JP2004132592A - 電気化学的水処理方法及び水処理システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】金属電極5を有する電気化学的水処理装置1に供給する被処理水7のスケール成分量をCaCO3換算で250mg/kg以下に保持する。これにより金属電極表面に析出する金属不純物量が大幅に減少させて、実質的に運転を停止することなく、冷却塔水の電気化学的水処理が可能になる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種用水の電気化学的処理方法及びシステムに関し、より詳細には冷却水の電気化学的処理において、被処理水のスケール成分濃度を調節しながら水処理を行う方法、あるいは補給水を用いて被処理水のスケール成分濃度を調節する場合に補給水量を過度に増加させずに水処理を行うシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、純水、工業用水、井戸水、風呂水、プ−ル水、冷却水、洗浄水、生活排水、工場排水等の各種用水には程度の差こそあれ細菌等の各種微生物が棲息し、またミネラル等の無機物質や有機物質が溶解している。これらの水溶液は適度な養分を含むことから、該水溶液が微生物の繁殖に適した温度条件下に置かれると、微生物が繁殖し、水質低下を起こしたり、前記各水溶液が流通する配管等の内壁に微生物が付着、蓄積して前記配管を有する機器の機能を損なうことが多い。これら各種の用水では必要とされる殺菌レベルは異なるが、いずれの用水でも水中微生物数を低減させて水質の改良を行なうことが必要とされている。
【0003】
このような各種用水を殺菌処理する方法として、薬剤処理、オゾン処理、活性炭処理、紫外線照射処理、加熱処理等の種々の処理法が被処理水の種類に応じて選択して用いられている。しかし、いずれの方法も処理効果、操作性、安全性および環境負荷等の問題を抱え、満足の得られる方法ではなかった。
例えば、各種用水中の微生物の繁殖を抑制するための主流技術である薬剤による殺菌処理法は、その毒性から法的にも使用が厳しく規制される状況にあり、薬剤を取り扱う作業者の安全性や薬剤を含む被処理水が系外に排出された場合の環境汚染の問題などを抱えている。
また、薬剤による殺菌処理を行う場合、同一の殺菌剤を使用し続けると耐性菌が生じて殺菌効果が低下することがあり、定期的に薬剤の種類を変えることが必要になる。更に薬剤を用いる場合、薬剤の補充作業や性能を維持するための薬注量の調整などその管理に多大な手間と労力を要する。
【0004】
紫外線照射による殺菌処理法は一過性の殺菌で色度を有する水や多量のSSを含む水の殺菌には不十分であることが多い。
更にオゾン殺菌ではオゾンが発癌性を有するため、余分なオゾンを取り除くために排オゾン処理装置を設置しなければならず、付帯設備とその維持に多額の費用が必要である。
このように従来より用いられる殺菌処理法では処理効率の問題または安全性の問題があり、満足できる結果は得られなかった。
【0005】
このような従来技術の欠点を解消するための薬剤等を使用しない新規な水処理方法として、多孔性金属電極を使用する電気化学的な水処理装置が提案されている。
この水処理装置に使用される電極として数種のタイプのものが提案されているが、最も効率的な電極は、チタン金網(ラス)等の複数の多孔性金属電極をドーナツ状又は額縁状のスペーサーを介して積層して構成した電極構造体であり、該電極構造体を筒状等の電解槽内に収容し、被処理水を該電解槽内に供給して前記金属電極に接触させて酸化あるいは還元作用により水の殺菌等の水の改質を行うようにしている。
【0006】
この水処理法は、比較的多量の被処理水を循環処理でき、処理効率が不十分であれば、再度電解槽に供給して処理を行って被処理水の殺菌等を確実に行うことができるという利点を有している。
