JP6294028B2 - Fe−Ni系パーマロイ合金の製造方法 - Google Patents

Fe−Ni系パーマロイ合金の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気特性に優れたFe−Ni系パーマロイ合金に関する。
Fe−Ni系合金の中で、比較的Niの多い組成で高透磁率を示すものは、一般に「パーマロイ」といわれ、主に弱電用磁心材料等として用いられている。JIS C2531:「鉄ニッケル軟磁性材料」には、上記パーマロイ合金として、PB材(Ni:40〜50mass%)、PC材(70〜85mass%)およびPD材(Ni:35〜40mass%)などが規定されている。これらの中で、PB材は、飽和磁束密度が高く、比較的透磁率も高いことから、時計ステーターや各種センサーコア等に使用されている。
上記PB材を製造する方法や透磁率を向上させるための技術はこれまでに多く提案されている。例えば、特許文献1では、Niを42〜47%含む合金中にCuを2〜4%、Crを0.3〜1.5%添加し、熱間圧延での圧延終了温度、熱延板焼鈍温度や最終の再結晶焼鈍温度を制御し、最終の冷間圧延圧下率を2〜6%とすることで透磁率、成形性を向上させる技術が提案されている。
また、特許文献2では、Niを34〜65%含む合金の最終冷間圧延率を90%以上として、磁気焼鈍前の硬さをビッカース硬さでHv250以上とし、磁気焼鈍後の平均結晶粒径を0.25mm以上とすることで高透磁率を得る技術が提案されている。
また、特許文献3では、Niを35〜40%含むパーマロイ合金の介在物組成を制御するとともにNi偏析の均質加熱処理を行うことで高透磁率を得る技術が提案されている。
特許2701526号公報 特許2760013号公報 特開2010−106368号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術はNiを42〜47%含む合金中にCu、Crを添加し、初透磁率、最大透磁率を向上させているものの、飽和磁束密度は低くなってしまうという難点がある。さらに、冷延板を製造する際に、最終の再結晶温度を700〜800℃とするような焼鈍工程の後に2〜6%の冷間圧延によって歪を付加するなど、工程数が多く、製造コストの上昇を避けられない。
特許文献2の技術はNiを34〜65%含む合金の最終冷間圧延率を90%以上として、磁気焼鈍前の硬さをビッカース硬さでHv250以上とし、磁気焼鈍後の平均結晶粒径を0.25mm以上とすることで高透磁率を得ている。しかし、発明者らの調査により34〜65%のNi合金において90%以上の冷間圧延率によって磁気特性が悪化する場合があること、また、90%以上の圧延率において、強加工ゆえに板の平坦度や板厚偏差等、板の形状精度が悪化するなど、製造性においても欠点があることが分かった。
特許文献3の技術はパーマロイ合金の介在物組成を制御するとともにNi偏析の均質加熱処理を行うことで高透磁率を得ている。しかし、Ni偏析の均質化には1350℃の温度で50hrもの熱処理時間を要することから、熱処理によって生成されるスケールの除去による歩留まりの低下、熱処理にかかる時間、コストなどの点で欠点がある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気特性に優れたFe−Ni系パーマロイ合金およびその製造方法を提供することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた。その結果、直流磁気特性を向上させるためには磁気焼鈍後の結晶粒径の粗大化が不可欠であること、そのためには熱延帯焼鈍温度、それに続く冷間圧延率を適切な範囲に設定し、冷間圧延後のひずみの分布を均一とすることが重要であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、C:0.001〜0.03mass%、Si:0.01〜0.5mass%、Mn:0.1〜1.0mass%、S:0.0020mass%以下、Ni:34〜52mass%、Co:0.06〜1.0mass%、Cu:0.03〜0.7mass%、N:0.005mass%以下、O:0.005mass%以下、Sn:0.01mass%以下、Ca:0.005mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる素材を熱間圧延した後の熱延帯焼鈍温度を700〜1000℃とし、冷間加工する際の最終冷間圧延率を70〜90%とし、下記に示す方法で求めた冷間圧延板のK値が75.5%以上であることを特徴とする磁気特性に優れたFe−Ni系パーマロイ合金製造方法である。K値は、冷間圧延板の表面をFE−SEMのEBSDにより観察し、得られたKAM(Kernel Average Misorientation)図の解析結果により、方位差が4°以上である測定点の割合である。
