JP7153464B2 - ポリプロピレン組成物および成形体 - Google Patents
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Description
[1]成分(1)として、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が100~300g/10分、キシレン不溶分(XI)が97.5重量%以上であり、XIのGPCにより測定したMw/Mnが4~10であるプロピレン単独重合体、
成分(2)として、15~50重量%のエチレン由来単位を含むエチレン-プロピレン共重合体、からなる重合体を含み、
以下の要件:
1)成分(1)と成分(2)の重量比が50以上70未満:30を超え50以下である
2)前記重合体のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が1.5~4.0dl/gである
3)前記重合体のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が20~100g/10分である、を満たす、ポリプロピレン組成物。
[2]前記成分(1)が平均粒子径(直径)1.5~4.0mm、平均気孔直径(Dn)8~50μmの多孔質粒子であり、
成分(1)と成分(2)からなる前記重合体が粉体であり、かつその粉体流動性が3.5以下である、[1]に記載のポリプロピレン組成物。
[3]前記[1]または[2]に記載のポリプロピレン組成物を用いて形成されたペレット性状のポリプロピレン組成物。
[4]前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリプロピレン組成物を射出成形して得られる成形体。
1.ポリプロピレン組成物
本発明のポリプロピレン組成物は、以下の成分(1)および成分(2)からなる重合体を含む。
成分(1):MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が100~300g/10分、キシレン不溶分(XI)が97.5重量%以上であり、XIのGPCにより測定したMw/Mnが4~10であるプロピレン単独重合体
成分(2):15~50重量%のエチレン由来単位を含むエチレン-プロピレン共重合体
成分(1)はMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が100~300g/10分、キシレン不溶分(XI)が97.5重量%以上であり、XIのGPCにより測定したMw/Mnが4~10であるプロピレン単独重合体である。当該プロピレン単独重合体成分には、共重合体成分を含む重合体の製造時に発生するリサイクルガス等により、0.5重量%未満のプロピレン以外のモノマー単位が含まれていてもよい。成分(1)のMFRが前記範囲の下限値以上であれば組成物の溶融流動性に優れ、上限値以下であれば組成物の耐衝撃性に優れる。このような観点から成分(1)のMFRは150~300g/10分が好ましく、180~300g/10分がさらに好ましい。XIが前記範囲の下限値以上であれば組成物の剛性や耐衝撃性等の機械物性のバランスに優れる。この観点からXIは98.0重量%以上が好ましく、98.3重量%以上がさらに好ましい。XIのGPCにより測定したMw/Mnは前記範囲の下限値以上であれば成形品表面でフローマークやシルバーストリーク(銀条)等の不良が生じにくく外観が優れ、上限値以下であれば耐衝撃性に優れる。この観点からMw/Mnは4~8が好ましく、5~7がさらに好ましい。
成分(2)はエチレン-プロピレン共重合体であり、15~50重量%のエチレン由来単位を含む。エチレン由来単位の含有量の上限値は50重量%以下であるが、40重量%以下が好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。当該量が上限値を超えると重合反応器内で生成した成分(1)と成分(2)からなる粉状の重合体の流動性である粉体流動性が悪化して製造安定性が低下する。エチレン由来単位の下限値は15重量%以上であるが、20重量%以上が好ましい。当該量が下限値未満であると耐衝撃性が低下する。
成分(1)と成分(2)の組成比(重量比)は50以上70未満:30を超え50以下であるが、55以上70未満:30を超え45以下が好ましく、55~65:35~45がより好ましい。成分(1)の量が上限値以上であると耐衝撃性が低下する。当該量が下限値未満であると粉体流動性が悪化するので製造安定性が低下する。
1)XSIV
本発明のポリプロピレン組成物を構成する成分(1)と成分(2)からなる重合体のキシレン可溶分(XS)の極限粘度(XSIV)は、当該重合体における結晶性を持たない成分の分子量の指標である。XSIVは25℃のキシレンに可溶な成分を得て、当該成分の極限粘度を定法にて測定することで求められる。本発明においてXSIVは1.5~4.0dl/gであるが、1.5~3.5が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。XSIVが上限値を超えると溶融流動性が低下する。XSIVが下限値未満であると耐衝撃性が低下するとともに、粉体流動性も悪化することで製造安定性が低下する。