純水のような電気伝導率が低い被処理水の場合には、この従来の水処理装置で問題ないが、冷却水のように水が蒸発し濃縮された状態で循環利用される水系ではカルシウム、マグネシウム、シリカのようなスケール成分の濃度が高くなり、これらが金属電極表面へスケールとして析出し易くなるため、樹脂製ケースの中に金属電極を収納するタイプの電解槽では、チタン等の金属電極の開口部がこれらスケールによって閉塞し、通水抵抗が大きくなって通水量が低下すると共に、スケールが電気絶縁性であるため、電極部の電気抵抗が上がり、流れる電流値が次第に低下し、殺菌効率が悪化する。
【0007】
ビル冷房用や工場生産冷却水用として広く使用されている冷却塔は水の蒸発潜熱を冷却用に利用するもので、開放型と密閉型があり、いずれの方式も空気中から溶け込んだ栄養分が豊富で、通常屋外設置で直接日光を浴び、水温も含めて微生物の繁殖条件が揃っている。
このような冷却水中の微生物の繁殖を抑制するために、前述のように金属電極による電気化学的水処理が採用され、それらは被処理水を電気化学的水処理装置に供給して処理を行う通水型と被処理水中に電気化学的水処理装置を浸漬して処理を行う浸漬型に大別される。
【0008】
いずれの方式の電解槽でもカルシウム等のスケール成分が電極表面に析出して電流値が低下し、殺菌効率が悪化する。
従来は定期的にスケールが析出した金属電極を塩酸水溶液等で洗浄し、前記スケールを溶解し除去していた。洗浄頻度は被処理水中のスケール成分の濃度によって異なるが、1年間に1〜6回程度が必要であった。この洗浄には危険物である塩酸等が必要であり、作業性や安全管理上も問題であった。
【0009】
金属電極による電気化学的水処理法において、金属電極(陰極)でのカルシウムやマグネシウムから成るスケールの析出を抑えるために、一定時間ごとに極性を反転し、陽極で生成される酸(H+)の作用で金属表面に析出したスケールを溶解し、その成長を抑える方法が一般に採用されているが、被処理水中のスケール成分濃度が高い場合には長期にわたりスケール化を有効に抑えることは難しい。その他金属電極へのスケールの析出を抑制するために、被処理水中に水溶性ポリマーやホスホン酸等のスケール防止剤を添加する方法(特許文献1参照)や硬度除去手段(イオン交換、逆浸透膜、晶析、電解)を用いて被処理水の硬度を低減させる方法(特許文献2参照)などが提案されているが、被処理水中のスケール成分濃度が高くなるようなケースでは、処理効果が低下したり、処理コストの増加やメンテナンスの増大をもたらすといった問題を抱える。また、前者のスケール防止剤を添加する方法では被処理水のCODなどの増加を招き、被処理水が最終的に系外に排出される場合に環境負荷を増大させるなど環境保全上の問題も抱える。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−310187号公報
【特許文献2】
特開2001−314862号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特にこのようなスケールの析出が起こり易い冷却水系において金属電極面へのスケールの析出を簡易な手段によって確実に抑え、安定かつ効率的な電気化学的水処理を行う方法、及び他の各種用水系にも応用可能な金属表面へのスケール化を抑制できる水処理システムを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の構成は、第1に、冷却水を金属電極と接触させて電気化学的水処理を行う方法において、前記金属電極に接触する前記冷却水中の硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下に保持することを特徴とする電気化学的水処理方法であり、第2に金属電極に接触させて電気化学的処理を施した補給水を冷却水系に補給することを特徴とする電気化学的水処理システムであり、第3に冷却塔下部水槽内の仕切られた空間に、金属電極を有する電気化学的水処理装置を設置し、前記空間内に、補給水または補給水と前記冷却水を混合し、スケール成分濃度を調節した被処理水を供給し、該被処理水を前記金属電極に接触させて電気化学的水処理を施した処理水を冷却水系に補給することを特徴とする電気化学的水処理システムであり、後者の発明では電気化学的水処理装置を循環ラインに設置し補給水の供給を行っても良い。
