JP3772648B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン単独重合体と気相連続重合で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系樹脂組成物に関する。さらに詳細には、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくい、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物に関する。また、本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であり、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体として、広範な用途に利用されている。そのポリプロピレン系樹脂組成物の中でも、プロピレン−エチレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系樹脂組成物、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体とプロピレン単独重合体、または、異なる2種類以上のプロピレン−エチレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系樹脂組成物が、剛性や耐衝撃性等に優れ、好適に使用されることは、従来から良く知られている。
【0003】
例えば、特開平7−157626号公報には、多段重合により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体とポリオレフイン系ゴムとを含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合相のエチレン含有量が5〜50重量%であり、その共重合相の極限粘度が4.0〜8.0dl/gであるプロピレン−エチレンブロック共重合体とエチレン含有量が50重量%を超え98重量%以下であり、極限粘度が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であるプロピレン−エチレンブロック共重合体からなるものが用いられており、そして、極めて延性の大きい熱可塑性樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0004】
特開平7−157627号公報には、多段重合により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体とポリオレフイン系ゴムとを含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合相の極限粘度が4.0〜8.0dl/gであるブロック共重合体と極限粘度が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であるブロック共重合体(但し、プロピレン−エチレンランダム共重合相の極限粘度が4.0〜8.0dl/gであり、その共重合相のエチレン含有量が5〜50重量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体、および、極限粘度が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であり、エチレン含有量が50重量%を超え98重量%以下であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を除く)からなるものが用いられており、そして、極めて延性の大きい熱可塑性樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0005】
また、特開平7−233305号公報には、ポリプロピレン、無機フイラー、炭素数が15〜20で構成される脂肪酸と亜鉛の金属石鹸からなる向上したメルトインデックスを有するポリプロピレン樹脂組成物が記載されている。ポリプロピレンとしては、プロピレンとエチレンの共重合部の[η]が2〜6dl/gである共重合部と7〜15dl/gである共重合部を含むブロック共重合体が記載され、好ましい態様としては、少なくとも2種類のブロック共重合体からなるものが記載されている。そして、衝撃強さ、剛性、耐熱性等の低下が実用上問題無く、流動性を改良し、薄肉化された成形品を製造するに適し、ペレット化による黄、ピンクヘの変色、金型の表面、射出成形品表面への浮き出し物が少ないポリプロピレン樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0006】
ところで、近年、剛性や耐衝撃性等に優れることから好適に使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、製造工程が簡便であり、低価格で製造できる連続式の気相法により製造されるようになってきた。ところが、一般に、気相法で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、そのプロピレン−エチレンランダム共重合部分の極限粘度を高く設定すると、ブツが発生し、成形体の外観が悪くなるという問題を有している。
【0007】
このような外観の問題を解決する方法として、例えば、特開平7−286075号公報には、連続重合法で製造された23℃n−デカン可溶成分含有量が0〜15重量%未満であり、かつこの23℃n−デカン可溶成分が、エチレンから誘導される構成単位を30〜60モル%の量で含有し、極限粘度[η]が3〜7dl/gであるプロピレン重合体とバッチ式溶媒重合法又は連続式溶媒重合法で製造された23℃n−デカン可溶成分含有量が15〜40重量%であり、かつこの23℃n−デカン可溶成分が、エチレンから誘導される構成単位を30〜60モル%の量で含有し、極限粘度[η]が5〜12dl/gであるプロピレンブロック共重合体からなるプロピレン重合体組成物が記載されており、剛性及び耐衝撃性に優れ、外観にブツを発生することなく成形物を形成することができるようなプロピレン重合体組成物が得られることが記載されている。
【0008】
しかし、成形体にした場合に、成形体の表面にフローマークが発生しにくい、即ち、ダイスウェルが高く、かつブツの発生も実用上問題がないほど、従来にも増して、外観特性にすぐれているポリプロピレン系樹脂組成物の開発が望まれている。また、工業的(工程の簡便さ)かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法により製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いて、上述のような優れた特性を有するポリプロピレン系樹脂組成物を開発することが期待されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくい、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明の課題は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、かかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、特定のプロピレン単独重合体と、特定の構造を有するプロピレン単独重合体部分及び特定の構造を有するプロピレン−エチレンランダム共重合体部分からなり気相連続重合で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体とからなるポリプロピレン系樹脂組成物を用いることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、
極限粘度[η]Aが1.3dl/g以下であるプロピレン単独重合体(A)95〜50重量%と、極限粘度[η]B Pが1.4〜2.0dl/gであるプロピレン単独重合体部分及び極限粘度[η]B EPが4.0〜5.0dl/gであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する気相連続重合で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)5〜50重量%からなり、JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が5.0〜150g/10分であるポリプロピレン系樹脂組成物に係るものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)とは、プロピレンのみを重合させて得られる重合体である。また、必要に応じて、2種以上のプロピレン単独重合体を用いることもできる。
【0013】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の極限粘度[η]Aは1.3dl/g以下であり、好ましくは0.7〜1.3dl/gである。極限粘度[η]Aが1.3dl/gを超えると、ポリオレフィン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下する場合がある。
