JP3694583B2 - 粉砕機用部材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種粉砕機における容器、内張材、粉砕用メディア等の被粉砕物と接触する表面を有する粉砕機用部材に関するものである。
【0002】
耐摩耗部品、摺動部品、耐蝕性部品、耐熱用部品、もしくは装飾用部品などに適
【0003】
【従来の技術】
従来、粉砕機は耐衝撃性に優れた金属製の粉砕機用部材により構成されていたが、被粉砕物の高純度化、ならびに粉砕機および粉砕機部材の軽量化という近年の要求に対しては、満足し得るものではなかった。
【0004】
すなわち、金属製粉砕機用部材は耐衝撃性に優れるが、その反面、耐摩耗性が不十分であって、金属成分であるFe摩耗粉が混入される場合があり、粉砕物の高純度化は望めなかった。そこで、金属体にコーテイングを施した部材が使用されているが、金属は密度が高いため、粉砕機および粉砕機用部材の重量が大きくなり、これにより、被粉砕物の容量に対して、大きなウエイトを占めていた。
【0005】
そこで、従来の金属製の部材に代えて、アルミナおよびジルコニア等のセラミックスを用いて耐摩耗性と軽量化を達成したもの、セラミックス表面に金属コーティングを施して耐熱衝撃性を高めたもの、また、最近では、耐熱衝撃性に優れた窒化珪素質のセラミックスを用いたもの(特開平5−301775号)等が提案されている。
【0006】
また、セラミックスの強度や靱性などの機械的特性を改善する事を目的として、アルミナや窒化珪素の焼結体中に炭化珪素や炭化チタン等のウイスカーを分散させることが行われている。代表的なものとして特開昭63−185869号、登録2700925号等がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アルミナ系セラミックスは耐熱衝撃性に劣り、しかも熱伝導率も低いため、天然石等の乾式粉砕における温度上昇によって耐熱衝撃性の点から満足し得るものではない。金属をコーテイングしたセラミックスでは、コーティング層の摩耗や剥離により不純物の混入や粉砕性能が低下するという問題点がある。また、窒化ケイ素質焼結体は、アルミナに比較して、優れた強度、耐衝撃性を有する反面、靱性や耐摩耗特性の点で実用上十分に満足できるものではなかった。
【0008】
また、窒化珪素質焼結体中に炭化珪素ウイスカー等を分散させることにより焼結体の靭性や強度を向上させることができるものの、窒化珪素及び炭化珪素は、アルミナに比較して金属との凝着、溶着性が高く、また硬度が低いために耐摩耗性が低く粉砕機用部材としては十分満足できるものではなかった。
【0009】
これに対して、TiC等のTi化合物ウイスカーは、金属との凝着、溶着性が小さいことから、炭化珪素ウイスカーに比較して硬度が高いため、耐摩耗性の点で優れた効果が期待できる。しかしながら、耐摩耗性については向上はほとんど見られず、むしろ耐摩耗性が劣化する傾向にあった。
【0010】
これは、Ti化合物が、そもそも窒化珪素との濡れ性、密着性や親和性が悪く、相互適合性が十分でないためであり、Ti化合物の形状や添加量などを細かく制御する必要がある。つまり、相互適合性が悪い物質を分散させると、添加量や分散粒子の形状によって、クラックのブリッジング効果により靭性や強度は向上するが、焼結性が劣化したり、分散強化物質と窒化珪素マトリックスとの相互の結合力が低下し、焼結体表面の分散相の脱落(脱粒)等が発生するために耐摩耗性は劣化したものと推察される。
【0011】
従って、本発明の目的は、強度、靱性に優れ、割れや欠けの発生がなく、且つ耐摩耗性に優れた耐久性を有する粉砕機用部材を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、窒化珪素系マトリックス中に分散させて強度、靱性を高めうる分散相として、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子あるいはそのウイスカーを選択した場合、マトリックス中に特定の遷移金属を分散させることにより、窒化珪素系マトリックスと、Ti化合物分散相との濡れ性を改善できること、さらには、マトリックス中に適度の大きさのボイドを点在させることにより、強度、靱性のみならず、被粉砕物との衝撃的な接触に対して、割れや欠けの発生がなく、優れた耐摩耗性を発揮できることを見いだし、本発明に至った。
