JP5139021B2 - 軟磁性鋼材、並びに軟磁性鋼部品およびその製造方法 - Google Patents

軟磁性鋼材、並びに軟磁性鋼部品およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性鋼部品を製造するための軟磁性鋼材、並びにそれから得られる軟磁性鋼部品(例えば自動車用センサ等の鉄心)、および軟磁性鋼部品の製造方法に関する。
自動車電装部品等における磁気回路を構成する鋼部品には、省電力化と応答性向上のため、低い外部磁界で容易に磁化し、且つ保磁力が小さいといった特性が要求される。このため上記鋼部品を製造するための材料として、部品内部の磁束密度が外部磁界に応答し易い軟磁性鋼材が一般に使用されている。
上記電装部品のうち、直流特性が重要な部品には、例えばC量が0.01%以下の極低炭素鋼が用いられ、また交流特性が重要な部品には、電磁ステンレスなどの高い電気抵抗を有する材料が一般に用いられている。
しかし近年、電装部品の制御を司るセンサ部品の高性能化が大きく伸展し、高周波−低磁界での磁気特性に対する要望が増加している。交流用磁気材料では、渦電流による磁気遮蔽効果を抑制するため、直流用磁気材料に比べて電気抵抗率を増加させる必要があり、100μΩcm程度の電気抵抗率を有する電磁ステンレス材料が用いられることが多い。しかし、電気抵抗率の増加、すなわち伝導電子の散乱確立の増加は、熱伝導率の低下をもたらすため、部品の小型・軽量化や部品特性の安定化を図る上で、大きな障害となりつつある。また、電気抵抗率の増加を目的に合金元素を増量添加することは、磁界を引加した際に生じる材料変形(磁歪)を助長するため、高精度の検出感度が求められるセンサ部品等に電磁ステンレス等を用いることには限界があった。
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、磁気焼鈍後に電磁ステンレスなみの優れた交流磁気特性および低磁歪を実現することのできる軟磁性鋼材、およびこの軟磁性鋼材を用いて得られる、交流磁気特性に優れかつ低磁歪である軟磁性鋼部品およびその製造方法を提供することにある。
本発明に係る軟磁性鋼材とは、
C:0.002〜0.050%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:1.5〜2.8%、
Mn:0.2〜0.8%、
P:0.02%以下(0%を含まない)、
S:0.02〜0.10%、
Cu:0.1%以下(0%を含まない)、
Ni:1.0%以下(0%を含まない)、
Cr:1.0%以下(0%を含まない)、
Al:0.05〜1.0%、
N:0.0040%以下(0%を含まない)、
O:0.0100%以下(0%を含まない)、
5≦Mn/S≦50、
Si+Mn+Cr≦4.0を満たし、
残部:鉄および不可避不純物からなり、
金属組織に占めるフェライト相が95%以上であり、かつ
該フェライト中の炭化物およびMnSの最大粒径(長径と短径の平均値)が20μm以下であって、
常温(20℃)での電気抵抗率が40〜60μΩcmであり、かつ直流初期透磁率が4000以上であるところに特徴を有する。
本発明の軟磁性鋼材は、更に他の元素として、B:0.0015〜0.005%を含んでいてもよい。
本発明は、上記軟磁性鋼材を用いて得られる軟磁性鋼部品も含むものであり、該鋼部品は、上記成分組成を満たし、金属組織に占めるフェライト相が95%以上であり、かつJIS G 0551で規定するフェライト結晶粒度番号が3以下であるところに特徴を有する。
また本発明は、上記軟磁性鋼部品を製造する方法も規定するものであって、該方法は、上記軟磁性鋼材を、形状加工した後、真空中または不活性ガス雰囲気下、850〜1000℃で3時間以上焼鈍処理することにより、JIS G 0551で規定するフェライト結晶粒度番号を3以下とするところに特徴を有する。
