JP4822573B2 - 窒化珪素質焼結体の製造方法 - Google Patents

窒化珪素質焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、窒化珪素質焼結体からなる耐摩耗性部材およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化珪素質焼結体は、高強度で耐摩耗性や剛性に優れているため構造用機械部品の材料として期待されており、近年ではこれらの特性を利用してベアリングの転動体であるボールやローラーに使用されている。
【0003】
上記窒化珪素質焼結体の焼結に際しては、上記窒化珪素質焼結体の原材料である窒化珪素に自己焼結性がないため焼結助剤を添加して焼結を行っている。上記焼結助剤としては、一般にY23などの希土類酸化物や、Al23、MgO、CaOなどの酸化物が組み合わされて用いられている。そして、窒化珪素粉末にこれらの焼結助剤を混合して成形した後、焼結を行うことにより窒化珪素質焼結体を得ている。上記焼結する方法としては、常圧下で行う常圧焼結や窒素等による雰囲気加圧焼結などがあり、さらに、上記常圧焼結により得られる焼結体においては、焼結体内部の残留気孔を排除するために高温で高いガス圧力で処理して機械的強度を向上させるために、HIP(熱間静水圧加圧)処理を行っている。
【0004】
特に、軸受材料として用いる場合は、材料に内在する微少な欠陥(気孔等)が転がり疲労によって表面で剥離を起こす原因となるため、雰囲気加圧焼結やHIP処理が用いられている。このようにして得られた焼結体は、製品として精密加工された後、軸受部品として使用される。
【0005】
転動体は、表面ないしはその近傍の表層に高い引っ張り応力を受けるために、表面ないしはその近傍の表層に欠陥が存在しないことが重要であり、軸受部品材料として用いる焼結体には、特に、欠陥(気孔、介在物、組織の異常など)がないことが要求されている。
【0006】
さらに、近年はセラミックベアリングの主用途である工作機械の高速化、及び、航空機、宇宙産業への市場展開により、より高温環境化での高負荷用セラミック軸受けのニーズが高まっている。また、軽量であることから高速回転のHDD用としてセラミック軸受けのニーズが高まっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述のようにして得られる窒化珪素質焼結体を用いた軸受材料は、摩擦熱の発生による機械的特性の低下が発生するという問題点があった。特に、光学顕微鏡で観察したときに焼結体内に白い模様が発生し、製品に加工するまでに除去できずに製品の表面に残った場合、機械的特性の低下が顕著であった。この白い模様は粒界の欠落によるものであり、表面に残った模様は、製品表面の蛍光探傷検査において明確な欠陥指示模様ではないが微弱に発色する。
【0008】
特開平6−329472号公報でも、このような模様を有する窒化珪素質焼結体は、軸受材料として要求されている転がり寿命に対して、下記に示すような問題が記載されている。
【0009】
上記表面からの深さが1mmを越えると、該模様を構成している粒界相欠落部の大きさが0. 3μmを越える傾向があり、転がり疲労による剥離を起こす。また、窒化珪素質焼結体が有する上記模様を構成している上記粒界相欠落部の集合体の大きさは、0. 3μm以下であっても使用温度が高い軸受けについてはその粒界相欠落部の集合体の大きさが0.5mm以上になると、短時間で転がり疲労による剥離を生じるという問題があった。
【0010】
特開平6−329472号公報の中には、上記のような問題も示されているが、欠陥サイズを0.3μm以下のマイクロボイドの集合体であると規定したのみで根本対策には至っていない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は前記課題に鑑み、種々検討した結果、一群の窒化珪素結晶相を内部に分散した粒界相のまとまりとして定義される結晶粒界相の少なくとも一部が結晶化している窒化珪素質焼結体であって、前記粒界相の結晶最大径が100μm以下であり、添加成分としてアルミニウム化合物および酸化物換算で1〜30重量%の希土類元素化合物を含み、酸化物換算した酸化アルミニウム:希土類元素酸化物の重量比を1:0.5〜1:10とするとともに、酸化物換算した酸化珪素:希土類元素酸化物の重量比を1:0.3〜1:15とすることにより上記課題を解決できることを見出した。
