JP2004058937A - 車両停止保持装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドライバが走行途中で車両を停止保持させたいと意図するときに車両の移動があった場合に、制動力を制御して車両の移動を自動的に抑制する。
【解決手段】車速=0の状態が所定時間継続したら、ドライバに車両の停止保持の意志があるとみなし、停止保持制御モードに移行する。停止保持制御モードでは、何らかの理由で車両が移動し、その移動量が距離しきい値以上になったら、ブレーキ制御ECU1から油圧ブレーキ装置2または電動PKB3に対して目標の制動力を発生させるよう作動信号を出力する。車両−障害物間の距離xが小さいほど、距離しきい値を小さく、また、油圧ブレーキ装置2に切り替えて作動させることにより、制動力発生時期を早め、高応答で制動力を発生させる。
【選択図】 図1
【解決手段】車速=0の状態が所定時間継続したら、ドライバに車両の停止保持の意志があるとみなし、停止保持制御モードに移行する。停止保持制御モードでは、何らかの理由で車両が移動し、その移動量が距離しきい値以上になったら、ブレーキ制御ECU1から油圧ブレーキ装置2または電動PKB3に対して目標の制動力を発生させるよう作動信号を出力する。車両−障害物間の距離xが小さいほど、距離しきい値を小さく、また、油圧ブレーキ装置2に切り替えて作動させることにより、制動力発生時期を早め、高応答で制動力を発生させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバが走行途中で車両を停止保持させたいと意図するときに車両の移動があった場合に、制動力を制御して車両の移動を自動的に抑制する車両停止保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、パーキングブレーキのブレーキ圧保持中に車両が移動したとき、直ちに、そのパーキングブレーキの補助制動装置によってブレーキ圧を増大させ、車両の停止状態を維持するものがあった(特開2000−177551号公報)。
【0003】
しかし、この従来技術は、ドライバが車外での車両操作のため車両から離れた状態で、パーキングブレーキにより車両を停止維持することを目的とするもので、走行中、例えば坂路や交差点での一時的な停止保持状態にある車両のずり下がりや意図しない車両移動を、走行停止状況に応じて抑制させることは困難である。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、ドライバの意図しない車両移動を、走行停止状況に拘わらず抑制させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ドライバに車両の停止保持意志がある状態で、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、前記移動状態量に応じて、各輪に与える制動力の大きさを制御する、または/および、複数の制動力付与手段を切り替えて作動させる停止保持制御を行う手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、ドライバの前記車両の停止保持意志状態を判定する停止保持意志判定手段と、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、前記停止保持意志状態と判定されているとき、検出された前記移動状態量に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記発明によれば、ドライバに車両の停止保持意志がある状態で、車両が移動したとき、その移動状態量に応じて制動力の大きさを制御したり、複数の異なる制動力付与手段を切り替えて作動させるので、ドライバの意図しない車両の移動を、状況に応じて阻止することができる。
【0008】
なお、前記停止保持意志判定手段は、請求項3に記載のように、前記車両の停止状態が所定時間経過していること、前記停止保持制御の開始スイッチが操作されること、変速機のシフト位置が、該変速機を非駆動状態とする位置に設定されていること、エンジンの非動作中にブレーキペダルが踏まれていること、前記車両の停車中に後続車により追突されたこと、または、前記ドライバによる非走行意志を表す操作が検出されたこと、の少なくとも1つを検出することにより判定することができる。
【0009】
また、前記ドライバによる非走行意志を表す操作は、請求項4に記載のように、シート背もたれを倒す操作、ドアを開く操作、前記シートからの離脱操作、ハンドルの把持開放操作、またはアクセルペダルまたはブレーキペダルの踏み込み開放操作の少なくとも1つとすることができる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、前記車両の停止保持状態を判定する停止保持判定手段と、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、前記停止保持状態と判定されているとき、検出された前記移動状態量に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、車両が停止保持状態にあると判定される場合に、車両が移動したとき、その移動状態量に応じて制動力を制御する車両停止モードで動作することにより、停止保持状態にある車両の意図しない移動を、状況に応じて阻止することができる。
【0012】
なお、前記移動状態量検出手段は、請求項6に記載のように、前記車両の移動量、移動継続時間または移動速度の少なくともいずれか1つを検出することができる。
【0013】
前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止モードにおいて、請求項7に記載のように、前記移動状態量の大きさに応じて、前記制動力を増加させることができ、さらに、請求項8に記載のように、前記移動状態量の大きさに応じて、前記制動力の増加勾配を変更することができる。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記制動力付与手段は、第1作動信号に基づき車両の各車輪に第1の制動力を発生させると共に、該第1作動信号の発生が解除されたとき前記第1の制動力が0に変化する第1ブレーキ手段と、第2作動信号に基づき前記車両の少なくとも一部の車輪に第2の制動力を発生させるとともに、該第2作動信号の発生が解除されたとき前記第2の制動力を前記第2作動信号の発生の解除前の前記第2作動信号に基づく作動状態における値に保つ第2ブレーキ手段と、を備え、前記ブレーキ制御手段は、前記移動状態量の大きさに応じて、前記第1または第2ブレーキ手段の作動を切り替えるようにすることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、車両停止モードでの制動力制御を行うとき、車両移動を阻止するために比較的高応答の第1ブレーキ手段を作動させ、あるいは、停止状態を維持するためにエネルギー消費なく長時間制動力を維持できる第2ブレーキ手段を動作させるというように、両者を状況に応じて切り替えて作動させることができる。
【0016】
前記ブレーキ制御手段は、請求項10に記載のように、前記検出された移動状態量が予め設定した制動開始しきい値を超えたときに前記車両停止モードでの動作を開始することができる。
【0017】
さらに、請求項11に記載のように、前記車両と周辺の障害物との距離を検出する周辺監視手段を更に備え、前記ブレーキ制御装置は、前記検出された障害物との距離に応じて、前記制動開始しきい値を補正することができる。
【0018】
請求項12に記載の発明は、前記車両と周辺の障害物との距離を検出する周辺監視手段を更に備え、前記ブレーキ制御装置は、前記車両停止モードにおいて、前記検出された障害物との距離に応じて、前記制動力の増加勾配を変更することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、車両停止モードで、車両の移動状態量に応じて制動力を制御する場合、車両周辺の障害物との距離に応じて、制動力の増加勾配を変更するので、車両の移動を状況に応じて抑制することができる。
【0020】
請求項13に記載の発明では、前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止保持装置のいずれかの部位に異常状態が検出された場合に、該異常状態に応じて前記車両停止モードでの動作を継続するか、または中止するかを選択することができる。
