JP2004094997A - 薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法 - Google Patents

薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する出力信号の劣化等の悪影響の抑制とを両立可能な薄膜磁気ヘッドを提供する。
【解決手段】矩形領域R1のうち、側端縁E4側から直角三角形状の幅拡大領域R2が除かれた残存領域R3に相当する左右非対象の逆台形状をなすように、磁極部分層13Aの露出面20Mを構成する。露出面20Mの側端縁E4側をサイドイレーズが発生する側、すなわち磁極部分層13Aからハードディスクの記録対象トラックに向けて放出された磁束により隣接トラックに既に記録されている情報が意図せずに上書きされる側に対応させれば、隣接トラックへの露出面20Mのはみ出しが防止または抑制されるため、サイドイレーズに起因する悪影響が抑制されると共に、磁束の放出口としての露出面20Mの面積が確保されて十分な垂直磁界強度が得られるため、オーバーライト特性が確保される。
【選択図】   図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば垂直記録方式を利用して磁気記録動作する薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、情報の記録装置として、例えばハードディスクに情報を記録するハードディスクドライブが普及している。このハードディスクドライブの開発分野では、ハードディスクの面記録密度の向上に伴い、薄膜磁気ヘッドの性能向上が求められている。薄膜磁気ヘッドの記録方式としては、例えば、信号磁界の向きをハードディスクの面内方向(長手方向)にする長手記録方式と、ハードディスクの面に対して垂直な方向にする垂直記録方式とが知られている。現在のところは長手記録方式が広く利用されているが、面記録密度の向上に伴う市場動向を考慮すれば、今後は長手記録方式に代わり垂直記録方式が有望視されるものと想定される。なぜなら、垂直記録方式では、高い線記録密度を確保可能な上、記録済みの記録媒体が熱揺らぎの影響を受けにくいという利点が得られるからである。
【0003】
垂直記録方式を利用した記録態様としては、例えば、一端側においてギャップを介して互いに対向し、かつ他端側において互いに磁気的に連結されたヘッド(リング型ヘッド)を使用して、主要部が単層膜構成をなすハードディスクに情報を記録する態様や、ハードディスクに対して垂直に配置されたヘッド(単磁極型ヘッド)を使用して、主要部が2層膜構成をなすハードディスクに情報を記録する態様が提案されている。これらの態様のうち、単磁極型ヘッドと2層膜構成のハードディスクとの組み合わせは、熱揺らぎに対する耐性が顕著に優れている点に基づき、薄膜磁気ヘッドの性能向上を実現し得るものとして注目されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、垂直記録型の薄膜磁気ヘッドの記録性能を向上させるためには、例えば、一般に「サイドイレーズ」と呼ばれる不具合の影響を可能な限り抑制する必要がある。このサイドイレーズとは、ハードディスク上の記録対象となるトラック(以下、「記録対象トラック」という)への記録時に、その記録対象トラックに隣接したトラック(以下、「隣接トラック」という)に既に記録されている情報が意図せずに上書きされてしまう現象である。
【0005】
このサイドイレーズは、主に、スキューに起因して発生する。このスキューとは、ハードディスクドライブの記録動作時にサスペンション(スライダを支持するステンレス製の板バネ)をトラック方向に移動させた際、ハードディスクの回転方向に対して単磁極型ヘッドが僅かに傾いてしまう現象である。スキューが発生すると、単磁極型ヘッドのうち、記録対象トラックに対応した本来の記録箇所以外の箇所に集中した磁束に基づいて余分な垂直磁界が発生し、この余分な垂直磁界により隣接トラックが上書きされてしまうのである。したがって、サイドイレーズに起因する悪影響を抑制するためには、例えば、サイドイレーズを誘発する余分な垂直磁界の発生量が低下することとなるように単磁極型ヘッドを構成すればよい。
【0006】
この点を考慮した薄膜磁気ヘッドの構成に関しては、既にいくつかの提案がなされている。例えば、日経エレクトロニクス2001年2月12日号(No.789)中の67頁には、単磁極型ヘッドのうち、一定幅を有する先端部分の下方部を部分的に除去してその先端部分の先端面の面積を小さくすることにより、余分な垂直磁界の発生量を低下させる手法が掲載されている。
【0007】
しかしながら、この種の単磁極型ヘッドについては、主に2つの問題が挙げられる。
【0008】
第1に、単磁極型ヘッドの先端面の面積が小さくなると、サイドイレーズに起因する悪影響(例えば、出力信号の劣化等)の抑制に関する観点において利点が得られる一方、先端面の面積の減少に応じて単磁極型ヘッドから放出される記録用の磁束の放出量が減少し、これにより垂直磁界強度が低下するため、薄膜磁気ヘッドの記録性能を決定する重要な因子のうちの1つであるオーバーライト特性が劣化してしまう。このオーバーライト特性とは、ハードディスクに記録されていた情報に新たな情報を重ね書きする特性をいう。
【0009】
第2に、先端部分の下方部が部分的に除去された特徴的な構成をなす単磁極型ヘッドを形成するために、例えば、量産性の低いFIB(Focused Ion Beam)などのエッチング技術を使用して、エアベアリング面側から先端部分の下方部を部分的に除去する必要があるものと推定されるため、量産性に劣り、かつエッチング時に単磁極型ヘッドまたはその周辺部にダメージを与えるおそれがある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する出力信号の劣化等の悪影響の抑制とを両立可能な薄膜磁気ヘッドを提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、量産性に優れた薄膜磁気ヘッドの製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドは、磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、薄膜コイルにおいて発生した磁束を磁極端面から記録媒体に向けて放出する磁極層とを備え、磁極端面が、進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から除いてなる形状を有するものである。
【0013】
ここで、「媒体流出側」とは、記録媒体の移動を1つの流れと見た場合に、その流れの流出する側をいい、「媒体流入側」とは、その流れの流入する側をいう。
【0014】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から、進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を除いてなる形状を有するように、磁極層の磁極端面が構成されている。これにより、例えば、矩形領域から幅拡大領域が除かれることとなる一方の側をサイドイレーズの発生状況に基づいて規定すれば、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立可能となる。
【0015】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドは、磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、薄膜コイルにおいて発生した磁束を磁極端面から記録媒体に向けて放出する磁極層とを備え、磁極端面が、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁と、進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁と、幅方向に位置する第3および第4の端縁とを有し、第1の端縁の幅が、第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における磁極端面の幅以上であり、第3または第4の端縁のいずれか一方と第1の端縁とが直角をなしているものである。
【0016】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、第1の端縁の幅が、第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における磁極端面の幅以上であり、第3または第4の端縁のいずれか一方と第1の端縁とが直角をなすように、磁極層の磁極端面が構成されている。これにより、例えば、第3または第4の側端縁のうち、第1の端縁と直角をなす端縁をサイドイレーズの発生状況に基づいて規定すれば、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立可能となる。
【0017】
本発明の第3の観点に係る薄膜磁気ヘッドは、磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、薄膜コイルにおいて発生した磁束を磁極端面から記録媒体に向けて放出する磁極層とを備え、磁極端面が、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を、互いに平行な一組の対辺のうちの長いほうの対辺とし、かつ進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を、一組の対辺のうちの短い方の対辺とすると共に、第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなしているものである。
【0018】
本発明の第3の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を互いに平行な一組の対辺のうちの長いほうの対辺とし、かつ進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を一組の対辺のうちの短い方の対辺とすると共に、第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなすように、磁極層の磁極端面が構成されている。これにより、例えば、サイドイレーズの発生状況に基づいて、一方の角度と他方の角度とが互いに異なるようにすれば、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立可能となる。