【0014】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の配合割合は、95〜50重量%であり、好ましくは90〜60重量%であり、さらに好ましくは85〜65重量%である。
【0015】
本発明で用いるプロピレン単独重合体(A)の配合割合が、50重量%未満である場合、ブツが多く発生したり、また、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが低下し、流動性が低下することがある。95重量%を超えると、ダイスウェルが低くなりフローマークが発生しやすくなったり、また、耐衝撃性が低下することがある。
【0016】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の13C−NMRにより計算されるアイソタクチックペンタッド分率は、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.97以上である。
【0017】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の分子量分布(Q値)は、流動性と耐衝撃性及び剛性とのバランスの観点から好ましくは3〜6である。
【0018】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(A)の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体成分から形成される触媒系を用い、公知の重合方法を用いる製造方法が挙げられる。その代表的な例を以下に示す。
【0019】
(1)触媒系
(a)固体触媒成分
(a−1)チタン化合物
固体触媒成分(a)の合成に用いられるチタン化合物としては、例えば、一般式Ti(OR1a4-a(R1は炭素数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0≦a≦4の数を表す。)で表されるチタン化合物が挙げられる。具体的には、四塩化チタン等のテトラハロゲン化チタン化合物、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド等のトリハロゲン化アルコキシチタン化合物、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン化合物、トリエトキシチタンクロライド、トリブトキシチタンクロライド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタン化合物、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等のテトラアルコキシチタン化合物を挙げることができる。これらチタン化合物は、単独で用いても良いし、二種類以上を組み合わせて用いても良い。
【0020】
(a−2)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物
固体触媒成分(a)の合成に用いられる有機ケイ素化合物としては、例えば、一般式R2 nSi(OR34-n(R2は炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子を表し、R3は炭素数1〜20の炭化水素基を表す。また、nは0≦n<4の数を表す。)で表されるケイ素化合物が挙げられる。具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン等のアルキルトリアルコキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ブチルメチルジメトキシシラン、ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ブチルメチルジエトキシシラン、ブチルエチルジエトキシシラン、t−ブチルメチルジエトキシシラン等のジアルキルジアルコキシシラン等が挙げられる。
【0021】
(a−3)エステル化合物
固体触媒成分(a)の合成に用いられるエステル化合物としては、例えば、モノおよび多価のカルボン酸エステルが用いられ、それらの例として脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステルが挙げられる。具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、アニス酸エチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル等が挙げられる。好ましくはメタクリル酸エステル等の不飽和脂肪族カルボン酸エステルおよびマレイン酸エステル等のフタル酸エステルであり、さらに好ましくはフタル酸ジエステルである。
【0022】
(a−4)有機マグネシウム化合物
固体触媒成分(a)の合成に用いられるマグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウム−炭素結合やマグネシウム−水素結合を持ち還元能を有するマグネシウム化合物、あるいは、還元能を有さないマグネシウム化合物等が挙げられる。還元能を有するマグネシウム化合物の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム等のジアルキルマグネシウム化合物、ブチルマグネシウムクロライド等のアルキルマグネシウムハライド化合物、ブチルエトキシマグネシム等のアルキルアルコキシマグネシウム化合物、ブチルマグネシウムハイドライド等のアルキルマグネシウムハイドライド等が挙げられる。これらの還元能を有するマグネシウム化合物は、有機アルミニウム化合物との錯化合物の形態で用いてもよい。
一方、還元能を有さないマグネシウム化合物の具体例としては、マグネシウムジクロライド等のジハロゲン化マグネシウム化合物、メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライド等のアルコキシマグネシウムハライド化合物、ジエトキシマグネシウム、ジブトキシマグネシウム等のジアルコキシマグネシウム化合物、ラウリル酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム等のマグネシウムのカルボン酸塩等が挙げられる。これらの還元能を有さないマグネシウム化合物は、予め或いは固体触媒成分(a)の調製時に、還元能を有するマグネシウム化合物から公知の方法で合成したものであってもよい。
【0023】
(a−5)エーテル化合物
固体触媒成分(a)の合成に用いられるエーテル化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルブチルエーテル、メチルイソアミルエーテル、エチルイソブチルエーテル等のジアルキルエーテルが挙げられる。好ましくはジブチルエーテルと、ジイソアミルエーテルである。
【0024】
(a−6)有機酸ハライド化合物
固体触媒成分(a)の合成に用いられる有機酸ハライド化合物としては、モノおよび多価のカルボン酸ハライド等が挙げられ、例えば、脂肪族カルボン酸ハライド、脂環式カルボン酸ハライド、芳香族カルボン酸ハライド等が挙げられる。具体例としては、アセチルクロライド、プロピオン酸クロライド、酪酸クロライド、吉草酸クロライド、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライド、塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、アニス酸クロライド、コハク酸クロライド、マロン酸クロライド、マレイン酸クロライド、イタコン酸クロライド、フタル酸クロライド等を挙げることができる。好ましくは塩化ベンゾイル、トルイル酸クロライド、フタル酸クロライド等の芳香族カルボン酸クロライドであり、さらに好ましくはフタル酸クロライドである。
【0025】
固体触媒成分の合成
固体触媒成分(a)を製造する方法としては、例えば、下記の方法が挙げられる。
(1)液状のマグネシウム化合物、あるいはマグネシウム化合物および電子供与体からなる錯化合物を析出化剤と反応させたのち、チタン化合物、あるいはチタン化合物および電子供与体で処理する方法。
(2)固体のマグネシウム化合物、あるいは固体のマグネシウム化合物および電子供与体からなる錯化合物をチタン化合物、あるいはチタン化合物および電子供与体で処理する方法。
(3)液状のマグネシウム化合物と、液状チタン化合物とを、電子供与体の存在下で反応させて固体状のチタン複合体を析出させる方法。
(4)(1)、(2)あるいは(3)で得られた反応生成物をチタン化合物、あるいは電子供与体およびチタン化合物でさらに処理する方法。
(5)Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の共存下アルコキシチタン化合物をグリニャール試薬等の有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エステル化合物、エーテル化合物およびTiCl4で処理する方法。
(6)有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物およびエステル化合物の存在下、チタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元して得られる固体生成物を、エーテル化合物と四塩化チタンの混合物、次いで有機酸ハライド化合物の順で加えて処理したのち、該処理固体をエーテル化合物と四塩化チタンの混合物もしくはエーテル化合物と四塩化チタンとエステル化合物の混合物で処理する方法。