【0013】
即ち、本発明の粉砕機用部材は、窒化珪素を主体とするマトリックス中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子あるいはそのウイスカーを10〜40体積%の割合で分散してなる焼結体であって、前記マトリックス中に、W、Mo、Mn、Cu、Fe、NiおよびCoの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属をマトリックス全量中に金属換算で0.1〜8重量%の割合で含み、気孔率が3%以下、且つマトリックス中に点在するボイドの平均径が0.5〜5μm、ラマン分光分析法により検出される窒化珪素の206cm −1 のピーク強度X 1 と、Siの521cm −1 のピーク強度X 2 との比(X 2 /X 1 )が0.05〜3であること特徴とするものである。
【0014】
特に、前記遷移金属が、前記Ti化合物の粒子あるいはウイスカーの周囲に密に存在すること、前記マトリックス全量中、周期律表第3a族元素を酸化物換算で1〜15重量%、AlあるいはMgを酸化物換算量で0〜7重量%、不純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下の割合で含有することが望ましい。
【0015】
【作用】
窒化珪素質焼結体の靭性、強度および硬度を向上させる場合、セラミックウイスカー等を分散させることが効果的であるが、本発明によれば、このような分散相を、TiC等のTi化合物によって構成するとともに、かかる分散相を分散するマトリックス中に、W、Mo、Mn、Cu、Fe、NiおよびCoの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属元素を含有させることにより、上記遷移金属がTi化合物の周囲に密に凝集することにより、Ti化合物からなる分散相のマトリックスへの濡れ性を改善して密着性を向上させる作用を成し、焼結体の靭性や強度とともに、耐摩耗性を向上させることができる。
【0016】
また、粉砕機用部材においては、被粉砕物との衝突に伴う衝撃が断続的に加わるために、微小なクラックが発生しやすいが、本発明によれば、マトリックス中に点在するボイドの平均径を0.5〜5μmとすることにより、クラックの進展をボイドによって有効的に阻止することができる。
【0017】
その結果、本発明によれば、高強度、高靱性を有し、且つ被粉砕物との衝突に対しても優れた耐摩耗性を有する、耐久性に優れた粉砕機用部材を提供することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の粉砕機用部材は、図1の概略組織図に示すように、窒化珪素を主体とするマトリックス1と、Ti化合物系分散相2とから構成される。窒化珪素質マトリックス1は、β−窒化珪素結晶からなる主相と、少なくとも周期律表第3a族元素を含有する粒界相とを具備する。一方、Ti化合物系強化相2は、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種の粒子あるいはウイスカーを主体とするものである。
【0019】
Ti化合物系強化相2中のTi化合物としては、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種からなる粒子あるいはウイスカー(繊維状物質)からなり、例えば、TiC,TiC、TiCN、TiCO、TiNO、TiCNO等が挙げられる。これらの粒子及びウイスカーは、化学量論組成であっても、又は非化学量論組成からなっているものでもよい。
【0020】
また、前記Ti化合物は、特にウイスカーであることが望ましく、その場合、ウイスカーは長繊維状のもの又は短繊維状のもの、もしくはこれらの混合物であってもよいが、平均粒径(短軸径)が0.1〜2μm、好ましくは0.5〜1.5μmで、平均アスペクト比が2〜50、好ましくは4〜30であるものが望ましい。これは、平均粒径が2μmを越えると焼結性が妨げられ、マトリックスとウイスカーの結合力が低下し、焼結体の靱性、強度及び耐摩耗性が低下するからである。平均アスペクト比も同様の理由による。
【0021】
