JP2004075731A - 帯電防止フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステルフィルムの片面に塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなる塗布層を有するポリエステルフィルムにおいて、当該塗布液が、分子内に反応性基と4級アンモニウム塩基とを有する化合物(A)を含有することを特徴とする帯電防止フィルム。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、帯電防止フィルムに関し、さらに詳しくは帯電防止性能が耐水性を兼ね備え、その外観をも損なわないポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、透明性等の優れた特性を有することから、磁気記録媒体のベースフィルム、製版用フィルム、包装用フィルム、光学用フィルムを始めとする幅広い用途に使用されている。
しかしプラスチックフィルム共通の問題として、静電気が発生して帯電しやすいと言う点が挙げられる。そのためフィルム加工時あるいは加工製品の走行性不良や、周囲の埃等を引きつけるという問題を起こす。
【0003】
一般に、ポリエステルフィルムの帯電防止方法としては、有機スルホン酸塩等の低分子量のアニオン性界面活性剤タイプの化合物を練り込む方法、金属化合物を蒸着する方法、アニオン性化合物やカチオン性化合物、あるいは、いわゆる導電性化合物を表面に塗布する方法等がある。
アニオン性化合物を練り込む方法は、安価に製造できるという利点があるものの、帯電防止効果において限界がある。さらに低分子量化合物を用いるため、いわゆるブルーミングによりアニオン性化合物がポリエステルフィルム表面に集まり、ポリエステルフィルムと上塗り層との接着力が低下したり、アニオン性化合物がフィルムや搬送ロールに転着したりする等の問題が生じる。また、このため、帯電防止性能の耐久性も低下する。
【0004】
金属化合物を蒸着する方法は、帯電防止性が優れ、近年は透明導電性フィルムとして用途が拡大しているものの、製造コストが高く、特定の用途には向いているが、一般の帯電防止フィルムとしては利用し難い。
導電性カーボンなどの導電性化合物を塗布する方法は、帯電防止効果が比較的良好であると共に比較的安価に製造できる利点があるものの、フィルムの透明性が悪化するという欠点がある。
このようなことから、帯電防止剤としてアニオン性化合物やカチオン性化合物をフィルムに塗布する方法がポリエステルフィルムの帯電防止法として広く採用されている。
【0005】
塗布層を有する二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法として、特に、フィルム製造工程中で塗布を行う方法が経済性およびその特性の面から広く行われている。典型的な例としては、縦延伸後横延伸前に塗布を行い、横延伸および熱固定する方法がある。
ただし、このような塗布方式による場合でも、アニオン性化合物やカチオン性化合物が低分子量であった場合は、容易に表面から除去され効果が持続しなかったり、装置の汚染やフィルム表面のべたつきなどの不具合を起こしたりするため、一般には使用に適さない。したがって、アニオン性化合物やカチオン性化合物は高分子量であることが望ましいが、あまりに高分子量でありすぎると、塗布液の粘度が高くなりすぎ、生産性や得られる塗布フィルムの性能に劣る場合がある。
またこれらアニオン性化合物やカチオン性化合物の多くは、基材となるフィルムとの密着や耐水性に劣るため、摩耗や水洗によってフィルム表面から除去されやすいという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、帯電防止性能と耐水性とを兼ね備え、外観の優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の種類の化合物の組み合わせからなる塗布層を設けることにより、上記課題が解決されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、ポリエステルフィルムの片面に塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなる塗布層を有するポリエステルフィルムにおいて、当該塗布液が、分子内に反応性基と4級アンモニウム塩基とを有する化合物(A)を含有することを特徴とする帯電防止フィルムに存する。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸成分とグリコール成分との重縮合により得られるポリエステルである。これらのジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸等が、グリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
【0010】
本発明において用いられるポリエステルとしては、代表的には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等が挙げられるが、その他に上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
本発明におけるポリエステルフィルムには、取扱いを容易にするために易滑性を付与する目的で粒子を含有させてもよい。このような粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子、さらに、ポリエステル製造工程時の析出粒子等を用いることができる。
【0011】
