JP2004099633A - 変性ポリオレフィン組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融張力が高い変性ポリオレフィン組成物を提供する。
【解決手段】以下の(A)から(C)を混合して得られる変性ポリオレフィン組成物。
(A)エチレン性二重結合と極性基を同一分子内に含む化合物に由来する極性基部を持つ炭素数2〜20のα−オレフィン重合体、必要に応じて加える、前記極性基部を持たない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体からなる、α−オレフィン重合体
(B)シランカップリング剤
(C)酸成分
好ましくは、極性基部が、組成物中に、1〜1,000ppm含まれる。組成物の例として、無水マレイン酸で変性されたポリプロピレン、無変性ポリプロピレン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、リン酸を含む組成物を挙げられる。酸成分(C)を含むことにより、溶融張力が高くなる。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、変性ポリオレフィン組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリオレフィンの特性をさらに向上させるために、様々な試みが行われている。例えば、ポリオレフィンの接着性、塗装性、印刷性、親水性その他の化学的特性の向上を目的とした、アルコキシシラン化合物等のシランカップリング剤と変性ポリオレフィンとの反応、及びその反応物が開示されている(例えば、特許文献1−5参照)。
【0003】
一方、高溶融張力のポリプロピレン系組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照)。この組成物は、ポリプロピレンに、高分子量のポリエチレンを配合したものであり、大型ブロー成形品の製造原料になり得るものである。しかし、この組成物は、剛性や透明性が低下するという欠点がある。
また、ポリプロピレンの溶融張力を向上させるその他の方法としては、ポリプロピレンに電子線等を照射して架橋させる方法が挙げられる。しかし、この方法では、架橋ポリプロピレンのリサイクルが困難であるという欠点がある。
【0004】
【特許文献1】
特開昭59−184272号公報
【特許文献2】
特開平1−501949号公報
【特許文献3】
特開平4−348106号公報
【特許文献4】
特開平5−112694号公報
【特許文献5】
特開2001−226535号公報
【特許文献6】
特開平10−168215号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記の方法に限らず、一般的に、ポリプロピレンその他のポリオレフィンの溶融張力を向上させるためには、複雑な工程や特殊な設備を使用することが必須とされているのが現状である。
従って、極めて汎用的な設備と実用的な原料とを組み合わせて、ポリオレフィンの溶融張力を向上させることが求められていた。
【0006】
本発明は、溶融張力が高い変性ポリオレフィン組成物を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の極性基部を含むα−オレフィン重合体、シランカップリング剤及び酸成分を含む組成物が、高い溶融張力を発現することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、以下の(A)から(C)を混合して得られる変性ポリオレフィン組成物が提供される。
(A)エチレン性二重結合と極性基を同一分子内に含む化合物に由来する極性基部を持つ炭素数2〜20のα−オレフィン重合体、必要に応じて加える、極性基部を持たない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体からなる、α−オレフィン重合体
(B)シランカップリング剤
(C)酸成分
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の変性ポリオレフィン組成物について説明する。
本発明の変性ポリオレフィン組成物は、(A)特定の極性基部を含むα−オレフィン重合体、(B)シランカップリング剤及び(C)酸成分を混合して得られる。
【0009】
まず、本発明の組成物の各成分について説明する。
α−オレフィン重合体(A)は、エチレン性二重結合と極性基を同一分子内に含む化合物(以下、単に変性剤と呼ぶ場合もある)に由来する極性基部を持つ炭素数2〜20のα−オレフィン重合体を必ず含み、必要に応じて、前記極性基部を持たない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体を含む。極性基部を持たない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体は、組成物中の極性基部が高くなり過ぎないように濃度を調節するために含むことができる。
α−オレフィン重合体は、好ましくは、炭素数2〜20、より好ましくは、炭素数2〜4のα−オレフィンのホモ重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体又はこれらの混合物である。炭素数2〜20のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。このうち、好ましくは、エチレン、プロピレン及び1−ブテンである。
このようなベースレジンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系重合体(例えば、プロピレンーエチレン共重合体等)、ポリ1−ブテン、1−ブテン系重合体(例えば、ブテン−エチレン共重合体等)、ハイヤーオレフィン重合体(例えば、ポリ1−オクテン等)及びこれらの混合物が挙げられる。このうち、好ましくはポリプロピレンである。前述の重合体を、一種類又は二種類以上を組み合わせて使用できる。
【0010】
変性剤に由来する極性基部を持つ炭素数2〜20のα−オレフィン重合体の、変性前のベースレジンは、メルトフローレシオが、好ましくは、10g/10分以下、より好ましくは、5g/10分以下である。10g/10分を超えると、変性されたα−オレフィン重合体のメルトフローレシオが大きくなり、それを含む組成物の機械物性が低下する場合がある。
尚、ベースレジンのメルトフローレシオは、測定対象となる樹脂の標準的な測定条件で計る。このとき、ベースレジンがランダム、ブロックその他の共重合体の場合には、主成分となる樹脂の標準的な測定条件で計る。具体的には、ベースレジンがポリエチレン系樹脂の場合には、樹脂温190℃、荷重2.16kgで測定し、ポリプロピレン及びポリブテンの場合には、樹脂温230℃、荷重2.16kgで測定する。
変性剤に由来する極性基部を持たない、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体のメルトフローレシオは、0.2〜20g/10分が好ましい。
【0011】
また、前記ベースレジンが立体規則性を有する場合、[mmmm](アイソタクチックペンタッド分率)は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上である。90モル%未満になると、機械物性が低下する場合がある。
このようなベースレジンは、公知の方法を用いて適宜重合することができる。
【0012】
α−オレフィン重合体(A)に含まれる、エチレン性二重結合と極性基を同分子中に含む化合物に由来する極性基部は、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基等の極性基を有している。このうち、好ましくは、カルボン酸基及びカルボン酸無水物基である。
【0013】
このような極性基部を導入する不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、不飽和モノ若しくはジカルボン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、具体的には、カルボン酸の無水物、エステル、ハライド、アミド、イミド及び塩等が挙げられる。このうち、好ましくは、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である。
【0014】
不飽和モノ又はジカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が挙げられる。
不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水エンディック酸、アクリル酸メチル、アクリル酸アミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アミド、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸モノメチル、フマル酸ジメチル等が挙げられる。このうち、好ましくは、マレイン酸及びマレイン酸無水物である。これらの誘導体は、一種単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
シランカップリング剤(B)は、特に制限されないが、好ましくは、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物である。
SiY(OR)4−(n+m)   (1)
[式中、Xは、極性基部と反応し得る官能基を含む置換基であり、Yは、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、Rは、炭化水素基であり、nは、1〜3であり、mは、0〜2であり、(n+m)は、1〜3である。]
【0016】
上記一般式(1)において、Xとしては、例えば、アミノ基、水酸基、エポキシ基、イソシアネート基又はメルカプト基を含む置換基が挙げられる。このうち、好ましくは、アミノ基を含む置換基である。Yの炭化水素基及びRとしては、例えば、炭素数1〜4の置換又は非置換のアルキル基及びアルケニル基が挙げられる。このうち、好ましくは、メチル基、エチル基、ビニル基である。nは、好ましくは、1であり、mは、好ましくは、0〜1であり、(n+m)は、好ましくは、1〜2である。
【0017】
このような有機ケイ素化合物としては、例えば、N−(2−アミノエチル)アミノメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。このうち、好ましくは、3−アミノプロピルトリエトキシシランである。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