【0021】
また、請求項14に記載の発明では、前記制動力付与手段は、第1作動信号に基づき車両の各車輪に第1の制動力を発生させると共に、該第1作動信号の発生が解除されたとき前記第1の制動力が0に変化する第1ブレーキ手段と、第2作動信号に基づき前記車両の少なくとも一部の車輪に第2の制動力を発生させるとともに、該第2作動信号の発生が解除されたとき前記第2の制動力を前記第2作動信号の発生の解除前の前記第2作動信号に基づく作動状態における値に保つ第2ブレーキ手段と、を備え、前記ブレーキ制御手段は、前記第1または第2ブレーキ手段のいずれか一方を作動させて前記車両停止モードでの動作を実行中に、該作動中のブレーキ手段に異常が発生したときには、他方のブレーキ手段に切り替えて前記車両停止モードでの動作を継続することができる。
【0022】
なお、前記移動状態量は、請求項15に記載のように、前記車両停止モードにおける前記車両の移動量、移動速度、または移動継続時間のいずれか1つであることを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、ドライバが正しい手続きで前記車両に乗り込んだか否かを判定し、不正手続きによる乗車と判定されたとき、緊急情報を出力する盗難防止装置と、前記緊急情報に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、盗難防止装置により不正手続きでの乗車が検出されると、この検出結果に応じて制動力を制御して車両の移動を抑制することができ、車両の盗難防止効果を高めることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の車両停止保持装置について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本第1実施形態の車両停止保持装置の全体構成図である。なお、車両VLの右前輪、左前輪、右後輪、左後輪をそれぞれ、FR、FL、RR、RLで表す。また、車両VLは、図示しないエンジンおよび変速機により前輪FR、FLが駆動される前輪駆動車である。
【0027】
本第1実施形態は、車両VLに搭載されている、ブレーキ制御ECU1と、第1ブレーキ手段としての油圧ブレーキ装置2と、油圧ブレーキ装置2と第1配管系統11および第2配管系統22でそれぞれダイアゴナル接続されている各車輪4FR、4RL、4FL、4RRと、第2ブレーキ手段としての電動パーキングブレーキ(以下、電動PKBという)3と、電動PKB3と後輪4RL、4RRのブレーキキャリパ(図示せず)とを接続するブレーキワイヤ31L、31Rと、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLと、各種電子機器の入出力信号を伝送する車内LANバス6と、各種センサからなるセンサ群7と、盗難防止ECU8とを備えている。
【0028】
ブレーキ制御ECU1は、コンピュータにより構成され、車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLからの各輪の車輪回転信号と、車内LANバス6を介して入力されるセンサ群7からの各種センサ信号とに基づき、後述する制御フローの処理手順により、油圧ブレーキ装置2または電動PKB3へのそれぞれのブレーキ作動信号(第1作動信号または第2作動信号)を決定し出力して、各車輪に制動力を発生させる。したがって、ブレーキ制御ECU1は本発明のブレーキ制御手段に相当する。
【0029】
なお、以下の説明で、「制動圧」または「制動力」は、いずれも同じ意味を示し、例えば、目標の制動力(または制動圧)として、減速度1G=10MPa(G:重力加速度、Pa:パスカル(圧力単位))により変換される制動の大きさを表すものとして用いる。
【0030】
図2は、第1ブレーキ手段としての油圧ブレーキ装置2の構成を示す図である。マスターシリンダ(以下、M/Cという)10は、ドライバにより図示しないブレーキペダルが踏み込まれるとその踏力に応じたM/C圧を発生し、それぞれ第1配管系統11および第2配管系統21を介して各車輪に備えられたW/C41FR、41RL及び41FL、41RRに伝達され、第1の制動力を発生するようになっている。
【0031】
以下では、第1配管系統11、特に、右前輪4FRに関わる配管系統を中心に説明するが、他の車輪および第2配管系統についても同様である。
【0032】
第1配管系統11には、右前輪4FRおよび左後輪4RLのそれぞれに対して、アンチスキッド制御などにおいて各W/C41FR、41RLの増圧および保持を調整する増圧制御弁14a、14bが設けられている。
【0033】
また、増圧制御弁14a、14bにそれぞれ並列に逆止弁141a、141bが設けられ、増圧制御弁14a、14bの遮断時にW/C圧が過剰となった場合に液流をM/C10側へ逃がすようになっている。
【0034】
この増圧制御弁14a、14bとW/C41FR、41RLとの間から伸びる減圧管路12にはABS制御におけるW/C41FR、41RLの減圧、保持を調整する減圧制御弁15a、15bが設けられている。
【0035】
この減圧管路12はリザーバ16と接続されている。このリザーバ16に貯溜されるブレーキ液は、モータ20により駆動されるポンプ17によって汲み上げられ第1配管系統11に吐出される。この吐出先は、増圧制御弁14a、14bと後述するマスタカット弁18との間となっている。
【0036】
モータ20は第2配管系統21におけるポンプ27も駆動している。なお、ポンプ17の吐出口には逆止弁171が設けられている。
【0037】
M/C10と増圧制御弁14a、14bとの間には、マスタカット弁(以下、SM弁という)18が配置されている。
【0038】
SM弁18は、非通電時は連通状態、通電時には図示方向の逆止弁による遮断状態となる2位置弁である。この遮断状態では、W/C41FR、41RL側の圧が逆止弁のばねによるクラッキング圧分M/C10側の圧よりも高くなったときにリリースされ、圧を逃がす構造となっている。
【0039】
このSM弁18には並列に逆止弁181が設けられており、M/C10側からW/C41FR、41RL側への流動のみが許容される。
【0040】
M/C10とSM弁18との間と、リザーバ16とは吸引管路13で接続されている。
【0041】
第1配管系統11のM/C10とSM弁18との間には油圧センサ30が設けられ、M/C10の発生圧を検出する。この圧力はM/C10の図示しないセカンダリ室の発生圧力であるが、第2配管系統が接続されるプライマリ室にも同圧が発生しているので、この油圧センサ30は実質的にM/C圧を検出する。
【0042】
また、増圧制御弁14a、14bとW/C41FR、41RLとの間にも油圧センサ19a、19bが設けられ、それぞれW/C圧を検出する。これらの油圧センサの出力信号は、ブレーキ制御ECU1に入力される。
【0043】
上記増圧制御弁14a、14b、減圧制御弁15a、15bは2位置弁であり、ブレーキペダルの非操作時および通常ブレーキ時などの非通電(OFF)時には図示の弁体位置、すなわち、増圧制御弁は連通状態、減圧制御弁は遮断(カット)状態にある。
【0044】
また、SM弁18も通常の非通電時には図示の弁体位置、すなわち連通状態にある。
【0045】
これら各制御弁は、ブレーキ制御ECU1からの作動信号により動作する。また、ポンプ17、27を駆動するモータ20もブレーキ制御ECU1からのブレーキ作動信号により動作する。
【0046】
なお、これらの油圧ブレーキ装置2に対する各作動信号は、総じて第1作動信号に相当する。また、油圧ブレーキ装置2を制御停止(または、制御禁止)にするとは、第1作動信号を解除状態、すなわち0(非作動状態)にする、具体的には、増圧制御弁、減圧制御弁およびSM弁を全て非通電とし、かつ、モータ20の駆動電流を0とすることである。
【0047】
したがって、油圧ブレーキ装置2は、第1作動信号が解除されると、各輪のW/C圧は0に減圧され、第1の制動力が0になる。
【0048】
上記油圧ブレーキ装置2の自動ブレーキ動作、すなわちブレーキペダル操作に拘わらず、ブレーキ制御ECU1からの第1作動信号としての増圧、保持、減圧の各指令値に基づくブレーキ動作について説明する。なお、通常動作であるドライバのブレーキペダル操作に基づく動作や、アンチスキッド制御中における動作については説明を省略する。
【0049】