【0013】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明に係る電気化学的水処理方法では、硬度分がCaCO3換算で250mg/lを超える冷却水を対象とし、この冷却水が金属電極に接触する際に硬度分がCaCO3換算で250mg/l以下に管理されるようにする。
このようにして冷却水中の硬度分を所定量以下にすると、カルシウムやマグネシウムから成るスケールが金属電極表面に析出し難くなり、長期間金属電極の洗浄を行うことなく、換言すると運転を停止することなく電気化学的水処理を継続できる。なお、硬度分の測定、管理が困難な場合は、補給水の硬度と電気伝導率の値をもとに冷却水の硬度分を所定濃度以下に管理する際の電気伝導率の値(上限値)を求め、該電気伝導率の値をもとに連続的あるいは間接的に被処理水の硬度分の濃度管理を行っても良い。
【0014】
硬度分がCaCO3換算で250mg/lを超える冷却水を金属電極と接触させて電気化学的水処理を行うと、金属電極面にスケールが析出し易く、運転を停止して洗浄を行う等の不都合が生じることが多い。運転を停止せずに処理を継続すると、スケールにより被処理水と金属電極との接触効率が低下して殺菌が不十分な被処理水しか得られないか、あるいは金属電極との接触時間を非常に長く取らなければ満足できる殺菌レベルの被処理水が得られなくなる。
過剰の硬度分を有する各種用水の電気化学的水処理において、金属電極に接触する被処理水中の硬度分の低減方法は特に限定されないが、例えば冷却塔下部水槽内の区画された空間内に前記金属電極を収容した電気化学的水処理装置を設置し、該空間内に補給水と被処理水を供給する。この補給水は前記被処理水中に含まれる硬度などのスケール成分を希釈する機能を有し、スケール成分を殆ど含まない水道水の他に、対象被処理水よりスケール成分濃度の小さい地下水などを使用しても良い。
【0015】
この補給水が供給される空間は冷却塔下部水槽に比べて容積が小さいため、希釈効果が大きく、冷却塔下部水槽内に区画を設けずに設置した電気化学的水処理装置に補給水を供給することによる希釈効果の通常は数十倍の効果が得られる。
前記電気化学的水処理装置は、前記被処理水タンクへの循環ラインに設置しても良く、該装置に循環被処理水を補給水と共に供給すると、電気化学的水処理装置の容量が冷却塔下部水槽の容量より遥に小さいため、冷却塔下部水槽内へ補給水を供給する場合と比較して大幅な希釈効果が得られ、金属電極へのスケール成分の析出が防止できる。しかしながら、この手法の場合、循環ラインに電気化学的水処理装置を設置する必要があるため、被処理水タンク内の空間に設置する場合よりコストが嵩むという欠点がある。
この冷却塔下部水槽内の空間に、又は冷却塔下部水槽への循環ラインに電気化学的水処理装置を設置する態様は、前述した硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下にするためだけに使用するのではなく、金属電極へ供給される被処理水の硬度分を任意の量に減少させるために使用できる。
なお前記補給水の供給を行う態様はこれに限定されず、例えば電気化学的水処理装置を被処理水の循環ラインの何処かに設置し、この電気化学的水処理装置に補給水の供給を行うようにしても良い。
【0016】
本発明の電気化学的水処理方法では、電極として液抜けを良くするため及び接触効率を向上させるため前述した多孔性金属電極を使用することが望ましく、この他に平板状電極を使用しても良い。この場合の「多孔」とは、被処理水の流通に対する抵抗が殆ど零である程度の開口を有することを意味し、金網状、エクスパンドメッシュ状、パンチングメタル状、格子状等の形状がある。例えばエクスパンドメッシュを使用する場合、その開口サイズは短径が1.0 〜4.0 mm、長径が2.0 〜5.0 mm程度になるように調節することが好ましい。多孔性電極は平板状電極に比べて表面積が大きく殺菌効率が高くなるとともに、被処理水が多孔を通過する際に乱流が発生し、これが被処理水を攪拌して被処理水の金属電極との接触効率を高めていると推測できる。前記多孔性金属電極は、チタン等の耐食性金属基体上に、触媒、例えば白金、イリジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、ロジウム又はそれらの酸化物を単独又は混合物として被覆し電極性能を向上させることが望ましい。
