JP2004072471A - 画像処理装置及び画像処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性が高く、面内均一性の高い高画質なプリントを得ることができる画像処理装置を、低コストで提供する。
【解決手段】演算部11は、画像入力装置1から入力される明度L* 信号および用紙上の主走査方向の記録位座標信号xと、画像形成装置3からの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号yとに従い、画像形成装置3中の感光体ドラム21上の作像プロセスに起因する色変動及びL* 信号を考慮して、L* 信号から画像形成装置3の画像記録信号Kに変換する。この色変換をニューラルネットワークあるいは回帰式を用いて行う。従来のn次元のDLUTを用いる場合に比べて、格段に少ないメモリ量で実現することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】演算部11は、画像入力装置1から入力される明度L* 信号および用紙上の主走査方向の記録位座標信号xと、画像形成装置3からの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号yとに従い、画像形成装置3中の感光体ドラム21上の作像プロセスに起因する色変動及びL* 信号を考慮して、L* 信号から画像形成装置3の画像記録信号Kに変換する。この色変換をニューラルネットワークあるいは回帰式を用いて行う。従来のn次元のDLUTを用いる場合に比べて、格段に少ないメモリ量で実現することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力される色信号を画像形成装置の画像記録信号に色変換する画像処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの発達とネットワーク等の整備、また大容量の記憶媒体等の出現に加えてスキャナやデジタルカメラ等の普及に伴い、急速にデジタルの画像信号が広まっており、またこれらの画像信号を高画質でプリントアウトしたいという要求が高まってきている。これらデジタルの画像信号を高画質にプリントアウトするためには、入力される画像信号の色情報に忠実な色で出力することが重要である。これを実現するために、入力される色信号を画像形成装置の画像記録信号に変換する、いわゆる色変換処理が行われている。
【0003】
この色変換処理としては、一般的には後述する理由によりダイレクトルックアップテーブル(以後DLUTと表記する)が広く用いられている。DLUTは、入力値と、この入力信号に例えば所定の色変換係数を乗じるなどによって得た出力値との関係を、予めROM或いはRAMに記憶させたものである。このDLUTを用いることによって、実質的に演算時間を必要とせず、色変換処理を極めて高速に行うことができるという利点がある。それに加えて、原理的に入出力関係を自由に設定できるので、非線系性が高い入出力特性であっても高い色変換精度を得ることが出来るという利点がある。
【0004】
画像形成装置では、一般的に入力される色信号と画像記録信号の間の非線形性は非常に高い。そのため、上述のように高速処理が可能で、色変換精度の高いDLUTが広く利用されている。しかしながら、面内均一性が低い画像形成装置では、DLUTを用いて色変換処理を行っても、高い色変換精度を実現することは困難である。
【0005】
面内均一性が低い画像形成装置とは、面内において一定の画像記録信号を入力しても、用紙上の位置により色が異なってしまうような画像形成装置である。例えば、インクジェット方式と電子写真方式の画像形成装置において、A3サイズの用紙全面に中濃度のグレーを出力し、面内における測色値の平均値と各測定点の色差を求め、色差の平均値および最大値で面内均一性を評価すると、インクジェット方式では平均および最大値ともに色差は1以下であるのに対し、電子写真方式では平均で3〜5程度、最大で6〜10程度の色差が存在する。
【0006】
実際にDLUTを用いて色変換処理を行い、入力される色信号と出力の測色値との色差を用いて色変換精度を評価すると、面内均一性の高いインクジェット方式においては平均および最大値ともに色差は1以下と十分な精度が得られるのに対し、面内均一性の低い電子写真方式では平均で3〜5程度、最大で6〜10程度の色差が存在するために、十分に高い色変換精度が得られない。通常、色差が1以下であれば、色の差は並べて見ても知覚されない。しかし、5以上の色差があると、並べて見なくても色の差を感ずると言われており、電子写真方式で得られる色変換精度では、入力される色信号とプリントとの色差を容易に知覚できてしまう。
【0007】
DLUTの色変換パラメータを決定する際には、画像形成装置において色再現範囲全域の色のうち必要な色を出力し、測色計を用いて測色した値をDLUTの色変換パラメータとして設定する。しかし、面内均一性の低い画像形成装置においては、測色した色に誤差を生じるため、原理的に画像形成装置の面内均一性以上の色変換精度は得ることは不可能である。
【0008】
さらに、面内均一性の低い画像形成装置の色変換処理にDLUTを適用し、色変換精度を重視して色変換パラメータを決定すると、色変換パラメータにランダムな誤差を生じ、色変換特性の連続性が悪くなるといった問題がある。このように色変換特性の連続性が悪くなると、グラデーション画像を出力した場合に、擬似輪郭が発生してしまう。
【0009】
これらの問題を改善するために、例えば特開平11−261831号公報には、面内均一性の低い画像形成装置において生じる測色値の誤差を低減する技術が記載されている。すなわち、それぞれ3色の出力値を変えた組み合わせの複数のカラーパッチを持つ第1のカラーチャートおよび全面均一出力値を持つ第2のカラーチャートを出力し、この複数のカラーパッチおよび均一出力画像の色を測色する。これによって均一出力値画像の測色値から面内における色変動値が得られるので、この色変動値に基づいて複数のカラーパッチに含まれる画像形成装置固有の色変動を除去し、これらの複数のカラーパッチから色変動を除去した3次元DLUTを作成している。
【0010】
この方法では、DLUTの色変換パラメータ値の決定時において、画像形成装置の面内における色変動による誤差の影響を低減させることができるため、色変換精度を向上させ、擬似輪郭の発生を低減させることができる。しかしながら、この方法では面内における色変動による誤差の影響を原理的に零にできない。すなわち、DLUTの色変換パラメータ値については面内における色変動による誤差を考慮しているが、DLUTで色変換処理した出力色信号で実際に記録を行ったときの面内における色変動による誤差は発生する。そのため、色変換精度として色変動分の誤差が残ってしまうといった問題がある。
【0011】
図14は、従来技術の一例における問題点の説明図である。上述の問題を図14を用いて説明する。図14において縦軸および横軸は明度L* と用紙上の位置を示しており、用紙上に図14に示すような色変動が存在すると仮定する。用紙上の位置Aで色変換パラメータを決定したとすると、通常行われているように測定値をそのまま色変換パラメータとする方法では位置Aでの色差は0であり、位置Bでの色差は2△Lである。上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法を適用して色変換パラメータを決定したとすると、位置Aおよび位置Bにおける明度の平均値Laveに位置Aにおける測定値を修正した値を色変換パラメータとするわけであるから、位置Aおよび位置Bにおける色差はともに△Lとなる。したがって、測定値をそのまま色変換パラメータとする方法の平均色差は(0+2△L)/2=△Lおよび最大色差は2△Lである。また、上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法では、平均色差は(△L+△L)/2=△Lおよび最大色差△Lとなり、最大色差の低減には効果があるものの、平均色差を低減させる効果は期待できない。
【0012】
したがって、上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法では、面内に均一な画像を出力した場合に、画像形成装置の面内均一性に起因する色変動については補正されずにそのまま出力されてしまう。そのため、電子写真方式等の面内均一性の低い画像形成装置では、出力画像に色変動が色ムラとして知覚されてしまう。以上の理由から、上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法では、高精度な色変換が実現できるとは言いがたい。
【0013】
このように従来の色変換処理では、DLUTに代表される高精度な色変換処理系を適用しても、面内均一性の低い画像形成装置では高い色変換精度を得ることができなかった。
【0014】
面内均一性の低い画像形成方式としては、先ほど示したように電子写真方式の画像形成装置が代表的なものである。電子写真方式の面内均一性を向上させる試みとしては、従来からいくつかの方法が提案されている。
【0015】
ここで、電子写真方式の面内均一性が低い要因としては、大きく2つの要因に分類することが可能である。1つは感光体や転写ベルト等の像担持体に画像を記録する際に、駆動系の振動や機械精度に起因して画像記録位置が所望の位置からずれる、いわゆるレジずれにより面内に発生する色変動である。もう1つは、下記に示す帯電、露光、現像および転写等の作像プロセスに起因して面内に発生する色変動である。
【0016】
このうちレジずれにより面内に発生する色変動に関しては、駆動系の機構および制御の最適化や、各色のスクリーン角を異ならせるローテーションスクリーンの採用および線数・ドット形状の最適化、さらには、像担持体上にレジずれ検出用のマークを作像し、これをセンサで検出することによってレジずれを測定し、測定されたレジずれ量に基づいて画像記録位置を補正するなどといった対策により、視覚上問題にならないレベルまで低減することが可能である。しかしながら帯電、露光、現像および転写等の作像プロセスに起因して面内に発生する色変動に関しては、下記に示すように決定的な解決方法の提案は行われていないため、視覚上問題とならないレベルまで色変動が低減されている電子写真方式の画像形成装置はいまだに実現されていない。
【0017】
ここで、電子写真方式の作像プロセスに起因して面内に発生する色変動について、特徴的なものについて説明する。複写機やプリンターとして一般的に利用されている電子写真方式の画像形成装置は、感光体を一様に帯電した後に画像部分を光走査装置により露光し、現像器で帯電させたトナーを静電気的に感光体に付着させることにより画像を形成している。一般的に感光体は、その帯電性や光感度に面内ムラがあり、均一の帯電、露光および現像を行っても、2次元的な場所によりその濃度にばらつきが生じるという問題がある。感光体の帯電性や光感度に面内ムラが発生してしまう原因としては、感光体の製法および構造上の問題が大きい。通常、感光体はアルミ等の導電性を有するパイプもしくはベルト上に有機感光材料等の感光材料を塗布することにより製造される。このとき塗布される感光材料の膜厚は数十ミクロンのオーダーであり、非常に薄い。感光体の帯電性や光感度は膜厚により大きな影響を受ける。従って、膜厚を均一に製造する必要があるが、そのためにはミクロンオーダーで精密に感光材料を塗布する必要があるため、感光体の高コスト化を招いてしまい現実的ではない。
【0018】
さらに、感光体に均一に帯電、露光および現像を行うことが難しいという問題がある。現像では現像ロールと感光体の間隔が一定でないと、現像に使用されるトナー量が異なってしまい、感光体に付着するトナー量にばらつきが生じてしまう。現像ロールと感光体の間隔は、通常、数百ミクロンのオーダーである。そのため、現像器および感光体を固定するフレームに高い機械的な精度および剛性が必要であり、画像形成装置の高コスト化および大型化を招いてしまうという問題がある。また、露光にレーザスキャナを用いる場合には、光走査装置と感光体の位置精度により、主走査方向で感光体上のビーム径が異なってしまい、主走査方向で感光体上の電位にムラを生じてしまう。
【0019】
加えて、カラー電子写真方式の画像形成装置では、感光体上に形成したトナー像を中間転写体ベルトもしくは転写ベルト上の記録紙に転写することにより画像を形成している。一般的に、転写ベルトの体積抵抗率はベルト面内において均一ではないので、2次元的な面内の場所により色変動が発生するといった問題がある。この転写ベルトに起因する色変動が発生してしまう原因としては、転写ベルトの製造プロセス上の問題により、転写ベルトの厚みをベルト1周にわたって均一に製造することが難しいことが挙げられる。また、転写ベルトの体積抵抗率を調整するために、ベースとなるポリイミド等のプラスティックにカーボンブラックを混合してベルトを製造するが、その際に、カーボンブラックがプラスティックに均一に分散しないため、転写ベルトの面内において体積抵抗率が一定となっていないことも挙げられる。
【0020】
このような製造上の問題によって、転写効率が転写ベルトの場所で異なってしまい、一定の転写電流を流したのでは、転写される画像濃度が変化して色変動が発生してしまう。特に転写効率の良い、つまり体積抵抗率の小さい転写ベルトにおいては、体積抵抗率をベルト一周にわたって均一にすることは製造上難しく、用紙上の2次元的な面内の場所により色変動が顕著に現れてしまうという欠点があった。転写ベルトの体積抵抗率を均一にするためには、転写ベルトの厚みをベルト1周にわたって均一に製造し、カーボンブラックをベースとなるプラスティックに均一に分散させる必要があるが、これは製造コストの高コスト化を招いてしまい、現実的ではない。
【0021】
このように電子写真方式の画像形成装置では、帯電、露光、現像および転写の作像プロセスにおいて面内における色変動を発生させる要因があり、それぞれの作像プロセスに起因する色変動の合成として、用紙上の画像には2次元的な面内の場所により色変動が発生してしまう。
【0022】
これに対し、例えば特開平6−135051号公報には、感光体上に形成した画像パターンを読み取ることにより、主走査方向と副走査方向のそれぞれについて1次元の濃度補正テーブルを算出し、画像信号を濃度補正テーブルで補正することにより、作像プロセスに起因する色変動の補正を行う画像処理装置が開示されている。このように主走査方向と副走査方向の1次元の濃度補正テーブルにより画像信号を補正する方法は、主走査方向および副走査方向に対して独立な1次元の発生原因に起因する色変動の補正には有効である。しかし、感光体や転写ベルト等の像担持体に起因する色変動は2次元の面内にわたってランダムに存在するので、1次元の補正のみでこのような2次元面内の色変動を補正することは原理的に不可能である。
【0023】
また、例えば特開平5−227396号公報には、用紙全面に一定濃度を有する画像を記録し、当該画像を読み取って算出した補正値を記憶し、原稿の画像を読み取って画像記録を行う際に、読み取った原稿の画像を補正値により補正して画像を出力することにより、面内における色変動の補正を行う画像処理装置が開示されている。
【0024】
通常、電子写真方式の画像形成装置では、その構成により、用紙と感光体および転写ベルト等の像担持体が同期するか否かについては異なる。用紙と像担持体が同期する代表的な例としては、1つの感光体上に各色のトナー画像を形成し、転写ドラム上の用紙にトナー画像を順次転写することによりカラー画像を形成する画像形成装置が挙げられる。この転写ドラムを用いる構成の場合では、レジずれを防止するために感光体と転写ドラムは同期して駆動されているため、用紙と像担持体である感光体および転写ドラムは完全に同期している。したがって、この例に代表されるように、感光体と転写ドラムが同期して駆動される画像形成装置では、用紙上の面内における色変動は再現性がある。
【0025】
これに対し、用紙と像担持体が同期しない代表的な例としては、複数の感光体にそれぞれ対応する色のトナー画像を形成し、中間転写体ベルト上にトナー画像を順次転写した後、一括して用紙上にトナー画像を転写することによりカラー画像を形成する画像形成装置が挙げられる。この中間転写体ベルトを用いる場合では、機械的な寸法誤差や動作上の誤差を吸収するために、感光体と中間転写体ベルトとの間にわずかな滑りを発生させているため、感光体と中間転写体ベルトは同期していない。通常は中間転写体ベルトの基準位置をセンサにより検出し、常に中間転写体ベルトの同じ位置に画像を転写させるように構成しているので、中間転写体ベルトと用紙は同期している。したがって、用紙および中間転写体ベルトと感光体が完全に同期していないため、この方式では用紙上の面内における色変動には再現性がない。
【0026】
したがって、上述の特開平5−227396号公報で提案されているような用紙全面に一定濃度を有する画像の出力から補正値を算出し、画像信号をこの補正値により補正する方法では、用紙と像担持体が同期している画像形成装置の2次元の面内における色変動の補正には有効であると考えられる、しかし、用紙と感光体および中間転写体ベルト等の像担持体が同期していない画像形成装置については、用紙と像担持体との相対的な位置により面内における色変動が変化してしまうので、このような面内における色変動を補正することはできない。
【0027】
さらに、上述の特開平6−135051号公報や特開平5−227396号公報に提案されている方法では、ある一定濃度の基準画像の濃度を測定することにより補正値を決定している。しかし、電子写真方式の階調性は非線形であり、濃度によって面内における色変動の発生量が異なる。そのため、これらの文献に記載されているように中濃度の画像により決定した補正値により補正処理を行うと、低濃度部や高濃度部で補正誤差を生じ、色変動が補正されなかったり、過補正による色変動が色ムラによる画像欠陥として生じてしまうといった問題がある。
【0028】
加えて、特開平6−135051号公報や特開平5−227396号公報に提案されている方法では、単色のトナーの測定によって補正値を決定している。これらの方式をカラー画像形成装置に適用することを考えると、各色に同じ補正量を施すことになる。しかし、電子写真方式でカラー画像を形成する際には多重転写を行う。この多重転写の非線形性によって、単色で決定した補正量では2次色以上のカラー画像では大きな補正誤差が生じてしまうという問題がある。
【0029】
多重転写による非線形性とは、例えばシアン(以下Cと表記する)、マゼンタ(以下Mと表記する)、イエロー(以下Yと表記する)の網点面積率50%で出力し、転写ベルト上にC、M、Yの順序で多重転写を行ってグレーを出力する場合を考えると、多重転写の非線形性により最初に転写されるCのトナー重量は単色の場合よりも多くなり、最後に転写されるYのトナー重量は単色の場合よりも少なくなるということである。この例では多重転写によるトナー重量の差は通常10%〜20%も存在するので、単色で決定した補正量では2次色以上で大きな補正誤差が生じてしまうのは明らかである。
【0030】
このように、従来の色変換処理では、DLUTに代表される高精度な色変換処理系を適用しても、電子写真方式のような面内均一性の低い画像形成装置では、面内における色変動による影響を完全に考慮することができないために、高い色変換精度が得られなかった。また、従来の色変換処理では、面内均一性の低い画像形成装置を用いて均一な画像を出力した際にも、面内における色変動による色ムラが画像欠陥として知覚されてしまっていた。
【0031】
電子写真方式において面内均一性を向上させるために、面内に一定濃度の画像を記録し、その測定値より画像信号を補正する方法が提案されているが、これらの技術では電子写真方式における階調特性および多重転写特性の非線形性や、像担持体と用紙との同期を考慮していないため、面内における色変動を原理的に完全に補正することは不可能であった。
【0032】
一方、帯電、現像および転写等の作像プロセスを改善することにより、面内均一性を向上させるためには、感光体や転写ベルト等の高コスト化、装置の大型化および高精度化が必要であり、現実的ではなかった。
【0033】
これらの課題を解決するために、特開2002−135610号公報に記載しているように、色変換処理において画像形成装置の面内における色変動を考慮することにより、色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても色再現性の高い高画質なプリントを得ることを可能とした。さらに、画像形成装置の面内における色変動を考慮した色変換処理により、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置において均一な画像を出力した際にも、色ムラの発生のない面内均一性の高いプリントを得ることを可能とした。
【0034】
この技術では、色変換処理に入力される入力色信号と、画像形成装置の画像記録信号によって像担持体上に画像が記録される位置を示す記録位置座標信号とを入力とし、画像形成装置の画像記録信号を出力とする演算手段により、入力色信号から画像記録信号への変換を行っている。演算手段としては、実時間処理を実現するためにn次元のルックアップテーブルで構成している。しかし、n次元のルックアップテーブルでは、入力色信号や像担持体の数が多い場合、ルックアップテーブルのメモリ容量が多くなり、メモリコストの観点からコスト高になってしまうという問題がある。また、テーブルメモリのロードに時間がかかり、処理系をソフトウェアで実現した場合に処理速度が低下するといった問題があった。
【0035】
例えば、白黒の画像形成装置で像担持体が同期している場合には、入力色信号が1つ、記録位置座標信号が2つであり、ルックアップテーブルは3次元となるため容易に実現することができる。しかし、CMYK4色のタンデム型の画像形成装置で、像担持体である4本の感光体と中間転写体が同期していない場合では、入力色信号がKを除く3つ、記録位置座標信号が6つであり、ルックアップテーブルは9次元にもなってしまう。ルックアップテーブルのメモリ容量は入力信号の分割数の次元数乗に比例するため、ルックアップテーブルの次元が多くなると急激にメモリ容量が増えてしまうという問題がある。先程示した3次元のルックアップテーブルの場合では、入力色信号と記録位置座標信号を16分割して、それぞれのアドレスに8ビット(=1バイト)で出力色信号を記録することを考えると、必要なメモリ容量は1×173 =4913バイトと少量のメモリで済む。しかし、9次元のルックアップテーブルで同じ分割数をCMYK4色で実現することを考えると、必要なメモリ容量は4×179 =474ギガバイトと膨大なメモリ容量が必要となる。そのため、コストおよび処理速度の観点から実現することが難しかった。
【0036】
メモリ容量を削減するためには、分割数を少なくすることが有効であるが、分割数を少なくするとルックアップテーブルの変換精度が悪化し、画質が劣化してしまうといった問題があった。
【0037】
このように、従来の色変換処理では、DLUTに代表される高精度な色変換処理系を適用しても、電子写真方式のような面内均一性の低い画像形成装置では、面内における色変動による影響を完全に考慮することができないために、高い色変換精度を得ることが不可能であった。また、従来の色変換処理では、面内均一性の低い画像形成装置を用いて均一な画像を出力した際にも、面内における色変動による色ムラが画像欠陥として知覚されてしまっていた。
【0038】
電子写真方式において面内均一性を向上させるために、面内に一定濃度の画像を記録し、その測定値より画像信号を補正する方法が提案されているが、これらの技術では電子写真方式における階調特性および多重転写特性の非線形性や、像担持体と用紙との同期を考慮していないため、面内における色変動を原理的に完全に補正することは不可能であった。
【0039】
一方、帯電、現像および転写等の作像プロセスを改善することにより、面内均一性を向上させるためには、感光体や転写ベルト等の高コスト化、装置の大型化および高精度化が必要であり、現実的ではなかった。
【0040】
さらに、上記従来技術の欠点を除くために、色変換処理において画像形成装置の面内における色変動を考慮することにより、色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性および面内均一性が高い高画質なプリントを得ることを可能にする画像処理装置が提案されているが、入力色信号および同期していない像担持体の数が多い場合では、ルックアップテーブルのメモリ容量が非常に多く必要となり、コストおよび処理速度の面で現実的ではなかった。
【0041】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、色変換処理において画像形成装置の面内における色変動を考慮した色変換処理を行う演算装置として、非線形変換特性に優れ、色変換に必要なパラメータが少ない演算装置を用いることにより、少ないコストで高速に色変換を実現し、色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性が高く、面内均一性の高い高画質なプリントを得ることを可能にすることを目的としている。
【0042】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理装置及び画像処理方法において、ニューラルネットワークまたは回帰式を用いることによって、第1の色信号を第2の色信号に変換することを特徴とするものである。このようなニューラルネットワークや回帰式は、従来のn次元ルックアップテーブルのみによって面内色変動を考慮した第1の色信号から第2の色信号への変換を行う場合に比べて、高次元の演算であっても格段にメモリ量を減少させることができる。また、画像形成装置が第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を用いて演算することによって、像担持体上の2次元の面内に発生する色変動を抑えることができるので、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性が高く、面内均一性の高い高画質なプリントを得ることを可能にすることができる。
【0043】
また、n次元のルックアップテーブルと回帰式とを組み合わせて用いることも可能である。このn次元のルックアップテーブルと回帰式との組み合わせでは、回帰式の利用によってn次元ルックアップテーブルの次元を格段に低減することができ、やはりルックアップテーブルに要するメモリ量を格段に低減することが可能である。この場合、回帰式の演算の際に、画像形成装置が第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を用いて演算することによって、画像形成装置における面内の色変動を抑え、高画質のプリントを得ることができる。
【0044】
さらに、演算手段に保持している演算パラメータの値を更新する演算パラメータ修正手段を設けておくことができる。これによって、例えば画像形成装置の像担持体の交換や経時変化、各種の画像形成条件等が変動した場合でも対応することが可能となる。
