JP2004089067A - 温泉湯豆腐の製造方法及び温泉湯豆腐用セット - Google Patents
温泉湯豆腐の製造方法及び温泉湯豆腐用セット Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004089067A JP2004089067A JP2002254619A JP2002254619A JP2004089067A JP 2004089067 A JP2004089067 A JP 2004089067A JP 2002254619 A JP2002254619 A JP 2002254619A JP 2002254619 A JP2002254619 A JP 2002254619A JP 2004089067 A JP2004089067 A JP 2004089067A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- tofu
- hot spring
- extract
- cooking water
- animal
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Landscapes
- Beans For Foods Or Fodder (AREA)
Abstract
【課題】家庭で気軽に風味豊かな温泉湯豆腐を味わえるよう、短時間で風味良好な温泉湯豆腐を製造する方法、温泉湯豆腐用調理水及び固形組成物、並びに手軽な温泉湯豆腐用セットを提供すること。
【解決手段】温泉湯豆腐の製造方法において、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹、又は、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹及びエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含む調理水を用いることを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】温泉湯豆腐の製造方法において、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹、又は、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹及びエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含む調理水を用いることを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、温泉湯豆腐の製造方法、温泉湯豆腐を作製するための調理水及び固形組成物、並びに温泉湯豆腐用セットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、九州嬉野温泉等の特定の温泉地においては、多量の温泉水を使用して豆腐を煮ることにより、豆腐表面が溶解し、柔らかく、とろりとした独特の食感を有する湯豆腐が観光客等に提供されてきた。これは温泉の水質がアルカリ性であるため、高温で豆腐を煮ることにより、豆腐の表面から徐々にタンパク質がアルカリ溶解を起こすためと考えられている。
【0003】
最近では温泉地の名産物として、豆腐と温泉水とのセットや、pH調整剤によりアルカリ側にpHを調整した調理水と豆腐をセットにした温泉湯豆腐セットなども市販されている。
【0004】
しかし、従来市販されている温泉湯豆腐材料は、500mlから1000ml程度の大量の調理水とセットになっており、そのため温泉湯豆腐セットの荷姿も大きくなるため、梱包費や輸送費等のコストがかかることや、消費者が購入時に重いものを運搬しなければならないという消費者負荷がかかるなどで、販売上不利な点が多かった。
【0005】
その問題を解決するものとして、特開平7−227232号公報には、温泉水の代わりに特定のアルカリ塩類を添加した調理水を用いることを特徴とする湯豆腐の調理方法が記載されている。しかし、当該公報には適切なpHは8から9がよいと記載されているが、使用しているアルカリ塩類は弱塩基であり、アルカリ処理速度を高めるために、例えば重曹では、0.1%添加でpH8に達するものの、10%添加してもpH9.0には達せず、アルカリ塩類の添加量を高めてもpHが上がらないため、調理用水を高いアルカリ側に調整することは不可能であった。
【0006】
また、通常用いられている温泉水や、特開平7−227232号公報に記載の条件(例えば、当該公報の実施例によれば、アルカリ塩類を0.05%から0.25%となるよう調理水に添加している)では、豆腐に温泉豆腐特有のトロトロ感の変化が生じるまでに長時間(沸騰後15分以上)を要し、家庭で気軽に楽しめるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−227232号公報(第2−3頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、家庭で気軽に風味豊かな温泉湯豆腐を味わえるよう、短時間で温泉湯豆腐様の物性変化が現れ、かつ、アルカリ塩類の渋味・エグ味を感じさせない温泉湯豆腐を製造する方法、温泉湯豆腐用調理水及び固形組成物、並びに手軽な温泉湯豆腐用セットを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を解決するために以下に示すような研究を鋭意行い、本発明を完成するに至った。
本発明者は、温泉湯豆腐を家庭において手軽に食べられるように、調理時間が沸騰後10分以下、好ましくは3分から7分程度となるような条件を決定するために、種々の実験を行った。
【0010】
できるだけ短時間で温泉湯豆腐を作製するには、調理水中の重曹の添加量を多くし、アルカリ濃度を高めることが考えられるが、添加量を増やすにつれて重曹由来のエグ味・渋味が発生し、豆腐本来の風味を損なわれることが判明した(試験例1)。そこで、短時間で豆腐の物性に変化を与えるには、重曹(重炭酸水素ナトリウム、NaHCO3)の添加量を増やし、かつ、豆腐の風味に悪影響を与えないような、重曹由来の渋味・エグ味を感じさせない調理水の開発が必要であることがわかった。
【0011】
そこで本発明者は、調理水に重曹と昆布エキスを添加して調理を行ったところ、重曹の添加により短時間で温泉湯豆腐を作製することができ、かつ、昆布エキスの添加により渋味・エグ味が除去され、風味豊かな温泉湯豆腐が得られることを見出した(試験例3)。
【0012】
すなわち、本発明は、温泉湯豆腐の製造方法において、重曹0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)を含有する調理水を用いることを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法である。
【0013】
また本発明は、調理水がさらに動植物エキスを含有することを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法である。ここで、動植物エキスの含有量は、調理水に対し、エキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)であることが好ましい。また動植物エキスとしては、昆布エキス、鰹節エキス、及び椎茸エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種類のエキスを用いることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹、及びエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含むことを特徴とする、温泉湯豆腐用調理水である。
【0015】
さらに本発明は、上記温泉湯豆腐用調理水を調製するための、重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用固形組成物である。
【0016】