【0017】
該金属電極は、それぞれの開口部表面積の総和を、該電極の表面積総和と開口部表面積の総和を加えた電極全面積で除した値の百分率で定義される開口率が10〜80%であることが好ましい。開口率が10%未満であると圧力損失が大きくかつ目詰まりが起こりやすくなるからであり、80%を超えると電極強度に支障が生じ変形や破損が生ずることがあり、又金属電極と被処理水の接触が不十分になることがあるからであり、目詰まり及び接触効率の両者を勘案して適切な開口率を設定することが望ましい。
【0018】
本発明の電気化学的水処理方法に使用可能な装置は、複数枚の金属電極をスペーサーを介して積層し、各金属電極及び各スペーサーをこれらを通る電気絶縁性締着材、通常はボルト及びナットにより締着し、各金属電極相互を連結して電極構造体として構成したものである。複数の金属電極とスペーサーから成るこの電極構造体は、金属電極の枚数を変えることにより、処理すべき被処理水の量や電解槽内のスペースの状況により比較的自由にその厚さを増減させることができる。その増減はボルト及びナットを使用することが最適である電気絶縁性締着材により容易に行うことができ、例えば樹脂フレームの場合のように内厚の異なる多数の樹脂フレームを準備する等の必要がなくなる。金属電極の枚数を変えて金属電極本体の厚さを変えるだけでなく、金属電極自体又はスペーサーの厚さを変えることが望ましいこともあり、この場合も同様に電気絶縁性締着材の着脱により容易に目的を達成できる。
【0019】
積層された各金属電極への給電は、単一電源を使用して各金属電極が並列になるように接続しかつ通電するか、金属電極数と同数の電源を使用して金属電極ごとに電源を接続して各金属電極ごとに通電するかにより行う。
【0020】
使用するスペーサーは隣接する金属電極間の電気絶縁を確保するためのもので、該電気絶縁性が保証されればその形状は制限されないが、被処理水と金属電極の接触効率を向上させるためにはその面積はできるだけ小さい方が良く、例えば額縁状又はドーナツ状とすることが好ましい。なお該スペーサーの厚さは1〜10mm程度であることが望ましく、これは1mm未満であると電極に析出することのあるカルシウム化合物等により隣接する電極間に短絡が生ずる恐れがあり、又10mmを越えると殺菌等に必要な電流が流れにくくなるからである。又金属電極が多孔板例えばチタンラスの場合は前記スペーサーは金属電極の強度補強の役割も果たす。このスペーサーは隣接する金属電極を電気的に絶縁するとともに、電解により生ずることのある酸素ガスや水素ガスのガス抜けを良好にする機能を有する。金属電極表面で生成する前記ガスは被処理水が前記金属電極表面に接触することを阻害し、かつ各金属電極への通電効率を低下させる。しかしスペーサーの存在により生成ガスが隣接する金属電極間の空間から金属電極本体の周囲へ容易に移動して処理効率を上昇させる。なお本発明はガス発生を伴う処理に限定されるものではなく、更に前記金属電極は単一枚で使用しても良い。
【0021】
電気化学的水処理は、安全面の理由で直流電圧42V以下で通電することが望ましく、又電流密度が0.1 〜2.0 A/dm2 程度になるようにすると最適の処理効率が得られる。これは0.1 A/dm2 未満では充分な殺菌が行なわれないことがあり、2.0 A/dm2 を越えると電極寿命が短くなることがあるからである。
本発明による微生物の殺菌機構は次のようであると推測できる。
第1に、水の電気分解により陽極上でヒドロキシラジカル、酸素原子、オゾン、過酸化水素等の活性酸素が発生し、金属表面近傍でこれら活性酸素の酸化作用により被処理水中の微生物が殺菌される。第2に、被処理水に含まれる塩化物イオンが水の電気分解により前記陽極上で酸化されて次亜塩素酸または次亜塩素酸イオンとなり、これらが被処理水中に残留し続けることにより金属電極から離れた水域においても微生物が殺菌される。
【0022】