自動ブレーキ制御の増圧過程では、SM弁18をON(カット状態)に、かつ、減圧制御弁15aをOFF(カット状態)にするとともに、ポンプ17を駆動してリザーバ16よりブレーキ液を吸引して吐出圧を発生させた状態で、油圧センサ19aの検出値との比較を行いながら、増圧制御弁14aをOFF/ONのデューティー比制御により所定の変化勾配で、あるいは設定された目標の圧力までW/C圧を増圧する。このとき、必要に応じてM/C10から吸引管路13、リザーバ16を介してブレーキ液がポンプ17の吸引口に補充される。
【0050】
自動ブレーキ制御の減圧過程では、SM弁18をON(カット状態)に、かつ、増圧制御弁14aをON(カット状態)にするとともに、ポンプ17を駆動してリザーバ16よりブレーキ液を吸引して吐出圧を発生させた状態で、油圧センサ19aの検出値との比較を行いながら、減圧制御弁15aをON/OFFのデューティー比制御により所定の勾配で、あるいは設定された目標の圧力までW/C41FRよりブレーキ液を吸引してW/C圧を減圧する。
【0051】
なおこのとき、増圧制御弁14aおよびSM弁18がともにカット状態であるため、ポンプ17の吐出圧は増大するが、その圧がSM弁18の逆止弁のばねのクラッキング力より大きくなるとリリースされて圧力が低下する。
【0052】
自動ブレーキの保持過程では、SM弁18をON(カット状態)にし、増圧制御弁14aおよび減圧制御弁15bをともにカット状態にすることで、W/C圧を保持する。
【0053】
次に、第2ブレーキ手段である電動PKB3について説明する。
【0054】
電動PKB3は、ブレーキ制御ECU1からの第2作動信号により動作する図示しないモータおよびギア機構からなるアクチュエータがブレーキワイヤ31R、31Lを介して左右後輪4RR、4RLのブレーキキャリパを駆動することにより制動力、すなわち、第2の制動力を発生させる。
【0055】
電動PKB3のモータは第2作動信号に基づきデューティー駆動されて正転(制動力増加)または逆転(制動力減少)し、これにより第2の制動力の大きさが制御される。
【0056】
このとき、デューティー比に応じた制動力が発生し、目標の制動力となったら電動PKB3のモータがロックし、モータロックが検出されるとモータの駆動電流が遮断、すなわち、第2作動信号が解除されて、電動PKB3は制御停止(制御禁止)の状態となる。
【0057】
この電動PKB3の制御停止状態ではギア機構は動かないので、制動力は維持され、ロック状態となる。
【0058】
この電動PKB3の作動は、自動ブレーキ制御中にブレーキ制御ECU1からの第2作動信号によって行われる以外に、運転者により図示しないパーキングブレーキスイッチをON/OFF操作した場合にも、その操作信号に基づきブレーキ制御ECU1が電動PKB3の第2作動信号を出力することにより動作可能である。
【0059】
車輪速度センサは図2に示すように、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLからなり、それぞれの出力信号は直接ブレーキ制御ECU1に入力される。
【0060】
なお車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RL(以下、総称して車輪速度センサ5という)にホール素子による半導体式速度センサを用いることにより、低速度でも確実な車輪回転および回転方向を示すパルス信号が得られるので、停止状態からの移動状態でも正確な車速を検出することができる。
【0061】
この車輪速度センサ5は、本発明の移動状態量検出手段に相当する。
【0062】
センサ群7は、車両VLの前部および後部の例えばバンパに設けられたレーザレーダにより車両VLの前方および後方に存在する障害物までの距離xを計測する周辺監視センサ70と、ブレーキペダルの操作量を検出し操作量が所定値を超えた場合にON信号を出力するブレーキ操作量センサ71と、アクセルペダルの操作量を検出し操作量が所定値を超えた場合にON信号を出力するアクセル操作量センサ72と、変速機のシフトレバー位置を示すシフト位置信号を出力するシフト位置センサ73、ドライバがシートに着座している(ON)か否(OFF)かを検出する着座センサ74と、ドライバのシート背もたれの角度(シート角)を検出し、所定の角度以上倒されている場合にOFF信号を、そうでない場合にON信号を出力するシート角度センサ75と、ドアの開閉状態を検出するドア開閉センサ76と、ドライバによるステアリングの把持状態を検出し把持されていない場合にOFF信号を、そうでない場合にON信号を出力するハンドル把持センサ77と、ドライバにより操作され、後述する車両停止保持制御を開始するための信号を発生する開始操作スイッチ78と、後続車により追突されたときに車両VLの前後加速度の変化に応じて追突されたことを検出する追突センサ79と備えている。なお、上記各センサは、それぞれ、公知のものを用いることができ、詳細な説明は省略する。
【0063】
盗難防止ECU8は、コンピュータにより構成され、予め登録されたドライバでない者によるドア開閉操作またはエンジン始動操作やイグニッションキー部を損傷することによるエンジン始動操作等、正しい操作によらずに車両VLが移動されるような場合に、緊急情報を出力して車両VLに搭載された警報装置のブザーを作動させたり、車外の警備業者へ緊急通報のための通信を行ったりするものである。本実施形態では、この盗難防止ECU8からの緊急情報を車内LANバス6を介して後述するブレーキ制御ECU1へ入力し、車両停止保持制御を開始することができる。
【0064】
次に、以上のようなハードウェア構成を備える第1実施形態の車両停止保持装置において、ブレーキ制御手段としてのブレーキ制御ECU1が実行する制御フローについて説明する。
【0065】
図3は、本第1実施形態のメインフローチャートを示している。本フローチャートは、ブレーキ制御ECU1により、イグニッションオンとともに処理が始められ、所定の制御周期(例えば、5〜10ms)で繰り返し実行される。
【0066】
ステップS100でイニシャルチェックが行われる。このイニシャルチェックでは、油圧ブレーキ装置2および電動PKB3の各アクチュエータの動作チェックを行う。
【0067】
すなわち、油圧ブレーキ装置2では、各電磁弁に実際に通電し、ブレーキ制御ECU1側でそれぞれの端子電圧のチェックを行うことで電磁弁の断線チェックを行ったり、油圧センサ30、19a、19b、29a、29bの検出値から油圧異常を判断して、故障個所の特定を行う。
【0068】
また、電動PKB3では、実際に通電したときの検出電流が正常か、電動PKBのモータが正常に回転しているか等を判定し、故障個所の特定を行う。なお、故障が発見された場合には、ブレーキ装置各部で異常動作の発生など致命的な状態にならないよう、故障診断の後、制御の禁止、代替制御への切り替え、警告灯の点灯などの処置ができるようシステム構成されている。
【0069】
ステップS110で、車輪速度センサ5、油圧ブレーキ装置2の各圧力センサセンサ、さらには、センサ群7の各種センサからの入力処理を行う。
【0070】
ステップS120で、アンチロックブレーキ(ABS)制御、車両VLの横加速度やヨーレートを検出してそれらが所定値以下となるよう、すなわち車体の安定性を確保できるよう各輪の制動力を制御する横滑り防止(VSC)制御、および車輪速度が車体速度より大きくなってスリップ量が所定値以上の場合にエンジン出力および制動力を制御してスリップ量を小さくするトラクション(TRC)制御が、それぞれ、走行状況に応じて行われ、それぞれブレーキ装置に対する目標制動力が制動要求値として設定される。なお、車体速度は、ブレーキ制御ECU1において、各車輪速度センサ5の検出値より、各輪の車輪速度および従動輪(前輪駆動車では左右後輪)の車輪速度より演算する。
【0071】
ステップS130で、後述するように、停止保持制御の制御モードを選択する。本第1実施形態では、各車輪速度センサ5の正常/異常状態に応じた移動量の演算モードの選択、および、第1ブレーキ手段としての油圧ブレーキ装置2および第2ブレーキ手段としての電動PKB3の正常/異常状態に応じた停止保持制御の制御モードを選択する。
【0072】
ステップS140で、選択された制御モードでの停止保持制御を、後述する制御フローに基づき行い、各ブレーキ装置の目標制動力を制動要求値として設定する。
【0073】
ステップS150で、発進のためにドライバによりアクセルペダルが踏み込まれると、停止保持制御の動作を中断して制動力を解除し、直ちにアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に応じたエンジン出力を発生させる。
【0074】