本発明はまた、豆腐入り容器、及び上記温泉湯豆腐用調理水又は上記温泉湯豆腐用固形組成物を収納する容器又は小袋が、一包装化されていることを特徴とする温泉湯豆腐用セットである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、温泉湯豆腐の製造方法に関し、重曹を含む調理水を用いて調理することを特徴とするものである。従って、本発明に係る温泉湯豆腐の製造方法において用いる温泉湯豆腐用調理水(以下、「本調理水」ともいう)は、適量の重曹を含むため、調理水の沸騰後10分以下、好ましくは3分から7分程度で温泉湯豆腐として好適な柔らかくとろりとした豆腐の食感が達成される。また本調理水は、任意に動植物エキスを含むものであってもよく、それによりエグ味や渋味を感じないまろやかな風味を持つ温泉湯豆腐が得られる。
【0018】
本発明において使用する調理水について以下に説明する。本発明において使用する「調理水」は、温泉湯豆腐を調理するための水をベースとした溶液に、重曹を添加したもの、又はこれにさらに動植物エキスを添加したものである。この調理水には、さらに、風味増強のために香料及び/又は香辛料などを添加することができる。
【0019】
本発明において使用する重曹は、食品添加物として一般に用いられるものであれば特に限定されず、市販品を用いることが可能である。重曹粉末を小袋に充填する場合には、その粒径は60〜120メッシュの範囲であることが好ましい。
【0020】
沸騰後1分から10分、好ましくは3分から7分で、温泉湯豆腐として十分な豆腐の変化を与える調理水に対する重曹の添加割合は、0.5%(w/v)以上が好ましい。しかし、2.0%(w/v)を超えて重曹を添加した場合には、豆腐の溶解が速く、沸騰後1分から10分経過後には豆腐が柔らかくなりすぎることになる。よって重曹の添加割合は、調理水に対し0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)が好ましい。
【0021】
一方、重曹を0.5%(w/v)以上添加した場合、沸騰後1分から10分、好ましくは3分から7分で温泉湯豆腐が完成するが、アルカリ由来の渋味・エグ味が発生する可能性がある。しかし、この重曹由来の渋味・エグ味は、調理水に動植物エキスを添加することにより低減することができた。
【0022】
本発明において使用可能な動植物エキスは、動植物から抽出されたものであれば特に限定されるものではなく、例えば、動植物抽出液を濃縮した液状のものや、動植物抽出液にデキストリン等の乾燥助剤を加え乾燥させた粉体や顆粒状のものを使用することができ、その形態もまた限定されない。
【0023】
動植物エキスの添加量は、エキス成分の含量で換算し、重曹由来のエグ味・渋味を除去し、かつ豆腐本来の風味を活かす量として、調理水に対し、0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)が好ましい。
【0024】
動植物エキスは、液状、粉体、顆粒又は固体に関わらず、動植物抽出液成分の有効成分含量は乾燥重量で表す。動植物抽出物の乾燥重量は、減圧乾燥法(70℃、5時間)で測定したものである。
【0025】
動植物エキスの抽出工程は、動植物原料に溶媒を加えて抽出液を得る工程であるが、本発明ではその抽出方法を特に限定せず、公知の抽出方法が適用できる。原料としては、これに限定するものではないが、昆布等の海草類、鰹節や貝エキス等の魚介類、椎茸等のキノコ類などが挙げられ、これらを粉砕物、破砕物、切断物又は粉末などのように細分化された形状で使用することが好ましい。抽出温度、抽出時間、抽出溶媒量、pHなどの抽出条件は、当業者であれば、原料の種類又は目的によって適宜設定することができる。
【0026】
例をあげると、昆布エキスの抽出方法としては、昆布を熱水又はアルコールを用いて抽出し、残渣除去後、濃縮し、エキスを得る。当該技術分野においては、エキスの目的に合わせて抽出方法が使い分けられている。熱水抽出では呈味成分が、アルコール抽出では香りと色素が主に抽出される。抽出温度は30℃以上90℃以下が一般的である。
【0027】
鰹節エキスの抽出方法としては、鰹節を熱水又はアルコールで抽出し、残渣除去後、濃縮してエキスを得る。抽出温度は50℃以上90℃以下が一般的である。また呈味成分と香り成分を別々で抽出し、ブレンドする方法もある。
【0028】
椎茸エキスの抽出方法としては、原料は乾燥椎茸が用いられ、30℃以上90℃以下で熱水により抽出し、残渣除去後濃縮してエキスを得る方法が一般的である。
【0029】
動植物エキスは、とりわけ昆布エキス、鰹節エキス及び/又は椎茸エキスを含むものが、渋味やエグ味の低減効果が高く、また温泉湯豆腐へより風味が付与されるため好ましい。またそれらの2者又は3者を組み合わせた場合にも本発明の効果が達成される。
【0030】
市販されている動植物エキスの中には、エキス以外の添加物として塩、糖類等を加えただし調味料の形態もあるが、そのような形態のだし調味料もまた本発明において用いることができる。
【0031】
重曹由来の渋味・エグ味を除去する方法として、塩、しょうゆ、グルタミン酸ナトリウムなどの調味料を添加することが考えられるが、これらの調味料では、渋味・エグ味を十分に除去できない(試験例4参照)。本発明者は、豆腐本来の風味が活かし、かつ、渋味・エグ味を除去するには動植物由来のエキスが十分な効果を発揮することを見出した(試験例3参照)。渋味・エグ味を除去する確かな原因物質は不明だが、エキス由来の香り成分、遊離アミノ酸、ペプチド等の相乗効果により、エグ味・渋味を除去する効果があらわれていると推定される。
【0032】
本発明において動植物エキスの一形態である粉末を用いる場合は、小袋充填の適性を考慮し、重曹と同程度の粒径を持つものがより好ましい。動植物エキス粉末としては、動植物エキスが10%(w/w)から50%(w/w)含まれるものを使用することができる。
【0033】
上述した通り、本調理水は、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹を含むもの、又は、さらにエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含むものである。
【0034】
本発明はまた、上記の比率で重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用調理水を調製するための、重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用固形組成物を提供する。すなわち、本発明に係る温泉湯豆腐用固形組成物は、一定量の水に溶解することにより、簡便に温泉湯豆腐用調理水を調製することができるものである。本固形組成物には、重曹、又は重曹及び動植物エキスが含まれ、また任意により、香料及び/又は香辛料などが含まれてもよい。固形組成物の形態としては、固形でありかつ水に溶解可能な形態であれば特に限定されないが、水に溶解しやすいという点で顆粒又は粉末が好ましい。
【0035】
温泉湯豆腐にする際の調理水の量を考慮し、概ね調理用の水を500mlに設定した場合、温泉湯豆腐用固形組成物が、例えば重曹5g対動植物エキス粉末1gの比率でそれらを含有するようにすると、本発明の効果を達成することができる調理水の濃度割合となる。なお、温泉湯豆腐用固形組成物において、重曹と動植物エキス粉末は混合せずに別々の小袋又は容器に充填してもよいし、反応するものが含まれなければ一緒に混合してもよい。
【0036】
また、別の態様である濃縮動植物エキスを用いる場合は、液状の動植物エキス含量が10%(w/w)から60%(w/w)程度に濃縮されたものを小袋又は容器に充填すればよい。調理用の水500mlに対して、例えば小袋又は容器への充填量は、液状の濃縮動植物エキスが30%程度のものであれば、1.7gになる。また、重曹は5gを小袋又は容器に充填すればよい。重曹と濃縮動植物エキスは、重曹の溶解度を考慮し、別々の小袋又は容器に充填することが望ましい。
【0037】
本発明において「小袋」及び「容器」は、食品において一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は品質劣化を防ぐためにラミネート加工した材質から作製されたものが好ましい。またその形態は、三方シール、スティックなどの小袋が好ましく、また大容量としての卓上ビンのような形態も可能である。
【0038】
