JP3762090B2 - 窒化珪素質焼結体およびそれを用いた切削工具 - Google Patents

窒化珪素質焼結体およびそれを用いた切削工具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗部品、摺動部品、耐蝕性部品、耐熱用部品、もしくは装飾用部品などに適用され、とりわけ、切削工具に好適に使用される耐摩耗性に優れた窒化珪素質焼結体と、それを用いた切削工具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、セラミックスは、金属に比べ比重が小さいため、製品重量が軽く、金属より高い硬度を有し、耐摩耗性、耐酸化性、耐蝕性及び耐熱性に優れていることから、耐摩耗性を有する切削工具や、ベアリング用ボールなどの摺動用部品、バルブ、ヘッドライナー、発熱体、焼成管などの耐熱性部品、時計ケース、釣り具のリール用ガイドなどの装飾用部品などの幅広い分野に用いられている。
【0003】
このような用途に用いられるセラミックス材料は、アルミナ、炭化珪素、窒化アルミニウム、グラファイトあるいは窒化珪素を主体とするセラミックスが最も使用されているが、金属より破壊靭性や強度が低いために、セラミックス複合材料の様々な検討が進められている。
【0004】
その中でも、上記の主成分に対して、硬質粒子や、繊維状結晶粒子(ウイスカー、ファイバー)を分散させることにより、靱性あるいは強度を改善する試みが行われている。例えば、分散相としては、ジルコニア等の酸化物粒子の他に、カーボンファイバー、炭化珪素、炭化チタン、炭窒化チタン等の炭化物、炭窒化物などの粒子、あるいはそれらのウイスカー等が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、アルミナ−炭化珪素ウイスカー系複合材料は、アルミナセラミックスに比較して靭性や強度を大きく向上できるものの、アルミナ自体の強度、靱性および高温強度等の特性が低いために、その効果も限界があり、使用できる用途が限られている。
【0006】
これに対して、窒化珪素質焼結体は、焼成の段階で結晶が針状に成長するために、この針状結晶がからみあった構造となることにより、セラミックスの中でも靭性や強度、耐熱衝撃性等に優れた材料であるが、実用的には不十分であることから、炭化珪素ウイスカーを分散させて靭性や強度をさらに向上させる試みがある。ところが、窒化珪素や炭化珪素は、いずれも金属との凝着、溶着性がアルミナより高く、また、硬度が低いため耐摩耗性が低いという問題があった。
【0007】
そこで、本発明者は、窒化珪素質焼結体の靭性や強度の向上に加え、耐摩耗性を向上させる上で、それ自体、硬度が高く、耐摩耗性に優れたTiCやTiNなどのチタン化合物ウイスカーを分散させる試みを行ったが、期待される効果が得られないものであった。それは、上記チタン化合物が、窒化珪素との濡れ性が悪いために、窒化珪素マトリックスとの密着性や親和性が低く、相互適合性が十分でない点であることがわかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、窒化珪素をマトリックスとして、Ti化合物系強化相を分散せしめた複合材料において、前記強化相とマトリックスとの濡れ性を向上させて、強化相による特性向上効果を最大源に発揮し、高強度、高靱性および高硬度を有し耐摩耗性に優れた窒化珪素質焼結体を提供するにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、窒化珪素系マトリックス相とTi化合物系強化相との濡れ性を向上させるための具体的な構成について種々検討した結果、Ti化合物系強化相中に特定の遷移金属を存在せしめ、この強化層を、Ti化合物の粒子あるいはウイスカーからなるコア部と、コア部の周囲に形成された遷移金属を含有するシェル部とを有する構成とすることにより、窒化珪素マトリックスとの濡れ性が改善されることを見いだし、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の窒化珪素質焼結体は、β−窒化珪素結晶からなる主相と、少なくとも周期律表第3a族元素を含有する粒界相とを具備するマトリックス相中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子あるいはウイスカーと、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する強化相が10〜40体積%の割合で分散してなり、前記強化相が、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物の粒子あるいはウイスカーからなるコア部と、該コア部の周囲に前記遷移金属を含有するシェル部とを有することを特徴とするものである。
