JP2004066200A - 電気化学的水処理装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の多孔性金属電極を使用する水処理では、電気化学的水処理に実質的に寄与しない端子電極等に金属不純物が析出して処理効率の低下を来たしている。
【解決手段】1枚又は2枚以上の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極に電気的に接続された金属部材(7a、7b)を含んで成る電気化学的水処理装置の前記金属部材の少なくとも一部に電気絶縁性皮膜(8)を形成する。この電気絶縁性皮膜により、前記金属部材表面における金属不純物の析出が防止できる。
【選択図】 図3
【解決手段】1枚又は2枚以上の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極に電気的に接続された金属部材(7a、7b)を含んで成る電気化学的水処理装置の前記金属部材の少なくとも一部に電気絶縁性皮膜(8)を形成する。この電気絶縁性皮膜により、前記金属部材表面における金属不純物の析出が防止できる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理水の電気化学的処理装置に関し、より詳細には金属電極を使用して効率良くかつ安定的に前記被処理水の殺菌や水質保持等を行うための電気化学的水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、純水、水道水、工業用水、井戸水、風呂水、プール水、洗浄水、生活排水、工場排水等の水には程度の差こそあれ細菌等の各種微生物が棲息しあるいは溶質を溶解している。そしてこれらの水溶液は前記溶質が適度の養分を提供し、あるいは該水溶液の温度が微生物の繁殖に適した温度であると、前記微生物が繁殖して前記水溶液の性能劣化を起こしたり、前記各水溶液が流通する配管等の内壁に付着蓄積して前記配管を有する機器の機能を損なうことが多い。これら各種の用水では必要とされる殺菌レベルは異なるが、いずれの用水でも水中微生物数を低コストで減少させて水質の改良を行なうことが必要とされている。
【0003】
このような多種多様な被処理水を処理する方法として、薬剤添加、オゾン処理、活性炭処理、紫外線照射処理、高温煮沸殺菌法、塩素添加法等の多くの手法が被処理水の種類に応じて選択して用いられている。しかしいずれの方法も、被処理水に悪影響を与える、処理効率が十分でない等の欠点があり、満足の得られる方法ではなかった。
例えば主流である薬剤による殺菌は、人体への有害性や耐性菌の発生による薬剤添加の実効性の低下等の理由で回避することが望まれ、特にISOを取得している企業を中心にして脱薬剤の要望が多い。
【0004】
紫外線による殺菌は一過性の殺菌で色度を有する水や多量のSSを含む水の殺菌には不十分であることが多い。
更にオゾン殺菌ではオゾンが発癌性を有するため、この対策に多額の費用が必要となる。
このような薬剤を中心とする水処理では効率の問題又は安全性の問題があり、満足できる結果は得られなかった。
【0005】
このような従来技術の欠点を解消するための水処理方法として、多孔性金属電極を使用する電気化学的な水処理装置が提案されている。
この水処理装置に使用される電極として数種のタイプのものが提案されているが、最も効率的な電極は、チタン金網(ラス)等の複数の多孔性金属電極ユニットをドーナツ状又は額縁状のスペーサーを介して積層して構成した電極構造体であり、該電極構造体を前記筒状等の電解槽内に収容し、被処理水を該電解槽内に供給して前記金属電極ユニットに接触させて酸化あるいは還元作用により水の殺菌等の水の改質を行うようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この水処理法は、比較的多量の被処理水を循環処理でき、処理効率が不十分であれば、再度電解槽に供給して処理を行って被処理水の殺菌等を確実に行うことができるという利点を有している。しかし前記複数の多孔性金属電極ユニットとスペーサーを単に積層し上下方向の圧力を掛けて互いに接触させているだけであり、前記ユニットとスペーサーの外径と電解槽の内径がほぼ同一であるため、前記ユニット等が抜け落ちたりすることは殆どないが、前記ユニットやスペーサーに歪みが生じて変形し、電極ユニット間の距離が増減して各ユニットへの給電が均一に行われなくなって殺菌効率が低下したり、電流集中による電極寿命の短縮化といった不都合が生ずる。これらの問題は装置を大型化するにつれて顕著になる。
【0007】
この欠点を解消するために特に変形しやすい両端の多孔性金属電極ユニットに金属製例えばチタン製のバーを溶接又は圧着し、このチタン製バーから金属電極ユニットに通電することが提案されている。更にこのチタン製バーへの給電用として端子電極も使用される。
純水のような電気伝導率が低い被処理水の場合には、この従来の水処理装置で問題ないが、地下水や温泉水のように電気伝導率が高い被処理水の場合は、金属電極ユニット表面に金属不純物が析出する。
【0008】
特にクーリングタワー水のように水が蒸発し濃縮された状態で使用され、更にカルシウム、マグネシウムやシリカ濃度の高い被処理水の場合は、前記金属不純物の析出が非常に顕著で、樹脂製ケースの中に金属電極を収納するタイプの電解槽では、チタン等の金属電極の開口部が金属不純物で埋まり、通水抵抗が大きくなって通水量が低下すると共に、金属不純物が電気絶縁性であるため、電極部の電気抵抗が上がり、流れる電流値が次第に低下し、殺菌効率が悪化する。
水中に浸漬する方式の電解槽でも同様に電流値が低下し、殺菌効率が悪化する。
従来は定期的に金属不純物が析出した金属電極を塩酸水溶液等で洗浄し、前記金属不純物を溶解し除去していた。洗浄回数は被処理水中の不純物濃度によって異なるが、1年間に1〜6回程度が必要であった。この洗浄には危険物である塩酸等が必要であり、作業性や安全管理上も問題であった。
本発明は、このような金属不純物の析出を少なくして、長期間殺菌効率を安定的に維持できる電気化学的水処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の構成は、スペーサーを介して積層された複数枚の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極の少なくとも1枚に電気的に接続された金属部材を含んで成り、前記多孔性金属電極に通電し該多孔性金属電極により被処理水を電気化学的に処理する電気化学的水処理装置において、前記金属部材の少なくとも一部を電気絶縁処理したことを特徴とする電気化学的水処理装置であり、本発明では複数枚の多孔性金属電極の代わりに単一枚の多孔性金属電極を使用しても良い。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の電気化学的水処理装置では後述する多孔性金属電極を使用する。
この多孔性金属電極に通電するには端子電極(給電体)が必要になり、この端子電極は前記金属電極とは異なり金属の剛体である。更に複数の金属電極の両端面に位置する2枚の金属電極は外力が加わり変形し易いため、補強用部材例えばチタン製バーが接続されることがある。これらの端子電極や補強用部材等の金属部材は前記金属電極に電気的に接続されているが表面が小さいこともあり、電気化学的水処理には殆ど寄与しない。
【0011】
一方、特に被処理水の電気伝導率が高くなると、前記金属部材表面にも微小電流が流れ、前記金属電極表面よりも前記金属部材表面への金属水酸化物等の金属不純物の析出が起こり易くなる。これは金属部材表面でのガス発生量が少なく、金属不純物と金属部材表面との密着性が良好になるからであると推測できる。従って金属不純物の析出はまず金属部材表面で起こり易く、析出した金属不純物が成長して前記金属電極表面に張り出して該金属電極を閉塞させる原因となっている。
