JP4167027B2 - α−オレフィン重合体組成物及びその製造方法 - Google Patents

α−オレフィン重合体組成物及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体、有機ケイ素化合物、及び不飽和カルボン酸及び/又はその無水物変性α−オレフィン重合体を反応させて得られるα−オレフィン重合体組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、成形性の向上を目的として、ポリオレフィンの溶融張力の向上がなされているが、これらは複雑な工程、若しくは、特殊な設備の使用によってのみ達成されている。
ポリオレフィンの溶融張力を向上させる方法としては、▲1▼ポリプロピレンの電子線架橋法(特開昭62−121704号公報、特開平2−69533号公報等)、▲2▼オレフィン−非共役ジエン共重合体を用い架橋ポリオレフィンを形成させる方法(特開平5−194659号公報、特開平7−206928号公報等)及び▲3▼ポリプロピレン中に超高分子量ポリエチレンを共存させる方法(特開2000−17124号公報等)を挙げることができる。
▲1▼の方法は、電子線架橋のための特殊な設備を必要とし、▲2▼の方法は、工業的に生産されていない特殊な非共役ジエンを使用する必要があり、▲3▼の方法は、特殊な予備重合工程が必要な点で、いずれも汎用性が高いとは云えない。
又、本発明の目的、即ち、溶融張力の向上とは目的を異にし、主として接着性、塗装性、親水性等の化学的特性の付与を目的とした技術として、アルコキシアミノシラン化合物等のシランカップリング剤と変性ポリオレフィンとの反応、並びに、その反応生成物に関する特許が幾つか出願されている(特開昭59―184272号公報、特表平1―501949号公報、特開平5―112694号公報、特開2001―226535号公報等)。
この内、特表平1―501949号公報及び特開平5―112694号公報には、変性ポリオレフィンとアルコキシアミノシランの単純な組合せからなる組成物が開示されているが、このような組合せの場合、溶融張力が向上しないばかりか、一部ゲル化が進行する恐れがある。又、本発明の(A)成分である未変性のα−オレフィン重合体成分の開示はない。
特開昭59―184272号公報には、変性ポリオレフィンとシラン化合物を配合したものに、更に、未変性ポリオレフィンを配合する技術が開示されているが、高分子量の変性α−オレフィン重合体に関する記載や示唆はない。
特開2001―226535号公報には、カルボン酸変性ポリマーと、アルコキシシリル基を有するアミン化合物とカルボニル化合物の反応生成物を有機溶剤に溶解し、通常の熱可塑性樹脂を添加する一液型架橋組成物が開示されている。
しかし、この組成物は一液型のものであり、通常は固体である本発明の組成物とは異なっている。
さらに、特表2002−518573号公報には、カルボン酸無水物をグラフト又は共重合したゴム、あるいは熱可塑性樹脂を、アミノシランと反応させて得られるシラン硬化熱可塑性エラストマー組成物であって、ゲル含有量が10〜50質量%の間である組成物が開示されている。
この技術は、好適なゲル含有量が1質量%未満である本発明のα−オレフィン重合体組成物とは本質的に異なるものである。
また、該公報には、本発明の(B)成分に該当する、高分子量の変性α−オレフィン重合体に関する開示や示唆はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる現状に鑑み、ゲル化がなく、溶融張力が上昇し、成形性が大幅に向上したα−オレフィン重合体組成物及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、汎用的な設備を使用し、有機ケイ素化合物と分子量の高い酸変性α−オレフィン重合体との反応(溶融張力発現成分の形成)を、有機ケイ素化合物が高分散可能な性状を有するα−オレフィン重合体中で行なうことにより、ゲルの発生が抑制され、溶融張力が上昇し、成形性が大幅に向上したα−オレフィン重合体組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
即ち、本発明は、
1.(A)135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7〜5dl/gの範囲にあり、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体100質量部、(B)一般式(1)
nSiYm(OR)4-(n+m) (1)
(式中、Xはカルボン酸又はその無水物と反応しうる基を含有する置換基、 Yは炭化水素基、水素原子又はハロゲン原子、Rは炭化水素基を示し、nは1〜3、mは0〜2の整数を示し、(n+m)=1〜3である。)
で表わされる有機ケイ素化合物0.001〜1質量部、及び(C)不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に由来する酸を0.001〜1質量%含有し、135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7dl/g以上の炭素数2〜20の変性α−オレフィン重合体0.1〜30質量部を接触させて得られるα−オレフィン重合体組成物
2.下記の▲1▼〜▲3▼を満たす、上記1に記載のα−オレフィン重合体組成物。
▲1▼(B)成分の有機ケイ素化合物に由来するケイ素化合物を0.001〜1質量部含有し、
▲2▼式(2)のメルトフローレシオ(M.I.[単位:g/10分])から求めたM.T.c[単位:g]と溶融張力(M.T.[単位:g])が、式(3)を満たす。
M.T.c=7×(M.I.)-0.8 (2)
M.T./M.T.c>1 (3)
▲3▼130℃のパラキシレンに不溶な成分量が1質量%未満
3.一般式(1)のXがアミノ基、水酸基、エポキシ基及びイソシアネート基を含む置換基から選ばれる一種以上の置換基である上記1又は上記2に記載のα−オレフィン重合体組成物
4.(C)成分の変性α−オレフィン重合体が、更に下記の▲1▼〜▲3▼を満たす、上記1〜3のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物
▲1▼不飽和カルボン酸含量とα―オレフィン重合体の鎖のモル比(β値)が、0.5:1.0〜3.0:1.0
