JP2004098626A - インクジェット記録装置および予備吐出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】まず、大ノズルのみで29000発、吐出周波数10kHzの予備吐出を行う。これにより、インク液室内の増粘・混色インクを排出する。大ノズルの予備吐出が終了したら、小ノズルのみで2000発、吐出周波数10kHzの予備吐出を行う。このように、小ノズルの予備吐出発数を少なくすることで、浮遊ミストの発生を抑えることができる。さらに、増粘・混色インクを排出するには充分な量を吐出した上で、大ノズル、小ノズルの予備吐出発数の合計を少なくしているので、処理に要する時間を削減できる。
【選択図】 図5
Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録装置および該記録装置の吸引回復処理後の予備吐出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
プリンター、複写機、ファクシミリ等において画像等のプリント手段として用いられる記録装置、あるいはコンピューターやワードプロセッサー等を含む複合電子機器やワークステーション等のプリント出力機器として用いられる記録装置は、画像情報(文字情報等すべての出力情報を含む)に基づいて用紙やプラスチック薄板等の被記録材(以下、記録媒体とも言う)に画像等を記録するように構成されている。このような記録装置は、その記録方法により、インクジェット方式、ワイヤドット方式、サーマル方式、レーザービーム方式等に分けることができる。このうち、インクジェット方式の記録装置(以下、インクジェット記録装置と言う)は、記録ヘッドを含む記録手段から記録媒体にインクを吐出して記録を行うものであり、他の記録方式に比べて高精細化が容易である。しかも高速で静粛性に優れ、かつ安価であるという、種々の利点を有している。一方、近年では、カラー画像などのカラー出力の重要性も高まり、銀塩写真に匹敵する高画質のカラーインクジェット記録装置も数多く開発されている。
【0003】
このようなインクジェット記録装置においては、記録速度向上のため、複数の記録素子を集積配列してなる記録ヘッドとして、インク吐出口及び液路を複数集積したものを用いた形態が一般的である。さらにカラー記録に対応して、インク色別に記録ヘッドを複数個備えた形態も普及している。
【0004】
図1は記録ヘッドを用いて紙面上に記録(以下、単に印字ともいう)を行うための装置主要部の構成を示したものである。同図において、101はインクジェットカートリッジである。これらは、4色のカラーインク、すなわちブラック、シアン、マゼンタおよびイエローのインクがそれぞれ貯留されたインクタンクとそれぞれのインクに対応したノズル列より記録ヘッド102は構成されている。
【0005】
図2は図1に示された記録ヘッドのz方向から見た模式図である。
複数の吐出口(以下「ノズル」ともいう)がインク色別にノズル列を成すように配設されている。201は記録ヘッド102上において1インチ当たりD個のノズル密度(Ddpi)でd個配列されたノズルであり、吐出量10plのイエローインクを吐出する事が可能なノズルである。以下、吐出量が10plのノズルを「大ノズル」と称し、この大ノズルから吐出されたインクで形成されるドットを「大ドット」と称する。202は201と同様にイエローインクを吐出する事が可能なノズルであるが、吐出口径が大ノズルに比べて小さく、吐出量が5plと少ない。以下、吐出量が5plのノズルを「小ノズル」と称し、この小ノズルから吐出されたインクで形成されるドットを「小ドット」と称する。同様に203、205、207はそれぞれマゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクの大ノズルであり、204、206、208はそれぞれマゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクの小ノズルである。
それぞれの色の大ノズルと小ノズルは同じ液室209より伸びた流路210の先端に配置されている。
【0006】
再び図1を参照すると、103は紙送りローラであり、補助ローラ104とともに記録媒体Pを挾持しながら図の矢印の方向に回転し、記録媒体Pをy方向(副走査方向)に随時搬送する。また、105は一対の給紙ローラであり、記録媒体の給紙を行う。一対のローラ105は、ローラ103および104と同様、記録媒体Pを挾持して回転するが、紙送りローラ103よりもその回転速度を小さくすることによって記録媒体に張力を作用させることができる。106は4つのインクジェットカートリッジ101を支持し、印字とともにこれらの走査を行わせるためのキャリッジである。キャリッジ106は印字を行っていないとき、あるいは吸引装置107によって記録ヘッド102の回復処理などを行うときに図の破線で示した位置のホームポジションhに位置する。