酸成分(C)は、通常、酸に分類されるものであれば汎用的に利用できるが、好ましくは、水溶液中の酸解離指数(pKa)が9.5以下、好ましくは2以上9.5以下のものを用いる。pKaが9.5を超えると、塩基性が強くなり、溶融張力の向上効果が発現し難くなる場合がある。一方、1未満になると、混練機内部やスクリューの腐食の原因となり易くなる。
尚、酸成分(C)に解離段が複数ある場合には、上記のpKaは、一段目のpKaを意味する。
【0019】
このような酸成分(C)としては、例えば、シュウ酸(1.04)、アスパラギン酸(1.93)、アントラニル酸(2.02)、リン酸(2.15)、ギ酸(3.55)、乳酸(3.66)、L−アスコルビン酸(4.03)、安息香酸(4.20)、アクリル酸(4.26)、酢酸(4.56)、ホウ酸(9.24)等が挙げられる。このうち、好ましくは、リン酸である。
尚、括弧内の数値は、酸解離指数pKa(酸解段が複数あるものについては、一段目の解離指数)を表している。
本発明では、空気中の水分との反応で酸として機能するものであれば、酸成分(C)として使用することができる。このような例としては、五酸化二リンが挙げられる。
これら酸成分(C)は、ニートで用いてもよく、また、適当な溶媒で希釈して用いてもよい。これらは、一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明の組成物には、必要に応じて、核剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、外部潤滑剤、可塑剤、帯電防止剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤その他の添加剤や、熱可塑性樹脂等を適宜配合することができる。核剤としては、例えば、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)その他のカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムその他のリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリアミドオリゴマー、エチレンビスステアロアマイド、フタル酸エステル、ポリスチレンオリゴマー、ポリエチレンワックス、ミネラルオイル、シリコーンオイル等が挙げられる。難燃剤としては、例えば、臭素化ポリスチレン、臭素化シンジオタクチックポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル等が挙げられる。難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモンその他のアンチモン化合物等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ・アーガス社製、PEP−36)その他のリン系酸化防止剤、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート(アデカ・アーガス社製、MARK A060)その他のヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらの添加剤及び熱可塑性樹脂は、一種単独で用いてもよく、また、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
次に、本発明の組成物の製造方法について説明する。
本発明の組成物は、予め、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体を変性剤で極性基部を有するように変性し、必要に応じて、変性していない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体を配合し、その後、他の残りの成分(B)、(C)と混合して製造できる。
酸変性するα−オレフィン重合体と、変性しないα−オレフィン重合体は同一でも異なっていてもよい。
α−オレフィン重合体は、変性剤で、公知の方法で変性させることができる。
具体的には、ロールミル、バンバリーミキサー、押出機等を用いて150〜350℃の温度で溶融混練して反応させる方法や、ベンゼン、トルエン、キシレン等の溶媒中で加熱して反応させる方法等が挙げられる。このとき、これらの反応を容易に進めるため、好ましくは、反応系にベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,3−ジフェニル−2,3−ジメチルブタン等のラジカル発生剤を存在させる。好ましい変性方法は、このようなラジカル発生剤の存在下に、ベースレジンと不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体等の変性剤とを溶融混練する方法である。
【0022】
製造過程における各成分の量について説明する。
変性剤に由来する極性基部を持つ炭素数2〜20のα−オレフィン重合体は、極性基部が、変性ポリオレフィン組成物において、好ましくは、1〜1,000ppm、より好ましくは、10〜500ppm含まれるような量で配合する。1ppm以下になると、溶融張力向上効果がほとんど発現しない場合がある。一方、1,000ppm以上になると、極性基部が増えたわりには溶融張力が高くならないうえ、剛性、耐熱性が下がる場合や、組成物の色相が悪化する場合がある。
