが可能であることが分かった。本実施形態では、Alを取鍋精錬途中に添加するため、取鍋精錬のみでは生成する介在物の浮上分離時間を十分に確保できない恐れがあるが、取鍋精錬後の溶鋼を真空脱ガス処理に供することで、溶鋼中の介在物を浮上分離することが可能であり、清浄度の高い鋼が得られる。このとき、真空脱ガス処理について、RHプロセスやVODプロセス等の真空処理機能を有したものであれば、本発明に記載の効果が得られる。
本発明は高清浄度鋼全般に適用可能であるが、特に、炭素を0.30質量%以上含む鋼に適用することが望ましい。本発明では前述したように、取鍋精錬の最中にAlを添加し脱酸を行うが、Al添加前の酸素は予め下げておくことが清浄度鋼の溶製には効果的である。つまり、Cを0.30質量%以上含有することで、Cによる予備脱酸効果が期待でき、Al脱酸後の生成介在物量を最小化することができる。
(実施例1)
1チャージの溶鋼量が約200トンの規模の実機にて、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス炉−連続鋳造の工程で高清浄度鋼の代表として挙げられる軸受け鋼を製造した。軸受け鋼の成分組成は、炭素濃度0.90質量%以上1.10質量%以下、ケイ素濃度0.15質量%以上0.25質量%以下、マンガン濃度0.45質量%以下、リン濃度0.020質量%以下、イオウ濃度0.0050質量%以下、アルミニウム濃度0.030質量%以下、クロム濃度1.4質量%以上1.7質量%以下、窒素濃度0.0050質量%以下、残部は鉄及び不可避的不純物である。
取鍋精錬工程は、Al未添加の前記溶鋼にCaO、SiO2、Al2O3、およびMgOを含むフラックスを添加して行い、溶鋼をアーク放電で加熱しつつ溶鋼内にガスを導入する加熱撹拌処理を含む精錬を行った。その際、全処理時間及びAl添加から取鍋精錬終了までの時間を表1に示すように種々変更した。その後RH真空脱ガスを経て、連続鋳造によりブルーム鋳片(300×400mm断面)を製造した。
ブルーム鋳片に対して、熱処理を施した後、直径215mmのビレットに圧延した。このビレットをさらに熱間圧延により直径60mmの棒鋼とし、焼鈍処理を経て、製品丸棒とした。この製品丸棒の1/4厚部における圧延方向の縦断面を、検鏡法により観察した。被検面積は3000mm2とした。検鏡法での介在物測定と併せて、SEM(走査型電子顕微鏡)及びEDX(エネルギー分散型X線分光法)により介在物組成を特定し、MgO-Al2O3系介在物の個数を測定して、清浄度を評価した。長さと幅の積の1/2乗で計算される平均径が3μm以上のMgO-Al2O3系介在物の個数と10μm以上のMgO-Al2O3系介在物の個数(1000mm2あたり)を表1に示す。
更に、製品寿命評価のため転動疲労寿命試験を実施した。試験は上記製品丸棒を輪切りにして円盤に粗加工し、通常の焼入れ及び低温焼戻しの熱処理を施した後に、表面を機械仕上げ加工して試験片を製作した。この試験片を用いて転動疲労寿命試験を行った。この転動疲労寿命試験には森式スラスト型転動疲労試験機を用い、ヘルツ最大接触応力:5260MPa、繰り返し応力数:30Hz、潤滑油:#68タービン油の条件で行った。試験は、試験片が剥離するまでの負荷回数を測定し、その試験結果がワイブル分布に従うものとして、試験片数の10%が疲労破壊する寿命(B10寿命)をワイブル確率紙により求めた。結果を表1に示す。
Figure 0006569694
本発明例においては、3μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は88〜99個/1000mm2、10μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は1.7〜2.2個/1000mm2と低位であり、B10寿命は3.1〜5.2×107回と高位であった。一方、比較例No.1〜4,6においては、3μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は121〜156個/1000mm2、10μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は2.6〜3.6個/1000mm2と高位であり、B10寿命は0.3〜2.4×107回と低位であった。また、取鍋精錬の全処理時間が本発明の条件よりも短い比較例No.5では、MgO-Al2O3系介在物個数は低位であったものの、スラグ精錬による脱酸や脱硫等が進まず、B10寿命は低位であった。
(実施例2)
実施例1と同様に、1チャージの溶鋼量が約200トンの規模の実機にて、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス炉−連続鋳造の工程で実施例1と同組成の軸受け鋼を製造した。取鍋精錬炉にて本発明例を満足するようAlを溶鋼中に添加するとともに、Arガス流量を制御することによって式(1)で定義する撹拌動力を表2に示すように種々変更した。清浄性及びB10寿命の評価方法は実施例1と同じとした。結果を表2に示す。なお、表2において、「介在物中の平均MgO濃度」とは、被検面積3000mm2で検出した介在物のMgO濃度を検出個数で加算平均した値であり、表3〜6でも同様である。
Figure 0006569694
これらの発明例では、3μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は73〜98個/1000mm2、10μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は1.3〜2.2個/1000mm2と低位であり、B10寿命は3.0〜6.9×107回と高位であった。中でも、撹拌動力を本発明の好適範囲内で制御した本発明例No.7〜12では、介在物中の平均MgO濃度をさらに少なくすることができており、特に高いB10寿命を得ることができた。
