JP3152783B2 - チタン化合物ウイスカーおよびその製造方法並びに複合材料 - Google Patents

チタン化合物ウイスカーおよびその製造方法並びに複合材料

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、チタン化合物ウイスカ
ーおよびその製造方法、並びに耐摩耗性,靱性に優れた
チタン化合物ウイスカーをセラミックス,サーメット,
超硬合金からなるマトリックス中に含有する複合材料に
関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、セラミックス,サーメット,または
超硬合金の耐摩耗性と靱性を向上させるため種々の改善
が行われている。その1つの例に、炭化珪素(SiC)
ウイスカーに代表される繊維状物質を配合することによ
り靱性を改善することが特開昭61−286271号公
報や特開昭62−41776号公報等にて提案されてい
る。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、Si
Cは鉄、特に酸化鉄と容易に反応しやすい性質を有する
ために、SiCウイスカーを含有する工具では急激に摩
耗が進展し切削が不可能となる問題がある。
【0004】ところが、最近に至りこのような被削材と
の反応性を防止することを目的として、SiCウイスカ
ーに代わり、SiCよりも鉄との反応性が低い炭化チタ
ン(TiC)の繊維状物質(ウイスカー)を添加するこ
とが提案されている(特開平2−116673号公報、
特開平2−71905号公報)。しかし、抗折強度,靱
性,硬度等の特性の点から未だ十分に検討されておら
ず、実用的なレベルに達していない。これはサーメット
や超硬合金等焼結体についても同様であった。
【0005】一方、切削工具材料や耐摩耗材料の用途は
近年ますます広がりを見せており、従来以上に高硬度,
高靱性の双方が要求される場合が多くなっているが、こ
れらの用途に対しては従来のTiCウイスカーを添加し
た複合材料では性能上問題があった。また適当な材料が
存在しないことが各種機械の開発を制約していた。
【0006】
【問題点を解決するための手段】本発明者は、上記問題
点に対して詳細に検討を重ねた結果、チタン化合物ウイ
スカー自体が高温で硬度や強度が低下して変形し、これ
により、焼結体の抗折強度,靱性,硬度等の種々の特性
を低下させていることを見出した。そこでこのようなチ
タン化合物ウイスカー自体の特性を向上させる方法を鋭
意検討した結果、チタン化合物ウイスカーに対して特定
の元素を固溶させることにより変形が防止され、複合材
料の破壊靱性をはじめとする機械的特性を向上できるこ
とを知見した。
【0007】本発明のチタン化合物ウイスカーは、Ti
(Cx ,Ny ,Oz )(x+y+z=1かつ0<x<
1、0<y<1、0<z≦0.1)で表されるチタン化
合物ウイスカーに、Tiを除く周期律表第4a,5a,
6a族元素およびホウ素のうち少なくとも1種が固溶し
ていることを特徴とする。
【0008】このようなチタン化合物ウイスカーは、例
えば、Ti(Cx ,Ny ,Oz )(x+y+z=1かつ
0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1)で表される
チタン化合物ウイスカーに対して、Tiを除く周期律表
第4a,5a,6a族元素およびホウ素のうち少なくと
も1種を加熱により拡散させることにより製造される。
【0009】また、本発明の複合材料は、Ti(Cx
y ,Oz )(x+y+z=1かつ0<x<1、0<y
<1、0<z≦0.1)で表されるチタン化合物ウイス
カーに、Tiを除く周期律表第4a,5a,6a族元素
およびホウ素のうち少なくとも1種が固溶したチタン化
合物ウイスカーを、セラミックス,サーメット,超硬合
金から選ばれるマトリックス中に含有してなるものであ
る。
【0010】チタン化合物ウイスカーは、Ti(Cx
y ,Oz )(x+y+z=1かつ0<x<1、0<y
<1、0<z≧0.1)で表わすことができ、xおよび
yはこの範囲で任意の値を取ることができるが、耐摩耗
性を重視するならば、xは0.7以上であるほうが望ま
しい。zは0〜0.1であって0.1を越えると焼結体
の硬度と強度が低下して耐摩耗性に劣る材料となる。
【0011】また、チタン化合物ウイスカーは、炭化チ
タン(TiC),窒化チタン(TiN),炭窒化チタン