(7)金属酸化物、ジヒドロカルビルマグネシウムおよびハロゲン含有アルコ−ルとの接触反応物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体およびチタン化合物と接触する方法。
(8)有機酸のマグネシウム塩、アルコキシマグネシウムなどのマグネシウム化合物をハロゲン化剤で処理した後あるいは処理せずに電子供与体およびチタン化合物と接触する方法。
(9)(1)〜(8)で得られる化合物を、ハロゲン、ハロゲン化合物または芳香族炭化水素のいずれかで処理する方法。
これらの固体触媒の合成方法のうち、好ましくは(1)〜(6)の方法であり、さらに好ましくは(6)の方法である。これらの合成反応は通常、全て窒素、アルゴン等の不活性気体雰囲気下で行われる。
【0026】
チタン化合物、有機ケイ素化合物およびエステル化合物は、適当な溶媒に溶解もしくは希釈して使用するのが好ましい。かかる溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、シクロへキサン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物等が挙げられる。
【0027】
有機マグネシウム化合物を用いる還元反応の温度は、通常−50〜70℃、好ましくは−30〜50℃、特に好ましくは−25〜35℃である。還元反応温度が高すぎると触媒活性が低下することがある。有機マグネシウム化合物の滴下時間は、特に制限はないが、通常30分〜12時間程度である。また、還元反応終了後、さらに20〜120℃の温度で後反応を行っても良い。
【0028】
また還元反応の際に、無機酸化物、有機ポリマー等の多孔質物質を共存させ、固体生成物を多孔質物質に含浸させることも可能である。かかる多孔質物質としては、細孔半径20〜200nmにおける細孔容積が0.3ml/g以上であり、平均粒径が5〜300μmであるものが好ましい。
【0029】
多孔質無機酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、TiO2、ZrO2又はこれらの複合酸化物等が挙げられる。また、多孔質ポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体等のポリスチレン系多孔質ポリマー、ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体等のポリアクリル酸エステル系多孔質ポリマー、ポリエチレン、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系多孔質ポリマーが挙げられる。これらの多孔質物質のうち、好ましくはSiO2、Al23、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体である。
【0030】
(b)有機アルミニウム化合物
本発明のプロピレン系単独重合体(A)の製造に用いられる触媒系の有機アルミニウム化合物(b)は、少なくとも分子内に一個のAl−炭素結合を有するものであり、代表的なものを一般式で下記に示す。
4 mAlY3-m
56Al−O−AlR78
(R4〜R8は炭素数が1〜8個の炭化水素基を、Yはハロゲン原子、水素またはアルコキシ基を表す。R4〜R8はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、mは2≦m≦3で表される数である。)有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物、テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサン等が挙げられる。
【0031】
これらの有機アルミニウム化合物のうち、好ましくはトリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドの混合物、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドの混合物、またはテトラエチルジアルモキサンが好ましい。
【0032】
(c)電子供与体成分
本発明のプロピレン系単独重合体(A)の製造に用いられる触媒系の電子供与体成分(c)としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸または無機酸のエステル類、エーテル類、酸アミド類、酸無水物類等の含酸素電子供与体、アンモニア類、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素電子供与体等の一般的に使用されるものを挙げることができる。これらの電子供与体のうち好ましくは無機酸のエステル類およびエ−テル類である。
【0033】
無機酸のエステル類として好ましくは、一般式R9 nSi(OR104-n(式中、R9は炭素数1〜20の炭化水素基または水素原子、R10は炭素数1〜20の炭化水素基であり、R9、R10は、それぞれ同一分子内に異なった置換基を有していても良く、nは0≦n<4である)で表されるケイ素化合物である。具体例としては、テトラブトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、 ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0034】
さらに、エーテル類として好ましくは、ジアルキルエーテル、一般式
Figure 0003772648
(式中、R11〜R14は炭素数1〜20の線状または分岐状のアルキル基、脂環式炭化水素基、アリール基、またはアラルキル基であり、R11またはR12は水素原子であってもよい。)で表されるジエーテル化合物が挙げられる。具体例としては、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができる。
【0035】
これらの電子供与体成分のうち一般式R1516Si(OR172で表される有機ケイ素化合物が特に好ましく用いられる。ここで式中、R15はSiに隣接する炭素原子が2級もしくは3級である炭素数3〜20の炭化水素基であり、具体的には、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基等の分岐鎖状アルキル基、シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。また式中、R16は炭素数1〜20の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基、シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。さらに式中、R17は炭素数1〜20の炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素基である。このような電子供与体成分として用いられる有機ケイ素化合物の具体例としては、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン等を挙げることができる。
【0036】
(2)重合方法
本発明で用いられるプロピレン系単独重合体(A)の製造方法としては、公知の重合方法を用いて、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)からなる触媒系の存在下に、プロピレンを重合させる方法が挙げられる。
【0037】
重合方法としては、バルク重合、溶液重合、スラリー重合または気相重合が挙げられる。バルク重合とは、重合温度において液状のオレフィンを媒体として重合を行う方法であり、溶液重合もしくはスラリー重合とは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の不活性炭化水素溶媒中で重合を行う方法であり、また、気相重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合する方法である。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、また、これらの重合方法を任意に組合せもよい。工業的かつ経済的な観点から、連続式の気相重合法が好ましい。
【0038】
有機アルミニウム化合物(b)の使用量は、固体触媒成分(a)に含まれるチタン原子1モル当たり1〜1000モルであり、好ましくは5〜600モルである。
【0039】
また、電子供与体成分(c)の使用量は、固体触媒成分(a)に含まれるチタン原子1モル当たり0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、さらに好ましくは0.5〜800モルであり、有機アルミニウム化合物(b)に含まれるアルミニウム原子1モル当たり0.001〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、さらに好ましくは0.01〜1モルである。
【0040】