【0011】
また、前記遷移金属が、前記Ti化合物以外の全成分を100重量%として、金属に換算して0.01〜8重量%の割合で含まれること、前記マトリックス相が、マトリックス全量中、窒化珪素を70〜95重量%、周期律表第3a族元素を酸化物換算で1〜15重量%、アルミニウムを酸化物換算量で7重量%以下、不純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下の割合で含むこと、焼結体の相対密度が95%以上、気孔率が3%以下、平均ボイド径が5μm以下であること、該焼結体のラマン分光分析法により検出される窒化珪素の206cm−1のピーク強度Xと、Siの521cm−1のピーク強度Xとの比(X/X)が0.2〜3であること等の種々の特徴を具備するものである。
【0012】
また、本発明によれば、上記の窒化珪素質焼結体を切削工具として用いることを特徴とするものである。
【0013】
【作用】
窒化珪素質焼結体の靭性、強度および硬度を向上させる場合、セラミックウイスカー等を強化相として分散させることが効果的であるが、その中でも、硬度が高く、耐摩耗性に優れたTiC等のTi化合物を選択することにより機械的特性の向上が期待できる。しかも、窒化珪素に対して、Ti化合物を添加し焼成した焼結体では、強度、靭性はある程度の効果が見られたが、耐摩耗性については顕著な向上は見られず、むしろ耐摩耗性が劣化する傾向が見られた。
【0014】
これは、Ti化合物が、窒化珪素との濡れ性、密着性や親和性が悪く、相互適合性が十分でないためであり、そのために、Ti化合物の形状や添加量などを細かく制御しなければならない。つまり、相互適合性が悪い物質を分散させると、添加量や形状によって、クラックのブリッジング効果により靭性や強度は向上するが、焼結性が劣化したり、分散強化物質と窒化珪素マトリックスとの濡れ性、密着性や親和性が悪いため相互の結合力が低下し、焼結体表面の分散強化相の脱落(脱粒)等が発生するために耐摩耗性は劣化したものと推察される。
【0015】
これに対して、本発明によれば、Ti化合物からなる強化相中に、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有せしめると、上記遷移金属が、いわゆるTi化合物からなるコア部の周囲にシェル部を形成することにより、強化相の窒化珪素マトリックスへの濡れ性を改善して相互適合性を向上させる作用を成す結果、焼結体の靭性や強度とともに、耐摩耗性を著しく向上させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化珪素質焼結体は、図1の概略組織図に示すように、窒化珪素質マトリックス相1と、Ti化合物系強化相2とから構成される。窒化珪素質マトリックス相1は、β−窒化珪素結晶からなる主相と、少なくとも周期律表第3a族元素を含有する粒界相とを具備する。一方、Ti化合物系強化相2は、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種の粒子あるいはウイスカーを主体とするものである。
【0017】
Ti化合物系強化相2中のTi化合物としては、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種からなる粒子あるいはウイスカー(繊維状物質)からなり、例えば、TiC,TiC、TiCN、TiCO、TiNO、TiCNO等が挙げられる。これらの粒子及びウイスカーは、化学量論組成であっても、又は非化学量論組成からなっているものでもよい。
【0018】