ステップS160で、上記ステップS120で設定された制動要求値、およびステップS140で設定された停止保持制御における制動要求値のうち、最も大きい制動要求値が選択される。これにより、各ブレーキ制御システム間の調停が行われる。なお、油圧ブレーキ装置2に対する制動要求値と電動PKB3に対する制動要求値とはそれぞれ独立に扱うことにより、両者が同時に制動力を発生することができる。
【0075】
ステップS170で、イグニッションオン中のフェールセーフチェックを行う。すなわち、ブレーキ制御ECU1、油圧ブレーキ装置2、電動PKB3、およびその他各センサの状態を常時診断する。故障が検出されると、車両VLが危険な状態にならないよう所定の処置を行う。
【0076】
ステップS180では、ステップS160で選択された制動要求値が、油圧ブレーキ装置2に対するものであるときに、第1作動信号により第1の制動力が目標制動力となるよう制御される。
【0077】
ステップS185では、ステップS160で選択された制動要求値が、電動PKB3に対するものであるときに、第2作動信号により第2の制動力が目標制動力となるよう制御される。
【0078】
ステップS190では、TRC制御におけるエンジン出力制御など、アクセル操作と直接関連しないエンジン出力制御のためのエンジン出力指令値が出力される。
【0079】
次に、上記ステップS130での処理、すなわち図4および図5に示すフローチャートにしたがって実行される停止保持制御モードの選択処理について説明する。なお、このステップS130での処理に必要な、各車輪速度センサと制動力付与手段としての油圧ブレーキ装置2および電動PKB3との動作状態が正常か異常かに関する情報が、前回の制御周期でのステップS170でのフェールセーフ処理により得られている。
【0080】
ステップS200で、左後輪の車輪速度センサ5RLが正常か否かを判定し、YES(正常)ならばステップS202へ移行し、NO(異常)ならばステップS204へ移行する。
【0081】
ステップS202では、左後輪の車輪速度センサ5RLが正常である場合において、右後輪の車輪速度センサ5RRが正常か否かを判定し、YES(正常)ならばステップS210へ移行し、NO(NO)ならばステップS208へ移行する。
【0082】
ステップS204で、左後輪の車輪速度センサ5RLが異常である場合において、右後輪の車輪速度センサ5RRが正常か否かを判定し、YES(正常)ならばステップS212へ移行し、NO(異常)ならばステップS206へ移行する。
【0083】
ステップS206で、後輪の車輪速度センサ5RLおよび5RRがともに異常である場合において、前輪の車輪速度センサ5FLおよび5FRがともに正常であるか否かを判定し、YES(ともに正常)ならばステップS214へ移行し、NO(少なくとも一方が異常)ならばステップS216へ移行する。
【0084】
すなわち、左右後輪の車輪速度センサセンサ5RLおよび5RRがともに正常のときは、ステップS210で、車両VLの移動量の演算を、通常モード(後述するステップS402)で行うためのフラグを立てる。
【0085】
左後輪の車輪速度センサ5RLが正常で、右後輪の車輪速度センサ5RRが異常であるときは、ステップS208で、移動量の演算を、移動量演算バックアップ1モード(後述するステップS406)で行うためのフラグを立てる。
【0086】
左後輪の車輪速度センサ5RLが異常で、右後輪の車輪速度センサ5RRが正常であるときは、ステップS212で、移動量の演算を、移動量演算バックアップ2モード(後述するステップS410)で行うためのフラグを立てる。
【0087】
左右後輪の車輪速度センサ5RLおよび5RRがともに異常であるときは、左右前輪の車輪速度センサ5FLおよび5FRがともに正常ならば、移動量の演算を、ステップS214で、移動量演算バックアップ3モード(後述するステップS414)で行うためのフラグを立て、5FLまたは5FRの少なくとも1つが異常ならば、ステップS216で移動量演算を禁止するフラグを立てる。
【0088】
以上の、移動量演算モードの選択の後、ステップS218で、電動PKB3が正常か否かを判定する。電動PKB3が正常ならば、ステップS220で油圧ブレーキ装置2が正常か否かを判定する。
【0089】
正常、すなわち、電動PKB3および油圧ブレーキ装置2がともに正常のときは、ステップS226で、停止保持制御を通常制御モードで行うためのフラグを立てる。
【0090】
異常、すなわち、電動PKB3が正常かつ油圧ブレーキ装置2が異常であるときは、ステップS224で、停止保持制御を特殊制御2モードで行うためのフラグを立てる。
【0091】
一方、ステップS218で電動PKB3が異常と判定されたときも、ステップS222で油圧ブレーキ装置2が正常か否かが判定される。
【0092】
正常、すなわち、電動PKB3が異常かつ油圧ブレーキ装置2が正常であるときは、ステップS228で、停止保持制御を特殊制御1モードで行うためのフラグを立てる。
【0093】
異常、すなわち、電動PKB3および油圧ブレーキ装置2がともに異常であるときは、ステップS230で、停止保持制御を行わない制御禁止のためのフラグを立てる。
【0094】
次に、ステップS140での停止保持制御の制御フロー(図6)について説明する。
【0095】
ステップS300で、停止保持状態にあるか否かを判定する。具体的には、車速が0の状態が3秒以上経過しているかにより判定する。すなわち、このステップS300での処理が停止保持判定手段の機能に相当する。なお、停止保持状態は、ドライバの操作の結果もたらされるものであり、このステップでの処理は停止保持意志判定手段の機能に相当するとみなすことができる。
【0096】
ステップS300での判定の結果、NOであればメインフローに戻り、YESであればステップS310へ進む。
【0097】
ステップS310では、停止保持制御が初回であるかを判定し、初回であればステップS315で移動量をクリア(0にリセット)し、または、初回でなければそのまま、ステップS320へ進む。
【0098】
ステップS320では移動量を、次のように、図7に示すフローチャートにしたがって演算する。
【0099】
上記ステップS130の停止保持制御モード選択の処理において、選択された移動量演算モードのフラグに応じて、ステップS402、S406、S410、S414、S416のいずれかの処理が行われる。
【0100】
なお、各輪の移動量は、図3に示すメインルーチンの制御周期(演算周期)とはそれぞれ独立に演算される。すなわち、各輪の車輪速度センサにおいて、車輪の回転に伴い各センサにパルス出力があるたびに、そのパルス数を積算することにより各輪の移動量が演算される。
【0101】
ステップS400で通常演算モードが選択された場合は、移動量を従動輪である左右後輪の移動量の平均値として算出する(S402)。
【0102】
ステップS404で移動量演算バックアップ1モードが選択された場合は、移動量を、正常なセンサをもつ従動輪である左後輪の移動量により設定する。
【0103】
ステップS408で移動量演算バックアップ2モードが選択された場合は、移動量を、正常なセンサをもつ従動輪である右後輪の移動量により設定する。
【0104】
ステップS412で移動量演算バックアップ3モードが選択された場合は、移動量を、正常なセンサをもつ駆動輪である左右前輪の移動量の平均値として算出する。このように、駆動輪の移動量を用いる場合は、誤差を少なくするために片輪ではなく両輪の平均値としている。
【0105】
ステップS416では、前記ステップS216で設定された移動量演算禁止を表すフラグにより、移動量の演算を行わず、同時に、停止保持制御禁止のフラグを立てる。
【0106】
すなわち、このステップS416は、制動力付与手段に異常がなくても、車輪速度センサに異常があり移動量が演算できない場合にも、停止保持制御を行わないようにするため制御禁止のフラグを立てる操作である。
【0107】
以上により、ステップS320での移動量演算処理が行われる。
【0108】
次に、ステップS330で、停止保持制御における、制動開始を決める距離しきい値Lを、周辺監視センサ70により常時、計測値が出力されている障害物との距離xに応じて補正する。すなわち、距離しきい値Lは図8の線図に示すように、障害物との距離xに応じて大きくなるよう設定されている。なお、障害物との距離xが極めて小さい範囲では、距離しきい値Lを0とし、一方、障害物との距離xが大きい範囲では一定値に設定されている。
【0109】
なお、この距離しきい値Lは本発明の制動開始しきい値に相当する。
【0110】