【0045】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の原理的な説明を行う。面内における色変動が存在する画像形成装置において、入力される色を忠実に再現することを考えると、一般に色変動の原因となる作像プロセスに関連する像担持体上の記録位置座標を考慮すれば、そのときの画像形成装置の画像記録信号は唯一に決定される。このことを、1変数の色信号および1次元の記録位置座標の場合を例にして、上述の図14を使って模式的に説明する。図14は、面内均一性が低い画像形成装置において、一定の画像記録信号Cを出力したときの、用紙上の位置Xにおける明度L* の測定値を示したものであった。このように出力される色(明度L* )は、画像記録信号Cと画像の記録位置座標Xにより、次式によって表すことができる。
L* =f(C,X) …(1)
【0046】
ここで(1)式より、明度L* と記録位置座標Xを指定することにより、そのときの画像記録信号Cは唯一の値に決定されることは明らかである。すなわち、色変換処理において、入力する色(明度L* )に加えて、入力画像の記録位置座標Xを考慮すれば、記録位置座標における色差のない画像記録信号Cを決定することができる。例えば位置Aと位置Bとで同じ明度L1* とするのであれば、
L1* =f(CA ,A)
L1* =f(CB ,B)
から位置Aにおける画像記録信号CA と位置Bにおける画像記録信号CB を求めればよい。得られた画像記録信号は同じ明度L1* に対して異なる色を記録する信号であるが、面内の色変化によって用紙上に記録された色は位置Aと位置Bで同じ明度となる。従って、この場合の色差を評価すると、図14中の位置Aおび位置Bにおける色差はどちらも0となり、平均色差も最大色差も0となり、原理上、色変換誤差が全く発生しないことがわかる。また、このように入力画像の記録位置座標を考慮して色変換処理を行えば、均一な画像を出力しても、面内における色変動が補正され、色ムラによる画像欠陥の発生が防止できるのがわかる。
【0047】
これは、入力される色信号や記録位置座標が多次元になっても同様であり、複数の同期していない像担持体に起因する色変動がある場合でも、入力の色信号と複数の像担持体上の記録位置座標から、入力画像の記録位置座標における色差が発生しない画像記録信号が決定されるのは明らかである。
【0048】
これに対して従来の色変換処理においては、記録位置座標Xを考慮せず、次式の関数関係より色変換特性を決定して色変換処理を行っていた。
L* =g(C) …(2)
色変換特性を決定する際には、(2)式において、明度L* を指定することにより決定される画像記録信号Cを求めることにより、入力色信号から画像記録信号への変換特性を決定していた。ここで、画像記録信号Cと明度L* の関数関係gを位置Aで決定したと仮定すると、位置Aにおける色差は0であるが、図14よりわかるように位置Bにおける色差は2ΔLとなる。従って従来の色変換処理では、平均色差がΔL、最大色差が2ΔLとなり、原理的に面内における色変動分の色変換誤差が発生してしまい、面内における色変動も補正することができなかった。
【0049】
また従来の面内ムラ補正処理においては、入力色信号L* を考慮せず、記録位置座標Xのみを考慮して、一定の画像記録信号Cを出力した時に求まる次式の関数関係より、画像記録信号の補正量を決定して面内ムラの補正を行っていた。
ΔL=h(X) …(3)
ここでΔLは面内における平均色L* aveとの差分であり、ΔLを(2)式に入力することにより、画像記録信号Cの記録位置座標Xに対する補正量ΔCを求めることができる。このような構成をとることにより、画像記録信号Cを出力したときのL* は図14におけるL* aveとなり、面内ムラのない均一な画像を得ることが可能である。しかしながら、電子写真方式の画像形成装置のように階調特性や多重転写特性の非線形性が高い場合においては、画像記録信号Cが異なる場合に面内ムラの量が変化するため、ある一定の画像記録信号Cで決定した補正量ΔCでは、補正量を決定した画像記録信号以外では面内ムラを補正できなかったり、過補正のため濃度ムラが発生する場合があった。
【0050】
さらに従来の面内ムラ補正処理においては、記録位置座標Xは用紙上の記録位置であったため、複数の像担持体を使用する画像形成装置においてそれらの像担持体が同期しない場合では、用紙と像坦持体との相対的な位置により面内における色変動が変化してしまう。そのため、面内における色変動を補正することはできなかった。
【0051】
本発明においては、上述のように、入力色信号と像担持体上の画像の2次元的な記録位置座標の両方から、画像形成装置の画像記録信号に変換するように構成することにより、原理的に面内における色変動を補正し、高精度な色変換を実現することができる。
【0052】
図1は、本発明の第1の実施の形態を含む画像出力システムの一例を示すブロック図である。図中、1は画像入力装置、2は画像処理装置、3は画像形成装置、11は演算部、12は演算パラメータ修正部である。この第1の実施の形態は、単色の画像形成装置3に適用した例を示している。本発明の画像処理装置2は、画像入力装置1及び画像形成装置3に接続されて、画像出力システムを構成している。
【0053】
画像入力装置1は、外部から各種フォーマットの単色画像を取り込んで、この例では、機器独立色信号であるCIEL* a* b* 色空間の明度L* 信号からなる画像信号と、その画像信号に対応する画像を形成する用紙上の1次元座標上の記録位置座標信号xを出力するものである。ここで用紙上の1次元座標は、後述するように画像形成装置3内のレーザスキャナ走査装置30の主走査方向の記録位置座標である。これは、画像信号の位置座標と一致するので、ここでは画像入力装置1から記録位置座標信号xを画像処理装置2に入力している。また、画像入力装置1からの入力色信号は、最も一般的には機器独立色信号である明度L* 信号であるが、これに限るものでなく、機器独立ではない画像入力装置固有の濃度もしくは明度または網点面積率を表す信号でも構わない。
【0054】
具体的に、画像入力装置1は、銀塩写真フィルムや反射原稿を、CCDセンサによってL* 信号として読み取り、またはネットワーク上に接続された機器から送信されたイメージ情報をL* 信号に変換して、そのL* 信号の用紙上における主走査方向の記録位置座標信号xとともに、それぞれ画像処理装置2に転送する機能を有するものとして構成することができる。あるいは、画像入力装置1は、パソコン上のアプリケーションおよびプリンタドライバにより作成されたページ記述言語による電子原稿を、L* のラスター信号にラスタライズして、そのL* 信号の用紙上における主走査方向の記録位置座標信号xとともに、画像処理装置2に信号を転送するものとして構成してもよい。
【0055】
画像処理装置2は、全体として、演算部11および演算パラメータ修正部12によって構成されている。演算部11は、画像入力装置1から入力される明度L* 信号および用紙上の主走査方向の記録位座標信号xと、後述する画像形成装置3からの感光体ドラム21上の副走査方向の記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号yとに従い、画像形成装置3中の感光体ドラム21上の作像プロセスに起因する色変動を考慮して、L* 信号から画像形成装置3の画像記録信号Kに変換する。ここで画像記録信号Kは、画像形成装置3のブラックの網点面積率を表す信号である。もちろん、このような機器独立ではない画像形成装置3のブラックの色空間のほか、単色の色空間であれば他の色空間でもよい。さらに、演算パラメータ修正部12は、演算部11における演算パラメータを適宜修正する。
【0056】
画像形成装置3は、画像処理装置2から転送されてくる画像記録信号Kに従って用紙上に画像を形成する。図2は、画像形成装置3の一構成例を示す概略構成図である。図中、21は感光体ドラム、22は感光体ドラムエンコーダ、23は静電潜像形成用帯電器、24は現像器、25は用紙搬送装置、26は転写帯電器、27はクリーニング装置、28は前露光器、29は定着装置、30はレーザスキャナ走査装置、31はスクリーンジェネレータ、32は用紙トレイ、33は給紙装置である。像担持体である感光体ドラム21は、静電潜像形成用帯電器23により帯電される。また、画像処理装置2から転送された画像記録信号Kがスクリーンジェネレータ31によりパルス幅変調され、レーザスキャナ走査装置30によりレーザ光を感光体ドラム21上に水平走査する。感光体ドラム21上に照射されたレーザ光によって、静電潜像が形成される。ここでは、感光体ドラム21は用紙と同期していないため、入力画像記録信号の感光体ドラム21上の記録位置座標を特定するために、感光体ドラムエンコーダ22により感光体ドラム21の回転角が計測され、計測された回転角信号yが画像処理装置2に転送される。静電潜像が形成された感光体ドラム21はさらに回転し、現像器24によりブラックのトナーで静電潜像が現像される。
【0057】
一方、画像が記録される転写紙は、用紙トレイ32から給紙装置33によって用紙搬送装置25上に送られ、さらに感光体ドラム21上に現像された画像は、転写帯電器26により背面からコロナ放電を与えることにより転写紙上に転写される。転写された画像を保持した転写紙は定着装置29に送られ、ここでトナー画像が加熱溶融されて転写紙に固着することにより、最終的な定着画像が得られる。一方、感光体ドラム21はクリーニング装置27によってクリーニングされ、前露光器28によって再使用のための準備がなされる。
【0058】
感光体ドラム21としては、各種無機感光体(Se、a−Si、a−SiC、CdS等)の他に、各種有機感光体を用いることができる。トナーはカーボンを含有した熱可塑性のバインダで構成され、公知の材料を用いることができる。一例としては、重量平均分子量54000、軟化点113℃、平均粒径7μmのポリエステルトナーを用いることができる。また、記録媒体上のトナー量は、およそ0.4mg/cm2 〜0.7mg/cm2 になるように露光条件または現像条件が設定される。例えば0.65mg/cm2 に設定するとよい。記録媒体としての転写紙には、富士ゼロックス(株)製J紙を用いることができる。もちろん他の記録媒体を用いてもよい。また、定着装置29内の定着ドラムとしては、金属ロール、または、金属ロールにシリコンゴム等の耐熱弾性層を有した加熱ロールを用いることができる。加熱ロールの内部には熱源が配置され、その設定温度はトナーの熱溶融特性によって決定するが、加熱ロールの設定温度がトナーの軟化点より高くなるように温度設定を行う。例えば加熱ロールは160°Cに設定しておくことができる。
【0059】
上述のような形式の画像形成装置3では、像担持体である感光体ドラム21上で帯電、露光および現像のすべての作像プロセスが行われるため、感光体ドラム21上の2次元的な位置により、再現性のある面内における色変動が発生する。上述の画像形成装置3では、用紙と像担持体である感光体ドラム21は同期していないので、用紙上の色変動のパターンには再現性がないが、感光体ドラム21上の所定の2次元的な位置による色変動の発生には再現性がある。従って、画像記録信号の感光体ドラム21上の2次元の記録位置座標(x,y)を考慮すれば、面内における色変動の補正と高精度な色変換は実現可能である。この感光体ドラム21上の2次元の記録位置(x,y)について、図1に示した構成例では、主走査方向の記録位置座標xについては用紙上の主走査方向の記録位置座標と同じなので画像入力装置1により指定される信号を用い、副走査方向の記録位置座標yについては感光体ドラム21の回転角信号yのみを計測している。
【0060】
ここでは画像形成装置3として、一般的な白黒の電子写真方式を適用したが、画像形成装置3をこれに限定するものでなく、1変数の色空間で記録を行い、単数の像担持体上に画像を形成するものであればどのようなものでもよい。例えば、像担持体として感光体ドラムを用いずに、ベルト感光体を使用する方式でもよい。また、画像形成装置3としては、電子写真方式に限るものではなく、どのような画像形成装置でもよい。例えば印刷、インクジェット方式、熱転写方式および銀塩写真方式などの画像形成装置において、面内における色変動の発生が像担持体上における入力画像の記録位置座標により再現性がある画像形成装置であればどのような画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【0061】
次に、画像処理装置2についてさらに説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。図中、41は3入力1出力ニューラルネットワーク処理部、42は階調補正部である。3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41には、画像入力装置1から入力される明度信号L* と用紙上の主走査方向における記録位置座標信号xと、画像形成装置3の感光体ドラムエンコーダ22が出力する画像記録信号Kの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置座標を表す回転角信号yが入力される。そして、これらの入力信号に従い、後述する演算パラメータに基づく3入力1出力のニューラルネットワークによる演算処理を行って、入力された明度信号L* を明度線形信号K’に変換し、階調補正手段212に明度線形信号K’を転送する。明度線形信号K’は、画像形成装置3の画像記録信号Kを明度線形変換した色空間の信号である。なお演算パラメータ修正部12は、後述する方法により、この3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータを修正する。
【0062】
階調補正部42は、1次元のルックアップテーブル(以下LUTと表記する)を用いて、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41より入力される明度線形信号K’を画像形成装置3の画像記録信号Kに変換し、画像形成装置3のスクリーンジェネレータ31に画像記録信号Kを転送する。この階調補正部42における1次元のLUTは公知の方法により決定することが可能である。
【0063】
この例では、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41において画像形成装置3の画像記録信号Kを明度線形変換した色空間の明度線形信号K’信号に変換した後、階調補正部42では、1次元のLUTにより明度線形信号K’から画像形成装置3の画像記録信号Kへの変換を行っている。これは、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の入出力を明度L* について線形にすることにより、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41での補正処理精度を向上させるための構成である。
【0064】
上述の例においては、階調補正部42を1次元のLUTで構成したが、1入力1出力の非線形変換が行えるものであればどのような処理方法を用いてもよい。また、階調補正部42を設けず、(L* ,x,y)信号から画像記録信号Kを3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41により直接求めるように構成してもよい。
【0065】
さらに3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41について説明する。3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41は、公知のニューラルネットワークを用いて3入力1出力の非線形変換を実現するものである。電子写真方式による非線形性の高い画像形成装置の色変換処理にニューラルネットワークを適用した例として、例えば村井和昌,電子写真学会誌,第35巻,第2号,pp.125−129(1996)が知られている。この文献によれば、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークを色変換処理として用いると、画像形成装置が非線形性の高い電子写真方式であっても、良好な色変換精度が得られることが示されている。
【0066】
図4は、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部の一例の説明図である。図4には、3入力1出力のニューラルネットワークの例として、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークにおいて、中間層の細胞数を3個としたものについて示している。図4において、白丸はニューラルネットワークの細胞を、黒丸は定数項を表している。
【0067】
図4に示したニューラルネットワークでは、演算に必要な結合加重は43個であり、結合加重を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合、必要なメモリ容量は43×8=344バイトと非常に容量が少ない。同様の演算を従来技術のn次元ルックアップテーブルで実現する場合を考えると、3入力1出力のルックアップテーブルにおいて、入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録するとすれば、必要なメモリ容量は1×173 =4913バイトとなる。両者のメモリ容量を比較すれば、従来のn次元ルックアップテーブルでは、本発明のニューラルネットワークに比べて約14倍のメモリ容量が必要になることがわかる。このように、本発明においてニューラルネットワークを用いたことによって、メモリ容量を従来の1/14程度まで削減することができる。
【0068】
ここでは中間層の細胞数を3個としてニューラルネットワークを構成した例を示したが、ニューラルネットワークの中間層の細胞数については、3個に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて適宜変更してもよい。すなわち、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41に要求される変換特性の非線形性が高い場合は、細胞数を増加させればよい。
【0069】
また、この例においては、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41に、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークを用いたが、ニューラルネットワークの細胞間の接続や層数についてもこの例の値に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて変更してもよい。
【0070】
さらに、用紙上の色変動として主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの方向の色変動が問題にならないレベルである場合は、演算部11への入力は主走査方向xもしくは副走査方向yのいずれかの信号のみでよい。このような場合は、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41は2入力1出力の変換処理を行えばよいので、2入力1出力のニューラルネットワークを用いて、公知のニューラルネットワークにより演算処理を行うように構成すればよい。
【0071】
図5は、本発明の第1の実施の形態における演算パラメータ修正部12による3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャート、図6は、同じく画像形成装置で出力するパッチ画像の一例の説明図である。まずS101では、画像形成装置3で、画像記録信号Kの任意の値に対するパッチを、例えば図6に示すように用紙上の任意の位置でプリントアウトし、それぞれのパッチを記録した時の感光体ドラム21の回転角yを測定し記憶しておく。なお、図6に示すパッチ画像の一例においては、図示の都合上、濃度の違いを異なる種類及び間隔のハッチングによって示している。
【0072】
パッチ画像としては、ここでは上述のように用紙上での主走査方向および副走査方向の分割数を10mm間隔で決定するものとし、パッチの主走査方向および副走査方向の間隔を10mm間隔として用紙全面に出力した。パッチの網点面積率は0%から100%まで10%刻みで出力し、用紙上にランダムに配置するように出力している。もちろん、各パッチの配置位置は図6に示した例に限られるものではない。
【0073】
S102では、図示しない色彩計により、出力したパッチの明度L* を測定する。色彩計としては、例えばX−Rite社のDTP−51を使用することができる。色彩計はこのような市販の色彩計ではなく、フラットベッド型のスキャナを用い、得られる画像信号から明度L* を決定するようにしてもよい。
【0074】
S103では、それぞれのパッチの明度L* の測定結果、画像記録信号K、主走査方向の記録位置座標xおよび感光体ドラム21の回転角yの測定結果より、(L* ,x,y)とKの対応表を作成する。
【0075】
S104では、階調補正部42の逆特性LUTにより画像記録信号Kから明度線形信号K’を算出し、対応表の画像記録信号Kの値を明度線形信号K’に修正する。
【0076】
S105では、(L* ,x,y)とK’の対応表を教示データとし、3入力1出力のニューラルネットワークをバックプロバケーションにより学習を行うことにより、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータである結合加重を決定する。
【0077】
このように演算パラメータ修正部12によって演算パラメータを決定して、演算部11の演算パラメータ(結合加重)を修正することにより、異なる画像形成装置に対応可能とし、また同じ画像形成装置であっても像担持体を交換した場合などのように内部状態の変更などにも対応することができるようになる。一般に、感光体や転写ベルト等の像担持体は、繰り返し使用すると性能が劣化することにより、交換が必要となる。しかし、像担持体の濃度特性のムラはそれぞれの像担持体ごとに異なっている。これに対応するため、本発明では演算パラメータ修正部12によって、演算部11において演算に用いる演算パラメータを更新することができ、交換後の像担持体の特性に対応した適切な色変換処理および面内における色変動の補正を行うことができる。また、像担持体の交換以外にも、現像条件、潜像の形成条件等が変動した場合にも対応することが可能である。
【0078】
このように面内における色変動が存在する画像形成装置であっても、色変動を発生する原因となる像担持体上の記録位置座標を考慮して、画像記録信号と色信号の関係を決定することにより、入力となる色が与えられた場合に、それに正確に一致する色を出力するための画像記録信号を決定することができる。このような色変換処理により決定した画像記録信号を用いて画像形成装置で出力を行うことにより、用紙上での色変動による色ムラの発生を防止し、入力される色信号に一致した色を出力することが可能である。さらに、ニューラルネットワークで色変換処理系を構成しているので、例えば従来技術であるn次元ルックアップテーブルに比べて、演算に必要なメモリ容量を大幅に削減し、画像処理装置の低コスト化を実現することが可能となった。
【0079】
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例について説明する。この変形例では、上述の演算部11において、回帰式を用いた演算を行う例を示している。なお、この変形例を含む画像出力システム全体の構成は図1と同様であり、図示及び説明を省略する。
【0080】
図7は、本発明の第1の実施の形態の変形例における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。図中、図3と同様の部分には同じ符号を付して重複する説明を省略する。43は3入力1出力回帰式処理部である。上述の例において用いたニューラルネットワークと同様に、回帰式を用いても、任意の非線形変換特性を近似することが可能である。この変形例においては、演算部11中に3入力1出力回帰式処理部43を設けている。
【0081】
3入力1出力回帰式処理部43には、画像入力装置1から入力される明度信号L* と用紙上の主走査方向における記録位置座標信号xと、画像形成装置3の感光体ドラムエンコーダ22が出力する画像記録信号Kの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置座標を表す回転角信号yが入力される。そして、これらの入力信号に従い、演算パラメータに基づく3入力1出力の回帰式による演算処理を行って、入力された明度信号L* を明度線形信号K’に変換し、階調補正手段212に明度線形信号K’を転送する。明度線形信号K’は、上述の例と同様である。
【0082】
3入力1出力回帰式処理部43は、例えば、次式に示す3次の重回帰多項式を用いることができる。
K’=a1L*3+a2L*2+a3L*+a4x3+a5x2+a6x+a7y3+a8y2+a9y+a10L*x+a11L*y+a12xy+a13 …(4)
(4)式に示した3次の重回帰多項式では、演算に必要な回帰係数は13個であり、回帰係数を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合、必要なメモリ容量は13×8=104バイトである。このメモリ容量は、上述の例で用いたニューラルネットワークに比べても少ない。また、演算数もニューラルネットワークに比べて少ないので、処理系をソフトウェアで実現した場合、処理の高速化を図ることができる。
【0083】
この例においては、3入力1出力回帰式処理部43に3次の重回帰多項式を用いたが、回帰式の形式はこれに限られるものではない。具体的には、非線形性の高い入出力特性が要求される場合では、重回帰多項式の次数を上げたり、変数を増やせばよい。
【0084】
演算パラメータ修正部12において3入力1出力回帰式処理部43の演算パラメータ、すなわちこの例では(4)式の回帰係数を決定する方法としては、上述の例において説明した、図5に示した決定方法とほぼ同様である。すなわち、図5において、S101〜S104まではニューラルネットワークの場合と同様に(L* ,x,y)とK’の対応表を作成し、(L* ,x,y)を説明変数、K’を目的変数として、(4)式の回帰係数を最小二乗法等の数値解法を用いることにより、決定することができる。
【0085】
演算部11に回帰式を用いる場合では、ニューラルネットワークを用いる場合に比べて、要求される入出力特性の非線形性が高い場合に色変換精度が悪くなるといった問題点がある。しかし、電子写真方式の画像形成装置においては、現像器と感光体の間隔が一定でないことに起因する色変動では主走査方向に線形に濃度が変化し、レーザスキャナの光量ムラに起因する色変動では主走査方向に中央部に比べて周辺部の濃度が低下するなど、3次以下の多項式で予測可能な色変動である。このような色変動の補正には、回帰式で色変換処理を行っても、十分高い色変換精度で色変動の補正を実現することが可能である。もちろん、画像処理系のコストおよび処理速度と、色変換精度および色変動の補正効果をトレードオフして、処理系を選択してもよい。
【0086】
本発明の第1の実施の形態及びその変形例における効果を確認するために、演算部11で入力画像の記録位置座標を考慮した色変換処理を行った場合と、記録位置座標を考慮しない通常の色変換処理を行った場合の色変換精度を評価した。ここで、入力画像の記録位置座標を考慮しない通常の色変換処理の場合としては、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41あるいは3入力1出力回帰式処理部43での処理をバイパスし、明度L* を階調補正部42に入力した。