▲2▼重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2.5以下
▲3▼Mwが1万以下の成分量が、0.5質量%以下
5.(C)成分の不飽和カルボン酸無水物が、無水マレイン酸である上記1〜4のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物
6.(C)成分が、プロピレン重合体又は1−ブテン重合体を用いて得られた変性α−オレフィン重合体である上記1〜5のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物
7.(A)成分が、メソペンタッド分率[mmmm]97モル%以上のプロピレン又は1−ブテン重合体である上記1〜6のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物
8.(A)成分の平均粒径が50〜2000μmであり、嵩比重が0.2〜0.6g/cm3である、上記7に記載のα−オレフィン重合体組成物
9.一般式(1)のXが、アミノ基を含む置換基である(B)成分を使用する上記1〜7のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物
10.(A)成分の融点以下の温度条件において、(B)成分を(A)成分に分散させた後、(C)成分を反応させて得られる上記1〜8のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物及び
11.(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶融混練又は溶媒中で混合することを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物の製造方法
に関するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の(A)成分である炭素数2〜20のα―オレフィン重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン重合体、プロピレン系共重合体、1−ブテン重合体、1−ブテン系共重合体、炭素数5〜20の高級α−オレフィン重合体等が挙げられる。
好ましくは、プロピレン重合体及び1−ブテン重合体等である。
α−オレフィン重合体の原料モノマーの炭素数が20を超えると、実用性のある高分子量体の製造が困難であり,且つ物性に悪影響(ベタツキ等)を及ぼす低分子量成分の含有量が増大するという問題点がある。
α−オレフィン重合体の分子量としては、135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7〜5dl/g、好ましくは、1.0〜3.5dl/g、更に好ましくは、1.0〜2.5dl/gである。
極限粘度[η]が0.7dl/g未満であると、α−オレフィン重合体組成物の曲げ弾性率、曲げ強度、アイゾット衝撃強度等の機械物性が低下し、5dl/gを超えると成形性が低下する。
又、α―オレフィン重合体の形状としては、パウダー状又はフレーク状が好ましい。
このような形状のα−オレフィン重合体を使用することにより、(B)成分の有機ケイ素化合物がα−オレフィン重合体組成物中に容易に高分散可能となる。
特に、表面積の高いパウダー状α―オレフィン重合体が好ましい。
その表面積としては、0.01〜5m2/g、好ましくは0.05〜2m2/gである。
フレーク状のα―オレフィン重合体の粒径としては、200〜2000μmであり、好ましくは200〜1500μmである。
パウダー状のα―オレフィン重合体の平均粒径としては、50〜2000μm、好ましくは、200〜1500μmである。
平均粒径が50μm未満であると、溶融混練時のα―オレフィン重合体の供給が、目詰まり等が原因で不安定になり、2000μmを超えると、α―オレフィン重合体中への有機シラン化合物の分散が十分にできず、且つα―オレフィン重合体の供給が不安定になる恐れがある。
又、嵩比重は、0.2〜0.6g/cm3であり、好ましくは0.30〜0.55g/cm3である。
嵩比重が0.2g/cm3未満であると、溶融混練時のα―オレフィン重合体の供給量が低下し,生産性の低下を引き起こし易くなり、0.6g/cm3を超えると、大きな問題点はないが、このような高い嵩比重のα―オレフィン重合体の生産には特別な製造条件が必要となり、コスト上昇につながる。
α−オレフィン重合体が、プロピレン重合体及び1−ブテン重合体の場合、そのメソペンタッド分率[mmmm]は97モル%以上であることが好ましい。
[mmmm]が97モル%未満であると、曲げ弾性率,熱変形温度等の物性が低下する。
ここで、メソペンタッド分率[mmmm]とは、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等の“Macromolecules,6,925(1973)”で提案された13C−NMRスペクトルにより測定されるプロピレン重合体分子中のペンタッド単位での、アイソタクチック分率を意味する。
尚、1−ブテン重合体の場合も、プロピレン重合体と同様に、13C−NMRスペクトルにより測定される1−ブテン重合体分子中のペンタッド単位での、アイソタクチック分率を意味する。
又、13C−NMRスペクトルの測定におけるピークの帰属決定法は、エイ・ザンベリ(A.Zambelli)等の“Macromolecules,8,687(1975)”で提案された帰属に従った。
【0007】
本発明の(B)成分である一般式(1)
nSiYm(OR)4-(n+m) (1)
(式中、Xはカルボン酸又はその無水物と反応しうる基を含有する置換基、 Yは炭化水素基、水素原子又はハロゲン原子、Rは炭化水素基を示し、nは1〜3、mは0〜2の整数を示し、(n+m)=1〜3である。)
で表わされる有機ケイ素化合物において、Xとしては、アミノ基、水酸基、エポキシ基及びイソシアネート基を含む置換基から選ばれる一種以上の置換基が好ましく、アミノ基を含む置換基が特に好ましい。
Rとしては、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、(n+m)は1〜2が好ましい。
