JP2004084027A - 機能体及びその形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】窒素のような安価かつ安全な放電ガスを用いても、高密度プラズマが達成でき、緻密で、剥離性、耐傷性、輝度寿命、透過率及び遮光性が改良された機能体及びその形成方法を提供すること。
【解決手段】基材上に直接またはその他の機能部を介して、酸素原子と窒素原子の少なくともいずれか一方と珪素原子とを含有する機能部を持つ機能体の形成方法において、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、対向する第1電極と第2電極との間にガスを供給し高周波電圧を印加することにより、該ガスを励起し、励起した該ガスに基材を晒し、該高周波電圧が第1の周波数ωの電圧成分と該第1の周波数より高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする機能体の形成方法。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気圧もしくはその近傍の圧力下でプラズマ放電処理による機能体の形成方法及びその形成方法により得られる機能体に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気圧プラズマ放電処理を用いることによって、希ガスと機能体形成性ガスとの混合ガスを使用して高品位の機能体を得ることが知られているが、放電ガスに使用しているヘリウムやアルゴンが高価なためコストアップの原因になっている。放電ガスとして安価なガス、例えば、空気成分中の酸素ガス、窒素ガスや二酸化炭素等を使用すると、放電開始電圧が高く、高周波電界下では安定な放電が得られず、機能体が形成されにくい。
【0003】
特開平10−154598号には、パルス電界を用いることにより、窒素ガスのような放電開始電圧の高いガスでも放電が達成できることが開示されているが、プラズマ密度が低く、良質な膜が得られないばかりか、製膜速度も遅く、生産性が非常に低い。
【0004】
特開平11−16696号には、酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスを、予備放電電極において低周波電圧をかけて活性化または電離させ、次にこの電離または活性化されたガスを、電離または活性化されてない酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスとを混合したガスと共に、前記予備放電電極に対し併設された主放電電極のもとに送り、大気圧下、主放電電極間に高周波電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマによって生成した活性種を被処理体の表面をエッチングあるいは被処理体面上にある有機物をアッシングするという方法が記載されている。
【0005】
しかし、この方法を機能体の形成に応用した場合、酸素ガス、あるいは酸素ガスと希ガスを混合したガスを予備放電電極間で低周波電圧をかけて電離あるいは活性化したガスとした後、電離あるいは活性化したガスと、主放電電極の手前で導入した機能体形成性ガスとを混合して、主放電電極に高周波電圧をかけると、パーティクルが発生してしまい、機能体の形成がほとんど行われないことが分かった。また、プラズマ状態の酸素ガスと機能体形成性ガスを混合すると爆発の危険性があり、この方法は機能体の形成方法として不適当であることも判明した。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の課題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、窒素のような安価かつ安全な放電ガスを用いても、高密度プラズマが達成でき、緻密で、剥離性、耐傷性、輝度寿命、透過率及び遮光性が改良された機能体及びその形成方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は下記構成により達成された。
【0008】
1.基材上に直接またはその他の機能部を介して、酸素原子と窒素原子の少なくともいずれか一方と珪素原子とを含有する機能部を持つ機能体の形成方法において、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、対向する第1電極と第2電極との間にガスを供給し高周波電圧を印加することにより、該ガスを励起し、励起した該ガスに基材を晒し、該高周波電圧が第1の周波数ωの電圧成分と該第1の周波数より高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする機能体の形成方法。
【0009】
2.第1の周波数ωの電圧波形及び第2の周波数ωの電圧波形がサイン波であることを特徴とする上記1に記載の機能体の形成方法。
【0010】
3.第1の周波数ωが200kHz以下であることを特徴とする上記1または2に記載の機能体の形成方法。
【0011】
4.第2の周波数ωが800kHz以上であることを特徴とする上記1〜3の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0012】
5.高周波電圧が第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであることを特徴とする上記1〜4の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0013】
6.第1の高周波電圧V、第2の高周波電圧V及び放電開始電圧IVとの関係が、
≧IV>V
または V>IV≧V
を満たすことを特徴とする上記5に記載の機能体の形成方法。
【0014】
7.第1の高周波電圧を第1電極に印加し、第2の高周波電圧を第2電極に印加することを特徴とする上記1〜6の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0015】
8.大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向する第1電極と第2電極との間に放電ガス及び機能体形成ガスを供給し高周波電圧を印加することにより、該放電ガスを励起して放電を開始し、該機能体形成ガスを励起し、励起した該機能体形成ガスに基材を晒すことにより該基材上に機能部を持つ機能体の形成方法において、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであって、かつ放電開始電圧をIVとしたとき、
≧IV>V
または V>IV≧V
を満たすことを特徴とする機能体の形成方法。
【0016】
9.第1の高周波電圧Vを印加する際の第1の周波数ωより、第2の高周波電圧Vを印加する際の第2の周波数ωの方が高いことを特徴とする上記8に記載の機能体の形成方法。
【0017】
10.第1の周波数ωが200kHz以下であることを特徴とする上記9に記載の機能体の形成方法。
【0018】
11.第2の周波数ωが800kHz以上であることを特徴とする上記9または10に記載の機能体の形成方法。
【0019】
12.第1の高周波電圧の電圧波形及び第2の高周波電圧の電圧波形がサイン波であることを特徴とする上記8〜11の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0020】
13.第1電極と第2電極との間に供給される全ガス量の90〜99.9体積%が放電ガスであることを特徴とする上記8〜12の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0021】
14.放電ガスが50〜100体積%の窒素ガスを含有することを特徴とする上記8〜13の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0022】
15.放電ガスが50体積%未満の希ガスを含有することを特徴とする上記8〜14の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
【0023】
16.上記1〜15のいずれか1項に記載の機能体の形成方法により得られた機能体において、機能部を構成する酸素原子と窒素原子の数の比をx:yとした場合に、x/(x+y)が0.95以下であることを特徴とする機能体。
【0024】
17.x/(x+y)が0.80以下であることを特徴とする上記16に記載の機能体。
【0025】
18.機能部が炭素を含有することを特徴とする上記16または17に記載の機能体。
【0026】
19.機能部の炭素含有率が0.2〜5質量%であることを特徴とする上記18に記載の機能体。
【0027】
20.上記16〜19のいずれか1項に記載の機能体を含むことを特徴とする表示装置。
【0028】
21.表示装置が有機EL表示装置であることを特徴とする上記20に記載の表示装置。
【0029】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明者らは鋭意検討の結果、二つの電極から構成される対向電極間に特定の高周波電圧を印加することで、窒素等の放電開始電圧の高い放電ガスでも、高密度プラズマの発生が達成でき、良質な機能体が得られ、高速に製膜でき、更には、安価、且つ安全に運転でき、環境負荷の低減も達成できることを見い出したのである。
【0030】
本発明において、プラズマ放電処理は、大気圧もしくはその近傍の圧力下で行われるが、大気圧もしくはその近傍の圧力とは20〜110kPa程度であり、本発明に記載の良好な効果を得るためには、93〜104kPaが好ましい。
【0031】
本発明の機能体の形成方法において、対向電極間(放電空間)に供給するガスは、少なくとも、電界により励起する放電ガスと、そのエネルギーを受け取ってプラズマ状態あるいは励起状態になり機能体を形成する機能体形成ガスを含んでいる。
【0032】