又、粒子形状のTi化合物を用いる場合には、平均粒径が0.2〜3μm、好ましくは0.4〜1.5μmであることが望ましい。これは、粒子形状である場合、平均粒径が3μmをこえるとマトリックスとの結合力が低下し、焼結体の靱性、強度及び耐摩耗性が低下するからである。
【0022】
上記Ti化合物は、粉砕機用部材全量中において、10〜40体積%、特に15〜30体積%の割合で含有されていることが望ましい。上記含有量が10体積%よりも少ないとTi化合物による機械的特性の向上効果が期待できず、含有量が40体積%を超えると焼結性やマトリックスとの結合力が低下し、強度や耐摩耗性が低下し、耐久性が劣化する。
【0023】
本発明によれば、上記マトリックス中に、W、Mo、Mn、Cu、Fe、NiおよびCoの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有することが重要である。これらの遷移金属の存在によって、Ti化合物系強化相2のマトリックス1との濡れ性を改善し、相互適合性を向上させることができるのである。
【0024】
上記のようにマトリックス1中に前記遷移金属が含まれる場合、組織上、図1に示すように、Ti化合物系分散相2の周囲に前記遷移金属が金属あるいは酸化物、窒化物、酸窒化物もしくは珪化物等の化合物として凝集部3を形成する性質を有する。このように遷移金属あるいはその化合物として、Ti化合物の周囲に密に存在した凝集部3を形成することにより、分散相2とマトリックス1との濡れ性の向上に寄与できる。なお、上記凝集部3は、必ずしも分散相2の全周囲に形成されていなくても、分散相2の50%以上に形成されていれば、その効果が十分に発揮される。この凝集部3の厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは平均で0.1〜0.5μm程度が望ましい。
【0025】
なお、前記遷移金属は、マトリックス全量中に、0.1〜8重量%の割合で含有されることが必要であり、特に強度や耐摩耗性の向上の点で0.3〜5重量%、また0.5〜4重量%でさらに耐摩耗性を向上できる。
【0026】
また、マトリックスは、窒化珪素を主体とするものであり、窒化珪素結晶相は、平均粒径(短軸径)が0.5〜2μm、平均アスペクト比が3以上の針状のβ−窒化珪素粒子からなり、それが互いに絡み合った構造となることで、焼結体の破壊靱性および強度の向上に寄与する。
【0027】
さらに、上記マトリックス中には、焼結助剤成分として、周期律表第3a族元素を含み、その含有量は酸化物換算で1〜15重量%、好適には3〜10重量%であることが望ましい。上記周期律表第3a族元素としては、Y、Er、Yb、Lu、Sm等が挙げられ、これらの中でもY、Yb,Erが好適である。
【0028】
その他の焼結助剤としては、AlあるいはMgを酸化物換算量で0〜7重量%、好適には0〜5重量%、さらに不純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下、好適には1〜8重量%の割合でそれぞれ含むことが望ましい。
【0029】
ここで、上記不純物的酸素とは、焼結体中の全酸素量から焼結体中のYまたは希土類元素(RE)およびAlあるいはMgに対して化学量論組成(RE2 O3 、Al2 O3 、MgO)で結合していると仮定される酸素量を差し引いた残りの酸素量であり、そのほとんどは窒化珪素粉末中の不可避的酸素または意図的に添加されたSiO2 成分より構成される。
【0030】
前記周期律表第3a族元素、AlあるいはMg、不純物的酸素は、窒化珪素結晶相の粒界に、ガラス相を形成するか、または希土類元素−Si3 N4 −SiO2 系の結晶相として存在してもよい。なお、Alは、β−窒化珪素結晶相中に一部固溶していてもよい。
【0031】
また、本発明における焼結体は、優れた機械的特性を得る上で、相対密度が95%以上、好適には98%以上であり、気孔率を3%以下、好適には1.5%以下であることが、優れた耐摩耗性を達成する上で望ましい。
【0032】
さらに、本発明における焼結体には、気孔率3%以下、特に1.5%以下であり平均径が0.5〜5μmのボイドを均一に点在させることで、破壊源であるクラックが発生した場合において、クラックの伸展を防止することができる結果、クラックの伸展による破損や欠損および割損を防止できる。平均径が5μmを越えたり、気孔率が3%を超えると、微小な脱粒摩耗やチッピングを併発して耐摩耗性が低下し、平均径が0.5μmよりも小さいと、ボイドの点在による上記効果が発揮できない。