用いる粒子の粒径や含有量は、フィルムの用途や目的に応じて選択されるが、平均粒径に関しては、通常は0.005〜5.0μm、好ましくは0.01〜3.0μmの範囲である。平均粒径が5.0μmを超えると、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎたり、粒子がフィルム表面から脱落しやすくなったりする傾向がある。平均粒径が0.005μm未満では、表面粗度が小さすぎて、十分な易滑性が得られない場合がある。粒子含有量については、ポリエステルに対し、通常0.001〜30.0重量%であり、好ましくは0.01〜10.0重量%である。粒子量が多くなるとフィルムの機械的特性や透明性が損なわれる傾向があり、少なければ易滑性が劣る傾向がある。
【0012】
また、必要に応じて上記の粒子のほかにも添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、例えば、帯電防止剤、安定剤、潤滑剤、架橋剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、染料、顔料、光線遮断剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。
本発明のポリエステルフィルムは、本発明の要件を満たしていれば多層構造であってもよく、その場合はポリエステルでない層が含まれても構わない。また、塗布層はフィルムの片面のみに設けていても、両面に設けていても、本発明の概念に当然含まれるものである。
【0013】
次に、本発明のフィルムの塗布層を構成する成分である樹脂について述べる。
本発明において、分子内に反応性基と4級アンモニウム塩基とを有する化合物(A)とは、一分子内に反応性基と4級アンモニウム塩基を共に持つ物を指す。反応性基としては、他の官能基と反応する基であれば限定はなく、例えばアミノ基、イミノ基、イソシアネート基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキサゾリン基、ビニル基、エチレン2重結合等が例示できる。特に、エポキシ基、オキサゾリン基およびビニル基から選ばれる少なくとも一種が好ましい。また、4級アンモニウム塩基の対アニオンとしては、例えば、ハロゲン、アルキルサルフェート、アルキルスルホネート、硝酸等のイオンが挙げられる。
【0014】
また本発明では、分子内に反応性基と4級アンモニウム塩基とを有する化合物(A)は、次に示す条件を満たしていることが望ましい。その条件とは、すなわち、反応性基と4級アンモニウム塩基を持つ部分を一構成単位とした時に、当該構成単位を繰り返し単位として持つ高分子化合物ではないことである。当該構成単位を繰り返し単位として持つ高分子化合物であるとは、一分子中に該構成単位を平均して10回以上繰り返し含むような化合物を指す。かかる高分子化合物を用いた場合、しばしば塗布液の粘度が高くなりすぎる等の不具合を生じ、生産性や塗布外観を悪化させることがある。また、好ましい分子量としては、数平均分子量が通常は5000以下、より好ましくは40〜4000の間、さらに好ましくは100〜2000の間である。
【0015】
本発明の効果をより高めるために、上記化合物(A)の反応性基と架橋反応する官能基を有するバインダー樹脂(B)の1種以上を併用することが好ましい。かかるバインダー樹脂としては種々の物が使用できる。例えば、ポリオレフィンやポリアミド等が挙げられるが、特にポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール等が基材との密着性や塗布層の造膜性の観点等から好ましく用いられる。
【0016】
塗布液成分としてのポリエステル樹脂を構成する成分として、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物を例示できる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールA−エチレングリコール付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコ、ールポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。常法の重縮合反応によってポリエステルを合成することができる。
【0017】
なお、上記のほか、特開平1−165633号公報に記載されている、いわゆるアクリルグラフトポリエステルや、ポリエステルポリオールをイソシアネートで鎖延長したポリエステルポリウレタンなどのポリエステル成分を有する複合高分子も本発明で用いる塗布剤ポリエステルに含まれる。
本発明で用いる、塗布液成分としてのアクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
【0018】
上記炭素−炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば以下のようなものである。
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有ビニル系モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、チッソ(株)製「サイラプレーンFM−07」(メタクリロイルシリコンマクロマー)等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロクロルエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類。
【0019】
塗布液成分としてのポリウレタン樹脂としては、例えば、特公昭42−24194号公報、特公昭46−7720号公報、特公昭46−10193号公報、特公昭49−37839号公報、特開昭50−123197号公報、特開昭53−126058号公報、特開昭54−138098号公報等に開示された公知のポリウレタンまたはそれらに準じたポリウレタンを使用することができる。
例えば、ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0020】