また、上記合金および製造方法において、1100℃×3hrの磁気焼鈍を施した後の平均結晶粒径が250μm以上であり、かつ下記に示す方法で求めた整粒率が85%以上であることを特徴とする磁気特性に優れたFe−Ni系パーマロイ合金製造方法である。
なお、ここでいう整粒率は、冷間圧延した合金板に、水素雰囲気下で1100℃×3時間の磁気焼鈍を施した後、板面をFE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ10μmの条件で合計12mmの視野を観察し、得られた結晶の中における150μm以上の結晶粒径の割合である。
本発明によれば、磁気特性に優れるFe−Ni系パーマロイ合金を安定して提供することができる。
EBSD解析によって得られたKAM(Kernel Average Misorientation)図であり、(a)は熱延帯焼鈍温度900℃、(b)は熱延帯焼鈍温度1100℃の場合である。 Fe−48%NiのEBSD解析によって得られたIPF図であり、(a)は熱延帯焼鈍温度900℃、(b)は熱延帯焼鈍温度1100℃の場合である。 K値と熱延帯焼鈍温度、冷間圧延率の関係を示すグラフである。 結晶粒径と熱延帯焼鈍温度、冷間圧延率の関係を示すグラフである。 整粒率と熱延帯焼鈍温度、冷間圧延率の関係を示すグラフである。
まず、本発明の基本的技術思想について説明する。
Fe−Niパーマロイ合金において優れた透磁率、保磁力を得るためには、磁気焼鈍後の結晶粒径の粗大化が有効である。結晶粒径の粗大化には結晶粒の成長を促す駆動力として、ある一定以上のひずみを冷延圧延によって与えることが必要と考え、発明者らは冷間圧延によるひずみの分布に注目し、磁気特性に及ぼす熱延帯焼鈍温度、冷間圧延率の影響についての検討を行った。供試材は、大気溶解によって製造したFe−48%Ni合金で、この合金塊を熱間圧延し板厚4mmの帯とした後、熱延帯焼鈍、表面のスケールを取り除き、その後の冷間圧延率を変化させたものを供試材とした。最終工程で施す磁気焼鈍の条件は水素雰囲気、1100℃×3hr、炉冷とし、これを施した後に磁気特性を評価した。
まず、注目すべき結果は、熱延帯焼鈍温度の違いによって、その後施された冷間圧延のひずみ分布に顕著な違いが生じたことである。すなわち、熱延帯焼鈍温度を900℃、1100℃として、これに冷間圧延率90%の圧延を施すと図1に示す様なひずみ分布の違いが生じた。これは冷間圧延した板の板面をEBSDで測定し得られたKAM(Kernel Average Misorientation)図である。方位差により色付けをしており、熱延帯焼鈍温度が900℃のものではひずみが均一に分布していたのに対し、1100℃のものでは、一部ひずみが小さいことを示す青色や緑色の部分が認められた。ひずみ分布の均一性は熱延帯焼鈍温度を900℃としたものの方が高い。
これに上記の磁気焼鈍を施すと結晶粒は図2の様になり、熱延帯焼鈍温度を900℃としたものでは平均粒径481μmとなったのに対し、1100℃のものでは205μmで、磁気特性は熱延帯焼鈍温度を900℃としたもの方が良好であった。
さらに、これらを詳細に比較すると1100℃で熱延帯焼鈍したものでは部分的に小さな100μm程度の結晶粒が観察されるのに対し、900℃のそれは殆ど観察されなかった。小さい結晶粒の存在は磁気特性に不利であり、均一で粗大な粒を得るには熱延帯焼鈍温度を低くすることが有効であることを見出した。