【0019】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、薄膜コイルにおいて発生した磁束を磁極端面から記録媒体に向けて放出する磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドを製造する方法であり、下地上に、一定幅部分を含むように、磁極層の前準備層としての前駆磁極層を形成する工程と、この前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも一定幅部分を覆うようにバッファ層を形成する工程と、このバッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングする工程と、前駆磁極層を含む積層構造の端面を研磨することにより、磁極端面を形成する工程とを含み、磁極端面が、進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から除いてなる形状を有するようにしたものである。
【0020】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、まず、下地上に、一定幅部分を含むように、磁極層の前準備層としての前駆磁極層が形成される。続いて、前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも一定幅部分を覆うようにバッファ層が形成される。続いて、バッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分が幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングされる。最後に、前駆磁極層を含む積層構造の端面が研磨されることにより、磁極端面が形成される。これにより、磁極層の磁極端面が、進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から除いてなる形状を有することとなる。
【0021】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、薄膜コイルにおいて発生した磁束を磁極端面から記録媒体に向けて放出する磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドを製造する方法であり、下地上に、一定幅部分を含むように、磁極層の前準備層としての前駆磁極層を形成する工程と、前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも一定幅部分を覆うようにバッファ層を形成する工程と、このバッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングする工程と、前駆磁極層を含む積層構造の端面を研磨することにより、磁極端面を形成する工程とを含み、磁極端面が、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁と、進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁と、幅方向に位置する第3および第4の端縁とを有し、第1の端縁の幅が、第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における磁極端面の幅以上となり、第3または第4の端縁のいずれか一方と第1の端縁とが直角をなすようにしたものである。
【0022】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法と同様の工程を経て磁極層が形成される。これにより、磁極層の磁極端面が、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁と、進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁と、幅方向に位置する第3および第4の端縁とを有し、第1の端縁の幅が、第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における磁極端面の幅以上となり、第3または第4の端縁のいずれか一方と第1の端縁とが直角をなすこととなる。
【0023】
本発明の第3の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法は、磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、薄膜コイルにおいて発生した磁束を磁極端面から記録媒体に向けて放出する磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドを製造する方法であり、下地上に、一定幅部分を含むように、磁極層の前準備層としての前駆磁極層を形成する工程と、この前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも一定幅部分を覆うようにバッファ層を形成する工程と、このバッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向における少なくとも一方の側から選択的にエッチングする工程と、前駆磁極層を含む積層構造の端面を研磨することにより、磁極端面を形成する工程とを含み、磁極端面が、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を、互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、かつ進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を、一組の対辺のうちの短い方の対辺とすると共に、第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなすようにしたものである。
【0024】
本発明の第3の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法と同様の工程を経て磁極層が形成される。これにより、磁極層の磁極端面が、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、かつ進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を一組の対辺のうちの短い方の対辺とすると共に、第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなすこととなる。
【0025】
本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、矩形領域から幅拡大領域が除かれることとなる一方の側が、磁極端面から記録媒体の記録対象トラックに向けて放出された磁束により、この記録対象トラックに隣接した隣接トラックに既に記録されている情報が上書きされることとなる側であるのが好ましい。この場合には、記録媒体が、所定の中心点を中心とした円盤状をなし、一方の側が、記録媒体の半径方向における中心点に近い側であるようにしてもよいし、あるいは記録媒体の半径方向における中心点から遠い側であるようにしてもよい。
【0026】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、幅拡大領域が、直角三角形状をなすようにしてもよい。
【0027】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層が、磁極端面を有すると共に記録媒体の記録トラック幅を規定するトラック幅規定部分を含み、トラック幅規定部分が、記録媒体対向面に平行な断面の面積が露出面に近づくにしたがって小さくなる部分を有するのが好ましい。
【0028】
また、本発明の第1の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極層が、磁極端面から記録媒体をその表面と直交する方向に磁化するための磁束を放出するように構成されていてもよい。
【0029】
本発明の第2の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、第3または第4の端縁のうち、第1の端縁と直角をなしている端縁が、磁極端面から記録媒体の記録対象トラックに向けて放出された磁束により、この記録対象トラックに隣接した隣接トラックに既に記録されている情報が上書きされることとなる側と反対側に位置する端縁であるようにするのが好ましい。
【0030】
本発明の第3の観点に係る薄膜磁気ヘッドでは、一方の底角および他方の底角の双方が鋭角をなしているようにしてもよいし、あるいは一方の底角が直角をなし、かつ他方の底角が鋭角をなしているようにしてもよい。
【0031】
本発明の第3の観点に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向における両側から互いに異なるエッチング角度で選択的にエッチングすることにより、一方の底角および他方の底角の双方を鋭角としてもよいし、あるいは幅方向における一方の側から選択的にエッチングすることにより、一方の底角を直角とし、かつ他方の底角を鋭角としてもよい。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
まず、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの構成について説明する。図1は薄膜磁気ヘッドの断面構成を表し、図2は図1に示した薄膜磁気ヘッドの主要部(主磁極層)の斜視構成を拡大して表している。なお、図1において、(A)はエアベアリング面に平行な断面を示し(B)はエアベアリング面に垂直な断面を示している。図1に示した上向きの矢印Bは、薄膜磁気ヘッドに対してハードディスクが相対的に進行する方向を表している。
【0034】
以下の説明では、図1および図2におけるX軸方向の距離を「幅」、Y軸方向の距離を「長さ」、Z軸方向の距離を「厚みまたは高さ」とそれぞれ表記すると共に、Y軸方向のうちのエアベアリング面に近い側を「前側または前方」、その反対側を「後側または後方」とそれぞれ表記する。これらの表記内容は、後述する図3以降においても同様とする。
【0035】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドは、例えばハードディスクなどの記録媒体に情報を記録することを目的として、ハードディスクドライブなどの磁気記録再生装置に磁気記録用のデバイスとして搭載されるものである。この薄膜磁気ヘッドは、例えば、再生・記録の双方の機能を実行可能な複合型ヘッドであり、図1に示したように、例えばアルティック(Al2 3 ・TiC)などのセラミック材料よりなる基板1上に、例えば酸化アルミニウム(Al2 3 ;以下、単に「アルミナ」という)よりなる絶縁層2と、磁気抵抗効果(MR;Magneto−resistance)を利用して再生処理を実行する再生ヘッド部100Aと、例えばアルミナよりなる非磁性層8と、垂直記録方式により記録処理を実行する記録ヘッド部100Bと、例えばアルミナよりなるオーバーコート層15とがこの順に積層された構成をなしている。