【0087】
比較する画像として網点面積率10%〜100%のブラックをA3用紙全面に出力し、面内の任意の100点の明度L* を測定し、面内で平均したL* からの各点での色差の平均値を比較した。その結果、入力画像の記録位置座標を考慮しない通常の色変換処理を行った場合の平均色差が5程度であったのに対し、本発明の演算部11にニューラルネットワークを使用した場合では平均色差1以下と色変換精度が大幅に改善され、色変換精度の高いプリントを得ることが可能になった。また、入力画像の記録位置に対する色差の発生がないので、均一な画像を出力した場合でも、視覚的にも全く問題とならないレベルまで色ムラを低減させることができた。さらに、演算部11に回帰式を用いた場合では、平均色差3以下となり、ニューラルネットワークには劣るが、色変換精度が改善され、色ムラを低減させることができた。
【0088】
このように、本発明の第1の実施の形態及びその変形例では、画像入力装置1から入力される色信号L* と、画像記録信号Kの像担持体上の記録位置座標を表す用紙上の主走査方向における記録位置座標信号xと、感光体ドラムの回転角信号yから、3入力1出力のニューラルネットワークもしくは3入力1出力の回帰式により画像形成装置3の画像記録信号Kを算出するように構成した。これにより、電子写真方式の画像形成装置3において、感光体の感度ムラに代表される種々の原因に起因して用紙上の2次元の面内に発生する色変動がある場合でも、記録位置における色差を防止し、色変換精度の高い色変換処理を実現することが可能になった。また、均一な画像を出力した際にも、画質欠陥としての色ムラの発生を防止することができ、面内均一性が高い画像を得ることが可能となった。
【0089】
加えて、演算部11の演算パラメータを定期的に修正することにより、経時的な変化や像担持体の交換により面内における色変動特性が変化した場合においても、適切な色変換処理および面内における色変動の補正を行うことが可能となった。
【0090】
図8は、本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。図中、4はカラー画像入力装置、5はカラー画像処理装置、6はカラー画像形成装置、51はカラー演算部、52はカラー演算パラメータ修正部である。この第2の実施の形態では、複数の像担持体が用紙と同期していないフルカラーの画像形成装置に適用する場合の例を示している。カラー画像処理装置5は、カラー画像入力装置4及びカラー画像形成装置6とともにカラー画像出力システムを構成している。
【0091】
カラー画像入力装置4は、外部から各種フォーマットのカラー画像を取り込んで、例えは、機器独立色信号であるCIEL* a* b* 色空間の画像信号と、その画像信号に対応する画像を形成する用紙上の1次元座標上の記録位置座標信号xを出力する。ここで、用紙上の1次元座標は、後述するカラー画像形成装置6におけるレーザスキャナ走査装置76の主走査方向の記録位置座標である。
【0092】
具体的に、カラー画像入力装置4は、銀塩写真フィルムや反射原稿を、CCDセンサによってL* a* b* 信号として読み取り、またはネットワーク上に接続された機器から送信されたイメージ情報をL* a* b* 信号に変換して、そのL* a* b* 信号の用紙上の主走査方向の記録位置座標信号xとともに、それぞれカラー画像処理装置5に転送する機能を有するものである。あるいはカラー画像入力装置4は、パソコン上のアプリケーションおよびプリンタドライバにより作成されたページ記述言語による電子原稿をL* a* b* 信号のラスター信号にラスタライズして、そのL* a* b* 信号の用紙上の主走査方向の記録位置座標信号xとともに、カラー画像処理装置5に信号を転送するものであってもよい。
【0093】
カラー画像入力装置4からカラー画像処理装置5に転送される色信号は、カラー情報を表す3変数以上の色信号であり、最も一般的には機器独立色信号であるCIEL* a* b* 色空間である。しかし、これに限られるものではなく、RGB色空間あるいはその標準色空間であるsRGB色空間や、CMYK色空間での日本での標準色空間であるJapan Colorおよびアメリカ合衆国での標準色空間であるSWOPや、機器独立ではない画像入力装置固有のRGB色空間およびCMYK色空間等の他の色空間でもかまわない。
【0094】
カラー画像処理装置5は、全体として、カラー演算部51およびカラー演算パラメータ修正部52によって構成されている。カラー演算部11には、カラー画像入力装置4から転送されてくる色信号L* a* b* および用紙上の主走査方向の記録位置座標信号xと、後述するカラー画像形成装置6の4本の感光体ドラム61−1〜4上の副走査方向における記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号(y1,y2,y3,y4)と、後述する中間転写体ベルト73上の副走査方向の記録位置座標を表す中間転写体ベルトの駆動位置信号y5が入力される。そしてこれらの信号に基づいて、カラー画像入力装置4から入力されたL* a* b* 信号を、後述するカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKに変換する。ここで、画像記録信号CMYKは、カラー画像形成装置6でのCMYKそれぞれの網点面積率を表す信号である。もちろん、ブラックを含まないCMY色空間や他の色空間における信号に変換してもよい。このような変換によって、カラー画像形成装置6の感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73上の作像プロセスに起因する面内の色変動を考慮して、入力色信号L* a* b* からカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKへの変換を行うことができる。また、カラー演算パラメータ修正部52は、カラー演算部51における演算パラメータを適宜修正する。
【0095】
カラー画像形成装置6は、カラー演算部51から転送されてくる画像記録信号CMYKに従って用紙上に画像を形成する。なお、カラー画像形成装置6の色空間として、ここでは機器独立ではないカラー画像形成装置の記録信号であるCMYK色空間の場合を示すが、ブラックを含まないCMY色空間や他の色空間でもよい。
【0096】
図9は、カラー画像形成装置6の一構成例を示す概略構成図である。図中、61−1〜4は感光体ドラム、62−1〜4は感光体ドラムエンコーダ、63,64は加熱ロール、65は冷却装置、66−1〜4はローラ、67は用紙トレイ、68は給紙装置、69は巻回機構、70−1,2はピンロール、71−1〜4は現像器、72−1〜4は静電潜像形成用帯電器、73は中間転写体ベルト、74−1〜4は転写帯電器、75は中間転写体ベルト駆動位置検出装置、76はレーザスキャナ走査装置、77はスクリーンジェネレータである。
【0097】
中間転写体ベルト73は、ローラ66−1〜4および加熱ロール63により支持されて矢印方向に回転を行う。加熱ロール63には、加熱ロール64が対向して配置されている。中間転写体ベルト73の周辺に配置されている4つの感光体ドラム61−1〜4がそれぞれ静電潜像形成用帯電器72−1〜4により一様に帯電される。そして、カラー画像処理装置5より転送されたCMYK4色の画像記録信号は、スクリーンジェネレータ77によりパルス幅変調したレーザ光としてレーザスキャナ走査装置76により水平走査され、4つの感光体61−1〜4上に照射されて静電潜像を形成する。
【0098】
次にその静電潜像が形成された4つの感光体61−1〜4上に、ブラック現像器71−1、イエロー現像器71−2、マゼンタ現像器71−3およびシアン現像器71−4により、それぞれブラック、イエロー、マゼンタおよびシアン色のトナー像が形成される。このトナー像は、順次、転写帯電器74−1〜4により中間転写体ベルト73へ転写され、中間転写体ベルト73上に複数色のトナー像が形成される。
【0099】
感光体ドラム61−1〜4はそれぞれ独立に駆動されており、それぞれの感光体ドラムと用紙は同期していない。それぞれの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置を特定するために、それぞれの感光体ドラムの駆動系に取り付けられた感光体ドラムエンコーダ62−1〜4によって、それぞれの感光体ドラムの回転角信号(y1,y2,y3,y4)が計測されて、画像処理装置2に転送される。
【0100】
中間転写体ベルト73については、感光体ドラム61−1〜4とは独立に駆動されているが、用紙と同期するように駆動されており、中間転写体ベルト上の副走査方向の記録位置を特定するために、中間転写体ベルト駆動位置検出装置75により、中間転写体ベルト73の副走査方向の駆動位置信号y5が検出されて、カラー画像処理装置5に転送される。
【0101】
その後、用紙トレイ67から給紙装置68によって送紙された記録紙は巻回機構69に取り付けられたピンロール70−1,2によって加熱ロール64に巻回されながら加熱された後、中間転写体ベルト73と密着した状態で加熱ロール63および加熱ロール64によって加圧加熱される。
【0102】
加熱ロール63および加熱ロール64によって加圧加熱された中間転写体ベルト73および記録紙は、密着したまま移動し、冷却装置65により冷却される。これによりトナーは凝集固化し、記録紙との強い接着力を生じる。その後、小径のロール66−1において、記録紙は記録紙自体の腰の強さによって中間転写体ベルト73からトナーとともに分離され、トナーが記録紙上に転写及び定着されることによりカラー画像が形成される。
【0103】
感光体ドラム61−1〜4としては、各種無機感光体(Se,a−Si,a−SiC,CdS等)の他に、各種有機感光体を用いることができる。トナーはイエロー、マゼンタ、シアン等の色素を含有した熱可塑性のバインダで構成され、公知の材料を用いることができる。例えば、重量平均分子量54000、軟化点113℃、平均粒径7μmのポリエステルトナーなどを用いることができる。また、各色の記録媒体上のトナー量は、その色素の含有量によりおよそ0.4mg/cm2 〜0.7mg/cm2 になるように前記露光条件または現像条件が設定するとよく、例えば各色0.65mg/cm2 に設定することができる。記録媒体は、普通紙として例えば富士ゼロックス(株)製J紙を用いることができる。また、表面平滑紙としては例えば富士ゼロックス(株)製Jコート紙を用いることができる。もちろん、他の記録媒体を用いることも可能である。
【0104】
中間転写体ベルト73は、例えばベース層と表面層の2層構造のものを用いることができる。ベース層は、カーボンブラックを添加した厚さ70μmのポリイミドフィルムを用いることができる。体積抵抗率はカーボンブラックの添加量を変化させ、例えば1010Ωcm程度に調整すればよい。なお、ベース層としては、例えば厚さ10〜300μmの耐熱性の高いシート等を使用することが可能であり、ポリエステル、ホリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミドなどのポリマーシート等を用いることが可能である。また、表面層は、トナー像を感光体ドラムから中間転写体ベルト73に静電的に画像の乱れなく転写するために、一例として、その体積抵抗率を1014Ωcm程度に調整し、また、中間転写体ベルト73から紙への同時転写定着を行うときに、トナー像を挟み中間転写体ベルトと記録媒体の密着を良くするために、ゴム硬度40度、厚さ50μmのシリコン共重合体を用いるとよい。シリコン共重合体は、その表面が常温でトナーに対して粘着性を示し、さらに、記録媒体へトナーを効率的に移行させるために、溶融して流動化したトナーを離しやすくする特性を有しているため、表面層には最適である。なお、表面層は、例えば厚さ1〜100μmの離型性の高い樹脂層を使用することが可能であり、例えばテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることが可能である。
【0105】
また、加熱ロール63,64としては、金属ロール、または、金属ロールにシリコンゴム等の耐熱弾性層を有したものを用いることができる。加熱ロール63,64の内部には熱源が配置され、その設定温度はトナーおよび記録紙表面の熱可塑性樹脂層の熱溶融特性によって決定するが、トナー軟化点の温度の方が樹脂層の軟化点の温度より高くなるように設定されているので、加熱ロール63の設定温度の方が加熱ロール64よりも高い設定温度となるように温度設定を行う。例えば加熱ロール63は150℃に、加熱ロール64は120℃にそれぞれ設定することができる。また転写、定着時の加熱ロール63,64間の圧力は5kgf/cm2 に設定することができるが、圧力はこの値に限らず1kgf/cm2 〜10kgf/cm2 の範囲であればよい。またこの例では、加熱ロール63及び加熱ロール64の外径は50mmとし、加熱ロールの回転速度は、中間転写体ベルト73の搬送速度が240mm/secになるように設定している。もちろん、これらの設定に限られるものではない。
【0106】
また、冷却装置65の風量を調整することにより、記録媒体の中間転写体ベルト73からの剥離時の、中間転写体ベルト73と接する記録媒体表面の温度を調整している。例えば記録媒体の表面温度が70°C程度となるように風量を調整することができる。さらに、中間転写ベルト駆動位置検出装置75は、中間転写体ベルト73上のパターンを例えば非接触のセンサにより読み取ることにより、中間転写体ベルト73の基準位置および駆動位置を検出する。これ以外にも、例えば中間転写体ベルト73に接触する駆動位置検出用のローラや、中間転写体ベルト73を駆動する駆動系に取り付けられたエンコーダにより、中間転写体ベルト73の副走査方向の駆動位置を検出するように構成してもよい。
【0107】
図9に示した形式のカラー画像形成装置6では、像担持体である感光体ドラム上で帯電、露光および現像プロセスが行われるため、感光体ドラム上の2次元的な位置により、帯電、露光および現像プロセスに起因する再現性のある色変動が発生する。また、像担持体である中間転写ベルト上で転写および定着プロセスが行われるため、中間転写体ベルト上の2次元的な位置により、転写および定着に起因する再現性のある色変動が発生する。上述のように用紙と像担持体である感光体ドラム61−1〜4は同期していないので、用紙上の感光体ドラムに起因する色変動のパターンには再現性がないが、感光体ドラム61−1〜4上の所定の2次元的な位置による感光体ドラムに起因する色変動の発生には再現性がある。従って、感光体ドラム61−1〜4上の2次元の記録位置座標(x,y1,y2,y3,y4)を考慮すれば、感光体ドラムに起因する色変動の補正は可能である。
【0108】
このとき、主走査方向の記録位置座標xについては、用紙上の主走査方向の記録位置座標と同じなので、カラー画像入力装置4により指定される信号でよく、副走査方向の記録位置座標を表す、感光体ドラム61−1〜4それぞれの回転角信号(y1,y2,y3,y4)のみを測定すればよい。もちろん、主走査方向の記録位置座標xについてもカラー画像形成装置6からカラー画像処理装置5へ転送してもよい。また、上述の説明では、カラー画像形成装置6では4つの感光体ドラム61−1〜4が同期していないものとして説明したが、4つの感光体ドラムが同期して駆動される場合については、検出する感光体ドラムの回転角信号は1つでよい。
【0109】
また、図9に示したカラー画像形成装置6では、用紙と像担持体である中間転写体ベルト73は同期するように駆動されるため、用紙上の中間転写体ベルトに起因する濃度ムラのパターンには再現性がある。このように、用紙上の記録位置と中間転写体ベルト上の記録位置座標は同期している場合でも、中間転写体ベルト上の2次元の記録位置座標(x,y5)を考慮すれば、中間転写体ベルトに起因する濃度ムラの補正は可能である。この場合も、主走査方向の記録位置座標xについては、用紙上の主走査方向の記録位置座標と同じなので、カラー画像入力装置4により指定される信号でよく、副走査方向の記録位置座標を表す中間転写体ベルトの駆動位置信号y5のみを測定すればよい。もちろん、感光体ドラムと共通した主走査方向の記録位置座標xについても、カラー画像形成装置6から出力してもよい。また、中間転写体ベルト73が用紙と同期している場合、中間転写体ベルトの駆動位置信号y5のかわりに、カラー画像入力装置4から用紙上の副走査方向の記録位置座標信号を入力するように構成してもよい。
【0110】
図9に示すような構成のカラー画像形成装置6では、機械的な寸法誤差や動作上の誤差を吸収するために、感光体ドラム61−1〜4と中間転写体ベルト73との間にわずかな滑りを発生させているので、感光体ドラム61−1〜4と中間転写体ベルト73は同期していない。したがって、感光体ドラム61−1〜4に起因する色変動と中間転写体ベルト73に起因する色変動は独立に発生する。従って、すべて像担持体に起因する色変動を特定するためには、用紙上における主走査方向の記録位置座標信号x、4つの感光体ドラム61−1〜4の回転角信号(y1,y2,y3,y4)および中間転写体ベルト73の駆動位置信号y5の6つのパラメータを検出する必要がある。
【0111】
なお、上述のカラー画像形成装置6の説明では、感光体ドラム61−1〜4と中間転写体ベルト73が同期していない例を示したが、4つの感光体ドラムと中間転写体ベルトが同期して駆動される場合については、副走査方向の記録位置を決定するために検出する必要があるパラメータは、感光体ドラム61−1〜4の回転角信号もしくは中間転写体ベルト73の駆動位置信号のうちのいずれか1つでよい。また、4つの感光体ドラム61−1〜4が同期して駆動され、中間転写体ベルト73とは同期していない場合には、副走査方向の記録位置座標を決定するために検出する必要があるパラメータは、感光体ドラム61−1〜4の回転角信号のうちの1つと、中間転写体ベルト73の駆動位置信号の合計2つのパラメータでよい。
【0112】
図9には、カラー画像形成装置6の一例として、4つの感光体ドラムを使ってカラー画像を形成するタンデム方式の電子写真方式の構成を示したが、カラー画像形成装置6の構成はこれに限定されるものではない。例えば、1つの感光体ドラムを使って中間転写体もしくは用紙上にトナー像を順次転写していくことにより、カラー画像を形成するシングル方式の電子写真方式を適用してもよい。また、像担持体として感光体ドラムを用いずに、ベルト感光体を使用する方式でもよい。さらに、上述の例のように、像担持体である中間転写体ベルトから用紙へ直接転写および定着するような形式ではなく、中間転写体ベルトから用紙に静電気的にトナー像を転写し、通常の定着器によりトナー像を定着するような形式でもよい。
【0113】
このように、本発明の第2の実施の形態においては、3変数以上の色空間でカラー画像の記録を行い、単数もしくは複数の像担持体上に画像を形成するカラー画像形成装置であれば、どのような形式のものでもよく、単数もしくは複数の像担持体と用紙が同期していても、同期していなくても本発明の画像処理装置を適用することができる。また、カラー画像形成装置6としては、電子写真方式に限るものではなく、どのようなカラー画像形成装置でもよく、例えば印刷、インクジェット方式、熱転写方式および銀塩写真方式などのカラー画像形成装置において、面内における色変動の発生が像担持体上の入力画像の記録位置座標により再現性があるカラー画像形成装置であれば、どのようなカラー画像形成装置に対しても本発明の画像処理装置を適用することができる。
【0114】
次に、カラー画像処理装置5についてさらに説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態における具体例を示すブロック図である。図中、81は9入力4出力ニューラルネットワーク処理部、82はカラー階調補正部である。9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81には、カラー画像入力装置4から入力される色空間信号L* a* b* と用紙上の主走査方向における入力画像の記録位置座標信号xと、像担持体上の副走査方向における入力画像の記録位置座標を表すカラー画像形成装置6の感光体ドラムエンコーダ62−1〜4から入力される感光体ドラム61−1〜4の回転角信号(y1,y2,y3,y4)および、中間転写体ベルト駆動位置検出装置75から入力される中間転写体ベルト73の駆動位置信号y5が入力される。そして、これらの信号に基づいて、後述する演算パラメータに基づく9入力4出力のニューラルネットワーク処理を行って、カラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKを明度線形変換した色空間における明度線形信号C’M’Y’K’に変換し、カラー階調補正部82に転送する。なお、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータは、カラー演算パラメータ修正部52によって後述する方法で修正することができる。
【0115】
カラー階調補正部82では、それぞれの色成分毎に設けられた1次元のLUTを用いて、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81から入力される明度線形信号C’M’Y’K’からカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKに変換し、画像記録信号CMYKをカラー画像形成装置6のスクリーンジェネレータ77に転送する。この1次元のLUT(階調補正テーブル)は公知の方法により決定することが可能である。もちろん、カラー階調補正部82として、1次元のLUTで構成するほか、1入力1出力の非線形変換が行えるものであればどのような処理方法を用いてもよい。
【0116】
このように、カラー階調補正部82では1次元のLUTにより明度線形信号C’M’Y’K’からカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKへの変換を行うが、これは9入力4出力ニューラルネットワーク処理81の入出力を明度L* a* b* に対して線形にすることにより、9入力4出力ニューラルネットワーク処理81での補正処理精度を向上させるためである。もちろん、カラー階調補正部82を設けず、(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)信号から画像記録信号CMYKを9入力4出力ニューラルネットワーク処理81により直接求めるように構成してもよい。
【0117】
9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81は、公知のニューラルネットワークを用いて9入力4出力の非線形変換を実現するものである。この第2の実施の形態においても、上述の第1の実施の形態と同様に、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークをカラー演算部51として用いることができる。中間層の細胞数を10個とした場合、このような形式のニューラルネットワークでは、演算に必要な結合加重は420個であり、結合加重を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合に必要なメモリ容量は420×8=3360バイトである。従来技術のn次元ルックアップテーブルを用い、9入力4出力のルックアップテーブルで入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録することを考えると、必要なメモリ容量は4×179 =474ギガバイトとなる。両者を比べると、従来のn次元ルックアップテーブルを用いた場合には、本発明のニューラルネットワークを用いた場合に比べて約1.4億倍のメモリ容量が必要になることがわかる。このように、本発明においてニューラルネットワークを用いることによって、少ないメモリ容量で処理系を実現することが可能である。
【0118】
この例では、中間層の細胞数を10個としてニューラルネットワークを構成した場合について示したが、ニューラルネットワークの中間層の細胞数については、この例の値に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて変更すればよい。すなわち、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81に要求される変換特性の非線形性が高い場合は、細胞数を増加させればよい。また、この例においては、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81に、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークを用いることとして説明したが、ニューラルネットワークの細胞間の接続や層数についても、この例に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて変更してもよい。
【0119】
また、用紙上の色変動として感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73のどちらかの像担持体に起因する色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は感光体ドラム61−1〜4の回転角信号もしくは中間転写体ベルト73の駆動位置信号のいずれかの信号のみでよい。さらに、用紙上の色変動として主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの信号のみでよい。例えば、感光体ドラム61−1〜4に起因する面内の色変動が視覚上問題にならないレベルであり、中間転写体ベルト73による色変動も主走査方向の色変動が視覚的に問題にならない場合は、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号は(L* ,a* ,b* ,y5)となり、4入力4出力の変換処理を行えばよい。したがって、このような場合は9入力4出力のニューラルネットワークではなく4入力4出力のニューラルネットワークを用いて、演算処理を行うように構成すればよい。
【0120】
このように、視覚的に問題とならない色変動レベルの像担持体の入力画像の記録位置座標信号を省略することにより、ニューラルネットワークにおける演算量および演算パラメータの大幅な削減を実現することができる。
【0121】
図11は、本発明の第2の実施の形態におけるカラー演算パラメータ修正部52による9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。まずS111では、カラー画像形成装置6で、画像記録信号CMYKの任意の値に対するパッチを、上述の第1の実施の形態と同様に、例えば図6に示すような用紙上の任意の位置に配置してプリントアウトし、それぞれのパッチを記録した時の感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)および中間転写体ベルト73の駆動位置y5を測定し、記憶しておく。パッチの配置は、例えば上述のように用紙上での主走査方向および副走査方向の分割数を10mm間隔で決定する場合、パッチの主走査方向および副走査方向の間隔を10mm間隔として用紙全面に出力すればよい。またパッチの網点面積率はCMYKそれぞれ0%から100%まで10%刻みで、任意の組み合わせで出力し、用紙上にランダムに配置するように出力すればよい。