【0012】
従って本発明では、前記金属部材表面に電気絶縁処理を施して該金属部材表面からの電流を遮断し、前記金属不純物の析出を抑制する。これにより金属部材表面への金属不純物の析出が防止できるだけでなく、前述した金属電極の閉塞も防止できる。
電気絶縁処理は、前記金属部材の表面に電気絶縁性物質が存在するようにすれば良く、更に前記金属部材表面への又は該金属部材表面からの電流を完全に遮断しなくても良く、部分的遮断でも金属不純物析出の抑制効果は生じる。例えば例示した金属部材のうち、補強用部材にのみ電気絶縁処理を施して端子電極の電気絶縁処理を施さなくても補強用部材において所定の金属不純物析出防止効果が得られる。
【0013】
具体的な電気絶縁処理として、電気絶縁性樹脂、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びウレタン系樹脂等の溶液又は懸濁液を、金属部材表面に塗布し溶媒を蒸発させて電気絶縁層を形成する方法、電気絶縁性樹脂板で金属部材を囲む方法、及び電気絶縁性チューブやテープで金属部材を被覆する方法などがある。
この電気絶縁処理を施した金属電極を有する複数の積層された多孔性金属電極を所定の容器内に収容して電気化学的水処理装置を構成する。
【0014】
本発明の電気化学的水処理装置は、電極として液抜けを良くするため及び接触効率を向上させるため前述した多孔性金属電極を使用する。この場合の「多孔」とは、被処理水の流通に対する抵抗が殆ど零である程度の開口を有することを意味し、金網状、エクスパンドメッシュ状、パンチングメタル状、格子状等の形状がある。例えばエクスパンドメッシュを使用する場合、その開口サイズは短径が1.0 〜4.0 mm、長径が2.0 〜5.0 mm程度になるように調節することが好ましい。多孔性電極は平板無穴電極に比べて表面積が大きく酸化効率が高くなるとともに、被処理水が多孔を通過する際に乱流が発生し、これが被処理水を攪拌して被処理水の金属電極との接触効率を高めていると推測できる。前記多孔性金属電極は、チタン等の耐食性金属基体上に、触媒、例えば白金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、ロジウム又はそれらの酸化物を単独又は混合物として被覆し電極性能を向上させることが望ましい。
【0015】
該金属電極は、それぞれの開口部表面積の総和を、該電極の表面積総和と開口部表面積の総和を加えた電極全面積で除した値の百分率で定義される開口率が10〜80%であることが好ましい。開口率が10%未満であると圧力損失が大きくかつ目詰まりが起こりやすくなるからであり、80%を超えると電極強度に支障が生じ変形や破損が生ずることがあり、又金属電極と被処理水の接触が不十分になることがあるからであり、目詰まり及び接触効率の両者を勘案して適切な開口率を設定することが望ましい。
【0016】
本発明の電気化学的水処理装置は、複数枚の金属電極をスペーサーを介して積層し、各金属電極及び各スペーサーをこれらを通る電気絶縁性締着材、通常はボルト及びナットにより締着し、各金属電極相互を連結して電極構造体を構成することが望ましい。複数の金属電極とスペーサーから成るこの電極構造体は、金属電極の枚数を変えることにより、処理すべき被処理水の量や電解槽内のスペースの状況により比較的自由にその厚さを増減させることができる。その増減はボルト及びナットを使用することが最適である電気絶縁性締着材により容易に行うことができ、例えば樹脂フレームの場合のように内厚の異なる多数の樹脂フレームを準備する等の必要がなくなる。金属電極の枚数を変えて金属電極本体の厚さを変えるだけでなく、金属電極自体又はスペーサーの厚さを変えることが望ましいこともあり、この場合も同様に電気絶縁性締着材の着脱により容易に目的を達成できる。
【0017】
積層された各金属電極への給電は、単一電源を使用して各ユニットが並列になるように接続しかつ通電するか、ユニット数と同数の電源を使用してユニットごとに電源を接続して各ユニットごとに通電するかにより行う。
【0018】
使用するスペーサーは隣接する金属電極間の電気絶縁を確保するためのもので、該電気絶縁性が保証されればその形状は制限されないが、被処理水と金属電極の接触効率を向上させるためにはその面積はできるだけ小さい方が良く、例えば額縁状又はドーナツ状とすることが好ましい。なお該スペーサーの厚さは1〜10mm程度であることが望ましく、これは1mm未満であると電極に析出することのあるカルシウム化合物等により隣接する電極間に短絡が生ずる恐れがあり、又10mmを越えると殺菌等に必要な電流が流れにくくなるからである。又金属電極が多孔板例えばチタンラスの場合は前記スペーサーは金属電極の強度補強の役割も果たす。このスペーサーは隣接する金属電極を電気的に絶縁するとともに、電解により生ずることのある酸素ガスや水素ガスのガス抜けを良好にする機能を有する。金属電極表面で生成する前記ガスは被処理水が前記金属電極表面に接触することを阻害し、かつ各金属電極への通電効率を低下させる。しかしスペーサーの存在により生成ガスが隣接する金属電極間の空間から金属電極本体の周囲へ容易に移動して処理効率を上昇させる。なお本発明はガス発生を伴う処理に限定されるものではない。
【0019】
そしてこの電気化学的水処理装置に被処理水を供給して前記金属電極に接触させて該被処理水の殺菌等の改質処理を行う。又前記電気化学的水処理装置を被処理水中に浸漬して被処理水の処理を行っても良い。
電気化学的水処理は、安全面の理由で直流電圧42V以下で通電することが望ましく、又電流密度が0.1 〜1.0 A/dm2 程度になるようにすると最適の処理効率が得られる。これは0.1 A/dm2 未満では充分な殺菌が行なわれないことがあり、1.0 A/dm2 を越えると電極寿命が短くなることがあるからである。
本発明による微生物の殺菌機構は次のようであると推測できる。
第1に、微生物が陽極表面に衝突して死滅する。第2に前記電極表面で被処理水に含まれる微量塩素が酸化されて次亜塩素酸が発生し、又水電解により活性酸素が発生する。これらの次亜塩素酸や活性酸素により被処理水中の微生物が殺菌され、微量不純物も分解する。
【0020】
本発明による電気絶縁処理を施すことで前記金属部材における金属不純物の析出は防止され又は減少するが、被処理水にカルシウムイオンやマグネシウムイオンが含有されていれば、前記金属電極表面への金属不純物の析出は避けられない。これを防止しあるいは析出量を減少させるには、例えば2〜180 分ごとに極性を反転させて析出するカルシウム化合物やマグネシウム化合物等を溶解させることができる。継続通電時間が2分未満では殺菌効率が悪く電極寿命も短くなりがちであり、180 分を越えると前記化合物の析出量が多くなる。
金属電極にガス発生が生じる電流を供給すると、生成ガスは被処理水中に対流を生じさせ、この対流により被処理水全体を万遍なく金属電極表面に接触させて殺菌効率を高めるだけでなく、表面に析出している金属不純物を剥離し除去することも可能になる。
【0021】
本発明装置は長期間の運転に耐え洗浄は殆ど必要ないが、洗浄を行なう場合には過酸化水素、オゾン水、次亜塩素酸、pH3以下の酸性水、pH9以上のアルカリ水のいずれかを単独で又は交互に流しても良い。又本発明装置は本来有している電気化学的処理単独で被処理水処理を行っても十分な効果を生ずるが、該装置による処理を紫外線殺菌、オゾン殺菌、薬剤殺菌等と併用すると更に確実に短時間で被処理水の処理を行なうことができる。本発明装置を使用すると、被処理水中の微生物の殺菌や他の水質改善を達成できる。前記微生物としては、細菌(バクテリア)、糸状菌(黴)、酵母、変形菌、単細胞の藻類、原生動物、ウイルス等が含まれ、水質改善には、アンモニア等の不純物の分解などが含まれる。
【0022】