また、前記Ti化合物は、特にウイスカーであることが望ましく、その場合、ウイスカーは長繊維状のもの又は短繊維状のもの、もしくはこれらの混合物であってもよいが、平均粒径(短軸径)が0.1〜2μm、好ましくは0.5〜1.5μmで、平均アスペクト比が2〜50、好ましくは4〜30であるものが望ましい。これは、平均粒径が2μmを越えると焼結性が妨げられ、マトリックスとウイスカーの結合力が低下し、焼結体の靱性、強度及び耐摩耗性が低下するからである。平均アスペクト比も同様の理由による。
【0019】
又、粒子形状のTi化合物を用いる場合には、平均粒径が0.2〜3μm、好ましくは0.4〜1.5μmであることが望ましい。これは、粒子形状である場合、平均粒径が3μmをこえるとマトリックスとの結合力が低下し、焼結体の靱性、強度及び耐摩耗性が低下するからである。
【0020】
本発明によれば、Ti化合物系強化相2中に、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有することが重要である。これらの遷移金属の存在によって、Ti化合物系強化相2の窒化珪素質マトリックス相1との濡れ性を改善し、相互適合性を向上させることができるのである。
【0021】
上記のようにTi化合物系強化相2中に前記遷移金属が含まれる場合、組織上、図1に示すように、Ti化合物系強化相2は、概して、Ti化合物からなる中心部(コア部)2aと、その周囲に前記遷移金属を含むシェル部2bが形成される。この遷移金属は、酸化物、窒化物、酸窒化物もしくは珪化物として存在することが望ましく、その場合、遷移金属は、コア部2a中にTi化合物との固溶体を形成する。但し、遷移金属は、コア部2aよりも、主としてシェル部2bに多く含まれる。
【0022】
このように、遷移金属が、コア−シェル構造におけるシェル部2bに多く含まれることにより、強化相2と、窒化珪素マトリックス相1との濡れ性の向上に寄与できる。なお、上記シェル部2bは、必ずしも全周囲に形成されていなくても、コア部2aの周囲の50%以上に形成されていれば、その効果が発揮される。
【0023】
このシェル部2bの厚みは、特に限定されるものではないが、好ましくは平均で0.1〜0.5μm程度が望ましい。
【0024】
本発明においては、上記Ti化合物は、全量中に、10〜40体積%、特に15〜30体積%の割合で含有されていることが望ましい。上記含有量が10体積%よりも少ないとTi化合物による機械的特性の向上効果が期待できず、含有量が40体積%を超えると焼結性やマトリックスとの結合力が低下し、強度や耐摩耗性が低下する場合がある。なお、前記Ti化合物系強化相2中に含有される前記遷移金属は、Ti化合物以外の全成分の合計量を100重量%とした時に、0.01〜8重量%の割合で含有され、特に強度や耐摩耗性の向上の点で0.1〜5重量%、また、0.5〜4重量%でさらに耐摩耗性を向上できる。
【0025】
一方、窒化珪素質マトリックス相は、組成上、前記Ti化合物以外の全成分の合計量を100重量%とした時、窒化珪素を75〜95重量%、好適には80〜90重量%含む。窒化珪素結晶相は、平均粒径(短軸径)が0.5〜2μm、平均アスペクト比が3以上の針状のβ−窒化珪素粒子からなり、それが互いに絡み合った構造となることで、焼結体の破壊靱性および強度の向上に寄与する。
【0026】
さらに、上記窒化珪素質焼結体には、焼結助剤成分として、周期律表第3a族元素を含み、その含有量は酸化物換算で1〜15重量%、好適には3〜10重量%であることが望ましい。その他の焼結助剤としては、アルミニウムを酸化物換算量7重量%以下、好適には5重量%以下、さらに不純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下、好適には8重量%以下の割合でそれぞれ含むことが望ましい。上記周期律表第3a族元素としては、Y、Er、Yb、Lu、Sm等が挙げられ、これらの中でもY、Yb,Erが好適である。
【0027】
ここで、上記不純物的酸素とは、焼結体中の全酸素量から焼結体中のYまたは希土類元素(RE)およびAlに対して化学量論組成(RE2 3 およびAl2 3 )で結合していると仮定される酸素量を差し引いた残りの酸素量であり、そのほとんどは窒化珪素粉末中の不可避的酸素または意図的に添加されたSiO2 成分より構成される。
【0028】