つまり、熱延帯焼鈍温度が高いと結晶粒径は粗大化し、これに冷間圧延を施すと粗大化した粒にはひずみが均一に導入されず、ひずみの小さな粒が残存する。このひずみの小さな粒が粒成長を妨げるため、結晶粒の成長にばらつきが生じ、磁気焼鈍後に混粒となってしまう。混粒となってしまうと、平均結晶粒径が大きくとも小さな結晶粒径が磁壁の移動に対して律速となってしまい、透磁率、保磁力の向上が期待より小さくなる。これより、冷間圧延後のひずみの均一性と磁気焼鈍後の結晶粒径とその分布が重要であることがわかった。
そこで、均一なひずみ分布を得るために、熱延帯焼鈍温度と冷間圧延率の関係を調べた。その結果を図3に示す。ひずみ分布の均一性を表す指標としてはK値を用いた。KAM図より求めた測定点毎のミスオリエンテーション値の度数を求め、冷間圧延によりひずみが十分に導入されていると判断する4°以上の値となる割合をK値とした。ここで、4°としたのは図1(b)、図2(b)に示すように、4°未満の割合が多く、歪が不十分な場合は磁気焼鈍後に結晶粒径の成長にばらつきが生じ、混粒となってしまうためである。
その結果、熱延帯焼鈍温度が700〜1000℃、冷間圧延率が70%〜90%の範囲ではK値は十分大きく均一なひずみ分布が得られることがわかった。
これに磁気焼鈍を施すとK値が高いものでは、結晶粒径が粗大化し良好な特性が得られ、さらに詳しくみると整粒率が高いものほど特性が良好となる。整粒率とは、先に示した粗大な結晶粒の割合である。これは、同じく板面をEBSDにより測定し、結晶粒径を求めた。このとき、150μm未満を磁気特性に悪影響をおよぼす粒とし、150μm以上の割合を求めた。この割合が大きいとき、すなわち均一な粗大粒からなる場合、最も優れた磁気特性が得られる。
これより、優れた磁気特性を得ることを目的として結晶粒径を増大させるためには、熱延帯焼鈍温度を700〜1000℃とし、適切な大きさの冷間圧延を施し、磁気焼鈍後の結晶粒径を大きく、かつあるレベル以上の整粒にする必要があることを知見した。本発明は上記技術思想の下に、さらに検討を加えて開発したものである。
次に本発明が適用されるFe−Ni系パーマロイ合金の成分組成について説明する。
C:0.001〜0.03mass%
Cは合金の強度を確保するために必要な元素であり、0.001mass%未満では必要な強度を得ることができない。一方、0.03mass%を超えると、結晶粒の成長および磁壁の移動を阻害するようになり、磁気特性を低下させる。よって、Cの含有量は0.001〜0.03mass%の範囲とする。より好ましくは、0.004〜0.02mass%である。
Si:0.01〜0.5mass%
Siは脱酸剤として添加される元素であり、0.01mass%未満では十分な脱酸効果を得ることができない。一方0.5mass%を超える添加は結晶粒径の成長および磁壁の移動を阻害するようになり、磁気特性を低下させる。よって、Siの含有量は0.01〜0.5mass%の範囲とする。より好ましくは、0.05〜0.4mass%である。
Mn:0.1〜1.0mass%
Mnは脱酸剤として添加される元素であり、0. 1mass%未満では十分な脱酸効果を得ることができない。一方1.0mass%を超える添加は合金中に含まれるSと結合してMnSを生成し、磁壁の移動を阻害するようになり磁気特性を低下させる。よって、Mnの含有量は0.1〜1.0mass%の範囲とする。より好ましくは、0.2〜0.8mass%である。
S:0.0020mass%以下
Sは熱間加工性を低下させる元素であり、熱間加工性を確保するためにはできる限り低減するのが望ましい。また、磁気特性を低下させるMnSの析出をできる限り抑制することが磁気特性確保には必要である。よって、Sは0.0020mass%以下とする。ただし、0.0001mass%未満に低減することは精錬コストの上昇を招くので、下限は0.0001mass%程度とするのが好ましい。より好ましくは、0.0001〜0.0010mass%である。
Ni:34〜52mass%
Niは優れた磁気特性を得るために必要な元素であり、34mass%未満、52mass%超えのいずれの場合も目的とする磁気特性は得られないので、34〜52mass%の範囲とする。より好ましくは、35〜50mass%であり、さらに好ましくは40〜49mass%である。
Co:0.05〜1.0mass%