本発明の対象となる被処理水は特に限定されず、日常生活用、産業活動の多くの分野で広く使用することができるが、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含む被処理水、例えばクーリングタワー水の処理に特に有用である。前記被処理水の種類としては例えば自然環境中の淡水や海水、人工的に作成された水溶液、希釈用水等があり、更に具体的な例としては工業用水、水道水、浄水、井戸水、雨水、回収水、加湿水、排水、側溝水、貯水、海水(微生物の制菌と貝殻、藻類、水母等の殺菌)、池の水、プール水、ボイラー水、スクラバー水、高架水槽、飲料水、風呂水、ガス吸収塔水、冷却水、温水、水耕栽培水、噴水、写真現像液、養魚用水(鑑賞魚、養殖魚)、鑑賞動物及び養殖鳥用水、水エマルジョン、製紙用水、温泉水、砂糖液、果汁希釈水、染料インク希釈水、水溶性塗料希釈水、水溶性化粧品希釈水、酒希釈水、牛乳希釈水、ジュース希釈水、お茶希釈水、豆乳希釈水、入れ歯保管制菌水、コンタクトレンズ保管制菌水、歯ブラシ保管制菌水、各種化学物質含有水溶液、火力又は原子力発電所用水等を挙げることができ、更に水中微生物個数をゼロにすることが必要又は好ましい食品用水、医薬品用水、磁気記録用ハードディスク洗浄用水、半導体洗浄用水、自動販売機水等も含まれる。更に岸壁、パイプや各種取水口の殺菌用の水の前処理用にも使用できる。
【0023】
本発明によると、前述した多種の被処理水に含まれる微生物や有害不純物を効率良く殺菌するだけでなく、CODやBODの分解除去、更に微量農薬を含有する被処理水から電気化学的に農薬を分解除去し、着色被処理水の色を薄くするといった処理も可能である。更に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化水素、次亜塩素酸あるいは臭化ナトリウム等の塩素化合物又は臭素化合物を添加して前述の水処理を行うと次亜塩素酸や次亜臭素酸を含有する殺菌水が製造できる。この殺菌水は床洗浄水、機器洗浄水、容器洗浄水、野菜洗浄水、肉洗浄水、果物洗浄水等として使用できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に本発明に係わる電気化学的水処理装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電気化学的水処理装置の一実施形態である通水型装置を例示する縦断面図、図2は図1の装置の端子電極及び補強用部材を示す平面図、図3は図2のA−A線縦断面図である。
【0025】
1は、円形のチタン製のエクスパンドメッシュ(短径3mm、長径4mm程度が最適)の表面に、例えば白金とイリジウムの混合物を担持した金属電極であり、図では11枚の金属電極1が、その周縁部間にドーナツ状の10枚のスペーサー2を挟んで上下方向に積層されて電極構造体3が構成されている。各金属電極1及びスペーサー2のそれぞれの対応箇所には通孔4が穿設され、この孔には上方から電気絶縁性の材料、例えば樹脂で成型されたボルト5が挿入され、最下方の金属電極1より下に位置するボルト5の下端を電気絶縁性のナット6で締着して各部材が強固に接合した前記電極構造体3が一体的に形成されている。
【0026】
最上位の金属電極1の上面及び最下位の金属電極1の下面には、中央の端子電極7a、及び該端子電極7aから放射状に延びる4本の補強用部材7bから成る給電兼補強板7がそれぞれ電極構造体3方向に向けて圧接され、電極構造体3の最上位の金属電極1に負の電流を給電しかつ最下位の金属電極1に正の電流を給電するとともに電極構造体3の強度を高めている。前記給電兼補強板7を構成する端子電極7a及び補強用部材7bの表面には電気絶縁性樹脂を溶解した溶液を塗布しかつ溶媒を蒸発除去して形成した電気絶縁性皮膜8が被覆されている。9は、電極構造体3を電解槽内の所定位置に固定するために電解槽内壁に形成された内向き突起、10はエルボ状の被処理水導入口11を下面中央に有する電解槽底板、12は処理済水取出口13を上面中央に有する電解槽天板である。
【0027】
上下の給電兼補強板7間に通電すると11枚の金属電極1は各ユニットの下面が正に上面が負に帯電する。カルシウムイオンやマグネシウムイオンを溶解しているき被処理水は主としてこの金属電極1の下面(正に帯電)に接触して該被処理水中の微生物殺菌(酸化)が行なわれ更にその近傍では該被処理水の電気分解に依る発生期の酸素や塩素イオンの酸化に伴い発生する次亜塩素酸イオンに依る微生物殺菌やBOD、COD及び農薬、アンモニア等の酸化分解が行われ、上面(負に帯電)近傍ではこれら酸化生成物の還元に伴い発生する発生期の酸素に依る微生物殺菌が効率的に行われる。
【0028】
被処理水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンは各金属電極1の負に帯電した箇所に接触して水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムの沈殿として析出する。しかし金属製で本来これらの沈殿が析出してしまう前記端子電極7a及び補強用部材7bの表面に電気絶縁性皮膜8が被覆されているため、それらの表面に電流が流れず、従って金属水酸化物の沈殿も生成しない。
図示の例では被処理水を供給して被処理水の殺菌処理等を行う電気化学的水処理装置を説明したが、被処理水に電気化学的水処理装置を浸漬して被処理水の処理を行っても良い。
【0029】
図4は、本発明の電気化学的水処理装置の他の実施形態である浸漬型装置を例示する縦断面図、図5は図4の装置の金属電極を示す平面図、図6は図5のB−B線縦断面図である。
1対の脚部21上に設置された、長方形である上部枠22と下部枠23の間には、4枚の金属電極24が3枚の額縁状のスペーサー25を介して積層されて電気化学的水処理装置を構成している。
【0030】
各金属電極24は電極枠26(図4では図示略)で補強され、前記金属電極24には電極枠26と金属電極24の間に設置された端子電極27を通して給電される。
前記電極枠26及び端子電極27には図6に示すように電気絶縁性皮膜28が被覆されている。
この電気化学的水処理装置は殺菌処理の対象である被処理水中に浸漬した状態で使用され、つまり前記脚部21を使用して被処理水タンク等の底板上に設置し、被処理水の殺菌処理が行われる。
【0031】
【実施例】
次に本発明に係る電気化学的水処理装置を使用する被処理水の処理に関する実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0032】
実施例1
熱交換機から循環するクーリングタワー内のクーリングタワー水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼クーリングタワー装置
冷却能力:200冷凍トン
循環水量:230トン/hr
貯水量:3トン
【0033】
▲2▼クーリングタワー水の平均水質
pH:8.7
電気伝導率:870μs/cm
酸消費量(pH4.8):240mgCaCO3/L
全硬度:380mgCaCO3/L
カルシウム硬度:240mgCaCO3/L
シリカ濃度:150mgSiO2/L
塩素イオン濃度:74mgCl−/L
一般生菌数:約100CFU/ml
【0034】
▲3▼電気化学的水処理装置
図4に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は多孔性チタン電極とし、電極枠を厚さ1mmの塩化ビニル板で覆い、端子電極をポリテトラフルロエチレン製シールテープとポリエチレン製熱収縮チューブで被覆した。この装置を前記電気化学的水処理装置中に浸漬した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC16A、最大出力電圧40Vとなるように通電し、極性反転時間は20分ごととした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、図7のグラフに見られるように、一般生菌数は約100CFU/ml前後で安定し、180日経過後も金属不純物の沈殿は見られなかった。なお一般生菌数の測定は寒天培地培養JIS法に依った。