特願2001−175475等に開示されている大気圧プラズマ放電による機能体の形成方法の具体的な実施例では、ヘリウムあるいはアルゴンのような希ガスを放電ガスとして使用し、100kHzを超え150MHz程度までの、好ましくは数100kHz〜100MHz程度の高周波電界をかけた機能体形成が行なわれていた。このような高周波電界をかけることにより、膜が緻密で均一な機能体が得られ、しかも機能体形成の生産性が優れているというメリットがあった。この場合の高周波電圧(電極間電圧)は、ヘリウムガスやアルゴンガスの放電を開始するには充分な電圧であった。
【0033】
しかしながら、ヘリウムやアルゴン等の希ガスの放電ガスを使用する上記の機能体の形成方法では、機能体を形成する際の生産コストが放電ガスのコストに依存するところが多く、また環境的な見地からも代替の放電ガスの使用を本発明者らは検討していた。その代替の放電ガスとして、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、水素等を検討した結果、これらのガスでも放電する条件を求め、且つ機能体形成性に優れ、形成した機能体が緻密且つ均一となる条件及び方法を検討した結果、本発明に至ったものである。
【0034】
本発明における放電条件は、対向する第1電極と第2電極との放電空間に、高周波電圧を印加し、高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、前記第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を少なくとも有する。
【0035】
高周波とは、少なくとも0.5kHzの周波数を有するものを言う。
高周波電圧が、第1の周波数ωの電圧成分と、第1の周波数ωより高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分となり、その波形は、周波数ωのサイン波上にそれより高い周波数ωのサイン波が重畳されたωのサイン波がギザギザしたような波形となる。
【0036】
本発明において放電開始電圧とは、実際の機能体の形成方法に使用される放電空間(電極の構成等)及び反応条件(ガス条件等)において放電を起こすことのできる最低電圧のことを指す。放電開始電圧は、放電空間に供給されるガス種や電極の誘電体種等によって多少変動するが、放電ガス単独の放電開始電圧と略同一と考えてよい。
【0037】
上述の高周波電圧を対向電極間(放電空間)に印加することによって、機能体形成可能な放電を起こし、高品位な機能体形成に必要な高密度プラズマを発生することができると推定される。ここで重要なのは、このような高周波電圧が対向する電極それぞれに印加され、すなわち、同じ放電空間に両方から印加されることである。前述の特開平11−16696号のように、印加電極を2つ併置し、離間した異なる放電空間それぞれに、異なる周波数の高周波電圧を印加する方法では、本発明の機能体形成は達成できない。
【0038】
上記でサイン波の重畳について説明したが、これに限られるものではなく、両方パルス波であっても、一方がサイン波でもう一方がパルス波であってもかまわない。また、更に第3の電圧成分を有していてもよい。
【0039】
上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、対向電極を構成する第1電極に周波数ωであって電圧Vである第1の高周波電圧を印加する第1電源を接続し、第2電極に周波数ωであって電圧Vである第2の高周波電圧を印加する第2電源を接続した大気圧プラズマ放電処理装置を用いる方法である。
【0040】
上記の大気圧プラズマ放電処理装置には、対向電極間に、放電ガスと機能体形成ガスとを供給するガス供給手段を備える。更に、電極の温度を制御する電極温度制御手段を有することが好ましい。
【0041】
また、電極、第1電源またはそれらの間の何れかには第1フィルターを、また電極、第2電源またはそれらの間の何れかには第2フィルターを接続することが好ましく、第1フィルターは第1電源からの周波数の電流を通過しにくくし、第2電源からの周波数の電流を通過しやすくし、また、第2フィルターはその逆で、第2電源からの周波数の電流を通過しにくくし、第1電源からの周波数の電流を通過しやすくするというそれぞれのフィルターには機能が備わっているものを使用する。ここで、通過しにくいとは、好ましくは、電流の20%以下、より好ましくは10%以下しか通さないことをいう。逆に通過しやすいとは、好ましくは電流の80%以上、より好ましくは90%以上を通すことをいう。
【0042】
更に、本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置の第1電源は、第2電源より大きな高周波電圧を印加できる能力を有していることが好ましい。
【0043】
また、本発明における別の放電条件としては、対向する第1電極と第2電極との間に高周波電圧を印加し、高周波電圧が、第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであって、放電開始電圧をIVとしたとき、
≧IV>V
または V>IV≧V
を満たす。更に好ましくは、
>IV>V
を満たすことである。
【0044】
高周波及び放電開始電圧の定義、また、上記本発明の高周波電圧を、対向電極間(同一放電空間)に印加する具体的な方法としては、上述したものと同様である。
【0045】
ここで、本発明でいう高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧は、下記の方法で測定されたものをいう。
【0046】
高周波電圧V及びV(単位:kV/mm)の測定方法:
各電極部の高周波プローブ(P6015A)を設置し、高周波プローブをオシロスコープ(Tektronix社製、TDS3012B)に接続し、電圧を測定する。
【0047】
放電開始電圧IV(単位:kV/mm)の測定方法:
電極間に放電ガスを供給し、電極間の電圧を増大させていき、放電が始まる電圧を放電開始電圧IVと定義する。測定器は上記高周波電圧測定と同じである。
【0048】
なお、上記測定に使用する高周波プローブとオシロスコープの位置関係については後述の図1に示してある。
【0049】
高い電圧をかけるような放電条件をとることにより、例えば窒素ガスのように放電開始電圧が高い放電ガスでも、放電を開始し、高密度で安定なプラズマ状態を維持でき、高性能な機能体形成を行うことができるのである。
【0050】
放電ガスを窒素ガスとした場合、上記の測定によりその放電開始電圧IVは3.7kV/mm程度であり、従って、上記の関係において、第1の高周波電圧を、V≧3.7kV/mmとして印加することによって窒素ガスを励起し、プラズマ状態にすることができる。
【0051】
ここで、第1電源の周波数としては、200kHz以下が好ましい。またこの電界波形としては、サイン波でもパルスでもよい。下限は1kHz程度が望ましい。
【0052】
一方、第2電源の周波数としては、800kHz以上が好ましい。この第2電源の周波数が高い程、プラズマ密度が高くなり、緻密で良質な機能体が得られる。上限は200MHz程度が望ましい。
【0053】
このような二つの電源から高周波電圧を印加することは、第1の周波数ωによって高い放電開始電圧を有する放電ガスの放電を開始するのに必要であり、また第2の周波数ωはプラズマ密度を高くして緻密で良質な機能体を形成するのに必要であるということが本発明の重要な点である。
【0054】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置は、上述のように、対向電極の間で放電させ、対向電極間に導入した少なくとも放電ガスと機能体形成ガスをプラズマ状態とし、対向電極間に静置あるいは移送される基材をプラズマ状態のガスに晒すことによって、基材の上に機能体を形成させるものである。また他の方式として、大気圧プラズマ放電処理装置は、上記同様の対向電極間で放電させ、対向電極間に導入したガスを励起しまたはプラズマ状態とし、対向電極外にジェット状に励起またはプラズマ状態のガスを吹き出し、対向電極の近傍にある基材(静置していても移送されていてもよい)を晒すことによって基材の上に機能体を形成させるジェット方式の装置がある。
【0055】
図1は本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0056】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置は、プラズマ放電処理装置、二つの電源を有する電圧印加手段の他に、図1では図示してない(後述の図2に図示してある)が、ガス供給手段、電極温度調節手段を有している装置である。
【0057】
プラズマ放電処理装置10は、第1電極11と第2電極12から構成されている対向電極を有しており、対向電極間に、第1電極11からは第1電源21からの第1の周波数ωの高周波電圧Vが印加され、また第2電極12からは第2電源22からの第2の周波数ωの高周波電圧Vが印加されるようになっている。第1電源21は第2電源22より大きな高周波電圧(V>V)を印加できる能力を有していればよく、また第1電源21の第1の周波数ωは第2電源22の第2の周波数ωより小さな能力を有していればよい。
【0058】
第1電極11と第1電源21との間には、第1電源21からの電流が第1電極11に向かって流れるように第1フィルター23が設置されており、第1電源21からの電流を通過しにくくし、第2電源22からの電流が通過しやすくするように設計されている。
【0059】
また、第2電極12と第2電源22との間には、第2電源22からの電流が第2電極12に向かって流れるように第2フィルター24が設置されており、第2電源22からの電流を通過しにくくし、第1電源21からの電流を通過しやすくするように設計されている。
【0060】
