JP2004067406A - 金属製真空二重構造容器の封止用フリット及び金属製真空二重構造容器 - Google Patents

金属製真空二重構造容器の封止用フリット及び金属製真空二重構造容器 Download PDF

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Abstract

【課題】金属製二重容器の真空封止をするために封止温度が400〜500℃でPbOを含有しない封止用ガラスを提供することである。
【解決手段】金属製内容器と外容器とを構成部材として有し、これら内外容器間の空隙部を真空排気する際に、前記内容器と外容器のいずれか一方に形成された排気口を真空封止するのに用いるフリットであって、該フリットがモル%でSnO 20〜68%、SnO 2〜8%、P 20〜40%の組成からなるガラス80〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを含有したものであることを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、魔法瓶(水筒・ランチジャー)等の金属製二重容器を真空封止するのに用いる封止用フリットに関するものである。なお、本文中で使用する単なる「%」表示は「モル%」を表すものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属製二重容器を製造する方法の一つとして、内容器と外容器のいずれか一方に形成された排気口を低融点ガラスで真空封止する方法が特開平6−169850号公報に提案されている。この公報に開示されている低融点ガラスはPbOを含有する鉛系のガラスである。
【0003】
しかし、最近では環境問題および作業従事者の健康面から鉛を含まない封止材料が強く求められていており、鉛を使用しないガラスとして、特開2002−167234号公報に開示されたようなものが開発されている。この公報に開示されている無鉛ガラスの組成は、B 8〜37%、SiO 18〜45%、ZnO 0〜10%、LiO+NaO+KO 27〜42%、Fe 0〜12%、CaO 0〜10%である。
【0004】
また、金属製真空二重構造容器の封止用ではないが、作業温度が500℃以下の封着材料としては、特開平6−183775号公報、特開平7−69672号公報、特開平11−292564号公報および特開2001−48579号公報等に開示されている。
【0005】
特開平6−183775号公報は、鉛不含有シーリングガラスを提供することを目的としており、25〜50モル%のPを含有し、かつSnO:ZnOのモル比が1:1〜5:1となるようにSnOとZnOとを含有したSnO−ZnO−Pガラスが開示されている。
【0006】
特開平7−69672号公報は、熱膨張係数が120〜140×10−7/℃の範囲にあり、電子・電気部品間の溶融シールに適した鉛不含有シーリングガラスフリットを提供することを目的とし、SnO−ZnO−P系ガラスにRO、B、Al、SiO、WOからなる群から少なくとも1種を安定化酸化物として含有した封着用ガラスが開示されている。なお、ROはLiO、NaOおよびKOである。
【0007】
特開平11−292564号公報は、鉛を含有した封着用ガラスと同等の特性を有するガラスと、これを用いた封着材料を提供することを目的としており、SnO 30〜80モル%、B 5〜60モル%、P 5〜24モル%の組成を有するホウリン酸スズ系ガラスが開示されている。
【0008】
特開2001−48579号公報は、鉛を含有した封着用ガラスと同等の特性を有するガラスと、これを用いた封着材料を提供することを目的としており、SnO 30〜80%、SiO 5.5〜20モル%、P 10〜50モル%の組成を有するシリカリン酸スズ系ガラスが開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記特開2002−167234号公報に開示された組成では、軟化点が472〜495℃以下であり、この軟化点+100℃が封止を行なう作業温度となるので作業温度が572〜595℃となる。このように作業温度が500℃を超えると、金属表面に熱やけ等が生じ金属表面を劣化させるという問題がある。
【0010】