制動開始距離しきい値Lが設定されると、ステップS340で、演算された車両VLの移動量(の絶対値)が、距離しきい値Lより大きいか否かを判定し、NOであればメインルーチンに戻り、移動量が距離しきい値Lより大きくなるまで繰り返される。
【0111】
移動量が距離しきい値Lより大きくなると、ステップS350で通常制御モードのフラグ(S226)が立っているか、ステップS370で特殊制御1モードのフラグ(S228)が立っているか、ステップS380で特殊制御2モードのフラグ(S224)が立っているかが、それぞれ図6に示す分岐条件で判定される。
【0112】
通常制御、特殊制御1および特殊制御2のいずれの場合でもない場合、すなわち、ステップS230またはS416で制御禁止のフラグが立てられた場合は、ステップS390で、電動PKB3及び油圧ブレーキ装置2に対して、制御禁止要求を出す。
【0113】
次に、通常制御モードでの処理内容(図9)について説明する。
【0114】
まず、ステップS351で距離しきい値Lが予め設定されている制動勾配しきい値Lslowより大きいか否かを判定する。判定の結果、YESならば、障害物までの距離xが長いので緩制動モードを選択してステップS352へ移行し、NOならば、障害物までの距離xが短いため急制動モードを選択してステップS356へ移行する。
【0115】
緩制動モードでは、ステップS352で、電動PKB3がロック状態か否かを、前回のステップS355の処理結果である状態フラグにより判定する。
【0116】
ロック状態であれば停止保持制御のルーチンに戻り、ロック状態でなければステップS353へ進む。
【0117】
ステップS353では、緩制動モードであるので電動PKB3を駆動するために発生すべき制動力(第2制動力)の目標値(目標制動力)を設定し、これを制動要求値とする。
【0118】
ステップS354では、電動PKB3のモータがロック状態になったか否かを、モータの回転が停止したかまたはモータ電流が所定値以上となったかにより判定し、NOならば停止保持制御のルーチンに戻って処理を繰り返し、YESならば、ステップ355に進む。
【0119】
ステップS355では、電動PKB3の動作状態のフラグをロックにするとともに、電動PKB3の作動信号(第2作動信号)を解除してロック状態を維持し、停止保持制御のルーチンに戻る。
【0120】
一方、ステップS351で急制動モードが選択されると、ステップS356で、油圧ブレーキ装置2を駆動するため、制動力の制御周期毎の増加勾配b1を設定し、これをもとに制動要求値を求める。これにより、制御周期毎に、目標制動力=目標制動力+b1と更新されて制動力が増加する。この増加勾配b1は、急制動となるような値が予め設定されている。
【0121】
ステップS357で車速が0であるかを判定し、NOであれば車両移動中であるので停止保持制御のルーチンに戻って繰り返し、YESであれば車両VLが停止したのでステップS358に進む。
【0122】
ステップS358では、停止保持のための制動力を、油圧ブレーキ装置2による第1制動力から電動PKB3による第2制動力へ切り替えるために、まず電動PKB3へ目標制動力を設定し、制動要求値とする。なお、このステップでは油圧ブレーキ装置2の制動力は解除しない。
【0123】
ステップ359で、電動PKB3による第2制動力が、車両VLを停止保持している油圧ブレーキ装置2による第1制動力相当の値になったか、または電動PKB3のモータがロックしたかを判定し、NOであれば停止保持制御のルーチン戻って繰り返し、YESならば油圧ブレーキ装置2への作動信号(第1作動信号)および電動PKB3への作動信号(第2作動信号)をともに解除するよう各制動要求値を設定する。これにより、第1制動力は0になり、一方第2制動力は解除されず、この第2制動力により車両VLは停止保持される。
【0124】
以上のように、通常制御モードでは、障害物との距離xが長いときには緩制動モードが選択されて、電動PKB3に比較的緩やかな増加勾配により制動力を発生させて車両VLを減速、停止および停止保持する。
【0125】
また、障害物との距離xが短いときには急制動モードが選択されて、まず油圧ブレーキ装置2により所定の比較的急な増加勾配で制動力を増加させて車両VLを停止させる。車両停止した後は、電動PKB3の制動力を車両停止保持可能な大きさまで増加させた後に、電動PKB3の作動を解除するとともに油圧ブレーキ装置2の作動を解除して、車両停止保持を作動解除された電動PKB3の第2制動力のみにより行う。
【0126】
次に、電動PKB3が異常状態にあるときに実行される特殊制御1モードでの処理内容(図10)について説明する。
【0127】
まず、ステップS371で、上記ステップS351と同様、距離しきい値Lが予め設定されている制動勾配しきい値Lslowより大きいか否かを判定する。判定の結果、YESならば、障害物までの距離xが長いので緩制動モードを選択してステップS372へ移行し、NOならば、障害物までの距離xが短いため急制動モードを選択してステップS373へ移行する。
【0128】
ステップS372では、油圧ブレーキ装置2を緩制動モードで駆動するため、制動力の制御周期毎の増加勾配b2を設定して、この増加勾配b2を前回の目標制動力に加算することにより目標制動力を更新し、これを制動要求値とする。この増加勾配b2は、緩やかな増加勾配となるよう値が予め設定されている。
【0129】
一方、ステップS373では、油圧ブレーキ装置2を急制動モードで駆動するため、制動力の制御周期毎の増加勾配b1を設定して、この増加勾配b1を前回の目標制動力に加算することにより目標制動力を更新し、これを制動要求値とする。この増加勾配b1は、急な増加勾配となるよう値が予め設定されており、b1>b2の関係がある。
【0130】
上記目標制動力が設定されると、ステップS374で、車両停止状態(車速=0)か否かが判定され、NOであれば停止保持制御ルーチンへ戻って繰り返され、YESならばステップS375へ進む。
【0131】
ステップS375では、油圧ブレーキ装置2による停止保持制動が開始されてからの制動継続時間が所定値T1を越えたか否かを判定する。この所定値T1は、油圧ブレーキ装置2が備える各電磁弁のソレノイドへの連続通電による発熱を考慮して設計的に決まる安全時間である。この判定の結果、NOであれば停止保持制御のルーチンに戻って繰り返し、YESであれば、警報を出してドライバに注意を喚起する(ステップS376)。
【0132】
警報を出した後、ステップS377で、油圧ブレーキ装置2による制動継続時間が、所定値T2を越えたか否かを判定する。この所定値T2は、上記T1より大きい値であり、ソレノイドへの連続通電可能な限界時間である。
【0133】
制動継続時間がT2以下の場合には停止保持制御ルーチンへ戻り、制動継続時間がT2を越えたら、ステップS378で、油圧ブレーキ装置2の保護のため、第1作動信号を解除、すなわち第1制動力を解除し、停止保持制御ルーチンへ戻る。
【0134】
基本的にはソレノイドの連続通電可能時間の限界値は無限時間であることが望ましい。その場合には、ステップS374〜S378の処理は不要となる。
【0135】
次に、油圧ブレーキ装置2が異常状態にあるときに実行される特殊制御2モードでの処理内容(図11)について説明する。この特殊制御2モードは、上記通常制御モードにおける緩制動モードでの処理(ステップS352からS355)と同じである。
【0136】
まず、ステップS381で、上記ステップS352と同様、電動PKB3がロック状態か否かを、前回のステップS384の処理結果である状態フラグにより判定する。
【0137】
ステップS382では、電動PKB3を駆動するために発生すべき制動力(第2制動力)の目標値(目標制動力)を設定し、これを制動要求値とする。
【0138】
ステップS383では、電動PKB3のモータがロック状態になったか否かを、モータの回転が停止したかまたはモータ電流が所定値以上となったかにより判定し、NOならば停止保持制御のルーチンに戻って処理を繰り返し、YESならば、ステップ384に進む。
【0139】
ステップS384では、電動PKB3の動作状態のフラグをロックにするとともに、電動PKB3の作動信号(第2作動信号)を解除してロック状態を維持し、停止保持制御のルーチンに戻る。
【0140】
以上、停止保持制御では、図3のステップS140、詳しくは図6および図9ないし図11で示されるフローチャートにしたがった処理により、通常制御、特殊制御1および特殊制御2のいずれかのモードが選択されて、車両VLの停止保持のための油圧ブレーキ装置2または電動PKB3に対する目標制動力が設定される。