【0035】
比較例1
電極枠及び端子電極の被覆を行わなかったこと以外は実施例1と同じ条件でクーリングタワー水の電気化学的処理を行ったところ、図7のグラフに見られるように、一般生菌数は90日経過時までは約100CFU/ml前後で安定したが、120日経過後から増加し、金属電極に白色の無機系付着物が析出し、電流が7.5Aに減少した。
【0036】
実施例2
熱交換機から循環するクーリングタワー内のクーリングタワー水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼クーリングタワー装置
冷却能力:100冷凍トン
循環水量:130トン/hr
貯水量:1.5トン
【0037】
▲2▼クーリングタワー水の平均水質
pH:8.0
電気伝導率:1200μs/cm
酸消費量(pH4.8):240mgCaCO3/L
全硬度:470mgCaCO3/L
カルシウム硬度:340mgCaCO3/L
シリカ濃度:130mgSiO2/L
塩素イオン濃度:128mgCl−/L
一般生菌数:約100CFU/ml
【0038】
▲3▼電気化学的水処理装置
図1に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は多孔性チタン電極とし、補強用部材であるチタンバーを厚さ1mmの塩化ビニル板で覆い、端子電極をポリテトラフルロエチレン製シールテープとポリエチレン製熱収縮チューブで被覆した。この装置に前記クーリングタワーを4トン/hrとなるように通水した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC2A、最大出力電圧80Vとなるように通電し、極性反転時間は10分ごととした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、図8のグラフに見られるように、一般生菌数は約30CFU/ml前後で安定し、180日経過後も金属不純物の沈殿は見られなかった。
【0039】
比較例2
補強用部材及び端子電極の被覆を行わなかったこと以外は実施例2と同じ条件でクーリングタワー水の電気化学的処理を行ったところ、図8のグラフに見られるように、一般生菌数は60日経過時までは約30CFU/ml前後で安定したが、60日経過後から増加し、金属電極に白色の無機系付着物が析出し、流量が1.5トン/hrに低下し、電流もが0.5Aに減少した。
【0040】
実施例3
地下水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼地下水貯水タンク
貯水量:30トン
【0041】
▲2▼地下水の平均水質
pH(25℃):7.2
電気伝導率(25℃):185μs/cm
酸消費量(pH4.8):41mgCaCO3/L
全硬度:97mgCaCO3/L
カルシウム硬度:8mgCaCO3/L
塩素イオン濃度:29mgCl−/L
一般生菌数:1〜2CFU/ml
【0042】
▲3▼電気化学的水処理装置
図1に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は多孔性チタン電極とし、補強用部材であるチタンバーを厚さ1mmの塩化ビニル板で覆い、端子電極をポリテトラフルロエチレン製シールテープとポリエチレン製熱収縮チューブで被覆した。この装置に前記地下水を20トン/hrとなるように通水した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC24A、最大出力電圧40Vとなるように通電し、極性反転時間は10分ごととした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、図9のグラフに見られるように、一般生菌数は120日経過時までは1〜2CFU/mlで安定し、その後は0CFU/mlであった。360日経過後も金属不純物の沈殿は見られなかった。
【0043】
比較例3
補強用部材及び端子電極の被覆を行わなかったこと以外は実施例3と同じ条件で地下水の電気化学的処理を行ったところ、図9のグラフに見られるように、一般生菌数は120日経過時までは約3CFU/mlであったが、120日経過後から増加し、金属電極に白色の無機系付着物が析出し、電流もが0.5Aに減少した。
【0044】
【発明の効果】
本発明に係わる電気化学的水処理装置は、スペーサーを介して積層された複数枚の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極の少なくとも1枚に電気的に接続された金属部材を含んで成り、前記多孔性金属電極に通電し該多孔性金属電極により被処理水を電気化学的に処理する電気化学的水処理装置において、前記金属部材の少なくとも一部を電気絶縁処理することを特徴とする電気化学的水処理装置(請求項1)であり、多孔性金属電極は単一枚としても良い(請求項2)。
【0045】
カルシウムイオン等に起因する沈殿の析出による処理効率の低下は、処理に有効な金属電極面だけでなく、処理効率には実質的な影響を及ぼさない端子電極や補強用部材といった金属部材表面でも生じる。
本発明は前述した構成を有し、前記金属部材表面に電気絶縁処理が施されているため、金属部材表面に電流が流れることに起因する金属不純物の析出が防止され、更にこの金属部材が実質的に電気化学的水処理に寄与しないため、処理効率の低下をもたらすこともない。
【0046】
この電気絶縁処理は、電気絶縁性物質が金属部材表面に存在する任意の形態として行うことができ、電気絶縁性樹脂の溶液等の塗布(請求項3)、電気絶縁性樹脂板による金属部材の囲み込み(請求項4)、及び電気絶縁性チューブ又はテープによる被覆(請求項5)などがある。
又電気絶縁処理の対象である金属部材も、給電用端子電極、電極枠及び補強用部材等から選択できる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学的水処理装置の一実施形態である通水型装置を例示する縦断面図。
【図2】図1の装置の端子電極及び補強用部材を示す平面図。
【図3】図2のA−A線縦断面図。
【図4】本発明の電気化学的水処理装置の他の実施形態である浸漬型装置を例示する縦断面図。
【図5】図4の装置の金属電極を示す平面図。
【図6】図5のB−B線縦断面図。
【図7】実施例1及び比較例1における処理日数と一般生菌数の関係を示すグラフ。
【図8】実施例2及び比較例2における処理日数と一般生菌数の関係を示すグラフ。
【図9】実施例3及び比較例3における処理日数と一般生菌数の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 金属電極
2 スペーサー
3 電極構造体
7a 端子電極
7b 補強用部材
8 電気絶縁性皮膜
24 金属電極
25 スペーサー
26 電極枠
27 端子電極
28 電気絶縁性皮膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理水の電気化学的処理装置に関し、より詳細には金属電極を使用して効率良くかつ安定的に前記被処理水の殺菌や水質保持等を行うための電気化学的水処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、純水、水道水、工業用水、井戸水、風呂水、プール水、洗浄水、生活排水、工場排水等の水には程度の差こそあれ細菌等の各種微生物が棲息しあるいは溶質を溶解している。そしてこれらの水溶液は前記溶質が適度の養分を提供し、あるいは該水溶液の温度が微生物の繁殖に適した温度であると、前記微生物が繁殖して前記水溶液の性能劣化を起こしたり、前記各水溶液が流通する配管等の内壁に付着蓄積して前記配管を有する機器の機能を損なうことが多い。これら各種の用水では必要とされる殺菌レベルは異なるが、いずれの用水でも水中微生物数を低コストで減少させて水質の改良を行なうことが必要とされている。