この極性基部の割合は、いわゆる「変性率」であり、未変性のα−オレフィン重合体と変性部分の総和に対する割合である。
オレフィン重合体(A)は、変性したα−オレフィン重合体だけを含んでもよいが、変性ポリオレフィン組成物中に占める極性基部の量を調節するために、変性しないα−オレフィン重合体を適量配合できる。例えば、極性基部の量が、上記の好適範囲1〜1,000ppmになるように自由に調製できる。
【0023】
シランカップリング剤(B)は、好ましくは、10〜10,000ppm、より好ましくは50〜5,000ppmで配合する。10ppm以下になると、溶融張力向上効果がほとんど発現しない場合がある。一方、10,000ppm以上になると、シランカップリング剤が有効利用されず、また、ブリードアウトしたり、剛性が低下する場合がある。
【0024】
酸成分(C)は、好ましくは、10〜10,000ppm、より好ましくは、10〜500ppmで配合する。10ppm以下になると、安定したメルトフローレシオ及び溶融張力が得られない場合や、二次成形性が低下する場合がある。一方、10,000ppm以上になると、ベースレジンの分子量低下を引き起こす場合がある。
【0025】
本発明の組成物は、メルトフローレシオが、好ましくは、0.01〜100g/10分、より好ましくは、0.1〜50g/10分、さらに好ましくは、0.5〜20g/10分である。0.01g/10分以下になると、射出成形や押出成形が困難になる場合がある。一方、100g/10分以上になると、溶融張力が小さくなり、ブロー成形や発泡成形することが困難になる場合がある。尚、組成物のメルトフローレシオは、ベースレジンと同様の条件で測定することができる。
【0026】
また、本発明の組成物は、好ましくは、溶融張力(M.T.)及びメルトフローレシオ(M.F.R.)が、下記式(2)で表される関係を満たす。
M.T./7×(M.F.R.)−0.8>1   (2)
式(2)が1の場合は、従来の高発泡用ポリプロピレンを意味する。従って、式(2)を満たす組成物は、従来のα−オレフィン重合体に比べ、溶融張力を高く保持しつつ、良好な流動性を示す点で優れていると言える。
【0027】
本発明の組成物は、溶融張力が高いため、α−オレフィン重合体の成形性を大幅に向上させることが可能となる。本発明の組成物は、シート成形、フィルム成形、熱成形、発泡成形、ブロー成形その他の成形法による成形が可能であるが、特に、溶融張力が不足するために、従来のα−オレフィン重合体では成形が困難であったブロー成形や発泡シート成形を行う場合に有効である。
このような本発明の組成物は、既存の製造装置で簡単に製造できるため、極めて汎用性に富んでいる。また、比較的高価な有機ケイ素化合物の必要量も少なくて済むため、製造コストの面において経済的である。
本発明の組成物の成形体は各種汎用トレー、自動車用内装材等に使用できる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
尚、各種パラメータの測定方法は以下の通りである。
(1)極限粘度[η]:重合体をデカリンに溶解し、135℃で測定した。
(2)重合体の立体規則性[mmmm]:重合体を1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)混合溶液に溶解し、13C−NMR(日本電子(株)製、商品名:LA−500)を用いて、130℃でプロトン完全デカップリング法により測定したメチル基のシグナルを用いて定量した。
【0029】
尚、アイソタクチックペンタッド分率[mmmm]とは、エイ・ザンベリ(A. Zambelli)等が、マクロモレキュールズ(Macromolecules)誌 第6巻 925頁(1973)で提案した、13C−NMRスペクトルから求められるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位におけるアイソタクチック分率を意味する。
また、13C−NMRスペクトルのピークの帰属決定法は、エイ・ザンベリ(A. Zambelli)等が、マクロモレキュールズ(Macromolecules)誌 第8巻 687頁(1975)で提案した帰属に従った。
【0030】
(3)重合体パウダーの平均粒径:篩を用いて測定した粒径分布を対数正規確率紙上にプロットし、50%粒子径を平均粒径とした。
【0031】
(4)メルトフローレシオ(M.F.R):JIS−K7210に準拠し、長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用い、樹脂温230℃、荷重2.16kgで測定した。
【0032】
(5)溶融張力(M.T.):長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを用い、樹脂温度230℃、引取り速度3.1m/分で測定した。
【0033】
製造例1
[プロピレン重合体の合成]