【0007】
回復処理の1つには増粘インク、記録ヘッド液室内の気泡、及び混色インクを排出するためにインクジェット記録装置内に設置された吸引装置107によって吸引排出する吸引回復処理がある。吸引回復処理は通常キャップで記録ヘッドフェイス面、すなわちノズルが形成されている面をキャップし、キャップ内をチューブポンプ、ピストンポンプ等のポンプ手段によって負の圧力を生じさせる。発生した負圧によって記録ヘッド液室内のインクが吸引される。しかし、吸引終了直後は吸引によってキャップ内に排出されたインクが記録ヘッドフェイス面に残留し、残留したインクが記録ヘッド内に逆流してしまう。この記録ヘッドへの逆流によって記録ヘッド液室内209には再び増粘インクが残る場合があり、複数色の記録ヘッドを一つのキャップによって吸引する場合はこの逆流によって混色が生じる。
【0008】
そこで吸引回復処置を行った後には、増粘インクや混色インクを排出するため、キャップ内に増粘インク、混色インクを排出するまで吐出を行う。この回復処理を予備吐出と呼ぶ。
【0009】
記録ヘッドを駆動させる電源からの供給電力量は、通常の記録動作でのヘッド駆動を前提に設定されており、予備吐出動作において、同時に全ノズルを吐出させると電源からの供給電力量よりも消費電力量が上回ることになる。したがって、同時に全ノズルを駆動させることはできないので、通常は、記録ヘッドのノズルをいくつかのグループに分けて予備吐出動作を行われることになる。
【0010】
例えば、吸引回復処理後、各色1ノズルあたり大ノズル20000発、吐出周波数10kHzの予備吐出の後、小ノズル20000発、吐出周波数10kHzの予備吐出を行う。この予備吐出動作によって増粘インク、混色インクを排出することができる。そして、この吸引回復処理後の予備吐出動作は、4.0秒の時間が必要となる。
【0011】
また、予備吐出とは、通常の印字のための吐出と同様に、吐出されたインクは一滴のインク滴として吐出されず、吐出後、複数のインク滴に分割される。複数のインク滴の中で最も大きなインク滴を主滴、主滴の吐出方向の後方に追随する主滴よりも小さいインク滴をサテライト、その他にさらに微細な吐出速度の小さいインク滴を浮遊ミストと呼ぶ。
【0012】
図3は、吐出から主滴、サテライト、及びミストが形成される様子を示す模式図である。
301はインク、302は吐出直後のインク、303はメニスカス、304は主滴、305はサテライト、306は浮遊ミストである。
図3(a)に示すように吐出が開始され、吐出開始直後はノズルから連続的にインク302が吐出される。その後、同図(b)に示すように、気泡の収縮またはピエゾ素子の変形によって生じたメニスカス303が後退し、記録ヘッド102の内部へインク301が移動する。このインク301の移動に伴い、吐出されたインク302が記録ヘッド内部のインクから分離され、吐出されたインク302内に速度分布が生じる。同図(c)に示すように、速度分布が生じたインクは分割され、最も体積、速度とも大きいインク滴(主滴304)、主滴より体積、速度とも小さいインク滴(サテライト305)、さらに体積、速度とも小さく、キャップ内に到達しないインク滴(浮遊ミスト306)が生じる。
【0013】
予備吐出は吸引装置107のキャップ内に行われ、吐出されたインクの殆どがキャップ内に収容される。しかしながら、前記浮遊ミスト306は体積、速度ともに小さいために記録ヘッド付近に漂って、キャップ内に到達できず、記録ヘッドフェイス面等に付着してしまう。例えば、この浮遊ミストが搬送ローラ等に付着した場合、搬送ローラを汚すばかりでなく、この「汚れ」が記録媒体に転写され所望の画像が印字できない。
【0014】
この浮遊ミスト306の量は、予備吐出の発数の増加や、高い吐出周波数、及びノズルからインク吐出量が少量になるほど多くなる。予備吐出発数が増加すると発数に比例して浮遊ミスト306の量が増える。高吐出周波数による予備吐出では、近傍のノズル間で高周波な吐出による気流が発生し、その気流に巻き上げられて浮遊ミスト306が記録ヘッドフェイス面に付着しやすくなる。また大吐出量でサテライト305は質量が充分でありキャップ内に着弾できる程度の速度を有しているが、小吐出量のノズルによる予備吐出ではサテライト自身の質量が小さく、キャップ内に着弾するほどの速度を有することができず、浮遊ミスト306となってしまいがちである。以上のような浮遊ミスト306の増加によって、「汚れ」の量も多くなる。
【0015】
以上の様に吸引回復処理後に予備吐出を行う場合、予備吐出の発数、及び吐出周波数によっては吸引回復処理後に予備吐出による処理時間が長時間生じてしまう。