【0012】
また、かかる焼結体を作製する方法として、窒化珪素を主成分とし、焼結助剤として希土類元素酸化物粉末および酸化アルミニウム粉末を添加した混合物を成形した後、非酸化物雰囲気中で1600℃〜2000℃の温度で焼成し緻密化し、1600℃〜800℃の温度領域を1時間以内で急速に冷却した後、900℃〜1200℃の温度で熱処理することが有効であることを見出した。摩擦熱による高温耐久性を向上させるために粒界を結晶化させて熱伝導率を向上させることが重要であり、さらに、その粒界相の結晶の大きさが粒界相欠落部の発生に影響し、ひいては高温耐久性に影響することを発見し、本発明に至ったのである。
【0013】
また、粒界相欠落部は粒界相の最大結晶径に起因することが判明した。したがって、粒界相の最大結晶径を小さくすることで粒界相欠落部の発生を小さくし、粒界相欠落部の集合である樹枝状白色模様が生じにくくなることを見いだし、本発明に至ったのである。
【0014】
ここで、結晶粒界相と示しているものは、従来指摘されている窒化珪素結晶相に囲まれるように存在する欠陥としての結晶粒界相ではなく、一群の窒化珪素結晶相を内部に分散した粒界相のまとまりを意味するものであり、セラミックスを研磨し偏光顕微鏡で観察することにより、観察できるものである。こうして観察される結晶粒界相は、結晶がある一点から放射状に並んでいるので、他の部分と識別することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明の窒化珪素質焼結体について説明する。本発明の窒化珪素は焼結助剤として、酸化物換算で1〜30重量%の希土類元素化合物や、他に酸化珪素、酸化アルミニウムを含有するものである。また、上記の焼結助剤により形成される粒界相は、少なくとも一部が結晶化しており、その粒界相の最大結晶径が100μm以下であることを特徴とする。
【0017】
ここで、まず、従来の窒化珪素質焼結体の結晶粒界相の模式図を図2を用いて説明する。従来の窒化珪素質焼結体は、表面ないしは破面を研磨し偏光顕微鏡でその組織を観察すると、偏光の角度を調整した場合に図2に示したように、光る集合部分が見える。これが、結晶粒界相1である。その大きさにより、10〜200倍程度の倍率で観察することができる。この粒界結晶相1が100μmより大きくなると、その周囲に、粒界相欠落2である樹脂状白色模様が発生しているのが判る。これに対し、本発明の窒化珪素質焼結体の結晶粒界相は、図1に示すように結晶粒界相1の大きさが100μm以下と小さく、その周囲に粒界相欠落部である樹脂状白色模様がえないことが特徴である。
【0018】
本発明者等は、この結晶粒界相1をよく観察することにより、これらが、結晶相がある起点から放射状に結晶化した結晶粒界相1であり、これらの組織の中に窒化珪素の結晶が内包されている組織であることが判った。また、これらの磁器が焼成後冷却され、前記結晶粒界相1が生成する際に大きく収縮するため、残留している液層成分との間に隙間が生成し、前記結晶化した結晶粒界相1の周囲に隙間を生成させたものが、粒界相欠落部2であることを見出した。
【0019】
しかしながら、本発明の窒化珪素質焼結体は、粒界相の少なくとも一部が結晶化していることが重要である。その理由は、窒化珪素質焼結体の用途として軸受け部品があるが、使用中の摩擦熱の発生により機械的特性の低下が発生するという問題点があったからである。そこで発生する摩擦熱を効率よく逃がしてやる必要がある。窒化珪素には自己焼結性がないために焼結助剤を添加して焼結を行っている。一般に、熱伝導率は金属や結晶性の良い物質が優れているが、窒化珪素粒子の間の粒界相が非晶質であると、非晶質の部分は熱伝導率が低いために摩擦熱が効率よく逃がされない。ところが粒界相が結晶化していると熱伝導率が高く、摩擦熱を効率よく逃がすことができ、窒化珪素質焼結体を軸受け部品として用いたときに機械的特性の低下が発生しないことを見出した。