重合温度は、−30〜300℃で実施することができるが、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、特に制限は無いが、工業的かつ経済的な観点から、一般に、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。
【0041】
分子量調整剤としては、水素が好ましい。水素の供給量は本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の用途によって適宜、決めることができる。
【0042】
各触媒成分を重合槽に供給する方法としては、チッソ、アルゴン等の不活性ガス中で水分の無い状態で供給する以外は、特に制限すべき条件はない。また、固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)は、個別に供給しても良いし、いずれか二者、または、全てを予め接触させて供給しても良い。
【0043】
本発明に用いられるプロピレン系単独重合体(A)の製造において重合(本重合)の実施前に、以下に述べる予備重合を行っても良い。
予備重合の方法としては、公知の方法が挙げられ、例えば、固体触媒成分(a)および有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。予備重合に用いられる溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンのような不活性炭化水素及び液状のプロピレンが挙げられ、これらを2種類以上混合して用いても良い。
【0044】
予備重合における有機アルミニウム化合物(b)の使用量は、固体触媒成分(a)に含まれるチタン原子1モル当たり0.5〜700モルであり、好ましくは0.8〜500モルであり、さらに好ましくは1〜200モルである。
【0045】
予備重合されるプロピレンの量は、固体触媒成分1g当たり0.01〜1000gであり、好ましくは0.05〜500gであり、さらに好ましくは0.1〜200gである。
【0046】
予備重合におけるスラリー濃度は、溶媒1L当たりに含まれる固体触媒成分(a)の重量にして、好ましくは1〜500g/Lであり、さらに好ましくは3〜300g/Lである。予備重合温度として、好ましくは−20〜100℃であり、さらに好ましくは0〜80℃である。また、予備重合中の気相部におけるプロピレンの分圧は、好ましくは0.001〜2.0MPaであり、さらに好ましくは0.01〜1.0MPaであるが、予備重合の圧力、温度において液状であるプロピレンについては、この限りではない。さらに、予備重合時間は、特に制限はないが、通常、2分から15時間が好適である。
【0047】
予備重合における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及びプロピレンの供給方法としては、固体触媒成分(a)と有機アルミニウム化合物(b)を接触させた後、プロピレンを供給する方法、または、固体触媒成分(a)とプロピレンを接触させた後、有機アルミニウム化合物(b)を供給する方法等が挙げられる。また、プロピレンの供給方法としては、重合槽内が所定の圧力になるように保持しながら順次プロピレンを供給する方法、または、所定のプロピレン量の全てを最初に供給する方法等が挙げられる。また、得られる予備重合体の分子量を調節するために水素等の連鎖移動剤を添加しても良い。
【0048】
さらに、予備重合において、必要に応じて電子供与体成分(c)を共存させても良い。その使用量は、固体触媒成分(a)に含まれるチタン原子1モル当たり0.01〜400モルであり、好ましくは0.02〜200モルであり、さらに好ましくは0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物(b)に含まれるアルミニウム原子1モル当たり0.003〜5モルであり、好ましくは0.005〜3モルであり、さらに好ましくは0.01〜2モルである。
【0049】
予備重合に用いる電子供与体成分の供給方法は、特に制限はなく、固体触媒成分(a)及び有機アルミニウム化合物(b)と別個に供給しても良いし、予め接触させて供給しても良い。また、予備重合で使用されるプロピレンは、本重合で使用されるプロピレンと同一であっても良く、異なっていても良い。
【0050】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)とは、プロピレン単独重合体部分(これを第1セグメントという。)とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(これを第2セグメントという。)とからなる気相連続重合で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【0051】
第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]B Pは1.4〜2.0dl/gであり、好ましくは1.5〜1.9dl/gである。極限粘度[η]B Pが1.4dl/g未満の場合、ブツが多く発生することがあり、2.0dl/gを超えるとポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが低下し、流動性が低下する場合がある。
【0052】
上記のブツとは、第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の分散性が悪いために生じる、主にプロピレン−エチレンランダム共重合体成分からなる塊状物であり、その大きさは100〜数百μm程度のものである。ブツが多く存在する材料を使用して、射出成形等で成形品にした場合、その成形品表面の外観を損なうだけでなく耐衝撃性能等の機械物性にも悪影響を及ぼす。
【0053】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の13C−NMRにより計算されるアイソタクチックペンタッド分率は、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.97以上である。
【0054】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度[η] B EP は4.0〜5.0dl/gである。極限粘度[η]B EPが4.0dl/g未満の場合、ダイスウェルが不充分なためにフローマークも不充分であることがあり、15.0dl/gを超えるとブツが多く発生したり、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが低下し、流動性が低下する場合がある。
【0055】
第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体中のエチレン含量[(C2’)EP]は、耐衝撃性の観点から、好ましくは20〜60重量%であり、さらに好ましくは23〜50重量%である。
【0056】
第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分と第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の割合は、成形品の耐衝撃性、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の割合が15〜60重量%であり、第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の割合が85〜40重量%である。
【0057】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の配合割合は、5〜50重量%であり、好ましくは10〜40重量%であり、さらに好ましくは12〜35重量%である。
【0058】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の配合割合が、5重量%未満である場合、ダイスウェルが不充分なためにフローマークも不充分であったり、また、耐衝撃性が低下することがある。50重量%を超えると、ブツが多く発生したり、また、ポリオレフィン系樹脂組成物のMFRが低下し、流動性が低下する場合がある。
【0059】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を製造するための気相連続重合とは、気体状態の単量体を媒体として、その媒体中で気体状態の単量体を重合し、連続的にプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を製造する方法である。その重合方法は、少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、第1の重合槽で第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分を重合した後、第1の重合槽の生成物を次の重合槽に移し、次いでその重合槽で第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を連続的に重合するものである。
【0060】