【0122】
S112では、図示しない色彩計により、出力したパッチの測色値L* a* b* を測定する。色彩計としては、例えばX−Rite社のDTP−51などを使用することができる。もちろん、色彩計はこのような市販の色彩計に限られるものではなく、フラットベッド型のスキャナを用い、得られるRGB信号から測色値L* a* b* を決定するようにしてもよい。
【0123】
S113では、それぞれのパッチの測色値L* a* b* の測定結果、画像記録信号CMYK、用紙上の主走査方向における記録位置座標x、感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)および、中間転写体ベルト73の駆動位置y5の測定結果より、(C,M,Y,K,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(L* ,a* ,b* )の対応表を作成する。
【0124】
S114では、カラー階調補正部82の逆特性LUTにより画像記録信号CMYKから明度線形信号C’M’Y’K’を算出し、対応表の画像記録信号CMYKの値を明度線形信号C’M’Y’K’に修正する。
【0125】
S115では、(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(L* ,a* ,b* )の対応表から(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5)を入力として(L* ,a* ,b* )を出力する次式で示される10入力3出力の関数を作成する。
(L* ,a* ,b* )=g(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5) …(5)
このような関数は、例えば、10入力3出力のニューラルネットワークを使用し、(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(L* ,a* ,b* )の対応表を教師データとして、バックプロパゲーションにより学習を行うことによって(5)式を決定することができる。ここで用いるニューラルネットワークは、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81において用いるニューラルネットワークとは異なるものである。また、このような関数を決定する方法は、ニューラルネットワークを用いる方法に限られるものではなく、10入力3出力の非線形関数を記述できるものであればどのようなものでもよい。
【0126】
S116では、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)に対するブラックの明度線形信号K’の値を決定する。明度線形信号K’のとり得る値は、例えば8bitの量子化の場合は256個と有限である。そのため、明度線形信号K’の0〜255までのそれぞれの場合について、入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)および明度線形信号K’を入力として、ニューラルネットワークで得られた(5)式を数値解法で解くことにより、測色的に一致する明度線形信号C’M’Y’を算出可能な明度線形信号K’の範囲を算出することができる。明度線形信号K’はこの算出した範囲の任意の値を選択することにより、決定することができる。
【0127】
明度線形信号K’の決定アルゴリズムについては、上記の方法に限るものでなく、公知の方法を適用することが可能である。例えは、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号の明度L* に基づいて、明度の高いところにブラックが存在せず、明度の低いところにブラックが多く存在するように、明度線形信号K’を指定するように決定してもよい。
【0128】
S117では、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)およびS116で決定した明度線形信号K’を入力として、ニューラルネットワークで得られた(5)式を数値解法で解くことにより、測色的に一致する明度線形信号C’M’Y’を算出する。
【0129】
最後にS118では、入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)と、S116で得られた明度線形信号K’およびS117で得られた明度線形信号(C’,M’,Y’)の対応表を、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81に教師データとして与え、バックプロバケーションにより学習を行う。これにより、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータである結合加重を決定することができる。
【0130】
このように、カラー演算パラメータ修正部52によって演算パラメータを決定して、カラー演算部51の演算パラメータ(結合加重)を修正することにより、異なる画像形成装置に対応可能とすることができる。また同じ画像形成装置であっても、像担持体を交換した場合などのように内部状態が変更される場合にも対応することができるようになる。一般に、感光体や転写ベルト等の像担持体は、繰り返し使用すると性能が劣化することにより、交換が必要となる。このときの像担持体の濃度特性のムラは、それぞれの像担持体ごとに異なっている。このような場合に対応し、カラー演算パラメータ修正部52によって、カラー演算部51において演算に用いる演算パラメータ(結合加重)を更新することができ、交換後の像担持体の特性に対応した、適切な色変換処理および面内における色変動の補正を行うことができる。また、像担持体の交換以外にも、現像条件、潜像の形成条件等が変動した場合にも対応することが可能となる。
【0131】
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例について説明する。この変形例では、上述のカラー演算部51において、3次元のルックアップテーブルと回帰式を用いて演算を行う例を示している。なお、この変形例を含む画像出力システム全体の構成は図8と同様であり、図示及び説明を省略する。
【0132】
図12は、本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー画像処理装置5の具体例を示すブロック図である。図中、図10と同様の部分には同じ符号を付して重複する説明を省略する。83は3次元DLUT処理部、84は10入力4出力回帰式処理部である。この変形例では、図10における9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81を、3次元DLUT処理部83と10入力4出力回帰式処理部84に置き換えたものであり、その他の構成は全く同じである。
【0133】
図12に示した構成においては、L* a* b* 色信号から画像記録信号C”M”Y”K”に変換する色変換処理を、面内における色変動を補正前に、通常の色変換処理に用いられる3次元のルックアップテーブルで行い、その後に面内における色変動の補正を回帰式で行うように構成している。従来の技術においては、色変換処理と面内における色変動の補正を同時に行うルックアップテーブルとして9次元のルックアップテーブルが必要であった。しかしこのような構成によって、色変換に必要なルックアップテーブルの次元を低くすることが可能になる。このような構成では、回帰式で必要な演算パラメータを含めてもトータルで必要なメモリ容量を低減することができる。
【0134】
3次元DLUT処理部83では、L* a* b* 色信号を、面内における色変動を補正前の画像記録信号C”M”Y”K”へ変換するが、この変換パラメータについては、公知のDLUTを用いた色変換パラメータ決定方法により決定することができる。
【0135】
10入力4出力回帰式処理部84には、3次元DLUT処理部83から入力される面内の色変動を補正する前の画像記録信号C”M”Y”K”、カラー画像入力装置4から入力される主走査方向の記録位置座標xおよびカラー画像形成装置6より入力される4本の感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73上における副走査方向の記録位置座標(y1,y2,y3,y4,y5)が入力され、面内における色変動を補正した明度線形信号C’M’Y’K’への変換を行う。
【0136】
10入力4出力回帰式処理部84において用いる回帰式としては、次に示すような3次の重回帰多項式を用いることができる。
C’=ac1C”3+ac2C”2+ac3C”+ac4M”3+ac5M”2+ac6M”+ac7Y”3+ac8Y”2+ac9Y”+ac10K”3+ac11K”2+ac12K”+ac13x3+ac14x2+ac15x+ac16y13+ac17y12+ac18y1+ac19y23+ac20y22+ac21y2+ac22y33+ac23y32+ac24y3+ac25y43+ac26y42+ac27y4+ac28y53+ac29y52+ac30y5+ac31 …(6−1)
M’=am1C”3+am2C”2+am3C”+am4M”3+am5M”2+am6M”+am7Y”3+am8Y”2+am9Y”+am10K”3+am11K”2+am12K”+am13x3+am14x2+am15x+am16y13+am17y12+am18y1+am19y23+am20y22+am21y2+am22y33+am23y32+am24y3+am25y43+am26y42+am27y4+am28y53+am29y52+am30y5+am31 …(6−2)
Y’=ay1C”3+ay2C”2+ay3C”+ay4M”3+ay5M”2+ay6M”+ay7Y”3+ay8Y”2+ay9Y”+ay10K”3+ay11K”2+ay12K”+ay13x3+ay14x2+ay15x+ay16y13+ay17y12+ay18y1+ay19y23+ay20y22+ay21y2+ay22y33+ay23y32+ay24y3+ay25y43+ay26y42+ay27y4+ay28y53+ay29y52+ay30y5+ay31 …(6−3)
K’=ak1C”3+ak2C”2+ak3C”+ak4M”3+ak5M”2+ak6M”+ak7Y”3+ak8Y”2+ak9Y”+ak10K”3+ak11K”2+ak12K”+ak13x3+ak14x2+ak15x+ak16y13+ak17y12+ak18y1+ak19y23+ak20y22+ak21y2+ak22y33+ak23y32+ak24y3+ak25y43+ak26y42+ak27y4+ak28y53+ak29y52+ak30y5+ak31 …(6−4)
【0137】
この(6−1)〜(6−4)式で示した3次の重回帰多項式では、演算に必要な回帰係数は124個であり、回帰係数を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合、必要なメモリ容量は124×8=992バイトとなる。3次元DLUT処理部83のルックアップテーブルにおいて、入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録することを考えると、3次元DLUTとして必要なメモリ容量は4×173 =19.7キロバイトとなり、10入力4出力回帰式処理部84で必要になるメモリ容量を加えても、全体で20.6キロバイトで済む。従来技術のn次元ルックアップテーブルにより同様の演算を行う場合、9入力4出力のルックアップテーブルにおいて入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録することを考えると、必要なメモリ容量は4×179 =474ギガバイトとなる。両者を比較すれば分かるように、従来のn次元ルックアップテーブルを用いた場合には、本発明の3次元ルックアップテーブルおよび回帰式を用いる場合に比べて約2298万倍のメモリ容量が必要になることがわかる。このように本発明においては、従来のn次元ルックアップテーブルを用いる場合に比べて格段に少ないメモリ容量で色変換処理系を実現することが可能である。
【0138】
この3次元ルックアップテーブルと回帰式を用いる構成では、上述の9入力4出力のニューラルネットワークを用いた構成に比べてメモリ容量は若干多く必要であるが、演算数がニューラルネットワークに比べて少ないので、処理系をソフトウェア等で実現した場合に処理の高速化を図ることができる。
【0139】
この変形例においては、10入力4出力回帰式処理部84に3次の重回帰多項式を用いたが、回帰式の形式はこれに限られるものではない。具体的には、非線形性の高い入出力特性が要求される場合には、重回帰多項式の次数を上げたり、変数を増やせばよい。
【0140】
また、用紙上の色変動として感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73のどちらかの像担持体に起因する色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は感光体ドラム61−1〜4の回転角信号もしくは中間転写体ベルト73の駆動位置信号のいずれかの信号のみでよい。さらに、用紙上の色変動として主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの信号のみでよい。例えば、感光体ドラム61−1〜4に起因する面内の色変動が視覚上問題にならないレベルであり、中間転写体ベルト73による色変動も主走査方向の色変動が視覚的に問題にならない場合は、10入力4出力回帰式処理部84の入力信号は(C”,M”,Y”,K”,y5)となり、5入力4出力の変換処理を行えばよい。したがって、このような場合は10入力4出力の回帰式ではなく5入力4出力の回帰式を用いて、演算処理を行うように構成すればよい。
【0141】
このように、視覚的に問題とならない色変動レベルの像担持体の入力画像の記録位置座標信号を省略することにより、回帰式における演算量および演算パラメータの大幅な削減を実現することができる。
【0142】
図13は、本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー演算パラメータ修正部52による10入力4出力回帰式処理部84の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。まずS121では、カラー画像形成装置6で、画像記録信号CMYKの任意の値に対するパッチを、上述の図11におけるS111の説明と同様にしてプリントアウトし、それぞれのパッチを記録した時の感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)および中間転写体ベルト73の駆動位置y5を測定し、記憶しておく。
【0143】
S122では、出力したパッチの測色値L* a* b* を測定し、3次元DLUT処理部83により測色値(L* ,a* ,b* )を面内における色変動を補正前の画像記録信号(C”,M”,Y”,K”)に変換する。なお、パッチの測色方法は任意である。
【0144】
S123では、S122で求めた面内における色変動を補正前の画像記録信号(C”,M”,Y”,K”)、用紙上の主走査方向における記録位置座標x、感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)、中間転写体ベルト73の駆動位置y5の測定結果、及び画像記録信号CMYKより、(C”,M”,Y”,K”,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(C,M,Y,K)の対応表を作成する。
【0145】
S124では、カラー階調補正部82の逆特性LUTにより画像記録信号CMYKから明度線形信号C’M’Y’K’を算出し、対応表の画像記録信号CMYKの値を明度線形信号C’M’Y’K’に修正する。
【0146】
S125では、(C”,M”,Y”,K”,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(C’,M’,Y’,K’)の対応表から、(C”,M”,Y”,K”,x,y1,y2,y3,y4,y5)を説明変数とし、(C’,M’,Y’,K’)を目的変数として、最小2乗法等の数値解法によって、3次の重回帰多項式である(6−1)〜(6−4)式の回帰係数を決定する。
【0147】
このように、カラー演算パラメータ修正部52によって演算パラメータを決定して、カラー演算部51の演算パラメータを修正することにより、異なる画像形成装置に対応することができ、また同じ画像形成装置であっても像担持体を交換した場合などのように内部状態の変更などにも対応することができるようになる。さらに、像担持体の交換以外にも、現像条件、潜像の形成条件等が変動した場合についても対応することが可能となる。
【0148】
この変形例においては、カラー演算パラメータ修正部52によって3次元DLUT処理部83の色変換パラメータの修正を行っていないが、画像形成装置の内部状態の変更等に応じて、公知の方法により3次元DLUT処理部83の色変換パラメータについても修正するように構成してもよい。
【0149】
この変形例のように、カラー演算部51にルックアップテーブルと回帰式を用いる場合では、ニューラルネットワークに比べて、要求される入出力特性の非線形性が高い場合に色変換精度が悪くなるといった問題点が考えられる。しかし、電子写真方式の画像形成装置においては、L* a* b* 色信号から画像記録信号CMYKへの色変換については非線形性が高いが、現像器と感光体の間隔が一定でないことに起因する色変動では主走査方向に線形に濃度が変化し、またレーザスキャナの光量ムラに起因する色変動では主走査方向に中央部に比べて周辺部の濃度が低下するなど、3次以下の多項式で予測可能な色変動である。従って、非線形性の高い色変換処理についてはルックアップテーブルで変換し、非線形性のそれほど高くない面内における色変動の補正については回帰式で変換するように、それぞれ分担して処理を行うことによって、高い色変換精度および色変動の補正を実現することができる。もちろん、画像処理系のコストおよび処理速度と、色変換精度および色変動の補正効果のトレードオフによって、処理系を選択してもよい。
【0150】
本発明の第2の実施の形態における効果を確認するために、カラー演算部51で複数の像担持体上の入力画像の記録位置座標を考慮した色変換処理を行った場合と、像担持体上の記録位置座標を考慮しない従来の色変換処理を行った場合の色変換精度を評価した。ここで、従来技術の例としては、図12において10入力4出力回帰式処理部84での処理を行わず、L* a* b* 色信号を入力とし、明度線形信号C’M’Y’K’を出力とする公知の3入力4出力の3次元DLUT色変換処理で行った。
【0151】
比較例として、カラー画像形成装置6において、網点面積率10%〜100%のCMY3色によるプロセスブラックをA3用紙全面に出力し、面内の任意の100点の測色値L* a* b* を測定し、面内で平均したL* a* b* からの各点での色差の平均値を比較した。その結果、従来技術の平均色差が6程度であったのに対し、カラー演算部51にニューラルネットワークを使用した構成では、平均色差1程度となり、色変換精度が大幅に改善されることを確認できた。また、均一な画像を出力した際にも、視覚的に全く問題とならないレベルまで色ムラを低減させることができた。
【0152】
さらに、カラー演算部51にルックアップテーブルと回帰式を使用した構成でも、平均色差3程度となり、ニューラルネットワークを使用した場合には劣るが、色変換精度が改善され、色ムラを低減させることができた。
【0153】
このように、第2の実施の形態では、カラー画像入力装置から入力される色信号と用紙上の主走査方向の記録位置座標信号、および、像担持体上の副走査方向の記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号と中間転写体ベルトの駆動位置信号から、ニューラルネットワーク、もしくは、ルックアップテーブルおよび回帰式を用いてカラー画像形成装置の画像記録信号を算出するように構成した。これにより、電子写真方式のカラー画像形成装置において、感光体ドラムの感度ムラや中間体ベルトの体積抵抗率ムラに代表される作像プロセスに起因する用紙上の2次元の面内に発生する色変動が存在するような場合にも、像担持体上における入力画像の記録位置座標における色差を原理的に零にすることができるので、高精度な色変換処理を実現することができる。また、均一な画像を出力した場合でも、画質欠陥としての色ムラを視覚的に問題にならないレベルまで低減させることが可能になり、面内均一性の高い、高画質なプリントを得ることができる。
【0154】
さらに、面内における色変動の原因となる作像プロセスに関連する単数もしくは複数の像担持体の記録位置座標を考慮することにより、用紙と感光体ドラムや中間転写体ベルト等の像担持体が同期していなくても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を実現することが可能である。加えて、ニューラルネットワークもしくは回帰式の演算パラメータを適宜修正することにより、経時的な変化や像担持体の交換による色変動特性の変化が発生しても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を維持することができる。
【0155】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、入力される色信号と画像形成装置より入力される像担持体上における入力画像の記録位置座標信号から、ニューラルネットワークもしくは回帰式、あるいはルックアップテーブルと回帰式との併用などによって、画像形成装置の画像記録信号を算出するように構成した。これにより、従来技術では不可能であった像担持体上での記録位置座標に起因する色差の発生を原理的に零にすることが可能になり、面内均一性が低い画像形成装置においても、高い色変換精度を得ることが可能となった。また、均一な画像を出力した際にも、用紙上の2次元の面内に発生する色ムラを視覚的に問題にならないレベルまで低減させることが可能となった。さらに、面内における色変動の原因となる作像プロセスに関連する、像担持体上の入力画像の記録位置座標を考慮することにより、用紙と感光体ドラムや中間転写体ベルト等の像担持体が同期していなくても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を得ることが可能になった。さらにまた、本発明によれば、n次元ルックアップテーブルを用いた従来の構成に比べて、格段に少ないメモリ量で構成することが可能となり、上述のような色むらの発生の防止や高い色変換精度を保ったまま、コストを大幅に低減することができるという効果がある。
【0156】
また、ニューラルネットワークもしくは回帰式などの演算パラメータを適宜修正することにより、経時的な変動や像担持体の交換等により色変動特性が変化した場合においても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を含む画像出力システムの一例を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置3の一構成例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。
【図4】3入力1出力ニューラルネットワーク処理部の一例の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における演算パラメータ修正部12による3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】画像形成装置で出力するパッチ画像の一例の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図9】カラー画像形成装置6の一構成例を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における具体例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるカラー演算パラメータ修正部52による9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー画像処理装置5の具体例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー演算パラメータ修正部52による10入力4出力回帰式処理部84の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図14】従来技術の一例における問題点の説明図である。
【符号の説明】
1…画像入力装置、2…画像処理装置、3…画像形成装置、4…カラー画像入力装置、5…カラー画像処理装置、6…カラー画像形成装置、11…演算部、12…演算パラメータ修正部、21…感光体ドラム、22…感光体ドラムエンコーダ、23…静電潜像形成用帯電器、24…現像器、25…用紙搬送装置、26…転写帯電器、27…クリーニング装置、28…前露光器、29…定着装置、30…レーザスキャナ走査装置、31…スクリーンジェネレータ、32…用紙トレイ、33…給紙装置、41…3入力1出力ニューラルネットワーク処理部、42…階調補正部、43…3入力1出力回帰式処理部、51…カラー演算部、52…カラー演算パラメータ修正部、61−1〜4…感光体ドラム、62−1〜4…感光体ドラムエンコーダ、63,64…加熱ロール、65…冷却装置、66−1〜4…ローラ、67…用紙トレイ、68…給紙装置、69…巻回機構、70−1,2…ピンロール、71−1〜4…現像器、72−1〜4…静電潜像形成用帯電器、73…中間転写体ベルト、74−1〜4…転写帯電器、75…中間転写体ベルト駆動位置検出装置、76…レーザスキャナ走査装置、77…スクリーンジェネレータ、81…9入力4出力ニューラルネットワーク処理部、82…カラー階調補正部、83…3次元DLUT処理部、84…10入力4出力回帰式処理部。
【発明の属する技術分野】
本発明は、入力される色信号を画像形成装置の画像記録信号に色変換する画像処理に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、コンピュータの発達とネットワーク等の整備、また大容量の記憶媒体等の出現に加えてスキャナやデジタルカメラ等の普及に伴い、急速にデジタルの画像信号が広まっており、またこれらの画像信号を高画質でプリントアウトしたいという要求が高まってきている。これらデジタルの画像信号を高画質にプリントアウトするためには、入力される画像信号の色情報に忠実な色で出力することが重要である。これを実現するために、入力される色信号を画像形成装置の画像記録信号に変換する、いわゆる色変換処理が行われている。
【0003】