上記温泉湯豆腐用調理水又は温泉湯豆腐用固形組成物を用いて温泉湯豆腐を作製する場合、使用する豆腐としては、木綿豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐、寄せ豆腐、ざる豆腐のいずれを用いてもよい。また豆腐の原料となる大豆や凝固剤は特に限定されず、市販されているような豆腐ならいずれも利用することができる。
【0039】
次に、本発明に係る温泉湯豆腐用セットについて説明する。温泉湯豆腐用セットとは、上述したような常套手段で作製される豆腐入り容器と、上述した温泉湯豆腐用調理水又は温泉湯豆腐用固形組成物を含む1又は複数の小袋又は容器が、商品として一体化したものである。この温泉湯豆腐用セットを用いることにより、調理鍋等に上記調理水を入れるか、あるいは調理鍋等に水をいれて上記小袋又は容器を開封して内容物を水に溶解し、その後、適当にカットした豆腐を入れ、加熱し、加熱した後カット豆腐を数分間沸騰調理することによって、温泉湯豆腐を簡便に作製することができる。
【0040】
従って、温泉湯豆腐を調理する際に、一定の使用水に対して、単に小袋又は容器の内容物を添加するだけで、手軽にかつ分量を考えずに調理水を作製できる。更に、豆腐の使用量も温泉湯豆腐として最も美味な調理ができる量の割合にセットされている。本発明に係る温泉湯豆腐用セットは、上述したような濃度割合の調理水又は固形組成物と、豆腐調理に適した割合の豆腐とが一体包装化されたものである。
【0041】
温泉湯豆腐を調理する際は、豆腐約150gから300gに対し、500mlの水に重曹と動植物エキス(すなわち固形組成物)を添加し、好みの大きさに切った豆腐を加えた後、加熱処理を行う。沸騰後1分から10分ほどしたら水溶液が白濁し始め、豆腐の表面も柔らかくとろりとした食感になる。得られた湯豆腐は、通常の湯豆腐と同様にして、適当な薬味、調味液等をつけて、所望の味付けにして食べることができる。
【0042】
さらに本温泉湯豆腐用セットには、上述したもの以外に、ネギ、ショウガ、七味などの薬味、調味液などを含む小袋又は容器が一体包装化されていてもよい。本温泉湯豆腐用セットは、前述した方法により調理して、温泉湯豆腐と同様の食感を持ち、かつ風味豊かな湯豆腐として食することができる温泉湯豆腐を簡便に作製することができる。
【0043】
【実施例】
本発明を以下の試験例及び実施例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらの試験例及び実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0044】
〔試験例1〕重曹添加量の検討
本試験例では、沸騰後5分で温泉湯豆腐様の食感変化を与える重曹の添加量決定の試験を行った。
水道水1Lに、下記表1に示す割合濃度の重曹を添加して溶解し、調理水を作製した。この沸騰調理水中で豆腐を5分間過熱し、温泉湯豆腐を作製した。20名のパネラーにて官能評価を行い、風味及び食感を評価した。また、それぞれの調理水のpHを加熱前に20℃で測定した。この結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
表1中、「官能評価」の欄に記載の記号は、エグ味・渋味の評価を表す:
◎:エグ味渋味を感じない
○:エグ味、渋味があるが、気にならない
△:エグ味、渋味が気になる
×:エグ味、渋味が強い
××:エグ味・渋味が強すぎる
また表1中、「人数」の欄に記載の数字は、渋味、エグ味を感じたパネル人数を表す。
【0046】
重曹を湯豆腐用調理水に対し0.5%(w/v)以上添加した場合、沸騰5分後で温泉湯豆腐用のようなとろりとした柔らかい湯豆腐が得られた。しかし、2.5%(w/v)以上添加した場合では、とろけすぎてしまい、食するのに適さない。また、重曹の添加量は0.5%(w/v)から2%(w/v)が適量である。しかし、この範囲であると、重曹由来のエグ味、渋味が発生してしまい、食感は良いが、味に問題があった。
【0047】
〔試験例2〕加熱時間の検討
水道水1Lに重曹を0.5%(w/v)から2.0%(w/v)添加して溶解し、試験例1と同様に、温泉湯豆腐を作製し、官能評価した。加熱時間に伴う食感の変化を官能評価によって評価した。
【0048】
【表2】
表2中、記号は以下を表す:
―:変化なし
△:表面にぬめりが生じる
○:表面がとろけている
◎:表面がとろけ、ふんわりしている
▲:形が崩れ始めている。
×:とろけすぎて形が崩れている
【0049】
以上の結果より、加熱時間は、調理水の沸騰後1分から10分、より好ましくは沸騰後3分から7分で、とろりとした温泉湯豆腐特有の食感が得られる。
【0050】
〔試験例3〕動植物エキスの添加量の決定
試験例1の結果から、重曹を湯豆腐用調理水に対し0.5%(w/v)から2.0%(w/v)添加した水溶液で調理することが、短時間でとろりとした食感を与えるのに適していることが示されたが、エグ味・渋味が発生する。そこで、重曹のエグ味を感じさせず、まろやかな風味を持たせるために、昆布エキス粉末(佐藤食品工業株式会社 昆布エキス20%(w/w))を用いて動植物エキスの添加量の検討を行った。昆布エキス粉末の添加量は、調理水の重量に対する昆布エキス粉末の重量割合である。従って、昆布エキス粉末の中に含まれる昆布抽出エキスの含量は、昆布エキス粉末の重量に0.2を乗じた含量となる。
【0051】
【表3】
表3中、括弧内に示す数値はエキス含量%(w/v)を表す。また、記号は、官能評価の結果を表す:
×:エグ味、渋味が気になる
△:エグ味、渋味があるが、気にならない
○:エグ味、渋味はほとんど感じられない
◎:エグ味、渋味が全く感じられない
※:昆布だし風味が強く、豆腐本来の風味に影響を与えている
【0052】
よって、昆布エキス粉末(昆布エキス含量20%(w/w))の添加量は、湯豆腐用調理水に対し0.1%(w/v)から2.5%(w/v)が好ましく、昆布エキス含量としては湯豆腐用調理水に対して0.02%(w/v)から0.5%(w/v)添加することが好ましい。
【0053】
〔試験例4〕調味料によるエグ味・渋味の除去
試験例1と同様に、重曹を湯豆腐用調理水に対し1%(w/v)添加し、温泉湯豆腐を作製した。この時、市販塩、市販しょうゆ、及び市販グルタミン酸ナトリウムを湯豆腐用調理水に下記表4に示す調理水の添加量濃度になるように添加し、温泉湯豆腐の風味の変化を評価した。
【0054】
【表4】
【0055】
以上の結果より、塩、しょうゆ、及びグルタミン酸ナトリウムのような調味料では十分な効果が得られない。
だしに含まれる複雑なエキス成分が複合的に作用し、エグ味、渋味を消す効果に重要であると考えられた。
【0056】
〔実施例1〕重曹を添加した調理水を用いた温泉湯豆腐の製造
水道水1Lに、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、1.5%(w/v)、又は2.0%(w/v)の重曹を添加して溶解し、調理水を作製した。この沸騰調理水中で豆腐を約5〜7分間過熱し、温泉湯豆腐を製造した。官能評価を行い、温泉湯豆腐としての食感が得られているかどうかを評価した。
その結果、いずれの重曹添加量で調理水を作製した場合にも、温泉湯豆腐として好ましい、「表面がとろけ、ふんわりしている」という食感が得られた。
【0057】
〔実施例2〕重曹及び動植物エキスを添加した調理水を用いた温泉湯豆腐の製造
水道水1Lに、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、1.5%(w/v)、又は2.0%(w/v)の重曹、及び0.1%(w/v)、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、1.5%(w/v)、2.0%(w/v)、又は2.5%(w/v)の昆布エキス粉末(佐藤食品工業株式会社 昆布エキス含量20%(w/w))を添加して溶解し、調理水を作製した。この沸騰調理水中で豆腐を約5〜7分間過熱し、温泉湯豆腐を製造した。官能評価を行い、エグ味・渋味について評価した。なお、昆布エキス粉末の添加量は、調理水の重量に対する昆布エキス粉末の重量割合である。従って、昆布エキス粉末の中に含まれる昆布抽出エキスの含量は、昆布エキス粉末の重量に0.2を乗じた含量となる。
【0058】
その結果、いずれの昆布エキス添加量で調理水を作製した場合にも、エグ味・渋味は、全く又はほとんど感じられないと評価された。