前記周期律表第3a族元素、アルミニウム、不純物的酸素は、窒化珪素結晶相の粒界に、ガラス相を形成するか、または希土類元素−Si3 4 −SiO2 系の結晶相として存在してもよい。なお、アルミニウムは、β−窒化珪素結晶相中に一部固溶していてもよい。
【0029】
また、本発明の窒化珪素質焼結体は、優れた機械的特性を得る上で、相対密度が95%以上、好適には98%以上であり、気孔率を3%以下、好適には1.5%以下であることが、優れた耐摩耗性を達成する上で望ましい。
【0030】
さらに、窒化珪素質焼結体内には、実質的にはボイドが存在しないことが望ましいが、不可避的にボイドが発生する場合、ボイドを均一に点在させることで、破壊源であるクラックが発生した場合において、クラックの進展により破損や欠損および割損が生じても、クラックの進展を防止することができる。このボイドの平均径は5μm以下であることが望ましい。これは、平均ボイド径が5μmを越えると、微小な脱粒摩耗やチッピングを併発し、脱粒が増加し、摩耗が増加するためである。
【0031】
このようなボイドを均一に点在させるには、窒化珪素原料を混合粉砕し、造粒なしに、成形、焼成したり、混合粉末を一旦造粒した後、この造粒した粉体を成形時に成形圧力を十分に上げて造粒粉体をつぶすことにより、均一に点在させることができる。なお、ボイド径分布は、用いる原料粉末と成形時の圧力、さらには焼成条件による緻密化の程度によって制御できる。
【0032】
さらに、本発明によれば、かかる焼結体をラマン分光分析法によって分析した時に、微小のSiが検出されることが望ましい。このSiは、走査型電子顕微鏡(SEM)においても観察することができないレベルのものであり、ラマン分光分析法によって検出されるものである。このSiがSEM観察では検出できないものの、おそらく窒化珪素質マトリックス中の窒化珪素結晶粒界中もしくは窒化珪素粒内に分散しているものと推察される。
【0033】
このようなSiをマトリックス中に存在させることにより、強度および靱性を高めることができる。この理由は定かではないが、おそらく粒界に分散するSiがクラックの進展を妨げる作用をなしているためと推察される。
【0034】
しかし、ここで粒界に存在するSi粒子は、ごく微量であることが必要であり、例えば、X線回折測定法によって検出されるレベルで存在すると、それが破壊源となり、焼結体の強度を劣化させてしまう。これに対して、本発明の焼結体は、ごく微量のSiまで検出可能なラマン分光分析法に従い、特定のレベルで存在することが必要である。それは、具体的にはβ−窒化珪素の206cm-1付近に存在するピークの強度をX1 、Siの521cm-1付近のピークの強度をX2 としたとき、X2 /X1 で表されるピーク比が0.2〜3、好ましくは0.5〜2であることが望ましい。このピーク比が0.2よりも低いと強度、靱性の向上効果が低く、所望の特性が得られず、3を越えると、析出したSi自体が破壊源となり強度を劣化させてしまうためである。
【0035】
次に、本発明の窒化珪素質焼結体を製造する方法について説明すると、窒化珪素原料として、窒化珪素粉末、特にα化率が90%以上の粉末を用いるか、あるいは窒化珪素原料の0〜80重量%相当量を珪素粉末に置き換え、珪素粉末を低温で窒化するとα−Si3 4 が生成されやすくなり、窒化後の成形体のα−Si3 4 の含有量を高めることができる。このようなα−Si3 4 の含有量の大きい成形体を焼成すると、針状のβ−窒化珪素結晶相の生成を増加させることができ、焼結体の強度および靱性を高くさせることができる。また、窒化珪素粉末の平均粒径は、0.4〜1.2μm、不純物酸素量は0.5〜1.5重量%が適当である。
【0036】
次に、このような窒化珪素粉末に対して、周期律表第3a族元素酸化物、場合によっては、Al2 3 粉末、さらにはSiO2 粉末を、焼成前の成形体組成が、希土類元素の酸化物換算量が1〜15重量%、特に3〜10重量%、Al2 3 を7重量%以下、特に5重量%以下、さらには、成形体中の全酸素量から周期律表第3a族元素酸化物粉末、Al2 3 粉末中の酸素分を差し引いた残りの酸素量が、SiO2 換算で10重量%以下、特に8重量%以下となるように添加する。
【0037】