Coは、Niと同じく磁気特性に影響をおよぼす元素であり、かつ冷間加工後のひずみ分布をより均一にする効果を有する元素である。ひずみ分布の改善メカニズムは不明であるが、積層欠陥エネルギーを変化させることでこの様な作用を示すのと考える。このためには、少なくとも0.05mass%以上の添加が必要である。しかしながら、1.0mass%以上の添加は、原料コストの上昇を招く。よって、0.05〜1.0mass%とするのが好ましい。より好ましくは、0.1〜0.6mass%である。
Cu:0.03〜0.7mass%
CuはCoと同様、冷間加工後のひずみ分布を改善する元素である。この効果を得るには少なくとも0.03mass%の添加が必要である。しかしながら、0.7mass%以上添加とすると、Snと低融点の固溶体を形成し、製造性の著しい劣化を招く。よって、0.03〜0.7mass%とするのが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.5mass%である。
N:0.005mass%以下
Nは連続鋳造でスラブを製造する際、合金中に多量に含有すると内部欠陥を引き起こす原因となり、窒化物を形成する場合においては磁壁の移動を妨げるため、できる限り低減するのが望ましい。本発明では0.005mass%以下とする。しかし、0.001mass%未満に低減するには精錬コストの上昇を招く。よって、0.001mass%程度とするのが好ましい。
O:0.005mass%以下
Oは他の元素と酸化物系介在物を形成し、磁気特性を低下させる有害元素である。そのためできる限り低減するのが望ましく、本発明では0.005mass%以下に制限する。しかし、0.001mass%未満に低減するには精錬コストの上昇を招く。より好ましくは、0.001〜0.003mass%である。
Sn:0.01mass%以下
Snはスクラップから混入する元素であり、できる限り少ない含有量とすることが望ましい。特に、本発明では冷間加工後のひずみ分布を改善する目的でCuを添加しているが、これと低融点の固溶体を形成し、製造性を著しく劣化させるため、少なくとも0.01mass%以下とする必要がある。より好ましくは、0.005mass%以下である。
Ca:0.005mass%以下
Caは合金中に含まれるSやOと結合し、酸化物系介在物や硫化物を形成し、磁気特性を低下させる有害元素である。そのためできる限り低減するのが望ましく、本発明では0.005mass%以下に制限する。より好ましくは、0.003mass%以下である。
次に、本発明のFe−Ni系パーマロイ合金の製造方法と限定理由について説明する。
冷間圧延率:70〜90%
本発明の対象とする合金は磁気特性に及ぼす磁気焼鈍後の結晶粒径の影響が大きい。冷間圧延率が90%を超えると結晶粒径の集合組織が発達しすぎてしまい、結晶粒が成長せず、良好な磁気特性が得られない。このため、90%を超えないように厳しく制限する。また、70%以下である場合、大きな結晶粒径を得るために必要な粒成長の駆動力が小さいために結晶粒径が十分に成長せず、良好な磁気特性が得られない。よって、磁気焼鈍後の結晶粒径を粗大化させるためには冷間圧延率を70〜90%の範囲にする必要がある。より好ましい範囲は80〜90%である。
熱延帯焼鈍温度:1000℃以下
熱延帯焼鈍温度は熱間圧延によって導入された転位密度を減らし、結晶粒径を制御し、後の冷間圧延においてひずみが均一に導入されるために制御する必要がある。1000℃を超えると熱間圧延板の結晶粒径が粗大化し、粗大化した粒のためにひずみが均一に導入されず、圧延後においてもひずみの小さい結晶粒が多く残存する。この転位密度の低い結晶粒が粒成長を妨げる原因となり、結晶粒が成長せず、良好な磁気特性が得られない。より好ましくは、700〜1000℃である。
K値:65%以上
K値は冷間圧延によって導入されるひずみが合金中に均一に入っているかを示す指標である。K値が60%以上である場合、ひずみはほぼ均一に導入されており、磁気焼鈍後の結晶粒径は粗大化する。しかし、範囲外である場合、転位密度の低い結晶粒が多く残存していることを意味しており、これが粒成長を妨げる原因となり、良好な磁気特性が得られない。よって良好な磁気特性を得るためにはK値を65%以上の範囲とする。より好ましくは、70%以上である。