本発明によれば、磁気焼鈍を施すことにより、優れた交流磁気特性を示すと共に低磁歪を示す軟磁性鋼材が得られる。更に、該鋼材を用いて部品成形後に磁気焼鈍を施すことにより、電磁ステンレスと同等もしくはそれ以上の交流磁気特性を示すと共に、磁界を印加した際の磁歪による部品変形の少ない、自動車用センサ部品(鉄心材)等の様な自動車部品や電車、船舶用の電装部品を、高歩留まりかつ低コストで提供できる。
本発明者は、上記磁歪を低減させるには、直流透磁率を4000以上と高くすることが大変有効であり、この様に直流透磁率を高めることによって、少ない磁界侵入領域で目的の磁束量を確保でき、交流磁界を引加した際の磁壁移動(磁束移動)に伴う磁歪を大幅に低減できることを見出した。更に、電気抵抗率を40μΩcm以上とすることが電磁ステンレス並みの優れた交流磁気特性を確保する為に不可欠であり、また、上記電気抵抗率を60μΩcm以下に制御すると共に上記直流透磁率を4000以上とすることで、低磁歪を実現できる、ことに着目して、これら磁気特性(更には冷間鍛造性等)に影響を及ぼす鋼材の成分組成、金属組織や析出物等について様々な角度から実験を行い検討してきた。
そしてその結果、成分組成を制御し、粗大化させたフェライト組織中の固溶元素(特にC、N、Cr)およびMnS硫化物の分散を制御すればよいことを見出し、本発明に想到した。以下、本発明について詳述する。
〈フェライト中の炭化物およびMnSの最大粒径(長径と短径の平均値):20μm以下〉
軟磁性鋼材の磁気特性は、材料内部を移動する磁束を固定するエネルギー量に関係しており、フェライト結晶粒の大きさや、析出物の磁気的性質や分布形態で異なる。通常、フェライト組織中に析出物が多数存在する場合、磁気焼鈍時の結晶粒成長を妨げるため、磁壁移動の抵抗となる結晶粒界を十分に減少できず、また析出物自体も磁壁を縛束するため、外部磁界に対する応答性、即ち磁気特性が低下する結果となる。
そこで本発明では、後述する実施例の方法で測定するフェライト中の炭化物(具体的にはFeC、CrC)およびMnSの最大粒径(長径と短径の平均値)を20μm以下と規定した。好ましくは5μm以下である。
〈5≦Mn/S≦50〉
上記フェライト中のMnSを微細化させるには、鋼中のMn量とS量の比:Mn/Sを50以下に抑えるのがよい。好ましくは20以下である。しかしMn/Sの値が低すぎると、FeSが結晶粒界に析出し、磁束密度の低下をもたらすため、Mn/Sは5以上となるようにする。好ましくは7以上、より好ましくは10以上である。
〈Si+Mn+Cr≦4.0〉
Si、MnおよびCrの合計量が多いと、転炉出鋼温度が1750℃を超えて転炉耐火物の損傷が大きく、生産性の悪化を招くと共に、不純物が混入し易くなり、磁束密度に悪影響を及ぼす。よって本発明では、これらSi、MnおよびCrの合計量を4.0%以下とする。好ましくは合計で3.5%以下である。
〈C:0.002〜0.05%〉
Cは、鋼材の強度と延性のバランスを支配する元素であり、含有量が少ないほど強度は低下し、延性は向上する。またCは鋼中に固溶し、部品成型時にひずみ時効が生じるので極低Cが望ましく、磁気特性の面からも極低Cが好ましい。本発明では、電磁ステンレスなみ若しくはそれ以上の磁気特性を満足する観点から、C量の上限を0.05%と定めた。C量は、好ましくは0.03%以下である。
一方、C量を低減しすぎると、部品の強度が低下し、且つ電気抵抗、ひいては交流磁束密度が低下する。そこでC量の下限を0.002%と定めた。C量は、好ましくは0.010%以上である。
〈Si:1.5〜2.8%〉
Siは、溶製時に脱酸剤として用いられるものであり、また部品の交流磁束密度を向上させる作用を有する。このような作用を充分に発揮させるため、Si量の下限を1.5%と定めた。Si量は、好ましくは1.8%以上である。しかしSi量が過剰であると、磁気特性と鋼材の冷間鍛造性が劣化する。そこで本発明では、電磁ステンレス並みの磁気特性の確保と部品成型時の冷間鍛造性を確保する観点から、Si量の上限を2.8%と定めた。Si量は好ましくは2.5%以下である。
〈Mn:0.2〜0.8%〉