本発明の成分(1)と成分(2)からなる重合体のMFRは、温度230℃、荷重2.16kgで測定され、その値は、20~100g/10分であるが、好ましくは25~60g/10分、さらに好ましくは28~50g/10分である。MFRが上限値を超えると耐衝撃性が低下するとともに重合体の製造が困難となる。またMFRが下限値未満であると組成物の射出成形性が低下する。
本発明のポリプロピレン組成物は、成分(1)と(2)からなる重合体と、必要に応じて後述する添加剤や充填材等の他成分を含む。本発明の成分(1)と(2)からなる重合体においては、成分(1)の中に成分(2)が分散した構造を有することが好ましく、成分(1)の気孔部内に成分(2)が保持されていることが好ましい。例えば、多孔質粒子である成分(1)の気孔部内に、粘弾性体である成分(2)が保持され、重合体としては粉体であることが好ましい。そして当該粉体は3.5以下の粉体流動性を有することがより好ましい。粉体流動性とは重合反応器内で生成した粉状ポリマーの流動性であり、重合体の製造安定性の指標である。具体的に粉体流動性は、基材に載置した粉体に一定温度で一定荷重を一定時間加えた後で荷重を除去し、基材を傾ける等により粉体を流動させた際の粉体の流動しやすさを定量化した値である。粉体流動性は値が低いほど粉体流動性が良好であり、製造安定性も良好となる。前記重合体の粉体流動性は3.5以下であることが好ましく、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。当該構造と成分(1)が前述の範囲の平均気孔直径Dnを有することで成分(1)と(2)からなる重合体の粉体流動性が向上する。この理由は限定されないが、成分(1)が前述の範囲のDnを有すると、成分(1)中に成分(2)が存在するために十分な気孔の大きさと気孔の表面積の総和を両立できる結果、成分(2)が成分(1)中に保持されやすくなるので重合体の粉体流動性が向上するが、Dnが前記範囲外であると、成分(2)が成分(1)中に保持されにくくなるので重合体の粉体流動性が悪化すると推察される。
金属基材上(第1の基材)に縦5cm×横5cm×高さ1cmの開口部のある枠を置き、当該枠内に試料として5gの成分(1)と(2)からなる粉体の重合体を敷き詰める。試料にかかる圧力が均一に23g/cm2となるよう、第2の基材を前記枠の上に載せる。枠内の試料を70℃で20分間保持した後に枠と第2の基材を除去し、試料が載置された第1の基材を傾けることにより試料の崩れ度合いを以下の基準で評価する。
1. 0°以上30°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
2. 30°以上50°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
3. 50°以上70°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
4. 70°以上90°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
5. 90°以上に傾けても全量が崩れ落ちることはない
第1の基材および第2の基材としては、伝熱性や繰返し使用時の防錆性の観点からステンレス鋼製であることが好ましい。また、第1の基材に関しては粉体との摩擦の影響をなくすため、表面粗度(最大粗さRy)が1μm以下であることが好ましい。
本発明のポリプロピレン組成物には、酸化防止剤、塩素吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、分散剤、造核剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、油展および他の有機および無機顔料などの当該分野で通常用いられる慣用の添加剤を添加してもよい。各添加剤の添加量は公知の量としてよい。また本発明のポリプロピレン組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記樹脂成分以外の樹脂またはエラストマーを1種以上含有してもよい。