本発明により金属電極へのスケールの析出量は減少するが、更に効果良く金属電極へのスケールの析出を防止するには、例えば2〜180 分ごとに金属電極の極性を反転させて陽極上で発生する酸(H+)によって析出するカルシウム化合物やマグネシウム化合物等を溶解させることができる。継続通電時間が2分未満では殺菌効率が悪く電極寿命も短くなりがちであり、180 分を越えると前記化合物の析出量が多くなる。
金属電極にガス発生が生じる電流を供給すると、生成ガスは被処理水中に対流を生じさせ、この対流により被処理水全体を万遍なく金属電極表面に接触させて殺菌効率を高めるだけでなく、表面に析出しているスケールを剥離し除去することも可能になる。
【0023】
本発明に使用する電気化学的水処理装置は長期間の運転に耐え洗浄は殆ど必要ないが、洗浄を行なう場合には過酸化水素、キレート剤、無機酸や有機酸を用いたpH3以下の酸性水、pH9以上のアルカリ水のいずれかを単独で又は交互に流しても良い。又本発明では本来有している電気化学的処理単独で被処理水処理を行っても十分な効果を生ずるが、前記処理を紫外線殺菌、オゾン殺菌、薬剤殺菌等と併用すると更に確実に短時間で被処理水の処理を行なうことができる。本発明方法又はシステムを使用すると、被処理水中の微生物の殺菌や他の水質改善を達成できる。前記微生物としては、細菌(バクテリア)、糸状菌(黴)、酵母、変形菌、単細胞の藻類、原生動物、ウイルス等が含まれ、水質改善には、アンモニア等の不純物の分解などが含まれる。
【0024】
本発明の対象となる被処理水は、タンク等に循環して電気化学的処理が行われ、補給水による希釈前の硬度分がCaCO3換算で250mg/lを超える水に限定される。このような被処理水としては、冷却塔水以外に、例えば自然環境中の淡水や海水、人工的に作成された水溶液、希釈用水等があり、更に具体的な例としては工業用水、水道水、浄水、井戸水、雨水、回収水、加湿水、排水、側溝水、貯水、海水(微生物の制菌と貝殻、藻類、水母等の殺菌)、池の水、プール水、ボイラー水、スクラバー水、高架水槽、飲料水、風呂水、ガス吸収塔水、冷却水、温水、水耕栽培水、噴水、写真現像液、養魚用水(鑑賞魚、養殖魚)、鑑賞動物及び養殖鳥用水、水エマルジョン、製紙用水、温泉水、砂糖液、果汁希釈水、染料インク希釈水、水溶性塗料希釈水、水溶性化粧品希釈水、酒希釈水、牛乳希釈水、ジュース希釈水、お茶希釈水、豆乳希釈水、入れ歯保管制菌水、コンタクトレンズ保管制菌水、歯ブラシ保管制菌水、各種化学物質含有水溶液、火力又は原子力発電所用水等を挙げることができ、更に水中微生物個数をゼロにすることが必要又は好ましい食品用水、医薬品用水、磁気記録用ハードディスク洗浄用水、半導体洗浄用水、自動販売機水等も含まれる。更に岸壁、パイプや各種取水口の殺菌用の水の前処理用にも使用できる。
【0025】
本発明によると、前述した多種の被処理水に含まれる微生物や有害不純物を効率良く殺菌するだけでなく、CODやBODの分解除去、更に微量農薬を含有する被処理水から電気化学的に農薬を分解除去し、着色被処理水の色を薄くするといった処理も可能である。更に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化水素、次亜塩素酸あるいは臭化ナトリウム等の塩素化合物又は臭素化合物を添加して前述の水処理を行うと次亜塩素酸や次亜臭素酸を含有する殺菌水が製造できる。この殺菌水は床洗浄水、機器洗浄水、容器洗浄水、野菜洗浄水、肉洗浄水、果物洗浄水等として使用できる。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の電気化学的水処理システムの一実施形態を示す概略縦断面図、図2は図1の要部の拡大図である。
【0027】
図1のシステムで使用される電気化学的水処理装置1は、図2に示すように、1対の脚部2上に設置された、長方形である上部枠3と下部枠4の間に、4枚の金属電極5を3枚の額縁状のスペーサー6を介して積層することにより構成されている。
この電気化学的水処理装置1は殺菌処理の対象である被処理水(冷却塔水)7中に浸漬した状態で使用され、つまり前記脚部2を使用して冷却塔8の底板9上に設置し、被処理水7の殺菌処理が行われる。
前記電気化学的水処理装置1は、隔壁10で囲まれて周囲と仕切られている。