Mnは、溶製時に脱酸剤として用いられるものであり、また鋼中のSと結合し、Sによる脆化を抑制する作用も有する。またMnとSは、MnS析出物、または酸化物の周囲にMnSが存在する複合析出物(以下、これらを「MnS含有析出物」と省略することがある)を形成して、部品の電気抵抗を向上させる作用も有する。部品の電気抵抗が向上すると、渦電流および鉄損が抑制され、交流磁束密度の低下を防止することができる。これらの作用を充分に発揮させるために、Mn量の下限を0.2%と定めた。Mn量は、好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上である。しかしMn量が過剰になると、磁気モーメントが低下し、電気抵抗向上による効果が減殺され、かえって交流磁束密度が低下する。そこでMn量の上限を0.8%と定めた。Mn量は、好ましくは0.7%以下、より好ましくは0.6%以下である。
〈P:0.02%以下(0%を含まない)〉
Pは、粒界偏析して、冷間鍛造性および磁気特性の低下を招く。そこでP量は、できる限り低減されていることが好ましく、本発明ではP量を0.02%以下、好ましくは0.01%以下に抑える。
〈S:0.02〜0.10%〉
Sは、MnとMnS含有析出物を形成し、電気抵抗を増加させて、部品の交流磁束密度を向上させる作用を有する。この作用を充分に発揮させるために、本発明ではS量の下限を0.02%と定めた。S量は、好ましくは0.025%以上、より好ましくは0.030%以上である。しかしS量が過剰になると、硫化物が結晶粒界に析出するため、鋼材の冷間鍛造性が劣化する。そこでS量の上限を、0.10%と定めた。S量は、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下である。
〈Cu:0.1%以下(0%を含まない)〉
Cuは、電気抵抗を増加させる作用を有し、渦電流の発生を抑制して、交流磁束密度を向上させるのに有用な元素である。この作用を十分に発揮させるため、Cu量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上とするのがよい。しかしCu量が過剰になると、磁気モーメントが低下して、かえって交流磁束密度が低下する。そこでCu量の上限を0.1%と定めた。Cu量は、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.06%以下である。
〈Ni:1.0%以下(0%を含まない)〉
Niも、Cuと同様に電気抵抗を増加させる作用を有する。この作用を十分に発揮させるため、Ni量は、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、さらに好ましくは0.03%以上とするのがよい。しかしNi量が過剰になると、Cuと同様に磁気モーメントが低下する。そこでNi量の上限を1.0%と定めた。Ni量は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。
〈Cr:1.0%以下(0%を含まない)〉
鋼中で炭化物を生成し、電気抵抗を増加させる。電気抵抗の増加は磁壁移動領域を拡大するため、交流磁束密度の増加に有効である。この様な観点からはCrを0.1%以上含有させることが好ましい。しかし、Cr量が過剰になると磁歪量が増加するため、上限を1.0%とする。好ましくは0.9%以下である。
〈N:0.0040%以下(0%を含まない)〉
Nは、AlやB等と結合して窒化物を形成する。しかし窒化物を形成しないNは、固溶Nの状態で残存して結晶構造をひずませるため、磁気特性の低下を招く。固溶N量の低減には、鋼中全窒素量を低減することが効果的であるため、N量(鋼中の全窒素量)の上限を0.0040%と定めた。一方、N量の下限は、鋼材製造コストの点から0.0010%(工業的に一般的なN量の下限)程度である。
〈Al:0.05〜1.0%〉