また、予備吐出の吐出量、発数、吐出周波数によっては浮遊ミストによる多くの「汚れ」がインクジェット記録装置内に付着し、「汚れ」が記録媒体に転写することにより所望の画像が印字できない等の画像弊害が生じる。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のインクジェット記録装置では、吸引回復処理後に予備吐出を行う必要があるが、この予備吐出は発数や吐出周波数によって、処理時間が変わり、書くノズルに対して充分な予備吐出を行うためには、ある程度の時間を要することになる。したがって、吸引回復処理と予備吐出とを行うと、長時間を要してしまうこととなり、起動後、記録開始前にユーザに待ち時間を感じさせてしまうこととなる。
【0017】
また、予備吐出の吐出量、発数、吐出周波数によっては浮遊ミストが多く発生し、この浮遊ミストが記録ヘッドフェイス面に付着して、記録動作時にインクの吐出方向に影響を与えたり、混色を発生させたり、また、搬送ローラ等、記録装置内の様々な部位に付着することによって、記録媒体にこの浮遊ミストが汚れとなって付着するなどによって、記録される画像品位を低下させる弊害が発生する。
【0018】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、吸引回復処理後の記録ヘッドのノズル付近のインクの混色を防ぎ、さらに、浮遊ミストが記録装置内に付着することが原因となる記録媒体への汚れの付着を防ぐインクジェット記録装置および予備吐出方法を提供することを目的とする。
【0019】
また、本発明は、吸引回復処理後の予備吐出に要する時間を短縮することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明のインクジェット記録装置は、共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段と、前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引手段とを具え、前記予備吐出手段は、前記吸引手段によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の多いノズルの方が、インク吐出量の少ないノズルよりも予備吐出発数が多くなるような予備吐出を行う手段であることを特徴とする。
【0021】
また、共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段と、前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引手段とを具え、前記予備吐出手段は、前記吸引手段によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数は、インク吐出量の多いノズルの吐出周波数よりも小さいことを特徴とするインクジェット記録装置でもよい。
【0022】
また、本発明の予備吐出方法は、共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用いた予備吐出方法において、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出工程と、前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引工程とを具え、前記予備吐出工程では、前記吸引工程によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の多いノズルの方が、インク吐出量の少ないノズルよりも予備吐出発数を多くすることを特徴とする。
【0023】
また、共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用いた予備吐出方法において、前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出工程と、前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引工程とを具え、前記予備吐出工程では、前記吸引工程によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数は、インク吐出量の多いノズルの吐出周波数よりも小さいことを特徴とする予備吐出方法でもよい。
【0024】
以上の構成によれば、インク吐出量の多いノズルから先に予備吐出動作を行い、かつ、予備吐出発数が多いので、インク液室内およびインク流路内の増粘・混色インクを充分に排出することができるとともに、トータルの予備吐出回数を削減することができるので、予備吐出に要する時間を短縮することができる。
【0025】