【0028】
本実施形態における被処理水は、熱交換器で冷却用に使用される冷却水であり、この熱交換器を通過した後の冷却水を案内管11を通して冷却塔8内に導き、前記冷却水を冷却塔8内の蒸発板12に接触させる。これにより前記冷却水の一部が蒸発し、蒸発に要する潜熱により冷却塔下部水槽8内の冷却水7が冷却される。冷却された冷却塔水7は、分枝管13から供給される補給水と共に、水中モーター14により導入管15を通って隔壁10内部の電気化学的水処理装置1に供給される。電気化学的水処理装置1に供給された冷却塔水(被処理水)7は、補給水により希釈されてカルシウムイオン等のスケール成分濃度が減少し、望ましくはCaCO3換算で250mg/l以下に保持される。
【0029】
この被処理水7は、電気化学的水処理装置1の金属電極5に接触して殺菌等が行われるが、スケール成分量を減少させることにより、金属電極5表面に析出する炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等のスケール付着量を大きく減少させることが可能になる。
その後この被処理水7は、隔壁10をオーバーフローして隔壁10外の冷却塔8内に戻り、冷却塔水7と混合されて、元の値に近いスケール成分濃度に戻る。そして冷却及び殺菌処理が行われた冷却塔水7として循環配管16を通って熱交換器に戻される。
【0030】
【実施例】
次に本発明に係る電気化学的水処理装置を使用する被処理水の処理に関する実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0031】
実施例1
熱交換器から循環する冷却塔内の冷却塔水の殺菌処理を次の条件で行った。
▲1▼冷却塔装置
冷却能力:300冷凍トン
循環水量:230t/hr
保有水量:3t
【0032】
▲2▼冷却水の平均水質
pH:8.7
電気伝導率:900μs/cm
酸消費量(pH4.8):250mgCaCO3/L
全硬度:360mgCaCO3/L
カルシウム硬度:190mgCaCO3/L
シリカ濃度:150mgSiO2/L
塩素イオン濃度:58mgCl−/L
総菌数:約106個/ml
【0033】
▲3▼電気化学的水処理装置
図2に示した電気化学的水処理装置を使用した。金属電極は、厚さ1mm、幅300mm、長さ1000mmの多孔性チタン板(チタンラス)の表面を酸化イリジウムと白金で被覆した電極4枚を使用した。4枚の金属電極は3枚の厚さ2mmのスペーサーで絶縁し、冷却塔内の冷却塔水に浸漬し、かつ隔壁で囲まれるように設置した。
▲4▼電気化学的水処理条件
直流電源を使用し、最大出力電流DC24A(定電流運転)、最大出力電圧40Vとなるように通電し、極性反転時間は20分ごととした。
電気化学的水処理装置へ供給される被処理水(冷却塔水)に加えられる補給水は水道水を使用し、被処理水と補給水が体積比で1:1となるようにした。
▲5▼結果
この条件で電気化学的水処理を行ったところ、電気化学的水処理装置近傍の被処理水中の全硬度は平均で220mgCaCO3/lに減少していた。通電を継続しても金属電極表面への析出物は観察されず、金属電流を流れる電流量の変化もなかった。
又開始前、6ヵ月後、12ヶ月後、18ヵ月後及び24ヵ月後の総菌数を測定したところ、表1に示すように、開始前は106個/ml、それ以外は102個/ml以下であった。なお一般生菌数の測定は寒天培地培養JIS法に依った。
【0034】
比較例1
隔壁で電気化学的水処理装置を囲わなかったこと以外は実施例1と同じ条件で冷却塔水の電気化学的処理を行った。被処理水中の全硬度は平均で360mgCaCO3/lであった。通電を継続すると徐々に金属電極表面に白色の無機質スケール成分が析出し、金属電流を流れる電流量は初期値の1/10以下に低下した。