【0003】
このような多種多様な被処理水を処理する方法として、薬剤添加、オゾン処理、活性炭処理、紫外線照射処理、高温煮沸殺菌法、塩素添加法等の多くの手法が被処理水の種類に応じて選択して用いられている。しかしいずれの方法も、被処理水に悪影響を与える、処理効率が十分でない等の欠点があり、満足の得られる方法ではなかった。
例えば主流である薬剤による殺菌は、人体への有害性や耐性菌の発生による薬剤添加の実効性の低下等の理由で回避することが望まれ、特にISOを取得している企業を中心にして脱薬剤の要望が多い。
【0004】
紫外線による殺菌は一過性の殺菌で色度を有する水や多量のSSを含む水の殺菌には不十分であることが多い。
更にオゾン殺菌ではオゾンが発癌性を有するため、この対策に多額の費用が必要となる。
このような薬剤を中心とする水処理では効率の問題又は安全性の問題があり、満足できる結果は得られなかった。
【0005】
このような従来技術の欠点を解消するための水処理方法として、多孔性金属電極を使用する電気化学的な水処理装置が提案されている。
この水処理装置に使用される電極として数種のタイプのものが提案されているが、最も効率的な電極は、チタン金網(ラス)等の複数の多孔性金属電極ユニットをドーナツ状又は額縁状のスペーサーを介して積層して構成した電極構造体であり、該電極構造体を前記筒状等の電解槽内に収容し、被処理水を該電解槽内に供給して前記金属電極ユニットに接触させて酸化あるいは還元作用により水の殺菌等の水の改質を行うようにしている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この水処理法は、比較的多量の被処理水を循環処理でき、処理効率が不十分であれば、再度電解槽に供給して処理を行って被処理水の殺菌等を確実に行うことができるという利点を有している。しかし前記複数の多孔性金属電極ユニットとスペーサーを単に積層し上下方向の圧力を掛けて互いに接触させているだけであり、前記ユニットとスペーサーの外径と電解槽の内径がほぼ同一であるため、前記ユニット等が抜け落ちたりすることは殆どないが、前記ユニットやスペーサーに歪みが生じて変形し、電極ユニット間の距離が増減して各ユニットへの給電が均一に行われなくなって殺菌効率が低下したり、電流集中による電極寿命の短縮化といった不都合が生ずる。これらの問題は装置を大型化するにつれて顕著になる。
【0007】
この欠点を解消するために特に変形しやすい両端の多孔性金属電極ユニットに金属製例えばチタン製のバーを溶接又は圧着し、このチタン製バーから金属電極ユニットに通電することが提案されている。更にこのチタン製バーへの給電用として端子電極も使用される。
純水のような電気伝導率が低い被処理水の場合には、この従来の水処理装置で問題ないが、地下水や温泉水のように電気伝導率が高い被処理水の場合は、金属電極ユニット表面に金属不純物が析出する。
【0008】
特にクーリングタワー水のように水が蒸発し濃縮された状態で使用され、更にカルシウム、マグネシウムやシリカ濃度の高い被処理水の場合は、前記金属不純物の析出が非常に顕著で、樹脂製ケースの中に金属電極を収納するタイプの電解槽では、チタン等の金属電極の開口部が金属不純物で埋まり、通水抵抗が大きくなって通水量が低下すると共に、金属不純物が電気絶縁性であるため、電極部の電気抵抗が上がり、流れる電流値が次第に低下し、殺菌効率が悪化する。
水中に浸漬する方式の電解槽でも同様に電流値が低下し、殺菌効率が悪化する。
従来は定期的に金属不純物が析出した金属電極を塩酸水溶液等で洗浄し、前記金属不純物を溶解し除去していた。洗浄回数は被処理水中の不純物濃度によって異なるが、1年間に1〜6回程度が必要であった。この洗浄には危険物である塩酸等が必要であり、作業性や安全管理上も問題であった。
本発明は、このような金属不純物の析出を少なくして、長期間殺菌効率を安定的に維持できる電気化学的水処理装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の構成は、スペーサーを介して積層された複数枚の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極の少なくとも1枚に電気的に接続された金属部材を含んで成り、前記多孔性金属電極に通電し該多孔性金属電極により被処理水を電気化学的に処理する電気化学的水処理装置において、前記金属部材の少なくとも一部を電気絶縁処理したことを特徴とする電気化学的水処理装置であり、本発明では複数枚の多孔性金属電極の代わりに単一枚の多孔性金属電極を使用しても良い。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の電気化学的水処理装置では後述する多孔性金属電極を使用する。
この多孔性金属電極に通電するには端子電極(給電体)が必要になり、この端子電極は前記金属電極とは異なり金属の剛体である。更に複数の金属電極の両端面に位置する2枚の金属電極は外力が加わり変形し易いため、補強用部材例えばチタン製バーが接続されることがある。これらの端子電極や補強用部材等の金属部材は前記金属電極に電気的に接続されているが表面が小さいこともあり、電気化学的水処理には殆ど寄与しない。
【0011】
一方、特に被処理水の電気伝導率が高くなると、前記金属部材表面にも微小電流が流れ、前記金属電極表面よりも前記金属部材表面への金属水酸化物等の金属不純物の析出が起こり易くなる。これは金属部材表面でのガス発生量が少なく、金属不純物と金属部材表面との密着性が良好になるからであると推測できる。従って金属不純物の析出はまず金属部材表面で起こり易く、析出した金属不純物が成長して前記金属電極表面に張り出して該金属電極を閉塞させる原因となっている。
【0012】
従って本発明では、前記金属部材表面に電気絶縁処理を施して該金属部材表面からの電流を遮断し、前記金属不純物の析出を抑制する。これにより金属部材表面への金属不純物の析出が防止できるだけでなく、前述した金属電極の閉塞も防止できる。
電気絶縁処理は、前記金属部材の表面に電気絶縁性物質が存在するようにすれば良く、更に前記金属部材表面への又は該金属部材表面からの電流を完全に遮断しなくても良く、部分的遮断でも金属不純物析出の抑制効果は生じる。例えば例示した金属部材のうち、補強用部材にのみ電気絶縁処理を施して端子電極の電気絶縁処理を施さなくても補強用部材において所定の金属不純物析出防止効果が得られる。
【0013】
具体的な電気絶縁処理として、電気絶縁性樹脂、例えばポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びウレタン系樹脂等の溶液又は懸濁液を、金属部材表面に塗布し溶媒を蒸発させて電気絶縁層を形成する方法、電気絶縁性樹脂板で金属部材を囲む方法、及び電気絶縁性チューブやテープで金属部材を被覆する方法などがある。
この電気絶縁処理を施した金属電極を有する複数の積層された多孔性金属電極を所定の容器内に収容して電気化学的水処理装置を構成する。
【0014】
本発明の電気化学的水処理装置は、電極として液抜けを良くするため及び接触効率を向上させるため前述した多孔性金属電極を使用する。この場合の「多孔」とは、被処理水の流通に対する抵抗が殆ど零である程度の開口を有することを意味し、金網状、エクスパンドメッシュ状、パンチングメタル状、格子状等の形状がある。例えばエクスパンドメッシュを使用する場合、その開口サイズは短径が1.0 〜4.0 mm、長径が2.0 〜5.0 mm程度になるように調節することが好ましい。多孔性電極は平板無穴電極に比べて表面積が大きく酸化効率が高くなるとともに、被処理水が多孔を通過する際に乱流が発生し、これが被処理水を攪拌して被処理水の金属電極との接触効率を高めていると推測できる。前記多孔性金属電極は、チタン等の耐食性金属基体上に、触媒、例えば白金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、ロジウム又はそれらの酸化物を単独又は混合物として被覆し電極性能を向上させることが望ましい。