【0059】
〔実施例3〕温泉湯豆腐用固形組成物及び調理水の製造
重曹8g(旭硝子株式会社)、及び昆布エキス粉末6g(佐藤食品工業 昆布エキス20%含量(w/w))を均一に混合することにより温泉湯豆腐用固形組成物を製造した。またこれを800mlの水に溶解させることにより、調理水に対して重曹1%(w/v)、昆布エキス0.15%(w/v)となる温泉湯豆腐用調理水を得た。
【0060】
重曹10g(旭硝子株式会社)と、濃縮昆布エキス2.7g(池田糖化 昆布エキス含量33.8%(w/w))と、濃縮鰹節エキス2.5g(マルハチ村松 鰹エキス含量38.8%(w/w))の3者を混合することにより温泉湯豆腐用固形組成物を製造した。またこれを800mlの水に溶解させることにより、調理水に対して重曹1.25%(w/v)、昆布エキス0.11%(w/v)、及び鰹節エキス0.12%となる温泉湯豆腐用調理水を得た。
【0061】
重曹12g(旭硝子株式会社)と、昆布エキス粉末5.0g(佐藤食品工業 昆布エキス含量20%(w/w))と、濃縮椎茸エキス粉末3.0g(佐藤食品工業 椎茸エキス含量35.0%(w/w))の3者を混合することにより温泉湯豆腐用固形組成物を製造した。またこれを800mlの水に溶解させることにより、調理水に対して重曹1.5%(w/v)、昆布エキス0.12%(w/v)、及び椎茸エキス0.13%となる温泉湯豆腐用調理水を得た。
【0062】
〔実施例4〕温泉湯豆腐セットの作製及びその使用(1)
重曹8g(旭硝子株式会社)、昆布エキス粉末6g(佐藤食品工業 昆布エキス含量20%(w/w))を均一に混合した後、小袋に充填した。これを300gの絹ごし豆腐とともに包装し、セット化した温泉湯豆腐セットを作製した。
【0063】
上記温泉湯豆腐セットから、以下の手順で湯豆腐を作製した。
鍋に800mlの水を入れ、上記の粉末一袋それぞれ取り出し開封して、水に添加し溶解させた。上記粉末一袋は、重曹の量として温泉湯豆腐用調理水に対し1%(w/v)、昆布エキス含量は0.15%(w/v)になるように設定した。次に絹ごし豆腐を6等分し、鍋に入れた。ガスコンロを用いて加熱し、沸騰したら弱火にした。沸騰後、3分ほどで水溶液が白濁し、沸騰5分後で豆腐の角が取れ、とろりとした滑らかな食感になったため、火を止めた。加熱を止めると、豆腐の溶解もほとんど止まった。
【0064】
この湯豆腐は、渋みやエグ味もなく温泉湯豆腐のようなまろやかで、滑らかな食感を有し、且つ、豆腐本来の味に加え、昆布の風味も効いており非常に美味であった。
【0065】
また、本発明において粉末状や顆粒状の動植物エキスを用いた場合には、以下の理由でさらに調理時の取扱いが容易となると考えられた。
▲1▼ 鍋の容量に合った調理水の割合に適する分量を、粉体や顆粒状のエキスの方が液体よりも適合させ易い。
▲2▼ 重曹と動植物エキス粉末を混合することにより添付する小袋が1つにでき、製造過程が簡便で安価になる。
▲3▼ 粘張液体に比べ、粉末や顆粒状のエキスは容易に調理水に溶解させることができる。
▲4▼ 小袋の開封時には手を使うことが多く、液状物では内容物が飛散する事が多いが、粉体や顆粒状のエキスを用いた場合には飛散がほとんどない。
▲5▼ 濃縮動植物エキスそれ自体は粘度が高く、小袋内にどうしてもエキスが粘着し残るが、紛体や顆粒状のエキスは全量を消費することができる。
【0066】
〔実施例5〕温泉湯豆腐セットの作製及びその使用(2)
重曹10g(旭硝子株式会社)と、濃縮昆布エキス2.7g(池田糖化 昆布エキス含量33.8%(w/w))と、濃縮鰹節エキス2.5g(マルハチ村松 鰹エキス含量38.8%(w/w))の3者を混合した後、温泉湯豆腐用の小袋に充填した。これを300gの木綿豆腐とともに包装し、温泉湯豆腐セットを作製した。
【0067】
上記温泉湯豆腐セットから、以下の手順で温泉湯豆腐を作製した。鍋に800mlの水を入れ、上記の小袋入り濃縮動植物エキスを添加溶解した。上記の小袋入り重曹及び濃縮動植物エキスの量は、湯豆腐用調理水に対し重曹が1.25%(w/v)、動植物エキス含量が昆布エキスは0.11%(w/v)、鰹節エキスは0.12%(w/v)に設定した。
【0068】
次に6等分した木綿豆腐、長ネギ、白菜、エノキ、シメジを鍋に入れた。ガスコンロを用いて加熱し、沸騰したら弱火にした。沸騰後、3分ほどで調理水が白濁し、沸騰5分後で豆腐の角が取れ、このようにして調理した温泉湯豆腐は、渋味、エグ味もなく、とろりとした滑らかな食感になった。
【0069】
木綿豆腐を用いたときには、渋味、エグ味もなく、調理液が豆腐の内部まで浸透しやすく、内部までふんわりとした食感となっていた。また、重曹の影響で野菜やキノコ類も、柔らかくエグ味もとれた食感となり、温泉湯豆腐料理としてはより美味であった。
【0070】
〔実施例6〕温泉湯豆腐セットの作製及びその使用(3)
重曹12g(旭硝子株式会社)と、昆布エキス粉末5.0g(佐藤食品工業 昆布エキス含量20%(w/w))と、濃縮椎茸エキス粉末3.0g(佐藤食品工業 椎茸エキス含量35.0%(w/w))の3者を混合した後、温泉湯豆腐用の小袋に充填した。これを300gのざる豆腐とともに包装し、温泉湯豆腐セットを作製した。
【0071】
上記温泉湯豆腐セットから、以下の手順で温泉湯豆腐を作製した。鍋に800mlの水を入れ、上記の小袋を添加溶解した。上記の小袋入り重曹及び動植物エキスの量は、湯豆腐用調理水に対し重曹が1.5%(w/v)、動植物エキス含量が昆布エキスは0.12%(w/v)、椎茸エキスは0.13%(w/v)に設定した。次にざる豆腐を適当な大きさに切り、鍋に入れた。
【0072】
沸騰後、2分ほどで調理水が白濁し、沸騰4分後で豆腐の角が取れ、とろりとして、かつ滑らかな食感で風味豊かな温泉湯豆腐ができた。
ざる豆腐は、水分が抜けたことによって生じるねっとりとした食感が特徴である。表面のとろりとした食感と内部のねっとりとした食感の変化が独特な食感を生み出し、非常に美味であった。
【0073】
【発明の効果】
重曹を調理水に添加して豆腐を調理することにより、柔らかく滑らかな食感を持つ温泉湯豆腐を短時間で作製することができ、更に動植物エキスを併用することによって、風味豊かな温泉湯豆腐を作製することが可能となる。従って、本発明により、家庭で短時間にかつ風味豊かな温泉湯豆腐様の湯豆腐を作製することができ、また本温泉湯豆腐用セットは、家庭において温泉湯豆腐を楽しめるだけでなく、その製造コストも低減することが可能となる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、温泉湯豆腐の製造方法、温泉湯豆腐を作製するための調理水及び固形組成物、並びに温泉湯豆腐用セットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、九州嬉野温泉等の特定の温泉地においては、多量の温泉水を使用して豆腐を煮ることにより、豆腐表面が溶解し、柔らかく、とろりとした独特の食感を有する湯豆腐が観光客等に提供されてきた。これは温泉の水質がアルカリ性であるため、高温で豆腐を煮ることにより、豆腐の表面から徐々にタンパク質がアルカリ溶解を起こすためと考えられている。
【0003】
最近では温泉地の名産物として、豆腐と温泉水とのセットや、pH調整剤によりアルカリ側にpHを調整した調理水と豆腐をセットにした温泉湯豆腐セットなども市販されている。
【0004】
しかし、従来市販されている温泉湯豆腐材料は、500mlから1000ml程度の大量の調理水とセットになっており、そのため温泉湯豆腐セットの荷姿も大きくなるため、梱包費や輸送費等のコストがかかることや、消費者が購入時に重いものを運搬しなければならないという消費者負荷がかかるなどで、販売上不利な点が多かった。
【0005】
その問題を解決するものとして、特開平7−227232号公報には、温泉水の代わりに特定のアルカリ塩類を添加した調理水を用いることを特徴とする湯豆腐の調理方法が記載されている。しかし、当該公報には適切なpHは8から9がよいと記載されているが、使用しているアルカリ塩類は弱塩基であり、アルカリ処理速度を高めるために、例えば重曹では、0.1%添加でpH8に達するものの、10%添加してもpH9.0には達せず、アルカリ塩類の添加量を高めてもpHが上がらないため、調理用水を高いアルカリ側に調整することは不可能であった。
【0006】