この色変換処理としては、一般的には後述する理由によりダイレクトルックアップテーブル(以後DLUTと表記する)が広く用いられている。DLUTは、入力値と、この入力信号に例えば所定の色変換係数を乗じるなどによって得た出力値との関係を、予めROM或いはRAMに記憶させたものである。このDLUTを用いることによって、実質的に演算時間を必要とせず、色変換処理を極めて高速に行うことができるという利点がある。それに加えて、原理的に入出力関係を自由に設定できるので、非線系性が高い入出力特性であっても高い色変換精度を得ることが出来るという利点がある。
【0004】
画像形成装置では、一般的に入力される色信号と画像記録信号の間の非線形性は非常に高い。そのため、上述のように高速処理が可能で、色変換精度の高いDLUTが広く利用されている。しかしながら、面内均一性が低い画像形成装置では、DLUTを用いて色変換処理を行っても、高い色変換精度を実現することは困難である。
【0005】
面内均一性が低い画像形成装置とは、面内において一定の画像記録信号を入力しても、用紙上の位置により色が異なってしまうような画像形成装置である。例えば、インクジェット方式と電子写真方式の画像形成装置において、A3サイズの用紙全面に中濃度のグレーを出力し、面内における測色値の平均値と各測定点の色差を求め、色差の平均値および最大値で面内均一性を評価すると、インクジェット方式では平均および最大値ともに色差は1以下であるのに対し、電子写真方式では平均で3〜5程度、最大で6〜10程度の色差が存在する。
【0006】
実際にDLUTを用いて色変換処理を行い、入力される色信号と出力の測色値との色差を用いて色変換精度を評価すると、面内均一性の高いインクジェット方式においては平均および最大値ともに色差は1以下と十分な精度が得られるのに対し、面内均一性の低い電子写真方式では平均で3〜5程度、最大で6〜10程度の色差が存在するために、十分に高い色変換精度が得られない。通常、色差が1以下であれば、色の差は並べて見ても知覚されない。しかし、5以上の色差があると、並べて見なくても色の差を感ずると言われており、電子写真方式で得られる色変換精度では、入力される色信号とプリントとの色差を容易に知覚できてしまう。
【0007】
DLUTの色変換パラメータを決定する際には、画像形成装置において色再現範囲全域の色のうち必要な色を出力し、測色計を用いて測色した値をDLUTの色変換パラメータとして設定する。しかし、面内均一性の低い画像形成装置においては、測色した色に誤差を生じるため、原理的に画像形成装置の面内均一性以上の色変換精度は得ることは不可能である。
【0008】
さらに、面内均一性の低い画像形成装置の色変換処理にDLUTを適用し、色変換精度を重視して色変換パラメータを決定すると、色変換パラメータにランダムな誤差を生じ、色変換特性の連続性が悪くなるといった問題がある。このように色変換特性の連続性が悪くなると、グラデーション画像を出力した場合に、擬似輪郭が発生してしまう。
【0009】
これらの問題を改善するために、例えば特開平11−261831号公報には、面内均一性の低い画像形成装置において生じる測色値の誤差を低減する技術が記載されている。すなわち、それぞれ3色の出力値を変えた組み合わせの複数のカラーパッチを持つ第1のカラーチャートおよび全面均一出力値を持つ第2のカラーチャートを出力し、この複数のカラーパッチおよび均一出力画像の色を測色する。これによって均一出力値画像の測色値から面内における色変動値が得られるので、この色変動値に基づいて複数のカラーパッチに含まれる画像形成装置固有の色変動を除去し、これらの複数のカラーパッチから色変動を除去した3次元DLUTを作成している。
【0010】
この方法では、DLUTの色変換パラメータ値の決定時において、画像形成装置の面内における色変動による誤差の影響を低減させることができるため、色変換精度を向上させ、擬似輪郭の発生を低減させることができる。しかしながら、この方法では面内における色変動による誤差の影響を原理的に零にできない。すなわち、DLUTの色変換パラメータ値については面内における色変動による誤差を考慮しているが、DLUTで色変換処理した出力色信号で実際に記録を行ったときの面内における色変動による誤差は発生する。そのため、色変換精度として色変動分の誤差が残ってしまうといった問題がある。
【0011】
図14は、従来技術の一例における問題点の説明図である。上述の問題を図14を用いて説明する。図14において縦軸および横軸は明度L* と用紙上の位置を示しており、用紙上に図14に示すような色変動が存在すると仮定する。用紙上の位置Aで色変換パラメータを決定したとすると、通常行われているように測定値をそのまま色変換パラメータとする方法では位置Aでの色差は0であり、位置Bでの色差は2△Lである。上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法を適用して色変換パラメータを決定したとすると、位置Aおよび位置Bにおける明度の平均値Laveに位置Aにおける測定値を修正した値を色変換パラメータとするわけであるから、位置Aおよび位置Bにおける色差はともに△Lとなる。したがって、測定値をそのまま色変換パラメータとする方法の平均色差は(0+2△L)/2=△Lおよび最大色差は2△Lである。また、上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法では、平均色差は(△L+△L)/2=△Lおよび最大色差△Lとなり、最大色差の低減には効果があるものの、平均色差を低減させる効果は期待できない。
【0012】
したがって、上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法では、面内に均一な画像を出力した場合に、画像形成装置の面内均一性に起因する色変動については補正されずにそのまま出力されてしまう。そのため、電子写真方式等の面内均一性の低い画像形成装置では、出力画像に色変動が色ムラとして知覚されてしまう。以上の理由から、上述の特開平11−261831号公報に記載されている方法では、高精度な色変換が実現できるとは言いがたい。
【0013】
このように従来の色変換処理では、DLUTに代表される高精度な色変換処理系を適用しても、面内均一性の低い画像形成装置では高い色変換精度を得ることができなかった。
【0014】
面内均一性の低い画像形成方式としては、先ほど示したように電子写真方式の画像形成装置が代表的なものである。電子写真方式の面内均一性を向上させる試みとしては、従来からいくつかの方法が提案されている。
【0015】
ここで、電子写真方式の面内均一性が低い要因としては、大きく2つの要因に分類することが可能である。1つは感光体や転写ベルト等の像担持体に画像を記録する際に、駆動系の振動や機械精度に起因して画像記録位置が所望の位置からずれる、いわゆるレジずれにより面内に発生する色変動である。もう1つは、下記に示す帯電、露光、現像および転写等の作像プロセスに起因して面内に発生する色変動である。
【0016】
このうちレジずれにより面内に発生する色変動に関しては、駆動系の機構および制御の最適化や、各色のスクリーン角を異ならせるローテーションスクリーンの採用および線数・ドット形状の最適化、さらには、像担持体上にレジずれ検出用のマークを作像し、これをセンサで検出することによってレジずれを測定し、測定されたレジずれ量に基づいて画像記録位置を補正するなどといった対策により、視覚上問題にならないレベルまで低減することが可能である。しかしながら帯電、露光、現像および転写等の作像プロセスに起因して面内に発生する色変動に関しては、下記に示すように決定的な解決方法の提案は行われていないため、視覚上問題とならないレベルまで色変動が低減されている電子写真方式の画像形成装置はいまだに実現されていない。
【0017】
ここで、電子写真方式の作像プロセスに起因して面内に発生する色変動について、特徴的なものについて説明する。複写機やプリンターとして一般的に利用されている電子写真方式の画像形成装置は、感光体を一様に帯電した後に画像部分を光走査装置により露光し、現像器で帯電させたトナーを静電気的に感光体に付着させることにより画像を形成している。一般的に感光体は、その帯電性や光感度に面内ムラがあり、均一の帯電、露光および現像を行っても、2次元的な場所によりその濃度にばらつきが生じるという問題がある。感光体の帯電性や光感度に面内ムラが発生してしまう原因としては、感光体の製法および構造上の問題が大きい。通常、感光体はアルミ等の導電性を有するパイプもしくはベルト上に有機感光材料等の感光材料を塗布することにより製造される。このとき塗布される感光材料の膜厚は数十ミクロンのオーダーであり、非常に薄い。感光体の帯電性や光感度は膜厚により大きな影響を受ける。従って、膜厚を均一に製造する必要があるが、そのためにはミクロンオーダーで精密に感光材料を塗布する必要があるため、感光体の高コスト化を招いてしまい現実的ではない。
【0018】
さらに、感光体に均一に帯電、露光および現像を行うことが難しいという問題がある。現像では現像ロールと感光体の間隔が一定でないと、現像に使用されるトナー量が異なってしまい、感光体に付着するトナー量にばらつきが生じてしまう。現像ロールと感光体の間隔は、通常、数百ミクロンのオーダーである。そのため、現像器および感光体を固定するフレームに高い機械的な精度および剛性が必要であり、画像形成装置の高コスト化および大型化を招いてしまうという問題がある。また、露光にレーザスキャナを用いる場合には、光走査装置と感光体の位置精度により、主走査方向で感光体上のビーム径が異なってしまい、主走査方向で感光体上の電位にムラを生じてしまう。
【0019】
加えて、カラー電子写真方式の画像形成装置では、感光体上に形成したトナー像を中間転写体ベルトもしくは転写ベルト上の記録紙に転写することにより画像を形成している。一般的に、転写ベルトの体積抵抗率はベルト面内において均一ではないので、2次元的な面内の場所により色変動が発生するといった問題がある。この転写ベルトに起因する色変動が発生してしまう原因としては、転写ベルトの製造プロセス上の問題により、転写ベルトの厚みをベルト1周にわたって均一に製造することが難しいことが挙げられる。また、転写ベルトの体積抵抗率を調整するために、ベースとなるポリイミド等のプラスティックにカーボンブラックを混合してベルトを製造するが、その際に、カーボンブラックがプラスティックに均一に分散しないため、転写ベルトの面内において体積抵抗率が一定となっていないことも挙げられる。
【0020】
このような製造上の問題によって、転写効率が転写ベルトの場所で異なってしまい、一定の転写電流を流したのでは、転写される画像濃度が変化して色変動が発生してしまう。特に転写効率の良い、つまり体積抵抗率の小さい転写ベルトにおいては、体積抵抗率をベルト一周にわたって均一にすることは製造上難しく、用紙上の2次元的な面内の場所により色変動が顕著に現れてしまうという欠点があった。転写ベルトの体積抵抗率を均一にするためには、転写ベルトの厚みをベルト1周にわたって均一に製造し、カーボンブラックをベースとなるプラスティックに均一に分散させる必要があるが、これは製造コストの高コスト化を招いてしまい、現実的ではない。
【0021】
このように電子写真方式の画像形成装置では、帯電、露光、現像および転写の作像プロセスにおいて面内における色変動を発生させる要因があり、それぞれの作像プロセスに起因する色変動の合成として、用紙上の画像には2次元的な面内の場所により色変動が発生してしまう。
【0022】
これに対し、例えば特開平6−135051号公報には、感光体上に形成した画像パターンを読み取ることにより、主走査方向と副走査方向のそれぞれについて1次元の濃度補正テーブルを算出し、画像信号を濃度補正テーブルで補正することにより、作像プロセスに起因する色変動の補正を行う画像処理装置が開示されている。このように主走査方向と副走査方向の1次元の濃度補正テーブルにより画像信号を補正する方法は、主走査方向および副走査方向に対して独立な1次元の発生原因に起因する色変動の補正には有効である。しかし、感光体や転写ベルト等の像担持体に起因する色変動は2次元の面内にわたってランダムに存在するので、1次元の補正のみでこのような2次元面内の色変動を補正することは原理的に不可能である。
【0023】
また、例えば特開平5−227396号公報には、用紙全面に一定濃度を有する画像を記録し、当該画像を読み取って算出した補正値を記憶し、原稿の画像を読み取って画像記録を行う際に、読み取った原稿の画像を補正値により補正して画像を出力することにより、面内における色変動の補正を行う画像処理装置が開示されている。
【0024】
通常、電子写真方式の画像形成装置では、その構成により、用紙と感光体および転写ベルト等の像担持体が同期するか否かについては異なる。用紙と像担持体が同期する代表的な例としては、1つの感光体上に各色のトナー画像を形成し、転写ドラム上の用紙にトナー画像を順次転写することによりカラー画像を形成する画像形成装置が挙げられる。この転写ドラムを用いる構成の場合では、レジずれを防止するために感光体と転写ドラムは同期して駆動されているため、用紙と像担持体である感光体および転写ドラムは完全に同期している。したがって、この例に代表されるように、感光体と転写ドラムが同期して駆動される画像形成装置では、用紙上の面内における色変動は再現性がある。
【0025】
これに対し、用紙と像担持体が同期しない代表的な例としては、複数の感光体にそれぞれ対応する色のトナー画像を形成し、中間転写体ベルト上にトナー画像を順次転写した後、一括して用紙上にトナー画像を転写することによりカラー画像を形成する画像形成装置が挙げられる。この中間転写体ベルトを用いる場合では、機械的な寸法誤差や動作上の誤差を吸収するために、感光体と中間転写体ベルトとの間にわずかな滑りを発生させているため、感光体と中間転写体ベルトは同期していない。通常は中間転写体ベルトの基準位置をセンサにより検出し、常に中間転写体ベルトの同じ位置に画像を転写させるように構成しているので、中間転写体ベルトと用紙は同期している。したがって、用紙および中間転写体ベルトと感光体が完全に同期していないため、この方式では用紙上の面内における色変動には再現性がない。
【0026】
したがって、上述の特開平5−227396号公報で提案されているような用紙全面に一定濃度を有する画像の出力から補正値を算出し、画像信号をこの補正値により補正する方法では、用紙と像担持体が同期している画像形成装置の2次元の面内における色変動の補正には有効であると考えられる、しかし、用紙と感光体および中間転写体ベルト等の像担持体が同期していない画像形成装置については、用紙と像担持体との相対的な位置により面内における色変動が変化してしまうので、このような面内における色変動を補正することはできない。
【0027】
さらに、上述の特開平6−135051号公報や特開平5−227396号公報に提案されている方法では、ある一定濃度の基準画像の濃度を測定することにより補正値を決定している。しかし、電子写真方式の階調性は非線形であり、濃度によって面内における色変動の発生量が異なる。そのため、これらの文献に記載されているように中濃度の画像により決定した補正値により補正処理を行うと、低濃度部や高濃度部で補正誤差を生じ、色変動が補正されなかったり、過補正による色変動が色ムラによる画像欠陥として生じてしまうといった問題がある。
【0028】
加えて、特開平6−135051号公報や特開平5−227396号公報に提案されている方法では、単色のトナーの測定によって補正値を決定している。これらの方式をカラー画像形成装置に適用することを考えると、各色に同じ補正量を施すことになる。しかし、電子写真方式でカラー画像を形成する際には多重転写を行う。この多重転写の非線形性によって、単色で決定した補正量では2次色以上のカラー画像では大きな補正誤差が生じてしまうという問題がある。
【0029】
多重転写による非線形性とは、例えばシアン(以下Cと表記する)、マゼンタ(以下Mと表記する)、イエロー(以下Yと表記する)の網点面積率50%で出力し、転写ベルト上にC、M、Yの順序で多重転写を行ってグレーを出力する場合を考えると、多重転写の非線形性により最初に転写されるCのトナー重量は単色の場合よりも多くなり、最後に転写されるYのトナー重量は単色の場合よりも少なくなるということである。この例では多重転写によるトナー重量の差は通常10%〜20%も存在するので、単色で決定した補正量では2次色以上で大きな補正誤差が生じてしまうのは明らかである。
【0030】
このように、従来の色変換処理では、DLUTに代表される高精度な色変換処理系を適用しても、電子写真方式のような面内均一性の低い画像形成装置では、面内における色変動による影響を完全に考慮することができないために、高い色変換精度が得られなかった。また、従来の色変換処理では、面内均一性の低い画像形成装置を用いて均一な画像を出力した際にも、面内における色変動による色ムラが画像欠陥として知覚されてしまっていた。
【0031】
電子写真方式において面内均一性を向上させるために、面内に一定濃度の画像を記録し、その測定値より画像信号を補正する方法が提案されているが、これらの技術では電子写真方式における階調特性および多重転写特性の非線形性や、像担持体と用紙との同期を考慮していないため、面内における色変動を原理的に完全に補正することは不可能であった。
【0032】
一方、帯電、現像および転写等の作像プロセスを改善することにより、面内均一性を向上させるためには、感光体や転写ベルト等の高コスト化、装置の大型化および高精度化が必要であり、現実的ではなかった。
【0033】
これらの課題を解決するために、特開2002−135610号公報に記載しているように、色変換処理において画像形成装置の面内における色変動を考慮することにより、色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても色再現性の高い高画質なプリントを得ることを可能とした。さらに、画像形成装置の面内における色変動を考慮した色変換処理により、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置において均一な画像を出力した際にも、色ムラの発生のない面内均一性の高いプリントを得ることを可能とした。
【0034】
この技術では、色変換処理に入力される入力色信号と、画像形成装置の画像記録信号によって像担持体上に画像が記録される位置を示す記録位置座標信号とを入力とし、画像形成装置の画像記録信号を出力とする演算手段により、入力色信号から画像記録信号への変換を行っている。演算手段としては、実時間処理を実現するためにn次元のルックアップテーブルで構成している。しかし、n次元のルックアップテーブルでは、入力色信号や像担持体の数が多い場合、ルックアップテーブルのメモリ容量が多くなり、メモリコストの観点からコスト高になってしまうという問題がある。また、テーブルメモリのロードに時間がかかり、処理系をソフトウェアで実現した場合に処理速度が低下するといった問題があった。
【0035】
例えば、白黒の画像形成装置で像担持体が同期している場合には、入力色信号が1つ、記録位置座標信号が2つであり、ルックアップテーブルは3次元となるため容易に実現することができる。しかし、CMYK4色のタンデム型の画像形成装置で、像担持体である4本の感光体と中間転写体が同期していない場合では、入力色信号がKを除く3つ、記録位置座標信号が6つであり、ルックアップテーブルは9次元にもなってしまう。ルックアップテーブルのメモリ容量は入力信号の分割数の次元数乗に比例するため、ルックアップテーブルの次元が多くなると急激にメモリ容量が増えてしまうという問題がある。先程示した3次元のルックアップテーブルの場合では、入力色信号と記録位置座標信号を16分割して、それぞれのアドレスに8ビット(=1バイト)で出力色信号を記録することを考えると、必要なメモリ容量は1×173 =4913バイトと少量のメモリで済む。しかし、9次元のルックアップテーブルで同じ分割数をCMYK4色で実現することを考えると、必要なメモリ容量は4×179 =474ギガバイトと膨大なメモリ容量が必要となる。そのため、コストおよび処理速度の観点から実現することが難しかった。
【0036】
メモリ容量を削減するためには、分割数を少なくすることが有効であるが、分割数を少なくするとルックアップテーブルの変換精度が悪化し、画質が劣化してしまうといった問題があった。
【0037】
このように、従来の色変換処理では、DLUTに代表される高精度な色変換処理系を適用しても、電子写真方式のような面内均一性の低い画像形成装置では、面内における色変動による影響を完全に考慮することができないために、高い色変換精度を得ることが不可能であった。また、従来の色変換処理では、面内均一性の低い画像形成装置を用いて均一な画像を出力した際にも、面内における色変動による色ムラが画像欠陥として知覚されてしまっていた。
【0038】
電子写真方式において面内均一性を向上させるために、面内に一定濃度の画像を記録し、その測定値より画像信号を補正する方法が提案されているが、これらの技術では電子写真方式における階調特性および多重転写特性の非線形性や、像担持体と用紙との同期を考慮していないため、面内における色変動を原理的に完全に補正することは不可能であった。
【0039】
一方、帯電、現像および転写等の作像プロセスを改善することにより、面内均一性を向上させるためには、感光体や転写ベルト等の高コスト化、装置の大型化および高精度化が必要であり、現実的ではなかった。
【0040】
さらに、上記従来技術の欠点を除くために、色変換処理において画像形成装置の面内における色変動を考慮することにより、色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性および面内均一性が高い高画質なプリントを得ることを可能にする画像処理装置が提案されているが、入力色信号および同期していない像担持体の数が多い場合では、ルックアップテーブルのメモリ容量が非常に多く必要となり、コストおよび処理速度の面で現実的ではなかった。
【0041】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、色変換処理において画像形成装置の面内における色変動を考慮した色変換処理を行う演算装置として、非線形変換特性に優れ、色変換に必要なパラメータが少ない演算装置を用いることにより、少ないコストで高速に色変換を実現し、色変換精度を大幅に向上させ、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性が高く、面内均一性の高い高画質なプリントを得ることを可能にすることを目的としている。
【0042】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理装置及び画像処理方法において、ニューラルネットワークまたは回帰式を用いることによって、第1の色信号を第2の色信号に変換することを特徴とするものである。このようなニューラルネットワークや回帰式は、従来のn次元ルックアップテーブルのみによって面内色変動を考慮した第1の色信号から第2の色信号への変換を行う場合に比べて、高次元の演算であっても格段にメモリ量を減少させることができる。また、画像形成装置が第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を用いて演算することによって、像担持体上の2次元の面内に発生する色変動を抑えることができるので、電子写真方式のように面内均一性が低い画像形成装置においても、色再現性が高く、面内均一性の高い高画質なプリントを得ることを可能にすることができる。
【0043】
また、n次元のルックアップテーブルと回帰式とを組み合わせて用いることも可能である。このn次元のルックアップテーブルと回帰式との組み合わせでは、回帰式の利用によってn次元ルックアップテーブルの次元を格段に低減することができ、やはりルックアップテーブルに要するメモリ量を格段に低減することが可能である。この場合、回帰式の演算の際に、画像形成装置が第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を用いて演算することによって、画像形成装置における面内の色変動を抑え、高画質のプリントを得ることができる。
【0044】
さらに、演算手段に保持している演算パラメータの値を更新する演算パラメータ修正手段を設けておくことができる。これによって、例えば画像形成装置の像担持体の交換や経時変化、各種の画像形成条件等が変動した場合でも対応することが可能となる。
【0045】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の原理的な説明を行う。面内における色変動が存在する画像形成装置において、入力される色を忠実に再現することを考えると、一般に色変動の原因となる作像プロセスに関連する像担持体上の記録位置座標を考慮すれば、そのときの画像形成装置の画像記録信号は唯一に決定される。このことを、1変数の色信号および1次元の記録位置座標の場合を例にして、上述の図14を使って模式的に説明する。図14は、面内均一性が低い画像形成装置において、一定の画像記録信号Cを出力したときの、用紙上の位置Xにおける明度L* の測定値を示したものであった。このように出力される色(明度L* )は、画像記録信号Cと画像の記録位置座標Xにより、次式によって表すことができる。
L* =f(C,X) …(1)
【0046】
ここで(1)式より、明度L* と記録位置座標Xを指定することにより、そのときの画像記録信号Cは唯一の値に決定されることは明らかである。すなわち、色変換処理において、入力する色(明度L* )に加えて、入力画像の記録位置座標Xを考慮すれば、記録位置座標における色差のない画像記録信号Cを決定することができる。例えば位置Aと位置Bとで同じ明度L1* とするのであれば、
L1* =f(CA ,A)
L1* =f(CB ,B)
から位置Aにおける画像記録信号CA と位置Bにおける画像記録信号CB を求めればよい。得られた画像記録信号は同じ明度L1* に対して異なる色を記録する信号であるが、面内の色変化によって用紙上に記録された色は位置Aと位置Bで同じ明度となる。従って、この場合の色差を評価すると、図14中の位置Aおび位置Bにおける色差はどちらも0となり、平均色差も最大色差も0となり、原理上、色変換誤差が全く発生しないことがわかる。また、このように入力画像の記録位置座標を考慮して色変換処理を行えば、均一な画像を出力しても、面内における色変動が補正され、色ムラによる画像欠陥の発生が防止できるのがわかる。
【0047】
これは、入力される色信号や記録位置座標が多次元になっても同様であり、複数の同期していない像担持体に起因する色変動がある場合でも、入力の色信号と複数の像担持体上の記録位置座標から、入力画像の記録位置座標における色差が発生しない画像記録信号が決定されるのは明らかである。
【0048】
これに対して従来の色変換処理においては、記録位置座標Xを考慮せず、次式の関数関係より色変換特性を決定して色変換処理を行っていた。
L* =g(C) …(2)
色変換特性を決定する際には、(2)式において、明度L* を指定することにより決定される画像記録信号Cを求めることにより、入力色信号から画像記録信号への変換特性を決定していた。ここで、画像記録信号Cと明度L* の関数関係gを位置Aで決定したと仮定すると、位置Aにおける色差は0であるが、図14よりわかるように位置Bにおける色差は2ΔLとなる。従って従来の色変換処理では、平均色差がΔL、最大色差が2ΔLとなり、原理的に面内における色変動分の色変換誤差が発生してしまい、面内における色変動も補正することができなかった。