また、上記した特開平6−183775号に開示された非結晶性ガラスを用いた封着用組成物は、封着時の加熱途中でガラス中に含まれる2価スズが酸化されて生じた4価スズとピロリン酸との化合物が析出して流動性を阻害するという問題があった。そこで、上記した従来技術(特開平7−69672号、特開平11−292564号および特開2001−48579号に開示されたもの)のようにガラスを安定化させるための成分として、Al、SiO、B等をガラス成分として添加するものが開発された。しかし、この開発されたガラスでは、上記安定化成分により、ガラスの軟化点が著しく上昇して流動性が悪化するという問題が発生していた。
【0011】
そこで、本発明は実質的に鉛を含まず、500℃以下の作業温度で流動性の優れた封止用フリットを提供すること、及び金属製真空二重構造容器を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点を考慮し、本発明者は様々な試験をおこなって、低融点ガラスおよび低融点ガラスに耐火性フィラーを加えた接着材料を評価した。その結果、同じ組成の低融点ガラスであっても、その製造条件によって接着材料として用いた場合、フローボタンによる評価で大きな差が見られるのに気づき、その低融点ガラスを詳細に分析したところ、ガラス中に含まれるSnOの含有量に違いがあることが分かり、検証試験をおこなったところ、SnOが接着時の流動性に密接な関係があることを見出した。
【0013】
このSnOの効果は以下のような現象によるものと推測される。従来技術ではガラス中に含まれるSnをSn2+の状態となるように、
▲1▼溶融中の容器に蓋をし溶融中の原料への酸素の供給を制限する、
▲2▼溶融雰囲気内に窒素充填し窒素雰囲気とする、
▲3▼原料組成中に糖類などの還元剤を配合する、
以上の対策を単独または組み合わせて行なっていた。この結果、得られたガラスは、Sn−O−P構造においてPの結合手が過剰な状態となっており、この過剰なPの結合手が、加熱という外的要因により刺激されピロリン酸系のスズ化合物(4価)を生成する原因となり、結果として接着作業時に流動性の悪化を引き起こしていたと考えられる。
【0014】
一方、SnOが一定量含有されたものでは、Sn−O−P構造におけるPの結合手の過剰状態が緩和され、より安定な結合状態となり、接着作業時の加熱によってもピロリン酸系のスズ化合物(4価)が生成しなかったものと考えられる。
【0015】
したがって、本発明は上記問題点を解決するために、請求項1に対応する発明は、金属製内容器と外容器とを構成部材として有し、これら内外容器間の空隙部を真空排気する際に、前記内容器と外容器のいずれか一方に形成された排気口を真空封止するのに用いる封止用フリットであって、実質的に鉛を含まず、モル%表示の酸化物換算でSnO 20〜68%、SnO 2〜8%、P 20〜40%の組成を含む低融点ガラス 80〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを含有したものであることを特徴とする金属製真空二重容器の封止用フリットとした。
【0016】
請求項2に対応する発明は、請求項1記載の封止用フリットにおいて、前記低融点ガラス中に、0.5〜10モル%のSiOを含有するものとした。
【0017】
請求項3に対応する発明は、請求項1または2記載の封止用フリットにおいて、前記低融点ガラス中に、B、ZnO、Al、WO、MoO、Nb、TiO、ZrO、LiO、NaO、KO、CsO、CuO、MnO、MgO、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種を合量で20モル%以下含有するものとした。
【0018】
請求項4に対応する発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載の封止用フリットであって、SnOの原料に用いられる酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸スズ等のスズ化合物を酸化雰囲気で溶融し、Sn2+の一部をSn4+に酸化させたものとした。
【0019】
このように、Sn4+の封着ガラス内への導入をSn2+の酸化で行なうことにより、Sn−O−P構造におけるPの結合手の過剰状態が緩和され、より安定な結合状態となり、封着作業時の加熱によってもピロリン酸系のスズ化合物(4価)が生成する虞が少なくなる。
【0020】