Alは、磁気モーメントの低下を抑え、且つ電気抵抗を増加させる作用を有し、部品の交流磁束密度を向上させるために有効な元素である。これらの作用を充分に発揮させるためにAl量の下限を、0.05%と定めた。Al量は、好ましくは0.10%以上、より好ましくは0.3%以上である。しかしAl量が過剰になると、鋼材の冷間鍛造性が大きく低下する。そこでAl量の上限を1.0%に定めた。Al量は、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.3%以下である。
〈O:0.0100%以下(0%を含まない)〉
O(酸素)は常温では鋼に殆ど固溶せず、硬質の酸化物として存在し、磁気特性を大幅に低下させる。ゆえにO含有量は極力低減すべきであり、本発明では0.01%以下に抑える。O含有量は、0.005%以下に低減するのが好ましく、より好ましくは0.002%以下にするのがよい。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物であり、該不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。更に、本発明の作用に悪影響を与えない範囲で下記元素を積極的に含有させることも可能である。
〈B:0.0015〜0.0050%〉
Bは、Fe原子との格子定数の差が大きく、電気抵抗率の増加に寄与する。また固溶NをBNの形で固定し、動的ひずみ時効を抑制する効果も有する。特に時効抑制効果を十分に発揮させるには、0.0015%以上のBを含有させることが好ましい。しかしBが過剰に存在すると磁気特性の低下を招くため、Bは0.0050%以下の範囲内で含有させるのがよい。
本発明の軟磁性鋼材を製造するにあたっては、本発明の軟磁性鋼材の冷間鍛造性を確保し、かつ磁気焼鈍後に優れた交流磁気特性および低磁歪を実現させるには、下記の条件で熱間圧延を行うことが大変有効である。
〈加熱温度〉
合金成分を母相に完全に固溶させるため、圧延前の加熱温度はできるだけ高温とすることが望ましい。しかし1200℃を超えると、フェライト結晶粒の粗大化が顕著となり、部品成型時の冷間鍛造性低下をもたらすので、その上限温度を1200℃とするのがよい。好ましくは1150℃以下である。一方、加熱温度が低すぎると異なる相が局所的に生成し圧延時の割れ発生を招く危険性がある。また、加熱温度が低いと圧延時のロール負荷が上昇し、生産性が低下する。よって加熱温度は、1000℃以上とすることが推奨される。
〈仕上げ圧延温度〉
仕上げ圧延温度が低すぎると、ミクロ組織が細粒となりやすく、その後の冷却過程や、部品製造時の焼鈍過程において、部分的な異常粒成長(GG)の発生を招く。GG発生部は、冷間鍛造時の肌荒れや磁気特性のばらつきの原因となるため、均一な整粒を確保することが好ましい。このような観点から、仕上げ圧延温度は、850℃以上(より好ましくは900℃以上)とすることが推奨される。
〈圧延後の巻取り温度〉
仕上げ圧延後の巻取り温度が低すぎると、仕上げ圧延温度と同様、ミクロ組織が細粒となりやすく、鋼材の冷間鍛造性および部品の磁気特性に支障をもたらすおそれがある。そこで800℃以上の温度で巻取りを完了することが推奨される。
上記加熱温度、仕上圧延温度、および巻取り温度を上記範囲内とすることで、得られる圧延材またはその伸線材は、電磁ステンレスに比べて優れた透磁率特性を有し、少ない磁壁移動領域で高い磁束量を確保できるため、磁歪による部品変形が少なく、かつ電磁ステンレスと同等以上の交流磁気特性を安定して得ることができる。
この様にして得られる本発明の軟磁性鋼材は、金属組織(ミクロ組織)がフェライト単相組織(金属組織に占めるフェライト相が95面積%以上)のものとなる。上記「フェライト単相組織」中には、フェライト組織以外に、上記MnS含有析出物や、製造工程で不可避的に形成され得るその他の析出物が含まれることを意図する。フェライト単相組織とするには、C量を極少レベルに抑えることが有効である。この様にフェライト単相組織にすることにより、磁気モーメントが増加して、交流磁束密度を向上させることができる。
尚、磁気焼鈍によりフェライト結晶粒を粗大化してより優れた磁気特性を得るには、この軟磁性鋼材の金属組織におけるJIS G 0551で規定するフェライト結晶粒度番号が4.0以下であることが好ましい。