第1電極11と第2電極12との対向電極間(放電空間)13に、ここでは図示してない(後述の図2に図示してあるような)ガス供給手段からガスGを導入し、第1電極11と第2電極12から高周波電圧を印加して放電を発生させ、ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、対向電極下面と基材Fとで作る処理空間をプラズマ状態のガスG°で満たし、図示してない基材の元巻き(アンワインダー)から巻きほぐされて搬送してくるか、あるいは前工程から搬送してくる基材Fの上に、処理位置14付近で機能体を形成させる。機能体形成中、媒体がここでは図示していない(後述の図2に図示してあるような)電極温度調節手段から配管を経て電極を加熱または冷却する。プラズマ放電処理の際の基材の温度によっては、得られる機能体の物性や組成は変化することがあり、これに対して適宜制御することが望ましい。温度調節の媒体としては、蒸留水、油等の絶縁性材料が好ましく用いられる。プラズマ放電処理の際、幅手方向あるいは長手方向での基材の温度ムラができるだけ生じないように電極の内部の温度を均等に調節することが望まれる。
【0061】
また、図1に前述の高周波電圧(印加電圧)と放電開始電圧の測定に使用する測定器を示した。25及び26は高周波プローブであり、27及び28はオシロスコープである。
【0062】
ジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置を複数基接して直列に並べて同時に同じプラズマ状態のガスを放電させることができるので、何回も処理され高速で処理することもできる。また各装置が異なったプラズマ状態のガスをジェット噴射すれば、異なった層の積層機能体を形成することもできる。
【0063】
図2は本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【0064】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置は、少なくともプラズマ放電処理装置30、二つの電源を有する電圧印加手段40、ガス供給手段50、電極温度調節手段60を有している装置である。
【0065】
図2は、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との対向電極間(放電空間)32で、基材Fをプラズマ放電処理して機能体を形成するものである。
【0066】
ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との間の放電空間(対向電極間)32に、ロール回転電極(第1電極)35には第1電極41から周波数ωの高周波電圧Vを、また角筒型固定電極群(第2電極)36には第2電源42から周波数ω高周波電圧Vをかけるようになっている。
【0067】
ロール回転電極(第1電極)35と第1電源41との間には、第1電源41からの電流がロール回転電極(第1電極)35に向かって流れるように第1フィルター43が設置されており、第1フィルターは第1電源41からの電流を通過しにくくし、第2電源42からの電流を通過しやすくするように設計されている。また、角筒型固定電極群(第2電極)36と第2電源42との間には、第2電源からの電流が第2電極に向かって流れるように第2フィルター44が設置されており、第2フィルター44は、第2電源42からの電流を通過しにくくし、第1電源41からの電流を通過しやすくするように設計されている。
【0068】
なお、本発明においては、ロール回転電極35を第2電極、また角筒型固定電極群36を第1電極としてもよい。何れにしろ第1電極には第1電源が、また第2電極には第2電源が接続される。更に、第1電源は第2電源より大きな高周波電圧(V>V)を印加できる能力を有していればよい。また、周波数はω<ωとなる能力を有していればよい。
【0069】
ガス供給手段50のガス供給装置51で発生させたガスGを、流量を制御して給気口52よりプラズマ放電処理容器31内に導入する。放電空間32及びプラズマ放電処理容器31内をガスGで満たす。
【0070】
基材Fを、図示されていない元巻きから巻きほぐして搬送するかまたは前工程から搬送して、ガイドロール64を経て、ニップロール65で基材に同伴されて来る空気等を遮断し、ロール回転電極35に接触したまま巻き回しながら角筒型固定電極群36との間に移送し、ロール回転電極(第1電極)35と角筒型固定電極群(第2電極)36との両方から電圧をかけ、対向電極間(放電空間)32で放電プラズマを発生させる。基材Fはロール回転電極35に接触したまま巻き回されながらプラズマ状態のガスにより、その上に機能体を形成する。基材Fは、ニップロール66、ガイドロール67を経て、図示してない巻き取り機で巻き取るか、次工程に移送する。
【0071】
放電処理済みの処理排ガスG′は排気口53より排出する。
機能体形成中、ロール回転電極(第1電極)35及び角筒型固定電極群(第2電極)36を加熱または冷却するために、電極温度調節手段60で温度を調節した媒体を、送液ポンプPで配管61を経て両電極に送り、電極内側から温度を調節する。なお、65及び66はプラズマ放電処理容器31と外界とを仕切る仕切板である。
【0072】
角筒型電極は、円筒型電極でもよいが、角筒型電極は円筒型電極に比べて、放電範囲(放電面積)を広げる効果があるので、本発明に好ましく用いられる。
【0073】
ロール電極及び角筒型電極は、導電性の金属質母材の上に誘電体としてのセラミックスを溶射後、無機化合物の封孔材料を用いて封孔処理したものである。セラミックス誘電体は片肉で1mm程度被覆あればよい。溶射に用いるセラミックス材としては、アルミナ・窒化珪素等が好ましく用いられるが、この中でもアルミナが加工しやすいので、特に好ましく用いられる。また、誘電体層が、ガラスライニングにより無機材料を設けたライニング処理誘電体であってもよい。
【0074】
導電性の金属質母材としては、チタン金属またはチタン合金、銀、白金、ステンレススティール、アルミニウム、鉄等の金属等や、鉄とセラミックスとの複合材料またはアルミニウムとセラミックスとの複合材料を挙げることができるが、後述の理由からはチタン金属またはチタン合金が特に好ましい。
【0075】
2個の電極間の距離(電極間隙)は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電圧の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、電極の一方に誘電体を設けた場合の誘電体表面と導電性の金属質母材表面の最短距離、上記電極の双方に誘電体を設けた場合の誘電体表面同士の距離としては、いずれの場合も均一な放電を行う観点から0.1〜20mmが好ましく、特に好ましくは0.5〜2mmである。
【0076】
本発明に有用な導電性の金属質母材及び誘電体についての詳細については後述する。
【0077】
プラズマ放電処理容器はパイレックス(R)ガラス製の処理容器等が好ましく用いられるが、電極との絶縁がとれれば金属製を用いることも可能である。例えば、アルミニウムまたはステンレススティールのフレームの内面にポリイミド樹脂等を張り付けてもよく、金属フレームにセラミックス溶射を行い絶縁性をとってもよい。図1において、平行した両電極の両側面(基材面近くまで)を上記のような材質の物で覆うことが好ましい。
【0078】
本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置に設置する第1電源(高周波電源)としては、
Figure 2004084027
等の市販のものを挙げることができる。なお、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。
【0079】
また、第2電源(高周波電源)としては、
Figure 2004084027
等の市販のものを挙げることができ、何れも好ましく使用できる。
【0080】
本発明においては、このような電圧を印加して、均一なグロー放電状態を保つことができる電極をプラズマ放電処理装置に採用する必要がある。
【0081】
本発明において、対向する電極間に印加する電力は、第2電極に1W/cm以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、エネルギーを機能体形成ガスに与え機能体を形成させる。供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm以下、より好ましくは20W/cm以下である。下限値は、好ましくは1.2W/cm以上である。なお、放電面積(cm)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
【0082】
ここで電源の印加法に関しては、連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モードのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極側は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
【0083】
このような大気圧プラズマによる機能体の形成に使用する電極は、構造的にも、性能的にも過酷な条件に耐えられるものでなければならない。このような電極としては、金属質母材上に誘電体を被覆したものであることが好ましい。
【0084】
本発明に使用する誘電体被覆電極においては、様々な金属質母材と誘電体との間に特性が合うものが好ましく、その一つの特性として、金属質母材と誘電体との線熱膨張係数の差が10×10−6/℃以下となる組み合わせのものである。好ましくは8×10−6/℃以下、更に好ましくは5×10−6/℃以下、特に好ましくは2×10−6/℃以下である。なお、線熱膨張係数とは周知の材料特有の物性値である。
【0085】
線熱膨張係数の差が、この範囲にある導電性の金属質母材と誘電体との組み合わせとしては、
(1)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がセラミックス溶射被膜
(2)金属質母材が純チタンまたはチタン合金で、誘電体がガラスライニング
(3)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がセラミックス溶射被膜