【0015】
該金属電極は、それぞれの開口部表面積の総和を、該電極の表面積総和と開口部表面積の総和を加えた電極全面積で除した値の百分率で定義される開口率が10〜80%であることが好ましい。開口率が10%未満であると圧力損失が大きくかつ目詰まりが起こりやすくなるからであり、80%を超えると電極強度に支障が生じ変形や破損が生ずることがあり、又金属電極と被処理水の接触が不十分になることがあるからであり、目詰まり及び接触効率の両者を勘案して適切な開口率を設定することが望ましい。
【0016】
本発明の電気化学的水処理装置は、複数枚の金属電極をスペーサーを介して積層し、各金属電極及び各スペーサーをこれらを通る電気絶縁性締着材、通常はボルト及びナットにより締着し、各金属電極相互を連結して電極構造体を構成することが望ましい。複数の金属電極とスペーサーから成るこの電極構造体は、金属電極の枚数を変えることにより、処理すべき被処理水の量や電解槽内のスペースの状況により比較的自由にその厚さを増減させることができる。その増減はボルト及びナットを使用することが最適である電気絶縁性締着材により容易に行うことができ、例えば樹脂フレームの場合のように内厚の異なる多数の樹脂フレームを準備する等の必要がなくなる。金属電極の枚数を変えて金属電極本体の厚さを変えるだけでなく、金属電極自体又はスペーサーの厚さを変えることが望ましいこともあり、この場合も同様に電気絶縁性締着材の着脱により容易に目的を達成できる。
【0017】
積層された各金属電極への給電は、単一電源を使用して各ユニットが並列になるように接続しかつ通電するか、ユニット数と同数の電源を使用してユニットごとに電源を接続して各ユニットごとに通電するかにより行う。
【0018】
使用するスペーサーは隣接する金属電極間の電気絶縁を確保するためのもので、該電気絶縁性が保証されればその形状は制限されないが、被処理水と金属電極の接触効率を向上させるためにはその面積はできるだけ小さい方が良く、例えば額縁状又はドーナツ状とすることが好ましい。なお該スペーサーの厚さは1〜10mm程度であることが望ましく、これは1mm未満であると電極に析出することのあるカルシウム化合物等により隣接する電極間に短絡が生ずる恐れがあり、又10mmを越えると殺菌等に必要な電流が流れにくくなるからである。又金属電極が多孔板例えばチタンラスの場合は前記スペーサーは金属電極の強度補強の役割も果たす。このスペーサーは隣接する金属電極を電気的に絶縁するとともに、電解により生ずることのある酸素ガスや水素ガスのガス抜けを良好にする機能を有する。金属電極表面で生成する前記ガスは被処理水が前記金属電極表面に接触することを阻害し、かつ各金属電極への通電効率を低下させる。しかしスペーサーの存在により生成ガスが隣接する金属電極間の空間から金属電極本体の周囲へ容易に移動して処理効率を上昇させる。なお本発明はガス発生を伴う処理に限定されるものではない。
【0019】
そしてこの電気化学的水処理装置に被処理水を供給して前記金属電極に接触させて該被処理水の殺菌等の改質処理を行う。又前記電気化学的水処理装置を被処理水中に浸漬して被処理水の処理を行っても良い。
電気化学的水処理は、安全面の理由で直流電圧42V以下で通電することが望ましく、又電流密度が0.1 〜1.0 A/dm2 程度になるようにすると最適の処理効率が得られる。これは0.1 A/dm2 未満では充分な殺菌が行なわれないことがあり、1.0 A/dm2 を越えると電極寿命が短くなることがあるからである。
本発明による微生物の殺菌機構は次のようであると推測できる。
第1に、微生物が陽極表面に衝突して死滅する。第2に前記電極表面で被処理水に含まれる微量塩素が酸化されて次亜塩素酸が発生し、又水電解により活性酸素が発生する。これらの次亜塩素酸や活性酸素により被処理水中の微生物が殺菌され、微量不純物も分解する。
【0020】
本発明による電気絶縁処理を施すことで前記金属部材における金属不純物の析出は防止され又は減少するが、被処理水にカルシウムイオンやマグネシウムイオンが含有されていれば、前記金属電極表面への金属不純物の析出は避けられない。これを防止しあるいは析出量を減少させるには、例えば2〜180 分ごとに極性を反転させて析出するカルシウム化合物やマグネシウム化合物等を溶解させることができる。継続通電時間が2分未満では殺菌効率が悪く電極寿命も短くなりがちであり、180 分を越えると前記化合物の析出量が多くなる。
金属電極にガス発生が生じる電流を供給すると、生成ガスは被処理水中に対流を生じさせ、この対流により被処理水全体を万遍なく金属電極表面に接触させて殺菌効率を高めるだけでなく、表面に析出している金属不純物を剥離し除去することも可能になる。
【0021】
本発明装置は長期間の運転に耐え洗浄は殆ど必要ないが、洗浄を行なう場合には過酸化水素、オゾン水、次亜塩素酸、pH3以下の酸性水、pH9以上のアルカリ水のいずれかを単独で又は交互に流しても良い。又本発明装置は本来有している電気化学的処理単独で被処理水処理を行っても十分な効果を生ずるが、該装置による処理を紫外線殺菌、オゾン殺菌、薬剤殺菌等と併用すると更に確実に短時間で被処理水の処理を行なうことができる。本発明装置を使用すると、被処理水中の微生物の殺菌や他の水質改善を達成できる。前記微生物としては、細菌(バクテリア)、糸状菌(黴)、酵母、変形菌、単細胞の藻類、原生動物、ウイルス等が含まれ、水質改善には、アンモニア等の不純物の分解などが含まれる。
【0022】
本発明の対象となる被処理水は特に限定されず、日常生活用、産業活動の多くの分野で広く使用することができるが、カルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含む被処理水、例えばクーリングタワー水の処理に特に有用である。前記被処理水の種類としては例えば自然環境中の淡水や海水、人工的に作成された水溶液、希釈用水等があり、更に具体的な例としては工業用水、水道水、浄水、井戸水、雨水、回収水、加湿水、排水、側溝水、貯水、海水(微生物の制菌と貝殻、藻類、水母等の殺菌)、池の水、プール水、ボイラー水、スクラバー水、高架水槽、飲料水、風呂水、ガス吸収塔水、冷却水、温水、水耕栽培水、噴水、写真現像液、養魚用水(鑑賞魚、養殖魚)、鑑賞動物及び養殖鳥用水、水エマルジョン、製紙用水、温泉水、砂糖液、果汁希釈水、染料インク希釈水、水溶性塗料希釈水、水溶性化粧品希釈水、酒希釈水、牛乳希釈水、ジュース希釈水、お茶希釈水、豆乳希釈水、入れ歯保管制菌水、コンタクトレンズ保管制菌水、歯ブラシ保管制菌水、各種化学物質含有水溶液、火力又は原子力発電所用水等を挙げることができ、更に水中微生物個数をゼロにすることが必要又は好ましい食品用水、医薬品用水、磁気記録用ハードディスク洗浄用水、半導体洗浄用水、自動販売機水等も含まれる。更に岸壁、パイプや各種取水口の殺菌用の水の前処理用にも使用できる。
【0023】
本発明によると、前述した多種の被処理水に含まれる微生物や有害不純物を効率良く殺菌するだけでなく、CODやBODの分解除去、更に微量農薬を含有する被処理水から電気化学的に農薬を分解除去し、着色被処理水の色を薄くするといった処理も可能である。更に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化水素、次亜塩素酸あるいは臭化ナトリウム等の塩素化合物又は臭素化合物を添加して前述の水処理を行うと次亜塩素酸や次亜臭素酸を含有する殺菌水が製造できる。この殺菌水は床洗浄水、機器洗浄水、容器洗浄水、野菜洗浄水、肉洗浄水、果物洗浄水等として使用できる。