請求項5に対応する発明は、金属製の内容器と外容器とを有し、これら内外容器間の空隙部を真空断熱層とした金属製真空二重構造容器において、前記内容器と外容器のいずれか一方に形成された排気口を封止する封止用フリットが、実質的に鉛を含有せず、モル%表示の酸化物換算でSnO 20〜70%、SnO 2〜8%、P 10〜50%を含有する封着ガラス粉末 80〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを含有したものとした。
【0021】
ここで、本発明の低融点ガラス組成の限定理由を以下に説明する。
SnOはガラスを低融点化させるための必須成分であり、SnOの含有量が20%未満であると、ガラスの粘性が高くなって接着温度が高くなりすぎ、68%を超えると、ガラス化しなくなる。なお、好ましい範囲は40〜65%である。
【0022】
SnOはガラスを安定化するための必須成分であり、特に、接着作業の加熱時に軟化溶融したガラス中に分離して生成されるSnOの析出物の発生を防ぐために必要不可欠な成分である。このSnOを含有させることにより、従来の鉛系の非結晶性ガラスと同様に繰り返し加熱しても流動性は損なわれることなく、安定して接着作業を行なうことができる。しかし、その含有量が2%未満であると、析出物の発生を抑制する効果が得られず、その含有量が8%を超えると、溶融ガラス中からSnOの析出物が生じてしまう。なお、好ましい範囲は2.5〜6%である。
【0023】
はガラス骨格形成のための必須成分であり、その含有量が10%未満であるとガラス化せず、その含有量が50%を超えるとリン酸塩ガラス特有の欠点である耐候性の悪化を引き起こす。好ましい範囲は25〜40%である。
【0024】
SiOはガラス骨格を形成させるために添加させても良い成分であるが、その含有量が10%を超えると、低融点ガラス粉末の転移点や軟化点が上昇し、本発明の所望とするものが得られなくなる。好ましくは5%以下である。
【0025】
上記請求項1および2に記載された成分で形成される低融点ガラスは、ガラス転移点が低く低温用の接着材料に十分に適したものであるが、以下に示す成分を含有させてもよい。ただし、上記請求項1および2に記載された成分以外の合計が20%を超えると、ガラスが不安定となり低融点ガラス成形時に失透が発生したり、失透が発生しない場合でも、ガラス転移点や軟化点が上昇したりして排気口の封止を低温でおこなえなくなる虞がある。
【0026】
添加成分としては、B、ZnO、Al、WO、MoO、Nb、TiO、ZrO、LiO、NaO、KO、CsO、CuO、MnO、MgO、CaO、SrOおよびBaO等のガラスを安定化させる成分を含有することができる。
【0027】
はガラスを安定化させる以外に熱膨張係数を低下させる効果があるので、含有することができるが、フリットとして使用する場合あまり含有量が多いと焼成中に分相しやすくその含有量を2%以下とする。好ましくは1%以下である。
【0028】
ZnOはガラスを安定化させる以外に熱膨張係数を低下させる効果があり、その含有量は0〜15%である。15%を超えるとガラスの結晶化傾向が激しくなって流動性が低下しやすくなる。上記したように、ガラスの熱膨張係数を調整することが可能であるので、好ましい低融点ガラスを得るには、ZnOを必須成分としその含有量を2〜10%とする。
【0029】
Al、WOおよびMoOもガラスを安定化させる以外に熱膨張係数を低下させる効果があるので、ガラス中に合量で0〜10%含有することができる。その含有量が10%を超えると、ガラスの粘性が高くなり流動性が損なわれる。また、これらの成分は単独で使用するのではなく、少なくとも1種をZnOと併用することが好ましい。併用する場合には7%以下とすることが好ましい。
【0030】
Nb、TiOおよびZrOは化学的耐久性を向上させる効果もあるので、ガラス中に合量で0〜10%含有することができる。その含有量が10%を超えると、ガラスの結晶化傾向が激しくなる。好ましくは8%以下である。
【0031】
LiO、NaO、KOおよびCsOは、ガラスの軟化点を下げ、流動性を向上させる効果もあるので、ガラス中に合量で0〜10%含有することができる。その含有量が10%を超えると、ガラス中に結晶が析出し流動性が損なわれる。好ましくは7%以下である。
【0032】
CuOおよびMnOは化学的耐久性を向上させる効果もあるので、ガラス中に合量で0〜10%含有することができる。その含有量が10%を超えると、軟化点が上昇し流動性が低下する。好ましくは5%以下である。
【0033】