また、インク吐出量の少ないノズルの予備吐出の吐出周波数を小さくすること、あるいは予備吐出発数を少なくすることで、浮遊ミストの発生を抑えることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、以下に図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本実施形態におけるインクジェット記録装置を示す斜視図である。
本実施形態のインクジェット記録装置の機械的構成は、前述したものと同様とする。
【0028】
記録ヘッド102には、各ノズルに対応して、電気熱変換体が設けられており、この電気熱変換体からの熱エネルギーによってインク中に気泡を発生させ、この気泡の生成圧力によって所定量のインクを滴としてノズルより吐出することができる。このように本実施形態の記録ヘッドはバブルスルー方式でインクを吐出するものであるが、本発明はこれに限らず、ピエゾ方式などでもよいのは言うまでもない。
【0029】
図4は本実施形態のインクジェット記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【0030】
CPU400はメインバスライン405を介して装置各部の制御およびデータ処理を実行する。すなわち、CPU400は、ROM401に格納されるプログラムに従い、データ処理、ヘッド駆動およびキャリッジ駆動を以下の各部を介して制御する。RAM402はこのCPU400によるデータ処理等のワークエリアとして用いられ、また、これらメモリにはその他にハードディスク等がある。画像入力部403はホスト装置とのインターフェースを有し、ホスト装置から入力した画像を一時的に保持する。画像信号処理部404は、色変換、二値化等のデータ処理を実行する。
【0031】
操作部406はキー等を備え、これによりオペレータによる制御入力等を可能にする。回復系制御回路407ではRAM402に格納される回復処理プログラムに従って予備吐出等の回復動作を制御する。すなわち、回復系モータ408は、記録ヘッド413とこれに対向離間するクリーニングブレード409やキャップ410、吸引装置411を駆動する。また、ヘッド駆動制御回路415は、記録ヘッド413のインク吐出用電気熱変換体の駆動を制御し、通常、予備吐出や記録のためのインク吐出を記録ヘッド413に行わせる。さらに、キャリッジ駆動制御回路416および紙送り制御回路417も同様に、プログラムに従い、それぞれ、キャリッジの移動および紙送りを制御する。
【0032】
また、記録ヘッド413のインク吐出用の電気熱変換体が設けられている基板には、保温ヒータが設けられており、記録ヘッド内のインク温度を所望設定温度に加熱調整することができる。又、サーミスタ412は、同様に上記基板に設けられているもので、実質的な記録ヘッド内部のインク温度を測定するためのものである。サーミスタ412も同様に、基板にではなく外部に設けられていても良く記録ヘッドの周囲近傍にあっても良い。
以上の装置構成に基づく、本発明のいくつかの実施形態について以下に説明する。
【0033】
(実施例1)
図2は本実施例に用いられる記録ヘッドのノズル面を示す模式図である。
それぞれのノズル列はノズルピッチ約42.4μm、128個の吐出口(128ノズル)、記録ヘッド長さ5.42mmである。また、各色の大ノズル列と小ノズル列の距離は0.3mmであり、各色の液室間の距離は等しく1mmである。ブラックの大ノズル列207とイエローの大ノズル列201のx方向の位置関係はブラックの大ノズル列207がx方向上流側(印字領域側)イエローの大ノズル列201が下流側(吸引装置側)に位置する。
【0034】
一方、吸引装置に備えられたキャップはx方向に5mmの幅をもっている。その為、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのノズル列は同時に吸引回復、及び予備吐出を行うことができる。
【0035】
前述したように、従来は各色1ノズルあたり大ドット20000発、吐出周波数10kHzの予備吐出、小ドット20000発、吐出周波数10kHzの予備吐出を行っていた。隣り合う大ノズル列と小ノズル列は同じ液室からインクの供給を受けているため、この予備吐出によって、一液室に対して(10pl+5pl)×20000発×128ノズル=38.4μlのインクの排出が行われることになる。これだけのインク排出を行うと、吸引回復処理時に発生した増粘・混色インクを排出することができる。
【0036】
図5は、本実施例の予備吐出処理を示すフローチャートである。
まず、大ノズル29000発、吐出周波数10kHzの予備吐出を行い(ステップ501)、液室209及び大ドットの流路内の増粘・混色インクを排出する。そして、その後、小ノズル2000発、吐出周波数10kHzの予備吐出によって、小ノズルの流路内の増粘・混色インクの排出を行う(ステップ502)。この時の予備吐出による排出量は従来例と同じく38.4μlであり、増粘・混色インクの排出には充分である。
