JP2004059346A - 窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】実質的に、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相、Si2N2O相、β−Si3N4相、及び平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子からなる窒化珪素質セラミックス焼結体、及びその製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高密度でかつ高温で高い熱衝撃性と耐酸化性を有する窒化珪素質セラミックス焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで、窒化珪素質焼結体は破壊靭性に優れるものの、高温強度、耐熱衝撃性、耐熱疲労性や硬度が低かった。例えば、酸化イットリウムと酸化アルミニウムを添加した系では、耐熱衝撃性においては優れたものが得られているが、耐熱性、靭性、高温での機械的強度に劣っている場合があった。そこで、高温下での特性改善を図る目的で、特開昭56−59674号公報に開示されている焼結体中にメリライト鉱物相(Y2O3・Si3N4化合物)を生成させた窒化珪素焼結体、及び特開昭62−202864号公報に開示されている酸化ジルコニウム+酸化イットリウム+酸化珪素を添加し、焼結体中に酸化ジルコニウムを析出させた窒化珪素焼結体が試みられており、高温強度の向上等に効果が認められることが知られている。また、特開昭62−246865号公報に開示されている希土類酸化物、酸化ジルコニウムを含む焼結体で粒界相にJ相(Si2N2O・2Y2O3)固溶体が存在する窒化珪素焼結体が試みられており、耐熱性、耐酸化性、静的疲労特性の向上に効果が認められることが知られている。特開平3−153574号公報では、より高温強度特性を向上させる目的で、サイアロンの焼結助剤としてHfO2を添加し、粒界相としてY2Hf2O7を生成させたα’−β’サイアロンを開示している。
【0003】
ところが、上記材料では、高温即時破断強度は優れるものの、高温強度を維持したまま靭性及び耐酸化性を飛躍的に改善するには至っていないため、より厳しい使用環境下、特に高温燃焼炎中において粒子の衝突等の生じる構造部材へ適用するに当たっては信頼性に欠ける等の問題点があり、実用化を阻害している。従って、高温強度の向上に加えて耐酸化性、耐熱衝撃性及び靭性の向上した材料が要望されている。
【0004】
セラミックス焼結体は、硬質セラミックス粒子をその焼結体中に分散することにより、セラミックス母相の結晶粒の成長を抑制する、あるいは靭性が向上する、等により高強度化が図られることが知られている。母相結晶粒の粒成長抑制には分散する硬質粒子の粒子径が小さいほど、体積分率が大きいほど効果が大きいことが知られている。特にSiCを硬質分散粒子として用いる場合、SiCの耐熱性、耐酸化性、化学的安定性、等から焼結過程においても安定して焼結体中に残留させることが容易であり、母相結晶粒成長抑制への効果が得られ易いと考えられている。
【0005】
ところが、セラミックス中へのSiC粒子の分散には、特開平3−205363号公報に見られるように、SiC粒子をセラミックス粉末の混合粉砕時に同時に外部添加し、混合する方法が一般的であり、用いるSiC粒子もアチソン法、等により通常得られるものは0.3μm〜20μmと大きく、突起等を有する凹凸の顕著なものである。気相合成法等により0.2μm以下の微粒子を得ることも可能であるが、細かければ細かいほどハンドリングし難いこと、添加前に凝集又は凝結しており分散性に著しく欠けること、さらには単価が極めて高いこと等から実用には不適である。一方、母相を形成するセラミックス粉末の混合時にSi、Cを含む前駆体ポリマー(有機金属高分子、又は無機高分子)を用いて、焼結過程中に微細なSiC粒を得る方法も知られているが、前駆体ポリマーが高価で、焼結過程中に体積量として大きな熱分解ガスを発生すること等から、緻密な焼結体を得ることが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来技術では母相結晶粒成長に顕著な抑制効果のある微細かつ球状SiC粒を、安価な方法にて窒化珪素質セラミックス焼結体中に効率的に、かつ均一に分散させるには様々な問題点があった。
【0007】
本発明は、上述の如き課題を解決するために行われたものである。本発明の目的は、高密度でかつ高温で高い熱衝撃性と耐酸化性を有する窒化珪素質セラミックス焼結体及びその安価な製造方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題点を解決するために、窒化珪素質セラミックス焼結体を構成する結晶相及び結晶粒の微細化に関する検討を鋭意行った結果、前記結晶相から構成される場合に高温で優れた特性を有する焼結体が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