【0024】
【発明の実施の形態】
次に本発明に係わる電気化学的水処理装置の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電気化学的水処理装置の一実施形態である通水型装置を例示する縦断面図、図2は図1の装置の端子電極及び補強用部材を示す平面図、図3は図2のA−A線縦断面図である。
【0025】
1は、円形のチタン製のエクスパンドメッシュ(短径3mm、長径4mm程度が最適)の表面に、例えば白金とイリジウムの混合物を担持した金属電極であり、図では11枚の金属電極1が、その周縁部間にドーナツ状の10枚のスペーサー2を挟んで上下方向に積層されて電極構造体3が構成されている。各金属電極1及びスペーサー2のそれぞれの対応箇所には通孔4が穿設され、この孔には上方から電気絶縁性の材料、例えば樹脂で成型されたボルト5が挿入され、最下方の金属電極1より下に位置するボルト5の下端を電気絶縁性のナット6で締着して各部材が強固に接合した前記電極構造体3が一体的に形成されている。
【0026】
最上位の金属電極1の上面及び最下位の金属電極1の下面には、中央の端子電極7a、及び該端子電極7aから放射状に延びる4本の補強用部材7bから成る給電兼補強板7がそれぞれ電極構造体3方向に向けて圧接され、電極構造体3の最上位の金属電極1に負の電流を給電しかつ最下位の金属電極1に正の電流を給電するとともに電極構造体3の強度を高めている。前記給電兼補強板7を構成する端子電極7a及び補強用部材7bの表面には電気絶縁性樹脂を溶解した溶液を塗布しかつ溶媒を蒸発除去して形成した電気絶縁性皮膜8が被覆されている。9は、電極構造体3を電解槽内の所定位置に固定するために電解槽内壁に形成された内向き突起、10はエルボ状の被処理水導入口11を下面中央に有する電解槽底板、12は処理済水取出口13を上面中央に有する電解槽天板である。
【0027】
上下の給電兼補強板7間に通電すると11枚の金属電極1は各ユニットの下面が正に上面が負に帯電する。カルシウムイオンやマグネシウムイオンを溶解しているき被処理水は主としてこの金属電極1の下面(正に帯電)に接触して該被処理水中の微生物殺菌(酸化)が行なわれ更にその近傍では該被処理水の電気分解に依る発生期の酸素や塩素イオンの酸化に伴い発生する次亜塩素酸イオンに依る微生物殺菌やBOD、COD及び農薬、アンモニア等の酸化分解が行われ、上面(負に帯電)近傍ではこれら酸化生成物の還元に伴い発生する発生期の酸素に依る微生物殺菌が効率的に行われる。
【0028】
被処理水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンは各金属電極1の負に帯電した箇所に接触して水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムの沈殿として析出する。しかし金属製で本来これらの沈殿が析出してしまう前記端子電極7a及び補強用部材7bの表面に電気絶縁性皮膜8が被覆されているため、それらの表面に電流が流れず、従って金属水酸化物の沈殿も生成しない。
図示の例では被処理水を供給して被処理水の殺菌処理等を行う電気化学的水処理装置を説明したが、被処理水に電気化学的水処理装置を浸漬して被処理水の処理を行っても良い。
【0029】
図4は、本発明の電気化学的水処理装置の他の実施形態である浸漬型装置を例示する縦断面図、図5は図4の装置の金属電極を示す平面図、図6は図5のB−B線縦断面図である。
1対の脚部21上に設置された、長方形である上部枠22と下部枠23の間には、4枚の金属電極24が3枚の額縁状のスペーサー25を介して積層されて電気化学的水処理装置を構成している。
【0030】
各金属電極24は電極枠26(図4では図示略)で補強され、前記金属電極24には電極枠26と金属電極24の間に設置された端子電極27を通して給電される。
前記電極枠26及び端子電極27には図6に示すように電気絶縁性皮膜28が被覆されている。
この電気化学的水処理装置は殺菌処理の対象である被処理水中に浸漬した状態で使用され、つまり前記脚部21を使用して被処理水タンク等の底板上に設置し、被処理水の殺菌処理が行われる。
【0031】
【実施例】
次に本発明に係る電気化学的水処理装置を使用する被処理水の処理に関する実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0032】
実施例1
熱交換機から循環するクーリングタワー内のクーリングタワー水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼クーリングタワー装置
冷却能力:200冷凍トン
循環水量:230トン/hr
貯水量:3トン
【0033】
▲2▼クーリングタワー水の平均水質
pH:8.7
電気伝導率:870μs/cm
酸消費量(pH4.8):240mgCaCO3/L
全硬度:380mgCaCO3/L
カルシウム硬度:240mgCaCO3/L
シリカ濃度:150mgSiO2/L
塩素イオン濃度:74mgCl−/L
一般生菌数:約100CFU/ml
【0034】
▲3▼電気化学的水処理装置
図4に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は多孔性チタン電極とし、電極枠を厚さ1mmの塩化ビニル板で覆い、端子電極をポリテトラフルロエチレン製シールテープとポリエチレン製熱収縮チューブで被覆した。この装置を前記電気化学的水処理装置中に浸漬した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC16A、最大出力電圧40Vとなるように通電し、極性反転時間は20分ごととした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、図7のグラフに見られるように、一般生菌数は約100CFU/ml前後で安定し、180日経過後も金属不純物の沈殿は見られなかった。なお一般生菌数の測定は寒天培地培養JIS法に依った。
【0035】
比較例1
電極枠及び端子電極の被覆を行わなかったこと以外は実施例1と同じ条件でクーリングタワー水の電気化学的処理を行ったところ、図7のグラフに見られるように、一般生菌数は90日経過時までは約100CFU/ml前後で安定したが、120日経過後から増加し、金属電極に白色の無機系付着物が析出し、電流が7.5Aに減少した。
【0036】
実施例2
熱交換機から循環するクーリングタワー内のクーリングタワー水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼クーリングタワー装置
冷却能力:100冷凍トン
循環水量:130トン/hr
貯水量:1.5トン
【0037】
▲2▼クーリングタワー水の平均水質
pH:8.0
電気伝導率:1200μs/cm
酸消費量(pH4.8):240mgCaCO3/L
全硬度:470mgCaCO3/L
カルシウム硬度:340mgCaCO3/L
シリカ濃度:130mgSiO2/L
塩素イオン濃度:128mgCl−/L
一般生菌数:約100CFU/ml
【0038】
▲3▼電気化学的水処理装置
図1に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は多孔性チタン電極とし、補強用部材であるチタンバーを厚さ1mmの塩化ビニル板で覆い、端子電極をポリテトラフルロエチレン製シールテープとポリエチレン製熱収縮チューブで被覆した。この装置に前記クーリングタワーを4トン/hrとなるように通水した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC2A、最大出力電圧80Vとなるように通電し、極性反転時間は10分ごととした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、図8のグラフに見られるように、一般生菌数は約30CFU/ml前後で安定し、180日経過後も金属不純物の沈殿は見られなかった。