〈磁気焼鈍条件〉
本発明の軟磁性鋼部品を製造するためには、上記の成分組成の要件を満たす鋼材を、形状加工した後(好ましくは冷間鍛造により形状加工した後)、真空中または不活性ガス雰囲気下で焼鈍することにより、フェライト結晶粒を粗大化させることが有効である。
該焼鈍温度が低すぎると、析出した窒化物が結晶粒の成長を阻害するため、実用的な熱処理時間で、フェライト結晶粒度番号が3以下という粗大な結晶粒を形成することが難しくなる。そこで焼鈍温度は850℃以上とすることが必要である。好ましい焼鈍温度の下限は900℃である。しかし焼鈍温度が高くなりすぎても、結晶粒を粗大化する効果は飽和する。よってコストなどの観点から、焼鈍温度を1000℃以下、好ましくは975℃以下に調整することが推奨される。
焼鈍時間が短すぎると、焼鈍温度を高めに設定しても、フェライト結晶粒を充分に粗大化させることができない。上記焼鈍温度での焼鈍時間は、3時間以上であることが必要である。好ましくは4時間以上である。しかし焼鈍時間が長すぎても、結晶粒を粗大化する効果は飽和する。よってコストなどの観点から、焼鈍時間を6時間以下、好ましくは5時間以下に調整することが推奨される。
本発明は、この様にして得られる軟磁性鋼部品も含む。軟磁性鋼部品の交流磁気特性は、部品(鋼材)内部を移動する磁束を固定するエネルギー量に関係しており、フェライト結晶粒の大きさの影響を受ける。そのためフェライト結晶粒を上述の通り粗大化させて、粒界面積を低減させれば、保磁力を小さく、且つ交流磁束密度を高めることができ、ソレノイド、リレーまたは電磁弁の鉄心材といった電装部品の構成部品に好適な磁気特性を確保することができる。
そこで本発明の軟磁性鋼部品は、優れた交流磁気特性を達成するため、フェライト単相組織(金属組織に占めるフェライト相が95%以上)であって、粗大なフェライト結晶粒を有することを特徴とする。具体的には本発明の軟磁性鋼部品は、JIS G 0551で規定するフェライト結晶粒度番号が3以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下であることを特徴とする。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
表1に示す化学成分組成の供試材を真空溶製にて各150kg試作した。そして溶製材を155mm×155mm角に鍛造加工し、ダミービレット材に溶接した後、表2に示す条件で熱間圧延を行ってφ20mmの軟磁性鋼材No.〜25を得た。鋼材No.〜25のフェライト結晶粒度番号を、下記の方法で測定した。
〈フェライト結晶粒度番号の測定〉
鋼材(線材)の横断面(圧延方向に垂直な断面)が露出する状態で支持基材内に埋め込み、研磨後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させ、その後、光学顕微鏡でD/4(Dは直径)部位の組織を100倍で10視野撮影し、JIS G 0551(2005)で規定するフェライト結晶粒度番号を調べ、その平均値をフェライト結晶粒度番号と定めた。その結果を表2に併記する。尚、鋼材No.〜25のいずれの金属組織も、フェライトが面積率で95%以上であることを確認した。
また、フェライト中の炭化物およびMnSの最大粒径は次の様にして測定した。即ち、鋼材(線材)の縦断面(圧延方向に平行であって鋼材の軸心を通る断面)が露出する状態で支持基材内に埋め込み、研磨後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させたものと、該腐食を行わないものを用意した。そして、光学顕微鏡で上記縦断面におけるD/4部位を400倍で10視野撮影し、10視野において最大サイズの炭化物またはMnSの長径と短径を測定し、最大粒径(長径と短径の平均値)を求めた。その結果、No.2、3、7〜では、炭化物またはMnSの最大粒径(長径と短径の平均値)がいずれも20μm以下であった。