【0033】
さらに、本発明によれば、かかる焼結体をラマン分光分析法によって分析した時に、微小のSiが検出されることが望ましい。このSiは、X線回折測定法によって検出することができないレベルの微小な粒子として存在しているもので、ラマン分光分析法によってのみ検出されるものである。このSiはおそらく窒化珪素質マトリックス中の窒化珪素結晶粒界中もしくは窒化珪素粒内に分散しているものと推察される。
【0034】
このようなSiをマトリックス中に存在させることにより、焼結体の強度および靱性を高めることができる。この理由は定かではないが、おそらく粒界に分散するSiがクラックの進展を妨げる作用をなしているためと推察される。
【0035】
しかし、ここで粒界に存在するSi粒子は、ごく微量であることが必要であり、例えば、X線回折測定法によって検出されるレベルで存在すると、それが破壊源となり、焼結体の強度を劣化させてしまう。これに対して、本発明の焼結体は、ごく微量のSiまで検出可能なラマン分光分析法に従い、特定のレベルで存在することが必要である。
【0036】
具体的にはβ−窒化珪素の206cm−1付近に存在するピークの強度をX1、Siの521cm−1付近のピークの強度をX2としたとき、X2/X1で表されるピーク比が0.05〜3、好ましくは0.1〜2であることが重要である。このピーク比が0.05よりも低いと強度、靱性の向上効果が低く、所望の特性が得られず、3を越えると、析出したSi自体が破壊源となり強度を劣化させてしまうためである。
【0037】
なお、このSiは、焼結体の表面と中心部とで必ずしも同じレベルで存在しておらず、概して、中心部におけるSi量が表面部のSi量よりも多くなる傾向にある。従って、上記X2 /X1 の値も表面部よりも中心部の方が大きくなる傾向となる。この場合、本発明におけるX2 /X1 は、表面部と中心部の平均値として算出される値とする。
【0038】
次に、本発明の粉砕機用部材を製造する方法について説明すると、まず、マトリックス成分として、窒化珪素粉末、特にα化率が90%以上の粉末を用いるか、あるいは窒化珪素粉末の0〜80重量%相当量を珪素粉末に置き換え、珪素粉末を低温で窒化するとα−Si3 N4 が生成されやすくなり、窒化後の成形体のα−Si3 N4 の含有量を高めることができる。また、窒化珪素粉末の平均粒径は、0.4〜1.2μm、不純物酸素量0.5〜1.5重量%が適当である。
【0039】
このようなα−Si3 N4 の含有量の大きい成形体を焼成すると、針状のβ−窒化珪素結晶相の生成を増加させることができ、焼結体の強度および靱性を高くさせることができる。
【0040】
次に、このような窒化珪素粉末に対して、周期律表第3a族元素酸化物、場合によっては、Al2 O3 、MgO、さらにはSiO2 を、焼成前の成形体組成が、希土類元素の酸化物換算量が1〜15重量%、特に3〜10重量%、MgO あるいはAl2 O3 を7重量%以下、特に5重量%以下、さらには、成形体中の全酸素量から周期律表第3a族元素酸化物粉末、Al2 O3 粉末中の酸素分を差し引いた残りの酸素量が、SiO2 換算で10重量%以下、特に8重量%以下となるように添加する。
【0041】
また、上記の成分の他に、W、Mo、Mn、Cu、Fe、NiおよびCoのうちの少なくとも1種の遷移金属の酸化物、窒化物、炭化物もしくは珪化物粉末を金属に換算して0.1〜8重量%の割合で添加する。
【0042】
そして、上記マトリックス成分に対して、分散相形成成分として、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種の粒子あるいはウイスカーを10〜40体積%の割合で添加混合する。
【0043】
得られた混合粉末を公知の成形法によって所定の粉砕機部材の形状に成形する。成形方法としては、プレス成形、鋳込み成形、押し出し成形、射出成形、冷間静水圧成形などの方法が挙げられる。
【0044】
この時、最終的にマトリックス中にボイドを点在させるには、上記混合粉末を造粒することなく、成形、焼成するか、あるいは上記混合粉末を一旦30〜300μmの大きさに造粒した場合には、この造粒粉が成形時に完全に潰れるような圧力を印加することにより、均一に点在させることができる。