本発明のポリプロピレン組成物は成分(1)と成分(2)からなる重合体と、必要に応じて前記添加剤や充填材等の他成分を含み、その性状は粉体であってよいが、溶融および混練によりペレットとすることができる。ペレットとは球状、楕円体状、円柱状、角柱状等の一定形状に造粒(ペレタイズ)した成形体である。一態様においてペレットは、本発明のポリプロピレン組成物を構成する成分(1)と成分(2)からなる粉体の重合体を溶融および混練後に押出してカッターやペレタイザーで裁断して製造される。本発明のポリプロピレン組成物のペレットは溶融混練時に有機過酸化物による分解を経ることなしに優れた流動性を発現する。上述のとおり有機過酸化物による分解により流動性(MFR)を上げると分子量分布が狭くなる、すなわち成分(1)のXIのMw/Mnが低下する。本発明のペレットにおいては、有機過酸化物による分解を経ないので、XIのMw/Mnが所定の範囲に維持される。ペレットの大きさは特に限定されないが、一粒当たり10~40mg程度の重さを有することが好ましい。造粒する際に本発明のポリプロピレン組成物を構成する重合体に前記他の成分を追加で添加する、あるいは造粒した後のペレットに前記他の成分を混合したものを組成物とすることもできる。
本発明のポリプロピレン組成物は、公知の方法に従って製造される。例えば、成分(1)の原料モノマーおよび成分(2)の原料モノマーを、2つ以上の反応器を用いて重合することによって本発明のポリプロピレン組成物を構成する重合体を製造できる。特に、成分(1)の原料モノマーを重合して成分(1)の単独重合体を製造し、当該単独重合体の存在下において成分(2)の原料モノマーを重合して共重合体を製造することが好ましい。成分(1)および成分(2)の重合は液相中、気相中又は液-気相中で実施できる。
成分(a)は、公知の方法、例えばマグネシウム化合物とチタン化合物と電子供与体化合物を相互接触させることにより調製できる。その際、方法は限定されないが、固体触媒の構成成分、溶媒、分散剤の種類の選択、溶媒の温度や撹拌速度により成分中に含まれる各々の化合物の相互接触の度合いと析出条件を調整することで、得られる触媒粒子の平均直径(平均粒子径)や平均気孔直径を所望の範囲内に制御できる。重合体粒子は触媒粒子と相似形を有する所謂レプリカであることから、上述のように触媒粒子の形状を制御することで、その触媒を用いて重合されたプロピレン単独重合体(成分(1))の平均粒子径(直径)や平均気孔直径(Dn)が所定の範囲に維持される。
成分(b)の有機アルミニウム化合物としては以下が挙げられる。
トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;
トリイソプレニルアルミニウムのようなトリアルケニルアルミニウム:
ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどの部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウム。
成分(c)の電子供与体化合物は、一般に「外部電子供与体化合物」と称される。このような化合物としては有機ケイ素化合物が好ましい。好ましい有機ケイ素化合物として以下が挙げられる。
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジメトキシシラン、t-ブチルメチルジエトキシシラン、t-アミルメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ビスo-トリルジメトキシシラン、ビスm-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジメトキシシラン、ビスp-トリルジエトキシシラン、ビスエチルフェニルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、γ-クロルプロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、n-ブチルトリエトキシシラン、iso-ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、クロルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、2-ノルボルナントリメトキシシラン、2-ノルボルナントリエトキシシラン、2-ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ケイ酸エチル、ケイ酸ブチル、トリメチルフエノキシシラン、メチルトリアリルオキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシシラン)、ビニルトリアセトキシシラン、ジメチルテトラエトキシジシロキサン、メチル(3,3,3-トリフルオロ-n-プロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロペンチル-t-ブトキシジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、ジ-n-プロピルジメトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、t-ブチルエチルジメトキシシラン、t-ブチルプロピルジメトキシシラン、t-ブチル-t-ブトキシジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジ-sec-ブチルジメトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、ビス(デカヒドロイソキノリン-2-イル)ジメトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジシクロペンチル-ビス(エチルアミノ)シラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン。