又開始前、6ヵ月後、12ヶ月後、18ヵ月後及び24ヵ月後の総菌数を測定したところ、表1に示すように、開始前は106個/ml、6ヶ月後は102個/ml以下であり、実施例1と同様であったが、12ヶ月後は約103個/ml、18ヵ月後は106個/ml及び24ヵ月後は107個/mlと総菌数が増加して殺菌効果が得られなくなった。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明方法は、金属電極による電気化学的処理を用いて冷却水の殺菌処理を行う方法において、前記金属電極に接触する被処理水の硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下に保持することを特徴とする電気化学的水処理方法(請求項1)である。
硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下に保持すると、金属電極へのスケールの析出が抑制され、金属電極表面が万遍なく被処理水と接触できるため、長期間に亘って殺菌効率を高く維持したまま被処理水の電気化学的水処理が可能になる。この硬度分を直接測定することが困難な場合は、電導率を測定し、換算しても良い(請求項2)。
【0037】
本発明システムは、金属電極に接触させて電気化学的処理を施した補給水を冷却水系に補給することを特徴とする電気化学的水処理システム(請求項3)及び冷却塔下部水槽内の仕切られた空間に、金属電極を有する電気化学的水処理装置を設置し、前記空間内に、補給水が補給された被処理水を供給し、該被処理水を前記金属電極に接触させて電気化学的水処理を行うことを特徴とする電気化学的水処理システム(請求項4,5)であり、前記電気化学的水処理装置は循環ラインに設置しても良い(請求項6)。
本発明システムでは、被処理水タンク内に区画された空間を形成しその空間に補給水を供給し、あるいは循環ライン中に補給水を供給している。そのため従来のように被処理水タンクに補給水を供給するのと異なり、補給水供給による被処理水中のスケール成分量減少の効果が著しく良好になり、少量の補給水供給で長期間の安定した運転が可能になる。
このシステムの場合も、金属電極に接触する被処理水中の硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下に保持する(請求項7)と、更に殺菌効果が顕著になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気化学的水処理システムの一実施形態を示す概略縦断面図。
【図2】図1の要部の拡大図。
【符号の説明】
1 電気化学的水処理装置
5 金属電極
6 スペーサー
7 被処理水(冷却塔水)
8 冷却塔
10 隔壁
Claims (7)
- 冷却塔を有する循環式冷却水(以下「冷却水」と略す)を金属電極と接触させて電気化学的水処理を行う方法において、前記金属電極に接触する冷却水中の硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下に保持することを特徴とする電気化学的水処理方法。
- 冷却水中の硬度分を、金属電極に接触する該冷却水の電気伝導率で管理する請求項1に記載の電気化学的水処理方法。
- 金属電極に接触させて電気化学的処理を施した補給水を冷却水系に補給することを特徴とする電気化学的水処理システム。
- 冷却塔下部水槽内の仕切られた空間に、金属電極を有する電気化学的水処理装置を設置し、前記空間内に補給水を供給し、前記金属電極に接触させて電気化学的水処理を施した該補給水を冷却水系に補給することを特徴とする電気化学的水処理システム。
- 冷却塔下部水槽内の仕切られた空間に、金属電極を有する電気化学的水処理装置を設置し、前記空間内に、補給水と冷却水を供給し、該被処理水を前記金属電極に接触させて電気化学的水処理を施した該処理水を冷却水系に補給することを特徴とする電気化学的水処理システム。
- 冷却塔下部水槽内への循環ラインに金属電極を有する電気化学的水処理装置を設置し、該装置に冷却水を補給水と共に供給して電気化学的水処理を行い、該処理水を前記冷却塔下部水槽に循環することを特徴とする電気化学的水処理システム。
- 補給水の供給量を調節して金属電極に接触する被処理水中の硬度分をCaCO3換算で250mg/l以下に保持する請求項5又は6に記載の電気化学的水処理システム。
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