JP4646872B2 - 軟磁性鋼材、並びに軟磁性部品およびその製造方法 - Google Patents
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C:0.005〜0.05%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:1.8〜3.0%、
Mn:0.20〜0.8%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.02〜0.1%、
Cu:0.1%以下(0%を含まない)、
Ni:0.2%以下(0%を含まない)、
Cr:1〜3.5%、
Al:0.05〜2.8%、
N:0.004%以下(0%を含まない)、および
O:0.02%以下(0%を含まない)
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
下記式(1)で計算されるF1値が60以上であることを特徴とするものである。
F1=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34.0[N]+8.38 ・・・ (1)
〔式中、[ ]は、それぞれ軟磁性鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕
F=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34[N]−120[B]−0.2[Ti]
+4.5[V]+2.9[Bi]+8.38 ・・・ (6)
〔式中、[ ]は、それぞれ軟磁性鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕
Cは、鋼材の強度と延性のバランスを支配する元素であり、含有量が少ないほど強度は低下し、延性は向上する。またCは鋼中に固溶し、ひずみ時効が生じるので、冷間鍛造性の観点から、極低Cが望ましい。また軟磁性部品の磁気特性を向上させるためにも、極低Cとすることが好ましい。よって本発明では、C量の上限を0.05%と定めた。C量は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.02%以下である。一方、C量を低減しすぎると、部品の強度が低下し、且つ電気抵抗、ひいては交流磁束密度が低下する。そこでC量の下限を0.005%と定めた。C量は、好ましくは0.010%以上である。
Siは、溶製時に脱酸剤として用いられるものであり、また部品の交流磁束密度を向上させる作用を有する。このような作用を充分に発揮させるためにSi量の下限を1.8%と定めた。Si量は、好ましくは2.0%以上である。しかしSi量が過剰であると、鋼材の冷間鍛造性が劣化する。そこでSi量の上限を、3.0%と定めた。Si量は、好ましくは2.8%以下、より好ましくは2.6%以下である。
Mnは、溶製時に脱酸剤として用いられるものであり、また鋼中のSと結合し、Sによる脆化を抑制する作用も有する。またMnとSとは、MnS析出物、または酸化物の周囲にMnSが存在する複合析出物(以下、これらを「MnS含有析出物」と省略することがある)を形成して、部品の電気抵抗を向上させる作用も有する。部品の電気抵抗が向上すると、渦電流および鉄損が抑制され、交流磁束密度の低下を防止することができる。これらの作用を充分に発揮させるために、Mn量の下限を0.20%と定めた。Mn量は、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上である。しかしMn量が過剰になると、磁気モーメントが低下し、電気抵抗向上による効果が減殺され、かえって交流磁束密度が低下する。そこでMn量の上限を0.8%と定めた。Mn量は、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.6%以下である。
Pは、粒界偏析して、冷間鍛造性および交流磁束密度の低下を招く。そこでP量は、できる限り低減されていることが好ましい。P量は、0.02%以下、好ましくは0.01%以下であることが推奨される。
Sは、MnとMnS含有析出物を形成して、部品の交流磁束密度を向上させる作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、本発明においてS量の下限を0.02%と定めた。S量は、好ましくは0.025%以上、より好ましくは0.030%以上である。しかしS量が過剰になると、鋼材の冷間鍛造性が劣化する。そこでS量の上限を、0.1%と定めた。S量は、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下である。
Cuは、電気抵抗を増加させる作用を有し、渦電流の発生を抑制して、交流磁束密度を向上させるために有用である。この作用を充分に発揮させるために、Cu量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上である。しかしCu量が過剰になると、磁気モーメントが低下して、かえって交流磁束密度が低下する。そこでCu量の上限を0.1%と定めた。Cu量は、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下である。
Niも、Cuと同様に電気抵抗を増加させる作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、Ni量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上である。しかしNi量が過剰になると、Cuと同様に磁気モーメントが低下する。そこでNi量の上限を0.2%と定めた。Ni量は、好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下である。
Crは、鋼中に固溶し、また一部はCと結びついて炭化物を形成し、電気抵抗を増加させる作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、Cr量の下限を1%と定めた。Cr量は、好ましくは1.4%以上、より好ましくは1.6%以上である。しかしCr量が過剰になると、磁気モーメントが低下し、かえって部品の交流磁束密度が低下するおそれがあり、また鋼材の冷間鍛造性も低下する。よってCr量の上限を3.5%と定めた。Cr量は、好ましくは3.2%以下、より好ましくは3.0%以下である。