MgO、CaO、SrOおよびBaOは、ガラス粘度を調整し、熱膨張係数を調整する効果もあるので、ガラス中に合量で0〜10%含有することができる。その含有量が10%を超えると、軟化点が上昇し流動性が低下する。好ましくは5%以下である。
【0034】
なお、原料にフッ化物や塩化物などハロゲン化物原料を用いて、ガラス中にハロゲンを取り込ませることにより軟化点を下げることも可能である。
【0035】
以上に説明した本発明で使用する低融点ガラスは、250〜350℃のガラス転移点を有し、500℃以下、特に320〜480℃の温度で流動性に優れており、30〜250℃において90〜150×10−7/℃の熱膨張係数を有している。
【0036】
この低融点ガラス粉末80〜100体積%と耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを混合することにより本発明の封止用フリットとなるが、耐火性フィラー粉末は封止用フリットの熱膨張係数の調整や封止用フリットの強度を向上させるために混合することができる。この耐火性フィラー粉末の混合量が20体積%を超えると、封止用フリットとしての流動性が得られない。好ましくは10体積%以下である。
【0037】
なお、耐火性フィラー粉末としては、シリカガラス、石英、コージェライト、ユークリプタイト、ムライト、ジルコン、リン酸ジルコニウム、ウイレマイト、アルミナが使用できるが、ガラスとの相性及び金属材料の熱膨張係数を考慮すると、シリカガラス、コージェライト、リン酸ジルコニウム、アルミナが好ましい。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明の金属製二重構造容器に使用する封止用フリットは、実質的に鉛を含有せず、SnO 20〜70%、SnO 2〜8%、P 10〜50%を必須成分として含む低融点ガラス 80〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを含有し、上記低融点ガラス粉末のガラス骨格形成剤として、SiOを0.5〜10%含有しても良い。さらに安定させるための成分として、以下に示す任意成分の少なくとも1種を20%以下含有させても良い。任意成分としては、B、ZnO、Al、WO、MoO、Nb、TiO、ZrO、LiO、NaO、KO、CsO、CuO、MnO、MgO、CaO、SrOおよびBaOである。また、低融点ガラスと耐火性フィラー粉末との混合の際に有機系バインダーを添加させたものである。
【0039】
(実施の形態1)この実施の形態は、耐火性フィラー粉末を含有しないときの例である。上記した組成となるように(ただし、SnOの原料はSnOの原料と同じ物を用いる。)原料を混合してバッチ原料とし、このバッチ原料を石英ルツボに入れ1000〜1200℃に調整した炉内に投入し、10〜90分間バッチ原料を加熱することで酸化処理を行ない、その後石英ルツボに蓋を取りつけ、さらに30〜90分間溶融した。そして、この溶融ガラスをブロック状に成形後所望とする形状に切り出し、耐火性フィラー粉末を含有しない封止用フリットが得られる。
【0040】
(実施の形態2)この実施の形態は、耐火性フィラー粉末を含有するときの例である。上記した組成範囲となるように(ただし、SnOの原料はSnOの原料と同じ物を用いる。)原料を混合してバッチ原料とし、このバッチ原料を石英ルツボに入れ1000〜1200℃に調整した炉内に投入し、10〜90分間バッチ原料を加熱することで酸化処理を行ない、その後石英ルツボに蓋を取りつけ、さらに30〜90分間溶融した。そして、溶融されたガラスは、水冷ローラでシート状に成形し粉砕後、目開き105μmの篩を通過したものを低融点ガラスとした。
【0041】
この低融点ガラス80〜100体積%に、一定粒度以下に調整した耐火性フィラー0〜20体積%を加え、かつ有機系バインダーを加え混合し顆粒状粉末とした後、この顆粒状粉末の所定量をプレス成形することにより封止用フリットとする。
【0042】
なお、封着の際には、封止用フリットに含まれるSnOの酸化を防ぐために、アルゴンや窒素などの極力不活性な雰囲気下で行なう方が良好な結果が得られるので好ましい。また、上記実施の形態1では溶融ガラスをブロック成形するとしたが、実施例2と同様に溶融ガラスを粉末化した後、プレス成型して所定形状としても良い。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の封止用ガラスの実施例を詳細に説明する。