【0036】
再生ヘッド部100Aは、例えば、下部シールド層3と、シールドギャップ膜4と、上部シールド層7とがこの順に積層された構成をなしている。シールドギャップ膜4には、エアベアリング面20に一端面が露出するように、磁気再生デバイスとしてのMR素子5が埋設されている。このエアベアリング面20とは、ハードディスクに対向する薄膜磁気ヘッドの対向面(記録媒体対向面)をいう。
【0037】
下部シールド層3および上部シールド層7は、主に、MR素子5を周囲から磁気的に遮蔽するものである。これらの下部シールド層3および上部シールド層7は、例えば、ニッケル鉄合金(NiFe(以下、単に「パーマロイ(商品名)」という);Ni:80重量%,Fe:20重量%)などの磁性材料により構成されており、それらの厚みは約1.0μm〜2.0μmである。
【0038】
シールドギャップ膜4は、下部シールド層3や上部シールド層7からMR素子5を磁気的かつ電気的に分離するものである。このシールドギャップ膜4は、例えば、アルミナなどの非磁性非導電性材料により構成されており、その厚みは約0.1μm〜0.2μmである。
【0039】
MR素子5は、例えば、巨大磁気抵抗効果(GMR;Giant Magneto−resistive )やトンネル磁気抵抗効果(TMR;Tunneling Magneto−resistive )などを利用して再生処理を実行するものである。
【0040】
記録ヘッド部100Bは、例えば、補助磁極層9と、薄膜コイル11を埋設するギャップ層10ならびに連結部12と、ギャップ層10に設けられた開口10CKを通じて連結部12を介して補助磁極層9と磁気的に連結された主磁極層13とがこの順に積層された構成をなしている。ここで、主磁極層13が本発明における「磁極層」の一具体例に対応する。
【0041】
補助磁極層9は、主に、主磁極層13から放出された磁束をハードディスク(図示せず)を経由して環流させる機能を担うものである。この補助磁極層9は、例えば、パーマロイ(Ni:80重量%,Fe:20重量%)などの磁性材料により構成されており、その厚みは約1.0μm〜2.0μmである。
【0042】
ギャップ層10は、補助磁極層9上に配設され、開口10AKが設けられたギャップ層部分10Aと、このギャップ層部分10A上に配設され、薄膜コイル11の各巻線間よびその周辺領域を覆うギャップ層部分10Bと、ギャップ層部分10A,10Bを部分的に覆うように配設され、開口10CKが設けられたギャップ層部分10Cとを含んで構成されている。
【0043】
ギャップ層部分10Aは、例えばアルミナやシリコン酸化物(SiO2 )などの非磁性非導電性材料により構成されており、その厚みは約0.1μm〜1.0μmである。ギャップ層部分10Bは、例えば、加熱されることにより流動性を示すフォトレジスト(感光性樹脂)やスピンオングラス(SOG)などにより構成されている。ギャップ層部分10Cは、例えばアルミナやシリコン酸化物などの非磁性材料により構成されており、その厚みはギャップ層部分10Bの厚みよりも大きくなっている。
【0044】
薄膜コイル11は、主に、記録用の磁束を発生させるものである。この薄膜コイル11は、例えば、銅(Cu)などの高導電性材料により構成されており、連結部12を中心としてスパイラル状に巻回する巻線構造をなしている。なお、図1では、薄膜コイル11を構成する複数の巻線のうちの一部のみを示している。
【0045】
連結部12は、補助磁極層9と主磁極層13と間を磁気的に連結させるためのものであり、例えばパーマロイ(Ni:80重量%,Fe:20重量%)などの磁性材料により構成されている。
【0046】
主磁極層13は、主に、薄膜コイル11において発生した磁束を収容し、その磁束をハードディスク(図示せず)に向けて放出するものである。この主磁極層13は、例えば、ギャップ層部分10Cのうちの前方部分上に配設された磁極部分層13Aと、この磁極部分層13A上に配設されたバッファ層14を挟んで、磁極部分層13Aの後方部分を周囲から覆うように配設されたヨーク部分層13Bとを含んで構成されている。
【0047】
磁極部分層13Aは、主に、磁束の放出部分として機能するものである。この磁極部分層13Aは、例えば、ヨーク部分層13Bよりも飽和磁束密度が大きい磁性材料により構成されており、その厚みは約0.1μm〜1.0μmである。磁極部分層13Aの構成材料としては、例えば、鉄および窒素を含む材料や、鉄、ジルコニアおよび酸素を含む材料や、鉄およびニッケルを含む材料などが挙げられ、より具体的には、パーマロイ(Ni:45%,Fe:55%)、窒化鉄(FeN)、鉄コバルト合金(FeCo)、鉄を含む合金(FeM)、鉄およびコバルトを含む合金(FeCoM)のうちの少なくとも1種を選択可能である。ここで、上記構造式(FeM,FeCoM)中のMは、例えば、ニッケル、窒素、炭素(C)、ホウ素(B)、珪素、アルミニウム、チタン(Ti)、ジルコニア、ハフニウム(Hf)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、銅のうちの少なくとも1種である。
【0048】
この磁極部分層13Aは、例えば、図2に示したように、エアベアリング面20側から順に、ハードディスクの記録トラック幅を規定する先端部13A1と、この先端部13A1に磁気的に連結された後端部13A2とを含んで構成されており、先端部13A1の一端面(露出面)20Mは、エアベアリング面20に露出している。なお、露出面20Mの構成を含む磁極部分層13Aの詳細な構成については、後述する(図3参照)。ここで、露出面20Mが本発明における「磁極端面」の一具体例に対応し、先端部13A1が本発明における「トラック幅規定部分」の一具体例に対応する。
【0049】
ヨーク部分層13Bは、主に、磁束の収容部分として機能するものである。このヨーク部分層13Bは、例えば、耐食性に優れ、かつ磁極部分層13Aよりも高抵抗な磁性材料により構成されており、その厚みは約1.0μm〜2.0μmである。なお、例えば、ヨーク部分層13Bの構成材料として、磁極部分層13Aの構成材料と同様の組成系のものを用いる場合には、磁極部分層13Aよりもヨーク部分層13Bについて飽和磁束密度を小さくするために、鉄の含有割合を少なめにするのが好ましい。
【0050】
このヨーク部分層13Bは、磁極部分層13Aのうちの後端部13A2の両側面と磁気的に連結されていると共に、その後端部13A2の後端面とも磁気的に連結されている。磁極部分層13Aとは異なり、ヨーク部分層13Bはエアベアリング面20に露出しておらず、例えば、エアベアリング面20から約1.5μm以上後退している。
【0051】
バッファ層14は、主に、磁極部分層13Aの形成時において、後述する特徴的な構成をなすように先端部13A1を形成するために用いられるものであり、例えば、磁極部分層13Aとほぼ同様の平面構成をなしている。なお、磁極部分層13Aの形成時におけるバッファ層14の機能に関する詳細については、後述する(図14,図15ならびに図18,図19参照)。このバッファ層14は、例えば、磁極部分層13Aよりもエッチング速度が遅い材料、具体的にはニッケル銅、チタンまたはタンタルを含む材料や、アルミナや、シリコン酸化物などの非磁性絶縁材料などにより構成されており、その厚みは約0.1μm〜1.0μmである。
【0052】
次に、図1〜図3を参照して、磁極部分層13Aの詳細な構成について説明する。図3は、磁極部分層13Aの露出面20Mの平面構成を拡大して表している。
【0053】
図3に示したように、磁極部分層13Aの一部をなす先端部13A1の露出面20Mは、媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的に幅が拡大する幅拡大領域R2を、矩形領域R1の幅方向(図中のX軸方向)におけるいずれか一方の側から除いてなる形状を有している。すなわち、露出面20Mは、媒体流出側に位置し、ハードディスクの記録トラック幅を規定する幅W1を有する上端縁E1(第1の端縁)と、媒体流入側に位置し、幅W2を有する下端縁E2(第2の端縁)と、幅方向に位置する2つの側端縁E3,E4(第3の端縁,第4の端縁)とを有しており、矩形領域R1のうち、幅方向(図中のX軸方向)におけるいずれか一方の側(例えば側端縁E4側)から、上端縁E1側から下端縁E2側に向かって連続的に幅が拡大する幅拡大領域R2を除いた残存領域R3に相当する形状をなしている。「媒体流出側」とは、進行方向Bに向かうハードディスクの進行(図1参照)を1つの流れと見た場合に、その流れの流出する側をいい、ここでは例えば図中の上側をいう。また、「媒体流入側」とは、その流れの流入する側をいい、ここでは例えば図中の下側をいう。
【0054】
矩形領域R1から幅拡大領域R2が除かれることとなる「一方の側」は、薄膜磁気ヘッドの記録動作時におけるサイドイレーズの発生状況に基づいて決定される。すなわち、「一方の側」とは、主磁極層13からハードディスクの記録対象トラックに向けて放出された磁束により、この記録対象トラックに隣接した隣接トラックに既に記録されている情報が上書きされることとなる側をいい、具体的には、例えば、所定の中心点を中心とする円盤状をなすハードディスクに対して主磁極層13が対向した場合、そのハードディスクの半径方向における中心点から遠い側をいう。なお、幅方向における一方の側に限らず、一方および他方の双方の側において隣接トラックの上書きが生じる場合には、例えば、より上書き範囲が広い側を「一方の側」とする。この「一方の側」とサイドイレーズの発生状況との詳細な関連については、後述する(図7〜図9参照)。
【0055】
露出面20Mの構成についてより具体的に説明すると、この露出面20Mは、上端縁E1を互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、下端縁E2を短い方の対辺とすると共に、側端縁E3と上端縁E1とのなす角(底角)の角度θ1と、側端縁E4と上端縁E1とのなす角(底角)の角度θ2とが互いに異なる左右非対象の逆台形状をなしている。すなわち、上端縁E1の幅W1は、下端縁E2の幅W2よりも大きく(W1>W2)、かつ、上端縁E1と下端縁E2との間の任意の中間位置における露出面20Mの幅W3以上となっている(W1≧W3)。ここでは、例えば、側端縁E4が直線状をなし、幅拡大領域R2が直角三角形状をなしており、すなわち角度θ1が直角をなし、かつ角度θ2が鋭角をなしている。なお、角度θ1と角度θ2との関係が逆転し、角度θ1が鋭角をなし、かつ角度θ2が直角をなす場合もあり、角度θ1または角度θ2のいずれが直角をなすかに関しては、上記「一方の側」と同様に、サイドイレーズの発生状況に基づいて決定される。角度θ2は、例えば、約81度〜83度である。
【0056】
図2に示したように、長さ方向(図中のY軸方向)における先端部13A1の幅は、上端縁E1側おいて一定幅W1をなし、下端縁E2側において露出面20Mに向かって幅W1から幅W2に狭まっている。すなわち、先端部13A1は、側端縁E4側にテーパ面TMを有しており、そのエアベアリング面20に平行な断面Sの面積は、露出面20Mに近づくにしたがって小さくなっている。