(実施例3)
実施例1と同様に、1チャージの溶鋼量が約200トンの規模の実機にて、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス炉−連続鋳造の工程で実施例1と同組成の軸受け鋼を製造した。取鍋精錬炉にて本発明例を満足するようAlを溶鋼中に添加し、さらに、Al添加量を制御することによって、取鍋精錬終了時の溶鋼中Al濃度を表3に示す種々の値に制御した。清浄性及びB10寿命の評価方法は実施例1と同じとした。結果を表3に示す。
Figure 0006569694
これらの発明例では、3μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は55〜84個/1000mm2、10μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は0.8〜1.6個/1000mm2と低位であり、B10寿命は5.4〜8.5×107回と高位であった。中でも、取鍋精錬終了時の溶鋼中Al濃度を0.020質量%以下とした発明例No.4〜9では、介在物中の平均MgO濃度が10質量%を下回っており、特に高いB10寿命を得ることができた。また、取鍋精錬におけるAl添加前の溶鋼中酸素活量を酸素プローブで測定したところ、0.0030以下であった。溶鋼中酸素活量が0.0030より高い場合は、Al添加時に生成した介在物量が比較的多く、最終的に十分除去されない恐れがあるため、溶鋼中酸素活量は0.0030以下に低下した上でAlを添加することが望ましい。
(実施例4)
実施例1と同様に、1チャージの溶鋼量が約200トンの規模の実機にて、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス炉−連続鋳造の工程で実施例1と同組成の軸受け鋼を製造した。取鍋精錬炉にて本発明例を満足するようAl添加時期および終点におけるAl濃度を制御するとともに、フラックス添加後のスラグ組成(取鍋精錬終了時)も表4に示す種々の値に制御した。清浄性及びB10寿命の評価方法は実施例1と同じとした。結果を表4に示す。
Figure 0006569694
これらの発明例では、3μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は41〜81個/1000mm2、10μm以上のMgO-Al2O3系介在物個数は0.6〜1.4個/1000mm2と低位であり、B10寿命は5.8〜9.3×107回と高位であった。中でも、スラグ組成を3.0≦CaO/SiO2≦6.0、かつ、1.0≦CaO/Al2O3≦2.2に制御した発明例No.4〜9では、介在物中の平均MgO濃度が5質量%を下回っており、特に高いB10寿命を得ることができた。
(実施例5)
実施例1と同様に、1チャージの溶鋼量が約200トンの規模の実機にて、転炉−取鍋精錬炉−RH真空脱ガス炉−連続鋳造の工程で実施例1と同組成の軸受け鋼を製造した。取鍋精錬炉にて本発明例を満足するようAl添加時期および終点におけるAl濃度を制御するとともに、フラックス添加後のスラグ組成も制御した。清浄性及びB10寿命の評価方法は実施例1と同じとした。また、比較のため、取鍋精錬による加熱処理後、RH真空脱ガス炉を通さず、そのまま連続鋳造に供する試験も併せて実施した。結果を表5に示す。
Figure 0006569694
RH真空脱ガス処理を行った本発明例では、鋼中トータル酸素濃度が0.0004〜0.0007質量%であり、0.0010質量%以下になっており、B10寿命は9.2〜9.7×107回と良好であった。一方、RH真空脱ガス処理を未実施の比較例においては、鋼中トータル酸素濃度が0.0017〜0.0021質量%と0.0010質量%を大きく上回っており、B10寿命も0.2〜0.6×107回と低調であった。
本発明によれば、MgO-Al2O3系介在物の生成を十分に抑制し、転動疲労寿命に優れた高清浄度鋼を製造することが可能となる。

Claims (6)

  1. 転炉又は電気炉より出鋼し取鍋精錬炉内に収容した溶鋼に対して、前記溶鋼をアーク放電で加熱しつつ前記溶鋼内にガスを導入する加熱撹拌処理を含む精錬を行う取鍋精錬工程と、
    その後、前記溶鋼を真空脱ガス装置内で引き続き精錬する工程と、
    を有する高清浄度鋼の製造方法であって、
    前記取鍋精錬工程は、Al未添加の前記溶鋼にCaO、SiO2、Al2O3、およびMgOを含むフラックスを添加して行い、全処理時間を40〜80分とし、その精錬途中にAlを前記溶鋼中に添加し、その後30分以内に処理を終えることを特徴とする高清浄度鋼の製造方法。
  2. Figure 0006569694
  3. 前記取鍋精錬工程において、処理終了時の前記溶鋼中の溶存Al濃度を0.020質量%以下とする、請求項1又は2に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  4. 前記取鍋精錬工程において、フラックス添加後のスラグ組成が3.0≦CaO/SiO2≦6.0、かつ、1.0≦CaO/Al2O3≦2.2を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  5. 前記真空脱ガス装置による精錬後の、前記溶鋼中のトータル酸素濃度を0.0010質量%以下とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
  6. 前記溶鋼は、前記転炉又は前記電気炉より出鋼した段階で炭素濃度が0.30質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の高清浄度鋼の製造方法。
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