Alは、磁気モーメントの低下を抑え、且つ電気抵抗を増加させる作用を有し、部品の交流磁束密度を向上させるために有効な元素である。これらの作用を充分に発揮させるためにAl量の下限を、0.05%と定めた。Al量は、好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.3%以上である。しかしAl量が過剰になると、鋼材の冷間鍛造性が大きく低下する。そこでAl量の上限を2.8%に定めた。Al量は、好ましくは2.3%以下、より好ましくは2.0%以下である。
Nは、Al等と窒化物を形成する。しかし窒化物を形成しないNは、固溶Nの状態で残存して結晶構造をひずませるために、交流磁束密度の低下を招く。そこでN量(鋼中の全窒素量)の上限を0.004%と定めた。N量は、好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.0025%以下である。一方、N量の下限は、鋼材製造コストの点から0.0010%(工業的に一般的なN量の下限)程度であることが推奨される。
Oは、常温では鋼に殆ど固溶せず、硬質の酸化物として存在し、冷間鍛造性を低下させる。さらに焼鈍工程での結晶粒成長を阻害するため、部品の交流磁束密度を低下させる。そのためO量は、できる限り抑制することが好ましく、本発明においてO量の上限を0.02%と定めた。O量は、好ましくは0.01%以下、より好ましくは0.005%以下、さらに好ましくは0.002%以下である。
Bは、固溶NをBNの形で固定して、冷間鍛造時の動的ひずみ時効を抑制し、良好な冷間鍛造性を維持する作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、必要に応じてBを、好ましくは0.0002%以上、より好ましくは0.001%以上、さらに好ましくは0.0015%以上の量で含有させることが推奨される。しかしB量が過剰であると、磁気モーメントが低下して、部品の交流磁束密度が低下する。そこでBを含有させる場合、その上限を0.005%と定めた。B量は、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下である。
Tiは、固溶NをTiNの形で固定し、結晶格子へのひずみに伴う交流磁束密度の低下を防止する作用を有する。またTi4C2S2がフェライト中に分散することで、電気抵抗が向上し、交流磁束密度の低下が防止される。これらの作用を充分に発揮させるために、必要に応じてTiを、好ましくは0.10%以上、好ましくは0.15%以上の量で含有させることが推奨される。しかしTi量が過剰であると、冷間鍛造性が低下する。具体的には過剰なTiは、変形抵抗の上昇と変形能の低下を招き、部品寸法精度のばらつきや加工割れの原因となる。さらにTi炭硫化物が過剰に析出すると、かえって交流磁束密度が低下する。そこでTiを含有させる場合、その上限を0.35%と定めた。Ti量は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.25%以下である。
Vは、鋼中で炭化物を形成し、電気抵抗を増加させる作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、必要に応じてVを、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上、さらに好ましくは0.20%以上の量で含有させることが推奨される。しかしV量が過剰であると、鋼材の冷間鍛造性が低下し、また磁気モーメントが低下して部品の交流磁束密度も低下する。そこでVを含有させる場合、その上限を1.5%と定めた。V量は、好ましくは1.4%以下、より好ましくは1.3%以下である。
Biは、鋼材の被削性を向上させる作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、必要に応じてBiを、0.01%以上、より好ましくは0.05%以上の量で含有させることが推奨される。しかしBi量が過剰であると、部品の交流磁束密度が低下するので、含有させる場合、その上限を0.3%と定めた。Bi量は、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下である。
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34[N]−120[B]−0.2[Ti]
+4.5[V]+2.9[Bi]+8.38 ・・・ (6)〉
本発明の軟磁性鋼材は、鋼材の冷間鍛造性、およびそれから得られる部品の交流磁束密度を向上させるために、各成分量を適正範囲に調整することを特徴とする。しかし各成分量を適正範囲に調整するだけでは、より高い交流磁束密度を達成することが難しい。そこで本発明者らは、部品の交流磁束密度を一層向上させるために、部品の電気抵抗に着目し、当該電気抵抗を表すパラメーターとしてF値を規定した。部品の電気抵抗を向上させれば、渦電流を抑制することができる。そして鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との和であるから、渦電流が抑制されれば、鉄損も抑制することができ、その結果、交流磁束密度の低下も防止できる。
電気抵抗率=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]
+5.1[Cr]+8.6[Al]+34[N]−120[B]
−0.2[Ti]+4.5[V]+2.9[Bi]
+8.38 ・・・ (7)
表1に示す化学成分組成の供試材を真空溶製にて各150kg試作した。そして溶製材を155mm×155mm角に鍛造加工し、ダミービレット材に溶接した後、表2に示す条件で熱間圧延を行ってφ20mmの軟磁性鋼材No.1〜25を得た。鋼材No.1〜25のフェライト結晶粒度番号および冷間鍛造性を、下記の方法で測定した。その結果も、表2に示す。
鋼材の横断面が露出する状態で支持基材内に埋め込み、研磨後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させ、その後、光学顕微鏡でD/4(Dは直径)部位の組織を100倍で10視野撮影し、JISG 0552で規定するフェライト結晶粒度番号を調べ、その平均値をフェライト結晶粒度番号と定めた。