(4)金属質母材がステンレススティールで、誘電体がガラスライニング
(5)金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がセラミックス溶射被膜
(6)金属質母材がセラミックス及び鉄の複合材料で、誘電体がガラスライニング
(7)金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がセラミックス溶射皮膜
(8)金属質母材がセラミックス及びアルミの複合材料で、誘電体がガラスライニング
等がある。線熱膨張係数の差という観点では、上記(1)または(2)及び(5)〜(8)が好ましく、特に(1)が好ましい。
【0086】
本発明において、金属質母材は、上記の特性からはチタンまたはチタン合金が特に有用である。金属質母材をチタンまたはチタン合金とすることにより、使用中の電極の劣化、特にひび割れ、剥がれ、脱落等がなく、過酷な条件での長時間の使用に耐えることができる。
【0087】
本発明に有用な電極の金属質母材は、チタンを70質量%以上含有するチタン合金またはチタン金属である。本発明において、チタン合金またはチタン金属中のチタンの含有量は、70質量%以上であれば、問題なく使用できるが、好ましくは80質量%以上のチタンを含有しているものが好ましい。本発明に有用なチタン合金またはチタン金属は、工業用純チタン、耐食性チタン、高力チタン等として一般に使用されているものを用いることができる。工業用純チタンとしては、TIA、TIB、TIC、TID等を挙げることができ、何れも鉄原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、水素原子等を極僅か含有しているもので、チタンの含有量としては99質量%以上を有している。耐食性チタン合金としては、T15PBを好ましく用いることができ、上記含有原子の他に鉛を含有しており、チタン含有量は98質量%以上である。また、チタン合金としては、鉛を除く上記の原子の他にアルミニウムを含有し、その他バナジウムや錫を含有しているT64、T325、T525、TA3等を好ましく用いることができ、これらのチタン含有量は85質量%以上である。これらのチタン合金またはチタン金属は、ステンレススティール、例えばAISI316に比べて、熱膨張係数が1/2程度小さく、金属質母材としてチタン合金またはチタン金属の上に施された後述の誘電体との組み合わせがよく、高温、長時間での使用に耐えることができる。
【0088】
一方、誘電体に求められる特性としては、具体的には、比誘電率が6〜45の無機化合物であることが好ましく、また、このような誘電体としては、アルミナ、窒化珪素等のセラミックス、あるいは、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス等のガラスライニング材等がある。この中では、後述のセラミックスを溶射したものやガラスライニングにより設けたものが好ましい。特にアルミナを溶射して設けた誘電体が好ましい。
【0089】
または、上述のような大電力に耐える仕様の一つとしては、誘電体の空隙率が10体積%以下、好ましくは8体積%以下であることで、好ましくは0体積%を越えて5体積%以下である。なお、誘電体の空隙率は、BET吸着法や水銀ポロシメーターにより測定することができる。後述の実施例においては、島津製作所製の水銀ポロシメーターにより金属質母材に被覆された誘電体の破片を用い、空隙率を測定する。誘電体が、低い空隙率を有することにより、高耐久性が達成される。このような空隙を有しつつも空隙率が低い誘電体としては、後述の大気プラズマ溶射法等による高密度、高密着のセラミックス溶射被膜等を挙げることができる。更に空隙率を下げるためには、封孔処理を行うことが好ましい。
【0090】
上記、大気プラズマ溶射法は、セラミックス等の微粉末、ワイヤ等をプラズマ熱源中に投入し、溶融または半溶融状態の微粒子として被覆対象の金属質母材に吹き付け、皮膜を形成させる技術である。プラズマ熱源とは、分子ガスを高温にし、原子に解離させ、更にエネルギーを与えて電子を放出させた高温のプラズマガスである。このプラズマガスの噴射速度は大きく、従来のアーク溶射やフレーム溶射に比べて、溶射材料が高速で金属質母材に衝突するため、密着強度が高く、高密度な被膜を得ることができる。詳しくは、特開2000−301655に記載の高温被曝部材に熱遮蔽皮膜を形成する溶射方法を参照することができる。この方法により、上記のような被覆する誘電体(セラミック溶射膜)の空隙率にすることができる。
【0091】
また、大電力に耐える別の好ましい仕様としては、誘電体の厚みが0.5〜2mmであることである。この膜厚変動は、5%以下であることが望ましく、好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下である。
【0092】
誘電体の空隙率をより低減させるためには、上記のようにセラミックス等の溶射膜に、更に、無機化合物で封孔処理を行うことが好ましい。無機化合物としては金属酸化物が好ましく、この中では特に酸化ケイ素(SiO)を主成分として含有するものが好ましい。
【0093】
封孔処理の無機化合物は、ゾルゲル反応により硬化して形成したものであることが好ましい。封孔処理の無機化合物が金属酸化物を主成分とするものである場合には、金属アルコキシド等を封孔液として前記セラミック溶射膜上に塗布し、ゾルゲル反応により硬化する。無機化合物がシリカを主成分とするものの場合には、アルコキシシランを封孔液として用いることが好ましい。
【0094】
ここでゾルゲル反応の促進には、エネルギー処理を用いることが好ましい。エネルギー処理としては、熱硬化(好ましくは200℃以下)や、紫外線照射等がある。更に封孔処理の仕方として、封孔液を希釈し、コーティングと硬化を逐次で数回繰り返すとより一層無機質化が向上し、劣化のない緻密な電極ができる。
【0095】
誘電体被覆電極の金属アルコキシド等を封孔液として、セラミックス溶射膜にコーティングした後、ゾルゲル反応で硬化する封孔処理を行う場合、硬化した後の金属酸化物の含有量は60モル%以上であることが好ましい。封孔液の金属アルコキシドとしてアルコキシシランを用いた場合には、硬化後のSiO(xは2以下)含有量が60モル%以上であることが好ましい。硬化後のSiO含有量は、XPSにより誘電体層の断層を分析することにより測定する。
【0096】
本発明の機能体の形成方法に係る電極においては、電極の少なくとも基材と接する側のJIS B 0601で規定される表面粗さの最大高さ(Rmax)が10μm以下になるように調整することが、本発明に記載の効果を得る観点から好ましいが、更に好ましくは表面粗さの最大値が8μm以下であり、特に好ましくは7μm以下に調整することである。このように誘電体被覆電極の誘電体表面を研磨仕上げする等の方法により、誘電体の厚み及び電極間のギャップを一定に保つことができ、放電状態を安定化できること、更に熱収縮差や残留応力による歪やひび割れを無くし、且つ、高精度で、耐久性を大きく向上させることができる。誘電体表面の研磨仕上げは、少なくとも基材と接する側の誘電体において行われることが好ましい。更にJIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さ(Ra)は0.5μm以下が好ましく、更に好ましくは0.1μm以下である。
【0097】
本発明に用いられる誘電体被覆電極において、大電力に耐える他の好ましい仕様としては、耐熱温度が100℃以上であることである。更に好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。また上限は500℃である。なお、耐熱温度とは、絶縁破壊が発生せず、正常に放電できる状態において耐えられる最も高い温度のことを指す。このような耐熱温度は、上記のセラミックス溶射や、泡混入量の異なる層状のガラスライニングで設けた誘電体を適用したり、下記金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差の範囲内の材料を適宜選択する手段を適宜組み合わせることによって達成可能である。
【0098】
次に、放電空間に供給するガスについて説明する。
供給するガスは、放電ガス及び機能体形成ガスを含有する。放電ガスと機能体形成ガスは混合して供給してもよいし、別々に供給してもかまわない。
【0099】
放電ガスとは、機能体形成可能なグロー放電を起こすことのできるガスであり、それ自身がエネルギーを授受する媒体として働く。放電ガスとしては、窒素、希ガス、空気、水素ガス、酸素等があり、これらを単独で放電ガスとして用いても、混合して用いてもかまわない。本発明において、放電ガスとして好ましいのは窒素である。放電ガスの50〜100体積%が窒素ガスであることが好ましい。このとき、放電ガスとして窒素以外の放電ガスとしては、希ガスを50体積%未満含有することが好ましい。また、放電ガスの量は、放電空間に供給する全ガス量に対し、90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0100】
機能体形成ガスとは、放電ガスからのエネルギーを受け取って、それ自身は励起して活性となり、基材上に化学的に堆積して機能体を形成する原料のことである。
【0101】
次に、本発明に使用する機能体を形成する混合ガスについて説明する。使用する混合ガスは、基本的に放電ガスと機能体形成ガスの混合ガスである。更に添加ガスを加えることもある。混合ガス中、放電ガスを90〜99.9体積%含有することが好ましい。
【0102】
後述する有機珪素化合物に、酸素ガスや窒素ガスを所定割合で組み合わせて混合ガスとし、酸素原子と窒素原子の少なくともいずれか一方と、珪素原子とを含む機能部を得ることができる。なお、SiOは透明性が高いもののガスバリア性が少し低めで水分をやや通すことから、窒素原子を含んだ方がより好ましい。すなわち、酸素原子と窒素原子の数の比をx:yとした場合に、x/(x+y)は0.95以下、さらに0.80以下であればより一層好ましい。なお、窒素原子の割合が多いと光透過性が低下し、x=0であるSiNではほとんど光を通さない。そこで、具体的な酸素原子と窒素原子の割合は用途に応じて決めればよい。