【0049】
また従来の面内ムラ補正処理においては、入力色信号L* を考慮せず、記録位置座標Xのみを考慮して、一定の画像記録信号Cを出力した時に求まる次式の関数関係より、画像記録信号の補正量を決定して面内ムラの補正を行っていた。
ΔL=h(X) …(3)
ここでΔLは面内における平均色L* aveとの差分であり、ΔLを(2)式に入力することにより、画像記録信号Cの記録位置座標Xに対する補正量ΔCを求めることができる。このような構成をとることにより、画像記録信号Cを出力したときのL* は図14におけるL* aveとなり、面内ムラのない均一な画像を得ることが可能である。しかしながら、電子写真方式の画像形成装置のように階調特性や多重転写特性の非線形性が高い場合においては、画像記録信号Cが異なる場合に面内ムラの量が変化するため、ある一定の画像記録信号Cで決定した補正量ΔCでは、補正量を決定した画像記録信号以外では面内ムラを補正できなかったり、過補正のため濃度ムラが発生する場合があった。
【0050】
さらに従来の面内ムラ補正処理においては、記録位置座標Xは用紙上の記録位置であったため、複数の像担持体を使用する画像形成装置においてそれらの像担持体が同期しない場合では、用紙と像坦持体との相対的な位置により面内における色変動が変化してしまう。そのため、面内における色変動を補正することはできなかった。
【0051】
本発明においては、上述のように、入力色信号と像担持体上の画像の2次元的な記録位置座標の両方から、画像形成装置の画像記録信号に変換するように構成することにより、原理的に面内における色変動を補正し、高精度な色変換を実現することができる。
【0052】
図1は、本発明の第1の実施の形態を含む画像出力システムの一例を示すブロック図である。図中、1は画像入力装置、2は画像処理装置、3は画像形成装置、11は演算部、12は演算パラメータ修正部である。この第1の実施の形態は、単色の画像形成装置3に適用した例を示している。本発明の画像処理装置2は、画像入力装置1及び画像形成装置3に接続されて、画像出力システムを構成している。
【0053】
画像入力装置1は、外部から各種フォーマットの単色画像を取り込んで、この例では、機器独立色信号であるCIEL* a* b* 色空間の明度L* 信号からなる画像信号と、その画像信号に対応する画像を形成する用紙上の1次元座標上の記録位置座標信号xを出力するものである。ここで用紙上の1次元座標は、後述するように画像形成装置3内のレーザスキャナ走査装置30の主走査方向の記録位置座標である。これは、画像信号の位置座標と一致するので、ここでは画像入力装置1から記録位置座標信号xを画像処理装置2に入力している。また、画像入力装置1からの入力色信号は、最も一般的には機器独立色信号である明度L* 信号であるが、これに限るものでなく、機器独立ではない画像入力装置固有の濃度もしくは明度または網点面積率を表す信号でも構わない。
【0054】
具体的に、画像入力装置1は、銀塩写真フィルムや反射原稿を、CCDセンサによってL* 信号として読み取り、またはネットワーク上に接続された機器から送信されたイメージ情報をL* 信号に変換して、そのL* 信号の用紙上における主走査方向の記録位置座標信号xとともに、それぞれ画像処理装置2に転送する機能を有するものとして構成することができる。あるいは、画像入力装置1は、パソコン上のアプリケーションおよびプリンタドライバにより作成されたページ記述言語による電子原稿を、L* のラスター信号にラスタライズして、そのL* 信号の用紙上における主走査方向の記録位置座標信号xとともに、画像処理装置2に信号を転送するものとして構成してもよい。
【0055】
画像処理装置2は、全体として、演算部11および演算パラメータ修正部12によって構成されている。演算部11は、画像入力装置1から入力される明度L* 信号および用紙上の主走査方向の記録位座標信号xと、後述する画像形成装置3からの感光体ドラム21上の副走査方向の記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号yとに従い、画像形成装置3中の感光体ドラム21上の作像プロセスに起因する色変動を考慮して、L* 信号から画像形成装置3の画像記録信号Kに変換する。ここで画像記録信号Kは、画像形成装置3のブラックの網点面積率を表す信号である。もちろん、このような機器独立ではない画像形成装置3のブラックの色空間のほか、単色の色空間であれば他の色空間でもよい。さらに、演算パラメータ修正部12は、演算部11における演算パラメータを適宜修正する。
【0056】
画像形成装置3は、画像処理装置2から転送されてくる画像記録信号Kに従って用紙上に画像を形成する。図2は、画像形成装置3の一構成例を示す概略構成図である。図中、21は感光体ドラム、22は感光体ドラムエンコーダ、23は静電潜像形成用帯電器、24は現像器、25は用紙搬送装置、26は転写帯電器、27はクリーニング装置、28は前露光器、29は定着装置、30はレーザスキャナ走査装置、31はスクリーンジェネレータ、32は用紙トレイ、33は給紙装置である。像担持体である感光体ドラム21は、静電潜像形成用帯電器23により帯電される。また、画像処理装置2から転送された画像記録信号Kがスクリーンジェネレータ31によりパルス幅変調され、レーザスキャナ走査装置30によりレーザ光を感光体ドラム21上に水平走査する。感光体ドラム21上に照射されたレーザ光によって、静電潜像が形成される。ここでは、感光体ドラム21は用紙と同期していないため、入力画像記録信号の感光体ドラム21上の記録位置座標を特定するために、感光体ドラムエンコーダ22により感光体ドラム21の回転角が計測され、計測された回転角信号yが画像処理装置2に転送される。静電潜像が形成された感光体ドラム21はさらに回転し、現像器24によりブラックのトナーで静電潜像が現像される。
【0057】
一方、画像が記録される転写紙は、用紙トレイ32から給紙装置33によって用紙搬送装置25上に送られ、さらに感光体ドラム21上に現像された画像は、転写帯電器26により背面からコロナ放電を与えることにより転写紙上に転写される。転写された画像を保持した転写紙は定着装置29に送られ、ここでトナー画像が加熱溶融されて転写紙に固着することにより、最終的な定着画像が得られる。一方、感光体ドラム21はクリーニング装置27によってクリーニングされ、前露光器28によって再使用のための準備がなされる。
【0058】
感光体ドラム21としては、各種無機感光体(Se、a−Si、a−SiC、CdS等)の他に、各種有機感光体を用いることができる。トナーはカーボンを含有した熱可塑性のバインダで構成され、公知の材料を用いることができる。一例としては、重量平均分子量54000、軟化点113℃、平均粒径7μmのポリエステルトナーを用いることができる。また、記録媒体上のトナー量は、およそ0.4mg/cm2 〜0.7mg/cm2 になるように露光条件または現像条件が設定される。例えば0.65mg/cm2 に設定するとよい。記録媒体としての転写紙には、富士ゼロックス(株)製J紙を用いることができる。もちろん他の記録媒体を用いてもよい。また、定着装置29内の定着ドラムとしては、金属ロール、または、金属ロールにシリコンゴム等の耐熱弾性層を有した加熱ロールを用いることができる。加熱ロールの内部には熱源が配置され、その設定温度はトナーの熱溶融特性によって決定するが、加熱ロールの設定温度がトナーの軟化点より高くなるように温度設定を行う。例えば加熱ロールは160°Cに設定しておくことができる。
【0059】
上述のような形式の画像形成装置3では、像担持体である感光体ドラム21上で帯電、露光および現像のすべての作像プロセスが行われるため、感光体ドラム21上の2次元的な位置により、再現性のある面内における色変動が発生する。上述の画像形成装置3では、用紙と像担持体である感光体ドラム21は同期していないので、用紙上の色変動のパターンには再現性がないが、感光体ドラム21上の所定の2次元的な位置による色変動の発生には再現性がある。従って、画像記録信号の感光体ドラム21上の2次元の記録位置座標(x,y)を考慮すれば、面内における色変動の補正と高精度な色変換は実現可能である。この感光体ドラム21上の2次元の記録位置(x,y)について、図1に示した構成例では、主走査方向の記録位置座標xについては用紙上の主走査方向の記録位置座標と同じなので画像入力装置1により指定される信号を用い、副走査方向の記録位置座標yについては感光体ドラム21の回転角信号yのみを計測している。
【0060】
ここでは画像形成装置3として、一般的な白黒の電子写真方式を適用したが、画像形成装置3をこれに限定するものでなく、1変数の色空間で記録を行い、単数の像担持体上に画像を形成するものであればどのようなものでもよい。例えば、像担持体として感光体ドラムを用いずに、ベルト感光体を使用する方式でもよい。また、画像形成装置3としては、電子写真方式に限るものではなく、どのような画像形成装置でもよい。例えば印刷、インクジェット方式、熱転写方式および銀塩写真方式などの画像形成装置において、面内における色変動の発生が像担持体上における入力画像の記録位置座標により再現性がある画像形成装置であればどのような画像形成装置にも本発明を適用することができる。
【0061】
次に、画像処理装置2についてさらに説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。図中、41は3入力1出力ニューラルネットワーク処理部、42は階調補正部である。3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41には、画像入力装置1から入力される明度信号L* と用紙上の主走査方向における記録位置座標信号xと、画像形成装置3の感光体ドラムエンコーダ22が出力する画像記録信号Kの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置座標を表す回転角信号yが入力される。そして、これらの入力信号に従い、後述する演算パラメータに基づく3入力1出力のニューラルネットワークによる演算処理を行って、入力された明度信号L* を明度線形信号K’に変換し、階調補正手段212に明度線形信号K’を転送する。明度線形信号K’は、画像形成装置3の画像記録信号Kを明度線形変換した色空間の信号である。なお演算パラメータ修正部12は、後述する方法により、この3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータを修正する。
【0062】
階調補正部42は、1次元のルックアップテーブル(以下LUTと表記する)を用いて、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41より入力される明度線形信号K’を画像形成装置3の画像記録信号Kに変換し、画像形成装置3のスクリーンジェネレータ31に画像記録信号Kを転送する。この階調補正部42における1次元のLUTは公知の方法により決定することが可能である。
【0063】
この例では、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41において画像形成装置3の画像記録信号Kを明度線形変換した色空間の明度線形信号K’信号に変換した後、階調補正部42では、1次元のLUTにより明度線形信号K’から画像形成装置3の画像記録信号Kへの変換を行っている。これは、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の入出力を明度L* について線形にすることにより、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41での補正処理精度を向上させるための構成である。
【0064】
上述の例においては、階調補正部42を1次元のLUTで構成したが、1入力1出力の非線形変換が行えるものであればどのような処理方法を用いてもよい。また、階調補正部42を設けず、(L* ,x,y)信号から画像記録信号Kを3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41により直接求めるように構成してもよい。
【0065】
さらに3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41について説明する。3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41は、公知のニューラルネットワークを用いて3入力1出力の非線形変換を実現するものである。電子写真方式による非線形性の高い画像形成装置の色変換処理にニューラルネットワークを適用した例として、例えば村井和昌,電子写真学会誌,第35巻,第2号,pp.125−129(1996)が知られている。この文献によれば、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークを色変換処理として用いると、画像形成装置が非線形性の高い電子写真方式であっても、良好な色変換精度が得られることが示されている。
【0066】
図4は、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部の一例の説明図である。図4には、3入力1出力のニューラルネットワークの例として、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークにおいて、中間層の細胞数を3個としたものについて示している。図4において、白丸はニューラルネットワークの細胞を、黒丸は定数項を表している。
【0067】
図4に示したニューラルネットワークでは、演算に必要な結合加重は43個であり、結合加重を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合、必要なメモリ容量は43×8=344バイトと非常に容量が少ない。同様の演算を従来技術のn次元ルックアップテーブルで実現する場合を考えると、3入力1出力のルックアップテーブルにおいて、入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録するとすれば、必要なメモリ容量は1×173 =4913バイトとなる。両者のメモリ容量を比較すれば、従来のn次元ルックアップテーブルでは、本発明のニューラルネットワークに比べて約14倍のメモリ容量が必要になることがわかる。このように、本発明においてニューラルネットワークを用いたことによって、メモリ容量を従来の1/14程度まで削減することができる。
【0068】
ここでは中間層の細胞数を3個としてニューラルネットワークを構成した例を示したが、ニューラルネットワークの中間層の細胞数については、3個に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて適宜変更してもよい。すなわち、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41に要求される変換特性の非線形性が高い場合は、細胞数を増加させればよい。
【0069】
また、この例においては、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41に、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークを用いたが、ニューラルネットワークの細胞間の接続や層数についてもこの例の値に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて変更してもよい。
【0070】
さらに、用紙上の色変動として主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの方向の色変動が問題にならないレベルである場合は、演算部11への入力は主走査方向xもしくは副走査方向yのいずれかの信号のみでよい。このような場合は、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41は2入力1出力の変換処理を行えばよいので、2入力1出力のニューラルネットワークを用いて、公知のニューラルネットワークにより演算処理を行うように構成すればよい。
【0071】
図5は、本発明の第1の実施の形態における演算パラメータ修正部12による3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャート、図6は、同じく画像形成装置で出力するパッチ画像の一例の説明図である。まずS101では、画像形成装置3で、画像記録信号Kの任意の値に対するパッチを、例えば図6に示すように用紙上の任意の位置でプリントアウトし、それぞれのパッチを記録した時の感光体ドラム21の回転角yを測定し記憶しておく。なお、図6に示すパッチ画像の一例においては、図示の都合上、濃度の違いを異なる種類及び間隔のハッチングによって示している。
【0072】
パッチ画像としては、ここでは上述のように用紙上での主走査方向および副走査方向の分割数を10mm間隔で決定するものとし、パッチの主走査方向および副走査方向の間隔を10mm間隔として用紙全面に出力した。パッチの網点面積率は0%から100%まで10%刻みで出力し、用紙上にランダムに配置するように出力している。もちろん、各パッチの配置位置は図6に示した例に限られるものではない。
【0073】
S102では、図示しない色彩計により、出力したパッチの明度L* を測定する。色彩計としては、例えばX−Rite社のDTP−51を使用することができる。色彩計はこのような市販の色彩計ではなく、フラットベッド型のスキャナを用い、得られる画像信号から明度L* を決定するようにしてもよい。
【0074】
S103では、それぞれのパッチの明度L* の測定結果、画像記録信号K、主走査方向の記録位置座標xおよび感光体ドラム21の回転角yの測定結果より、(L* ,x,y)とKの対応表を作成する。
【0075】
S104では、階調補正部42の逆特性LUTにより画像記録信号Kから明度線形信号K’を算出し、対応表の画像記録信号Kの値を明度線形信号K’に修正する。
【0076】
S105では、(L* ,x,y)とK’の対応表を教示データとし、3入力1出力のニューラルネットワークをバックプロバケーションにより学習を行うことにより、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータである結合加重を決定する。
【0077】
このように演算パラメータ修正部12によって演算パラメータを決定して、演算部11の演算パラメータ(結合加重)を修正することにより、異なる画像形成装置に対応可能とし、また同じ画像形成装置であっても像担持体を交換した場合などのように内部状態の変更などにも対応することができるようになる。一般に、感光体や転写ベルト等の像担持体は、繰り返し使用すると性能が劣化することにより、交換が必要となる。しかし、像担持体の濃度特性のムラはそれぞれの像担持体ごとに異なっている。これに対応するため、本発明では演算パラメータ修正部12によって、演算部11において演算に用いる演算パラメータを更新することができ、交換後の像担持体の特性に対応した適切な色変換処理および面内における色変動の補正を行うことができる。また、像担持体の交換以外にも、現像条件、潜像の形成条件等が変動した場合にも対応することが可能である。
【0078】
このように面内における色変動が存在する画像形成装置であっても、色変動を発生する原因となる像担持体上の記録位置座標を考慮して、画像記録信号と色信号の関係を決定することにより、入力となる色が与えられた場合に、それに正確に一致する色を出力するための画像記録信号を決定することができる。このような色変換処理により決定した画像記録信号を用いて画像形成装置で出力を行うことにより、用紙上での色変動による色ムラの発生を防止し、入力される色信号に一致した色を出力することが可能である。さらに、ニューラルネットワークで色変換処理系を構成しているので、例えば従来技術であるn次元ルックアップテーブルに比べて、演算に必要なメモリ容量を大幅に削減し、画像処理装置の低コスト化を実現することが可能となった。
【0079】
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例について説明する。この変形例では、上述の演算部11において、回帰式を用いた演算を行う例を示している。なお、この変形例を含む画像出力システム全体の構成は図1と同様であり、図示及び説明を省略する。
【0080】
図7は、本発明の第1の実施の形態の変形例における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。図中、図3と同様の部分には同じ符号を付して重複する説明を省略する。43は3入力1出力回帰式処理部である。上述の例において用いたニューラルネットワークと同様に、回帰式を用いても、任意の非線形変換特性を近似することが可能である。この変形例においては、演算部11中に3入力1出力回帰式処理部43を設けている。
【0081】
3入力1出力回帰式処理部43には、画像入力装置1から入力される明度信号L* と用紙上の主走査方向における記録位置座標信号xと、画像形成装置3の感光体ドラムエンコーダ22が出力する画像記録信号Kの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置座標を表す回転角信号yが入力される。そして、これらの入力信号に従い、演算パラメータに基づく3入力1出力の回帰式による演算処理を行って、入力された明度信号L* を明度線形信号K’に変換し、階調補正手段212に明度線形信号K’を転送する。明度線形信号K’は、上述の例と同様である。
【0082】
3入力1出力回帰式処理部43は、例えば、次式に示す3次の重回帰多項式を用いることができる。
K’=a1L*3+a2L*2+a3L*+a4x3+a5x2+a6x+a7y3+a8y2+a9y+a10L*x+a11L*y+a12xy+a13 …(4)
(4)式に示した3次の重回帰多項式では、演算に必要な回帰係数は13個であり、回帰係数を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合、必要なメモリ容量は13×8=104バイトである。このメモリ容量は、上述の例で用いたニューラルネットワークに比べても少ない。また、演算数もニューラルネットワークに比べて少ないので、処理系をソフトウェアで実現した場合、処理の高速化を図ることができる。
【0083】
この例においては、3入力1出力回帰式処理部43に3次の重回帰多項式を用いたが、回帰式の形式はこれに限られるものではない。具体的には、非線形性の高い入出力特性が要求される場合では、重回帰多項式の次数を上げたり、変数を増やせばよい。
【0084】
演算パラメータ修正部12において3入力1出力回帰式処理部43の演算パラメータ、すなわちこの例では(4)式の回帰係数を決定する方法としては、上述の例において説明した、図5に示した決定方法とほぼ同様である。すなわち、図5において、S101〜S104まではニューラルネットワークの場合と同様に(L* ,x,y)とK’の対応表を作成し、(L* ,x,y)を説明変数、K’を目的変数として、(4)式の回帰係数を最小二乗法等の数値解法を用いることにより、決定することができる。
【0085】
演算部11に回帰式を用いる場合では、ニューラルネットワークを用いる場合に比べて、要求される入出力特性の非線形性が高い場合に色変換精度が悪くなるといった問題点がある。しかし、電子写真方式の画像形成装置においては、現像器と感光体の間隔が一定でないことに起因する色変動では主走査方向に線形に濃度が変化し、レーザスキャナの光量ムラに起因する色変動では主走査方向に中央部に比べて周辺部の濃度が低下するなど、3次以下の多項式で予測可能な色変動である。このような色変動の補正には、回帰式で色変換処理を行っても、十分高い色変換精度で色変動の補正を実現することが可能である。もちろん、画像処理系のコストおよび処理速度と、色変換精度および色変動の補正効果をトレードオフして、処理系を選択してもよい。
【0086】
本発明の第1の実施の形態及びその変形例における効果を確認するために、演算部11で入力画像の記録位置座標を考慮した色変換処理を行った場合と、記録位置座標を考慮しない通常の色変換処理を行った場合の色変換精度を評価した。ここで、入力画像の記録位置座標を考慮しない通常の色変換処理の場合としては、3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41あるいは3入力1出力回帰式処理部43での処理をバイパスし、明度L* を階調補正部42に入力した。
【0087】
比較する画像として網点面積率10%〜100%のブラックをA3用紙全面に出力し、面内の任意の100点の明度L* を測定し、面内で平均したL* からの各点での色差の平均値を比較した。その結果、入力画像の記録位置座標を考慮しない通常の色変換処理を行った場合の平均色差が5程度であったのに対し、本発明の演算部11にニューラルネットワークを使用した場合では平均色差1以下と色変換精度が大幅に改善され、色変換精度の高いプリントを得ることが可能になった。また、入力画像の記録位置に対する色差の発生がないので、均一な画像を出力した場合でも、視覚的にも全く問題とならないレベルまで色ムラを低減させることができた。さらに、演算部11に回帰式を用いた場合では、平均色差3以下となり、ニューラルネットワークには劣るが、色変換精度が改善され、色ムラを低減させることができた。
【0088】
このように、本発明の第1の実施の形態及びその変形例では、画像入力装置1から入力される色信号L* と、画像記録信号Kの像担持体上の記録位置座標を表す用紙上の主走査方向における記録位置座標信号xと、感光体ドラムの回転角信号yから、3入力1出力のニューラルネットワークもしくは3入力1出力の回帰式により画像形成装置3の画像記録信号Kを算出するように構成した。これにより、電子写真方式の画像形成装置3において、感光体の感度ムラに代表される種々の原因に起因して用紙上の2次元の面内に発生する色変動がある場合でも、記録位置における色差を防止し、色変換精度の高い色変換処理を実現することが可能になった。また、均一な画像を出力した際にも、画質欠陥としての色ムラの発生を防止することができ、面内均一性が高い画像を得ることが可能となった。
【0089】
加えて、演算部11の演算パラメータを定期的に修正することにより、経時的な変化や像担持体の交換により面内における色変動特性が変化した場合においても、適切な色変換処理および面内における色変動の補正を行うことが可能となった。
【0090】
図8は、本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。図中、4はカラー画像入力装置、5はカラー画像処理装置、6はカラー画像形成装置、51はカラー演算部、52はカラー演算パラメータ修正部である。この第2の実施の形態では、複数の像担持体が用紙と同期していないフルカラーの画像形成装置に適用する場合の例を示している。カラー画像処理装置5は、カラー画像入力装置4及びカラー画像形成装置6とともにカラー画像出力システムを構成している。
【0091】