(1)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したオクタン60ミリリットルと、ジエトキシマグネシウム16gとを加えた。これを40℃に加熱し、四塩化ケイ素2.4ミリリットルを加えて20分間攪拌した後、フタル酸ジブチル1.6ミリリットルを添加した。この溶液を80℃まで昇温し、引き続き、四塩化チタン77ミリリットルを滴下し、内温125℃で2時間攪拌し、接触操作を行った。その後、撹拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。100ミリリットルの脱水オクタンを加え、撹拌しながら125℃まで昇温し、1分間保持した後、撹拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。この洗浄操作を7回繰り返した。その後、さらに四塩化チタン122ミリリットルを加え、内温125℃で2時間攪拌し、2回目の接触操作を行った。その後、上記の125℃の脱水オクタンによる洗浄を6回繰り返し、固体触媒成分を得た。
【0034】
(2)予備重合触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタン400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム25ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.5ミリモル及び上記(1)で調製した固体触媒成分4gを加えた。これに、室温下、撹拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、撹拌を停止し、結果的に固体触媒成分1g当たり4gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分を得た。
【0035】
(3)プロピレン重合体の合成
内容積10リットルの攪拌機付ステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換した後、脱水処理したヘプタン6リットル、トリエチルアルミニウム12.5ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.3ミリモルを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後、水素を0.1MPa張り込み、次いで撹拌しながらプロピレンを導入した。内温80℃、全圧0.8MPaに系内が安定した後、上記(2)で調製した予備重合触媒成分を、Ti原子換算で0.025ミリモル含んだヘプタンスラリー50ミリリットルを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
重合終了後、50ミリリットルのメタノールを添加し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付ろ過槽へ移し、85℃に昇温して固液分離した。さらに、85℃のヘプタン6リットルで固体部を2回洗浄し、真空乾燥して、プロピレン重合体2.5kgを得た。固体触媒成分1g当たりの触媒活性は、重合3時間で33.1kg/g−cat.・3hrであった。このプロピレン重合体は、以下の特性を示した。
極限粘度[η]:1.70dl/g
13C−NMRによるペンタッド分率[mmmm]:98.0mol%
重合体パウダーの平均粒径:1,200μm
▲4▼M.F.R.:6.0g/10分
【0036】
製造例2
[プロピレン重合体の合成]
製造例1(3)において、プロピレンの重合時に水素を添加しなかった以外は、製造例1と同様にしてプロピレンの重合を行い、プロピレン重合体を合成した。このプロピレン重合体は、以下の特性を示した。
▲1▼極限粘度[η]:7.65dl/g
▲2▼沸騰ヘプタン可溶成分量:分析限界値以下
▲3▼Mw/Mn:3.99(Mn:37万)
▲4▼Mwが100万以上の成分量:41重量%
▲5▼13C−NMRによるペンタッド分率[mmmm]:96.3mol%
▲6▼13C−NMR測定で、17.2、17.6、30.6、31.6、35.9、36.0、38.6、42.3ppmに弱いシグナルが存在した。
【0037】
製造例3
[無水マレイン酸変性プロピレン重合体の合成]
製造例2で合成したプロピレン重合体2kgに、無水マレイン酸(MAH)6g及びパーヘキシン25B/40(化薬アクゾ製)2gを加えてドライブレンドし、20ミリの二軸押出機で溶融混練した。得られたペレット状サンプル1kgに、アセトン0.5kg及びヘプタン0.7kgを加え、85℃で2時間加熱撹拌した。尚、この加熱撹拌は、耐圧容器中で実施した。操作終了後、金網でペレットを回収し、これを1.5kgのアセトン中で15時間浸漬した。その後、金網でペレットを回収し、風乾した後、80℃で6時間、130℃で6時間真空乾燥して、無水マレイン酸変性プロピレン重合体を得た。この無水マレイン酸変性プロピレン重合体は、以下の特性を示した。
▲1▼無水マレイン酸含有率(変性率):0.098wt%
▲2▼極限粘度[η]:1.43dl/g
【0038】
実施例1
製造例1で合成したプロピレン重合体380gに、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)0.95g、イルガノックス1010(商品名、酸化防止剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.24g、イルガフォス168(商品名、酸化防止剤、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.56g及びステアリン酸カルシウム0.2gを加え、十分にブレンドした。ここに、製造例3で合成した無水マレイン酸変性プロピレン重合体20g及びリン酸(pKa=2.15)50mgを加えて混合した後、二軸押出機を用い、230℃で溶融混練して、ポリマー組成物を製造し、各種物性値を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