【0103】
例えば、表示装置において発光素子に対して発光面側に機能部(膜)を形成する場合のような光透過性を要する用途であれば、x/(x+y)が0.4〜0.95であれば、光透過性と防水性のバランスをとることができるので好ましい。また、表示装置の発光素子の後面に設けられる映り込み防止膜のように光を吸収あるいは遮光した方が好ましい用途であればx/(x+y)は0〜0.4未満であることが好ましい。
【0104】
また、上記のように有機珪素化合物を反応ガスとして大気圧プラズマ法で製膜することで、機能部(膜)に炭素を含有させることができる。これは、真空プラズマ法と比較して、大気圧プラズマ法では電極間に存在する反応ガス由来のイオン等の粒子が高い密度で存在することになるので、有機珪素化合物由来の炭素が残りやすいのである。本発明においては、機能部の炭素は、機能部に柔軟性を与え基材との密着性が向上することからわずかに含有することが好ましく、具体的には0.2〜5質量%含有することが好ましい。5質量%を超えると、膜の屈折率等の物性が経時的に変化することがあり、好ましくない。
【0105】
この炭素含有率は、主に電源の周波数と供給電力に依存し、電極に印加する電圧の周波数が高いほど、及び供給電力が大きくなるほど少なくなる。また、混合ガス中に水素ガスを注入すると炭素原子が消費されやすくなり、機能部中の含有量を減らすことができ、これによっても制御できる。
【0106】
上記のような、Si、O、N、さらにCを所定の割合で含有する機能部を形成するための混合ガスについて以下に具体的に例示する。
【0107】
x/(x+y)が0.95以下であって、さらに炭素を0.2〜5質量%含有するSiON膜を、シラザンと酸素ガスの反応ガスから形成する場合について説明する。この場合、膜中のSiとNは、全てシラザン由来である。
【0108】
酸素ガスは、混合ガス全体に対する比が大きくなると大部分SiO膜になってしまうので、混合ガスのうち0.01〜5体積%が好ましく、より好ましくは0.05〜1体積%である。また、酸素とシラザンの反応効率から、シラザンに対する酸素ガスのモル比が、得たい膜の組成比(モル比)の1〜4倍になるような体積で混合することが好ましい。このようにして酸素ガスの混合ガス全体に対する割合と、シラザンに対する割合が設定される。
【0109】
また、酸素ガスを導入せず、SiN膜をシラザンから形成する場合、気化させたシラザンは混合ガス全体に対し、0.2〜1.5体積%でよい。このままであると、炭素がかなり膜中に残ってしまうので、最大でも混合ガスの2体積%以下の水素ガスを混合し炭素を飛ばす。
【0110】
本発明に使用する有機珪素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ビス(クロロメチル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、アミノメチルトリメチルシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、アリルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノジメチルシラン、1−トリメチルシリルピロール、1−トリメチルシリルピロリジン、イソプロピルアミノメチルトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、アニリノトリメチルシラン、2−ピペリジノエチルトリメチルシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメチルシラン、3−ピペリジノプロピルトリメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、1−トリメチルシリルイミダゾール、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ブチルアミノ)ジメチルシラン、2−アミノエチルアミノメチルジメチルフェニルシラン、3−(4−メチルピペラジノプロピル)トリメチルシラン、ジメチルフェニルピペラジノメチルシラン、ブチルジメチル−3−ピペラジノプロピルシラン、ジアニリノジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルシランが挙げられる。
【0111】
また、テトラエトキシシラン(TEOS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、デカメチルシクロペンタシロキサン等も用いることができる。
【0112】
また、酸素源として酸素ガス以外に、オゾン、二酸化炭素、水(水蒸気)等を用いてもよいし、窒素源としてシラザンや窒素ガス以外に、アンモニア、窒素酸化物等を用いてもよい。
【0113】
また、これらの化合物は、常温常圧で、気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合は、そのまま放電空間に導入できる。
【0114】
液体、固体の場合は、加熱、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用される。また、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒はメタノール、エタノール、n−ヘキサン等の有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。なお、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
【0115】
本発明に使用する機能体形成ガスとしては、有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等を挙げることができる。
【0116】
本発明に有用な有機金属化合物は下記の一般式(I)で示すものが好ましい。一般式(I) R MR
式中、Mは金属、Rはアルキル基、Rはアルコキシ基、Rはβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基であり、金属Mの価数をmとした場合、x+y+z=mであり、x=0〜m、またはx=0〜m−1であり、y=0〜m、z=0〜mで、何れも0または正の整数である。Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等を挙げることができる。Rのアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、3,3,3−トリフルオロプロポキシ基等を挙げることができる。またアルキル基の水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。Rのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基としては、β−ジケトン錯体基として、例えば、2,4−ペンタンジオン(アセチルアセトンあるいはアセトアセトンともいう)、1,1,1,5,5,5−ヘキサメチル−2,4−ペンタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1−トリフルオロ−2,4−ペンタンジオン等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸エステル錯体基として、例えば、アセト酢酸メチルエステル、アセト酢酸エチルエステル、アセト酢酸プロピルエステル、トリメチルアセト酢酸エチル、トリフルオロアセト酢酸メチル等を挙げることができ、β−ケトカルボン酸として、例えば、アセト酢酸、トリメチルアセト酢酸等を挙げることができ、またケトオキシとして、例えば、アセトオキシ基(またはアセトキシ基)、プロピオニルオキシ基、ブチリロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基等を挙げることができる。これらの基の炭素原子数は、上記例示有機金属化合物を含んで、18以下が好ましい。また例示にもあるように直鎖または分岐のもの、また水素原子をフッ素原子に置換したものでもよい。
【0117】
本発明において取り扱いの問題から、爆発の危険性の少ない有機金属化合物が好ましく、分子内に少なくとも一つ以上の酸素を有する有機金属化合物が好ましい。このようなものとしてRのアルコキシ基を少なくとも一つを含有する有機金属化合物、またRのβ−ジケトン錯体基、β−ケトカルボン酸エステル錯体基、β−ケトカルボン酸錯体基及びケトオキシ基(ケトオキシ錯体基)から選ばれる基を少なくとも一つ有する金属化合物が好ましい。
【0118】
なお、具体的な有機金属化合物については後述する。
本発明において、放電空間に供給するガスには、放電ガス、機能体形成ガスの他に、機能体形成の反応を促進する添加ガスを混合してもよい。添加ガスとしては、酸素、オゾン、過酸化水素、二酸化炭素、一酸化炭素、水素、アンモニア等を挙げることができるが、酸素、一酸素化炭素及び水素が好ましく、これらから選択される成分を混合させるのが好ましい。その含有量は混合ガスに対して0.01〜5体積%含有させることにより、反応促進され、且つ、緻密で良質な機能体を形成することができる。
【0119】
上記形成された酸化物または複合化合物の機能体の膜厚は、0.1〜1000nmの範囲が好ましい。
【0120】
本発明において、機能体形成ガスに使用する有機金属化合物、ハロゲン化金属、金属水素化合物の金属として、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Ir、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、Tl、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Pm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等を挙げることができる。