【0045】
これは、造粒粉を潰れないような圧力で成形すると、造粒粉の周囲にのみボイドが凝集してしまうためである。なお、ボイド径分布は、用いる原料粉末と成形時の圧力、さらには焼成条件による緻密化の程度によって制御できる。
【0046】
つぎに、この成形体を1650〜1850℃、特に1700〜1800℃の窒素雰囲気中、特にSiO含有雰囲気中で公知の焼成方法により、焼結体密度が理論密度の95%以上となる条件で焼成緻密化する。焼成方法としては、常圧焼成、窒素ガス加圧焼成、熱間静水圧焼成法など周知の焼成方法が採用される。
【0047】
SiOの雰囲気は、SiO2 +Si、もしくはSiO2 +Si3 N4 の混合粉末を成形体が収納される焼成鉢内に一緒に入れて焼成することにより形成することができる。焼成雰囲気中にSiOを含まない場合、もしくは1850℃を超える焼成温度では、窒化珪素の分解が激しく、微量の窒化珪素のみを分解させるような細かな制御が難しい。また、1650℃よりも低いと、焼結性が低下するため、強度、靱性の向上が望めない。
【0048】
なお、焼結体中のマトリックス中にSiを残存させるためには、焼成温度を、窒化珪素が常圧にて珪素と窒素ガスに分解する平衡温度から約30℃低い温度範囲内で焼成して、ごく微量のSi3 N4 を分解させ、分解によって生成されたSiがマトリックス中の窒化珪素結晶粒子の粒界中に存在することになる。なお、Si量は、上記温度範囲での保持時間などにより任意に制御することが可能である。かかる方法によれば、焼結体のラマン分光分析におけるSiの検出量は、焼結体の表面部よりも内部のほうが大きくなる傾向にある。
【0049】
また、上記のようにして焼成した焼結体をさらに熱間静水圧焼成によって、1600〜1800℃の温度で窒素ガス、またはアルゴンガス中で1000〜2000atmの圧力下で焼成して、さらに緻密化を図ることもできる。
【0050】
【実施例】
平均粒径が1μm、α化率98%、酸素含有量が1.2重量%の窒化珪素(Si3 N4 )粉末、平均粒径が0.7μmの珪素粉末、平均粒径が1μm以下の各種の周期律表第3a族元素酸化物(RE2 O3 )、酸化アルミニウム(Al2 O3 )および酸化珪素(SiO2 )の粉末、さらには遷移金属化合物と、Ti化合物を、成形体組成が表1,2の比率になるように混合した。
【0051】
なお、Ti化合物としては、平均粒径が0.5〜1μmの粒子状、平均粒径(短軸径)が0.8μm、平均アスペクト比が10〜20のTi化合物ウイスカーを用いた。
【0052】
得られた混合物をスプレードライによって粒径が40〜200μmの造粒体を作製した。その後、0.3〜3t/cm2 の圧力でもってラバープレス(アイソスタテイックプレス)成形をおこなった。
【0053】
そして、成形体中にSi粉末を含まない場合には、窒素圧9気圧の窒素中、表1の焼成温度で5時間焼成し、その後に炉冷して焼結体を得た。また、Si粉末を含む場合には、1150℃で5時間加熱して窒化させ、その後に表1の焼成温度で5時間焼成し、続けて炉冷して焼結体を得た。なお、ボイドの大きさは成形時の圧力によって制御した。
【0054】
なお、焼成は、各成形体を成形体重量の5%のSiO2 +Si(重量比で1:1)混合粉末を配置し、炭化珪素質の匣鉢に入れて焼成した。
【0055】
かくして得られた各焼結体に対して、相対密度、気孔率、強度、靭性、硬度および平均ボイド径を以下の方法で測定し、その結果を表4に示した。相対密度および気孔率は、JISR1601にて規定された条件の形状にまで加工し、アルキメデス法に基づく比重測定から求めた。強度は、JISR1601に基づき室温の4点曲げ抗折強度試験をおこなって求めた。靭性は鏡面仕上げをおこなった試料に対して、JIS−R1607に基づく室温での破壊靱性を測定した。硬度は、ビッカース硬度(荷重1kg)により測定した。さらに平均ボイド径は、マトリックス部分の走査型電子顕微鏡写真を用いて画像解析によって調べた。また、気孔率は、JISC2141に基づく見掛気孔率を求めた。
【0056】
また、摩耗試験として下記のとおり摩耗率を求める試験を行った。摩耗率については、60mm×30mm×6mmの試料板を作製し、表面を平滑に仕上げて評価面となし、この面に対して、メディアとして水を含んだSiC製GC#240番(粒径80〜130μm)を噴射圧力4.0kg・cm2 で10分間試料板に直角(90°)にあてることにより、試料板の重量変化を測定し、これを摩耗率とした。