【0020】
粒界相の欠陥に関しては、特開平2−141474号公報に100μm以上の粒界析出部が存在しないことが必要であることが示されているが、前記特許公報で示されている粒界析出部は、窒化珪素の粒子間に形成される欠陥であり、本発明で捕らえている粒界析出部は、ある一点から放射状に結晶粒界相が並んだ、一群の窒化珪素の粒子を包含する粒界相のまとまりを意味する点で、基本的に異なるものである。前記特許公報で示されている欠陥には、内部に窒化珪素の結晶を内部に分散した粒界相の最大結晶径が100μm以下であることを示唆する記述はない。また、粒界相の結晶化について、特願昭63−44001号公報に粒界相の50%以下が結晶化している窒化珪素材料とすることが必要であるとの記載があるが、ここでも、本発明のように、内部に窒化珪素の結晶を内部に分散した最大結晶径についてはされていない。
【0021】
また、本発明は、粒界相の最大結晶径を小さくすることで粒界相欠落部2の発生を小さくし、粒界相欠落部2の集合である樹枝状白色模様が生じにくくすることができる。すなわち、粒界相欠落部の発生は次のように説明される。
【0022】
焼成中に液相となっている焼結助剤を主とする成分が冷却に伴い熱収縮するが、その一部または全てが結晶化すると、結晶化に伴う急激な体積収縮(体積収縮で数%)が生じ、隣接する粒界の結晶あるいは過冷却状態の非晶質部との間に隙間が生じ粒界相の欠落部が発生するのである。このとき粒界相の最大結晶径が大きく、その数が少ないほど結晶化に伴う体積収縮により発生する隙間が大きくなり、より大きな粒界相欠落部が発生する。そこで粒界相欠落部2の発生を抑えるためには、粒径の小さい粒界の結晶が数多くあればよい。
【0023】
最大粒径が100μm以下の小さい粒界の結晶を数多く発生させるためには、焼成後に急激に冷却することにより粒界を非晶質化させてやり、その後、結晶の核生成温度で熱処理を行い多くの核を生成させたのち結晶化させることが必要である。ただし、焼成後に急冷を行わないと、冷却過程でサイズの大きい結晶が生成してしまい、そのとき起こる体積収縮により粒界相欠落部が発生する。そのために、焼成後に急冷して粒界相を一旦非晶質化させてやる必要があり、そうすることにより焼成後に行う900℃〜1200℃の温度での熱処理により100μm以下の小さな結晶核が数多く析出し、粒界の結晶相は100μm以上の大きさには成長しない。
【0024】
このときの粒界相の最大結晶径について説明する。
【0025】
通常、粒界が結晶化した場合、その最大結晶径は、サブμmから数mmの大きさであると考えられていた。通常走査型電子顕微鏡などによって観察される粒界相は、二つの窒化珪素粒子に挟まれた2面間領域や、三つの窒化珪素粒子に挟まれた3重点領域などを指し、その大きさはせいぜい大きくても十数μm(偏析がある場合数十μm)の様に観察される。しかし、実際には窒化珪素粒子の2面間領域や3重点領域は立体的に連結しているため、結晶化した場合、1つの結晶は立体的に連結した広い領域(例えば数mm)に及ぶ事がある。これは、窒化珪素焼結体を薄片化し、偏光顕微鏡などで観察すると、数mmの領域に渡って粒界相が同一方位を有して結晶化している場合があることからも明らかである。
【0026】
数mmの最大結晶径となる場合は、数mmの結晶相(例えばRESi結晶など)の中に窒化珪素粒子が密に分散した形態となっているのである。本発明で定義する粒界相の最大結晶径は、10〜100μmの厚さ、または結晶粒界相が確認される程度の厚さまで薄片加工した窒化珪素質焼結体を偏光顕微鏡で観察したときに、ある一点から放射状に成長した白く光る結晶群が確認できた場合、この結晶群の大きさを粒界相の最大結晶径と判断した。顕微鏡で観察する場合の倍率は、結晶粒界相の大きさに応じて20〜200倍程度で観察することが可能である。本発明では、ひとつの試料につき5mm角の部分を5箇所つ観察した。この大きさは、顕微鏡写真から測定した。