カラー画像入力装置4は、外部から各種フォーマットのカラー画像を取り込んで、例えは、機器独立色信号であるCIEL* a* b* 色空間の画像信号と、その画像信号に対応する画像を形成する用紙上の1次元座標上の記録位置座標信号xを出力する。ここで、用紙上の1次元座標は、後述するカラー画像形成装置6におけるレーザスキャナ走査装置76の主走査方向の記録位置座標である。
【0092】
具体的に、カラー画像入力装置4は、銀塩写真フィルムや反射原稿を、CCDセンサによってL* a* b* 信号として読み取り、またはネットワーク上に接続された機器から送信されたイメージ情報をL* a* b* 信号に変換して、そのL* a* b* 信号の用紙上の主走査方向の記録位置座標信号xとともに、それぞれカラー画像処理装置5に転送する機能を有するものである。あるいはカラー画像入力装置4は、パソコン上のアプリケーションおよびプリンタドライバにより作成されたページ記述言語による電子原稿をL* a* b* 信号のラスター信号にラスタライズして、そのL* a* b* 信号の用紙上の主走査方向の記録位置座標信号xとともに、カラー画像処理装置5に信号を転送するものであってもよい。
【0093】
カラー画像入力装置4からカラー画像処理装置5に転送される色信号は、カラー情報を表す3変数以上の色信号であり、最も一般的には機器独立色信号であるCIEL* a* b* 色空間である。しかし、これに限られるものではなく、RGB色空間あるいはその標準色空間であるsRGB色空間や、CMYK色空間での日本での標準色空間であるJapan Colorおよびアメリカ合衆国での標準色空間であるSWOPや、機器独立ではない画像入力装置固有のRGB色空間およびCMYK色空間等の他の色空間でもかまわない。
【0094】
カラー画像処理装置5は、全体として、カラー演算部51およびカラー演算パラメータ修正部52によって構成されている。カラー演算部11には、カラー画像入力装置4から転送されてくる色信号L* a* b* および用紙上の主走査方向の記録位置座標信号xと、後述するカラー画像形成装置6の4本の感光体ドラム61−1〜4上の副走査方向における記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号(y1,y2,y3,y4)と、後述する中間転写体ベルト73上の副走査方向の記録位置座標を表す中間転写体ベルトの駆動位置信号y5が入力される。そしてこれらの信号に基づいて、カラー画像入力装置4から入力されたL* a* b* 信号を、後述するカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKに変換する。ここで、画像記録信号CMYKは、カラー画像形成装置6でのCMYKそれぞれの網点面積率を表す信号である。もちろん、ブラックを含まないCMY色空間や他の色空間における信号に変換してもよい。このような変換によって、カラー画像形成装置6の感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73上の作像プロセスに起因する面内の色変動を考慮して、入力色信号L* a* b* からカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKへの変換を行うことができる。また、カラー演算パラメータ修正部52は、カラー演算部51における演算パラメータを適宜修正する。
【0095】
カラー画像形成装置6は、カラー演算部51から転送されてくる画像記録信号CMYKに従って用紙上に画像を形成する。なお、カラー画像形成装置6の色空間として、ここでは機器独立ではないカラー画像形成装置の記録信号であるCMYK色空間の場合を示すが、ブラックを含まないCMY色空間や他の色空間でもよい。
【0096】
図9は、カラー画像形成装置6の一構成例を示す概略構成図である。図中、61−1〜4は感光体ドラム、62−1〜4は感光体ドラムエンコーダ、63,64は加熱ロール、65は冷却装置、66−1〜4はローラ、67は用紙トレイ、68は給紙装置、69は巻回機構、70−1,2はピンロール、71−1〜4は現像器、72−1〜4は静電潜像形成用帯電器、73は中間転写体ベルト、74−1〜4は転写帯電器、75は中間転写体ベルト駆動位置検出装置、76はレーザスキャナ走査装置、77はスクリーンジェネレータである。
【0097】
中間転写体ベルト73は、ローラ66−1〜4および加熱ロール63により支持されて矢印方向に回転を行う。加熱ロール63には、加熱ロール64が対向して配置されている。中間転写体ベルト73の周辺に配置されている4つの感光体ドラム61−1〜4がそれぞれ静電潜像形成用帯電器72−1〜4により一様に帯電される。そして、カラー画像処理装置5より転送されたCMYK4色の画像記録信号は、スクリーンジェネレータ77によりパルス幅変調したレーザ光としてレーザスキャナ走査装置76により水平走査され、4つの感光体61−1〜4上に照射されて静電潜像を形成する。
【0098】
次にその静電潜像が形成された4つの感光体61−1〜4上に、ブラック現像器71−1、イエロー現像器71−2、マゼンタ現像器71−3およびシアン現像器71−4により、それぞれブラック、イエロー、マゼンタおよびシアン色のトナー像が形成される。このトナー像は、順次、転写帯電器74−1〜4により中間転写体ベルト73へ転写され、中間転写体ベルト73上に複数色のトナー像が形成される。
【0099】
感光体ドラム61−1〜4はそれぞれ独立に駆動されており、それぞれの感光体ドラムと用紙は同期していない。それぞれの感光体ドラム上の副走査方向の記録位置を特定するために、それぞれの感光体ドラムの駆動系に取り付けられた感光体ドラムエンコーダ62−1〜4によって、それぞれの感光体ドラムの回転角信号(y1,y2,y3,y4)が計測されて、画像処理装置2に転送される。
【0100】
中間転写体ベルト73については、感光体ドラム61−1〜4とは独立に駆動されているが、用紙と同期するように駆動されており、中間転写体ベルト上の副走査方向の記録位置を特定するために、中間転写体ベルト駆動位置検出装置75により、中間転写体ベルト73の副走査方向の駆動位置信号y5が検出されて、カラー画像処理装置5に転送される。
【0101】
その後、用紙トレイ67から給紙装置68によって送紙された記録紙は巻回機構69に取り付けられたピンロール70−1,2によって加熱ロール64に巻回されながら加熱された後、中間転写体ベルト73と密着した状態で加熱ロール63および加熱ロール64によって加圧加熱される。
【0102】
加熱ロール63および加熱ロール64によって加圧加熱された中間転写体ベルト73および記録紙は、密着したまま移動し、冷却装置65により冷却される。これによりトナーは凝集固化し、記録紙との強い接着力を生じる。その後、小径のロール66−1において、記録紙は記録紙自体の腰の強さによって中間転写体ベルト73からトナーとともに分離され、トナーが記録紙上に転写及び定着されることによりカラー画像が形成される。
【0103】
感光体ドラム61−1〜4としては、各種無機感光体(Se,a−Si,a−SiC,CdS等)の他に、各種有機感光体を用いることができる。トナーはイエロー、マゼンタ、シアン等の色素を含有した熱可塑性のバインダで構成され、公知の材料を用いることができる。例えば、重量平均分子量54000、軟化点113℃、平均粒径7μmのポリエステルトナーなどを用いることができる。また、各色の記録媒体上のトナー量は、その色素の含有量によりおよそ0.4mg/cm2 〜0.7mg/cm2 になるように前記露光条件または現像条件が設定するとよく、例えば各色0.65mg/cm2 に設定することができる。記録媒体は、普通紙として例えば富士ゼロックス(株)製J紙を用いることができる。また、表面平滑紙としては例えば富士ゼロックス(株)製Jコート紙を用いることができる。もちろん、他の記録媒体を用いることも可能である。
【0104】
中間転写体ベルト73は、例えばベース層と表面層の2層構造のものを用いることができる。ベース層は、カーボンブラックを添加した厚さ70μmのポリイミドフィルムを用いることができる。体積抵抗率はカーボンブラックの添加量を変化させ、例えば1010Ωcm程度に調整すればよい。なお、ベース層としては、例えば厚さ10〜300μmの耐熱性の高いシート等を使用することが可能であり、ポリエステル、ホリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリアミドなどのポリマーシート等を用いることが可能である。また、表面層は、トナー像を感光体ドラムから中間転写体ベルト73に静電的に画像の乱れなく転写するために、一例として、その体積抵抗率を1014Ωcm程度に調整し、また、中間転写体ベルト73から紙への同時転写定着を行うときに、トナー像を挟み中間転写体ベルトと記録媒体の密着を良くするために、ゴム硬度40度、厚さ50μmのシリコン共重合体を用いるとよい。シリコン共重合体は、その表面が常温でトナーに対して粘着性を示し、さらに、記録媒体へトナーを効率的に移行させるために、溶融して流動化したトナーを離しやすくする特性を有しているため、表面層には最適である。なお、表面層は、例えば厚さ1〜100μmの離型性の高い樹脂層を使用することが可能であり、例えばテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることが可能である。
【0105】
また、加熱ロール63,64としては、金属ロール、または、金属ロールにシリコンゴム等の耐熱弾性層を有したものを用いることができる。加熱ロール63,64の内部には熱源が配置され、その設定温度はトナーおよび記録紙表面の熱可塑性樹脂層の熱溶融特性によって決定するが、トナー軟化点の温度の方が樹脂層の軟化点の温度より高くなるように設定されているので、加熱ロール63の設定温度の方が加熱ロール64よりも高い設定温度となるように温度設定を行う。例えば加熱ロール63は150℃に、加熱ロール64は120℃にそれぞれ設定することができる。また転写、定着時の加熱ロール63,64間の圧力は5kgf/cm2 に設定することができるが、圧力はこの値に限らず1kgf/cm2 〜10kgf/cm2 の範囲であればよい。またこの例では、加熱ロール63及び加熱ロール64の外径は50mmとし、加熱ロールの回転速度は、中間転写体ベルト73の搬送速度が240mm/secになるように設定している。もちろん、これらの設定に限られるものではない。
【0106】
また、冷却装置65の風量を調整することにより、記録媒体の中間転写体ベルト73からの剥離時の、中間転写体ベルト73と接する記録媒体表面の温度を調整している。例えば記録媒体の表面温度が70°C程度となるように風量を調整することができる。さらに、中間転写ベルト駆動位置検出装置75は、中間転写体ベルト73上のパターンを例えば非接触のセンサにより読み取ることにより、中間転写体ベルト73の基準位置および駆動位置を検出する。これ以外にも、例えば中間転写体ベルト73に接触する駆動位置検出用のローラや、中間転写体ベルト73を駆動する駆動系に取り付けられたエンコーダにより、中間転写体ベルト73の副走査方向の駆動位置を検出するように構成してもよい。
【0107】
図9に示した形式のカラー画像形成装置6では、像担持体である感光体ドラム上で帯電、露光および現像プロセスが行われるため、感光体ドラム上の2次元的な位置により、帯電、露光および現像プロセスに起因する再現性のある色変動が発生する。また、像担持体である中間転写ベルト上で転写および定着プロセスが行われるため、中間転写体ベルト上の2次元的な位置により、転写および定着に起因する再現性のある色変動が発生する。上述のように用紙と像担持体である感光体ドラム61−1〜4は同期していないので、用紙上の感光体ドラムに起因する色変動のパターンには再現性がないが、感光体ドラム61−1〜4上の所定の2次元的な位置による感光体ドラムに起因する色変動の発生には再現性がある。従って、感光体ドラム61−1〜4上の2次元の記録位置座標(x,y1,y2,y3,y4)を考慮すれば、感光体ドラムに起因する色変動の補正は可能である。
【0108】
このとき、主走査方向の記録位置座標xについては、用紙上の主走査方向の記録位置座標と同じなので、カラー画像入力装置4により指定される信号でよく、副走査方向の記録位置座標を表す、感光体ドラム61−1〜4それぞれの回転角信号(y1,y2,y3,y4)のみを測定すればよい。もちろん、主走査方向の記録位置座標xについてもカラー画像形成装置6からカラー画像処理装置5へ転送してもよい。また、上述の説明では、カラー画像形成装置6では4つの感光体ドラム61−1〜4が同期していないものとして説明したが、4つの感光体ドラムが同期して駆動される場合については、検出する感光体ドラムの回転角信号は1つでよい。
【0109】
また、図9に示したカラー画像形成装置6では、用紙と像担持体である中間転写体ベルト73は同期するように駆動されるため、用紙上の中間転写体ベルトに起因する濃度ムラのパターンには再現性がある。このように、用紙上の記録位置と中間転写体ベルト上の記録位置座標は同期している場合でも、中間転写体ベルト上の2次元の記録位置座標(x,y5)を考慮すれば、中間転写体ベルトに起因する濃度ムラの補正は可能である。この場合も、主走査方向の記録位置座標xについては、用紙上の主走査方向の記録位置座標と同じなので、カラー画像入力装置4により指定される信号でよく、副走査方向の記録位置座標を表す中間転写体ベルトの駆動位置信号y5のみを測定すればよい。もちろん、感光体ドラムと共通した主走査方向の記録位置座標xについても、カラー画像形成装置6から出力してもよい。また、中間転写体ベルト73が用紙と同期している場合、中間転写体ベルトの駆動位置信号y5のかわりに、カラー画像入力装置4から用紙上の副走査方向の記録位置座標信号を入力するように構成してもよい。
【0110】
図9に示すような構成のカラー画像形成装置6では、機械的な寸法誤差や動作上の誤差を吸収するために、感光体ドラム61−1〜4と中間転写体ベルト73との間にわずかな滑りを発生させているので、感光体ドラム61−1〜4と中間転写体ベルト73は同期していない。したがって、感光体ドラム61−1〜4に起因する色変動と中間転写体ベルト73に起因する色変動は独立に発生する。従って、すべて像担持体に起因する色変動を特定するためには、用紙上における主走査方向の記録位置座標信号x、4つの感光体ドラム61−1〜4の回転角信号(y1,y2,y3,y4)および中間転写体ベルト73の駆動位置信号y5の6つのパラメータを検出する必要がある。
【0111】
なお、上述のカラー画像形成装置6の説明では、感光体ドラム61−1〜4と中間転写体ベルト73が同期していない例を示したが、4つの感光体ドラムと中間転写体ベルトが同期して駆動される場合については、副走査方向の記録位置を決定するために検出する必要があるパラメータは、感光体ドラム61−1〜4の回転角信号もしくは中間転写体ベルト73の駆動位置信号のうちのいずれか1つでよい。また、4つの感光体ドラム61−1〜4が同期して駆動され、中間転写体ベルト73とは同期していない場合には、副走査方向の記録位置座標を決定するために検出する必要があるパラメータは、感光体ドラム61−1〜4の回転角信号のうちの1つと、中間転写体ベルト73の駆動位置信号の合計2つのパラメータでよい。
【0112】
図9には、カラー画像形成装置6の一例として、4つの感光体ドラムを使ってカラー画像を形成するタンデム方式の電子写真方式の構成を示したが、カラー画像形成装置6の構成はこれに限定されるものではない。例えば、1つの感光体ドラムを使って中間転写体もしくは用紙上にトナー像を順次転写していくことにより、カラー画像を形成するシングル方式の電子写真方式を適用してもよい。また、像担持体として感光体ドラムを用いずに、ベルト感光体を使用する方式でもよい。さらに、上述の例のように、像担持体である中間転写体ベルトから用紙へ直接転写および定着するような形式ではなく、中間転写体ベルトから用紙に静電気的にトナー像を転写し、通常の定着器によりトナー像を定着するような形式でもよい。
【0113】
このように、本発明の第2の実施の形態においては、3変数以上の色空間でカラー画像の記録を行い、単数もしくは複数の像担持体上に画像を形成するカラー画像形成装置であれば、どのような形式のものでもよく、単数もしくは複数の像担持体と用紙が同期していても、同期していなくても本発明の画像処理装置を適用することができる。また、カラー画像形成装置6としては、電子写真方式に限るものではなく、どのようなカラー画像形成装置でもよく、例えば印刷、インクジェット方式、熱転写方式および銀塩写真方式などのカラー画像形成装置において、面内における色変動の発生が像担持体上の入力画像の記録位置座標により再現性があるカラー画像形成装置であれば、どのようなカラー画像形成装置に対しても本発明の画像処理装置を適用することができる。
【0114】
次に、カラー画像処理装置5についてさらに説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態における具体例を示すブロック図である。図中、81は9入力4出力ニューラルネットワーク処理部、82はカラー階調補正部である。9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81には、カラー画像入力装置4から入力される色空間信号L* a* b* と用紙上の主走査方向における入力画像の記録位置座標信号xと、像担持体上の副走査方向における入力画像の記録位置座標を表すカラー画像形成装置6の感光体ドラムエンコーダ62−1〜4から入力される感光体ドラム61−1〜4の回転角信号(y1,y2,y3,y4)および、中間転写体ベルト駆動位置検出装置75から入力される中間転写体ベルト73の駆動位置信号y5が入力される。そして、これらの信号に基づいて、後述する演算パラメータに基づく9入力4出力のニューラルネットワーク処理を行って、カラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKを明度線形変換した色空間における明度線形信号C’M’Y’K’に変換し、カラー階調補正部82に転送する。なお、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータは、カラー演算パラメータ修正部52によって後述する方法で修正することができる。
【0115】
カラー階調補正部82では、それぞれの色成分毎に設けられた1次元のLUTを用いて、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81から入力される明度線形信号C’M’Y’K’からカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKに変換し、画像記録信号CMYKをカラー画像形成装置6のスクリーンジェネレータ77に転送する。この1次元のLUT(階調補正テーブル)は公知の方法により決定することが可能である。もちろん、カラー階調補正部82として、1次元のLUTで構成するほか、1入力1出力の非線形変換が行えるものであればどのような処理方法を用いてもよい。
【0116】
このように、カラー階調補正部82では1次元のLUTにより明度線形信号C’M’Y’K’からカラー画像形成装置6の画像記録信号CMYKへの変換を行うが、これは9入力4出力ニューラルネットワーク処理81の入出力を明度L* a* b* に対して線形にすることにより、9入力4出力ニューラルネットワーク処理81での補正処理精度を向上させるためである。もちろん、カラー階調補正部82を設けず、(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)信号から画像記録信号CMYKを9入力4出力ニューラルネットワーク処理81により直接求めるように構成してもよい。
【0117】
9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81は、公知のニューラルネットワークを用いて9入力4出力の非線形変換を実現するものである。この第2の実施の形態においても、上述の第1の実施の形態と同様に、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークをカラー演算部51として用いることができる。中間層の細胞数を10個とした場合、このような形式のニューラルネットワークでは、演算に必要な結合加重は420個であり、結合加重を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合に必要なメモリ容量は420×8=3360バイトである。従来技術のn次元ルックアップテーブルを用い、9入力4出力のルックアップテーブルで入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録することを考えると、必要なメモリ容量は4×179 =474ギガバイトとなる。両者を比べると、従来のn次元ルックアップテーブルを用いた場合には、本発明のニューラルネットワークを用いた場合に比べて約1.4億倍のメモリ容量が必要になることがわかる。このように、本発明においてニューラルネットワークを用いることによって、少ないメモリ容量で処理系を実現することが可能である。
【0118】
この例では、中間層の細胞数を10個としてニューラルネットワークを構成した場合について示したが、ニューラルネットワークの中間層の細胞数については、この例の値に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて変更すればよい。すなわち、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81に要求される変換特性の非線形性が高い場合は、細胞数を増加させればよい。また、この例においては、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81に、入出力間の線形の接続と層間の飛び越しの接続を設けた4層のニューラルネットワークを用いることとして説明したが、ニューラルネットワークの細胞間の接続や層数についても、この例に限られるものではなく、必要な非線形変換特性に応じて変更してもよい。
【0119】
また、用紙上の色変動として感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73のどちらかの像担持体に起因する色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は感光体ドラム61−1〜4の回転角信号もしくは中間転写体ベルト73の駆動位置信号のいずれかの信号のみでよい。さらに、用紙上の色変動として主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの信号のみでよい。例えば、感光体ドラム61−1〜4に起因する面内の色変動が視覚上問題にならないレベルであり、中間転写体ベルト73による色変動も主走査方向の色変動が視覚的に問題にならない場合は、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号は(L* ,a* ,b* ,y5)となり、4入力4出力の変換処理を行えばよい。したがって、このような場合は9入力4出力のニューラルネットワークではなく4入力4出力のニューラルネットワークを用いて、演算処理を行うように構成すればよい。
【0120】
このように、視覚的に問題とならない色変動レベルの像担持体の入力画像の記録位置座標信号を省略することにより、ニューラルネットワークにおける演算量および演算パラメータの大幅な削減を実現することができる。
【0121】
図11は、本発明の第2の実施の形態におけるカラー演算パラメータ修正部52による9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。まずS111では、カラー画像形成装置6で、画像記録信号CMYKの任意の値に対するパッチを、上述の第1の実施の形態と同様に、例えば図6に示すような用紙上の任意の位置に配置してプリントアウトし、それぞれのパッチを記録した時の感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)および中間転写体ベルト73の駆動位置y5を測定し、記憶しておく。パッチの配置は、例えば上述のように用紙上での主走査方向および副走査方向の分割数を10mm間隔で決定する場合、パッチの主走査方向および副走査方向の間隔を10mm間隔として用紙全面に出力すればよい。またパッチの網点面積率はCMYKそれぞれ0%から100%まで10%刻みで、任意の組み合わせで出力し、用紙上にランダムに配置するように出力すればよい。
【0122】
S112では、図示しない色彩計により、出力したパッチの測色値L* a* b* を測定する。色彩計としては、例えばX−Rite社のDTP−51などを使用することができる。もちろん、色彩計はこのような市販の色彩計に限られるものではなく、フラットベッド型のスキャナを用い、得られるRGB信号から測色値L* a* b* を決定するようにしてもよい。
【0123】
S113では、それぞれのパッチの測色値L* a* b* の測定結果、画像記録信号CMYK、用紙上の主走査方向における記録位置座標x、感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)および、中間転写体ベルト73の駆動位置y5の測定結果より、(C,M,Y,K,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(L* ,a* ,b* )の対応表を作成する。
【0124】
S114では、カラー階調補正部82の逆特性LUTにより画像記録信号CMYKから明度線形信号C’M’Y’K’を算出し、対応表の画像記録信号CMYKの値を明度線形信号C’M’Y’K’に修正する。
【0125】
S115では、(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(L* ,a* ,b* )の対応表から(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5)を入力として(L* ,a* ,b* )を出力する次式で示される10入力3出力の関数を作成する。
(L* ,a* ,b* )=g(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5) …(5)
このような関数は、例えば、10入力3出力のニューラルネットワークを使用し、(C’,M’,Y’,K’,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(L* ,a* ,b* )の対応表を教師データとして、バックプロパゲーションにより学習を行うことによって(5)式を決定することができる。ここで用いるニューラルネットワークは、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81において用いるニューラルネットワークとは異なるものである。また、このような関数を決定する方法は、ニューラルネットワークを用いる方法に限られるものではなく、10入力3出力の非線形関数を記述できるものであればどのようなものでもよい。
【0126】