【0057】
なお、後端部13A2の幅は、例えば、後方において先端部13A1の上端幅W1よりも大きな一定幅(例えば2.0μm)をなし、前方において先端部13A1に向かって狭まっている。
【0058】
次に、図1〜図3を参照して、薄膜磁気ヘッドの動作について説明する。
【0059】
この薄膜磁気ヘッドでは、記録動作時において、図示しない外部回路を通じて記録ヘッド部100Bの薄膜コイル11に電流が流れると、薄膜コイル11において磁束が発生する。このとき発生した磁束は、主に主磁極層13に収容されてヨーク部分層13Bから磁極部分層13Aへ流入し、先端部13A1の露出面20Mからハードディスク(図示せず)に向けて放出されたのち、そのハードディスクを経由して補助磁極層9に環流される。この際、先端部13A1から放出された磁束に基づいて、ハードディスクをその表面と直交する方向に磁化するための記録用の磁界(垂直磁界)が発生し、この垂直磁界によってハードディスクの表面が磁化されることにより、ハードディスクに磁気的に情報が記録される。
【0060】
一方、再生時においては、再生ヘッド部100AのMR素子5にセンス電流が流れると、ハードディスクから発生する再生用の信号磁界に応じてMR素子5の抵抗値が変化する。この抵抗変化をセンス電流の変化として検出することにより、ハードディスクに記録されている情報が磁気的に読み出される。
【0061】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、磁極部分層13Aの一部をなす先端部13A1の露出面20Mが、矩形領域R1のうち、側端縁E4側から直角三角形状の幅拡大領域R2が除かれてなる左右非対象の逆台形状をなすようにしたので、以下の理由により、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立させることができる。
【0062】
まず、図4〜図9を参照して、サイドイレーズに起因する悪影響の抑制の観点について説明する。
【0063】
図4は本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドに対する第1の比較例としての薄膜磁気ヘッドを構成する磁極部分層113A(先端部113A1)の露出面120Mの平面構成を表し、図5は第2の比較例としての薄膜磁気ヘッドを構成する磁極部分層213A(先端部213A1)の露出面220Mの平面構成を表しており、いずれも図3に対応している。図6は一連の薄膜磁気ヘッドが搭載されるハードディスクドライブの概略構成を表している。図7〜図9は図6に示したハードディスクドライブに一連の薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するためのものであり、図7は第1の比較例,図8は第2の比較例,図9は本実施の形態についてそれぞれ示している。図7〜図9中の(A)〜(C)は、図6に示したハードディスク上の位置P1〜P3にそれぞれ対応している。なお、図6では、図示内容を簡略化するために、アームAを線状に示している。
【0064】
第1の比較例における露出面120Mは、図4に示したように、側端縁E3と上端縁E1とがなす底角のみでなく、側端縁E4と上端縁E1とがなす底角も直角をなし、全体として矩形をなしている点を除き、本実施の形態における露出面20Mと同様の構成をなしている。また、第2の比較例としての露出面220Mは、図5に示したように、側端縁E4と上端縁E1とがなす底角のみでなく、側端縁E3と上端縁E1とがなす底角も鋭角をなし、全体として左右対象な逆台形状をなしている点を除き、露出面20Mと同様の構成をなしている。
【0065】
図6に示したように、ハードディスク300が中心点Nを中心とする円盤状をなし、このハードディスク300上をアームAが誘導軸Kを中心として誘導可能にハードディスクドライブが構成されている場合、アームAの一端部に設けられたスライダSは、ハードディスク300の記録面300M上をその半径方向に移動することとなる。この種のハードディスクドライブでは、スライダSの移動軌道のうち、中心点Nに近い側を位置P1,ほぼ中央を位置P2,中心点Nから遠い側を位置P3とすると、進行方向Bに向かって移動(回転)するハードディスク300に対して、スライダSに搭載された薄膜磁気ヘッドを使用して記録処理を施した際にスキューが生じると、磁極部分層の露出面の形状に応じてサイドイレーズの発生状況に大きな差異が生じることとなる。
【0066】
第1の比較例の場合(図7参照)には、スキューが生じると、サイドイレーズに起因する悪影響が比較的大きくなる。すなわち、位置P1では、図7(A)に示したように、露出面120Mがハードディスク300の内側方向(中心点Nに近づく方向;以下、単に「内側方向」という)に大きく傾くため、上端縁E1において記録対象トラックSTに書き込まれるだけでなく、記録対象トラックSTからハードディスク300の外側方向(中心点Nから遠ざかる方向;以下、単に「外側方向」という)にはみ出した側端縁E4において、記録対象トラックSTに対して外側に位置する隣接トラックATにも意図せずに広範囲に渡って上書きされてしまう。位置P2では、図7(B)に示したように、位置P1と同様に露出面120Mが内側方向に傾くため、記録対象トラックSTに対して外側に位置する隣接トラックATに意図せずに上書きされることとなるが、露出面120Mの傾き角度が位置P1と比較して小さくなるため、隣接トラックATへの上書き範囲は狭くなる。位置P3では、図7(C)に示したように、位置P1,P2とは異なり、露出面120Mが外側方向に傾くため、記録対象トラックSTから内側方向にはみ出した側端縁E3において、記録対象トラックSTに対して内側に位置する隣接トラックATに意図せずに僅かに上書きされてしまう。これらのことから、第1の比較例の薄膜磁気ヘッドを使用して記録処理を行った場合には、特に、記録対象トラックSTの極率半径が最も小さい位置P1において、隣接トラックATに対する上書き範囲が著しく拡大するため、正常な記録動作が阻害される可能性が高くなる。
【0067】
第2の比較例の場合(図8参照)には、左右対象な逆台形状をなす露出面220Mの特徴的な構成に基づき、図8(A)〜(C)に示したように、スキューの発生時に露出面220Mが内側方向または外側方向のいずれに傾いた場合においても、記録対象トラックSTから隣接トラックATに側端縁E3,E4ともはみ出すことがない。すなわち、第2の比較例の薄膜磁気ヘッドを使用して記録処理を行った場合には、位置P1〜P3の全てにおいてサイドイレーズに起因する悪影響を良好に抑制可能となる。
【0068】
本実施の形態の場合(図9参照)には、左右非対象の逆台形状をなす露出面20Mの特徴的な構成に基づき、スキューの発生時に露出面20Mが内側方向に傾くこととなる位置P1,P2では、図9(A),(B)に示したように、記録対象トラックSTに対して外側に位置する隣接トラックATに側端縁E4がはみ出さないが、露出面20Mが外側方向に傾くこととなる位置P3では、図9(C)に示したように、記録対象トラックSTに対して内側に位置する隣接トラックATに側端縁E3がはみ出すため、この側端縁E3において隣接トラックATに意図せずに僅かに上書きされてしまう。すなわち、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを使用して記録処理を行った場合には、位置P1,P2においてサイドイレーズに起因する悪影響を良好に抑制可能になると共に、位置P3では、正常な記録動作が阻害されない程度にサイドイレーズに起因する悪影響を抑制し得る。なお、上記した「一方の側」ならびに「角度θ1または角度θ2のいずれが直角をなすか」は、図9(A)〜(C)に示したサイドイレーズの発生状況、すなわちサイドイレーズの発生領域(露出面20Mに対して内側または外側のいずれに発生するか)や発生範囲(内側または外側のいずれで広範囲化するか)などの条件に基づいて決定される。
【0069】
続いて、図3〜図5を参照して、オーバーライト特性の確保の観点について説明する。
【0070】
上記したように、磁極部分層13Aの先端部13A1は磁束の放出部分として機能するため、磁束の放出量はその磁束の放出口に相当する露出面20Mの面積に依存し、露出面20Mの面積が大きいほど垂直磁界強度が高まることとなる。この点を考慮して一連の薄膜磁気ヘッドを比較すると、図3〜図5から明らかなように、露出面の面積は、第2の比較例(露出面220M;図5),本実施の形態(露出面20M;図3),第1の比較例(露出面120M;図4)の順に大きくなることから、垂直磁界強度もこの順に増加する。したがって、露出面の面積が大きな第1の比較例では、意図的な上書き処理(オーバーライト)を実行し得る大きな垂直磁界強度が得られるのに対して、露出面の面積が小さな第2の比較例では、垂直磁界強度が不足し、上書き処理を実行し得ない可能性が高くなる。本実施の形態では、第1の比較例よりは少ないものの、オーバーライトを実行し得る程度の十分な垂直磁界強度が得られる。
【0071】
以上説明したサイドイレーズに起因する悪影響の抑制ならびにオーバーライト特性の確保に関する双方の観点を考慮すると、以下の結論が導き出される。すなわち、露出面120Mが矩形状をなす第1の比較例では、オーバーライト特性を確保し得るものの、特にハードディスク300の内側領域においてサイドイレーズに起因する悪影響が深刻となる。一方、露出面220Mが左右対象の逆台形状をなす第2の比較例では、サイドイレーズに起因する悪影響を抑制し得るものの、オーバーライト特性の劣化が問題となる。したがって、第1および第2の比較例のそれぞれの長所を抽出し、露出面20Mが左右非対象の逆台形状をなすようにすれば、サイドイレーズに起因する出力信号の劣化等の悪影響を抑制することにより正常な記録動作を担保することができると共に、オーバーライト特性を確保することにより情報の上書き処理を正常に実行することができるのである。
【0072】
また、上記の他、本実施の形態では、図2に示したように、エアベアリング面20に平行な先端部13A1の断面Sの面積が露出面20Mに近づくにしたがって小さくなるようにしたので、先端部13A1における磁束の流路が露出面20Mに近づくにしたがって絞り込まれる。この場合には、先端部13A1内を流れる磁束が長さ方向(図中のY軸方向)において集束しながら露出面20Mに到達することとなり、これにより磁束飽和が抑制される。したがって、本実施の形態では、磁束飽和の抑制に基づいて露出面20Mまで必要十分な磁束が導かれるため、磁束集束の観点においても垂直磁界強度を確保することができる。
【0073】
なお、本実施の形態では、図3に示した場合に限られず、上記した一連の構造的特徴を有してほぼ逆台形状をなす限り、露出面20Mの構成を自由に変更可能である。
【0074】