(TiCN)から選ばれる一種よりなる単体であっても
良いが、例えば、TiCウイスカーにはNやOが不可避
不純物として混入されるように、本発明のチタン化合物
ウイスカーには、微量のC,N,Oが不可避不純物とし
て混入されてくる。さらに、炭化チタン(TiC),窒
化チタン(TiN),炭窒化チタン(TiCN)のうち
少なくとも二種以上からなる固溶体であっても良い。固
溶体としては、例えば、TiCウイスカーとTiNウイ
スカーの組合せや、TiNウイスカーとTiCNウイス
カーの組合せ等がある。
【0012】チタン化合物ウイスカーの直径は10μm
以下が好ましい。10μmを越えるとウイスカー自体が
破壊の原因となるため抗折強度が低下する傾向にあるか
らである。直径は3μm以下が望ましく最適には2μm
以下のものが用いられる。粒子は単結晶もしくは多結晶
の針状粒子で、最適には単結晶が用いられるが、一つの
針状粒子が100個程度以下の多結晶からなっていても
よい。Tiを除く周期律表第4a,5a,6a族元素お
よびホウ素の固溶量は0.1モル%以上であれば効果が
認められ、2〜8モル%のものが良好に用いられる。固
溶量の上限は実用上20モル%である。Tiを除く周期
律表第4a,5a,6a族元素としては、Zr,Hf,
V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wがある。
【0013】本発明によれば、前記チタン化合物ウイス
カーをセラミックス,サーメット,超硬合金などのマト
リックスに分散含有させることにより、複合材料として
の特性を改善することができる。この時、配合される針
状のチタン化合物ウイスカーはそれ自体、単結晶あるい
は多結晶質からなるもので、その平均径が10μm 以
下、特に0.5〜3.0μm が好ましく、また長径/短
径で表させるアスペクト比の平均が2〜100、特に1
0〜50のものが用いられる。平均径が10μm以下で
は靱性改善の効果が大きく、高い抗折強度を維持できる
のに対し、平均径が10μm より大きいと焼成時の粒成
長をコントロールすることが難しくなり、強度,靱性と
も低下し易い。一方、アスペクト比の平均が2より小さ
いと靱性改善の効果が少なく、100より大きいと原料
の取扱が難しく、均一に分散できないため密度が低下す
る傾向にある。
【0014】また、上記複合材料では、長さ100μm
以下であり、かつアスペクト比が2以上のウイスカーが
チタン化合物ウイスカーの全量中20体積%以上である
ことが望ましい。また、チタン化合物ウイスカーは全体
としては3体積%以上含有することが望ましい。
【0015】マトリックスとしては、具体的には、Al
2 3 ,SiC,Si3 4 ,WC基超硬合金,TiC
基サーメット,TiCN基サーメット等がある。
【0016】本発明のチタン化合物ウイスカーはCVD
や固相反応法で作製できる。CVD法ではTiの原料ガ
スとともにTiを除く周期律表第4a,5a,6a族元
素およびホウ素のうち少なくとも一種の原料ガスを導入
すればよい。固相反応法では同様にウイスカーに固溶す
る元素を含有する原料を添加しておけばよい。あるいは
公知の方法で作製したTiC,TiN,TiCNのウイ
スカーにTiを除く周期律表第4a,5a,6a族元素
およびホウ素の溶液を付着させ乾燥するか、または、ウ
イスカーに固溶する元素を含む原料の微粉末を混合し不
活性雰囲気中で700℃以上の温度を加えて、熱処理す
ればよい。
【0017】また、本発明のセラミックスをマトリック
スとする複合材料を製造するには、まずチタン化合物ウ
イスカー、およびAl2 3 ,SiC,Si3 4 等の
マトリックス粉末に、必要に応じて焼結助剤を添加し、
粉砕後に所望の成形手段、金型プレス,押し出し成形,
射出成形,冷間静水圧成形等によって成形後、焼成す
る。
【0018】焼成は周知の方法で行われるが、例えば、
真空焼成,普通焼成,ホットプレス法,熱間静水圧焼成
法等が適用され、1500℃〜2000℃の温度で真
空、ArやHe等の不活性ガスもしくはカーボン等の存
在する還元性雰囲気およびそれらの加圧もしくは減圧雰
囲気中で0.5〜6時間行う。特に高密度の焼結体を得
るためには、普通焼成あるいはホットプレス法によって
対理論密度比96%以上の焼結体を作成し、この焼結体
をさらに熱間静水圧焼成すればよい。
【0019】本発明のサーメットまたは超硬合金をマト
リックスとする複合材料を製作するには、例えば、チタ
ン化合物ウイスカー、およびTi,W,Nb,Taの炭