有機ケイ素化合物の具体例としては、例えば、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)ジメトキシメチルシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−(1−アミノプロポキシ)−3,3−ジメチル−1−プロペニルトリメトキシシラン、メチルトリス(2−アミノエトキシ)シラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)ジエトキシメチルシラン、3−[2−(2−アミノエチルアミノエチルアミノ)プロピル]トリメトキシシラン、3−シクロへキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ベンジルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリエトキシラン、3−アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−(N−アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、アリルアミノトリメチルシラン、N−3−(空くリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(3−トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N−(トリメトキシシリルプロピル)イソチオウロニウムクロライド、N−(トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリ−n−ブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、2−アミノエチルアミノメチルベンジロキシジメチルシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(6−アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、N−(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4−ヒドロキシブチルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)グルコンアミド、ヒドロキシメチルトリエトキシシラン、トリ−t−ブトキシシラノール、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)−O−ポリエチレンオキシドウレタン、3,4−エポキシブチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)ジメチルエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、O−(ビニロキシエチル)−N−(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、ユレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルー3−ピペラジノプロピルシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、2−(2−アミノエチルチオエチル)トリエトキシシラン等が挙げられる。
【0008】
有機ケイ素化合物(B)の添加量としては、α−オレフィン重合体(A)100質量部に対して0.001〜10質量部、好ましくは、0.1〜0.5質量部である。
添加量が0.01質量部未満であると、α−オレフィン重合体組成物の溶融張力が向上せず、1質量部を超えるとコストアップに見合う溶融張力の改善が認められない。
【0009】
本発明の(C)成分の炭素数2〜20の酸変性α−オレフィン重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、プロピレン重合体、プロピレン系共重合体、1−ブテン重合体、1−ブテン系共重合体及び炭素数5〜20の高級α−オレフィン重合体等の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性体が挙げられる。
α−オレフィン重合体としては、プロピレン重合体及び1−ブテン重合体が好ましい。
α−オレフィン重合体の原料モノマーの炭素数が20を超えると、実用性のある高分子量体の製造が困難になり、且つ物性に悪影響を及ぼす(ベタツキ等)低分子量成分の含有量が増大するという問題点を生ずる。
酸変性α−オレフィン重合体の分子量としては、135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7dl/g以上、好ましくは、0.7〜5dl/g、更に好ましくは、0.8〜3デシリットル/gである。
極限粘度[η]が0.7dl/g未満であると、α−オレフィン重合体組成物の溶融張力発現に有効な成分が効率的に生成しない。
ここで、溶融張力発現に有効な成分としては、酸変性α−オレフィン重合体と有機ケイ素化合物の反応、及び引き続き起こると考えられる水架橋反応により生成するα−オレフィンの高分子量重合体や長鎖分枝構造あるいは星型構造を有するα−オレフィン重合体が考えられる。
又、極限粘度[η]が5dl/gを超えると、(A)成分のα−オレフィン重合体との混和が不良となり易く、ゲル分の副生が起こり易い。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に由来する酸の含有量は、0.001〜1質量%、好ましくは、0.01〜0.5質量%である。
含有量が、0.001質量%未満であると、有機ケイ素化合物との反応による上記溶融張力発現成分が生成し難くなる恐れがあり、1質量%を超えると、有機ケイ素化合物との反応により、溶融張力発現成分の他に、三次元網目構造体(ゲル成分)が副生し易くなる。。
酸変性α―オレフィン重合体の添加量としては、α−オレフィン重合体100質量部に対して0.1〜30質量部、好ましくは、1〜20質量部である。
添加量が、0.1質量部未満であると、溶融張力発現成分の生成量が低下し、十分な効果が発現し難くなり、30質量部を超えると、溶融張力発現成分の他に副生すると考えられる三次元網目構造体の量が増大し,成形不良、外観不良等を引き起こし易くなる。又、酸変性α−オレフィン重合体の組成物中に占める割合が高くなりコストアップとなる。