鋼材の冷間鍛造性の指標として、圧縮加工で割れが発生しない最大の圧縮率を測定した。具体的には、試料として直径20mm×高さ30mmの鋼材を用い、ひずみ速度10/秒で端面拘束圧縮して、割れが発生しない最大の圧縮率を測定した。最大圧縮率が50%以上のものを合格(○)とし、50%未満のものを不合格(×)とした。
前記鋼材を外径10mm×内径5mm×厚さ0.5mmのリング状に形状加工した後、表3に示す条件で焼鈍して、磁気特性測定用の試料を作製した。これに磁界印加用の1次コイルと磁束検出用の2次コイルを巻線し、自動磁化測定装置(岩通製BHアナライザ:SY−8232)を用いてB−H曲線を測定することによって直流磁束密度および交流磁束密度を求めた。なお鉄損に伴う発熱によって、試料温度が上昇するのを防止するため、試料は絶縁処理した上で、20℃の水中に浸漬して磁気測定を実施した。磁界振幅:800A/m、周波数:10kHzでの交流磁束密度が、500mT以上のものを合格(○)とし、500mT未満のものを不合格(×)とした。
鋼材No.14は、Al量が過剰であるため、冷間鍛造性が低下している。
鋼材No.15は、Ti量が過剰であるため、粗大なTiNが生成し、その結果、冷間鍛造性が低下している。
鋼材No.17は、電磁ステンレスに相当する鋼材であり、Crを多量に含有しているため、冷間鍛造性が低下している。
部品No.19は、MnおよびAl量が過少であるため、交流磁束密度が低下している。
部品No.20および21は、Cr量が過少であるため、交流磁束密度が低下している。
部品No.23は、Cr量が過少であり、Ni量が過剰であるため、交流磁束密度が低下している。
部品No.24および25は、鋼材の各成分量は適正範囲に調整されているが、F値が60未満であるため、交流磁束密度が低下している。
本発明の鋼材を焼鈍することで交流磁束密度が向上することを示すために、上記の鋼材No.7の電気抵抗率、直流磁束密度および交流磁束密度を測定した。鋼材No.7(焼鈍なし)および部品No.7(焼鈍あり)の電気抵抗率、直流磁束密度および交流磁束密度の結果を、下記表4にまとめる。表4に示す結果から、焼鈍することで部品No.7の交流磁束密度が向上していることが分かる。
Claims (7)
- C:0.005〜0.05%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:1.8〜3.0%、
Mn:0.20〜0.8%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.02〜0.1%、
Cu:0.1%以下(0%を含まない)、
Ni:0.2%以下(0%を含まない)、
Cr:1〜3.5%、
Al:0.05〜2.8%、
N:0.004%以下(0%を含まない)、および
O:0.02%以下(0%を含まない)
を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、
下記式(1)で計算されるF1値が60以上であることを特徴とする軟磁性鋼材。
F1=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34.0[N]+8.38 ・・・ (1)
〔式中、[ ]は、それぞれ軟磁性鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - さらにB:0.005%以下(0%を含まない)を含有し、下記式(2)で計算されるF2値が60以上である、請求項1に記載の軟磁性鋼材。
F2=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34[N]−120[B]+8.38 ・・・ (2)
〔式中、[ ]は、それぞれ軟磁性鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - さらにTi:0.35%以下(0%を含まない)を含有し、下記式(3)で計算されるF3値が60以上である、請求項1または2に記載の軟磁性鋼材。
F3=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34[N]−120[B]−0.2[Ti]
+8.38 ・・・ (3)
〔式中、[ ]は、それぞれ軟磁性鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - さらにV:1.5%以下(0%を含まない)を含有し、下記式(4)で計算されるF4値が60以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性鋼材。
F4=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34[N]−120[B]−0.2[Ti]
+4.5[V]+8.38 ・・・ (4) - さらにBi:0.3%以下(0%を含まない)を含有し、下記式(5)で計算されるF5値が60以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性鋼材。
F5=97.0[C]+10.9[Si]+4.2[Mn]+23.8[P]
+172.0[S]+15.0[Cu]−0.03[Ni]+5.1[Cr]
+8.6[Al]+34[N]−120[B]−0.2[Ti]
+4.5[V]+2.9[Bi]+8.38 ・・・ (5)
〔式中、[ ]は、それぞれ軟磁性鋼材中の各元素の含有量(質量%)を表す。〕 - 請求項1〜5のいずれかに記載の成分組成の要件を満たし、且つ鋼組織がフェライト単相組織であり、JIS G 0552で規定するフェライト結晶粒度番号が3以下であることを特徴とする軟磁性部品。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の軟磁性鋼材を、形状加工した後、真空中または不活性ガス雰囲気下、850〜1000℃の温度で2時間以上焼鈍処理することを特徴とする軟磁性部品の製造方法。
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JP2001073101A (ja) * | 1999-09-01 | 2001-03-21 | Sanyo Special Steel Co Ltd | 被削性、冷鍛性に優れた高磁束密度、高固有抵抗電磁材料 |
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