重合条件は、第一段階と第二段階以降のそれぞれにおいて同じでもよく、異なっていてもよいが、通常、重合温度は0〜200℃、好ましくは20〜90℃であり、重合圧力は常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。また、分子量調整剤としては、水素が好適に用いられ、その水素供給量や第一段階と第二段階以降の重合における水素供給バランスは、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の物性や用途に応じて決められる。
【0061】
本発明で用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の製造に用いられる触媒系は、(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体成分から形成される触媒系であり、前述したプロピレン単独重合体(A)の重合に用いられる触媒系と同様のものが用いられる。
【0062】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン単独重合体(A)とプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)からなるものであり、そのポリプロピレン系樹脂組成物のJIS−K−6758に規定された方法に従って、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)は5.0〜150g/10分であり、好ましくは10〜120g/10分である。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が5.0〜150g/10分であれば大型成形品の成形が容易であるが、5.0g/10分未満の場合、成形性が悪化したり、良好なフローマークが得られないことがあり、150g/10分を超えると耐衝撃性が低下する場合がある。
【0063】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×10 3 sec -1 で測定したダイスウェル(D.S.)は、好ましくは1.45以上であり、さらに好ましくは1.50以上である。ダイスウェル(D.S.)が1.45未満の場合、成形体表面のフローマークが不充分な場合がある。
【0064】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロールなどの混練機を用いる方法が挙げられる。例えば、以下に示す方法等が挙げられる。
(1)プロピレン単独重合体(A)とプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のそれぞれの重合パウダーを上記混練機を用いて混練する方法。
(2)プロピレン単独重合体(A)の重合パウダーとプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の重合パウダーをそれぞれ個別に一軸或は二軸押出機を用いて混練してペレットを製造し、その後、プロピレン単独重合体(A)のペレットとプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のペレットを一軸或は二軸押出機を用いて混練する方法。
(3)一軸或は二軸押出機を用いて予めペレット化されたプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)を、プロピレン単独重合体(A)の重合パウダーをペレット化する工程において混練機に定量フィーダーを用いて添加し混練する方法。好ましくは、上記(2)又は(3)のように予め一軸或は二軸押出機を用いて混練されたプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のペレットを用いる方法である。
【0065】
また、必要に応じて、一軸或は二軸押出機のダイスにスクリーンパックを装着してもよい。装着するスクリーンパックとしては、好ましくは金属繊維焼結フィルターであり、例えば「機械設計(1981年3月号第25巻第3号第109〜113頁)」に記載されているものである。
混練温度は、通常、170〜250℃であり、好ましくは190〜230℃である。
【0066】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、その目的、効果を損なわない範囲で、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性、耐酸化安定性を向上せしめるために、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加することが好ましい。また、ゴム成分、無機および有機の各種充填剤も本発明の目的、効果を損なわない範囲で添加できる。
これらの添加剤、ゴム成分及び充填剤等は、プロピレン単独重合体(A)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)又はそれら両方に予め混合した後、ポリプロピレン系樹脂組成物としてもよく、或は、プロピレン単独重合体(A)とプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の混練段階において混合してもよい。
【0067】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、一般に公知の射出成形方法により射出成形体に成形することができる。特に、自動車用射出成形体として好適に使用され、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル及びバンパー等として好適に使用される。
【0068】
【実施例】
以下実施例により本発明を説明するが、これらは単なる例示であり、これら実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた重合体及び組成物の物性の測定方法について以下に示した。
【0069】
(1)極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
【0070】
(1−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の極限粘度
(1−1a)プロピレン単独重合体部分(第1セグメント)の極限粘度:[η]B Pプロピレン−エチレンブロック共重合体の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度:[η]B Pはその製造時に、第1工程であるプロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
【0071】
(1−1b)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(第2セグメント)の極限粘度:[η]B EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体の第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度:[η]B EPは、プロピレン単独重合体部分の極限粘度:[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度:[η]Tをそれぞれ測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。(プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xは、下記(2)の測定方法により求めた。)
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
【0072】
(2)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X及びプロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量:(C2')EP下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982,15,1150-1152)に基づいて求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン−エチレンブロック共重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0073】
(3)アイソタクチック・ペンタッド分率
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules,8,687(1975)に基づいて行った。
【0074】
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。この方法により英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19-14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0075】
(4)メルトフローレート(MFR)(単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
【0076】
(5)ダイスウェル(D.S.)