また、通常用いられている温泉水や、特開平7−227232号公報に記載の条件(例えば、当該公報の実施例によれば、アルカリ塩類を0.05%から0.25%となるよう調理水に添加している)では、豆腐に温泉豆腐特有のトロトロ感の変化が生じるまでに長時間(沸騰後15分以上)を要し、家庭で気軽に楽しめるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−227232号公報(第2−3頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、家庭で気軽に風味豊かな温泉湯豆腐を味わえるよう、短時間で温泉湯豆腐様の物性変化が現れ、かつ、アルカリ塩類の渋味・エグ味を感じさせない温泉湯豆腐を製造する方法、温泉湯豆腐用調理水及び固形組成物、並びに手軽な温泉湯豆腐用セットを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を解決するために以下に示すような研究を鋭意行い、本発明を完成するに至った。
本発明者は、温泉湯豆腐を家庭において手軽に食べられるように、調理時間が沸騰後10分以下、好ましくは3分から7分程度となるような条件を決定するために、種々の実験を行った。
【0010】
できるだけ短時間で温泉湯豆腐を作製するには、調理水中の重曹の添加量を多くし、アルカリ濃度を高めることが考えられるが、添加量を増やすにつれて重曹由来のエグ味・渋味が発生し、豆腐本来の風味を損なわれることが判明した(試験例1)。そこで、短時間で豆腐の物性に変化を与えるには、重曹(重炭酸水素ナトリウム、NaHCO3)の添加量を増やし、かつ、豆腐の風味に悪影響を与えないような、重曹由来の渋味・エグ味を感じさせない調理水の開発が必要であることがわかった。
【0011】
そこで本発明者は、調理水に重曹と昆布エキスを添加して調理を行ったところ、重曹の添加により短時間で温泉湯豆腐を作製することができ、かつ、昆布エキスの添加により渋味・エグ味が除去され、風味豊かな温泉湯豆腐が得られることを見出した(試験例3)。
【0012】
すなわち、本発明は、温泉湯豆腐の製造方法において、重曹0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)を含有する調理水を用いることを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法である。
【0013】
また本発明は、調理水がさらに動植物エキスを含有することを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法である。ここで、動植物エキスの含有量は、調理水に対し、エキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)であることが好ましい。また動植物エキスとしては、昆布エキス、鰹節エキス、及び椎茸エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種類のエキスを用いることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹、及びエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含むことを特徴とする、温泉湯豆腐用調理水である。
【0015】
さらに本発明は、上記温泉湯豆腐用調理水を調製するための、重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用固形組成物である。
【0016】
本発明はまた、豆腐入り容器、及び上記温泉湯豆腐用調理水又は上記温泉湯豆腐用固形組成物を収納する容器又は小袋が、一包装化されていることを特徴とする温泉湯豆腐用セットである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、温泉湯豆腐の製造方法に関し、重曹を含む調理水を用いて調理することを特徴とするものである。従って、本発明に係る温泉湯豆腐の製造方法において用いる温泉湯豆腐用調理水(以下、「本調理水」ともいう)は、適量の重曹を含むため、調理水の沸騰後10分以下、好ましくは3分から7分程度で温泉湯豆腐として好適な柔らかくとろりとした豆腐の食感が達成される。また本調理水は、任意に動植物エキスを含むものであってもよく、それによりエグ味や渋味を感じないまろやかな風味を持つ温泉湯豆腐が得られる。
【0018】
本発明において使用する調理水について以下に説明する。本発明において使用する「調理水」は、温泉湯豆腐を調理するための水をベースとした溶液に、重曹を添加したもの、又はこれにさらに動植物エキスを添加したものである。この調理水には、さらに、風味増強のために香料及び/又は香辛料などを添加することができる。
【0019】
本発明において使用する重曹は、食品添加物として一般に用いられるものであれば特に限定されず、市販品を用いることが可能である。重曹粉末を小袋に充填する場合には、その粒径は60〜120メッシュの範囲であることが好ましい。
【0020】
沸騰後1分から10分、好ましくは3分から7分で、温泉湯豆腐として十分な豆腐の変化を与える調理水に対する重曹の添加割合は、0.5%(w/v)以上が好ましい。しかし、2.0%(w/v)を超えて重曹を添加した場合には、豆腐の溶解が速く、沸騰後1分から10分経過後には豆腐が柔らかくなりすぎることになる。よって重曹の添加割合は、調理水に対し0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)が好ましい。
【0021】
一方、重曹を0.5%(w/v)以上添加した場合、沸騰後1分から10分、好ましくは3分から7分で温泉湯豆腐が完成するが、アルカリ由来の渋味・エグ味が発生する可能性がある。しかし、この重曹由来の渋味・エグ味は、調理水に動植物エキスを添加することにより低減することができた。
【0022】
本発明において使用可能な動植物エキスは、動植物から抽出されたものであれば特に限定されるものではなく、例えば、動植物抽出液を濃縮した液状のものや、動植物抽出液にデキストリン等の乾燥助剤を加え乾燥させた粉体や顆粒状のものを使用することができ、その形態もまた限定されない。
【0023】
動植物エキスの添加量は、エキス成分の含量で換算し、重曹由来のエグ味・渋味を除去し、かつ豆腐本来の風味を活かす量として、調理水に対し、0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)が好ましい。
【0024】
動植物エキスは、液状、粉体、顆粒又は固体に関わらず、動植物抽出液成分の有効成分含量は乾燥重量で表す。動植物抽出物の乾燥重量は、減圧乾燥法(70℃、5時間)で測定したものである。
【0025】
動植物エキスの抽出工程は、動植物原料に溶媒を加えて抽出液を得る工程であるが、本発明ではその抽出方法を特に限定せず、公知の抽出方法が適用できる。原料としては、これに限定するものではないが、昆布等の海草類、鰹節や貝エキス等の魚介類、椎茸等のキノコ類などが挙げられ、これらを粉砕物、破砕物、切断物又は粉末などのように細分化された形状で使用することが好ましい。抽出温度、抽出時間、抽出溶媒量、pHなどの抽出条件は、当業者であれば、原料の種類又は目的によって適宜設定することができる。
【0026】
例をあげると、昆布エキスの抽出方法としては、昆布を熱水又はアルコールを用いて抽出し、残渣除去後、濃縮し、エキスを得る。当該技術分野においては、エキスの目的に合わせて抽出方法が使い分けられている。熱水抽出では呈味成分が、アルコール抽出では香りと色素が主に抽出される。抽出温度は30℃以上90℃以下が一般的である。
【0027】
鰹節エキスの抽出方法としては、鰹節を熱水又はアルコールで抽出し、残渣除去後、濃縮してエキスを得る。抽出温度は50℃以上90℃以下が一般的である。また呈味成分と香り成分を別々で抽出し、ブレンドする方法もある。
【0028】
椎茸エキスの抽出方法としては、原料は乾燥椎茸が用いられ、30℃以上90℃以下で熱水により抽出し、残渣除去後濃縮してエキスを得る方法が一般的である。
【0029】
動植物エキスは、とりわけ昆布エキス、鰹節エキス及び/又は椎茸エキスを含むものが、渋味やエグ味の低減効果が高く、また温泉湯豆腐へより風味が付与されるため好ましい。またそれらの2者又は3者を組み合わせた場合にも本発明の効果が達成される。