(1) 実質的に、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相、Si2N2O相、β−Si3N4相、及び平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子からなる窒化珪素質セラミックス焼結体、
(2) 前記窒化珪素質セラミックス焼結体が、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相を4.9〜12質量%、Si2N2O相を0.1〜3質量%、平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子を0.5〜15質量%、及び、β−Si3N4及び不可避的不純物を残部とする組成である請求項1記載の窒化珪素質セラミックス焼結体、
(3) 前記窒化珪素質セラミックス焼結体が、97%以上の相対密度を有する(1)又は(2)に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体、
(4) 少なくとも一方が実質的にSiCからなるポット、粉砕用ボールを用い、Y2O3、Er2O3、Yb2O3の少なくとも1種を3〜10質量%、SiO2を1〜5質量%及びSi3N4を残部とするセラミックス原料を、前記粉砕用ボールと共に前記ポットに充填し、前記ポットに回転、撹拌、振動の1種以上の運動を与えることで、前記セラミックス粉末を粉砕混合させつつ、前記少なくとも一方が実質的にSiCからなるポット、粉砕用ボールを摩滅させて、前記セラミックス原料中に平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子0.5〜15質量%を均一混入してから、得られた混合粉末をプレス成形により成形体とし、該成形体を窒素雰囲気中1770〜1850℃で焼結した後、下記(a)〜(c)に記載の少なくとも一つの手段を用いて、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相を粒界相として生成させることを特徴とする窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法、
(a) 焼結の降温過程における降温速度を5℃/分〜10℃/分の範囲とする
(b) 焼結の降温過程において、1350〜1650℃の温度範囲で12時間以上保持する
(c) 焼結後、窒素雰囲気中、1350〜1650℃の温度範囲で12時間以上保持する再加熱処理をする、
である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明者等は、耐酸化性や耐熱衝撃性に優れ、高靭性な材質のセラミックスを開発するため、窒化珪素質セラミックス焼結体を構成する結晶相及び結晶粒の微細化に関する検討を鋭意行った。窒化珪素質焼結体は、アルミナやジルコニア等を主成分とするセラミックス焼結体と異なり、耐熱性に優れると共に、高温下における機械強度も保持できる特徴を有する。
【0012】
より詳しくは、本発明者等は、各種結晶相より構成される窒化珪素質焼結体を作製し、その特性を評価した。従来の低融点ガラス相を有する窒化珪素焼結体では、高温下における耐酸化性、耐熱衝撃性に劣る。特性評価の結果、β−Si3N4相と粒界相としてY2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相から構成される緻密なセラミックス焼結体が優れた特性を有することを見出した。特に、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相、Si2N2O相及びβ−Si3N4相からなる窒化珪素質焼結体は、室温から高温(〜1400℃)までの強度低下が少なく、耐酸化性、耐熱衝撃性に優れ、温度勾配等に起因する静疲労特性、また、急冷に伴う熱応力破壊抵抗特性を高める等の特徴を有する。
【0013】
粒界相として、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相を結晶化させるためには、焼結の降温過程で5℃/分〜10℃/分の降温速度で冷却するか、降温過程で1350〜1650℃、12時間以上保持の熱処理するか、あるいは焼結後窒素雰囲気中にて1350〜1650℃、12時間以上保持の再加熱処理の少なくとも一つを行うようにする。降温過程で、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相を析出させる場合の降温速度は、10℃/分以下が好ましいが、より望ましくは5℃/分〜10℃/分である。降温速度が5℃/分より低い場合は、炉命縮減や生産効率の低下等を引き起こし、10℃/分より高い場合は、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が十分生成しない。
【0014】