【0121】
本発明の機能体の形成方法で、上記のような有機金属化合物、ハロゲン金属化合物、金属水素化合物等の金属化合物を放電ガスと共に使用することにより様々な高機能性の機能体を得ることができる。
【0122】
本発明の機能体の例を以下に示すが、本発明はこれに限られるものではない。電極膜 Au、Al、Ag、Ti、Ti、Pt、Mo、Mo−Si
誘電体保護膜 SiO、SiO、Si、Al、Al、Y
透明導電膜 In、SnO
エレクトロクロミック膜 WO、IrO、MoO、V
蛍光膜 ZnS、ZnS+ZnSe、ZnS+CdS
磁気記録膜 Fe−Ni、Fe−Si−Al、γ−Fe、Co、Fe、Cr、SiO、AlO
超導電膜 Nb、Nb−Ge、NbN
太陽電池膜 a−Si、Si
反射膜 Ag、Al、Au、Cu
選択性吸収膜 ZrC−Zr
選択性透過膜 In、SnO
反射防止膜 SiO、TiO、SnO
シャドーマスク Cr
耐摩耗性膜 Cr、Ta、Pt、TiC、TiN
耐食性膜 Al、Zn、Cd、Ta、Ti、Cr
耐熱膜 W、Ta、Ti
潤滑膜 MoS
装飾膜 Cr、Al、Ag、Au、TiC、Cu
本発明による形成方法で得られた機能体の機能部は水分透過率が低減することから、表示装置、例えば、有機EL表示装置に用いるとその発光寿命を大幅に増加できる。
【0123】
本発明に用いられる基材について説明する。
本発明に用いられる基材としては、板状、シート状またはフィルム状の平面形状のもの、あるいはレンズその他成形物等の立体形状のもの等の機能体をその表面に形成できるものであれば特に限定はない。基材が静置状態でも移送状態でもプラズマ状態の混合ガスに晒され、均一の機能体が形成されるものであれば基材の形態または材質には制限ない。形態的には平面形状、立体形状でもよく、平面形状のものとしては、ガラス板、樹脂フィルム等を挙げることができる。材質的には、ガラス、樹脂、陶器、金属、非金属等様々のものを使用できる。具体的には、ガラスとしては、ガラス板やレンズ等、樹脂としては、樹脂レンズ、樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂板等を挙げることができる。
【0124】
樹脂フィルムは本発明に用いられる大気圧プラズマ放電処理装置の電極間または電極の近傍を連続的に移送させて透明導電膜を形成することができるので、スパッタリングのような真空系のようなバッチ式でない、大量生産に向き、連続的な生産性の高い生産方式として好適である。
【0125】
樹脂フィルム、樹脂シート、樹脂レンズ、樹脂成形物等成形物の材質としては、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネートまたはセルロースアセテートブチレートのようなセルロースエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールコポリマー、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルアクリレート、アクリレートコポリマー等を挙げることができる。
【0126】
これらの素材は単独であるいは適宜混合されて使用することもできる。中でもゼオネックスやゼオノア(日本ゼオン(株)製)、非晶質シクロポリオレフィン樹脂フィルムのARTON(日本合成ゴム(株)製)、ポリカーボネートフィルムのピュアエース(帝人(株)製)、セルローストリアセテートフィルムのコニカタックKC4UX、KC8UX(コニカ(株)製)等の市販品を好ましく使用することができる。更に、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルフォン及びポリエーテルスルフォン等の固有複屈折率の大きい素材であっても、溶液流延製膜、溶融押し出し製膜等の条件、更には縦、横方向に延伸条件等を適宜設定することにより使用することができるものを得ることができる。
【0127】
これらのうち光学的に等方性に近いセルロースエステルフィルムが光学素子に好ましく用いられる。セルロースエステルフィルムとしては、上記のようにセルローストリアセテートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートが好ましく用いられるものの一つである。セルローストリアセテートフィルムとしては市販品のコニカタックKC4UX等が有用である。
【0128】
これらの樹脂の表面にゼラチン、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂等を塗設したものも使用できる。またこれら樹脂フィルムの機能体側に防眩層、クリアハードコート層、バリア層、防汚層等を設けてもよい。また、必要に応じて接着層、アルカリバリアコート層、ガスバリア層や耐溶剤性層等を設けてもよい。
【0129】
また、本発明に用いられる基材は、上記の記載に限定されない。フィルム形状のものの膜厚としては10〜1000μmが好ましく、より好ましくは40〜200μmである。
【0130】
【実施例】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0131】
実施例1
基材として透光性を有するPES(ポリエーテルスルホン)フィルム(住友ベークライト(株)製スミライトFS−1300)の表面に、図1に示すプラズマ放電処理装置を用いた大気圧プラズマ放電処理により所定の組成のSiON膜を有する試料1〜7を作製した。
【0132】
《大気圧プラズマ放電処理》
〈電極の作製〉
次のようにして電極を作製した。長さ50mm、幅600mm、高さ50mmの、肉厚10mm(中空のジャケット)のチタン合金T64製の2個の平板印加電極を以下のように作製した。2個共、平板電極の互いに対向する面(面積300cm)に大気プラズマ法により高密度、高密着性のアルミナ溶射膜を被覆した。その後、テトラメトキシシランを酢酸エチルで希釈した溶液を塗布乾燥後、紫外線照射により硬化させ封孔処理を行った。このようにして被覆した誘電体表面を研磨し、平滑にして、Rmaxが5μmとなるように加工した。最終的な誘電体の空隙率は5体積%であった。この時の誘電体層のSiO含有率は75mol%であった。また、最終的な誘電体の膜厚は、1mm(膜厚変動±1%以内)、誘電体の比誘電率は10であった。更に導電性の金属質母材と誘電体の線熱膨張係数の差は、1.6×10−6/℃であり、また耐熱温度は250℃であった。
【0133】
〈大気圧プラズマ放電処理装置〉
図1に示した大気圧プラズマ放電処理装置を使用し、上記で作製した2個の電極を電極間隙を1mmとして平行に対向させ、第1電源及び第2電源としてそれぞれ前記A2及びB3を設置した。第1電源の周波数を5kHz、高周波電圧を12kV/mm、第2電源の周波数を13.56MHz、高周波電圧を0.8kV/mm、第1電極の電力(出力密度)を1W/cm、第2電極の電力を10W/cmとして大気圧プラズマ処理して、試料1〜7を作製した。
【0134】
なお、この系での窒素ガスの放電開始電圧は3.7kV/mmであった。両電極を80℃になるように調節保温した。なお、何れもフィルターを設置して実施した。
【0135】
ここで導入した混合ガスは次の通りである。
放電ガス:窒素ガス
反応性ガス:酸素ガス
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシラザン蒸気(125℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリングして蒸発させる)
酸素ガスとヘキサメチルジシラザン蒸気の比率を変えて、酸素原子と窒素原子の数の比をx:yとした場合のx/(x+y)の値が、0.2、0.4、0.5、0.80、0.85、1.0である試料2〜7を作製した。なお、予め、酸素ガスとヘキサメチルジシラザンの混合割合に対して得られるx/(x+y)値に関して、検量線等の知見を得ておき、この知見に基づいて、これらの各割合になるように調整した。
【0136】
さらに、酸素ガスに代えて、水素ガスを用い、x/(x+y)が0、つまり窒化珪素膜を形成し、これを試料1とした。
【0137】
次に、比較例として真空スパッタリング法により所定の組成のSiON膜を有する試料8〜14を作製した。実施例1と同じ基材表面に、ターゲットとして窒化珪素(SiN)を用い、アルゴンガス及び酸素ガスの雰囲気下でRF(Radio Frequency)スパッタリング法(真空状態、周波数13.56MHz)によって所定の組成のSiON膜を形成した。酸素ガスの分圧を変えて、x/(x+y)の値が、0、0.2、0.4、0.5、0.8、0.85、1.0となるように膜を作製し、試料8〜14を得た。
【0138】
試料1〜14の膜厚は、約200nmであった。
作製した試料の膜の炭素含有率を次のように測定した。
【0139】
(炭素含有率の測定)
炭素含有率は、XPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy)表面分析装置を用いて測定した。XPS表面分析装置としては、特に限定はなく、いかなる機種も使用することができるが、本実施例においてはVGサイエンティフィックス社製ESCALAB−200Rを用いた。X線アノードにはMgを用い、出力600W(加速電圧15kV、エミッション電流40mA)で測定した。エネルギー分解能は、清浄なAg3d5/2ピークの半値幅で規定したとき、1.5〜1.7eVとなるように設定した。
【0140】
測定を行う前に、汚染による影響を除くために、膜厚の10〜20%の厚さに相当する表面層をエッチング除去する必要がある。この表面層の除去には、希ガスイオンが利用できるイオン銃を用いることが好ましく、イオン種としては、He、Ne、Ar、Xe、Kr等が利用できる。本測定においては、Arイオンエッチングを用いて表面層を除去した。
【0141】
XPS表面分析において、結合エネルギー0〜1100eVの範囲を、データ取り込み間隔1.0eVで測定し、いかなる原子が検出されるかを求めた。
【0142】