【0141】
このように設定された目標制動力に基づき、ステップS180で油圧ブレーキ装置2に目標制動力を発生するよう第1作動信号を出力し、あるいは、ステップS185で電動PKB3に目標制動力を発生するよう第2作動信号を出力する。
【0142】
なお、停止保持制御が継続中に、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれると、上述のように、ステップS150において、割り込みが発生し、停止保持制御が解除され車両VLはアクセル操作量に応じたエンジン出力により発進する。
【0143】
本第1実施形態によれば、車両VLが停止保持状態にある、またはドライバが停止保持意志を有する状態にあると判定された場合に、車両VLが何らかの理由で意図しない移動が発生すると、その移動量が距離しきい値Lより大きくなったら制動力を所定勾配で増加させることにより、停止保持中の車両移動を抑制することができる。
【0144】
このとき、距離しきい値Lを、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、小さくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には少ない移動量でも停止保持制御を開始させることができ、安全性を高めることができる。
【0145】
また、車両VLと周辺の障害物との距離xに応じて、距離xが小さいときは高応答特性を持つ油圧ブレーキ装置による急制動、距離xが大きいときはエネルギー効率の高い電動PKBによる緩制動を使い分けることができる。
【0146】
さらに、第1ブレーキ手段(油圧ブレーキ装置)に異常が発生した場合は、第2ブレーキ手段(電動PKB)により緩制動モードでの停止保持制御を行い、逆に第2ブレーキ手段に異常が発生した場合には、第1ブレーキ手段により急制動モードおよび緩制動モードでの停止保持制御を行うことができ、フェールセーフ性能を備えた車両停止保持装置を得ることができる。
【0147】
なお、車輪速度センサに異常が生じた場合は、その故障個所に応じて、2つの従動輪の車輪速度センサ出力の平均値を利用したり、正常動作している片方の車輪速度センサ出力を利用したり、あるいは、2つの駆動輪の車輪速度センサ出力の平均値を利用したりすることができる。
【0148】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の車両停止保持装置について説明する。本第2実施形態は、上述した図1の全体構成および図2の油圧ブレーキ装置2の構成と図3のメインフローチャートの処理内容は、前記第1実施形態と同じであるので、これらについては説明を省略する。
【0149】
本第2実施形態は、メインルーチンのステップS140での処理(停止保持制御)の一部のみが、上記第1実施形態と異なるので、以下、この異なる部分についてのみ説明し、同じステップには同一の符号を付して説明を省略する。
【0150】
図12は、第2実施形態の停止保持制御のルーチンを示したものである。
【0151】
ステップS300で、第1実施形態と同様、停止保持状態か(または停止保持意志状態か)の判定を行い、停止保持状態と判定されたら、ステップS332へ進む。
【0152】
ステップS332では、停止保持制御における制動開始を決める時間しきい値Tを、周辺監視センサ70により常時、計測値が出力されている障害物との距離xに応じて補正する。すなわち、時間しきい値Tは、上記距離しきい値Lの補正方法と同様、図13に示す線図の如く、障害物との距離xに応じて大きくなるよう設定されている。なお、障害物との距離xが極めて小さい範囲では、時間しきい値Tを0とし、一方、障害物との距離xが大きい範囲では一定値に設定されている。
【0153】
次に、ステップS342で、車両VLの移動時間が設定された時間しきい値Tより大きいか否かを判定し、NOであればメインルーチンに戻り、YESであれば、上記第1実施形態と同様、ステップS350以降へ進む。
【0154】
なお、ステップS342で用いる移動時間は、メインルーチンとは独立に、図14に示す移動時間演算ルーチンにしたがって算出される。このルーチンは、車両VLの駆動軸(変速機出力軸)の回転センサ(図示せず)に、駆動軸回転に伴うパルス出力が発生するたびに割り込み処理が行われる。
【0155】
すなわち、ステップS500で、停止保持制御状態にあるかを、ステップS300での判定結果に基づき判定する。NO、すなわち停止保持制御中でない場合は、直ちにこの割り込みルーチンを抜ける。
【0156】
YESでかつ停止保持制御中の初回の割り込みであれば、ステップS502で現在の時刻を移動開始時刻として記憶した後、この割り込みルーチンを抜け、また、YESで初回の割り込みでなければ、そのままステップS504へ進む。
【0157】
ステップS504では、前回の割り込み時刻と今回の割り込み時刻との差より割り込み間隔Δt1を算出する。
【0158】
ステップS506では、演算された割り込み間隔Δt1が所定値TWを超えているか否かを判定する。所定値を超えていれば、パルス間隔が非常に長くなり移動状態とみなすことが困難となるため、ステップS508で再度、現在の時刻を移動開始時刻として記憶する。
【0159】
ステップS510で、移動時間を、移動開始時刻から今回の割り込み時刻までの時間として算出し、割り込み処理を抜ける。
【0160】
このように算出される、移動時間、すなわち、停止保持状態または停止保持意志状態にあるときに車両VLが移動した場合の移動していた時間が、時間しきい値Tを超えたら、通常制御、特殊制御1または特殊制御2のいずれかの制御モードにより、車両VLを停止保持する制御を行う。
【0161】
本第2実施形態によれば、車両VLが停止保持状態にある、またはドライバが停止保持意志を有する状態にあると判定された場合に、車両VLが何らかの理由で意図しない移動が発生すると、その移動の継続時間が時間しきい値Tより大きくなったら制動力を所定勾配で増加させることにより、停止保持中の車両移動を抑制することができる。
【0162】
このとき、時間しきい値Tを、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、小さくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には移動開始後直ちに停止保持制御を開始させることができ、安全性を高めることができる。
【0163】
さらに、上記第1実施形態と同様、車両VLと周辺の障害物との距離xに応じて、距離xが小さいときは高応答特性を持つ油圧ブレーキ装置による急制動、距離xが大きいときはエネルギー効率の高い電動PKBによる緩制動を使い分けることができる。
【0164】
また、第1ブレーキ手段(油圧ブレーキ装置)に異常が発生した場合は、第2ブレーキ手段(電動PKB)により緩制動モードでの停止保持制御を行い、逆に第2ブレーキ手段に異常が発生した場合には、第1ブレーキ手段により急制動モードおよび緩制動モードでの停止保持制御を行うことができ、フェールセーフ性能を備えた車両停止保持装置を得ることができる。
【0165】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の車両停止保持装置について説明する。本第3実施形態は、上述した図1の全体構成および図2の油圧ブレーキ装置2の構成は、前記第1実施形態と同じであるので、これらについては説明を省略する。
【0166】
本第3実施形態は、図15に示すインフローチャートが、次の点で、第1および第2実施形態と異なっている。
【0167】
すなわち、本第3実施形態では、停止保持制御モードの選択(ステップS130)を行わず、さらに、ステップS145で、停止保持制御の開始、実行を、移動速度の大きさに基づき判定するものである。以下、上記第1および第2実施形態と、同じ処理ステップには同一符号を付して説明を省略し、異なる処理ステップのみについて説明する。
【0168】
ステップS300で、第1および第2実施形態と同様、停止保持状態か(または停止保持意志状態か)の判定を行い、停止保持状態と判定されたら、ステップS334へ進む。
【0169】
ステップS334では、停止保持制御における制動開始を決める速度しきい値Vを、周辺監視センサ70により常時、計測値が出力されている障害物との距離xに応じて補正する。すなわち、速度しきい値Vは、上記距離しきい値Lや時間しきい値Tの補正方法と同様、図17に示す線図の如く、障害物との距離xに応じて大きくなるよう設定されている。なお、障害物との距離xが極めて小さい範囲では、速度しきい値Tを0とし、一方、障害物との距離xが大きい範囲では一定値に設定されている。