S116では、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)に対するブラックの明度線形信号K’の値を決定する。明度線形信号K’のとり得る値は、例えば8bitの量子化の場合は256個と有限である。そのため、明度線形信号K’の0〜255までのそれぞれの場合について、入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)および明度線形信号K’を入力として、ニューラルネットワークで得られた(5)式を数値解法で解くことにより、測色的に一致する明度線形信号C’M’Y’を算出可能な明度線形信号K’の範囲を算出することができる。明度線形信号K’はこの算出した範囲の任意の値を選択することにより、決定することができる。
【0127】
明度線形信号K’の決定アルゴリズムについては、上記の方法に限るものでなく、公知の方法を適用することが可能である。例えは、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号の明度L* に基づいて、明度の高いところにブラックが存在せず、明度の低いところにブラックが多く存在するように、明度線形信号K’を指定するように決定してもよい。
【0128】
S117では、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)およびS116で決定した明度線形信号K’を入力として、ニューラルネットワークで得られた(5)式を数値解法で解くことにより、測色的に一致する明度線形信号C’M’Y’を算出する。
【0129】
最後にS118では、入力信号(L* ,a* ,b* ,x,y1,y2,y3,y4,y5)と、S116で得られた明度線形信号K’およびS117で得られた明度線形信号(C’,M’,Y’)の対応表を、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81に教師データとして与え、バックプロバケーションにより学習を行う。これにより、9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータである結合加重を決定することができる。
【0130】
このように、カラー演算パラメータ修正部52によって演算パラメータを決定して、カラー演算部51の演算パラメータ(結合加重)を修正することにより、異なる画像形成装置に対応可能とすることができる。また同じ画像形成装置であっても、像担持体を交換した場合などのように内部状態が変更される場合にも対応することができるようになる。一般に、感光体や転写ベルト等の像担持体は、繰り返し使用すると性能が劣化することにより、交換が必要となる。このときの像担持体の濃度特性のムラは、それぞれの像担持体ごとに異なっている。このような場合に対応し、カラー演算パラメータ修正部52によって、カラー演算部51において演算に用いる演算パラメータ(結合加重)を更新することができ、交換後の像担持体の特性に対応した、適切な色変換処理および面内における色変動の補正を行うことができる。また、像担持体の交換以外にも、現像条件、潜像の形成条件等が変動した場合にも対応することが可能となる。
【0131】
次に、本発明の第2の実施の形態の変形例について説明する。この変形例では、上述のカラー演算部51において、3次元のルックアップテーブルと回帰式を用いて演算を行う例を示している。なお、この変形例を含む画像出力システム全体の構成は図8と同様であり、図示及び説明を省略する。
【0132】
図12は、本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー画像処理装置5の具体例を示すブロック図である。図中、図10と同様の部分には同じ符号を付して重複する説明を省略する。83は3次元DLUT処理部、84は10入力4出力回帰式処理部である。この変形例では、図10における9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81を、3次元DLUT処理部83と10入力4出力回帰式処理部84に置き換えたものであり、その他の構成は全く同じである。
【0133】
図12に示した構成においては、L* a* b* 色信号から画像記録信号C”M”Y”K”に変換する色変換処理を、面内における色変動を補正前に、通常の色変換処理に用いられる3次元のルックアップテーブルで行い、その後に面内における色変動の補正を回帰式で行うように構成している。従来の技術においては、色変換処理と面内における色変動の補正を同時に行うルックアップテーブルとして9次元のルックアップテーブルが必要であった。しかしこのような構成によって、色変換に必要なルックアップテーブルの次元を低くすることが可能になる。このような構成では、回帰式で必要な演算パラメータを含めてもトータルで必要なメモリ容量を低減することができる。
【0134】
3次元DLUT処理部83では、L* a* b* 色信号を、面内における色変動を補正前の画像記録信号C”M”Y”K”へ変換するが、この変換パラメータについては、公知のDLUTを用いた色変換パラメータ決定方法により決定することができる。
【0135】
10入力4出力回帰式処理部84には、3次元DLUT処理部83から入力される面内の色変動を補正する前の画像記録信号C”M”Y”K”、カラー画像入力装置4から入力される主走査方向の記録位置座標xおよびカラー画像形成装置6より入力される4本の感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73上における副走査方向の記録位置座標(y1,y2,y3,y4,y5)が入力され、面内における色変動を補正した明度線形信号C’M’Y’K’への変換を行う。
【0136】
10入力4出力回帰式処理部84において用いる回帰式としては、次に示すような3次の重回帰多項式を用いることができる。
C’=ac1C”3+ac2C”2+ac3C”+ac4M”3+ac5M”2+ac6M”+ac7Y”3+ac8Y”2+ac9Y”+ac10K”3+ac11K”2+ac12K”+ac13x3+ac14x2+ac15x+ac16y13+ac17y12+ac18y1+ac19y23+ac20y22+ac21y2+ac22y33+ac23y32+ac24y3+ac25y43+ac26y42+ac27y4+ac28y53+ac29y52+ac30y5+ac31 …(6−1)
M’=am1C”3+am2C”2+am3C”+am4M”3+am5M”2+am6M”+am7Y”3+am8Y”2+am9Y”+am10K”3+am11K”2+am12K”+am13x3+am14x2+am15x+am16y13+am17y12+am18y1+am19y23+am20y22+am21y2+am22y33+am23y32+am24y3+am25y43+am26y42+am27y4+am28y53+am29y52+am30y5+am31 …(6−2)
Y’=ay1C”3+ay2C”2+ay3C”+ay4M”3+ay5M”2+ay6M”+ay7Y”3+ay8Y”2+ay9Y”+ay10K”3+ay11K”2+ay12K”+ay13x3+ay14x2+ay15x+ay16y13+ay17y12+ay18y1+ay19y23+ay20y22+ay21y2+ay22y33+ay23y32+ay24y3+ay25y43+ay26y42+ay27y4+ay28y53+ay29y52+ay30y5+ay31 …(6−3)
K’=ak1C”3+ak2C”2+ak3C”+ak4M”3+ak5M”2+ak6M”+ak7Y”3+ak8Y”2+ak9Y”+ak10K”3+ak11K”2+ak12K”+ak13x3+ak14x2+ak15x+ak16y13+ak17y12+ak18y1+ak19y23+ak20y22+ak21y2+ak22y33+ak23y32+ak24y3+ak25y43+ak26y42+ak27y4+ak28y53+ak29y52+ak30y5+ak31 …(6−4)
【0137】
この(6−1)〜(6−4)式で示した3次の重回帰多項式では、演算に必要な回帰係数は124個であり、回帰係数を8バイトの倍精度実数型の変数としてメモリに記録した場合、必要なメモリ容量は124×8=992バイトとなる。3次元DLUT処理部83のルックアップテーブルにおいて、入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録することを考えると、3次元DLUTとして必要なメモリ容量は4×173 =19.7キロバイトとなり、10入力4出力回帰式処理部84で必要になるメモリ容量を加えても、全体で20.6キロバイトで済む。従来技術のn次元ルックアップテーブルにより同様の演算を行う場合、9入力4出力のルックアップテーブルにおいて入力をそれぞれ16分割し、画像記録信号を8ビット(=1バイト)のテーブル値として記録することを考えると、必要なメモリ容量は4×179 =474ギガバイトとなる。両者を比較すれば分かるように、従来のn次元ルックアップテーブルを用いた場合には、本発明の3次元ルックアップテーブルおよび回帰式を用いる場合に比べて約2298万倍のメモリ容量が必要になることがわかる。このように本発明においては、従来のn次元ルックアップテーブルを用いる場合に比べて格段に少ないメモリ容量で色変換処理系を実現することが可能である。
【0138】
この3次元ルックアップテーブルと回帰式を用いる構成では、上述の9入力4出力のニューラルネットワークを用いた構成に比べてメモリ容量は若干多く必要であるが、演算数がニューラルネットワークに比べて少ないので、処理系をソフトウェア等で実現した場合に処理の高速化を図ることができる。
【0139】
この変形例においては、10入力4出力回帰式処理部84に3次の重回帰多項式を用いたが、回帰式の形式はこれに限られるものではない。具体的には、非線形性の高い入出力特性が要求される場合には、重回帰多項式の次数を上げたり、変数を増やせばよい。
【0140】
また、用紙上の色変動として感光体ドラム61−1〜4および中間転写体ベルト73のどちらかの像担持体に起因する色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は感光体ドラム61−1〜4の回転角信号もしくは中間転写体ベルト73の駆動位置信号のいずれかの信号のみでよい。さらに、用紙上の色変動として主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの色変動が問題にならないレベルである場合は、カラー演算部51への入力は主走査方向もしくは副走査方向のいずれかの信号のみでよい。例えば、感光体ドラム61−1〜4に起因する面内の色変動が視覚上問題にならないレベルであり、中間転写体ベルト73による色変動も主走査方向の色変動が視覚的に問題にならない場合は、10入力4出力回帰式処理部84の入力信号は(C”,M”,Y”,K”,y5)となり、5入力4出力の変換処理を行えばよい。したがって、このような場合は10入力4出力の回帰式ではなく5入力4出力の回帰式を用いて、演算処理を行うように構成すればよい。
【0141】
このように、視覚的に問題とならない色変動レベルの像担持体の入力画像の記録位置座標信号を省略することにより、回帰式における演算量および演算パラメータの大幅な削減を実現することができる。
【0142】
図13は、本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー演算パラメータ修正部52による10入力4出力回帰式処理部84の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。まずS121では、カラー画像形成装置6で、画像記録信号CMYKの任意の値に対するパッチを、上述の図11におけるS111の説明と同様にしてプリントアウトし、それぞれのパッチを記録した時の感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)および中間転写体ベルト73の駆動位置y5を測定し、記憶しておく。
【0143】
S122では、出力したパッチの測色値L* a* b* を測定し、3次元DLUT処理部83により測色値(L* ,a* ,b* )を面内における色変動を補正前の画像記録信号(C”,M”,Y”,K”)に変換する。なお、パッチの測色方法は任意である。
【0144】
S123では、S122で求めた面内における色変動を補正前の画像記録信号(C”,M”,Y”,K”)、用紙上の主走査方向における記録位置座標x、感光体ドラム61−1〜4の回転角(y1,y2,y3,y4)、中間転写体ベルト73の駆動位置y5の測定結果、及び画像記録信号CMYKより、(C”,M”,Y”,K”,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(C,M,Y,K)の対応表を作成する。
【0145】
S124では、カラー階調補正部82の逆特性LUTにより画像記録信号CMYKから明度線形信号C’M’Y’K’を算出し、対応表の画像記録信号CMYKの値を明度線形信号C’M’Y’K’に修正する。
【0146】
S125では、(C”,M”,Y”,K”,x,y1,y2,y3,y4,y5)と(C’,M’,Y’,K’)の対応表から、(C”,M”,Y”,K”,x,y1,y2,y3,y4,y5)を説明変数とし、(C’,M’,Y’,K’)を目的変数として、最小2乗法等の数値解法によって、3次の重回帰多項式である(6−1)〜(6−4)式の回帰係数を決定する。
【0147】
このように、カラー演算パラメータ修正部52によって演算パラメータを決定して、カラー演算部51の演算パラメータを修正することにより、異なる画像形成装置に対応することができ、また同じ画像形成装置であっても像担持体を交換した場合などのように内部状態の変更などにも対応することができるようになる。さらに、像担持体の交換以外にも、現像条件、潜像の形成条件等が変動した場合についても対応することが可能となる。
【0148】
この変形例においては、カラー演算パラメータ修正部52によって3次元DLUT処理部83の色変換パラメータの修正を行っていないが、画像形成装置の内部状態の変更等に応じて、公知の方法により3次元DLUT処理部83の色変換パラメータについても修正するように構成してもよい。
【0149】
この変形例のように、カラー演算部51にルックアップテーブルと回帰式を用いる場合では、ニューラルネットワークに比べて、要求される入出力特性の非線形性が高い場合に色変換精度が悪くなるといった問題点が考えられる。しかし、電子写真方式の画像形成装置においては、L* a* b* 色信号から画像記録信号CMYKへの色変換については非線形性が高いが、現像器と感光体の間隔が一定でないことに起因する色変動では主走査方向に線形に濃度が変化し、またレーザスキャナの光量ムラに起因する色変動では主走査方向に中央部に比べて周辺部の濃度が低下するなど、3次以下の多項式で予測可能な色変動である。従って、非線形性の高い色変換処理についてはルックアップテーブルで変換し、非線形性のそれほど高くない面内における色変動の補正については回帰式で変換するように、それぞれ分担して処理を行うことによって、高い色変換精度および色変動の補正を実現することができる。もちろん、画像処理系のコストおよび処理速度と、色変換精度および色変動の補正効果のトレードオフによって、処理系を選択してもよい。
【0150】
本発明の第2の実施の形態における効果を確認するために、カラー演算部51で複数の像担持体上の入力画像の記録位置座標を考慮した色変換処理を行った場合と、像担持体上の記録位置座標を考慮しない従来の色変換処理を行った場合の色変換精度を評価した。ここで、従来技術の例としては、図12において10入力4出力回帰式処理部84での処理を行わず、L* a* b* 色信号を入力とし、明度線形信号C’M’Y’K’を出力とする公知の3入力4出力の3次元DLUT色変換処理で行った。
【0151】
比較例として、カラー画像形成装置6において、網点面積率10%〜100%のCMY3色によるプロセスブラックをA3用紙全面に出力し、面内の任意の100点の測色値L* a* b* を測定し、面内で平均したL* a* b* からの各点での色差の平均値を比較した。その結果、従来技術の平均色差が6程度であったのに対し、カラー演算部51にニューラルネットワークを使用した構成では、平均色差1程度となり、色変換精度が大幅に改善されることを確認できた。また、均一な画像を出力した際にも、視覚的に全く問題とならないレベルまで色ムラを低減させることができた。
【0152】
さらに、カラー演算部51にルックアップテーブルと回帰式を使用した構成でも、平均色差3程度となり、ニューラルネットワークを使用した場合には劣るが、色変換精度が改善され、色ムラを低減させることができた。
【0153】
このように、第2の実施の形態では、カラー画像入力装置から入力される色信号と用紙上の主走査方向の記録位置座標信号、および、像担持体上の副走査方向の記録位置座標を表す感光体ドラムの回転角信号と中間転写体ベルトの駆動位置信号から、ニューラルネットワーク、もしくは、ルックアップテーブルおよび回帰式を用いてカラー画像形成装置の画像記録信号を算出するように構成した。これにより、電子写真方式のカラー画像形成装置において、感光体ドラムの感度ムラや中間体ベルトの体積抵抗率ムラに代表される作像プロセスに起因する用紙上の2次元の面内に発生する色変動が存在するような場合にも、像担持体上における入力画像の記録位置座標における色差を原理的に零にすることができるので、高精度な色変換処理を実現することができる。また、均一な画像を出力した場合でも、画質欠陥としての色ムラを視覚的に問題にならないレベルまで低減させることが可能になり、面内均一性の高い、高画質なプリントを得ることができる。
【0154】
さらに、面内における色変動の原因となる作像プロセスに関連する単数もしくは複数の像担持体の記録位置座標を考慮することにより、用紙と感光体ドラムや中間転写体ベルト等の像担持体が同期していなくても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を実現することが可能である。加えて、ニューラルネットワークもしくは回帰式の演算パラメータを適宜修正することにより、経時的な変化や像担持体の交換による色変動特性の変化が発生しても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を維持することができる。
【0155】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、入力される色信号と画像形成装置より入力される像担持体上における入力画像の記録位置座標信号から、ニューラルネットワークもしくは回帰式、あるいはルックアップテーブルと回帰式との併用などによって、画像形成装置の画像記録信号を算出するように構成した。これにより、従来技術では不可能であった像担持体上での記録位置座標に起因する色差の発生を原理的に零にすることが可能になり、面内均一性が低い画像形成装置においても、高い色変換精度を得ることが可能となった。また、均一な画像を出力した際にも、用紙上の2次元の面内に発生する色ムラを視覚的に問題にならないレベルまで低減させることが可能となった。さらに、面内における色変動の原因となる作像プロセスに関連する、像担持体上の入力画像の記録位置座標を考慮することにより、用紙と感光体ドラムや中間転写体ベルト等の像担持体が同期していなくても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を得ることが可能になった。さらにまた、本発明によれば、n次元ルックアップテーブルを用いた従来の構成に比べて、格段に少ないメモリ量で構成することが可能となり、上述のような色むらの発生の防止や高い色変換精度を保ったまま、コストを大幅に低減することができるという効果がある。
【0156】
また、ニューラルネットワークもしくは回帰式などの演算パラメータを適宜修正することにより、経時的な変動や像担持体の交換等により色変動特性が変化した場合においても、確実に色ムラの発生を防止し、高い色変換精度を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を含む画像出力システムの一例を示すブロック図である。
【図2】画像形成装置3の一構成例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。
【図4】3入力1出力ニューラルネットワーク処理部の一例の説明図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態における演算パラメータ修正部12による3入力1出力ニューラルネットワーク処理部41の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】画像形成装置で出力するパッチ画像の一例の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態の変形例における画像処理装置2の具体例を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態を示すブロック図である。
【図9】カラー画像形成装置6の一構成例を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における具体例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態におけるカラー演算パラメータ修正部52による9入力4出力ニューラルネットワーク処理部81の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー画像処理装置5の具体例を示すブロック図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態の変形例におけるカラー演算パラメータ修正部52による10入力4出力回帰式処理部84の演算パラメータの決定方法の一例を示すフローチャートである。
【図14】従来技術の一例における問題点の説明図である。
【符号の説明】
1…画像入力装置、2…画像処理装置、3…画像形成装置、4…カラー画像入力装置、5…カラー画像処理装置、6…カラー画像形成装置、11…演算部、12…演算パラメータ修正部、21…感光体ドラム、22…感光体ドラムエンコーダ、23…静電潜像形成用帯電器、24…現像器、25…用紙搬送装置、26…転写帯電器、27…クリーニング装置、28…前露光器、29…定着装置、30…レーザスキャナ走査装置、31…スクリーンジェネレータ、32…用紙トレイ、33…給紙装置、41…3入力1出力ニューラルネットワーク処理部、42…階調補正部、43…3入力1出力回帰式処理部、51…カラー演算部、52…カラー演算パラメータ修正部、61−1〜4…感光体ドラム、62−1〜4…感光体ドラムエンコーダ、63,64…加熱ロール、65…冷却装置、66−1〜4…ローラ、67…用紙トレイ、68…給紙装置、69…巻回機構、70−1,2…ピンロール、71−1〜4…現像器、72−1〜4…静電潜像形成用帯電器、73…中間転写体ベルト、74−1〜4…転写帯電器、75…中間転写体ベルト駆動位置検出装置、76…レーザスキャナ走査装置、77…スクリーンジェネレータ、81…9入力4出力ニューラルネットワーク処理部、82…カラー階調補正部、83…3次元DLUT処理部、84…10入力4出力回帰式処理部。
Claims (10)
- 第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理装置において、前記第1の色信号を前記第2の色信号に変換を行う演算手段を有し、前記演算手段は、ニューラルネットワークで構成されていることを特徴とする画像処理装置。
- 第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理装置において、前記第1の色信号を前記第2の色信号に変換を行う演算手段を有し、前記演算手段は、回帰式の演算を行うことによって変換を行うように構成されていることを特徴とする画像処理装置。
- 第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理装置において、前記第1の色信号を前記第2の色信号に変換を行う演算手段を有し、前記演算手段は、n次元のルックアップテーブルと、該ルックアップテーブルの演算結果に対して回帰式による演算を行う回帰式処理手段で構成されていることを特徴とする画像処理装置。
- 前記演算手段は、前記第1の色信号と前記画像形成装置が前記第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を入力とし、前記第2の色信号を出力することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 前記ルックアップテーブルは、前記第1の色信号を入力とし、面内における色変動の補正前の前記画像形成装置の画像記録信号を出力するものであり、前記回帰式処理手段は、前記ルックアップテーブルから出力された面内における色変動の補正前の画像記録信号と前記画像形成装置が前記第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を入力とし、回帰式により前記第2の色信号を演算して出力するものであることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
- 前記画像形成装置は複数の像担持体を有しており、前記演算手段は、前記複数の像担持体のすべてあるいは一部についてそれぞれの像担持体に関する位置情報を含む前記記録位置座標信号を用いることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の画像処理装置。
- さらに、前記演算手段に保持している演算パラメータの値を更新する演算パラメータ修正手段を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
- 第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理方法において、前記第1の色信号と前記画像形成装置が前記第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を入力とし、ニューラルネットワークにより前記第2の色信号を演算して前記第1の色信号を前記第2の色信号に変換することを特徴とする画像処理方法。
- 第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理方法において、前記第1の色信号と前記画像形成装置が前記第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を入力として回帰式の演算を行って前記第1の色信号から前記第2の色信号への変換を行うことを特徴とする画像処理方法。
- 第1の色信号を画像形成装置に起因する面内の色変動を補正した前記画像形成装置の画像記録信号である第2の色信号に変換する画像処理方法において、前記第1の色信号に対してn次元のルックアップテーブルを用いて面内色変動の補正前の画像記録信号を生成し、該面内色変動の補正前の画像記録信号と前記画像形成装置が前記第2の色信号に従って像担持体上に像を記録する位置を示す記録位置座標信号を入力として回帰式の演算を行って前記第2の色信号を得ることを特徴とする画像処理方法。
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