上記のとおりに調製した触媒に原料モノマーを接触させて重合する。この際、まず前記触媒を用いて予重合を行うことが好ましい。予重合とは、その後の原料モノマーの本重合の足がかりとなるポリマー鎖を固体触媒成分に形成させる工程である。予重合は公知の方法で行うことができる。予重合は、通常は40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下で行われる。次いで、予重合した触媒(予重合触媒)を重合反応系内に導入して、原料モノマーの本重合を行う。重合は、液相中、気相中または液-気相中で実施してよい。重合温度は常温~150℃が好ましく、40℃~100℃がより好ましい。重合圧力は、液相中で行われる場合には好ましくは3.3~6.0MPaの範囲であり、気相中で行われる場合には好ましくは0.5~3.0MPaの範囲である。連鎖移動剤(たとえば、水素またはZnEt2)などの当該分野で公知の慣用の分子量調節剤を用いてもよい。
本発明のポリプロピレン組成物は射出成形用樹脂組成物として最適である。本発明のポリプロピレン組成物は高い溶融流動性に加え、高い剛性と耐衝撃性のバランスを有する。具体的に本発明のポリプロピレン組成物は以下の特性を備えることが好ましい。
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは700MPa以上、より好ましくは800MPa以上、さらに好ましくは900MPa以上の曲げ弾性率を有する。
2)シャルピー衝撃強さ:JIS K6921-2
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは20kJ/m2以上、より好ましくは25kJ/m2以上、さらに好ましくは30kJ/m2以上のシャルピー衝撃強さを有する。
3)引張破壊呼びひずみ:JIS K6921-2
本発明のポリプロピレン組成物は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは40%以上の引張破壊呼びひずみを有する。
MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持させた固体触媒を、欧州特許第728769号公報の実施例5の46~53行に記載された方法により調製した。具体的には下記のように行った。
一段目の反応器の水素濃度の2.17モル%に、二段目の反応器の水素濃度を2.21モル%に変更し、成分(2)/[成分(1)+成分(2)]が37.2重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
一段目の反応器の水素濃度の2.17モル%に、二段目の反応器のC2/(C2+C3)のモル比を0.20モル比に変更し、成分(2)/[成分(1)+成分(2)]が34.4重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、実施例1と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
一段目の反応器の水素濃度の2.48モル%に、二段目の反応器の水素濃度とC2/(C2+C3)のモル比を2.04モル%と0.27モル比に変更した以外は、実施例2と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
一段目の反応器の水素濃度の2.74モル%に、二段目の反応器の水素濃度とC2/(C2+C3)のモル比を1.75モル%と0.17モル比に変更した以外は、実施例2と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
MgCl2上にTiと内部ドナーとしてのジイソブチルフタレートを担持した固体触媒を、特開2004-27218公報の段落0032の21~36行に記載された方法により調製した。具体的には下記のように行った。
窒素雰囲気下、120℃にて、無水塩化マグネシウム56.8gを、無水エタノール100g、出光興産株式会社製のワセリンオイル「CP15N」500mLおよび信越シリコーン株式会社製のシリコーン油「KF96」500mLに完全に溶解した。この溶液を、特殊機化工業株式会社製のTKホモミキサーを用いて120℃、5000回転/分で2分間撹拌した。撹拌を保持しながら、2Lの無水ヘプタン中に0℃を越えないようにして注いだ。得られた白色固体を無水ヘプタンで十分に洗浄し室温下で真空乾燥し、さらに窒素気流下で部分的に脱エタノール化し、MgCl2・1.2C2H5OHの球状固体30gを得た。