また、ポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオール類、ポリエチレンアジペート、ポリエチレン−ブチレンアジペート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール類、アクリル系ポリオール、ひまし油等を挙げることができる。通常、分子量300〜2000のポリオールが使用される。特に、ポリエステルポリオールを使用すると、塗膜の透明性、上塗り剤との接着性が向上して好ましい。
また、鎖長延長剤あるいは架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水等を挙げることができる。
【0021】
本発明における塗布液成分としてのポリビニルアルコールは、通常の重合反応によって合成することができ、水溶性であることが好ましい。
ポリビニルアルコールの重合度は、特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300〜40000のものが用いられる。重合度が100以下の場合、塗布層の耐水性が低下する傾向がある。ポリビニルアルコールのけん化度は、特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは80モル%以上、99.9モル%以下であるポリ酢酸ビニルけん化物が実用上用いられる。
さらに本発明で使用する塗布液中には、必要に応じて、前述以外の架橋反応性化合物を含んでいてもよい。架橋反応性化合物は主に、他の樹脂や化合物に含まれる官能基と架橋反応することで、塗布層の凝集性、表面硬度、耐擦傷性、耐溶剤性、耐水性をさらに改良することができる。
【0022】
本発明で使用する塗布液は、界面活性剤、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、帯電防止剤、有機系潤滑剤、有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡剤、染料、顔料等の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は単独で用いてもよいが、必要に応じて二種以上を併用してもよい。
本発明における塗布液は、取扱い上、作業環境上、水溶液または水分散液であることが望ましいが、水を主たる媒体としており、本発明の要旨を越えない範囲であれば、有機溶剤を含有していてもよい。
塗布液の固形分濃度には特に制限はないが、通常0.3〜65重量%、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは1〜20重量%である。濃度がこれらの範囲より高すぎる場合も低すぎる場合も、機能を十分に発現するために必要な厚さの塗布層を設けることが困難となる場合がある。
【0023】
塗布層の厚さは、乾燥厚さで、通常0.003〜1.5μm、好ましくは0.005〜0.5μm、さらに好ましくは0.01〜0.3μmである。塗布層の厚さが0.003μm未満の場合は、十分な性能が得られない恐れがあり、1.5μmを超えるとフィルム同士のブロッキングが起こりやすくなる。
ポリエステルフィルムに塗布層を設ける方法は、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。例えば、未延伸フィルムに塗布した後延伸する方法、一軸延伸フィルムに塗布した後延伸する方法、二軸延伸フィルムに塗布した後延伸する方法等がある。特に、未延伸または一軸延伸フィルムに塗布液を塗布した後、テンターにおいて乾燥及び延伸を同時に行う方法が経済的である。
【0024】
ポリエステルフィルムに塗布液を塗布する方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ、リバースロールコータ、トランスファロールコータ、グラビアコータ、キスロールコータ、キャストコータ、スプレイコータ、カーテンコータ、カレンダコータ、押出コータ、バーコータ等のような技術が挙げられる。
【0025】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。
【0026】
(1)表面固有抵抗値
日本ヒューレット・パッカード社製高抵抗測定器:HP4339Bおよび測定電極:HP16008Bを使用し、23℃,50%RHの測定雰囲気でサンプルを十分調湿後、印可電圧100Vで1分後の塗布層の表面固有抵抗値を測定した。測定した値は以下の基準で評価した。
○:良好。表面固有抵抗値が1×1011Ω/□以下。
△:普通。表面固有抵抗値が1×1014Ω/□以下で1×1011Ω/□より高い。
×:不良。表面固有抵抗値が1×1014Ω/□より高い。
【0027】
(2)帯電防止性能の耐水性
50℃の温水に1分間サンプルフィルムを浸した後、定性濾紙(TOYOアドヴァンテック製「No2」)で軽く挟んで付着した水分を取り除き、室温で一昼夜乾燥した後に、上記(1)に示すとおりの方法にて表面固有抵抗を測定し、温水浸漬前の値と比較して以下の基準で評価した。
○:良好。温水浸漬前の値からの悪化が1桁以内。
△:普通。温水浸漬前の値から1桁以上悪化したが、塗布層を設けないフィルムよりは表面固有抵抗が低い(帯電防止性能が残っている)。
×:不良。塗布層を設けないフィルムと同等の表面固有抵抗である(高々1桁以内の差)。
【0028】
(3)塗布外観
サンプルフィルムの塗布層外観を、暗室の蛍光灯下で目視にて検査し、外観不良となる塗布の塗りむらを以下の基準にて評価した。
○:塗りむらがない、もしくはほとんどない。
×:塗りむらがある。
【0029】
実施例1