また、降温過程の際の保持温度、及び、再加熱処理の際の保持温度が1350℃未満、1650℃超の場合も同様に、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が十分に生成しない。また、各々の保持時間が12時間未満の場合も、実部材としての厚さを有する部材では、均一に、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相は生成しない。Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相が質量比で4.9%未満では、Si3N4のα→β転移時の液相が少なく、相転移を円滑に進行させず、焼結体中の気孔率が高くなり好ましくなく、質量比が12%を越えるとβ−Si3N4結晶粒が十分に絡み合わず、強度や靭性が低下し好ましくない。また、Si2N2O相の質量比が全体の0.1%未満では、焼結体中の気孔率が高くなり、機械的強度に寄与する効果が少なく、質量比が3%を越えるとβ−Si3N4結晶粒が十分に絡み合わず、強度や靭性が低下するため好ましくない。
【0015】
本発明により得られる窒化珪素質セラミックス焼結体は、平均粒径0.05μm以下のSiC微粒子の分散効果によって、母相の結晶粒成長が抑制され、一線切断法で求めたβ−Si3N4の平均結晶粒径が0.3〜1.0μm、平均アスペクト比が1.5〜5程度と細かく、かつβ−Si3N4の柱状結晶粒が重なり合った組織を呈し、また粒界に高融点のY2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が析出している。このため、高温まで高い強度を維持したまま、高い靭性を有し、抗折強さが大気中1400℃にて500MPa以上の高強度で、かつ靭性値KICが5MPam1/2以上の高靭性を有す。
【0016】
ここで、Si2N2O結晶相は、粉末X線回折法により同定されるSi2N2O結晶と同じ型のX線回折パターンを持ち、Si3N4とSiO2とからなる化合物の中で高温酸化雰囲気中にて最も安定な化合物である。同様に、Y2Si2O7結晶相、Er2Si2O7結晶相、Yb2Si2O7結晶相は、粉末X線回折法により同定されるY2Si2O7結晶、Er2Si2O7結晶、Yb2Si2O7結晶と同じ型のX線回折パターンを持ち、それぞれY2O3とSiO2、Er2O3とSiO2、Yb2O3とSiO2からなる化合物の中で、高温酸化雰囲気中にて最も安定な化合物である。また、β−Si3N4結晶相はJCPDSカード33−1160で示されるβ−Si3N4結晶と同じ型のX線回折パターンを持つ。さらに、前記Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相、Si2N2O相及びβ−Si3N4相により構成される窒化珪素質焼結体の相対密度は、理論密度に対して97%以上であることが望ましい。相対密度が97%未満では、熱的安定性、機械的安定性が不充分になり易く、長期耐久性の向上効果が見られないおそれが高くなる。
【0017】
本発明において使用される窒化珪素粉末は、α型の結晶構造をもつSi3N4粉末が焼結性の点から好適であるが、β型あるいは非晶質Si3N4粉末が含まれていても構わない。焼結時に十分に高い密度とするためには、平均粒径1μm以下の微粒子であることが望ましい。窒化珪素は共有結合性の強い物質であり、単独では焼結が困難であることが多いため、一般に緻密化するために焼結助剤を添加する。
【0018】
本発明においては、焼結助剤として酸化珪素と酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種を用いる。また、これらに酸化物換算によって添加量が求められる、酸窒化物(Si2N2O)、及び、酸化珪素と酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの複合酸化物(Y2SiO5やY2Si2O7、Er2SiO5やEr2Si2O7、Yb2SiO5やYb2Si2O7、等)でも構わない。ここで用いる酸化珪素と酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種等は、Si3N4の焼結時にα−Si3N4相からβ−Si3N4相への結晶相転移をその融液中で進行させる機能を持ち、さらにβ−Si3N4の柱状相の成長を促すことにより、高温強度及び靭性を向上させることが知られている。それぞれの添加量は、酸化珪素1〜5質量%、酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種ならびにこれらの複合酸化物は3〜10質量%が好ましい。
【0019】