次に、検出されたエッチングイオン種を除く全ての原子について、データの取り込み間隔を0.2eVとして、その最大強度を与える光電子ピークについてナロースキャンを行い、各原子のスペクトルを測定した。得られたスペクトルは、測定装置、あるいは、コンピューターの違いによる含有率算出結果の違いをなくするために、VAMAS−SCA−JAPAN製のCOMMON DATA PROCESSING SYSTEM (Ver.2.3以降が好ましい)上に転送した後、同ソフトで処理を行い、炭素含有率の値を原子数濃度(atomic
concentration)として求めた。
【0143】
定量処理を行う前に、各原子についてCount Scaleのキャリブレーションを行い、5ポイントのスムージング処理を行った。定量処理では、バックグラウンドを除去したピークエリア強度(cps×eV)を用いた。バックグラウンド処理には、Shirleyによる方法を用いた。Shirley法については、D.A.Shirley,Phys.Rev.,B5,4709(1972)を参考にすることができる。
【0144】
測定の結果を表1す。
(剥離試験)
JIS K5400に準拠した碁盤目試験を行った。形成された薄膜の表面に片刃のカミソリの刃を面に対して90°の角度で切り込みを1mm間隔で縦横に11本入れ、1mm角の碁盤目を100個作製した。この上に市販のセロファンテープを張り付け、その一端を手で持って垂直に力強く引張って剥がし、切り込み線からの貼られたテープ面積に対する薄膜が剥がされた面積の割合を、
A:全く剥離されない
B:剥離された面積割合が10%未満
C:剥離された面積割合が10%以上
の3ランクでランク評価し、その結果を表1に示す。
【0145】
【表1】
Figure 2004084027
【0146】
試料1〜14の炭素含有率、剥離試験の結果は、SiON膜の前記x/(x+y)にはほとんど左右されず、ほぼ同じ値であった。
【0147】
表1から分かるように、本発明により形成されたSiON膜は、比較例と比べて剥離試験で良好な結果を示した。これは、炭素含有率が真空スパッタリング法で作製した比較例よりも多く、膜が柔軟であるためと考えられる。また、大気圧プラズマ法では真空プラズマ法よりも、粒子密度の高い緻密な膜が形成されることが容易に推測でき、より緻密であれば膜自体の強度も大きくなり、この点からも剥離試験で良好な結果を示したと考えられる。
【0148】
また、SiON膜の形成スピードは、本発明の方が、比較例に比べて15倍以上速く、極めて生産性が高かった。
【0149】
実施例2
x/(x+y)=0.5である組成比のSiON膜を、第1電源及び第2電源の種類、周波数及び高周波電圧を表2に示すように変更し、その他の点については実施例1の試料4と同様にして試料21〜29を作製した。
【0150】
得られた試料について、実施例1と同様に炭素含有率を求めるとともに、実施例1で作製した試料11(x/(x+y)=0.5)と合わせて下記の耐傷性の測定を行った。その結果を表2に示す。
【0151】
(耐傷性の測定)
1×1cmの面にスチールウールを貼り付けたプローブを、光学フィルムの薄膜面に250gの荷重をかけて押し付け10回往復運動させた後、擦り傷の入る本数を測定した。
【0152】
【表2】
Figure 2004084027
【0153】
本発明の大気圧プラズマ法で作製したSiON膜は、比較例の真空スパッタリング法で作製したものより炭素含有率が多く柔軟で、緻密で丈夫な膜であることから、耐傷性の点でも優れている。特に、SiON膜中の炭素含有量が0.2〜5質量%の試料は、耐傷性において優れた性能を有することが分かる。
【0154】
実施例3
x/(x+y)=0.5、0.80、0.85であるSiON膜を、実施例1の試料4〜6と同様にして、PESフィルムの両面に形成した透明基板を用いて、図3(a)に示す有機EL表示装置を作製した。
【0155】
まず、基材61の両面にSiON膜(x/(x+y)=0.5)62が形成された透明基板63の一方のSiON膜62上に、スパッタリングターゲットとして酸化インジウムと酸化亜鉛との混合物(Inの原子比In/(In+Zn)=0.80)からなる焼結体を用い、DCマグネトロンスパッタリングにより透明な導電性の非晶質酸化物膜であるIZO(Indium Zinc Oxide)膜64を膜厚250nm形成した。
【0156】
スパッタリング方法としては、スパッタリング装置の真空装置内を1×10−3Pa以下にまで減圧し、Arガス(純度99.99%)とOガス(純度99.99%)との混合ガス(Ar:O=1000:2.8(体積比))を真空圧が1×10−1Paになるまで真空槽内に導入した後、ターゲット印加電圧420V、基板温度60℃でIZO膜64を形成した。
【0157】
IZO膜64を所定パターンになるように周知の方法でパターニングした後、IZO膜64を設けた透明基板63をi−プロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、さらにUVオゾン洗浄を5分間行った。
【0158】
この透明基板63を、真空蒸着装置(図示せず)内の所定箇所に固定する。そして、5つのモリブデン製抵抗加熱ボードのそれぞれに、m−MTDATXAを200mg、DMPhenを200mg、BCを200mg、フッ化リチウムを200mg、アルミニウム3gを入れ、真空蒸着装置内に取り付けた。ここで使用した化合物の化学式を以下に示した。
【0159】
【化1】
Figure 2004084027
【0160】
次いで、真空蒸着装置内を4×10−4Paまで減圧する。その後、m−MTDATAの入った加熱ボードに通電して220℃まで加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/secで支持基板のIZO膜64の表面に正孔輸送層であるm−MTDATA層65(膜厚25nm)を形成した。次に、DMPhen、BCが入ったそれぞれの加熱ボードを順に220℃に加熱し、蒸着速度0.1〜0.3nm/sec.で、発光層であるDMPhen層66(膜厚20nm)、電子輸送層であるBC層67(膜厚30nm)を形成した。さらに、フッ化リチウムの入った加熱ボードを220℃まで加熱し、陰極バッファー層であるLiF層68(膜厚0.5nm)を形成した。
【0161】
次に、ステンレス鋼製の所定のパターンで穴が形成されたマスクを介して、アルミニウムの入った加熱ボードに通電し、220℃に加熱し、LiF層68の表面に膜厚100nmのアルミニウムからなる陰極69を形成した。
【0162】
このように得られた積層体に、さらに透明基板63を重ね、有機EL表示装置60aを得た。なお、図3(a)では、各層を同じ横幅で示したが、実際には上下の透明基板63はもっと幅広く形成され、互いの周囲が光硬化型接着剤(東亜合成社製ラックストラックLCR0629B)によって封止され、上下の透明基板63の内側にIZO層64〜陰極69までの主要な部分が保護されて密閉された構造となっている。
【0163】
x/(x+y)=0.80、0.85についても全く同様に、それぞれ有機EL表示装置60b、60cを製造した。
【0164】
さらに、実施例1の試料11〜13と全く同様の方法で、x/(x+y)=0.5、0.80、0.85のSiON膜を両面に形成した各透明基板についても、同様に有機EL表示装置を製造し、それぞれ有機EL表示装置60′a、60′b、60′cとした。
【0165】
以上の6つの有機EL表示装置について、23℃で、陽極であるIZO層64と陰極69との間に直流電圧15Vを印加したところ、青紫色の発光が見られた。点灯開始から輝度の半減する時間を、有機EL表示装置60′bの半減時間を100として、下記4段階で評価した。評価の結果を表3に示す。
【0166】
◎:140以上
○:120〜140未満
△:100〜120未満
×:100未満
【0167】
【表3】
Figure 2004084027
【0168】
表3で明らかなように、本発明の方法でSiON膜を形成した透明基板を用いた有機EL表示装置60a、60b、60cは、比較例に比べ、輝度半減時間が長く、寿命が長いことが分かった。有機EL表示装置の寿命は外からの水分の影響が大きいことが知られているが、本発明の方法で形成したSiON膜は、従来の真空下で形成した膜よりも緻密であり、水分を通し難いと考えられる。そのため、装置としての寿命が長くなったと考えられる。
【0169】
実施例4
発光層等の化合物を、下記有機イリジウム化合物を含むものに変更する以外は実施例3と全く同様にして有機EL表示装置を製造した。
【0170】
IZO層64とアルミニウムからなる陰極69は全く同様であるが、その間の各膜は次の化合物から形成した。IZO層64側から順に、α−NPD層(25nm)、CBPとIr(PPy)の共蒸着膜層(35nm、Ir(PPy)が6%)、BC層(10nm)、Alq層(40nm)、LiF層(0.5nm)である。
【0171】
【化2】
Figure 2004084027
【0172】
得られた有機EL表示装置について、実施例3同様に発光させたところ、発光色は緑であった。また、輝度半減時間について、x/(x+y)の値が0.5、0.80、0.85のいずれも実施例3と同様であり、良好な結果が得られた。
【0173】
以上の実施例1〜4は、基材であるPESフィルムに直接SiON膜を保護膜として形成したが、実施例5、6では、SiON膜(SiN膜)を、有機EL表示装置の背面側にあって、発光側に存在する物体の陰極への写り込みを禁止する写り込み防止膜として形成する。実施例1〜4の保護膜の場合、発光面側に形成されることから、透明であることが必須であったが、写り込み防止膜の場合、逆に着色され遮光性が高いことが重要である。
【0174】
実施例5
以下、図3(b)に基づいて説明する。まず、PESフィルムからなる基材81の表面に実施例3と同様に、IZO膜を形成し、パターニング後、洗浄しIZO層82を形成した。このIZO層82の表面に、実施例3と同様に、mTDATXA層83(25nm)、DMPhen層84(20nm)、BC層85(30nm)、LiF層86(0.5nm)を順次形成した。次いで、LiF層86の表面に、アルミニウムを真空蒸着することによりAl層87を極薄く(1nm)形成した。