【0027】
このようにして観察すると、粒界相の最大結晶径が100μm以下、望ましくは10μm以下であれば、結晶化による体積収縮量が小さく、粒界結晶間または、一部結晶化せずに残存する非晶質間との隙間に生じる粒界欠落部が小さくなる。粒界相の最大結晶径を上記のように管理すると、粒界相欠落部の集合である樹枝状白色模様の大きさについては300μm以下、望ましくは100μm以下、さらに望ましくは10μm以下となり、転がり疲労による剥離が生じないことが判明した。
【0028】
さらには、セラミック部品、特に軸受け材等の耐摩耗性部品は表面を研削したり、研削しない場合でも表面近傍に応力がかかるため、表面より1mmの範囲内の粒界相欠落部が1μm以下、かつ1μm以下の粒界相欠落部の集合である樹枝状白色模様の大きさが300μm以下であることが特に重要である。
【0029】
また、焼結助剤としては希土類元素酸化物を用いた場合の方が、酸化マグネシウムや酸化カルシウムなどを用いる場合より粒界相欠落部の生成が少ない。理由は明確でないが、粒界相の性質が異なるものと思われる。
【0030】
特に希土類元素酸化物は焼結助剤として重要であり、その量は1〜30重量%が望ましい。この範囲を選んだ理由は、1重量%未満では緻密化させるために焼成温度を高温にする必要があるため、機械的特性が低下する傾向にあるからであり、また、30重量%を越えると窒化珪素の本来の特性、即ち機械的特性が低下する傾向にあるからである。
【0031】
また、窒化珪素質磁器を分析する事によって求めた酸素量から、添加した希土類元素酸化物の含有する酸素量を差し引き、残りの酸素がSiO2となっていると仮定して計算したときに、SiO2:希土類元素酸化物の重量比が1:0.3〜1:15となるようにすると、耐摩耗性が良好な窒化珪素質セラミック焼結体を得ることができる。
【0032】
これは、重量比が1:0.3未満であれば、粒界相がSiO2に富んだ相を分離して白い模様(粒界の脱落した組織)が発生しやすい傾向にあり、また、1:15以上であれば、SiO2−希土類元素酸化物の反応による低融点組成から大幅に外れるため液相生成が十分ではなく、焼結不良が発生して機械的特性の低い焼結体になる傾向にあるためである。
【0033】
なお、SiO2は窒化珪素原料中に最初から含まれていたものに加え、場合によっては焼結助剤として加えてもかまわないし、製造工程中で原料の酸化等による増加や焼成分解等による減少が生じてもかまわない。
【0034】
なお、本発明に用いられる希土類元素としては、Y、Er、Yb、Luが望ましい。これらの元素中で、白い模様(粒界の脱落した組織)が発生し難くなる点で特にYb、Er等の重希土類元素を用いることが最も望ましい。
【0035】
さらに、副成分として酸化アルミニウムを添加する方が、焼結性の面および粒界相を一旦非晶質化させる点で望ましい。粒界相の最大結晶径を100μm以下にするためには、焼成後に急冷して粒界相を一旦非晶質化させてやる必要があり、そうすることにより焼成後に行う900℃〜1200℃の温度での熱処理により100μm以下の小さな結晶核が数多く析出し、粒界相の結晶相は100μm以上の大きさに成長しない。好ましい酸化アルミニウム量は、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物の重量比が1:0.5〜1:10、さらに好ましくは、1:1〜1:5の範囲に選ばれる。
【0036】
その理由は、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物比が1:0.5より酸化アルミニウムが過剰になると、破壊靭性値が低下する傾向にある。また、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物比が1:10より酸化アルミニウムが少なくなると、焼結性が悪くなり、圧砕荷重が低くなる傾向にある。また、粒界相が非晶質化しにくくなり、粒界相欠落部が発生しやすくなる。