具体的には、例えば、図10に示したように、側端縁E4が凸状に湾曲した曲線状をなすようにし、すなわち矩形領域R1からその曲線に沿って連続的に幅が拡大する幅拡大領域R2を除いてなる形状をなすように露出面20Mを構成してもよいし、あるいは図11に示したように、側端縁E4が途中に段差部Dを有してクランク状に折れ曲がるようにし、すなわち矩形領域R1からその段差部Dに対応する箇所において段階的に幅が拡大する幅拡大領域R2を除いてなる形状をなすように露出面20Mを構成してもよい。露出面20Mが図10および図11に示したいずれの形状をなす場合においても、図3に示した形状をなす場合と同様の作用により、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立させることができる。なお、図10に示した露出面20Mでは、側端縁E4が凸状に湾曲するようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、凹状に湾曲するようにしてもよい。ただし、側端縁E4を凹状に湾曲させた場合には、側端縁E4が凸状に湾曲させた場合と比較して露出面20Mの面積が小さくなるため、その露出面20Mの面積の減少に応じてオーバーライト特性が低下し得る点に留意すべきである。
【0075】
また、露出面20Mの構成は、例えば、角度θ1,θ2が互いに異なれば、これらの角度θ1,θ2の双方が鋭角をなすようにしてもよい。この場合には、例えば、図12に示したように、位置P3において隣接トラックATに側端縁E3がはみ出さないように角度θ1,θ2を調整することにより、上記実施の形態の場合(図9参照)とは異なり、位置P3においてもサイドイレーズに起因する悪影響を良好に抑制可能となる。
【0076】
次に、図1〜図3および図13〜図20を参照して、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法について説明する。図13〜図16は薄膜磁気ヘッドの製造工程における断面構成を表し、図17〜図20は図13〜図16に示した工程に対応する斜視構成をそれぞれ表している。
【0077】
以下では、まず、薄膜磁気ヘッド全体の製造方法について簡単に説明したのち、本発明の薄膜磁気ヘッドの製造方法が適用される磁極部分層13Aの形成方法について詳細に説明する。なお、薄膜磁気ヘッドの構成要素の材質、厚み、ならびに構成的特徴等については既に詳述したので、以下では、それらの説明を随時省略するものとする。
【0078】
この薄膜磁気ヘッドは、主に、例えば、薄膜プロセスおよび研磨処理等を用いて一連の構成要素を順次積層することにより製造される。すなわち、まず、基板1上に絶縁層2を形成したのち、この絶縁層2上に、下部シールド層3と、MR素子5を埋設したシールドギャップ膜4と、上部シールド層7とをこの順に形成することにより、再生ヘッド部100Aを形成する。
【0079】
続いて、再生ヘッド部100A上に非磁性層8を形成したのち、この非磁性層8上に、補助磁極層9と、薄膜コイル11を埋設したギャップ層10(ギャップ層部分10A,10B,10C)ならびにこのギャップ層10の開口10CKに埋め込まれた連結部12と、バッファ層14が部分的に挟まれた主磁極層13とをこの順に形成することにより、記録ヘッド部100Bを形成する。
【0080】
最後に、記録ヘッド部100B上にオーバーコート層15を形成することにより、薄膜磁気ヘッドが完成する。なお、上記した薄膜磁気ヘッドの構成要素は、実際の工程では、例えば機械加工や研磨加工を使用してエアベアリング面20が形成されることにより最終的に形成される。
【0081】
磁極部分層13Aを形成する際には、まず、図13および図17に示したように、ギャップ層10の一部を構成するギャップ層部分10Cを形成したのち、このギャップ層部分10C上に、例えばスパッタリングを使用して、磁極部分層13Aの構成材料を用いて約0.1μm〜1.0μmの厚みとなるように基礎磁極層13Sを形成する。ここで、ギャップ層10が本発明における「下地」の一具体例に対応する。
【0082】
続いて、図13および図17に示したように、基礎磁極層13S上に、例えばスパッタリングを使用して、バッファ層14の構成材料、すなわち基礎磁極層13Sよりもエッチング速度が遅い材料を用いて約0.1μm〜1.0μmの厚みとなるように前駆バッファ層14Zを形成する。
【0083】
続いて、図13および図17に示したように、前駆バッファ層14Z上に、例えば、フレームめっき法を使用してパーマロイなどよりなるめっき膜を成長させることにより、約0.1μm〜3.0μmの厚みとなるようにマスク層30を形成する。マスク層30を形成する際には、最終的に形成されることとなる磁極部分層13A(図16,図20参照)に対応する平面形状をなすように形成位置を位置合わせすると共に、特に、磁極部分層13Aのうちの先端部13A1に対応する部分(以下、単に「対応部分」という。)30A1(幅W4)を含むようにする。
【0084】
続いて、例えば、図13および図17に示したように、マスク層30を用い、例えばリアクティブイオンエッチング(RIE;Reactive Ion Etching)を使用して、前駆バッファ層14Zにエッチング処理を施す。このエッチング処理により、前駆バッファ層14Zに対して、主に、マスク層30を介して鉛直下方向にエッチング処理が施されることにより、図14および図18に示したように、マスク層30とほぼ同様の平面形状をなすようにバッファ層14が形成される。なお、エッチング時には、例えば、高さ方向のエッチング作用によりマスク層30の厚みが目減りする。
【0085】
続いて、例えば、図14および図18に示したように、バッファ層14をマスクとして用いて、基礎磁性層13Sの延在面に対する垂線Pから角度(照射角度)ω1=約37.5度±7.5度をなす方向からイオンビームを照射しながら基礎磁極層13Sにエッチング処理を施す。このエッチング処理を行う際には、例えば、図18に示したように、揺動角度α=約180度±30度となるように、垂線Pと平行な基礎磁極層13Sの中心線U1を軸として全体を両幅方向に揺動させるようにする。ただし、エッチング処理時に必ずしも全体を搖動させなければならないわけではなく、例えば、全体を回転(ローテーション)させるようにしてもよい。このエッチング処理を経て基礎磁極層13Sがパターニングされることにより、図15および図19に示したように、マスク層30とほぼ同様の平面形状をなすように前駆磁極層13Zが選択的に形成される。この前駆磁極層13Zは、後工程においてエッチング処理を施されることにより磁極部分層13Aとなる前準備層であり、一定幅W4をなす対応部分13Z1を含むように形成される。なお、エッチング時には、例えば、高さ方向のエッチング作用により、ギャップ層部分10Cが部分的に掘り下げられる。ここで、前駆磁極層13Zの一部をなす対応部分13Z1が本発明における「一定幅部分」の一具体例に対応する。
【0086】
最後に、例えば、図15および図19に示したように、引き続きバッファ層14をマスクとして用いて、幅方向における一方の側(例えば図中の左側)から照射角度ω2=約60度±10度の方向からイオンビームを照射しながら前駆磁性層13Zにエッチング処理を施す。このエッチング処理を行う際には、例えば、図19に示したように、前駆磁極層13Zのうちの対応部分13Z1の左側面部にエッチング処理が局所的に施されるように、中心線U2を揺動軸として前駆磁極層13Zを揺動させる。このときの搖動角度βは、例えば、前駆磁極層13Zのフレア角度γ、すなわち前駆磁極層13Zの幅の広がり角度に基づいて設定可能であり、フレア角度γ=約45度のとき搖動角度β=約135度±5度、またはフレア角度γ=約60度のとき搖動角度β=約120度±5度とする。このエッチング処理において、主に、幅方向のエッチング作用により上方部よりも下方部において対応部分13Z1が左側方から追加エッチングされ、これにより対応部分13Z1の上端幅がW4からこれより小さいW1(W1<W4)に狭められると共に、下端幅がW4から上記W1よりさらに小さいW2(W2<W1<W4)に狭められる。
【0087】
このエッチング処理により、図16および図20に示したように、一側方(例えば左側方)にテーパ面TMを有し、左右非対象の逆台形状の断面をなす先端部13A1と、これに連結された後端部13A2とを含むように、磁極部分層13Aが選択的に形成される。この磁極部分層13Aを形成する場合には、例えば、対応部分13Z1の上端部近傍を左側方から約0.05μm〜0.2μm程度エッチングすることにより、図3に示したように、角度θ1が90度で、かつ側端縁E4と上端縁E1とのなす角度θ2が約81度〜83度となるようにする。なお、エッチング時には、マスク層30自体がエッチングされ、その厚みが目減りする。図16および図20では、例えば、エッチング処理によりマスク層30が目減りして消失したのち、バッファ層14自体がエッチングされて目減りした状態を示している。
【0088】
なお、より詳細には、磁極部分層13Aは、エッチング処理によりテーパ面TMが形成されたのち、前駆磁極層13Zを含む積層構造の端面が研磨されてエアベアリング面20が形成され、このエアベアリング面20の形成に伴い磁極端面20Mが形成されることにより、最終的に形成される。
【0089】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造方法では、前駆磁極層13Z上にバッファ層14を形成したのち、このバッファ層14をマスクとして用いて、斜め上方からイオンビームを照射しながら前駆磁極層13Zの一側面部に選択的にエッチング処理を施すようにしたので、前駆磁性層13Zのうちの対応部分13Z1の一側面部が局所的にエッチングされる際、高さ方向のエッチング作用よりも幅方向のエッチング作用が優先されると共に、対応部分13Z1の上端近傍部分に対するエッチング処理を抑制するためのエッチング抑制層としてバッファ層14が機能することにより、対応部分13Z1に対するエッチング量は上端部近傍部分よりも下端部近傍部分において大きくなる。すなわち、このエッチング処理によれば、上記したように、対応部分13Z1の上端幅がW4からこれより小さいW1(W1<W4)に狭められると共に、下端幅がW4から上記W1よりさらに小さいW2(W2<W1<W4)に狭められることとなるため、先端部13A1が一側方にテーパ面TMを有し、かつその露出面20Mが図3に示した左右非対象の逆台形状をなす特徴的な構成をなすように、磁極部分層13Aが形成される。しかも、本実施の形態では、露出面20Mが特徴的な構成をなす磁極部分層13Aを形成するために、例えばFIBなどの量産性の低い製造技術を使用することがなく、量産性の高い既存の薄膜プロセスしか使用しない。したがって、本実施の形態では、磁極部分層13Aの露出面20Mが左右非対象の逆台形状をなす薄膜磁気ヘッドを量産性よく製造することができる。
【0090】
特に、本実施の形態では、磁極部分層13Aの露出面20Mが左右非対象な逆台形状をなす点に基づき、薄膜磁気ヘッドの製造歩留まりを向上させることも可能となり、この観点においても量産性の向上に寄与する。その理由は、以下の通りである。
【0091】