実施例2及び3
実施例1において、リン酸の代わりに、同量のアントラニル酸(pKa=2.02)(実施例2)又はホウ酸(pKa=9.24)(実施例3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0040】
実施例4
実施例1において、無水マレイン酸変性プロピレン重合体の量を10gとし、プロピレン重合体の量を390gとした以外は、実施例1と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例5
実施例1において、無水マレイン酸変性プロピレン重合体の量を30gとし、プロピレン重合体の量を370gとした以外は、実施例1と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0042】
実施例6〜9
実施例1において、APTESの量を、1.90g(実施例6)、1.40g(実施例7)、0.46g(実施例8)0.28g(実施例9)とした以外は、実施例1と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0043】
比較例1
実施例1において、リン酸を用いなかった以外は、実施例1と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0044】
比較例2
実施例1において、リン酸を用いず、また、イルガノックス1010を0.48g、イルガフォス1681.12g、ステアリン酸カルシウムを0.4gそれぞれ配合し、添加剤の総量を2倍にした以外は、実施例1と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0045】
比較例3
リン酸を用いなかった以外は、実施例4と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0046】
比較例4
リン酸を用いなかった以外は、実施例5と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0047】
比較例5〜8
リン酸を用いなかった以外は、実施例6〜9と同様にしてポリマー組成物を得た。各種物性値の測定結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 2004099633
【0049】
表1より、酸成分を加えると溶融張力が高くなることが分かる。
【0050】
【発明の効果】
本発明によれば、溶融張力が高い変性ポリオレフィン組成物を提供することができる。

Claims (8)

  1. 以下の(A)から(C)を混合して得られる変性ポリオレフィン組成物。
    (A)エチレン性二重結合と極性基を同一分子内に含む化合物に由来する極性基部を持つ炭素数2〜20のα−オレフィン重合体、必要に応じて加える、前記極性基部を持たない炭素数2〜20のα−オレフィン重合体からなる、α−オレフィン重合体
    (B)シランカップリング剤
    (C)酸成分
  2. メルトフローレシオが、0.01〜100g/10分である請求項1に記載の変性ポリオレフィン組成物。
  3. 前記シランカップリング剤(B)の配合量が10〜10,000ppmであり、前記酸成分(C)の配合量が10〜10,000ppmであり、
    前記α−オレフィン重合体(A)の配合量が、変性ポリオレフィン組成物中に前記極性基部が1〜1,000ppm含まれる量である請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン組成物。
  4. 前記不飽和カルボン酸がマレイン酸であり、前記不飽和カルボン酸の誘導体が無水マレイン酸である請求項1〜3のいずれか一項に記載の変性ポリオレフィン組成物。
  5. 前記シランカップリング剤(B)が、下記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載の変性ポリオレフィン組成物。
    SiY(OR)4−(n+m)   (1)
    [式中、Xは、前記極性基部と反応し得る官能基を含む置換基であり、Yは、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基であり、Rは、炭化水素基であり、nは、1〜3であり、mは、0〜2であり、(n+m)は、1〜3である。]
  6. 前記α−オレフィンが、エチレン、プロピレン又は1−ブテンである請求項1〜5のいずれか一項に記載の変性ポリオレフィン組成物。
  7. 前記酸成分(C)の水溶液中の酸解離指数(pKa)が9.5以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の変性ポリオレフィン組成物。
  8. 前記一般式(1)のXが、アミノ基を含む置換基である請求項5〜7のいずれか一項に記載の変性ポリオレフィン組成物。
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