ここでK値とは冷間圧延板の表面をFE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ3μmの条件で合計1mmの視野を観察し、得られたKAM(Kernel Average Misorientation)図の解析結果により方位差が4°以上である測定点の割合である。
平均結晶粒径:250μm以上、かつ整粒率85%以上
磁気焼鈍後の平均結晶粒径は磁気特性に大きな影響を及ぼす因子である。特に透磁率、保磁力は結晶粒径が増大するにつれて、特性が良好となるため、250μm以上の範囲とするのが望ましい。より好ましくは、300μm以上である。なお、平均結晶粒径とは冷間圧延した合金板に、水素雰囲気下で1100℃×3時間の磁気焼鈍を施した後、板面をFE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ10μmの条件で合計12mmの視野を観察し、得られた平均の結晶粒径と定義したものである。
一方、平均結晶粒径が250μm以上であっても、結晶粒径が小さいものと大きいものが混在した合金においては、磁気特性が悪化する。そのため、整粒率を85%以上の範囲とするのが好ましい。
ここで整粒率とは冷間圧延した合金板に、水素雰囲気下で1100℃×3時間の磁気焼鈍を施した後、板面をFE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ10μmの条件で合計12mmの視野を観察し、得られた結晶の中における150μm以上の結晶粒径の割合である。
鉄屑、ニッケル、フェロニッケルなどの原料を、60トン電気炉にて所定のFe−Ni組成となるように溶解した。その後、AODあるいはVODに移し、脱炭、脱クロム、脱りんなどの処理のために、酸化精錬を行った。AODあるいはVODの耐火物にはドロマイトを用いた。その後、一旦除滓し、そのAODまたはVODには新たに石灰石、蛍石、珪砂などのフラックスを添加し、CaO−SiO−Al−MgO−F系のスラグを溶湯上に形成した。その後、Fe−Si合金を用いて、脱酸、脱硫を行った。AODあるいはVODの後、LFにて温度調整、および、さらに精密な成分調整を行った。
その後、連続鋳造によって得られたスラブを熱間圧延により厚さ5mmのコイル材とし、その後、熱延帯焼鈍を1000℃以下の温度で行った。これに90%の冷間圧延を施し、厚さ0.5mmの冷延板(コイル材)を得た。この冷延板を1100℃均熱3hrの条件で、水素雰囲気中で磁気焼鈍し炉冷した後、磁気特性を測定することで評価を行った。
なお、一般的に磁気焼鈍は水素雰囲気中で1100℃均熱3hrの条件で行われるが、本条件よりも高温、長時間の条件で磁気焼鈍を行った場合でもより良好な特性が得られる。表1に本発明の実施例の合金成分を示す。
[化学成分の分析方法]
化学成分は、蛍光X線装置を用い測定を行った。ただし、C、Sは燃焼重量法、Oは不活性ガスインパルス融解赤外線吸収法により行った。
[磁気特性の測定方法]
直流磁気特性はJIS C2531に基づき、φ45mm×φ33mmのリング試験片を1次、2次側ともに50回巻き、初比透磁率μ、最大比透磁率μ、及び保磁力Hcについて16(A/m)を反転磁場として測定したものである。
[K値の測定方法]
K値は、冷間圧延したままの板表面の残留応力を5%過塩素酸メタノール溶液にて電解研磨し、FE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ3μmの条件で合計1mmの視野を観察し、KAM(Kernel Average Misorientation)の解析によって得られる、隣接するピクセル間の方位差が4°以上である測定点の割合である。
[結晶粒径の測定方法]
水素雰囲気中1100℃×3hr保持の磁気焼鈍を施した後の結晶粒径は、FE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ10μmの条件で合計12mmの視野を観察し、測定視野内の全ピクセルにおいて、隣接するピクセル間の結晶方位差が5度以上である境界を結晶粒界とみなし、測定したものである。
[整粒率の測定方法]
水素雰囲気中1100℃×3hr保持の磁気焼鈍を施した後の整粒率は、試料板面をFE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ10μmの条件で合計12mmの視野を観察し、得られた結晶の中における150μm以上の結晶粒径の割合である。なお、結晶粒径の特定は上記結晶粒径の測定方法と同じである。