酸化珪素が1質量%未満の場合、焼結昇温時の液相生成温度が高くなり、十分緻密な焼結体が得られないが、原料として用いる窒化珪素粉末の表面層に数%の酸化物層又は酸窒化物層が存在する場合は、酸化珪素が1質量%未満でも目的の焼結体が得られる場合がある。しかし、通常の酸化層を有する窒化珪素粉末ならば、酸化珪素が1質量%未満の場合は、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が形成されない。酸化珪素が5質量%を越えると、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相が形成されず、比較的低融点のSiO2相が形成され、高温での機械的強度が低下するため好ましくない。
【0020】
酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種の添加量が3質量%より少ないと、融液形成が不十分で、相対密度が97%未満となり、緻密化が進行しない。酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種の添加量が10質量%を超えると、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相が形成されず、比較的低融点のY2SiO5相、Er2SiO5相、Yb2SiO5相が形成され、得られた焼結体の高温での機械的強度及び耐酸化性が低下する。
【0021】
酸化珪素も酸化イットリウム、酸化エルビウム、酸化イッテルビウムの少なくとも1種も、均質かつ高密度の焼結体を得るためには、平均粒径が2μm以下の微粒子であることが好ましい。焼結助剤として用いるこれら原料粉末は、比較的安価であり、水中での混合工程での変質せず安定なセラミックス粉末である。
【0022】
本発明の平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子の生成・分散方法としては、回転式ポットミル(=トロンメル)、遊星型ボールミル、アトライター、振動ボールミル、アトリッションミル、自転・公転混在型ポットミル、等の方法を用いることができる。用いるポットとしては、実質的にSiC焼結体の本体及び蓋からなるものが好ましく、大量製造用のポットミルでは、ライナーとしてSiC製タイルを貼り付けたものを用いても構わない。混入する球状SiCの結晶相は、α−SiC型(=3C)、β−SiC型(=2H、4H、6H、等)のいずれでも構わないが、1770〜1850℃の温度範囲で焼結を行うため、基本的には6H相で同定されることが多い。また、摩耗混入質量について、混合方法、回転数、他の原料粉末の粒径等によって若干の違いは認められるが、おおよそポット内壁摩耗:ボール摩滅=1:10〜20(質量比)で、ボール摩滅が圧倒的に多い。したがって、混入量を変化させたい場合はボール添加量の増減に加え、ボール表面積の増減、即ちボール径の大小を概ねφ0.5mm〜φ20mmの範囲で制御することが効果的である。混入量としては、0.5質量%未満では母相結晶粒の成長抑制効果が乏しく、15質量%を超すと母相の柱状成長並びに結晶相の交差による高靭化を阻害するため、好ましくない。
【0023】
焼結方法としては、窒素ガスを含む雰囲気にて、例えば無加圧焼結法、ガス圧焼結法、熱間静水圧プレス焼結法、ホットプレス焼結法、等の各種焼結法を用いることができ、さらにこれらの焼結法を複数組合せても良い。窒素ガスを含む雰囲気で焼結するのは、焼結中でのSi3N4の分解を抑制するためである。 Si3N4は、窒素ガス1気圧下では約1800℃以上で分解が生じるため、1800℃以上にて焼結を行う場合は、窒素ガス圧を焼結温度におけるSi3N4の臨界分解圧力以上に設定するようにする。また、大型厚肉形状の成形体を製造する場合には、十分な緻密化を図るために、無加圧焼結後に、さらに窒素ガス雰囲気中での熱間静水圧プレス焼結を行うことがより好ましい。無加圧及び熱間静水圧プレス焼結条件としては、焼結温度が1770〜1850℃であることが望ましい。1770℃未満では、緻密な焼結体が得られず、固溶体粒子近傍に残留応力を十分に発生させることが困難となり、高靭性の焼結体とすることができない。一方、1850℃を越える高温では、β−Si3N4結晶粒が粗大化したり、Si2N2O相、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の分解等により強度低下を起こし、高硬度と耐熱衝撃性が得られない。また、保持時間が8時間未満では、成形体の肉厚にも依存するが緻密化が十分に進行しない。
【0024】
【実施例】
次に、本発明の実施例を比較例と共に説明する。
(実施例1〜5)
窒化珪素(Si3N4)粉末(α化率97%以上、純度99.7%、平均粒径0.6μm)に酸化イットリウム(Y2O3)粉末(平均粒径2.0μm)、酸化エルビウム(Er2O3)粉末(平均粒径1.8μm)、酸化イッテルビウム(Yb2O3)粉末(平均粒径1.5μm)、酸化イットリウムと酸化珪素の複合酸化物(Y2SiO5)粉末(平均粒径2.0μm)、酸化イッテルビウムと酸化珪素の複合酸化物(Yb2Si2O7)粉末(平均粒径1.9μm)、酸化珪素(SiO2)粉末(平均粒径0.5μm)を、第1表に示す所定量(質量%)添加し、分散媒として精製水又はアセトンを用い、混合用ボールはφ5mmのSiCボールをセラミックス全粉末原料100gに対し2倍の200gの割合で用い、SiCタイルを内壁及び蓋に内貼りしたボールミルで24〜48時間混練(実施例2は48時間混練)した。精製水又はアセトンの添加量は、セラミックス全粉末原料100gに対し120gとした。