【0037】
また、上記の焼結体中に、平均粒径が3μm以下であるタングステン珪化物を含有させることが好ましい。もともと窒化珪素原料中には微量のFeが不純物として含まれており、焼成後Feが偏在して破壊源となることがあり、強度低下が生じ、また耐摩耗性部材として用いたときに、圧砕荷重が低下し、転がり寿命が短くなる。タングステン珪化物はFeを固溶する性質を持つため、焼成後のFeの偏在を少なくし、機械的特性を向上させる。
【0038】
ここで、これらのW珪化物の粒径を3μm以下に限定したのは、タングステン珪化物が3μmより大きいと粒界相中での分散が不十分となり、それ自身が破壊源となり焼結体の強度を低下させてしまい、目的の強度が得られないためである。
【0039】
また、窒化珪素質焼結体中にW5Si3やWSi2を生成させるには、平均粒径が3μm以下のWの珪化物、炭化物、酸化物、窒化物の1種類以上を0. 1〜10.0重量%を添加する。これらのW化合物は焼成中に窒化珪素やSiO2と反応し、3μm以下のW5Si3やWSi2を生成する。
【0040】
なお、本発明の焼結体においては、W成分以外に、Ti、Ta、Mo、Nb、V、Mnなどの周期率第4a、5a、6a族金属や、それらの珪化物、炭化物、酸化物、窒化物、また、SiCなどの分散粒子やウイスカーとして本発明の焼結体に分散させても特性を劣化させるような影響が少ないことから、これらを周知技術に基づき、適量添加して複合材料として特性の改善を行うことも当然可能である。
【0041】
さらに、Wの珪化物のうち、W5Si3粒子はWSi2粒子よりも耐熱性が高いと考えられるためW5Si3粒子を含有する場合の方が、転がり寿命が優れる。W5Si3とWSi2との比率(W5Si3/WSi2)が0.1以上で構成されるセラミック焼結体とすることが好適である。さらに好ましくは、上記比率が0.3〜1.5とするのが望ましい。
【0042】
次に、本発明の窒化珪素質焼結体の製造方法を説明する。
【0043】
原料粉末を所定量秤量し、公知の混合方法、例えば回転ミルや振動ミル、バレルミルでIPAやメタノール、水等を溶媒として混合する。場合によっては、溶媒を使わない乾式混合でもかまわない。
【0044】
できあがった混合粉末を所望の成形手段、例えば、金型プレス、冷間静水圧プレス、押し出し成形、射出成形、鋳込み成形等により任意の形状にする。成型手段によっては、スプレードライ等による造粒や、水、有機バインダーと共にある一定粘度の杯土を作製するなどの準備も必要であるが、通常のセラッミクスの成形手順に従えばよい。
【0045】
成形後、乾燥、脱脂が必要な場合、窒素中や真空中、大気中で、50℃〜1400℃の温度で加熱処理する。
【0046】
焼成は、窒素を含有した非酸化物雰囲気中において1600℃〜2000℃で行う。1800℃以上で焼成を行う場合は、窒化珪素の分解が生じるので、1気圧以上の窒素分圧を必要とする。さらにこれらの焼成後、熱間静水圧焼成(HIP)等で焼成することにより、より緻密な焼結体を得る。焼成温度は、高すぎると主相である窒化珪素結晶が粒成長し強度が低下するため、1650〜1950℃で行うことが望ましい。
【0047】
また、成形体をガラス浴HIP法で焼成すると低温短時間で緻密な焼結体が作製できるので、特に高強度を必要とするセラミック部品や、耐摩耗性部品には好適である。
【0048】
また、粒界相の結晶最大径を100μm以下にするためには、粒界相を一旦非晶質化させる必要があるが、粒界相を一旦非晶質化させるためには冷却速度が速いほうが良く、特に1600〜800℃の温度領域を3時間、望ましくは1時間、さらに望ましくは30分以内で冷却させる方がよい。
【0049】
さらに、非晶質化した粒界相を結晶径の小さい結晶として析出させるために、900℃〜1200℃の温度で熱処理し結晶核を生成させる。この熱処理は焼成後完全に冷却した後、炉から取り出して別の炉で個々に行う単独熱処理としてもかまわないし、冷却に続く焼成パターンとして同一の炉で行う連続熱処理としても構わない。この焼成により窒化珪素は、原料がα、βのいずれの場合においてもβ−Si34となる。