【0037】
しかしながら、吐出発数は大ノズル29000発、小ノズル2000発の合計31000発に過ぎない。従来の大ノズル20000発、小ノズル20000発の合計40000発に比べると9000発も減少している。本実施例の予備吐出処理にかかる時間は3.1秒であり、従来例のそれと比べて0.9秒短縮されることになる。
【0038】
また浮遊ミストが発生しやすい小ノズルの予備吐出発数を従来の1/10に減らしているので、従来に比べて浮遊ミストの発生を大幅に抑えることができる。したがって、浮遊ミストによる画像弊害、例えばノズル面に付着することによる吐出方向のずれやインクの混色、さらには、インクジェット記録装置内に付着することによる「汚れ」の発生を低減することができる。また、すでに液室内の増粘・混色インクの排出は大ノズルの予備吐出で充分に行われているため、小ノズルの予備吐出発数を1/10に減っていても、小ノズル流路内のみの増粘・混色インクの排出には充分である。
【0039】
以上のように異なる吐出量の液体を吐出する少なくとも2種類のノズルを同液室に有したインクジェット記録ヘッドと吸引装置とを備え、吸引後に予備吐出を行うインクジェット記録装置において、吐出量大のノズルに対して吐出量小のノズルの予備吐発数を小さくすることにより、吸引回復処理後インクの混色無く、かつ短時間に所望の画像を印字できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0040】
(実施例2)
本実施例に用いる記録ヘッドは実施例1に用いた図2の記録ヘッドと同様とする。また、吸引後の予備吐出発数も実施例1と同様に大ノズル29000発、小ノズル2000発の予備吐出を行う。
ただし、実施例1では、小ノズルの予備吐出も吐出周波数10kHzで行ったが、本実施例においては小ノズルの予備吐出周波数を5kHzで行う。
小ノズルの予備吐出周波数を5kHzで行うことにより、予備吐出処理にかかる時間は実施例1の3.1秒より長い3.3秒となるが、従来例における予備吐出処理時間の4.0秒より0.7秒短縮することができる。
【0041】
また、浮遊ミストは吐出周波数が大きくなる程、多く発生するので、小ノズルの予備吐出周波数10kHzより低周波数の5kHzで予備吐出を行うことにより、浮遊ミストの発生を低減させることができる。すなわち、実施例1よりも浮遊ミストの発生を抑えることができ、浮遊ミストが原因で起きるインクジェット記録装置内の「汚れ」も低減させることができる。
【0042】
以上のように異なる吐出量の液体を吐出する少なくとも2種類のノズルを同液室に有したインクジェット記録ヘッドと吸引装置とを備え、吸引後に予備吐出を行うインクジェット記録装置において、吐出量大のノズルに対して吐出量小のノズルの予備吐発数を小さく、かつ予備吐周波数を小さくすることにより、吸引回復処理後インクの混色無く、かつ短時間に所望の画像を印字できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0043】
なお、小ノズルの吐出周波数を小さくするほど、浮遊ミストの発生を抑えることができるので、大ノズルと小ノズルの予備吐出発数は同数で、小ノズルの吐出周波数のみを小さくした構成であってもよい。この構成の場合、予備吐出に要する時間は長くなってしまうが、浮遊ミストの発生は抑えることができる。
【0044】
(実施例3)
実施例1、2においては液室に対して片側は大ノズルのノズル列、若しくは小ノズルのノズル列が配置されている記録ヘッドについて説明したが、本実施例では記録ヘッドの中には、大小ノズルが交互に配置され、かつ液室に対向する両側のノズルは大ノズルと小ノズルである記録ヘッドにおける予備吐出について説明する。
【0045】
図6は、本実施例で用いられる記録ヘッドのノズル面を示す模式図である。
前述したように、大ノズル201と小ノズル202が交互に配置されたノズル列となっている。
【0046】
それぞれのノズル列は図2の記録ヘッド102と同様ノズルピッチ約42.4μm、128個の吐出口(128ノズル)、記録ヘッド長さ5.42mmである。各色の液室209に対し両側に配置されたノズル列は大ノズルと小ノズルがx方向、及びy方向に交互に配置されている。各色の液室209に対し両側に配置されたノズル列間の距離は図2と同じく0.3mmであり、各色の液室間の距離は等しく1mmである。
【0047】
本実施例において、吸引処理後に行う予備吐出処理の発数、及び吐出周波数は実施例2と同様に大ノズルは29000発、10kHzの予備吐出を行い、その後に小ノズルは2000発、5kHzの予備吐出を行う。
【0048】
本実施例に用いた記録ヘッドにおいても、上記の予備吐出により増粘・混色インクを解消することができ、予備吐出を短時間に行い、かつ浮遊ミストの発生を低減させることができる。