すなわち、例えば、オーバーライト特性が劣化することを承知の上、サイドイレーズに起因する悪影響を抑制することを重要視する場合には、図5に示した露出面220Mを有する第2の比較例としての薄膜磁気ヘッドを使用するケースが考えられる。しかしながら、この場合には、角度θ1,θ2が小さくなって下端縁E2の幅W2が狭くなりすぎると、先端部213A1のうちの下端縁E2の近傍部分Dが細く尖り、その物理的強度が低下するため、製造工程中において生じる振動やエッチング処理等の影響に起因して近傍部分Dが欠損するおそれがある。この近傍部分Dが欠損した磁極部分層213Aは不良となるため、薄膜磁気ヘッドの歩留まり低下を招くこととなる。また、例えば100ギガビット/(インチ)2 を越える記録密度を実現する上では、オーバーライト可能な程度に先端部213A1の厚み(約0.15nm〜0.25nm)を最低限確保しつつ、上端縁E1の幅W1を極狭小化する必要があるが、上端縁E1の幅W1を極微小化した場合には角度θ1,θ2を制御することが困難になるため、この点もまた、歩留まり低下を招く要因となり得る。これに対して、本実施の形態では、図3に示したように、角部θ1が直角をなしているため、角度θ2が小さくなり、かつ上端縁E1の幅W1が極狭小化したとしても、露出面20Mの下端縁E2の幅W2は第2の比較例の場合よりも広くなる。これにより、近傍部分Dの物理的強度が確保され、その近傍部分Dが欠損する可能性が低下する。したがって、本実施の形態では、磁極部分層13Aの不良発生確率が低下するため、薄膜磁気ヘッドの製造歩留まりが向上するのである。
【0092】
なお、本実施の形態では、図15および図19に示したように、幅方向における一方の側からイオンビームを照射して前駆磁性層13Zをエッチングすることにより、図3に示したように、露出面20Mの角度θ1が直角をなし、かつ角度θ2が鋭角をなすようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、図21に示したように、幅方向における両側から互いに異なるエッチング角度(イオンビームの照射角度ω3,ω4)で前駆磁性層13Zをエッチングすれば、図12に示したように、角度θ1,θ2の双方が鋭角をなすように露出面20Mを形成可能となる。照射角度ω3,ω4と角度θ1,θ2との関係としては、例えば、バッファ層14がアルミナよりなり、前駆磁極層13Zが鉄コバルト合金よりなる場合、照射角度ω3,ω4=50度,60度,70度のときに、それぞれ角度θ1,θ2=84度〜87度,79度〜82度,74度〜77度となる。すなわち、例えば、照射角度ω3=50度,ω4=70度とすれば、角度θ1=約86度,θ2=約76度となる。
【0093】
【実施例】
本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの記録特性を調べたところ、以下の結果が得られた。
【0094】
まず、薄膜磁気ヘッドのオーバーライト特性について調べたところ、図22に示した結果が得られた。図22は、一連の薄膜磁気ヘッドのオーバーライト特性に関する実験結果を表しており、「縦軸」はオーバーライトO.W.(dB)を示している。図22において、(A)は低密度記録情報の上に高密度記録情報を上書きした場合,(B)は高密度記録情報の上に低密度記録情報を上書きした場合についてそれぞれ示していると共に、22Xは第2の比較例(図5参照),22Yは本実施の形態(図3参照),22Zは第1の比較例(図4参照)をそれぞれ表している。
【0095】
図22に示した結果から判るように、オーバーライト特性値は、低密度記録情報の上に高密度記録情報を上書きした場合(図22(A))、第2の比較例(22X)について28.1dB,本実施の形態(22Y)について31.5dB,第1の比較例(22Z)について34.8dBであり、一方、高密度記録情報の上に低密度記録情報を上書きした場合(図22(B))、第2の比較例(22X)について38.2dB,本実施の形態(22Y)について42.5dB,第1の比較例(22Z)について45.9dBであった。すなわち、図22(A),(B)に示したいずれの条件の場合においても、オーバーライト特性値は第2の比較例,本実施の形態,第1の比較例の順で大きくなった。これらの結果から、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、第1の比較例と第2の比較例との間に相当する適正なオーバーライト特性が得られることが確認された。
【0096】
続いて、サイドイレーズの発生状況について調べたところ、図23に示した結果が得られた。図23は、図6に示したハードディスクドライブに一連の薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況に関する実験結果を表しており、「縦軸」はアジャセントトラックイレーズATE(%)を示している。このアジャセントトラックイレーズとは、隣接トラックに既に記録されている情報の残存率を表すものであり、サイドイレーズが全く発生しない場合が100%に相当する。図23において、(A)〜(C)は図6に示したハードディスク300上の位置P1〜P3にそれぞれ対応していると共に、23Xは第2の比較例(図5参照),22Yは本実施の形態(図3参照),22Zは第1の比較例(図4参照)をそれぞれ表している。
【0097】
図23に示した結果から判るように、アジャセントトラックイレーズ値は、第2の比較例(23X),本実施の形態(23Y),第1の比較例(23Z)の順に、位置P1(図23(A))おいてそれぞれ94.48%,93%,88.50%、位置P2(図23(B))においてそれぞれ95.63%,95%,96.86%、位置P3(図23(C))においてそれぞれ97.96%,96%,96.49%であった。すなわち、位置P2ならびに位置P3では、いずれの薄膜磁気ヘッドを使用した場合においてもアジャセントトラックイレーズ値が90%以上となり、正常な記録動作を実行する上でサイドイレーズの発生状況が許容範囲内となった。しかしながら、位置P1では、第2の比較例ならびに本実施の形態においてアジャセントトラックイレーズ値が90%以上であるのに対して、第1の比較例において90%を下回ってしまった。これらの結果から、本実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドでは、ハードディスク300上の位置P1〜P3の全てにおいて、第2の比較例と同様に、サイドイレーズに起因する悪影響が適正に抑制されることが確認された。
【0098】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の変形が可能である。すなわち、上記実施の形態で示した薄膜磁気ヘッドの構成やその製造方法に関する詳細は、必ずしも上記実施の形態において説明したものに限られるものではなく、磁極部分層13Aの一部をなす先端部13A1の露出面20Mが、矩形領域R1のうち、サイドイレーズの発生状況に基づいて決定されることとなる幅方向におけるいずれか一方の側から、媒体流出側から媒体流入側に向かって幅が拡大する幅拡大領域R2を除いた残存領域R3に相当する形状をなすようにすることにより、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立させることが可能な限り、自由に変更可能である。
【0099】
特に、上記実施の形態では、図3に示したように、磁極部分層13Aの露出面20Mが、矩形領域R1のうち、側端縁E4側から幅拡大領域R2を除いてなる左右非対象の逆台形状をなすようにしたが、必ずしもこれに限られるものではなく、上記したように、矩形領域R1から幅拡大領域R2が除かれることとなる側は、サイドイレーズの発生状況に基づいて変更可能である。具体的には、図24に示したように、露出面20Mが、矩形領域R1のうち、側端縁E3側、すなわちハードディスク300に対して主磁極層13が対向した場合、そのハードディスク300の半径方向における中心点から遠い側から幅拡大領域R2が除いてなる左右非対象の逆台形状をなすようにしてもよい。以下、図24に示したように露出面20Mを構成した場合においても、上記実施の形態の場合と同様の利点が得られる理由について、主にサイドイレーズに起因する悪影響の抑制の観点に言及して説明する。
【0100】
図25は一連の薄膜磁気ヘッドが搭載される他のハードディスクドライブの概略構成を表しており、図6に対応している。図26〜図28は図25に示したハードディスクドライブに一連の薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するためのものであり、図7〜図9にそれぞれ対応している。
【0101】
図25に示したように、図6に示した位置と異なる位置に誘導軸Kがあると、その誘導軸Kの位置によっては、図26〜図28に示したように、上記実施の形態において説明した場合(図7〜図9参照)と比較してサイドイレーズの発生状況に変化が生じる。
【0102】
第1の比較例の場合(図26参照)には、例えば、図26(A)に示したように、位置P1において、スキューの発生時に露出面120Mが隣接トラックにはみ出さないように誘導軸Kの位置を調整したとしても、位置P2,P3では、記録対象トラックSTに対して内側の隣接トラックATに露出面120Mがはみ出すためため、サイドイレーズに起因する悪影響が大きくなる。すなわち、位置P2では、例えば、図26(B)に示したように、露出面120Mが外側方向に傾くため、記録対象トラックSTから内側方向にはみ出した側端縁E3において、隣接トラックATに意図せずに上書きされてしまう。位置P3では、例えば、図26(C)に示したように、外側方向への露出面120Mの傾きがより大きくなるため、側端縁E3において隣接トラックATがより広範囲に渡って上書きされてしまう。これらのことから、第1の比較例の薄膜磁気ヘッドを使用して記録処理を行った場合には、特に、記録対象トラックSTの極率半径が最も大きい位置P3において、隣接トラックATに対する上書き範囲が著しく拡大するため、正常な記録動作が阻害される可能性が高くなる。
【0103】
第2の比較例の場合(図27参照)には、左右対象な逆台形状をなす露出面220Mの特徴的な構成に基づき、例えば、図27(A)〜(C)に示したように、スキューの発生時に露出面220Mが外側方向に傾き、さらにその傾きが大きくなった場合においても、記録対象トラックSTから隣接トラックATに側端縁E3がはみ出すことがないため、ハードディスク300上の位置に関係することなく、サイドイレーズに起因する悪影響が良好に抑制される。
【0104】
本実施の形態の場合(図28参照)には、左右非対象の逆台形状をなす露出面20Mの特徴的な構成に基づき、例えば、図27(A)〜(C)に示したように、スキューが発生したとしても、第2の比較例と同様に記録対象トラックSTから隣接トラックATに側端縁E3がはみ出さないため、サイドイレーズに起因する悪影響が良好に抑制される。
【0105】