【0050】
この焼成により、最終的にはβ−窒化珪素主結晶相と粒界相を含む焼結体が得られる。特に希土類元素酸化物、酸化アルミニウムを焼結助剤として用いた場合は、希土類元素、アルミニウム、酸素および窒素を含む粒界相からなり、その粒界中に平均粒径が3μm以下であるW5Si3あるいはW5Si3+WSi2を含有した焼結体を得ることができる。ここで結晶化する部分は、希土類元素酸化物、酸化アルミニウム、酸化珪素等のセラミックス成分を主成分とする粒界部分である。
【0051】
さらにWSi2またはW5Si3は粒界に単分散し、外部より応力がかかった際に、応力を緩和する効果があり、また、同時に焼結助剤としても効果があり、その結果、破壊靭性が5.6MPa√m以上、かつ、Hv10硬度が14.5以上の高靭性、かつ、高硬度の機械的特性を有することができる。つまり、本発明によると、白い樹枝状に観察される模様がなくなり、高信頼性であり、変質層が少ないため研削代が少なく、かつ高破壊靭性、高硬度である窒化珪素質焼結体を得ることが可能となる。
【0052】
以上の本発明の窒化珪素質焼結体は種々のセラミックス部品、特に、転動体、ピストンピン、ローラーピン、ロッカーアームチップ、ローラーブッシュ、カムローラー、バルブ等の耐摩耗性部品に使用する事が可能である。
【0053】
【実施例】
実施例 1
以下、実施例を説明する。
【0054】
まず窒化珪素粉末(BET比表面積9m2/g)粉末に表1に示す焼結助剤を添加し、IPAとともにバレルミルで40Hr混合した。混合後#500メッシュを通してスラリーから異物を除去後、乾燥した。この混合粉末に水、有機バインダーを加え、20Hr混合後、スプレードライにより原料顆粒を得た。この原料顆粒を用いて、プレス成形により球状成形体及び強度測定用の試験片を作製した。
【0055】
次にこの成形体を10Torr以下の減圧中800〜1400℃の温度域で加熱後、1750〜1850℃で窒素雰囲気の下、相対比重99%以上まで緻密化させた。さらに、2000気圧の加圧下にて1600℃でHIP処理を施し、1600〜800℃までの冷却時間を1または6時間とし、900℃〜1200℃の温度域で熱処理して直径3/8インチの本発明球状セラミックス焼結体および強度測定用試験片を得た。
【0056】
球状セラミックスの圧砕荷重は、同じ寸法の2個の球を重ねて圧縮荷重を加えるもので、JIS−B−1501に準じ、インストロン万能試験機によりクロスヘッドスピード5mm/分で測定した。
【0057】
強度測定は、3×4×35mmの形状に加工した試験片をJIS R1601に準じた四点曲げ試験にて行った。
【0058】
粒界相欠落部のサイズは光学顕微鏡100倍で観察した後、SEM像によって測定した。粒界相欠落部の集合体である樹枝状白色模様のサイズは、光学顕微鏡100倍の写真より測定した。
【0059】
粒界相の最大結晶径の判断は、結晶の有無を焼結体を粉砕した粉末のX線回折により判断し、さらに同一ロットの球状セラミックス体を20μmに薄片加工し、偏光顕微鏡によって粒界相の最大結晶径の確認を行った。試料は、各条件5mm角の部分を5箇所つ調査した。偏光顕微鏡に試料をセットし、試料を回転していくと、方位があった時点で白く見える部分がある。このとき白く見える部分が一つの粒界相の結晶であり、これらの評価結果を表1にまとめた。
【0060】
【表1】
Figure 0004822573
【0061】
表1から明らかなように、粒界相の最大結晶径が100μmより大きい試料2、3は強度が劣る。これに対して本発明の請求範囲内である粒界相の結晶サイズが100μm以下である試料1、4〜6は高強度であり、かつ圧砕荷重に優れていた。
【0062】
実施例 2
実施例1と同様の手法を用いて、焼結体を作製した。結晶化条件を表2に示した冷却時間、熱処理温度とし、得られた各々の焼結体を実施例1と同様の手法により評価した。