【0039】
比較例2
補強用部材及び端子電極の被覆を行わなかったこと以外は実施例2と同じ条件でクーリングタワー水の電気化学的処理を行ったところ、図8のグラフに見られるように、一般生菌数は60日経過時までは約30CFU/ml前後で安定したが、60日経過後から増加し、金属電極に白色の無機系付着物が析出し、流量が1.5トン/hrに低下し、電流もが0.5Aに減少した。
【0040】
実施例3
地下水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼地下水貯水タンク
貯水量:30トン
【0041】
▲2▼地下水の平均水質
pH(25℃):7.2
電気伝導率(25℃):185μs/cm
酸消費量(pH4.8):41mgCaCO3/L
全硬度:97mgCaCO3/L
カルシウム硬度:8mgCaCO3/L
塩素イオン濃度:29mgCl−/L
一般生菌数:1〜2CFU/ml
【0042】
▲3▼電気化学的水処理装置
図1に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は多孔性チタン電極とし、補強用部材であるチタンバーを厚さ1mmの塩化ビニル板で覆い、端子電極をポリテトラフルロエチレン製シールテープとポリエチレン製熱収縮チューブで被覆した。この装置に前記地下水を20トン/hrとなるように通水した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC24A、最大出力電圧40Vとなるように通電し、極性反転時間は10分ごととした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、図9のグラフに見られるように、一般生菌数は120日経過時までは1〜2CFU/mlで安定し、その後は0CFU/mlであった。360日経過後も金属不純物の沈殿は見られなかった。
【0043】
比較例3
補強用部材及び端子電極の被覆を行わなかったこと以外は実施例3と同じ条件で地下水の電気化学的処理を行ったところ、図9のグラフに見られるように、一般生菌数は120日経過時までは約3CFU/mlであったが、120日経過後から増加し、金属電極に白色の無機系付着物が析出し、電流もが0.5Aに減少した。
【0044】
【発明の効果】
本発明に係わる電気化学的水処理装置は、スペーサーを介して積層された複数枚の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極の少なくとも1枚に電気的に接続された金属部材を含んで成り、前記多孔性金属電極に通電し該多孔性金属電極により被処理水を電気化学的に処理する電気化学的水処理装置において、前記金属部材の少なくとも一部を電気絶縁処理することを特徴とする電気化学的水処理装置(請求項1)であり、多孔性金属電極は単一枚としても良い(請求項2)。
【0045】
カルシウムイオン等に起因する沈殿の析出による処理効率の低下は、処理に有効な金属電極面だけでなく、処理効率には実質的な影響を及ぼさない端子電極や補強用部材といった金属部材表面でも生じる。
本発明は前述した構成を有し、前記金属部材表面に電気絶縁処理が施されているため、金属部材表面に電流が流れることに起因する金属不純物の析出が防止され、更にこの金属部材が実質的に電気化学的水処理に寄与しないため、処理効率の低下をもたらすこともない。
【0046】
この電気絶縁処理は、電気絶縁性物質が金属部材表面に存在する任意の形態として行うことができ、電気絶縁性樹脂の溶液等の塗布(請求項3)、電気絶縁性樹脂板による金属部材の囲み込み(請求項4)、及び電気絶縁性チューブ又はテープによる被覆(請求項5)などがある。
又電気絶縁処理の対象である金属部材も、給電用端子電極、電極枠及び補強用部材等から選択できる(請求項6)。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学的水処理装置の一実施形態である通水型装置を例示する縦断面図。
【図2】図1の装置の端子電極及び補強用部材を示す平面図。
【図3】図2のA−A線縦断面図。
【図4】本発明の電気化学的水処理装置の他の実施形態である浸漬型装置を例示する縦断面図。
【図5】図4の装置の金属電極を示す平面図。
【図6】図5のB−B線縦断面図。
【図7】実施例1及び比較例1における処理日数と一般生菌数の関係を示すグラフ。
【図8】実施例2及び比較例2における処理日数と一般生菌数の関係を示すグラフ。
【図9】実施例3及び比較例3における処理日数と一般生菌数の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 金属電極
2 スペーサー
3 電極構造体
7a 端子電極
7b 補強用部材
8 電気絶縁性皮膜
24 金属電極
25 スペーサー
26 電極枠
27 端子電極
28 電気絶縁性皮膜
Claims (6)
- スペーサーを介して積層された複数枚の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極の少なくとも1枚に電気的に接続された金属部材を含んで成り、前記多孔性金属電極に通電し該多孔性金属電極により被処理水を電気化学的に処理する電気化学的水処理装置において、前記金属部材の少なくとも一部を電気絶縁処理したことを特徴とする電気化学的水処理装置。
- 単一枚の多孔性金属電極、及び該多孔性金属電極に電気的に接続された金属部材を含んで成り、前記多孔性金属電極に通電し該多孔性金属電極により被処理水を電気化学的に処理する電気化学的水処理装置において、前記金属部材の少なくとも一部を電気絶縁処理したことを特徴とする電気化学的水処理装置。
- 電気絶縁処理が、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂及びウレタン系樹脂から成る群から選択される1又は2種以上の樹脂の溶液又は懸濁液を塗布して電気絶縁性皮膜を形成することである請求項1又は2記載の電気化学的水処理装置。
- 電気絶縁処理が、電気絶縁性樹脂板で金属部材を囲むことである請求項1又は2記載の電気化学的水処理装置。
- 電気絶縁処理が、電気絶縁性樹脂製チューブ又はテープで金属部材を被覆することである請求項1又は2記載の電気化学的水処理装置。
- 金属部材が、給電用端子電極、電極枠及び補強用部材から選択される少なくとも1種である請求項1から5までのいずれかに記載の電気化学的水処理装置。
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JP2002233140A JP2004066200A (ja) | 2002-08-09 | 2002-08-09 | 電気化学的水処理装置 |
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JP2006167687A (ja) * | 2004-12-20 | 2006-06-29 | Masao Iizuka | 電界発生装置の絶縁性電極 |
JP2007057203A (ja) * | 2005-08-26 | 2007-03-08 | Hiroshi Tanaka | 冷却水循環装置 |
JP6300253B1 (ja) * | 2017-10-20 | 2018-03-28 | 株式会社日立パワーソリューションズ | 水処理システム、電極洗浄方法及び電極洗浄装置 |
-
2002
- 2002-08-09 JP JP2002233140A patent/JP2004066200A/ja active Pending
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