これらのことから、露出面20Mが図24に示した構成をなす磁極部分層13Aを備えた薄膜磁気ヘッドを使用して記録処理を行った場合には、上記実施の形態において説明した場合と同様に、正常な記録動作が阻害されない程度にサイドイレーズに起因する悪影響を抑制可能となるのである。もちろん、露出面20Mが図24に示した構成をなす場合においても、図10〜図12として説明した変形例を適用可能である。
【0106】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドによれば、進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側からのぞいてなる形状を有するように磁極端面を構成したので、例えば、矩形領域から幅拡大領域が除かれることとなる一方の側を、サイドイレーズが発生する側、すなわち磁極端面から記録媒体の記録対象トラックに向けて放出された磁束により隣接トラックに既に記録されている情報が意図せずに上書きされることとなる側に対応させれば、隣接トラックへの磁極端面のはみ出しが防止または抑制されると共に、磁束の放出口としての磁極端面の面積が確保されるために十分な垂直磁界強度が得られる。したがって、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立させることができる。
【0107】
また、請求項8または請求項9に記載の薄膜磁気ヘッドによれば、第1の端縁の幅が第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における磁極端面の幅以上になると共に、第3または第4の端縁のいずれか一方と第1の端縁とが直角をなすように磁極端面を構成したので、この条件を満たしつつ、例えばサイドイレーズの発生状況に基づいて磁極端面の形状を規定すれば、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立させることができる。
【0108】
また、請求項10ないし請求項12のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドによれば、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を、互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を短い方の対辺とすると共に、第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなすように磁極端面を構成したので、この条件を満たしつつ、例えばサイドイレーズの発生状況に基づいて磁極端面の形状を規定すれば、オーバーライト特性の確保とサイドイレーズに起因する悪影響の抑制とを両立させることができる。
【0109】
また、請求項13記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、一定幅部分を含む前駆磁極層上に、この前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料よりなるバッファ層を形成したのち、このバッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングするようにしたので、バッファ層の存在により、一定幅部分のうちのバッファ層から近い側よりも遠い側が優先的にエッチングされる。このエッチング処理により、最終的に形成される磁極層の磁極端面は、進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から除いてなる形状となる。しかも、この磁極層の形成は、全て既存のエッチングプロセスにより行われるので、量産適応性に富むものである。したがって、磁極層の磁極端面が上記した特徴的な構成をなす薄膜磁気ヘッドを量産性よく製造することができる。
【0110】
また、請求項14記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、一定幅部分を含む前駆磁極層上に、この前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料よりなるバッファ層を形成したのち、このバッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングするようにしたので、この既存のエッチングプロセスを経て最終的に形成される磁極層の磁極端面は、第1の端縁の幅が第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における磁極端面の幅以上になると共に、第3または第4の端縁のいずれか一方と第1の端縁とが直角となる。したがって、磁極層の露出面が上記した特徴的な構成をなす薄膜磁気ヘッドを量産性よく製造することができる。
【0111】
また、請求項15ないし請求項17のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法によれば、一定幅部分を含む前駆磁極層上に、この前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料よりなるバッファ層を形成したのち、このバッファ層をマスクとして用いて、前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前駆磁極層の一定幅部分を幅方向における少なくとも一方の側から選択的にエッチングするようにしたので、この既存のエッチングプロセスを経て最終的に形成される磁極層の磁極端面は、進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を、互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を短い対辺とすると共に、第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状となる。したがって、磁極層の露出面が上記した特徴的な構成をなす薄膜磁気ヘッドを量産性よく製造することができる。
【0112】
また、上記の他、請求項6に記載の薄膜磁気ヘッドによれば、記録媒体対向面に平行な断面の面積が磁極端面に近づくにしたがって小さくなる部分を有するようにトラック幅規定部分を構成したので、トラック幅規定部分内を流れる磁束が集束しながら磁極端面に到達することとなり、これにより磁束飽和が抑制される。したがって、磁束飽和の抑制に基づいて磁極端面まで必要十分な磁束が導かれるため、この磁束集束の観点においても垂直磁界強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの断面構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した薄膜磁気ヘッドの主要部の斜視構成を拡大して表す斜視図である。
【図3】磁極部分層の露出面の平面構成を拡大して表す平面図である。
【図4】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドに対する第1の比較例としての薄膜磁気ヘッドを構成する磁極部分層の露出面の平面構成を表す平面図である。
【図5】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドに対する第2の比較例としての薄膜磁気ヘッドを構成する磁極部分層の露出面の平面構成を表す平面図である。
【図6】薄膜磁気ヘッドが搭載されるハードディスクドライブの概略平面構成を表す平面図である。
【図7】図6に示したハードディスクドライブに第1の比較例としての薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するための平面図である。
【図8】図6に示したハードディスクドライブに第2の比較例としての薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するための平面図である。
【図9】図6に示したハードディスクドライブに本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するための平面図である。
【図10】磁極部分層の露出面の平面構成に関する変形例を表す平面図である。
【図11】磁極部分層の露出面の平面構成に関する他の変形例を表す平面図である。
【図12】磁極部分層の露出面の平面構成に関するさらに他の変形例を表す平面図である。
【図13】本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドの製造工程における一工程を説明するための断面図である。
【図14】図13に続く工程を説明するための断面図である。
【図15】図14に続く工程を説明するための断面図である。
【図16】図15に続く工程を説明するための断面図である。
【図17】図13に示した断面構成に対応する斜視構成を表す斜視図である。
【図18】図14に示した断面構成に対応する斜視構成を表す斜視図である。
【図19】図15に示した断面構成に対応する斜視構成を表す斜視図である。
【図20】図16に示した断面構成に対応する斜視構成を表す斜視図である。
【図21】磁極部分層の形成方法に関する変形例を説明するための断面図である。
【図22】一連の薄膜磁気ヘッドのオーバーライト特性に関する実験結果を表す図である。
【図23】図6に示したハードディスクドライブに一連の薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況に関する実験結果を表す図である。
【図24】磁極部分層の露出面の平面構成に関するさらに他の変形例を表す平面図である。
【図25】薄膜磁気ヘッドが搭載される他のハードディスクドライブの概略平面構成を表す平面図である。
【図26】図25に示したハードディスクドライブに第1の比較例としての薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するための平面図である。
【図27】図25に示したハードディスクドライブに第2の比較例としての薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するための平面図である。
【図28】図25に示したハードディスクドライブに本発明の一実施の形態に係る薄膜磁気ヘッドを搭載した場合におけるサイドイレーズの発生状況を説明するための平面図である。
【符号の説明】
1…基板、2…絶縁層、3…下部シールド層、4…シールドギャップ膜、5…MR素子、7…上部シールド層、8…非磁性層、9…補助磁極層、10…ギャップ層、10A〜10C…ギャップ層部分、11…薄膜コイル、12…連結部、13…主磁極層、13A…磁極部分層、13A1…先端部、13A2…後端部、13B…ヨーク部分層、13S…基礎磁性層、13Z…前駆磁極層、13Z1,30A1…対応部分、14…バッファ層、14Z…前駆バッファ層、15…オーバーコート層、20…エアベアリング面、20M…露出面、30…マスク層、30Z…前駆マスク層、100A…再生ヘッド部、100B…記録ヘッド部、300…ハードディスク、300M…記録面、A…アーム、AT…隣接トラック、E1…上端縁、E2…下端縁、E3,E4…側端縁、K…誘導軸、R1…矩形領域、R2…幅拡大領域、R3…残存領域、S…スライダ、ST…記録対象トラック、TM…テーパ面、α,β…搖動角度、γ…フレア角度、ω1〜ω4…照射角度。