【0063】
破壊靭性値はJIS R1607に準じた。これらの評価結果を表2にまとめた。
【0064】
【表2】
Figure 0004822573
【0065】
表2から明らかなように、希土類元素酸化物であるYb23を40重量%含有しSiO2:希土類元素酸化物比が1:20である試料7は、焼結不足となった。また、前記Yb23を0.5重量%含有しSiO2:希土類元素酸化物比が1:0.2である試料3は、粒界相の最大結晶径が140μmとなり、強度および圧砕荷重、K1cが低い値となった。
【0066】
これに対し、希土類元素酸化物が1〜30重量%で、SiO2:希土類元素酸化物の重量比が1:0.3〜1:15である試料1、2、4〜6、8は粒界相の結晶サイズが100μm以下であって、機械的特性が優れていた。
【0067】
また、同じ重量比の希土類元素酸化物を添加した試料1、2、5において、Er、Ybを使用した試料2、5は強度が特に優れていた。
【0068】
実施例 3
実施例1と同様の手法を用いて、焼結体を作製した。表3に示した冷却時間、熱処理温度で粒界相を結晶化させ、得られた焼結体を実施例1と同様の手法により評価した。
【0069】
破壊靭性値はJIS R1607に準じた。これらの評価結果を表3にまとめた。
【0070】
【表3】
Figure 0004822573
【0071】
表3から明らかなように、試料1〜11において、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物比が1:10より酸化アルミニウムが少ない試料1、3、5は焼結不足であり、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物比が1:0.5より酸化アルミニウムが過剰な試料11は破壊靱性値および圧砕荷重が劣っていたが、酸化アルミニウム:希土類元素酸化物が1:0.5〜1:10の試料2、4、6〜10は、焼結性に優れており、かつ、粒界相の最大結晶径が100μm以下であって、かつ粒界相欠落部が1μm以下で、粒界相欠落部の集合である樹枝状白色模様が300μm以下であり、優れた機械的特性を有していた。
【0072】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、粒界相を有する窒化珪素質焼結体において、表面より1mmの範囲内にある結晶粒界相の最大結晶径が100μm以下であり、かつ窒化珪素粒子間から欠落した粒界相欠落部の大きさが1μm以下であり、かつ1μm以下の粒界相欠落部の集合である樹枝状白色模様の大きさが300μm以下であることを特徴とするものが得られ、高い機械的特性を有する窒化珪素質焼結体と、研削代の少ない長寿命の耐摩耗性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の窒化珪素質焼結体における粒界結晶相を示す模式図である。
【図2】 従来の窒化珪素質焼結体における粒界結晶相を示す模式図である。
【符号の説明】
1:結晶粒界
2:粒界相欠落部

Claims (1)

  1. 一群の窒化珪素結晶相を内部に分散した粒界相のまとまりとして定義される結晶粒界相の少なくとも一部が結晶化している窒化珪素質焼結体であって、前記粒界相の最大結晶径が100μm以下であり、添加成分としてアルミニウム化合物および酸化物換算で1〜30重量%の希土類元素化合物を含み、酸化物換算した酸化アルミニウム:希土類元素酸化物の重量比が1:0.5〜1:10であるとともに、酸化物換算した酸化珪素:希土類元素酸化物の重量比が1:0.3〜1:15である窒化珪素質焼結体の製造方法であって、窒化珪素を主成分とした粉末を成形した後、非酸化物雰囲気中で1600℃〜2000℃の温度で焼成し、1600℃〜800℃の温度領域を1時間以内で冷却し、その後900℃〜1200℃の温度で熱処理することを特徴とする窒化珪素質焼結体の製造方法。
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