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、下記条件で測定した。
測定温度:220℃
L/D:40
せん断速度:2.432×103sec-1
【0077】
(6)ブツ数(個/10cm2
Tダイ押し出し機を用いて、下記条件で加工したフィルムを画像解析装置を用いて、下記の方法に従って定量解析した。
フィルム加工条件
田辺プラスティック機械株式会社製 押し出し機V−20とフィルム引き取り装置で50mm幅、厚さ50ミクロンのフィルムを作成した。
定量解析方法
EPSON社製 スキャナーGT−9600でフィルムの画像(900dpi、8bit)をコンピューターに取り込み、その画像を旭エンジニアリング社製画像解析ソフト A像君 で2値化した。ブツは周辺より明るい部分として認識された。ブツの形状は不定形であるので、ブツと同じ面積となる円の直径をブツの大きさであるとして、フィルム10cm2当たりの直径200ミクロン以上のブツの数を求めた。
【0078】
実施例および比較例で用いた2種類の固体触媒成分I及びIIの合成方法を以下に示した。
(1)固体触媒成分I
(1−▲1▼)還元固体生成物の合成
攪拌機、滴下ロートを備えた500mlのフラスコをアルゴンで置換した後、ヘキサン290ml、テトラブトキシチタン9.3ml(9.3g、27ミリモル)、フタル酸ジイソブチル8.5ml(8.8g、32ミリモル)およびテトラエトキシシラン79.1ml(74.4g、357ミリモル)を投入し、均一溶液とした。次に、n−ブチルマグネシウムクロライドのジ−n−ブチルエーテル溶液(有機合成薬品社製、n−ブチルマグネシウムクロライド濃度2.1mmol/ml)199mlを、フラスコ内の温度を6℃に保ちながら、滴下ロートから5時間かけて徐々に滴下した。
滴下終了後、室温でさらに1時間攪拌した後室温で固液分離し、ヘキサン300mlで3回、トルエン300mlで3回洗浄を繰り返した後トルエン270mlを加えた。
固体生成物スラリーの一部をサンプリングし、組成分析を行ったところ固体生成物中にはチタン原子が1.8重量%、フタル酸エステルが0.5重量%、エトキシ基が30.7重量%、ブトキシ基が3.3重量%含有されていた。またスラリー濃度は、0.140g/mlであった。
【0079】
(1−▲2▼)固体触媒成分の合成
攪拌機、滴下ロート、温度計を備えた200mlのフラスコをアルゴンで置換したのち、上記(1−▲1▼)で得られた固体生成物を含むスラリーを84ml投入し、更に上澄み液を12.1mlを抜き取り、フタル酸ジイソブチル7.8ml(29ミリモル)を加え、95℃で30分反応を行った。反応後、固液分離し、トルエン59mlで2回洗浄を行った。
洗浄終了後、フラスコにトルエン15.3ml、フタル酸ジイソブチル0.66ml(2.5ミリモル)、ブチルエーテル1.2ml(6.9ミリモル)、および四塩化チタン23.4ml(0.213モル)を加え、95℃で3時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン59mlで2回洗浄を行った。次いで、トルエン12.0ml、ブチルエーテル1.2ml(6.9ミリモル)、および四塩化チタン11.7ml(0.106モル)を加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン59mlで3回洗浄を行ったのち、ヘキサン59mlで3回洗浄し、さらに減圧乾燥して固体触媒成分8.1gを得た。固体触媒成分中には、チタン原子が1.4重量%、フタル酸エステルが10.0重量%、エトキシ基が0.5重量%、ブトキシ基が0.1重量%含まれていた。また、固体触媒成分を実体顕微鏡で観察したところ、微粉の無い良好な粒子性状を有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分Iと呼ぶ。
【0080】
(2)固体触媒成分II
(2−▲1▼)還元固体生成物の合成
撹拌機、滴下ロートを備えた500mlのフラスコを窒素で置換した後、ヘキサン290ml、テトラブトキシチタン8.9ml(8.9g、26.1ミリモル)、フタル酸ジイソブチル3.1ml(3.3g、11.8ミリモル)およびテトラエトキシシラン87.4ml(81.6g、392ミリモル)を投入し、均一溶液とした。次に、n−ブチルマグネシウムクロライドのジ−n−ブチルエーテル溶液(有機合成薬品社製、n−ブチルマグネシウムクロライド濃度2.1mmol/ml)199mlを、フラスコ内の温度を6℃に保ちながら、滴下ロートから5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後、6℃でさらに1時間撹拌した後、室温でさらに1時間攪拌した。その後、固液分離し、トルエン260mlで3回洗浄を繰り返した後、トルエンを適量加え、スラリー濃度0.176g/mlとした。固体生成物スラリーの一部をサンプリングし、組成分析を行ったところ固体生成物中にはチタン原子が1.96重量%、フタル酸エステルが0.12重量%、エトキシ基が37.2重量%、ブトキシ基が2.8重量%含有されていた。
【0081】
(2−▲2▼)固体触媒成分の合成
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mlのフラスコを窒素で置換したのち、上記(2−▲2▼)で得られた固体生成物を含むスラリーを52ml投入し、上澄み液を25.5ml抜き出しブチルエーテル0.80ml(6.45ミリモル)と四塩化チタン16.0ml(0.146モル)の混合物を加え、ついで、フタル酸クロライド1.6ml(11.1ミリモル:0.20ml/1g固体生成物)を加え、115℃まで昇温しそのまま3時間攪拌した。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン40mlで2回洗浄を行った。次いで、トルエン10.0ml、フタル酸ジイソブチル0.45ml(1.68ミリモル)、ブチルエーテル0.80ml(6.45ミリモル)、及び四塩化チタン8.0ml(0.073モル)の混合物を加え、115℃で1時間処理を行った。反応終了後、同温度で固液分離し、同温度でトルエン40mlで3回洗浄を行ったのち、ヘキサン40mlで3回洗浄し、さらに減圧乾燥して固体触媒成分7.36gを得た。固体触媒成分中には、チタン原子が2.18重量%、フタル酸エステルが11.37重量%、エトキシ基が0.3重量%、ブトキシ基が0.1重量%含まれていた。また、固体触媒成分を実体顕微鏡で観察したところ、微粉の無い良好な粒子性状を有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分IIと呼ぶ。
【0082】
プロピレン単独重合体(A)の重合
A−1の重合
(1)予備重合
攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水、脱気処理したヘキサンにトリエチルアルミニウム(TEA)を25mmol/L、電子供与体成分としてシクロヘキシルエチルジメトキシシラン(以下CHEDMSと略す)をCHEDMS/TEA=0.1(mol/mol)、および固体触媒成分Iを最終的な固体触媒成分あたりの重合体量(以下PP/catと略す)が2.5(g/g)になるように投入し、低温を維持しながらプロピレンを連続的に供給して予備重合体スラリーを得た。得られた予備重合体スラリーを攪拌機付きオートクレーブに移送した後、十分に精製された液状ブタンを加えて10℃以下の温度に保持して保存した。
【0083】
(2)本重合
リアクター内温度90℃、リアクター内圧力1.8MPaにおいて、気相部のプロピレンを81体積%、および水素を7.7体積%に保持する条件下、(1)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分としてTEAおよびCHEDMSを供給しながら連続気相重合を行った。各触媒成分は得られた重合体中の濃度として[TEA]=299ppm、[CHEDMS]=52ppm、PP/cat=16000(g/g)になるように供給した。平均滞留時間は3.3hrであった。得られたポリマーの分析結果を表1に示した。極限粘度[η]A Pは0.84dl/gであった。
【0084】
A−2の重合
本重合において温度を80℃とし、気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はA−1と同様の方法で表1に示す物性を有するA−2のパウダーを得た。得られたポリマーの分析結果を表1に示した。極限粘度[η]A Pは0.90dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.97であった。
【0085】
A−3の重合
本重合において温度を80℃とし、気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はA−1と同様の方法で表1に示す物性を有するA−3のパウダーを得た。得られたポリマーの分析結果を表1に示した。極限粘度[η]A Pは0.89dl/gであった。
【0086】
A−4の重合
予備重合において固体触媒成分の種類をIIに、電子供与体成分の種類をt−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン(以下、tBnPDMSと略す)に変更した以外はA−1と同様に行った。
本重合においてリアクター数を1槽から3槽に変更し、電子供与体成分の種類をtBnPDMSとし、温度を82℃とし、気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はA−1と同様の方法で表1に示す物性を有するA−4のパウダーを得た。得られたポリマーの分析結果を表1に示した。極限粘度[η]A Pは0.76dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.99であった。
【0087】
A−5の重合
本重合において気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はA−1と同様の方法で表1に示す物性を有するA−5のパウダーを得た。得られたポリマーの分析結果を表1に示した。極限粘度[η]A Pは1.2dl/gであった。
【0088】
プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の重合
B−1の重合
(1)予備重合:A−1と同様に行った。
(2)本重合
2槽からなる重合槽を直列に配置し、プロピレン単独重合体部分(第1セグメント)成分の重合後、生成物を次の重合槽に移し、ついでその重合槽でプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(第2セグメント)の重合を気相法で連続的に行った。
【0089】
前段1槽目において、リアクター内温度80℃、リアクター内圧力1.8MPaにおいて、気相部のプロピレンを93体積%、水素を1.0体積%に保持する条件下、(1)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分としてTEAおよびCHEDMSを供給しながら連続気相重合を行った。各触媒成分は得られた重合体中の濃度として[TEA]=373ppm、[CHEDMS]=66ppm、PP/cat=28000(g/g)になるように供給した。平均滞留時間は4.2hrであった。得られたポリマーの極限粘度[η]B Pは1.5dl/gであった。後段2槽目においてはリアクター内温度65℃、リアクター内圧力1.4MPaにおいて、気相部のプロピレンを88.4体積%、エチレンを11.0体積%、水素を0.1体積%に保持する条件下で連続的に気相重合を行った。各触媒成分は得られた重合体中の濃度として[TEA]=270ppm、[CHEDMS]=48ppm、PP/cat=11000(g/g)になるように供給した。平均滞留時間は3.0hrであった。得られたポリマーの分析結果を表1に示した。得られたポリマー全体の極限粘度[η]B Tは2.43dl/gであり、EP含量は28重量%であり、EP中のエチレン含量は24重量%であった。したがってEP部の極限粘度[η]B EPは4.9dl/gであった。
【0090】
B−2の重合
本重合において気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はB−1と同様の方法で表1に示す物性を有するB−2のパウダーを得た。
【0091】
B−3の重合
本重合において気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はB−1と同様の方法で表1に示す物性を有するB−3のパウダーを得た。
【0092】
B−4の重合
本重合において気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はB−1と同様の方法で表1に示す物性を有するB−4のパウダーを得た。
【0093】
B−5の重合
予備重合において固体触媒成分の種類をIIとし触媒成分供給量を変更した以外はA−1と同様に行った。
本重合においてリアクター数を2槽から3槽に変更し、気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はB−1と同様の方法で表1に示す物性を有するB−5のパウダーを得た。
【0094】
B−6の重合
本重合においてリアクター数を2槽から3槽に変更し、気相部のガス組成、触媒成分供給量を調整して、その他はB−1と同様の方法で表1に示す物性を有するB−6のパウダーを得た。
【0095】