化物,窒化物等の粉末、鉄族金属粉末を混合した後にプ
レス成形,押し出し成形,射出成形、冷間静水圧プレス
成形等の成形手段で成形後、焼成する。
【0020】焼成は、周知の方法で行われるが、例え
ば、真空焼成,普通焼成法,ホットプレス法および熱間
静水圧焼成法等が適用される。焼成は、例えば、135
0乃至1950℃の温度で真空、Ar、He等の不活性
ガスもしくはカーボン等の存在する還元性雰囲気および
それらの加圧もしくは減圧雰囲気で0.5乃至6.0時
間行えばよく、特に高密度の焼結体を得るためには、普
通焼成,ホットプレス法によって相対密度96%以上の
焼結体を作成し、さらに500気圧以上の高圧力下で熱
間静水圧焼成すればよい。
【0021】上記方法において、出発原料としてTiを
除く周期律表第4a,5a,6a族元素およびホウ素の
少なくとも一種が固溶したチタン化合物ウイスカーを用
いても良いが、原料の調合時にウイスカーに固溶させよ
うとする元素を含有する原料を添加し、焼成過程で固溶
させても良い。加えられる粉末はTiを除く周期律表第
4a,5a,6a族元素およびホウ素の炭化物、窒化物
もしくは炭窒化物の1種以上を選択できる。添加した元
素はそれぞれチタン化合物ウイスカーに固溶しウイスカ
ーを強化する。これらの固溶が焼結中に行われることに
より工程を簡略にし、かつ焼結体の特性を向上させる。
チタン化合物ウイスカー中に元素を効率よく拡散させて
固溶させるためには、焼成過程で1200〜1400℃
の温度で30分以上保持すれば良い。上記の場合、焼結
体はチタン化合物ウイスカーと、添加した元素のうちチ
タン化合物ウイスカーに固溶しきれなかった余剰の粒子
と、金属相からなるものが得られる。
【0022】なお、焼成においてはホットプレス法およ
び熱間静水圧焼成法など、外部から圧力を加える方法は
焼結コストが大きくなり製造上不利な場合が多いため、
真空焼成が好ましい。このような場合には、特に配合さ
れるチタン化合物ウイスカーの平均長さを25μm 以
下、特に5〜15μm が好ましく、また長径/短径で表
させるアスペクト比の平均が2〜30、特に3〜20の
ものが用いられる。平均長さが25μmを越えると焼結
体に気孔など欠陥が発生しやすくなる。一方、アスペク
ト比の平均が2より小さいと靱性改善の効果が少なく、
30より大きいと原料の取扱が難しく、焼結体の密度が
低下する傾向にあるからである。
【0023】
【作用】本発明のチタン化合物ウイスカーでは、チタン
化合物ウイスカーにTiを除く周期律表第4a,5a,
6a族元素およびホウ素のうち少なくとも1種を固溶さ
せることにより、高温での強度や硬度が低下することな
く、また、高温での変形が抑制される。
【0024】そして、本発明の複合材料では、上記のよ
うにチタン化合物ウイスカーの高温での変形が抑制され
るため、複合材料における強度や硬度,靱性等の特性を
向上することが可能となる。
【0025】
【実施例】
実施例1 公知の方法で作製したTiC,TiN,TiCNのウイ
スカーに、Tiを除く周期律表第4a,5a,6a族元
素およびホウ素の少なくとも一種を含む原料の微粉末を
混合し、不活性雰囲気中で700℃の温度を加えて熱処
理し、表1に示すような組成のチタン化合物ウイスカー
を得た。
【0026】
【表1】
【0027】そして、これらのチタン化合物ウイスカー
における固溶元素の固溶量を発光分光分析装置により測
定し、チタン化合物ウイスカーを1500℃まで加熱
し、高温で変形するか否かを調べた。
【0028】表1によれば、Tiを除く周期律表第4
a,5a,6a族元素およびホウ素の少なくとも一種が
固溶したチタン化合物ウイスカーでは、高温での変形は
小さいものであったが、上記の元素が固溶していないチ
タン化合物ウイスカーでは、高温での変形が大きかっ
た。
【0029】実施例2 上記実施例と同様にして作成したチタン化合物ウイスカ
ーおよびTiC,TiCN,WC,NbC,Ni,Co
等の各粉末を用いて最終焼結体の組成が表2の割合に成
るように秤量混合した後、1.5ton/cm2 の圧力
でTNGA160 408用のチップ形状にプレス成形し、1500℃の温
度で真空雰囲気において1時間焼成し、サーメットを作
成した。
【0030】
【表2】
【0031】得られた各焼結体に対してJISR160
1に従い3点曲げ抗折強度、ビッカース硬度並びにビッ
カース硬度用ダイヤモンド圧子を用いて荷重20Kgで