【0025】
次いで、得られた混合粉末を成形後、焼結した。成形条件としては冷間静水圧による加圧150MPaとし、60mm×60mm×厚さ20mmの平板を成形した。焼結条件としては、窒素ガス0.5MPa加圧雰囲気中にて、第1表中に示す温度で8時間保持のガス圧焼結を行い、同じく第1表に記載の降温時1500℃保持と降温速度にて炉冷を行った。実施例3については、降温時放冷を行った後に窒素雰囲気中1500℃まで再加熱し、第1表記載の保持を行った。得られた焼結体からJIS規格の曲げ試験片を切り出し、機械的特性を評価した。抗折強さは、JIS R1601により、大気中室温及び1400℃にて測定した。硬さは、押込荷重98Nにてビッカース硬さとして測定した。靭性については、JIS R1607のSEPB法により、室温にて破壊靭性値KICを測定した。また、耐熱衝撃性としては、曲げ試験片を大気中にて所定の温度に加熱後、水中急冷し、抗折強さの劣化が始まる急冷温度差ΔTで評価した。焼結体密度は、アルキメデス法により相対密度として測定した。各種結晶相の比率に関して、予めX線回折ピーク高さから求めた検量線に従って求め、第1表に示した。得られた各焼結体の諸特性を第2表に示す。
(比較例6〜7)
比較例6〜7は、実施例1〜5と同一原料を用いるが、ポットの内壁、蓋やボールにSiC材ではなく、Si3N4材を用い、同じく精製水又はアセトンで調製したが、それぞれ異常粒成長により相対密度が97%を下回った場合(比較例6)、Si2N2O相、Y2Si2O7相が得られなかった場合(比較例7)の各比較例である。これらを併せて第1表に示す。また、これら比較例の材料も、実施例1〜5と同様の条件で特性を評価し、その結果を第2表に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
第2表に示すように、本発明の実施例によるものは、室温及び高温の強度も高く、耐熱衝撃性、耐酸化性が極めて優れることが確認された。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の窒化珪素質セラミックス焼結体は、熱的安定性、機械的安定性に優れ、長期耐久性を有する。
Claims (4)
- 実質的に、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相、Si2N2O相、β−Si3N4相、及び平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子からなる窒化珪素質セラミックス焼結体。
- 前記窒化珪素質セラミックス焼結体が、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7の少なくとも1相を4.9〜12質量%、Si2N2O相を0.1〜3質量%、平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子を0.5〜15質量%、及び、β− Si3N4及び不可避的不純物を残部とする組成である請求項1記載の窒化珪素質セラミックス焼結体。
- 前記窒化珪素質セラミックス焼結体が、97%以上の相対密度を有する請求項1又は2に記載の窒化珪素質セラミックス焼結体。
- 少なくとも一方が実質的にSiCからなるポット、粉砕用ボールを用い、Y2O3、Er2O3、Yb2O3の少なくとも1種を3〜10質量%、SiO2を1〜5質量%及びSi3N4を残部とするセラミックス原料を、前記粉砕用ボールと共に前記ポットに充填し、前記ポットに回転、撹拌、振動の1種以上の運動を与えることで、前記セラミックス粉末を粉砕混合させつつ、前記少なくとも一方が実質的にSiCからなるポット、粉砕用ボールを摩滅させて、前記セラミックス原料中に平均粒径0.05μm以下の球状SiC微粒子0.5〜15質量%を均一混入してから、得られた混合粉末をプレス成形により成形体とし、該成形体を窒素雰囲気中1770〜1850℃で焼結した後、下記(a)〜(c)に記載の少なくとも一つの手段を用いて、Y2Si2O7相、Er2Si2O7相、Yb2Si2O7相の少なくとも1相及びSi2N2O相を粒界相として生成させることを特徴とする窒化珪素質セラミックス焼結体の製造方法。
(a) 焼結の降温過程における降温速度を5℃/分〜10℃/分の範囲とする。
(b) 焼結の降温過程において、1350〜1650℃の温度範囲で12時間以上保持する。
(c) 焼結後、窒素雰囲気中、1350〜1650℃の温度範囲で12時間以上保持する再加熱処理をする。
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