【0175】
このAl層87の表面に、第1電源の周波数を5kHz、高周波電圧を12kV/mm、第2電源の周波数を13.56MHz、高周波電圧を0.8kV/mm、第1電極の電力(出力密度)を1W/cm、第2電極の電力を20W/cmとして大気圧プラズマ処理して、SiON膜からなる写り込み防止膜88を形成した。ここで用いた混合ガスは以下のものである。
【0176】
放電ガス:窒素ガス
反応性ガス:酸素ガス
薄膜形成性ガス:ヘキサメチルジシラザン(125℃に加熱した液体にアルゴンガスをバブリング)
これらのガスの割合を制御することで、x/(x+y)の値が0.2の膜を形成した。膜厚は30nmであった。
【0177】
次いで、真空蒸着装置において、写り込み防止膜88の表面にアルミニウムからなる陰極89(膜厚100nm)を蒸着形成した。
【0178】
このように得られた積層体に、さらに基材81を重ね、有機EL表示装置80aを得た。なお、図3(b)では、各層を同じ横幅で示したが、実際には上下の基材81、81はもっと幅広く形成され、互いの周囲が光硬化型接着剤(東亜合成社製ラックストラックLCR0629B)によって封止され、上下の基材81、81の内側にIZO層82〜陰極89の主要な部分が保護された状態で密閉された構造となっている。
【0179】
さらに、有機EL表示装置80aと同様の大気圧プラズマ法で、混合ガスとして酸素を水素に代えて、厚さ10nmのSiN膜を写り込み防止膜88として形成し、有機EL表示装置80bを製造した。
【0180】
また、比較として、写り込み防止膜88をRFスパッタリング法(真空状態、周波数13.56MHz)により形成した。ターゲットとして窒化珪素を用い、アルゴンと酸素からなる混合ガスを供給しながら、x/(x+y)の値が0.2のSiON膜(膜厚30nm)を形成した以外は、有機EL表示装置80a同様に、有機EL表示装置80′aを製造した。
【0181】
同じく、比較として、写り込み防止膜88をRFスパッタリング法(真空状態、周波数13.56MHz)により形成した。ターゲットとして窒化珪素を用い、アルゴンガスを供給しながら、SiN膜(膜厚30nm)を形成した以外は、有機EL表示装置80b同様に、有機EL表示装置80′bを製造した。
【0182】
有機EL表示装置80a、80b、80′a、80′bそれぞれについて、陽極であるIZO層82と陰極89の間に、23℃で15Vの直流電圧を印加したところ、青紫色の発光が見られた。点灯開始時からの輝度の半減する時間について、有機EL表示装置80′aの輝度の半減時間を100として実施例3と同様にして評価した。また、写り込み防止効果については、目視で判定し、◎:写り込み全く無し、○:少し認められるのように評価した。これらの結果を表4に示す。
【0183】
【表4】
Figure 2004084027
【0184】
表4で明らかなように、SiN膜、SiON膜(x/(x+y)=0.2)は、本発明、比較例に関係なく良好な写り込み防止効果を示した。しかし、輝度半減時間については、本発明の大気圧プラズマ法で写り込み防止膜を形成した表示装置の方が長く、つまり寿命が長く、写り込み防止効果だけでなく、保護膜としても寄与していると考えられる。
【0185】
実施例6
IZO層82形成後、IZO層82側から順に、α−NPD層(25nm)、CBPとIr(PPy)の共蒸着膜層(35nm、Ir(PPy)が6%)、BC層(10nm)、Alq層(40nm)、LiF層(0.5nm)を形成した後、Al層87を形成した以外は実施例5と全く同様にして有機EL表示装置を製造した。そして、実施例4と同様に評価した。実施例5と同様に、本発明の方法で写り込み防止膜を形成した有機EL表示装置は、寿命が長く、SiON膜やSiN膜が写り込み防止効果だけでなく、保護膜としても寄与していることが分かった。
【0186】
なお、本発明は上記実施例1〜6に限定されることなく、適宜変更可能であるのはもちろんである。
【0187】
例えば、有機EL表示装置の発光層を構成する化合物としては、上記で用いたもの以外に、以下に示す有機白金化合物や有機イリジウム化合物を使用することができる。さらに、有機オスミウム化合物等も使用することができる。
【0188】
【化3】
Figure 2004084027
【0189】
また、表示装置としては有機EL表示装置に限定されず、液晶表示装置や、CCD等の光学センサにより受光した画像を表示する表示装置等、各種表示装置に適用することができる。
【0190】
さらに、本発明の膜(機能体)の形成方法は、表示装置だけでなく、各種電子機器、光学機器等に使用される基材に対して適用することができる。
【0191】
【発明の効果】
窒素のような安価かつ安全な放電ガスを用いても、高密度プラズマが達成でき、緻密で、剥離性、耐傷性、輝度寿命、透過率及び遮光性が改良された機能体及びその形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に有用なジェット方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図2】本発明に有用な対向電極間で基材を処理する方式の大気圧プラズマ放電処理装置の一例を示す概略図である。
【図3】(a)、(b)はそれぞれは実施例3、5で製造した有機EL表示装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
10 プラズマ放電処理装置
11 第1電極
12 第2電極
20 電圧印加手段
21 第1電源
22 第2電源
F 基材

Claims (21)

  1. 基材上に直接またはその他の機能部を介して、酸素原子と窒素原子の少なくともいずれか一方と珪素原子とを含有する機能部を持つ機能体の形成方法において、大気圧もしくはその近傍の圧力下で、対向する第1電極と第2電極との間にガスを供給し高周波電圧を印加することにより、該ガスを励起し、励起した該ガスに基材を晒し、該高周波電圧が第1の周波数ωの電圧成分と該第1の周波数より高い第2の周波数ωの電圧成分とを重ね合わせた成分を有することを特徴とする機能体の形成方法。
  2. 第1の周波数ωの電圧波形及び第2の周波数ωの電圧波形がサイン波であることを特徴とする請求項1に記載の機能体の形成方法。
  3. 第1の周波数ωが200kHz以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の機能体の形成方法。
  4. 第2の周波数ωが800kHz以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  5. 高周波電圧が第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  6. 第1の高周波電圧V、第2の高周波電圧V及び放電開始電圧IVとの関係が、
    ≧IV>V
    または V>IV≧V
    を満たすことを特徴とする請求項5に記載の機能体の形成方法。
  7. 第1の高周波電圧を第1電極に印加し、第2の高周波電圧を第2電極に印加することを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  8. 大気圧もしくはその近傍の圧力下、対向する第1電極と第2電極との間に放電ガス及び機能体形成ガスを供給し高周波電圧を印加することにより、該放電ガスを励起して放電を開始し、該機能体形成ガスを励起し、励起した該機能体形成ガスに基材を晒すことにより該基材上に機能部を持つ機能体の形成方法において、該高周波電圧が、第1の高周波電圧V及び第2の高周波電圧Vを重畳したものであって、かつ放電開始電圧をIVとしたとき、
    ≧IV>V
    または V>IV≧V
    を満たすことを特徴とする機能体の形成方法。
  9. 第1の高周波電圧Vを印加する際の第1の周波数ωより、第2の高周波電圧Vを印加する際の第2の周波数ωの方が高いことを特徴とする請求項8に記載の機能体の形成方法。
  10. 第1の周波数ωが200kHz以下であることを特徴とする請求項9に記載の機能体の形成方法。
  11. 第2の周波数ωが800kHz以上であることを特徴とする請求項9または10に記載の機能体の形成方法。
  12. 第1の高周波電圧の電圧波形及び第2の高周波電圧の電圧波形がサイン波であることを特徴とする請求項8〜11の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  13. 第1電極と第2電極との間に供給される全ガス量の90〜99.9体積%が放電ガスであることを特徴とする請求項8〜12の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  14. 放電ガスが50〜100体積%の窒素ガスを含有することを特徴とする請求項8〜13の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  15. 放電ガスが50体積%未満の希ガスを含有することを特徴とする請求項8〜14の何れか1項に記載の機能体の形成方法。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の機能体の形成方法により得られた機能体において、機能部を構成する酸素原子と窒素原子の数の比をx:yとした場合に、x/(x+y)が0.95以下であることを特徴とする機能体。
  17. x/(x+y)が0.80以下であることを特徴とする請求項16に記載の機能体。
  18. 機能部が炭素を含有することを特徴とする請求項16または17に記載の機能体。
  19. 機能部の炭素含有率が0.2〜5質量%であることを特徴とする請求項18に記載の機能体。
  20. 請求項16〜19のいずれか1項に記載の機能体を含むことを特徴とする表示装置。
  21. 表示装置が有機EL表示装置であることを特徴とする請求項20に記載の表示装置。
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