圧痕法により破壊靱性を測定した。結果を表3に示す。
尚、鉄族金属および不純物を除いた焼結体中の硬質相組
成比(ウイスカーは除く)と体積比でWC10,NbC
10,TiCN80であった。
【0032】
【表3】
【0033】表3によれば、Tiを除く周期律表第4
a,5a,6a族元素およびホウ素の少なくとも一種が
固溶したチタン化合物ウイスカーを使用した試料では、
上記した元素が固溶していない場合と比較して、強度,
硬度および靱性が向上していることがわかる。
【0034】実施例3 Ti(C0.98N0.01O0.01)で表され、かつZrが5モル%固
溶したチタン化合物ウイスカー15体積%、WC粉末6
1.75体積%、TaC粉末3.25体積%、Co粉末
20体積%を混合した後、1.5ton/cm2 の圧力
でTNGA160 408用のチップ形状にプレス成形し、1500℃の温
度で真空雰囲気において1時間焼成し、超硬合金を作成
した。
【0035】得られた各焼結体に対して上記実施例1と
同様に3点曲げ抗折強度、ビッカース硬度並びに破壊靱
性を測定した結果、強度が250kg/mm2 、硬度が
1500kg/mm2 、靱性が18 MPa・m1/2であり、
優れた特性を示した。尚、ウイスカーに所定元素を固溶
しない以外は上記と同様の組成の焼結体では、強度が2
00kg/mm2 、硬度が1500kg/mm2 、靱性
が15 MPa・m1/2であり、本発明の方がより優れている
ことが判る。
【0036】実施例4 Ti(C0.98N0.01O0.01)で表され、かつZrが5モル%固
溶したチタン化合物ウイスカー30体積%、Al2 3
粉末70体積%を混合した後、1.5ton/c m2 の圧力でTNGA160408用のチップ形状に成
形し、1800℃の温度で真空雰囲気において1時間焼
成し、アルミナ質セラミックスを作成した。
【0037】得られた各焼結体に対して実施例1と同様
に3点曲げ抗折強度、ビッカース硬度並びに破壊靱性を
測定した結果、強度が90kg/mm2 、硬度が190
0kg/mm2 、靱性が7 MPa・m1/2であり、優れた特
性を示した。尚、ウイスカーに所定元素を固溶しない以
外は上記と同様の組成の焼結体では、強度が80kg/
mm2 、硬度が1900kg/mm2 、靱性が4.5 M
Pa・m1/2であり、本発明の方がより優れていることが判
る。
【0038】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明のチタン化合
物ウイスカーでは、高温での変形を抑制することができ
るとともに、このようなチタン化合物ウイスカーを複合
材料に使用することにより、抗折強度,硬度,靱性を向
上することができる。これにより、例えば、工具として
用いた場合に、適用可能な切削条件を拡大するとともに
工具の長寿命化を図ることができる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】Ti(Cx ,Ny ,Oz )(x+y+z=
    1かつ0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1)で表
    されるチタン化合物ウイスカーに、Tiを除く周期律表
    第4a,5a,6a族元素およびホウ素のうち少なくと
    も1種が固溶していることを特徴とするチタン化合物ウ
    イスカー。
  2. 【請求項2】Ti(Cx ,Ny ,Oz )(x+y+z=
    1かつ0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1)で表
    されるチタン化合物ウイスカーに対して、Tiを除く周
    期律表第4a,5a,6a族元素およびホウ素のうち少
    なくとも1種を加熱により拡散させることを特徴とする
    チタン化合物ウイスカーの製造方法。
  3. 【請求項3】Ti(Cx ,Ny ,Oz )(x+y+z=
    1かつ0<x<1、0<y<1、0<z≦0.1)で表
    されるチタン化合物ウイスカーに、Tiを除く周期律表
    第4a,5a,6a族元素およびホウ素のうち少なくと
    も1種が固溶したチタン化合物ウイスカーを、セラミッ
    クス,サーメット,超硬合金から選ばれるマトリックス
    中に含有していることを特徴とする複合材料。
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