【0010】
(C)成分の酸変性α−オレフィン重合体は、更に下記の▲1▼〜▲3▼を満たすことが好ましい。
▲1▼酸含有量とα―オレフィン重合体の鎖のモル比(β値)が、0.5:1.0〜3.0:1.0
β値が0.5未満であると溶融張力の向上が十分に図れず、3.0を超えると、三次元網目構造体の生成が増大し、成形不良及び外観不良等の問題を引き起こす恐れがある。
ここで、β値とは、数平均分子量Mn[ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法]より算出したα―オレフィン重合体の鎖数(モル/g)と酸含有量(モル/g)の比率を意味し、この値が1の場合、α―オレフィン重合体の鎖1本当たり1分子の不飽和カルボン酸が付加したことになる。
▲2▼重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2.5以下
Mw/Mnが2.5を超えると、酸変性α−オレフィン重合体の分子量の均一性が低下する(分子量の異なる成分が混在する)ため、有機シラン化合物との反応で生成する溶融張力向上成分も不均一となり、安定した溶融張力向上効果が発現し難くなる。
▲3▼Mwが1万以下の成分量が、0.5質量%以下
0.5質量%を超えると、組成物中の低分子量成分量が増加し、表面粗れ及びベタツキの原因となる。
【0011】
α―オレフィン重合体の変性に使用される不飽和カルボン酸及び/又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸等が挙げられる。
好ましい酸又は酸無水物としては、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられ、特に、好ましくは無水マレイン酸が挙げられる。
不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の使用量としては、α―オレフィン重合体100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部が良い。
酸の使用量が0.1質量部未満であると、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の付加量が少なく、β値が0.5未満となることがある。
10質量部を超えると、臭気の原因となる未反応の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物が増加する。
【0012】
α―オレフィン重合体の不飽和カルボン酸及び/又はその無水物による変性には、通常、ラジカル開始剤が使用される。
ラジカル開始剤としては、例えば、ブチルペルオキシド、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルアセテート、t−ブチルペルジエチルアセテート、t−ブチルペルイソブチレート、t−ブチルペル−sec−オクトエート、t−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート、t−ブチルペルベンゾエート、t−ブチルペルフェニルアセテート、t−ブチルクミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ブタン、ラウロイルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシベンエート)へキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)へキシン−3、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,4,4−トリメチルペンチル−2−ハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、4,4−ジ−t−ブチルペルオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、ジ−t−ブチルペルオキシヘキサハイドロフタレート、ジ−t−ブチルペルオキシアゼレート、t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルヘキソエート、t−ブチルペルオキシ−イソプロピルカービネート、サクシニックアシッドペルオキシドおよびビニルトリス−(t−ブチルペルオキシ)シラン等が挙げられる。
好ましいラジカル開始剤としては、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)へキシン−3、ジクミルペルオキシド、α,α−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)へキサン等が挙げられる。
ラジカル開始剤の使用量としては、α−オレフィン重合体100質量部に対して、0.01〜1質量部、好ましくは0.05〜0.25質量部である。
0.01質量部未満であると、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物の付加量が少なく、酸変性α−オレフィン重合体の重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2.5を超えることがある。
1質量部を超えると、酸変性α−オレフィン重合体の極限粘度[η]が0.7dl/g未満となり、分子量1万以下の成分量が0.5質量%を超えて生成する場合がある。
【0013】
酸変性α−オレフィン重合体の製造法としては、例えば、α−オレフィン重合体、ラジカル開始剤、不飽和カルボン酸及び/又はその無水物を配合し、溶融混練する方法等が挙げられる。
本発明の酸変性α−オレフィン重合体には、本発明の効果を損なわない範囲において、イルガノックス1010[テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン]、イルガフォス168[トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト]等及び後記するような酸化防止剤、ステアリン酸カルシウム等の中和剤等、通常の添加剤を更に加えることができる。