【表1】
Figure 2004067406
【0044】
(実施例1)SnOおよびSnOの原料に酸化第一スズ(不純物としてSnOを含んでいても可)を使用し、SnO+SnO 58.8%、P 32.4%、ZnO 4.6%、Al 1.5%、B 0.5%、SiO 2.2%となるように原料を混合してバッチ原料とする。このバッチ原料を石英ルツボに入れ1100℃に調整された溶融炉内に投入して、石英ルツボに蓋をしないまま10分間加熱して酸化処理し、その後石英ルツボに蓋をして50分間溶融した。そして、溶融ガラスを金型にキャストしブロック状(縦100mm×横100mm×高さ20mm)に成形し、288℃(ガラス転移点+10℃)で2時間保持後、3℃/分の降温速度で徐冷した。
【0045】
次に、徐冷されたガラスブロックを縦5mm×横5mm×高さ5mmの大きさのブロック片に切り出し、これを粉砕してガラス中のSnOとSnOとの含有量を分析したところ、SnO 56.2%、SnO 2.5%であった。
【0046】
この分析方法は、まず、低融点ガラス粉末を酸分解した後、ICP発光分光分析により低融点ガラス粉末中に含有されているSn原子の総量を測定する。次に、Sn2+は酸分解したものをヨウ素滴定法により求められるので、そこで求められたSn2+の量をSn原子の総量から減じてSn4+を求める。
【0047】
また、表1に示した転移点および軟化点は、上記ブロック片を粉砕して試料を作り、これを示差熱分析装置によりDTA曲線を求め第一変曲点を転移点、第三変曲点を軟化点として求め、転移点278℃、軟化点344℃であった。さらに、熱膨張係数はガラスブロックから縦5mm×横5mm×高さ20mmの試験体を切り出し30〜250℃の熱膨張係数を測定し、123×10−7/℃であった。
【0048】
封着試験は、ステンレス鋼SUS304(熱膨張係数170×10−7/℃)の板に排気口と同じ形状の孔を開け、そこに、上記したブロック片を載置して444℃(軟化点+100℃)まで昇温した後、封止部分のガラスの状態を観察したところ発泡痕もなく、良好に軟化流動し孔から封止用ガラスが滴れ落ちてもいなかった。また、SUS304に熱による変色等も見られなかった。
【0049】
(実施例2)SnOおよびSnOの原料に酸化第一スズ(不純物としてSnOを含んでいても可)を使用し、SnO+SnO 59.7%、P 32.9%、ZnO 4.7%、Al 0.2%、B 0.2%、SiO 2.3%となるように原料を混合してバッチ原料とする。このバッチ原料を石英ルツボに入れ1100℃に調整された溶融炉内に投入して、石英ルツボに蓋をしないまま20分間加熱して酸化処理し、その後石英ルツボに蓋をして50分間溶融した。そして、溶融ガラスは水冷ローラにより0.3〜0.5mmのシート状に成形し、目開き105μmの篩を通過したものを低融点ガラス粉末とした。また、低融点ガラス中のSnOおよびSnO成分を分析したところ、SnO 56.3%、SnO 3.4%となっていた。
【0050】
この低融点ガラス粉末を上記実施例1と同様に転移点、軟化点および熱膨張係数を測定したところ、転移点267℃、軟化点332℃、熱膨張係数128×10−7/℃であった。
【0051】
この低融点ガラス粉末にアセトンに溶解したミリスチルアルコール20質量%溶液を、低融点ガラス粉末100質量%に対し10質量%の割合で添加し、30分間混合後35℃で乾燥を30分間行ないアセトンを除去し、低融点ガラス粉末を顆粒状とした。そして、この顆粒44〜256μmの範囲のものを20×10kPa圧力でプレスし、直径5mm×高さ5mmのプレス成形体を得た。次に、このプレス成形体を322℃(軟化点−10℃)で20分の加熱処理を行ない、有機系バインダーのミリスチルアルコールを除去し封止用フリットとした。
【0052】
そして、この封止用フリットと上記実施例1同様に孔を成形したSUS304を用いて封着試験を行なったところ、SUS304には変色も見られず、ガラスには発泡痕もなく、良好に軟化流動しており孔を気密に封止できていた。
【0053】
なお、上記顆粒の粒径を44〜256μmとしなければ、良好なプレス成形体を得ることが難しくなる。すなわち、粒径が44μm未満であると粒子同士の接触面積が増えるため、顆粒の流れが阻害され成形型に充填する際の嵩密度が小さくなり焼成時の収縮率が大きくなる。ただし、充填する際に振動等で顆粒の流れを促す施策を用いれば、44μm未満のものを使用することもできる。一方、粒径が256μmを超えるとプレス後に顆粒同士の接触部分が少なく空隙率が高くなり、成形体が脆くなり焼成時の収縮率が大きくなる。