一段目の反応器の水素濃度を1.75モル%に、二段目の反応器の水素濃度とC2/(C2+C3)のモル比を1.88モル%と0.21モル比に変更し、成分(2)/[成分(1)+成分(2)]が28.4重量%となるように一段目と二段目の滞留時間分布を調整した以外は、比較例6と同様にしてポリプロピレン組成物を製造し評価した。
1)MFR
粉体の試料5gに対し本州化学工業株式会社製H-BHTを0.05g添加し、ドライブブレンドにより均一化した後、JIS K6921-2に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
2.5gのポリマーを撹拌しながら135℃において250mLのキシレンに溶解した。20分後溶液を撹拌しながら25℃に冷却し、次いで30分間静止させた。沈殿物を濾紙で濾過し、溶液を窒素流中で蒸発させ、残留物を一定の重量に達するまで真空下80℃において乾燥した。このようにして25℃におけるキシレンに可溶性のポリマーの重量%を計算した。キシレン不溶分の量(25℃におけるキシレンに不溶性のポリマーの重量%、XI)は、100-「可溶性のポリマーの重量%」で求められ、ポリマーのアイソタクチック成分の量と考えられる。キシレン不溶分は、沈殿物に残留したキシレンをメタノールで十分に洗い流した後、真空下80℃において乾燥させて採取した。
上記のキシレン不溶分を試料とし、以下のようにして分子量分布(Mw/Mn)の測定を行った。装置としてポリマーラボラトリーズ社製PL GPC220を使用し、酸化防止剤を含む1,2,4-トリクロロベンゼンを移動相とし、カラムとして昭和電工社製UT-G(1本)、UT-807(1本)、UT-806M(2本)を直列に接続したものを使用し、検出器として示差屈折率計を使用した。また、試料溶液の溶媒としては移動相と同じものを使用し、1mg/mLの試料濃度で、150℃の温度で振とうさせながら2時間溶解して測定試料を調製した。これにより得た試料溶液500μLをカラムに注入し、流速1.0mL/分、温度145℃、データ取り込み間隔1秒で測定した。カラムの較正には、分子量580~745万のポリスチレン標準試料(Shodex STANDARD、昭和電工株式会社製)を使用し、三次式近似で行った。Mark-Houwink-Sakuradaの係数は、ポリスチレン標準試料に関しては、K=1.21×10-4、α=0.707、ポリプロピレン単独重合体、プロピレンランダム共重合体、およびポリプロピレン系重合体に関しては、K=1.37×10-4、α=0.75を使用した。
Quanta Chrome社製全自動細孔分布測定機装置Pore Master 60-GTを用いて、成分(1)の嵩密度を測定した。成分(1)の平均粒子径は、1gあたりの粒子個数を計測することで1個あたりの平均重量を求め、嵩密度から1個あたりの平均体積を求め、平均体積から球形状の平均直径として算出することにより得た。また、同機種を用いてJIS R1655で規定される水銀圧入法により気孔直径Dの分布を1μm~100μmの範囲で計測し、次式により平均気孔直径Dnを算出した。
Dn=∫(-dV/dlogD)dlogD/∫(1/D)(-dV/dlogD)dlogD
ここで、Vは試料容積であり、各粒子の体積(嵩容積)から気孔容積を引いたものに相当する。
1、2、4-トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、Bruker社製AVANCEIII HD400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、測定温度120℃、フリップ角45度、パルス間隔7秒、試料回転数20Hz、積算回数5000回の条件で13C-NMRのスペクトルを得た。
上記で得られたスペクトルを用いて、Kakugo,Y.Naito,K.Mizunuma and T.Miyatake,Macromolecules,15,1150-1152(1982)の文献に記載された方法により、成分(1)と成分(2)からなる重合体中の総エチレン量(重量%)を求めた。総エチレン量を測定するに際して求めたTββの積分強度の替わりに、下記式で求めた積分強度T’ββを使用した以外は、総エチレン量と同様の方法で計算を行い、成分(2)中のエチレン含量(重量%)を求めた。
T’ββ=0.98×Sαγ×A/(1-0.98×A)
ここで、A=Sαγ/(Sαγ+Sαδ)であり、上記文献に記載のSαγ及びSαδより算出される。
成分(1)および成分(2)の総重量に対する成分(2)の含有量は、以下の式によって求めた。
成分(2)の含有量(重量%)=[成分(1)と成分(2)からなる重合体の総エチレン量/成分(2)中のエチレン含量]×100
以下の方法によって成分(1)と成分(2)からなる重合体中のキシレン可溶分を得て、キシレン可溶分の極限粘度(XSIV)を測定した。