溶融混練温度としては、一般に170〜300℃、好ましくは180〜250℃である。溶融混練(滞留)時間としては、10秒〜120秒である。
溶融混練時には、不活性ガス雰囲気下におくことが好ましい。場合により、スチームを添加したり、減圧下揮発分を除去してもよい。
成形機としては、単軸押出機、二軸押出機等が使用される。
二軸押出機としては、20mmφラボプラストミル、35mmφTEM(東芝機械製二軸押出機)等が挙げられる。
溶融混練した酸変性α−オレフィン重合体は、その後、次の▲1▼の処理、▲2▼の処理、あるいは▲1▼の処理後▲2▼の処理を行なうことが好ましい。
この処理により、未反応に不飽和カルボン酸またはその無水物の含量を低減することができる。
▲1▼アセトンやメチルエチルケトン等のジアルキルケトンと、ヘキサン、ヘプタン、デカリン等の脂肪族又脂環式炭化水素の混合溶媒中で接触処理する。
▲2▼メタノール等のアルコール、アセトンやメチルエチルケトン等のジアルキルケトンあるいはアルコールとジアルキルケトンとの混合溶媒中で接触処理する。
【0014】
本発明のα−オレフィン重合体組成物は、(A)成分のα−オレフィン重合体100質量部、(B)成分の有機ケイ素化合物0.001〜1質量部、及び(C)成分の酸変性α−オレフィン重合体0.1〜30質量部を接触させて得ることできる。
又、本発明のα−オレフィン重合体組成物は、更に、下記の▲1▼〜▲3▼を満たすことが好ましい。
▲1▼(B)成分の有機ケイ素化合物に由来するケイ素化合物を0.001〜1質量%含有し、
▲2▼式(2)のメルトフローレート(M.I.[単位:g/10分])から求めたM.T.cと溶融張力(M.T.[単位:g])が、式(3)を満たす。
M.T.c=7×(M.I.)-0.8 (2)
M.T./M.T.c>1 (3)
ここで、M.T.c[単位:g]は、式(2)より、オレフィン重合体の溶融張力の7倍の溶融張力であることを意味している。
従って、式(3)より、M.T.[単位:g](溶融張力)の値は、溶融張力向上による諸物性が十分に発現する溶融張力レベルを意味し、成型加工性、主としてブロー成形や熱成形のドローダウン性及びピンチオフ特性と相間があり、フィルム成形時の高速成形性の指標にもなる。
▲3▼130℃のパラキシレンに不溶な成分量が1質量%未満
ゲル成分量の指標として、130℃のパラキシレンに不溶な成分量を採用した。
この成分量が1質量%以上の場合、成形品の外観が悪化する恐れがある。
130℃のパラキシレンに不溶な成分量の測定方法としては、後記する方法が挙げられる。
【0015】
本発明のα−オレフィン重合体組成物を得る方法としては、溶融混練法、溶液中での反応法等が挙げられ、経済性や生産効率を考慮すると溶融混練法が好ましい。
溶融混練法の条件としては、例えば、下記の条件が挙げられる。
溶融混練温度としては、80〜350℃、好ましくは、130〜250℃である。
溶融混練時間としては、1秒〜6時間、好ましくは、30秒〜3時間である。
成形機としては、単軸押出機、二軸押出機等が使用される。
二軸押出機としては、20mmφラボプラストミル、35mmφTEM(東芝機械製二軸押出機)等が挙げられる。
尚、溶融混練法の場合、(B)成分の有機ケイ素化合物を、(A)成分のα−オレフィン重合体中に予め十分に分散させることが好ましい。
(A)成分の融点以下の温度条件において、(B)成分を(A)成分に分散させた後、(C)成分を反応させて得られるα−オレフィン重合体組成物が更に好ましい。
【0016】
本発明のα−オレフィン重合体組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、種々の酸化防止剤を配合することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、及びリン系の酸化防止剤が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのモノフェノール系酸化防止剤、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどのビスフェノール系酸化防止剤、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス−(4’− ヒドロキシ−3’− t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロールなどの高分子型フェノール系酸化防止剤が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノあるいはジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシー9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが挙げられる。
酸化防止剤の配合量は、(A),(B),(C)成分の合計量に対して、100〜10000質量ppmの範囲が好ましい。好ましくは、1000〜5000質量ppmである。
100質量ppm未満では、M.I.やM.T.が安定しない可能性があり、10000質量ppmを超える量を配合しても、コストに見合う効果が得られない。
酸化防止剤は、リン系酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤の両方を配合することが好ましい。
ステアリン酸カルシウム等の中和剤等、通常の添加剤を更に加えることができる。
【0017】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0018】
本発明の物性測定は、下記の方法に従った。
[物性測定法]
(1)分子量分布Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法により、下記の装置及び条件で測定したプロピレン重合体換算のMw及びMnより算出した。
Mwが1万以下の成分量も、このGPC法により測定した。
GPC測定装置
カラム:TOSOGMHHR−H(S)HT
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器 WATERS 150C測定条件
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン
温度:145℃