Claims (17)

  1. 磁束を発生させる薄膜コイルと、
    所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束を前記磁極端面から前記記録媒体に向けて放出する磁極層と
    を備え、
    前記磁極端面が、
    前記進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から除いてなる形状を有する
    ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  2. 前記矩形領域から前記幅拡大領域が除かれることとなる前記一方の側は、前記磁極端面から前記記録媒体の記録対象トラックに向けて放出された磁束により、この記録対象トラックに隣接した隣接トラックに既に記録されている情報が上書きされることとなる側である
    ことを特徴とする請求項1記載の薄膜磁気ヘッド。
  3. 前記記録媒体が、所定の中心点を中心とした円盤状をなし、
    前記一方の側は、前記記録媒体の半径方向における前記中心点に近い側である
    ことを特徴とする請求項2記載の薄膜磁気ヘッド。
  4. 前記記録媒体が、所定の中心点を中心とした円盤状をなし、
    前記一方の側は、前記記録媒体の半径方向における前記中心点から遠い側である
    ことを特徴とする請求項2記載の薄膜磁気ヘッド。
  5. 前記幅拡大領域は、直角三角形状をなしている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  6. 前記磁極層が、前記磁極端面を有すると共に前記記録媒体の記録トラック幅を規定するトラック幅規定部分を含み、
    前記トラック幅規定部分は、前記記録媒体対向面に平行な断面の面積が前記磁極端面に近づくにしたがって小さくなる部分を有する
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  7. 前記磁極層は、前記磁極端面から前記記録媒体をその表面と直交する方向に磁化するための磁束を放出するように構成されている
    ことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の薄膜磁気ヘッド。
  8. 磁束を発生させる薄膜コイルと、
    所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束を前記磁極端面から前記記録媒体に向けて放出する磁極層と
    を備え、
    前記磁極端面が、
    前記進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁と、前記進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁と、幅方向に位置する第3および第4の端縁とを有し、
    前記第1の端縁の幅が、前記第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、前記第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における前記磁極端面の幅以上であり、
    前記第3または第4の端縁のいずれか一方と前記第1の端縁とが直角をなしている
    ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  9. 前記第3または第4の端縁のうち、前記第1の端縁と直角をなしている端縁は、前記磁極端面から前記記録媒体の記録対象トラックに向けて放出された磁束により、この記録対象トラックに隣接した隣接トラックに既に記録されている情報が上書きされることとなる側と反対側に位置する端縁である
    ことを特徴とする請求項8記載の薄膜磁気ヘッド。
  10. 磁束を発生させる薄膜コイルと、
    所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束を前記磁極端面から前記記録媒体に向けて放出する磁極層と
    を備え、
    前記磁極端面が、
    前記進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を、互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、かつ前記進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を、前記一組の対辺のうちの短い方の対辺とすると共に、前記第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなしている
    ことを特徴とする薄膜磁気ヘッド。
  11. 前記一方の底角および前記他方の底角の双方が鋭角をなしている
    ことを特徴とする請求項10記載の薄膜磁気ヘッド。
  12. 前記一方の底角が直角をなし、かつ前記他方の底角が鋭角をなしている
    ことを特徴とする請求項10記載の薄膜磁気ヘッド。
  13. 磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束を前記磁極端面から前記記録媒体に向けて放出する磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
    下地上に、一定幅部分を含むように、前記磁極層の前準備層としての前駆磁極層を形成する工程と、
    この前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも前記一定幅部分を覆うようにバッファ層を形成する工程と、
    このバッファ層をマスクとして用いて、前記前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前記前駆磁極層の一定幅部分を幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングする工程と、
    前記前駆磁極層を含む積層構造の端面を研磨することにより、前記磁極端面を形成する工程と
    を含み、
    前記磁極端面が、
    前記進行方向における媒体流出側から媒体流入側に向かって連続的または段階的に幅が拡大する幅拡大領域を、矩形領域の幅方向におけるいずれか一方の側から除いてなる形状を有する
    ようにしたことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  14. 磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束を前記磁極端面から前記記録媒体に向けて放出する磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
    下地上に、一定幅部分を含むように、前記磁極層の前準備層としての前駆磁極層を形成する工程と、
    この前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも前記一定幅部分を覆うようにバッファ層を形成する工程と、
    このバッファ層をマスクとして用いて、前記前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前記前駆磁極層の一定幅部分を幅方向におけるいずれか一方の側から選択的にエッチングする工程と、
    前記前駆磁極層を含む積層構造の端面を研磨することにより、前記磁極端面を形成する工程と
    を含み、
    前記磁極端面が、
    前記進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁と、前記進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁と、幅方向に位置する第3および第4の端縁とを有し、
    前記第1の端縁の幅が、前記第2の端縁の幅よりも大きく、かつ、前記第1および第2の端縁の間の任意の中間位置における前記磁極端面の幅以上となり、
    前記第3または第4の端縁のいずれか一方と前記第1の端縁とが直角をなす
    ようにしたことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  15. 磁束を発生させる薄膜コイルと、所定の進行方向に移動する記録媒体に対向する記録媒体対向面に露出した磁極端面を有し、前記薄膜コイルにおいて発生した磁束を前記磁極端面から前記記録媒体に向けて放出する磁極層とを備えた薄膜磁気ヘッドの製造方法であって、
    下地上に、一定幅部分を含むように、前記磁極層の前準備層としての前駆磁極層を形成する工程と、
    この前駆磁極層上に、その前駆磁極層よりもエッチング速度が遅い材料を用いて、少なくとも前記一定幅部分を覆うようにバッファ層を形成する工程と、
    このバッファ層をマスクとして用いて、前記前駆磁極層の延在面と直交する方向に対して所定の角度をなすようにイオンビームを照射しながら、前記前駆磁極層の一定幅部分を幅方向における少なくとも一方の側から選択的にエッチングする工程と、
    前記前駆磁極層を含む積層構造の端面を研磨することにより、前記磁極端面を形成する工程と
    を含み、
    前記磁極端面が、
    前記進行方向における媒体流出側に位置する第1の端縁を、互いに平行な一組の対辺のうちの長い方の対辺とし、かつ前記進行方向における媒体流入側に位置する第2の端縁を、前記一組の対辺のうちの短い方の対辺とすると共に、前記第1の端縁における一方の底角の角度と他方の底角の角度とが互いに異なる台形状をなす
    ようにしたことを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  16. 前記前駆磁極層の一定幅部分を幅方向における両側から互いに異なるエッチング角度で選択的にエッチングすることにより、前記一方の底角および前記他方の底角の双方を鋭角とした
    ことを特徴とする請求項15記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
  17. 前記前駆磁極層の一定幅部分を幅方向における一方の側から選択的にエッチングすることにより、前記一方の底角を直角とし、かつ前記他方の底角を鋭角とした
    ことを特徴とする請求項15記載の薄膜磁気ヘッドの製造方法。
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