成分(1)と成分(2)からなる重合体の試料2.5gを、o-キシレン(溶媒)を250mL入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し、重合体を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100mL採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
極限粘度は、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS-780-H1、株式会社柴山科学器械製作所製)を用いて測定した。
金属板の上に、縦5cm×横5cm×高さ1cmの開口部のある金属枠を置き、金属枠内に試料として成分(1)と成分(2)からなる重合体5gを敷き詰めた。試料にかかる圧力が均一に23g/cm2となるよう、575gの金属蓋を金属枠内に載せた。金属枠内の試料を70℃で20分間保持した後に金属枠と金属蓋を除去し、金属板に試料を載せた状態で傾けることにより以下の5段階評価を4回実施し平均値を算出した。
1. 0°以上30°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
2. 30°以上50°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
3. 50°以上70°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
4. 70°以上90°未満に傾けると全量が崩れ落ちる
5. 90°以上に傾けても全量が崩れ落ちることはない
金属板、金属枠、金属蓋の材質はSUS304ステンレス鋼であり、金属板として表面を#400研磨(サイザル仕上げ)して得た表面粗度(最大粗さRy)0.2μmのものを用いた。
JIS K6921-2に従い測定した。すなわち、JIS K7171に従い、射出成形機(ファナック株式会社製FANUCROBOSHOT S2000i)を用い、溶融樹脂温度を200℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、保圧時間40秒、全サイクル時間60秒の条件にて、ポリプロピレン組成物からJIS K7139に規定する多目的試験片(タイプA1)を射出成形し、得られた成形体を幅10mm、厚さ4mm、長さ80mmに加工して測定用試験片(タイプB2)を得た。株式会社島津製作所製精密万能試験機(オートグラフAG-X 10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、支点間距離64mm、試験速度2mm/分の条件で、タイプB2測定用試験片の曲げ弾性率を測定した。
JIS K6921-2に従い、曲げ弾性率測定で用いた試験片と同一の操作で得たタイプA1試験片を用いて測定した。すなわち、JIS K7111-1に従い、株式会社東洋精機製作所製ノッチングツールA-4を用いて幅10mm、厚み4mm、長さ80mmに加工してから幅方向に2mmのノッチを入れ、形状Aの測定用試験片を得た。その測定用試験片について、株式会社安田精機製作所製低温槽付き全自動衝撃試験機(No.258-ZA)を用い、温度23℃、相対湿度50%の条件でシャルピー衝撃強度(エッジワイズ打撃、1eA法)を測定した。
JIS K6921-2に従い、曲げ弾性率測定で用いた試験片と同一の操作で得たタイプA1試験片を用いて測定した。すなわち、JIS K7161-2に従い、株式会社島津製作所製精密万能試験機(オートグラフAG-X 10kN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、試験速度50mm/分の条件で引張破壊呼びひずみを測定した。
Claims (3)
- 成分(1)として、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が100~300g/10分、キシレン不溶分(XI)が97.5重量%以上であり、XIのGPCにより測定したMw/Mnが4~10であるプロピレン単独重合体、
成分(2)として、15~31.6重量%のエチレン由来単位を含むエチレン-プロピレン共重合体、
からなる重合体を含み、
以下の要件:
1)成分(1)と成分(2)の重量比が50以上70未満:30を超え50以下である
2)前記重合体のキシレン可溶分の極限粘度(XSIV)が1.5~4.0dl/gである
3)前記重合体のMFR(温度230℃、荷重2.16kg)が20~100g/10分であり、
4)前記成分(1)が平均粒子径(直径)1.5~4.0mm、平均気孔直径(Dn)8~50μmの多孔質粒子であり、
成分(1)と成分(2)からなる前記重合体が粉体であり、かつその粉体流動性が3.5以下である、
を満たす、ポリプロピレン組成物。 - 請求項1に記載のポリプロピレン組成物を用いて形成されたペレット性状のポリプロピレン組成物。
- 請求項1または2に記載のポリプロピレン組成物を射出成形して得られる成形体。
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