次に、上記鋼材No.〜25に対し、下記表3に示す条件で焼鈍して、鋼部品No.〜25を製造した。鋼部品のフェライト結晶粒度番号および組織を、鋼材のフェライト結晶粒度番号の測定した方法と同様にして測定した。得られたフェライト結晶粒度番号の結果を表3に示す。なお部材No.〜25の金属組織は、全て、フェライトが面積率で95%以上であることを確認した。また部材の電気抵抗率および磁気特性(直流磁束密度および交流磁束密度)を、下記の方法で測定した。
〈鋼部品の電気抵抗率および磁気特性の測定〉
各試料の鋼部品の電気抵抗率は、直流四端子法により測定した。また各試料の磁気特性は、上記線材を用いて次のように実施した。まず透磁率特性は、渦電流による遮蔽効果の影響を除す為、直流磁気測定で評価した。前記鋼材を外径32mm×内径28mm×高さ4mmのリング状に形状加工した後、表3に示す条件で焼鈍して、磁気特性測定用の試料を作製した。これに磁界印加用の1次コイルと磁束検出用の2次コイルを巻線し、自動磁化測定装置(岩通製BHアナライザ:SY−8232)を用いてB−H曲線を測定することによって直流初期透磁率を求めた。
また、交流磁気特性(磁束密度)は次のようにして測定した。即ち、図1に示す通り、外径10mm×内径5mm×厚さ0.5mmのリング状試料を作製し、表3に示す条件で焼鈍後、これに磁界印加用の1次コイルと磁束検出用の2次コイルを巻線し、その後、自動磁化測定装置(岩通製BHアナライザ:SY−8232)を用いてB−H曲線を測定することによって磁束密度を求めた。そして磁界振幅:800A/m、周波数:10kHzでの交流磁束密度が、450mT以上のものを交流磁気特性に優れると評価し、450mT未満のものを交流磁気特性に劣ると評価した。測定例として、磁界周波数と磁束密度の関係を試料別に示したグラフを図2に示す。
また、磁歪の測定は、前記鋼材から5mm×5mm×5mmの試料を作製し、該試料に磁界を引加し、磁歪変形量を電気回路のコンデンサ容量の変化として検出することで求めた。そして磁歪が1.2×10−5以下のものを低磁歪であると評価し、1.2×10−5超のものを磁歪が大きいと評価した。測定例として、磁界の強さと磁歪の関係を試料別に示したグラフを図3に示す。尚、図3中、「E−5」「E+4」は、それぞれ「×10−5」、「×10」を示す。
これらの結果を表3に併記する。尚、表3中、「E−06」「E−05」は、それぞれ「×10−6」、「×10−5」を示す。
表1〜3に示すように、本発明の成分組成の要件を満たす鋼材を用い、規定の条件で製造したNo.2、3、7〜の鋼部品は、いずれも電磁ステンレス並みの交流磁気特性を有し、かつ低磁歪であることが分かる。これに対し、本発明の要件を満たさない鋼材を用いているか規定の条件で製造しなかった鋼部品No.10〜25は、磁気特性が劣っている。
No.10は、Si+Mn+Cr量が本発明の規定範囲から外れるため、交流磁束密度の低下を招いた。
No.11はC量の影響を示している。C添加量が過多になると、磁気モーメントの低下により目標の磁束密度を満足できないことに加え、磁歪が増加することが分かる。
No.12は、電気抵抗率の増加に必要なSi量、S量およびAl量が不足した例である。このNo.12では、電気抵抗率が低く磁気遮蔽効果が大きい為、交流での磁気特性が大幅に低下している。
No.13はSi量が過多な例である。電気抵抗率を大きく増加させ磁気遮蔽効果を抑制できるため、交流磁束密度は良好な値を示すが、磁歪が増加する結果となった。
No.14およびNo.15は、Mn量の影響を調べた例である。No.14の通りMnが不足すると、鋼中のSがFeSとして析出し、延性を害して、試験片の内部に微小な割れが認められた。また割れ発生に伴い、交流磁束密度が大幅に低下する結果となった。またNo.15の通りMn量が過剰であると、電気抵抗は増加するが、磁気モーメント自体を低下させるため、磁気特性が著しく低下している。
No.16は、P量過多の例である。この場合、Mnが不足するNo.14の場合と同様に、試験片中に微小クラックが認められ、磁気特性が低下する結果となった。