【0030】
市販されている動植物エキスの中には、エキス以外の添加物として塩、糖類等を加えただし調味料の形態もあるが、そのような形態のだし調味料もまた本発明において用いることができる。
【0031】
重曹由来の渋味・エグ味を除去する方法として、塩、しょうゆ、グルタミン酸ナトリウムなどの調味料を添加することが考えられるが、これらの調味料では、渋味・エグ味を十分に除去できない(試験例4参照)。本発明者は、豆腐本来の風味が活かし、かつ、渋味・エグ味を除去するには動植物由来のエキスが十分な効果を発揮することを見出した(試験例3参照)。渋味・エグ味を除去する確かな原因物質は不明だが、エキス由来の香り成分、遊離アミノ酸、ペプチド等の相乗効果により、エグ味・渋味を除去する効果があらわれていると推定される。
【0032】
本発明において動植物エキスの一形態である粉末を用いる場合は、小袋充填の適性を考慮し、重曹と同程度の粒径を持つものがより好ましい。動植物エキス粉末としては、動植物エキスが10%(w/w)から50%(w/w)含まれるものを使用することができる。
【0033】
上述した通り、本調理水は、0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹を含むもの、又は、さらにエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含むものである。
【0034】
本発明はまた、上記の比率で重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用調理水を調製するための、重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用固形組成物を提供する。すなわち、本発明に係る温泉湯豆腐用固形組成物は、一定量の水に溶解することにより、簡便に温泉湯豆腐用調理水を調製することができるものである。本固形組成物には、重曹、又は重曹及び動植物エキスが含まれ、また任意により、香料及び/又は香辛料などが含まれてもよい。固形組成物の形態としては、固形でありかつ水に溶解可能な形態であれば特に限定されないが、水に溶解しやすいという点で顆粒又は粉末が好ましい。
【0035】
温泉湯豆腐にする際の調理水の量を考慮し、概ね調理用の水を500mlに設定した場合、温泉湯豆腐用固形組成物が、例えば重曹5g対動植物エキス粉末1gの比率でそれらを含有するようにすると、本発明の効果を達成することができる調理水の濃度割合となる。なお、温泉湯豆腐用固形組成物において、重曹と動植物エキス粉末は混合せずに別々の小袋又は容器に充填してもよいし、反応するものが含まれなければ一緒に混合してもよい。
【0036】
また、別の態様である濃縮動植物エキスを用いる場合は、液状の動植物エキス含量が10%(w/w)から60%(w/w)程度に濃縮されたものを小袋又は容器に充填すればよい。調理用の水500mlに対して、例えば小袋又は容器への充填量は、液状の濃縮動植物エキスが30%程度のものであれば、1.7gになる。また、重曹は5gを小袋又は容器に充填すればよい。重曹と濃縮動植物エキスは、重曹の溶解度を考慮し、別々の小袋又は容器に充填することが望ましい。
【0037】
本発明において「小袋」及び「容器」は、食品において一般的に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、又は品質劣化を防ぐためにラミネート加工した材質から作製されたものが好ましい。またその形態は、三方シール、スティックなどの小袋が好ましく、また大容量としての卓上ビンのような形態も可能である。
【0038】
上記温泉湯豆腐用調理水又は温泉湯豆腐用固形組成物を用いて温泉湯豆腐を作製する場合、使用する豆腐としては、木綿豆腐、絹ごし豆腐、充填豆腐、寄せ豆腐、ざる豆腐のいずれを用いてもよい。また豆腐の原料となる大豆や凝固剤は特に限定されず、市販されているような豆腐ならいずれも利用することができる。
【0039】
次に、本発明に係る温泉湯豆腐用セットについて説明する。温泉湯豆腐用セットとは、上述したような常套手段で作製される豆腐入り容器と、上述した温泉湯豆腐用調理水又は温泉湯豆腐用固形組成物を含む1又は複数の小袋又は容器が、商品として一体化したものである。この温泉湯豆腐用セットを用いることにより、調理鍋等に上記調理水を入れるか、あるいは調理鍋等に水をいれて上記小袋又は容器を開封して内容物を水に溶解し、その後、適当にカットした豆腐を入れ、加熱し、加熱した後カット豆腐を数分間沸騰調理することによって、温泉湯豆腐を簡便に作製することができる。
【0040】
従って、温泉湯豆腐を調理する際に、一定の使用水に対して、単に小袋又は容器の内容物を添加するだけで、手軽にかつ分量を考えずに調理水を作製できる。更に、豆腐の使用量も温泉湯豆腐として最も美味な調理ができる量の割合にセットされている。本発明に係る温泉湯豆腐用セットは、上述したような濃度割合の調理水又は固形組成物と、豆腐調理に適した割合の豆腐とが一体包装化されたものである。
【0041】
温泉湯豆腐を調理する際は、豆腐約150gから300gに対し、500mlの水に重曹と動植物エキス(すなわち固形組成物)を添加し、好みの大きさに切った豆腐を加えた後、加熱処理を行う。沸騰後1分から10分ほどしたら水溶液が白濁し始め、豆腐の表面も柔らかくとろりとした食感になる。得られた湯豆腐は、通常の湯豆腐と同様にして、適当な薬味、調味液等をつけて、所望の味付けにして食べることができる。
【0042】
さらに本温泉湯豆腐用セットには、上述したもの以外に、ネギ、ショウガ、七味などの薬味、調味液などを含む小袋又は容器が一体包装化されていてもよい。本温泉湯豆腐用セットは、前述した方法により調理して、温泉湯豆腐と同様の食感を持ち、かつ風味豊かな湯豆腐として食することができる温泉湯豆腐を簡便に作製することができる。
【0043】
【実施例】
本発明を以下の試験例及び実施例により具体的に説明する。但し、本発明はこれらの試験例及び実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
【0044】
〔試験例1〕重曹添加量の検討
本試験例では、沸騰後5分で温泉湯豆腐様の食感変化を与える重曹の添加量決定の試験を行った。
水道水1Lに、下記表1に示す割合濃度の重曹を添加して溶解し、調理水を作製した。この沸騰調理水中で豆腐を5分間過熱し、温泉湯豆腐を作製した。20名のパネラーにて官能評価を行い、風味及び食感を評価した。また、それぞれの調理水のpHを加熱前に20℃で測定した。この結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
表1中、「官能評価」の欄に記載の記号は、エグ味・渋味の評価を表す:
◎:エグ味渋味を感じない
○:エグ味、渋味があるが、気にならない
△:エグ味、渋味が気になる
×:エグ味、渋味が強い
××:エグ味・渋味が強すぎる
また表1中、「人数」の欄に記載の数字は、渋味、エグ味を感じたパネル人数を表す。
【0046】
重曹を湯豆腐用調理水に対し0.5%(w/v)以上添加した場合、沸騰5分後で温泉湯豆腐用のようなとろりとした柔らかい湯豆腐が得られた。しかし、2.5%(w/v)以上添加した場合では、とろけすぎてしまい、食するのに適さない。また、重曹の添加量は0.5%(w/v)から2%(w/v)が適量である。しかし、この範囲であると、重曹由来のエグ味、渋味が発生してしまい、食感は良いが、味に問題があった。
【0047】
〔試験例2〕加熱時間の検討
水道水1Lに重曹を0.5%(w/v)から2.0%(w/v)添加して溶解し、試験例1と同様に、温泉湯豆腐を作製し、官能評価した。加熱時間に伴う食感の変化を官能評価によって評価した。
【0048】
【表2】
表2中、記号は以下を表す:
―:変化なし
△:表面にぬめりが生じる
○:表面がとろけている
◎:表面がとろけ、ふんわりしている
▲:形が崩れ始めている。
×:とろけすぎて形が崩れている
【0049】
以上の結果より、加熱時間は、調理水の沸騰後1分から10分、より好ましくは沸騰後3分から7分で、とろりとした温泉湯豆腐特有の食感が得られる。
【0050】
〔試験例3〕動植物エキスの添加量の決定