流速:1.0ミリリットル
試料濃度:2.2mg/ミリリットル
注入量:160マイクロリットル
検量線:Univesal Calibration
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
【0019】
(2)メソペンタッド分率[mmmm]は、下記の装置及び条件にて測定した。
装置:日本電子(株)製JNM−EX400型13C−NMR装置
方法:プロトン完全デカップリング法
濃度:220mg/3ミリリットル
溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼンと重ベンゼンの90:10(容量比)
混合溶媒
温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算:10000回
【0020】
(3)酸変性α−オレフィン重合体の酸含有量の測定
酸変性α−オレフィン重合体をフィルム成形し、それを用いてフ−リエ変換赤外吸収スペクトルを測定することにより算出した。
(4)メルトフローレート(M.I.[単位:g/10分].)の測定法
JIS−K7210に準拠し、測定温度230℃、荷重2.16kgにて測定した。
プロピレン重合体組成物の場合、長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを使用した。
【0021】
(5)溶融張力(M.T.[単位:g].)の測定法
東洋精機(株)製キャピログラフ1Cを使用し、測定温度230℃、引取り速度3.1m/分にて測定した。
プロピレン重合体組成物の場合、長さ8mm、直径2.095mmのオリフィスを使用した。
(6)130℃パラキシレン不溶部量(G値)の測定法
1リットルの丸底フラスコに、α−オレフィン重合体組成物1g、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)250mg、パラキシレン500ミリリットルを加え、130℃で3時間攪拌した。
得られたパラキシレン溶液を迅速に400メッシュのステンレス製金網でろ過し、その後金網を90℃で4時間真空乾燥し、秤量して、金網を通過しなかった成分の質量を求め、130℃パラキシレン不溶部量とした。
(7)極限粘度:135℃、テトラリン中で測定した。
(8)重合体パウダーの平均粒径
メッシュの異なる篩を用いて分級し、50%質量部分の粒径を平均粒径とした。
(9)重合体パウダーの嵩比重:JIS K 6911に準拠して測定した。
(10)β値:前記した方法により測定した。
【0022】
実施例1
▲1▼(A)成分の合成
(1)固体触媒成分の調製
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したオクタンを60ミリリットル、ジエトキシマグネシウム16gを加えた。
40℃に加熱し、四塩化ケイ素2.4ミリリットルを加えて20分間攪拌した後、フタル酸ジブチル1.6ミリリットルを添加した。
この溶液を80℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを77ミリリットル滴下し、内温125℃で、2時間攪拌して接触操作を行った。 その後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。
100ミリリットルの脱水オクタンを加え、攪拌しながら125℃まで昇温し、1分間保持した後、攪拌を停止して固体を沈降させ、上澄みを抜き出した。
この洗浄操作を7回繰り返した。
さらに、四塩化チタンを122ミリリットル加え、内温125℃で、2時間攪拌して2回目の接触操作を行った。
その後、上記の125℃の脱水オクタンによる洗浄を6回繰り返し、固体触媒成分を得た。
【0023】
(2)予備重合
内容積0.5リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400ミリリットル、トリイソブチルアルミニウム25ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン2.5ミリモル、上記固体触媒成分4gを加えた。
室温下、攪拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体触媒1g当たり4gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分を得た。
【0024】
(3)プロピレンの重合
内容積10リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6リットル、トリエチルアルミニウム12.5ミリモル、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.3ミリモルを加えた。
ここに、系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.098MPa張り込み、次いで攪拌しながらプロピレンを導入した。
内温80℃、全圧0.785MPaに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分をTi原子換算で0.025ミリモルを含んだヘプタンスラリー50ミリリットルを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
重合終了後、50ミリリットルのメタノールを添加し降温、脱圧した。
内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し85℃に昇温し固液分離した。
更に、85℃のヘプタン6リットルで固体部を2回洗浄し、真空乾燥してプロピレン重合体(A)2.5kgを得た。
固体触媒1g当たりの触媒活性は、重合3時間で33.1kg/g−cat.・3hrであった。
以下に、このプロピレン重合体の特性を示す。
a.極限粘度[η]:1.70dl/g
b.13CNMRによるメソペンタッド分率[mmmm]:98.0mol%
c.重合体パウダーの平均粒径:1200μm
d.重合体パウダーの嵩比重:0.38g/cm3
【0025】
▲2▼(C)成分の合成
(C)成分の原料となるプロピレン重合体は、水素を添加しない以外は、上記▲1▼の(A)成分の合成における(3)プロピレン重合と同様に合成した。