また、上記の成分の他に、Ni、Co、W、Mo、Mn、CuおよびFeのうちの少なくとも1種の遷移金属の酸化物、窒化物、酸窒化物もしくは珪化物粉末を金属に換算して0.01〜8重量%の割合で添加し、さらに、上記の成分に対して、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種の粒子あるいはウイスカーを10〜40体積%の割合で添加混合する。
【0038】
得られた混合粉末をメッシュパス造粒、スプレー造粒、乾式造粒等により30〜300μmの大きさの造粒体を形成した後に、公知の成形法、たとえばプレス成形、鋳込み成形、押し出し成形、射出成形、冷間静水圧成形などにより所望の形状に成形する。
【0039】
つぎに、この成形体を1650〜1850℃、特に1700〜1800℃の窒素雰囲気中、特にSiO含有雰囲気中で公知の焼成方法により、焼結体密度が理論密度の95%以上となる条件で焼成緻密化する。焼成方法としては、常圧焼成、窒素ガス加圧焼成、熱間静水圧焼成法など周知の焼成方法が採用される。SiOの雰囲気は、SiO2 +Si、もしくはSiO2 +Si3 4 の混合粉末を成形体が収納される焼成鉢内に一緒に入れて焼成することにより形成することができる。
【0040】
なお、焼結体中のマトリックス中にSiを残存させるためには、焼成温度を、窒化珪素が常圧にて珪素と窒素ガスに分解する平衡温度から約30℃低い温度範囲内で焼成して、ごく微量のSi3 4 を分解させ、分解によって生成されたSiがマトリックス中の窒化珪素結晶粒子の粒界中に存在することになる。なお、Si量は、上記温度範囲での保持時間などにより任意に制御することが可能である。
【0041】
また、上記のようにして焼成した焼結体をさらに熱間静水圧焼成によって、1600〜1800℃の温度で窒素ガス、またはアルゴンガス中で1000〜2000atmの圧力下で焼成して、さらに緻密化を図ることもできる。
【0042】
【実施例】
平均粒径が1μm、α化率98%、酸素含有量が1.2重量%の窒化珪素(Si3 4 )粉末、平均粒径が0.7μmの珪素粉末、平均粒径が1μm以下の各種の周期律表第3a族元素酸化物(RE2 3 )、酸化アルミニウム(Al2 3 )および酸化珪素(SiO2 )の粉末、さらには、遷移金属化合物と、Ti化合物を、成形体組成が表1,2の比率になるように混合した。なお、Ti化合物としては、平均粒径が0.5〜1μmの粒子状、平均粒径(短軸径)が0.8μm、平均アスペクト比が10〜20のTi化合物ウイスカーを用いた。
【0043】
得られた混合物をスプレードライによって粒径が40〜200μmの造粒体を作製した。その後、0.3〜3t/cm2 の圧力でもってラバープレス(アイソスタテイックプレス)成形をおこなった。
【0044】
そして、成形体中にSi粉末を含まない場合には、窒素圧9気圧の窒素中、表1の焼成温度で5時間焼成し、その後に炉冷して焼結体を得た。また、Si粉末を含む場合には、1150℃で5時間加熱して窒化させ、その後に表1の焼成温度で5時間焼成し、続けて炉冷して焼結体を得た。なお、ボイドの大きさは成形時の圧力によって制御した。
【0045】
なお、焼成は、各成形体を成形体重量の5%のSiO2 +Si(重量比で1:1)混合粉末を配置し、炭化珪素質の匣鉢に入れて焼成した。なお、試料No.22については、SiO2 +Si混合粉末を配置せずに焼成した。
【0046】
かくして得られた各焼結体に対して、相対密度、気孔率、強度、靭性、硬度および平均ボイド径を以下の方法で測定し、その結果を表4に示した。相対密度および気孔率は、JISR1601にて規定された条件の形状にまで加工し、アルキメデス法に基づく比重測定から求めた。強度は、JISR1601に基づき室温の4点曲げ抗折強度試験をおこなって求めた。靭性は鏡面仕上げをおこなった試料に対して、JIS−R1607に基づく室温での破壊靱性を測定した。硬度は、ビッカース硬度(荷重1kg)により測定した。さらに平均ボイド径は、SEMや実体顕微鏡を用いてを調べた。
【0047】
さらに、ラマン分光分析法により窒化珪素の206cm-1のピーク強度X1 と、Siの521cm-1のピーク強度X2 とのX2 /X1 比を求めた。なお、試料No.3についてそのラマン分光分析チャートを図2に示した。
【0048】