【0054】
(実施例3)SnOおよびSnOの原料に塩化第一スズ(不純物としてSnOを含んでいても可)を使用し、SnO+SnO 67.6%、P 30.0%、ZnO 1.0%、Al 0.2%、SiO 1.2%となるように原料を混合してバッチ原料とする。このバッチ原料を石英ルツボに入れ1100℃に調整された溶融炉内に投入して、石英ルツボに蓋をしないまま20分間加熱して酸化処理し、その後石英ルツボに蓋をして50分間溶融した。そして、溶融ガラスは水冷ローラにより0.3〜0.5mmのシート状に成形し、目開き105μmの篩を通過したものを低融点ガラス粉末とした。また、低融点ガラス中のSnOおよびSnO成分を分析したところ、SnO 65.2%、SnO 2.4%となっていた。
【0055】
この低融点ガラスを上記実施例1と同様に転移点、軟化点および熱膨張係数を測定したところ、転移点252℃、軟化点317℃、熱膨張係数143×10−7/℃であった。
【0056】
この低融点ガラス粉末92体積%に、耐火性フィラーとして45μmの篩を通過したコージェライト粉末8体積%を加えてフリット粉末とし、これに実施例2に記載したミリスチルアルコール20質量%溶液をフリット粉末100質量%に対し10質量%の割合で添加し、実施例2と同様な方法でアセトンを除去し、顆粒状のフリット粉末とした。そして、この顆粒状のフリット粉末の中で粒径44〜256μmの範囲のものを実施例2と同様な方法で、直径5mm×高さ5mmにプレス成形した封止用フリットを得た。
【0057】
そして、この封止用フリットと上記実施例1同様に孔を成形したSUS304を用いて封着試験を行なったところ、SUS304には変色も見られず、ガラスには発泡痕もなく、良好に軟化流動しており孔を気密に封止できていた。なお、本実施例の封止用フリットの軟化点および熱膨張係数を測定したところ、軟化点322℃、熱膨張係数132×10−7/℃であった。
【0058】
(実施例4)SnOおよびSnOの原料にピロリン酸スズ(不純物としてSnOを含んでいても可)を使用し、SnO+SnO 63.7%、P 29.1%、ZnO 4.7%、Al 0.2%、B 0.2%、SiO 2.1%となるように原料を混合してバッチ原料とし、実施例1と同様な方法でガラスブロックを成形して封止用フリットを得たものである。
【0059】
この封止用フリットの特徴は表1に示したとおり、SnOは60.3%、SnOは3.4%で、転移点は260℃、軟化点は327℃、熱膨張係数は128×10−7/℃であった。また、SUS304を用いての封着試験もSUS304の変色もなく、ガラスには発泡痕もなく、良好に軟化流動しており孔を気密に封止できていた。
【0060】
(実施例5)SnOおよびSnOの原料にピロリン酸スズ(不純物としてSnOを含んでいても可)を使用し、SnO+SnO 62.6%、P 33.0%、ZnO 2.0%、SiO 2.4%となるように原料を混合してバッチ原料とし、耐火性フィラーとしてアルミナを18体積%混合したものを封止用フリットとした例である。
【0061】
この封止用フリットに使用されている低融点ガラスの特徴は、表1に示したとおり、SnOは60.3%、SnOは2.3%で、転移点は269℃、軟化点は325℃、熱膨張係数は137×10−7/℃であった。また、封止用フリットの特徴は軟化点334℃、熱膨張係数125×10−7/℃であり、SUS304を用いての封着試験もSUS304の変色もなく、ガラスには発泡痕もなく、良好に軟化流動しており孔を気密に封止できていた。
【0062】
(実施例6)および(実施例7)については、表1の組成となるように原料を調整して、実施例2と同様な条件で低融点ガラスおよび封止用フリット粉末を得たものである。これらの例のSnOおよびSnOの原料には酸化第一スズを使用し、有機系バインダーにはアセトンにステアリルアルコールを20質量%溶解したものを用いた。
【0063】
そして、表1に示したように、転移点は273℃、275℃であり、軟化点は339℃、328℃であり、熱膨張係数は130×10−7/℃、128×10−7/℃であった。これらの特徴を有する封止用フリットでSUS304を用いた封着試験を行なったところ、SUS304には変色もなく、ガラスには発泡痕もなく、良好に軟化流動しており孔を気密に封止できていた。
【0064】