得られたプロピレン重合体の極限粘度[η]は、7.65dl/gであった。
上記プロピレン重合体2kgに、無水マレイン酸を6g、及びパーヘキシン25B/40(日本油脂株式会社製、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)へキシン−3、不活性固体40%希釈品)を2g、ドライブレンドし、20ミリの二軸押出機で溶融混錬した。
得られたペレット状サンプル1kgに、アセトン0.5kg、ヘプタン0.7kgを加え、85℃で2時間加熱攪拌した(耐圧容器中で実施)。
同操作終了後、金網で、ペレットを回収した後、1.5kgのアセトン中に、15時間浸漬した。
その後、金網でペレットを回収し、風乾後、80℃で6時間、130℃で6時間、真空乾燥した。
以下に、無水マレイン酸変性プロピレン重合体の特性を示す。
a.無水マレイン酸含有率:0.098質量%
b.極限粘度[η]:1.43dl/g
c.β値:0.99
d.Mw/Mn:2.03
e.Mwが1万以下の成分量:0.2質量%
【0026】
▲3▼プロピレン重合体組成物の調製
(A)成分として、上記プロピレン重合体パウダー380gに、(B)成分として、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を0.95g、イルガノックス1010を0.24g、イルガフォス168を0.56g、及びステアリン酸カルシウムを0.2g加え、十分にブレンドした。
次に、(C)成分として、上記無水マレイン酸変性プロピレン重合体20gを加え、混合後、二軸押出機を用い、230℃で溶融混錬した。
得られたプロピレン重合体組成物の物性値を表1に示す。
M.T.cの値は、式(2)より求めた計算値である。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は2.0と高い値を示した。
【0027】
実施例2〜5
(C)成分の量を変えた以外は、実施例1と同様にプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、1.5〜2.7と高い値を示した。
【0028】
実施例6〜8
実施例1▲1▼の(A)成分の合成における(3)プロピレン重合において、水素条件を変えて合成した極限粘度の異なる(A)成分を用いた以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。重合体パウダーの嵩比重は、0.36〜0.39g/cm3の範囲であった。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、1.6〜2.7と高い値を示した。
【0029】
実施例9
実施例1▲1▼の(A)成分の合成における(3)プロピレン重合において、Ti/Mg触媒の代わりに、三塩化チタンとジエチルアルミニウムクロリドからなる触媒を使用し、下記の(2)予備重合及び(3)プロピレン重合の条件で合成した(A)成分を用いた以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、2.1と高い値を示した。
【0030】
(2)予備重合
内容積2.0リットルの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタン1.5リットル、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)31.5g、ソルべー触媒(三塩化チタン)4.5gを加えた。
室温にて、攪拌しながらプロピレンを導入し、80分後、停止した。
この結果、固体触媒1g当たり0.8gのプロピレンが重合した予備重合触媒を得た。
【0031】
(3)プロピレンの重合
内容積10リットルの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6リットルを加え、系内の窒素をプロピレンで置換した。
その後、水素を0.059MPa張り込み、続いて攪拌しながらプロピレンを導入した。
内温60℃、全圧0.735MPaに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分を固体触媒として0.6gを含んだヘプタンスラリー50mlを加え、プロピレンを連続的に供給しながら60℃で4hr重合した。プロピレン重合体を2.4kg得て、活性は4.0kg/g−cat.・4hrであった。
以下に、得られたプロピレン重合体の特性を示す。
a.極限粘度[η]:1.79dl/g
b.13CNMRによるメソペンタッド分率[mmmm]:93.3mol%、
c.重合体パウダーの平均粒径:300μm
d.重合体パウダーの嵩比重:0.51g/cm3
【0032】
比較例1
(B)成分を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、0.6と低い値を示した。
【0033】
比較例2
(C)成分を使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、0.5と極めて低い値を示した。
【0034】
実施例10〜14
(C)成分合成時の過酸化物の使用量を変化させて得られた極限粘度と無水マレイン酸含量の異なる(C)成分を使用した以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、1.7〜3.2と高い値を示した。
【0035】
比較例3
(A)成分を使用しなかった以外は、実施例14と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。
得られたプロピレン重合体組成物のM.I.及びM.T.は、ゲルが多く測定不能であった。
【0036】
比較例4
実施例1の(C)成分の代わりに、極限粘度が小さく、無水マレイン酸含量の高い市販の変性プロピレン重合体(三洋化成社製、ユーメックス1010)を使用した以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は0.4と低い値を示した。
【0037】
比較例5
実施例1の(C)成分の代わりに、極限粘度が小さく、無水マレイン酸含量の高い市販の変性プロピレン重合体(東洋化成社製、東洋タックH1000P)を使用した以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は0.4と低い値を示した。