[熱間加工性の評価方法]
熱間圧延板について、コイルの両エッジを全長にわたって目視で検査し、両エッジに発生した長さが5mmを超える割れの個数を測定した。コイル長さ10mあたりの割れ発生数が0〜0.5箇所のものを熱間加工性が優(○)、コイル長さ10mあたりの割れ発生数が0.5〜1箇所のものを熱間加工性が良(△)、コイル長さ10mあたりの割れ発生数が1箇所以上のものは熱間加工性が劣(×)とした。
上記の測定結果を表2に示す。この表から、本発明に適合する板No.1〜13の発明例はいずれも熱間加工性が良好で、結晶粒径が粗大かつ均一であり、優れた磁気特性を有していることがわかる。
これに対し、No.14はMnが本発明の範囲より多く、Sも範囲内であるが多く含まれているためにMnSが多数析出し、磁壁の移動を阻害したために磁気特性が低下している。
また、No.15、No.16、はCo、Cuが本発明の範囲よりも少なく、No.17、No.18はNiが本発明の範囲外であるために磁気特性が低下している。
また、No.19は磁気特性は優れているものの、Snが本発明の範囲よりも多く含まれているためにCuと低融点化合物を形成し、熱間加工性を劣化させている。
また、No.20、No.21はそれぞれCa、Oが本発明の範囲よりも多く含まれているために合金中の介在物が多量に形成され、磁気特性が低下している。
表2のNo.5の組成を有する合金の製造条件を変えた場合のK値、平均結晶粒径、整粒率、磁気特性を表3に示す。
表3から、熱延帯焼鈍温度、冷間圧延率、K値、平均結晶粒径、整粒率のすべてが本発明の条件を満たすサンプルNo.1〜12の合金板は優れた磁気特性を有していることが分かる。
これに対して、No.13は焼鈍温度が高く、圧延後のK値が本発明の範囲よりも小さいために磁気特性が低下している。
また、No.14は冷間圧延率が本発明の範囲よりも大きく、磁気焼鈍後の結晶粒径が成長しなかったために磁気特性が低下している。
また、No.15は冷間圧延率が本発明の範囲よりも小さく、圧延後のK値が小さいために磁気特性が低下している。
Figure 0006294028
Figure 0006294028
Figure 0006294028
磁気特性に優れるFe−Ni系パーマロイ合金を安定して製造することができ、有望である。

Claims (2)

  1. C:0.001〜0.03mass%、Si:0.01〜0.5mass%、Mn:0.1〜1.0mass%、S:0.0020mass%以下、Ni:34〜52mass%、Co:0.06〜1.0mass%、Cu:0.03〜0.7mass%、N:0.005mass%以下、O:0.005mass%以下、Sn:0.01mass%以下、Ca:0.005mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる素材を熱間圧延した後の熱延帯焼鈍温度を700〜1000℃とし、冷間加工する際の最終冷間圧延率を70〜90%とするFe−Ni系パーマロイ合金の製造方法であって、下記に示す方法で求めた冷間圧延板のK値が75.5%以上であることを特徴とするFe−Ni系パーマロイ合金の製造方法。
    K値は、冷間圧延板の表面をFE−SEMのEBSDにより観察し、得られたKAM(Kernel Average Misorientation)図の解析結果により、方位差が4°以上である測定点の割合である。
  2. 1100℃×3hrの磁気焼鈍を施した後の平均結晶粒径が250μm以上であり、かつ下記に示す方法で求めた整粒率が85%以上であることを特徴とする請求項に記載のFe−Ni系パーマロイ合金の製造方法。
    整粒率は、冷間圧延した合金板に、水素雰囲気下で1100℃×3時間の磁気焼鈍を施した後、板面をFE−SEMのEBSDにより電圧25kV、照射電流12nA、ステップサイズ10μmの条件で合計12mm2の視野を観察し、得られた結晶の中における150μm以上の結晶粒径の割合である。
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