試験例1の結果から、重曹を湯豆腐用調理水に対し0.5%(w/v)から2.0%(w/v)添加した水溶液で調理することが、短時間でとろりとした食感を与えるのに適していることが示されたが、エグ味・渋味が発生する。そこで、重曹のエグ味を感じさせず、まろやかな風味を持たせるために、昆布エキス粉末(佐藤食品工業株式会社 昆布エキス20%(w/w))を用いて動植物エキスの添加量の検討を行った。昆布エキス粉末の添加量は、調理水の重量に対する昆布エキス粉末の重量割合である。従って、昆布エキス粉末の中に含まれる昆布抽出エキスの含量は、昆布エキス粉末の重量に0.2を乗じた含量となる。
【0051】
【表3】
表3中、括弧内に示す数値はエキス含量%(w/v)を表す。また、記号は、官能評価の結果を表す:
×:エグ味、渋味が気になる
△:エグ味、渋味があるが、気にならない
○:エグ味、渋味はほとんど感じられない
◎:エグ味、渋味が全く感じられない
※:昆布だし風味が強く、豆腐本来の風味に影響を与えている
【0052】
よって、昆布エキス粉末(昆布エキス含量20%(w/w))の添加量は、湯豆腐用調理水に対し0.1%(w/v)から2.5%(w/v)が好ましく、昆布エキス含量としては湯豆腐用調理水に対して0.02%(w/v)から0.5%(w/v)添加することが好ましい。
【0053】
〔試験例4〕調味料によるエグ味・渋味の除去
試験例1と同様に、重曹を湯豆腐用調理水に対し1%(w/v)添加し、温泉湯豆腐を作製した。この時、市販塩、市販しょうゆ、及び市販グルタミン酸ナトリウムを湯豆腐用調理水に下記表4に示す調理水の添加量濃度になるように添加し、温泉湯豆腐の風味の変化を評価した。
【0054】
【表4】
【0055】
以上の結果より、塩、しょうゆ、及びグルタミン酸ナトリウムのような調味料では十分な効果が得られない。
だしに含まれる複雑なエキス成分が複合的に作用し、エグ味、渋味を消す効果に重要であると考えられた。
【0056】
〔実施例1〕重曹を添加した調理水を用いた温泉湯豆腐の製造
水道水1Lに、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、1.5%(w/v)、又は2.0%(w/v)の重曹を添加して溶解し、調理水を作製した。この沸騰調理水中で豆腐を約5〜7分間過熱し、温泉湯豆腐を製造した。官能評価を行い、温泉湯豆腐としての食感が得られているかどうかを評価した。
その結果、いずれの重曹添加量で調理水を作製した場合にも、温泉湯豆腐として好ましい、「表面がとろけ、ふんわりしている」という食感が得られた。
【0057】
〔実施例2〕重曹及び動植物エキスを添加した調理水を用いた温泉湯豆腐の製造
水道水1Lに、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、1.5%(w/v)、又は2.0%(w/v)の重曹、及び0.1%(w/v)、0.5%(w/v)、1.0%(w/v)、1.5%(w/v)、2.0%(w/v)、又は2.5%(w/v)の昆布エキス粉末(佐藤食品工業株式会社 昆布エキス含量20%(w/w))を添加して溶解し、調理水を作製した。この沸騰調理水中で豆腐を約5〜7分間過熱し、温泉湯豆腐を製造した。官能評価を行い、エグ味・渋味について評価した。なお、昆布エキス粉末の添加量は、調理水の重量に対する昆布エキス粉末の重量割合である。従って、昆布エキス粉末の中に含まれる昆布抽出エキスの含量は、昆布エキス粉末の重量に0.2を乗じた含量となる。
【0058】
その結果、いずれの昆布エキス添加量で調理水を作製した場合にも、エグ味・渋味は、全く又はほとんど感じられないと評価された。
【0059】
〔実施例3〕温泉湯豆腐用固形組成物及び調理水の製造
重曹8g(旭硝子株式会社)、及び昆布エキス粉末6g(佐藤食品工業 昆布エキス20%含量(w/w))を均一に混合することにより温泉湯豆腐用固形組成物を製造した。またこれを800mlの水に溶解させることにより、調理水に対して重曹1%(w/v)、昆布エキス0.15%(w/v)となる温泉湯豆腐用調理水を得た。
【0060】
重曹10g(旭硝子株式会社)と、濃縮昆布エキス2.7g(池田糖化 昆布エキス含量33.8%(w/w))と、濃縮鰹節エキス2.5g(マルハチ村松 鰹エキス含量38.8%(w/w))の3者を混合することにより温泉湯豆腐用固形組成物を製造した。またこれを800mlの水に溶解させることにより、調理水に対して重曹1.25%(w/v)、昆布エキス0.11%(w/v)、及び鰹節エキス0.12%となる温泉湯豆腐用調理水を得た。
【0061】
重曹12g(旭硝子株式会社)と、昆布エキス粉末5.0g(佐藤食品工業 昆布エキス含量20%(w/w))と、濃縮椎茸エキス粉末3.0g(佐藤食品工業 椎茸エキス含量35.0%(w/w))の3者を混合することにより温泉湯豆腐用固形組成物を製造した。またこれを800mlの水に溶解させることにより、調理水に対して重曹1.5%(w/v)、昆布エキス0.12%(w/v)、及び椎茸エキス0.13%となる温泉湯豆腐用調理水を得た。
【0062】
〔実施例4〕温泉湯豆腐セットの作製及びその使用(1)
重曹8g(旭硝子株式会社)、昆布エキス粉末6g(佐藤食品工業 昆布エキス含量20%(w/w))を均一に混合した後、小袋に充填した。これを300gの絹ごし豆腐とともに包装し、セット化した温泉湯豆腐セットを作製した。
【0063】
上記温泉湯豆腐セットから、以下の手順で湯豆腐を作製した。
鍋に800mlの水を入れ、上記の粉末一袋それぞれ取り出し開封して、水に添加し溶解させた。上記粉末一袋は、重曹の量として温泉湯豆腐用調理水に対し1%(w/v)、昆布エキス含量は0.15%(w/v)になるように設定した。次に絹ごし豆腐を6等分し、鍋に入れた。ガスコンロを用いて加熱し、沸騰したら弱火にした。沸騰後、3分ほどで水溶液が白濁し、沸騰5分後で豆腐の角が取れ、とろりとした滑らかな食感になったため、火を止めた。加熱を止めると、豆腐の溶解もほとんど止まった。
【0064】
この湯豆腐は、渋みやエグ味もなく温泉湯豆腐のようなまろやかで、滑らかな食感を有し、且つ、豆腐本来の味に加え、昆布の風味も効いており非常に美味であった。
【0065】
また、本発明において粉末状や顆粒状の動植物エキスを用いた場合には、以下の理由でさらに調理時の取扱いが容易となると考えられた。
▲1▼ 鍋の容量に合った調理水の割合に適する分量を、粉体や顆粒状のエキスの方が液体よりも適合させ易い。
▲2▼ 重曹と動植物エキス粉末を混合することにより添付する小袋が1つにでき、製造過程が簡便で安価になる。
▲3▼ 粘張液体に比べ、粉末や顆粒状のエキスは容易に調理水に溶解させることができる。
▲4▼ 小袋の開封時には手を使うことが多く、液状物では内容物が飛散する事が多いが、粉体や顆粒状のエキスを用いた場合には飛散がほとんどない。
▲5▼ 濃縮動植物エキスそれ自体は粘度が高く、小袋内にどうしてもエキスが粘着し残るが、紛体や顆粒状のエキスは全量を消費することができる。
【0066】
〔実施例5〕温泉湯豆腐セットの作製及びその使用(2)
重曹10g(旭硝子株式会社)と、濃縮昆布エキス2.7g(池田糖化 昆布エキス含量33.8%(w/w))と、濃縮鰹節エキス2.5g(マルハチ村松 鰹エキス含量38.8%(w/w))の3者を混合した後、温泉湯豆腐用の小袋に充填した。これを300gの木綿豆腐とともに包装し、温泉湯豆腐セットを作製した。
【0067】
上記温泉湯豆腐セットから、以下の手順で温泉湯豆腐を作製した。鍋に800mlの水を入れ、上記の小袋入り濃縮動植物エキスを添加溶解した。上記の小袋入り重曹及び濃縮動植物エキスの量は、湯豆腐用調理水に対し重曹が1.25%(w/v)、動植物エキス含量が昆布エキスは0.11%(w/v)、鰹節エキスは0.12%(w/v)に設定した。
【0068】
次に6等分した木綿豆腐、長ネギ、白菜、エノキ、シメジを鍋に入れた。ガスコンロを用いて加熱し、沸騰したら弱火にした。沸騰後、3分ほどで調理水が白濁し、沸騰5分後で豆腐の角が取れ、このようにして調理した温泉湯豆腐は、渋味、エグ味もなく、とろりとした滑らかな食感になった。
【0069】
木綿豆腐を用いたときには、渋味、エグ味もなく、調理液が豆腐の内部まで浸透しやすく、内部までふんわりとした食感となっていた。また、重曹の影響で野菜やキノコ類も、柔らかくエグ味もとれた食感となり、温泉湯豆腐料理としてはより美味であった。