【0049】
以上のように異なる吐出量の液体を吐出する少なくとも2種類のノズルを同液室に有したインクジェット記録ヘッドと吸引装置とを備え、吸引後に予備吐出を行うインクジェット記録装置において、吐出量大のノズルに対して吐出量小のノズルの予備吐発数を小さく、かつ予備吐周波数を小さくすることにより、吸引回復処理後インクの混色無く、かつ短時間に所望の画像を印字できるインクジェット記録装置を提供することができる。
【0050】
【発明の効果】
以上のように、本発明を用いることにより、インク吐出量の多いノズルから先に予備吐出動作を行い、かつ、予備吐出発数が多いので、インク液室内およびインク流路内の増粘・混色インクを充分に排出することができるとともに、トータルの予備吐出回数を削減することができるので、予備吐出に要する時間を短縮することができる。また、インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数を小さくする、あるいは予備吐出発数を少なくすることで、浮遊ミストの発生を抑えることができる。したがって、浮遊ミストが記録装置内に付着することが原因となる記録媒体への汚れの付着を防ぐことができる。
【0051】
さらに、インク吐出量の少ないノズルの予備吐出発数を少なくして、かつ吐出周波数を小さくすることによって、より確実に浮遊ミストの発生をより抑えることができる。
【0052】
また、従来のインク吐出量の多いノズルも少ないノズルも同じ予備吐出発数で予備吐出を行う予備吐出方法と比べ、吐出するインクの総量はほぼ変わりないにもかかわらず、予備吐出に要する時間は削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態であるインクジェット記録装置を示す斜視図である。
【図2】記録ヘッドのノズル面を示す模式図である。
【図3】インク吐出の様子を示す図であり、(a)は吐出直後のインク滴を示し、(b)はメニスカスが後退し、ノズルとインク滴が切り離された状態を示し、(c)は主滴の他にサテライト、浮遊ミストが発生する状態を示している。
【図4】本発明の実施形態であるインクジェット記録装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】予備吐出処理を示すフローチャートである。
【図6】記録ヘッドのノズル面の他の例を示す模式図である。
【符号の説明】
101 インクジェットカートリッジ
102 記録ヘッド
103 ローラ
104 補助ローラ
105 ローラ
106 キャリッジ
107 吸引装置
201 大ノズル
202 小ノズル
209 液室
403 画像入力部
404 画像信号処理部
405 メインバスライン
406 操作部
407 回復系制御回路
408 回復系モータ
409 クリーニングブレード
410 キャップ
411 吸引装置
412 サーミスタ
413 記録ヘッド
415 ヘッド駆動制御回路
416 キャリッジ駆動制御回路
417 制御回路
Claims (13)
- 共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、
前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段と、
前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引手段とを具え、
前記予備吐出手段は、前記吸引手段によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の多いノズルの方が、インク吐出量の少ないノズルよりも予備吐出発数が多くなるような予備吐出を行う手段であることを特徴とするインクジェット記録装置。 - 共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置において、
前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出手段と、
前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引手段とを具え、
前記予備吐出手段は、前記吸引手段によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数は、インク吐出量の多いノズルの吐出周波数よりも小さいことを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記予備吐出手段は、前記インク吐出量の多いノズルの吐出動作を、前記インク吐出量の少ないノズルの吐出動作よりも先に実行することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