表1に示した[η]P、[η]EP、EP中のエチレン含量及びEP含量は、上述の重合により得られたプロピレン単独重合体(A−1〜A−5)とプロピレン−エチレンブロック共重合体(B−1〜B−6)のパウダーの分析値であり、、MFRは、Φ40mm単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:100メッシュ)を用いてパウダー100重量部に、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4-ジ- t -ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加し造粒したペレットのMFRであり、また、ブツ数(>200μm)は、Φ20mmTダイ押し出し機を用いて、前記ペレットを加工して得られたフィルムの10cm2当たりに観察される200μm以上の大きさを有するブツの数である。
【0096】
実施例−1
プロピレン単独重合体パウダー(A−1)70重量%、プロピレン−エチレンブロック共重合体ペレット(B−1)30重量%、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量%、3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量%、ビス(2,4-ジ- t -ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量%を添加しドライブレンドした後、Φ40mm単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:日本精線製金属繊維焼結フィルターNF13D)で造粒し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。MFRは36g/10分、加工したフィルムのブツは少なく、220℃で、オリフィスのL/Dを40に、せん断速度を2.432×103sec-1にして測定したダイスウェル(D.S.)が1.80と高いものであった。
【0097】
実施例−2〜実施例−4
表2に各成分の配合割合と、実施例−1と同様にドライブレンド後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル(D.S.)、フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上の大きさを有するブツの数を評価した結果を示した。
【0098】
比較例−1〜比較例−5
表3に各成分の配合割合と、実施例−1と同様にドライブレンド後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上の大きさを有するブツの数を評価した結果を示した。
【0099】
比較例−1〜比較例−3はプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のP部の極限粘度[η]B P及びEP部の極限粘度[η]B EPが本発明の要件を満足しないため、ダイスウェルが不充分であり、比較例−4はプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)のP部の極限粘度[η]B Pが本発明の要件を満足しないため、ブツが多く、比較例−5はプロピレン単独重合体(A)とプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)の配合割合が本発明の要件を満足しないため、ブツが多いことが分かる。
【0100】
【発明の効果】
本発明により、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくい、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【0101】
【表1】
分析結果
Figure 0003772648
【0102】
【表2】
実施例
Figure 0003772648
【0103】
【表3】
比較例
Figure 0003772648

Claims (8)

  1. 極限粘度[η]Aが1.3dl/g以下であるプロピレン単独重合体(A)95〜50重量%と、極限粘度[η]B Pが1.4〜2.0dl/gであるプロピレン単独重合体部分及び極限粘度[η]B EPが4.0〜5.0dl/gであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を有する気相連続重合で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体(B)5〜50重量%からなり、JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が5.0〜150g/10分であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. プロピレン単独重合体(A)の極限粘度[η]Aが0.7〜1.3dl/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が有するプロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]B Pが1.5〜1.9dl/gであることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. プロピレン単独重合体(A)が90〜60重量%であり、プロピレン−エチレンブロック共重合体(B)が10〜40重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. ポリプロピレン系樹脂組成物のJIS−K−6758に規定された方法に従って、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が10〜120g/10分であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. ポリプロピレン系樹脂組成物の(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×10 3 sec -1 で測定したダイスウェル(D.S.)が1.45以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  7. ポリプロピレン系樹脂組成物の(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、測定温度:220℃、L/D:40、せん断速度:2.432×10 3 sec -1 で測定したダイスウェル(D.S.)が1.50以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする成形体。
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