【0070】
〔実施例6〕温泉湯豆腐セットの作製及びその使用(3)
重曹12g(旭硝子株式会社)と、昆布エキス粉末5.0g(佐藤食品工業 昆布エキス含量20%(w/w))と、濃縮椎茸エキス粉末3.0g(佐藤食品工業 椎茸エキス含量35.0%(w/w))の3者を混合した後、温泉湯豆腐用の小袋に充填した。これを300gのざる豆腐とともに包装し、温泉湯豆腐セットを作製した。
【0071】
上記温泉湯豆腐セットから、以下の手順で温泉湯豆腐を作製した。鍋に800mlの水を入れ、上記の小袋を添加溶解した。上記の小袋入り重曹及び動植物エキスの量は、湯豆腐用調理水に対し重曹が1.5%(w/v)、動植物エキス含量が昆布エキスは0.12%(w/v)、椎茸エキスは0.13%(w/v)に設定した。次にざる豆腐を適当な大きさに切り、鍋に入れた。
【0072】
沸騰後、2分ほどで調理水が白濁し、沸騰4分後で豆腐の角が取れ、とろりとして、かつ滑らかな食感で風味豊かな温泉湯豆腐ができた。
ざる豆腐は、水分が抜けたことによって生じるねっとりとした食感が特徴である。表面のとろりとした食感と内部のねっとりとした食感の変化が独特な食感を生み出し、非常に美味であった。
【0073】
【発明の効果】
重曹を調理水に添加して豆腐を調理することにより、柔らかく滑らかな食感を持つ温泉湯豆腐を短時間で作製することができ、更に動植物エキスを併用することによって、風味豊かな温泉湯豆腐を作製することが可能となる。従って、本発明により、家庭で短時間にかつ風味豊かな温泉湯豆腐様の湯豆腐を作製することができ、また本温泉湯豆腐用セットは、家庭において温泉湯豆腐を楽しめるだけでなく、その製造コストも低減することが可能となる。
Claims (7)
- 温泉湯豆腐の製造方法において、重曹0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)を含有する調理水を用いることを特徴とする温泉湯豆腐の製造方法。
- 調理水が、さらに動植物エキスを含有することを特徴とする、請求項1記載の温泉湯豆腐の製造方法。
- 動植物エキスの含有量が、調理水に対し、エキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)である、請求項2記載の温泉湯豆腐の製造方法。
- 動植物エキスが、昆布エキス、鰹節エキス、及び椎茸エキスからなる群より選ばれる少なくとも1種類のエキスである、請求項2記載の温泉湯豆腐の製造方法。
- 0.5%(w/v)乃至2.0%(w/v)の重曹、及びエキス換算で0.02%(w/v)乃至0.5%(w/v)の動植物エキスを含むことを特徴とする、温泉湯豆腐用調理水。
- 請求項5記載の温泉湯豆腐用調理水を調製するための、重曹及び動植物エキスを含む温泉湯豆腐用固形組成物。
- 豆腐入り容器、及び請求項5記載の温泉湯豆腐用調理水又は請求項6記載の温泉湯豆腐用固形組成物を収納する小袋又は容器が、一包装化されていることを特徴とする温泉湯豆腐用セット。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002254619A JP2004089067A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 温泉湯豆腐の製造方法及び温泉湯豆腐用セット |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002254619A JP2004089067A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 温泉湯豆腐の製造方法及び温泉湯豆腐用セット |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004089067A true JP2004089067A (ja) | 2004-03-25 |
Family
ID=32060351
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002254619A Pending JP2004089067A (ja) | 2002-08-30 | 2002-08-30 | 温泉湯豆腐の製造方法及び温泉湯豆腐用セット |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004089067A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009261299A (ja) * | 2008-04-24 | 2009-11-12 | Nissin Foods Holdings Co Ltd | ペプチド含有食品組成物 |
-
2002
- 2002-08-30 JP JP2002254619A patent/JP2004089067A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009261299A (ja) * | 2008-04-24 | 2009-11-12 | Nissin Foods Holdings Co Ltd | ペプチド含有食品組成物 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR101657275B1 (ko) | 천연 버섯 조미료 및 그 제조 방법 | |
JP6094825B2 (ja) | 複合粉末だし取り用調味料およびその製造方法 | |
JP4934500B2 (ja) | ガラだし天然調味料、加工食品およびそれらの製造方法 | |
CN108813524A (zh) | 一种酸菜鱼复合调味料 | |
KR101330430B1 (ko) | 천연의 국거리 액상조미료과 분말조미료 제조방법 및 이를 이용하여 제조된 액상조미료과 분말조미료 | |
KR20210117863A (ko) | 멸치육수 다시팩의 제조방법 | |
JP2896024B2 (ja) | 保存性を有するシーフードカレー | |
JP3977293B2 (ja) | ペスカトーレスパゲティの製造方法及びこれに用いるペスカトーレスパゲティ用ソースキット | |
JP2004129534A (ja) | 密封容器入り魚介類加工食品の製造方法 | |
JP2004089067A (ja) | 温泉湯豆腐の製造方法及び温泉湯豆腐用セット | |
JP2003235516A (ja) | 容器入り卵含有食品用素材及び卵含有食品の調理方法 | |
KR20120018045A (ko) | 전복내장 가공물 및 이의 제조방법 | |
JP4444863B2 (ja) | 細口容器充填米飯食品 | |
JP2000014369A (ja) | 蒸し料理用調味ソース | |
JP6655303B2 (ja) | 粒状トマト含有加熱殺菌処理済食品の製造方法 | |
CN102805325A (zh) | 一种烹饪调味料 | |
JP2000014368A (ja) | 蒸し焼き料理用ペースト状調味ソース | |
JP4290903B2 (ja) | 削り節含有炊飯用液体調味料 | |
KR100798420B1 (ko) | 육수용 티백 조성물 | |
JP2008178308A (ja) | 冷凍食品 | |
KR200485144Y1 (ko) | 식용 가능한 캡슐형 스프 포장체 | |
JP2003250502A (ja) | 即席食品用粉末 | |
JP3103391U (ja) | インスタント麺食品 | |
CN105011082A (zh) | 香辣甜味调料及其制备的香辣甜味食品与制备方法 | |
JP2003199514A (ja) | 容器入り混ぜご飯の素 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050620 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060912 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070522 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20070925 |