【0038】
実施例15〜18
(B)成分の使用量を変えた以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、2.7〜3.0と高い値を示した。
【0039】
実施例19
実施例1において、APTESの代わりに、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)を用いた以外は、実施例1と同様にしてプロピレン重合体組成物を調製した。結果を表1に示す。
得られたプロピレン重合体組成物のM.T./M.T.cの値は、1.2を示した。
尚、各実施例において、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を同時にブレンドし,溶融混練した場合も、(A)成分及び(B)成分を十分にブレンドした後、(C)成分をブレンドし溶融混練する場合と同一の結果が得られた。
【0040】
参考例1〜8
プロピレン重合体のM.I.及びM.T.の測定結果を、表2に示す。
M.I./M.T.c比は、0.3〜0.5と極めて低い値を示した。
【0041】
【表1】
Figure 0004167027
【0042】
【表2】
Figure 0004167027
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、ゲルの発生が抑制され、溶融張力が上昇し、成形性が大幅に向上したα−オレフィン重合体組成物が得られる。

Claims (10)

  1. (A)135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7〜5dl/gの範囲にあり、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体100質量部、(B)一般式(1)
    nSiYm(OR)4-(n+m) (1)
    (式中、Xはカルボン酸又はその無水物と反応しうる基を含有する置換基、Yは炭化水素基、水素原子又はハロゲン原子、Rは炭化水素基を示し、nは1〜3、mは0〜2の整数を示し、(n+m)=1〜3である。)
    で表わされる有機ケイ素化合物0.001〜1質量部、及び(C)不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に由来する酸を0.001〜1質量%含有し、135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7dl/g以上の炭素数2〜20の変性α−オレフィン重合体0.1〜30質量部を接触させて得られ、130℃のパラキシレンに不溶な成分量が1質量%未満であるα−オレフィン重合体組成物。
  2. 下記の(1)及び(2)を満たす、請求項1に記載のα−オレフィン重合体組成物。
    (1)(B)成分の有機ケイ素化合物に由来するケイ素化合物を0.001〜1質量部含有し、
    (2)式(2)のメルトフローレ−ト(M.I.[単位:g/10分])から求めたM.T.c[単位:g]と溶融張力(M.T.[単位:g])が、式(3)を満たす。
    M.T.c=7×(M.I.)-0.8 (2)
    M.T./M.T.c>1 (3)
  3. 一般式(1)のXが、アミノ基、水酸基、エポキシ基及びイソシアネート基を含む置換基から選ばれる一種以上の置換基である請求項1又は請求項2に記載のα−オレフィン重合体組成物。
  4. (C)成分の酸変性α−オレフィン重合体が、更に下記の(1)〜(3)を満たす、請求項1〜3のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物。
    (1)酸含有量とα―オレフィン重合体の鎖のモル比(β値)が、0.5:1.0〜3.0:1.0
    (2)重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2.5以下
    (3)Mwが1万以下の成分量が、0.5質量%以下
  5. (C)成分の不飽和カルボン酸無水物が、無水マレイン酸である請求項1〜4のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物。
  6. (C)成分が、プロピレン重合体又は1−ブテン重合体を用いて得られた酸変性α−オレフィン重合体である請求項1〜5のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物。
  7. (A)成分が、メソペンタッド分率[mmmm]97モル%以上のプロピレン重合体又は1−ブテン重合体である請求項1〜6のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物。
  8. (A)成分の平均粒径が50〜2000μmであり、嵩比重が0.2〜0.6g/cm3である、請求項7に記載のα−オレフィン重合体組成物。
  9. 一般式(1)のXが、アミノ基を含む置換基である(B)成分を使用する請求項1〜7のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物。
  10. (A)135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7〜5dl/gの範囲 にあり、炭素数2〜20のα−オレフィン重合体100質量部、(B)一般式(1)
    n SiY m (OR) 4-(n+m) (1)
    ( 式中、Xはカルボン酸又はその無水物と反応しうる基を含有する置換基、Yは炭化水素基、水素原子又はハロゲン原子、Rは炭化水素基を示し、nは1〜3、mは0〜2の整数を示し、(n+m)=1〜3である。 )
    で表わされる有機ケイ素化合物0.001〜1質量部、及び(C)不飽和カルボン酸及び/又はその無水物に由来する酸を0.001〜1質量%含有し、135℃、テトラリン中で測定した極限粘度[η]が0.7dl/g以上の炭素数2〜20の変性α−オレフィン重合体0.1〜30質量部ブレンドした後、溶融、混練する請求項1〜のいずれかに記載のα−オレフィン重合体組成物の製造方法。
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