【0170】
次に、ステップS600で、車両VLの移動速度が設定された速度しきい値Vより大きいか否かを判定し、NOであればメインルーチンに戻って処理が繰り返され、YESであればステップS610へ進む。
【0171】
なお、ステップS600で用いる移動速度は、メインルーチンとは独立に、図18に示す移動速度演算ルーチンにしたがって算出される。このルーチンは、車両VLの駆動軸(変速機出力軸)の回転センサ(図示せず)に、駆動軸回転に伴うパルス出力が発生するたびに割り込み処理が行われる。
【0172】
すなわち、駆動軸の回転センサにパルス出力が発生すると、ステップS700で、今回のパルス発生の時刻と前回のパルス発生の時刻との差分Δtを算出する。
【0173】
次に、ステップS710で、移動速度を予め設定された定数KとΔtとの比、すなわち、移動速度=K/Δtにより算出する。ここで、Kは駆動軸1回転による車両VLの移動距離を回転センサの一周分の歯数、すなわち駆動軸1回転で発生するパルス数で除したものである。
【0174】
この処理が、駆動軸回転パルスが発生するたびに繰り返され、移動速度が算出される。
【0175】
このように算出された移動速度が、ステップS600で速度しきい値Vを超えたと判定されると、ステップS610で、油圧ブレーキ装置2の制動力の増加勾配(制御周期毎の増加量)Biを演算する。具体的には、図19に示すように、周辺監視センサ70により検出される障害物との距離xに応じて、障害物までの距離xが大きいほど勾配Biが小さくなるよう設定される。
【0176】
ステップS620では、目標制動力が油圧ブレーキ装置2の最大発生制動力(MAX)を超えているか否かを判定し、NOならばこのままステップS640へ進み、YESならばこれ以上制動力を増加させないようにステップS630で増加量Bi=0とした後、ステップS640へ進む。
【0177】
ステップS640では、油圧ブレーキ装置2の目標制動力を前回の目標制動力に増加勾配である増加量Biを加えた値で更新する。
【0178】
ステップS650で、制動要求値として更新された目標制動力を設定する。
【0179】
本第3実施形態によれば、車両VLが停止保持状態にある、またはドライバが停止保持意志を有する状態にあると判定された場合に、車両VLが何らかの理由で意図しない移動が発生すると、その移動速度が速度しきい値Vより大きくなったら制動力を所定勾配で増加させることにより、停止保持中の車両移動を抑制することができる。
【0180】
このとき、速度しきい値Vを、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、小さくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には小さな移動速度でも停止保持制御を開始させることができ、安全性を高めることができる。
【0181】
さらに、制動力の増加勾配を、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、大きくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には大きな増加勾配、すなわち制動力を急激に増加させることにより、移動距離を短くして車両を停止させることができる。
【0182】
(他の実施形態)
〔1〕上記各実施形態では、ブレーキ制御ECU1は停止保持制御を開始するための判定条件として、ステップS300(図6、図12または図16)において、車両停止状態(車速=0)が3秒経過したか否かにより判定することとしたが、これに限らず、次のように種々変更することができる。
【0183】
(a)シフト位置センサ73からの信号に基づき、変速機のシフトレバー位置が、車輪に駆動力を発生しないPまたはNポジションにあるときに、車両停止状態、または、ドライバの車両停止保持意志を表している状態であるとして、停止保持制御を開始、あるいは実行するように設定することができる。なお、ステップS300でこのように判定するすることで、シフトレバー位置が上記以外、すなわちD、2、またはLポジションにあるときには停止保持制御モードに入らないようにすることができる。
【0184】
(b)ドライバにより開始操作スイッチ78が操作された場合に、このスイッチ操作信号に応じて、停止保持制御を開始するように設定してもよい。この場合、開始操作スイッチ78の操作信号は、ドライバの車両停止保持意志そのものを表している。
【0185】
(c)エンスト(エンジンストップ)状態で、ブレーキ操作量センサ71の検出値によりブレーキが踏み込まれていると判定される場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0186】
(d)ドア開閉センサ76により少なくとも1つのドアが開状態にあるか、または、シート角度センサ75よりON信号、すなわちシート背もたれが所定角度以上倒されているか、または、着座センサ74からOFF信号すなわち着座されていない状態であるかのいずれかが認められた場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0187】
(e)アクセル操作量センサ72の検出値よりアクセルが踏み込まれていないと判定され、ハンドル把持センサ77からのOFF信号によりドライバがステアリングを把持していないと判定され、かつ、ブレーキ操作量センサ74の検出値によりブレーキが踏み込まれていないと判定される場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0188】
(f)車速が0であるときに、追突センサ79からの出力から、後続車によって追突されたと判定される場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0189】
(g)盗難防止装置としての盗難防止ECU8により、ドライバが正しい手続きや正しい操作によって車両に乗り込んでいないと判定される場合に、所有者が車両を停止保持したいと意図する状態にあるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0190】
〔2〕上記各実施形態において、制動力付与手段としての第1ブレーキ手段は、図2に示す油圧ブレーキ装置2を用いる例を示したが、これ以外にも、マスタシリンダに与える加圧力を、通常のブレーキペダルの踏力によって与えるとともに、他の制御された油圧機構によってペダル踏力とは独立に与える、すなわちブレーキペダル操作がないときにもマスタシリンダの加圧が可能な、いわゆるハイドローリック・ブースタを用いてもよい。
【0191】
さらに、第1ブレーキ手段として、油圧によらず、各輪毎に電動モータを備え、この電動モータの駆動により直接ブレーキキャリパをブレーキディスクへ押し付けて制動力を発生させる電動ブレーキ装置を用いてもよい。
【0192】
いずれの場合も、作動信号に基づいて第1の制動力を発生させ、この作動信号が解除されると制動力も解除(制動力=0)される第1ブレーキ手段として機能し、制動力を高応答で発生させることができる。
【0193】
なお、これら第1ブレーキ手段は、熱エネルギーの観点から電磁弁等の連続動作を避ける必要があり、その意味で長時間の制動力発生にはふさわしくない。一方、第2ブレーキ手段としての電動PKB3は、モータをロック位置まで駆動して制動力を発生させたのち、モータの作動信号を解除してモータを停止させても発生した制動力は維持されるので、応答性は低いが、熱エネルギーの問題はなく、エネルギー効率も高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の油圧ブレーキ装置の構成を示す図である。
【図3】第1および第2実施形態のブレーキ制御ECUの処理手順を示すメインフローチャートである。
【図4】停止保持制御モード選択の処理手順を示すフローチャートの一部である。
【図5】停止保持制御モード選択の処理手順を示すフローチャートの一部である。