No.17は、Cu量が過剰な例である。Cuの増量は、鋼材の磁気モーメントを低下させるため、磁気特性が低下する結果となっている。
No.18は、Niを多量に含有させた場合の影響を示している。Niは電気抵抗率を増加させる作用を有することから、交流磁束密度は良好な値を示すが、Feと同様に大きな磁気モーメントを有する元素であるため、磁歪が大きくなる結果となった。
No.19、No.20は、それぞれCr、Alが本発明範囲から外れるものである。いずれも、電気抵抗率の増加により磁気遮蔽効果が抑制されるため、交流磁束密度は向上するが、磁歪特性に対しては望ましくない結果となった。
No.21は、B量の影響を示したものである。Bを推奨される範囲内で含有させると、磁気特性および冷間鍛造性に有害な固溶NをBNとして固定し無害化する作用を有するが、多量に添加すると、磁気モーメントを低下させる為、磁気特性が低下する。
No.22は、Al量が不足しかつN量が過剰な例である。上記No.21で記載したように、固溶Nが磁気特性に悪影響を及ぼすことから、磁気特性の低下を招いている。
No.23は電磁ステンレスに相当する鋼材である。電気抵抗を増加させるために、Crを多量に添加しているため、磁歪が大きくなっていることが分かる。
No.24は、S量が過剰であり、またNo.25は、Mn/Sが規定の範囲を外れているため、磁気特性が低下している。
尚、上記No.7の金属組織の顕微鏡観察写真(光学顕微鏡で倍率100倍)を図4に、またNo.11の金属組織の顕微鏡観察写真(光学顕微鏡で倍率100倍)を図5に示す。これらNo.7とNo.11の写真を対比すると、No.11では、黒点状の析出物(主に炭化物であり、MnSも若干含む)が多数析出しており、これが磁気特性低下の原因となっていることがわかる。
実施例において交流磁気特性の測定に用いた試料の形状を示す図である。 磁界周波数と磁束密度の関係を試料別に示したグラフである。 磁界の強さと磁歪の関係を試料別に示したグラフである。 実施例におけるNo.7の金属組織の顕微鏡観察写真である。 実施例におけるNo.11の金属組織の顕微鏡観察写真である。

Claims (3)

  1. C:0.002〜0.050%(質量%の意味、以下同じ)、
    Si:1.5〜2.8%、
    Mn:0.2〜0.8%、
    P:0.02%以下(0%を含まない)、
    S:0.02〜0.10%、
    Cu:0.1%以下(0%を含まない)、
    Ni:1.0%以下(0%を含まない)、
    Cr:1.0%以下(但し、0.1%以下を除く)
    Al:0.05〜1.0%、
    N:0.0040%以下(0%を含まない)、
    O:0.0100%以下(0%を含まない)、
    5≦Mn/S≦50、
    Si+Mn+Cr≦4.0を満たし、
    残部:鉄および不可避不純物からなり、
    金属組織に占めるフェライト相が95面積%以上であり、かつ
    該フェライト中の炭化物およびMnSの最大粒径(長径と短径の平均値)が20μm以下であって、常温(20℃)での電気抵抗率が40〜60μΩcmであり、かつ直流初期透磁率が4000以上であることを特徴とする軟磁性鋼材。
  2. 請求項1に記載の軟磁性鋼材を用いて得られる軟磁性鋼部品であって、
    請求項1に記載の成分組成を満たし、金属組織に占めるフェライト相が95%以上であり、かつJIS G 0551で規定するフェライト結晶粒度番号が3以下であることを特徴とする軟磁性鋼部品。
  3. 請求項に記載の軟磁性鋼部品を製造する方法であって、
    請求項1に記載の軟磁性鋼材を、形状加工した後、真空中または不活性ガス雰囲気下、850〜1000℃で3時間以上焼鈍処理することにより、JIS G 0551で規定するフェライト結晶粒度番号を3以下とすることを特徴とする軟磁性鋼部品の製造方法。
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