- 前記予備吐出手段は、前記インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数を、前記インク吐出量の多いノズルよりも小さくすることを特徴とする請求項1または3に記載のインクジェット記録装置。
- 前記記録ヘッドは吐出するインク色別に異なるノズル列を配置しており、
前記予備吐出手段は、前記インク色別のノズル列毎で、かつ同じ種類のノズル単位で吐出動作を実行させることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。 - 前記記録ヘッドが、前記ノズルの配列方向と異なる方向に走査され、該走査の際に記録媒体に対しインクが吐出される記録と、前記記録ヘッドの走査方向と異なる方向に前記記録ヘッドと前記記録媒体の相対的な移動により所定量の記録媒体を搬送する紙送りとを交互に繰り返すことにより、記録媒体全体に画像を形成するインクジェット記録装置であって、
前記共通のインク液室から供給されたインクを吐出するインク吐出量の異なる少なくとも二種類のノズルは、前記記録ヘッドの走査方向と異なる方向に、交互に配置されたノズル列をなし、該ノズル列における前記インク吐出量の多いノズルは、前記インク吐出量の少ないノズルよりも先に吐出動作が実行されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。 - 前記ノズルは、熱エネルギーによってインク中に気泡を発生させ、該気泡の生成圧力によってインクを滴として吐出することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
- 共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用いた予備吐出方法において、
前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出工程と、
前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引工程とを具え、
前記予備吐出工程では、前記吸引工程によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の多いノズルの方が、インク吐出量の少ないノズルよりも予備吐出発数を多くすることを特徴とする予備吐出方法。 - 共通のインク液室から供給されたインクを、異なるインク吐出量で吐出する少なくとも二種類のノズルが複数配列されたノズル列を配置した記録ヘッドから、記録媒体に対しインクを吐出することによって画像を形成するインクジェット記録装置を用いた予備吐出方法において、
前記画像の形成に関与しない吐出であって、前記記録ヘッドの前記ノズルよりインクを吐出する予備吐出工程と、
前記記録ヘッド内のインクを吸引する吸引工程とを具え、
前記予備吐出工程では、前記吸引工程によって前記記録ヘッドが吸引された後、同時に吐出動作を実行させるノズルは同じ種類のノズルとし、かつ、インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数は、インク吐出量の多いノズルの吐出周波数よりも小さいことを特徴とする予備吐出方法。 - 前記予備吐出工程では、前記インク吐出量の多いノズルの吐出動作を、前記インク吐出量の少ないノズルの吐出動作よりも先に実行することを特徴とする請求項8または9に記載の予備吐出方法。
- 前記予備吐出工程では、前記インク吐出量の少ないノズルの吐出周波数を、前記インク吐出量の多いノズルよりも小さくすることを特徴とする請求項8または10に記載の予備吐出方法。
- 前記記録ヘッドは吐出するインク色別に異なるノズル列を配置しており、
前記予備吐出工程では、前記インク色別のノズル列毎で、かつ同じ種類のノズル単位で吐出動作を実行することを特徴とする請求項8ないし11のいずれかに記載の予備吐出方法。 - 前記記録ヘッドが、前記ノズルの配列方向と異なる方向に走査され、該走査の際に記録媒体に対しインクが吐出される記録と、前記記録ヘッドの走査方向と異なる方向に前記記録ヘッドと前記記録媒体の相対的な移動により所定量の記録媒体を搬送する紙送りとを交互に繰り返すことにより、記録媒体全体に画像を形成するインクジェット記録装置を用い、
前記共通のインク液室から供給されたインクを吐出するインク吐出量の異なる少なくとも二種類のノズルは、前記記録ヘッドの走査方向と異なる方向に、交互に配置されたノズル列をなし、該ノズル列における前記インク吐出量の多いノズルは、前記インク吐出量の少ないノズルよりも先に吐出動作が実行されることを特徴とする請求項8ないし12のいずれかに記載の予備吐出方法。
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