【0057】
さらに、ラマン分光分析法により窒化珪素の206cm-1のピーク強度X1 と、Siの521cm-1のピーク強度X2 とのX2 /X1 比を求めた。なお、試料No.7についてそのラマン分光分析チャートを図2に示した。
【0058】
また、メディア摩耗率については、上記各焼結体からなる直径10mmのボール250gをメディアとし、水300ccとともに、ポリポットにいれ、振動ミルで粉砕媒体を混ぜないで行う、からずり試験を100時間行った。その後、メディアを取り出し、洗浄および乾燥させ、そのメディアの重量変化により摩耗率を求めた。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
表1および表3の結果から明らかな通り、遷移金属を全く添加しない試料No.1では、摩耗率が2.5%、メディア摩耗率が2%と大きく、粉砕機用部材としての性能が低いものであった。
【0064】
また、表1の結果によると、Ti化合物の量が本発明範囲より少ない試料No.4,30では、耐摩耗性の効果が十分でなく、本発明範囲より多い試料No.9,31では、焼結性が低下するとともに、耐摩耗性は大幅に劣化した。
【0065】
これに対して、本発明に従い、所定量の遷移金属を添加せしめた本発明試料は、いずれも強度800MPa以上、靭性7.0MPa・m1/2 以上、硬度15.0GPa以上の機械的特性を有し、摩耗特性においても摩耗率1%以下、メディア摩耗率1.2%以下の優れた耐摩耗性を有するものであった。
【0066】
本発明品の中で、ラマン分光分析による強度比が0.2〜3の試料は、この範囲から逸脱する試料No.22.25よりもさらに優れた特性を示し、いずれも室温強度900MPa以上、靱性が7.0MPa・m1/2 以上で、摩耗率1%以下、メディア摩耗率1%以下の優れた特性であった。
【0067】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の粉砕用部材は、窒化珪素を主体とするマトリックス中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子、あるいはそのウイスカーを分散させるとともに、特定の遷移金属を含有せしめ、さらに適当なサイズのボイドを点在させ、微量のSiを析出せしめることにより、強度、靱性および耐摩耗性に優れ、耐久性に優れた粉砕機用部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における窒化珪素質焼結体の概略組織図を示す。
【図2】本発明の窒化珪素質焼結体(試料No.7)のラマン分光分析チャートの一例を示す。
【符号の説明】
1 マトリックス
2 分散相
3 凝集部
Claims (3)
- 窒化珪素を主体とするマトリックス中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子あるいはそのウイスカーを10〜40体積%の割合で分散してなる焼結体であって、前記マトリックス中に、W、Mo、Mn、Cu、Fe、NiおよびCoの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属をマトリックス全量中に金属換算で0.1〜8重量%の割合で含み、気孔率が3%以下、且つマトリックス中に点在するボイドの平均径が0.5〜5μm、ラマン分光分析法により検出される窒化珪素の206cm −1 のピーク強度X 1 と、Siの521cm −1 のピーク強度X 2 との比(X 2 /X 1 )が0.05〜3であること特徴とする粉砕機用部材。
- 前記遷移金属が、前記Ti化合物の粒子あるいはウイスカーの周囲に密に存在することを特徴とする請求項1記載の粉砕機用部材。
- 前記マトリックス中において、マトリックス全量中、周期律表第3a族元素を酸化物換算で1〜15重量%、AlあるいはMgを酸化物換算量で0〜7重量%、不純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1又は2記載の粉砕機用部材。
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