固有粘度0.65のポリエチレンテレフタレートのチップを十分に乾燥した後、280〜300℃に加熱溶融し、T字型口金よりシート状に押し出し、静電密着法を用いて表面温度40〜50℃の鏡面冷却ドラムに密着させながら冷却固化させて、未延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを作成した。このフィルムを85℃の加熱ロール群を通過させながら長手方向に3.7倍延伸し、一軸配向フィルムとした。この一軸配向フィルムの片面に、下記(A)に示すとおりの塗布液をメイヤーバーにより塗布した。そのフィルムをテンター延伸機に導き、100℃で幅方向に4.0倍延伸し、さらに230℃で熱処理を施し、フィルム厚みが50μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。
・塗布液(A)
グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド/カルボン酸アンモニウム塩水分散型ポリエステル樹脂である、日本合成化学工業製ポリエスター/メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン/平均粒径0.05μmのシリカゾルを、固形分換算の重量組成比で30/50/16/4の割合で含有する水性塗布液
【0030】
実施例2〜3
実施例1において、塗布液の内容を下記(B)、(C)に変更した以外は同様にして、厚みが50μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得、それぞれ実施例2、実施例3とした。
・塗布液(B)
グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド/アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを共重合した、Tgが約40℃のアクリル樹脂である、日本カーバイド工業製ニカゾール/メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン/平均粒径0.05μmのシリカゾルを、固形分換算の重量組成比で30/50/16/4の割合で含有する水性塗布液
・塗布液(C)
メタクリル酸オキサゾリンエチルエステルを60mol%とメタクリル酸トリメチルアミノエチルエステル4級化物を40mol%の共重合体(数平均分子量=約900)/カルボン酸アンモニウム塩水分散型ポリエステル樹脂である、日本合成化学工業製ポリエスター/平均粒径0.05μmのシリカゾルを、固形分換算の重量組成比で30/50/16/4の割合で含有する水性塗布液
【0031】
比較例1〜2
実施例1において、塗布液の内容を下記(D)、(E)に変更した以外は同様にして、厚みが50μmの基材フィルムの上に0.05g/m2の量の塗布層を設けた積層二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得、それぞれ比較例1、比較例2とした。
・塗布液(D)
ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド/カルボン酸アンモニウム塩水分散型ポリエステル樹脂である、日本合成化学工業製ポリエスター/メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン/平均粒径0.05μmのシリカゾルを、固形分換算の重量組成比で30/50/16/4の割合で含有する水性塗布液
・塗布液(E)
常法により、トリメチルアミノエチルメタクリレート4級化物/メチルメタクリレート/エチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレートを、重量組成比として65/13/15/7の割合で共重合した化合物E−1(数平均分子量=100,000)を得、この化合物E−1を用いて、E−1/カルボン酸アンモニウム塩水分散型ポリエステル樹脂である、日本合成化学工業製ポリエスター/メトキシメチロールメラミンである、大日本インキ化学工業製ベッカミン/平均粒径0.05μmのシリカゾルを、固形分換算の重量組成比で30/50/16/4の割合で含有する水性塗布液。
比較例2においては、塗布液の粘度が高く、液の流動性に欠け、そのことに由来すると思われる塗りむらが多く発生し、塗布外観が著しく損なわれた。
【0032】
比較例3
実施例1において、塗布層を設けなかった以外は同様にして、厚みが50μmの二軸延伸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを得、比較例3とした。
以上、得られたフィルムの評価特性を下記表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、帯電防止性能と耐水性とを兼ね備え、またその外観にも優れたポリエステルフィルムを提供することができ、その工業的な利用価値は高い。
Claims (4)
- ポリエステルフィルムの片面に塗布液を塗布した後、乾燥および延伸されてなる塗布層を有するポリエステルフィルムにおいて、当該塗布液が、分子内に反応性基と4級アンモニウム塩基とを有する化合物(A)を含有することを特徴とする帯電防止フィルム。
- 塗布液が、少なくとも1種のバインダー樹脂(B)を含有し、バインダー樹脂(B)は化合物(A)の反応性基と架橋反応する官能基を有することを特徴とする請求項1記載の帯電防止フィルム。
- 化合物(A)が、反応性基と4級アンモニウム塩基とを有する部分を繰り返し単位として持つ高分子ではないことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の帯電防止フィルム。
- 化合物(A)が有する反応性基が、エポキシ基、オキサゾリン基およびビニル基の中から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の帯電防止フィルム。
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