(比較例)比較例を表2に示す。
【表2】
Figure 2004067406
【0065】
(比較例1)この比較例はルツボの蓋を締め切ったまま溶融を行ない、酸化処理を積極的に行なわず、耐火性フィラーにコージェライトを使用し、その含有量を5体積%とした例である。この比較例によると、低融点ガラスとしては、転移点268℃、軟化点333℃、熱膨張係数128×10−7/℃と問題ないものであったが、コージェライト粉末5体積%を混合した封止用フリットを用いて、封着試験を行なったところ、ガラスに失透が生じ良好な封着ができなかった。これは、ガラス中に含まれるSnOの含有量が1.3%と少ないことから、失透が生じたものであった。
【0066】
(比較例2)この比較例はガラス中のSnO成分をSnOの酸化により2.6%含み、転移点272℃、軟化点338℃、熱膨張係数130×10−7/℃の特性を有する低融点ガラス粉末に耐火性フィラーとしてアルミナ粉末を22体積%混合したものを封止用フリットとしたものである。しかし、アルミナ粉末の混合量を22体積%と20体積%を超えていたため、SUS304を用いた封着試験では封止用フリットの流動性が悪く、封着処理後にSUS304の板を落下させ衝撃を与えると、封止用フリットが剥がれ落ち満足できる封着ができなかった。
【0067】
(比較例3)および(比較例4)この比較例は酸化処理を積極的に行なわず、安定化成分としてAlまたはBを添加した低融点ガラスを封止用フリットとして用いたものであるが、SUS304を用いての封着試験では、封止部にピロリン酸系のスズ化合物が生成し、失透が生じると共に流動不足で、封着処理後にSUS304の板を落下させ衝撃を与えると、比較例2よりも容易に封止用フリットが剥がれ落ち良好な封着ができなかった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したとおり、上記の金属製二重構造容器の封止用フリットは、実質的に鉛を含まず、低融点ガラス中にSnOを酸化処理により導入したこと、及びB成分の許容量を2%以下としたことにより、500℃以下で良好な流動性を有し、かつ失透や結晶等の析出物が生成しないため、非結晶性の封止用フリットとして使用することが可能である。また、この封止用フリットで封着された金属製二重構造容器の封着面は、封着部に気泡や剥離のない良好なものであり、真空状態を長期間維持することができる。

Claims (5)

  1. 金属製内容器と外容器とを構成部材として有し、これら内外容器間の空隙部を真空排気する際に、前記内容器と外容器のいずれか一方に形成された排気口を真空封止するのに用いる封止用フリットであって、実質的に鉛を含まず、モル%表示の酸化物換算でSnO 20〜68%、SnO 2〜8%、P 20〜40%の組成を含む低融点ガラス 80〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを含有したものであることを特徴とする金属製真空二重構造容器の封止用フリット。
  2. 前記低融点ガラス中に、0.5〜10モル%のSiOを含有することを特徴とする請求項1記載の封止用フリット。
  3. 前記低融点ガラス粉末中に、B、ZnO、Al、WO、MoO、Nb、TiO、ZrO、LiO、NaO、KO、CsO、CuO、MnO、MgO、CaO、SrOおよびBaOから選ばれる少なくとも1種を合量で20モル%以下含有することを特徴とする請求項1または2記載の封止用フリット。
  4. 前記封止用フリットが、SnOの原料に用いられる酸化第一スズ、塩化第一スズ、ピロリン酸スズ等のスズ化合物を酸化雰囲気で溶融し、Sn2+の一部をSn4+に酸化させたものであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の封止用フリット。
  5. 金属製の内容器と外容器とを構成部材として有し、これら内外容器間の空隙部を真空断熱層とした金属製真空二重構造容器において、前記内容器と外容器のいずれか一方に形成された排気口を封止する封止用フリットが、実質的に鉛を含有せず、モル%表示の酸化物換算でSnO 20〜70%、SnO2〜8%、P 10〜50%を含有する封着ガラス粉末 80〜100体積%と、耐火性フィラー粉末 0〜20体積%とを含有したものであることを特徴とする金属製真空二重構造容器。
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