また、各組成の焼結体を用いて下記表3の条件で切削テストを行い、テスト後の摩耗量を測定した。
【0049】
【表1】
Figure 0003762090
【0050】
【表2】
Figure 0003762090
【0051】
【表3】
Figure 0003762090
【0052】
【表4】
Figure 0003762090
【0053】
表1および表4の結果から明らかな通り、遷移金属を全く添加しない試料No.7,25では、摩耗量が3mm以上と大きく、耐摩耗特性が低いものであったが、本発明に従い、所定量の遷移金属を添加せしめた本発明試料は、いずれも強度800MPa以上、靭性7.0MPa・m1/2 以上、硬度15.0GPa以上の機械的特性を有し、摩耗特性においても、切削テスト1で1.0mm以下、切削テスト2では0.5mm以下の優れた耐摩耗性を有するものであった。
【0054】
表1の結果によると、Ti化合物の量が本発明範囲より少ない試料No.1、23では、耐摩耗性の効果が十分でなく、本発明範囲より多い試料No.6、24では、焼結性が低下するとともに、耐摩耗性は大幅に劣化した。
【0055】
本発明品の中で、ラマン分光分析による強度比が0.2〜3の試料は、この範囲から逸脱する試料No.20、21、22よりも優れた特性を示し、いずれも室温強度900MPa以上、靱性が8.0MPa・m1/2 以上で切削テスト1で0.4mm以下、切削テスト2で0.3mm以下の優れた特性であった。
【0056】
【発明の効果】
以上の通り、本発明の窒化珪素質焼結体によれば、窒化珪素マトリックス相とのTiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子、あるいはそのウイスカーとの濡れ性を改善し、強度、靱性および耐摩耗性に優れ、切削工具等に好適な焼結体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化珪素質焼結体の概略組織図を示す。
【図2】本発明の窒化珪素質焼結体(試料No.3)のラマン分光分析チャートの一例を示す。
【符号の説明】
1 マトリックス相
2 強化相
3 コア部
4 シェル部

Claims (6)

  1. β−窒化珪素結晶からなる主相と、少なくとも周期律表第3a族元素を含有する粒界相とを具備するマトリックス相中に、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物からなる粒子あるいはそのウイスカーと、Ni、Fe、Co、Cu、Mo、WおよびMnの群から選ばれる少なくとも1種の遷移金属を含有する強化相を10〜40体積%の割合で分散してなり、
    前記強化相が、Tiの窒化物、炭窒化物、炭酸窒化物のうちの少なくとも1種のTi化合物の粒子あるいはウイスカーからなるコア部と、該コア部の周囲に前記遷移金属を含有するシェル部とを有することを特徴とする窒化珪素質焼結体。
  2. 前記遷移金属が、前記Ti化合物以外の全成分を100重量%として、金属に換算して、0.01〜8重量%の割合で含まれることを特徴とする請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  3. ラマン分光分析法により検出される窒化珪素の206cm−1のピーク強度Xと、Siの521cm−1のピーク強度Xとの比(X/X)が0.2〜3である請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  4. 前記マトリックス相が、Ti化合物以外の全成分を100重量%として、窒化珪素を70〜95重量%、周期律表第3a族元素を酸化物換算で1〜15重量%、アルミニウムを酸化物換算量で7重量%以下、不純物的酸素を酸化珪素換算量で10重量%以下の割合で含む請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  5. 相対密度95%以上、気孔率3%以下、平均ボイド径が5μm以下であることを特徴とする請求項1記載の窒化珪素質焼結体。
  6. 請求項1乃至請求項のうちのいずれかに記載の窒化珪素質焼結体からなる切削工具。
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