【図6】第1実施形態の停止保持制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】移動量演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】制動開始距離しきい値と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【図9】停止保持制御における通常制御モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】停止保持制御における特殊制御1モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【図11】停止保持制御における特殊制御2モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の停止保持制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】制動開始時間しきい値と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【図14】移動時間の演算手順を示すフローチャートである。
【図15】第3実施形態のブレーキ制御ECUの処理手順を示すメインフローチャートである。
【図16】第3実施形態の停止保持制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】制動開始速度しきい値と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【図18】移動速度の演算手順を示すフローチャートである。
【図19】制動力増加勾配と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ブレーキ制御ECU、2…油圧ブレーキ装置(第1ブレーキ手段)、
21、22…配管系統、3…電動PKB(第2ブレーキ手段)、
31…ブレーキワイヤ、4…車輪、5…車輪速度センサ、
6…車内LANバス、70…周辺監視センサ、71…ブレーキ操作量センサ、72…アクセル操作量センサ、73…シフト位置センサ、74…着座センサ、
75…シート角度センサ、76…ドア開閉センサ、
77…ハンドル把持センサ、78…開始操作スイッチ、79…追突センサ、
8…盗難防止ECU。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバが走行途中で車両を停止保持させたいと意図するときに車両の移動があった場合に、制動力を制御して車両の移動を自動的に抑制する車両停止保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来、パーキングブレーキのブレーキ圧保持中に車両が移動したとき、直ちに、そのパーキングブレーキの補助制動装置によってブレーキ圧を増大させ、車両の停止状態を維持するものがあった(特開2000−177551号公報)。
【0003】
しかし、この従来技術は、ドライバが車外での車両操作のため車両から離れた状態で、パーキングブレーキにより車両を停止維持することを目的とするもので、走行中、例えば坂路や交差点での一時的な停止保持状態にある車両のずり下がりや意図しない車両移動を、走行停止状況に応じて抑制させることは困難である。
【0004】
本発明は上記点に鑑みて、ドライバの意図しない車両移動を、走行停止状況に拘わらず抑制させることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ドライバに車両の停止保持意志がある状態で、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、前記移動状態量に応じて、各輪に与える制動力の大きさを制御する、または/および、複数の制動力付与手段を切り替えて作動させる停止保持制御を行う手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に記載の発明は、車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、ドライバの前記車両の停止保持意志状態を判定する停止保持意志判定手段と、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、前記停止保持意志状態と判定されているとき、検出された前記移動状態量に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
上記発明によれば、ドライバに車両の停止保持意志がある状態で、車両が移動したとき、その移動状態量に応じて制動力の大きさを制御したり、複数の異なる制動力付与手段を切り替えて作動させるので、ドライバの意図しない車両の移動を、状況に応じて阻止することができる。
【0008】
なお、前記停止保持意志判定手段は、請求項3に記載のように、前記車両の停止状態が所定時間経過していること、前記停止保持制御の開始スイッチが操作されること、変速機のシフト位置が、該変速機を非駆動状態とする位置に設定されていること、エンジンの非動作中にブレーキペダルが踏まれていること、前記車両の停車中に後続車により追突されたこと、または、前記ドライバによる非走行意志を表す操作が検出されたこと、の少なくとも1つを検出することにより判定することができる。
【0009】
また、前記ドライバによる非走行意志を表す操作は、請求項4に記載のように、シート背もたれを倒す操作、ドアを開く操作、前記シートからの離脱操作、ハンドルの把持開放操作、またはアクセルペダルまたはブレーキペダルの踏み込み開放操作の少なくとも1つとすることができる。
【0010】
請求項5に記載の発明は、車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、前記車両の停止保持状態を判定する停止保持判定手段と、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、前記停止保持状態と判定されているとき、検出された前記移動状態量に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、車両が停止保持状態にあると判定される場合に、車両が移動したとき、その移動状態量に応じて制動力を制御する車両停止モードで動作することにより、停止保持状態にある車両の意図しない移動を、状況に応じて阻止することができる。
【0012】
なお、前記移動状態量検出手段は、請求項6に記載のように、前記車両の移動量、移動継続時間または移動速度の少なくともいずれか1つを検出することができる。
【0013】
前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止モードにおいて、請求項7に記載のように、前記移動状態量の大きさに応じて、前記制動力を増加させることができ、さらに、請求項8に記載のように、前記移動状態量の大きさに応じて、前記制動力の増加勾配を変更することができる。
【0014】
請求項9に記載の発明は、前記制動力付与手段は、第1作動信号に基づき車両の各車輪に第1の制動力を発生させると共に、該第1作動信号の発生が解除されたとき前記第1の制動力が0に変化する第1ブレーキ手段と、第2作動信号に基づき前記車両の少なくとも一部の車輪に第2の制動力を発生させるとともに、該第2作動信号の発生が解除されたとき前記第2の制動力を前記第2作動信号の発生の解除前の前記第2作動信号に基づく作動状態における値に保つ第2ブレーキ手段と、を備え、前記ブレーキ制御手段は、前記移動状態量の大きさに応じて、前記第1または第2ブレーキ手段の作動を切り替えるようにすることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、車両停止モードでの制動力制御を行うとき、車両移動を阻止するために比較的高応答の第1ブレーキ手段を作動させ、あるいは、停止状態を維持するためにエネルギー消費なく長時間制動力を維持できる第2ブレーキ手段を動作させるというように、両者を状況に応じて切り替えて作動させることができる。
【0016】
前記ブレーキ制御手段は、請求項10に記載のように、前記検出された移動状態量が予め設定した制動開始しきい値を超えたときに前記車両停止モードでの動作を開始することができる。
【0017】
さらに、請求項11に記載のように、前記車両と周辺の障害物との距離を検出する周辺監視手段を更に備え、前記ブレーキ制御装置は、前記検出された障害物との距離に応じて、前記制動開始しきい値を補正することができる。
【0018】
請求項12に記載の発明は、前記車両と周辺の障害物との距離を検出する周辺監視手段を更に備え、前記ブレーキ制御装置は、前記車両停止モードにおいて、前記検出された障害物との距離に応じて、前記制動力の増加勾配を変更することを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、車両停止モードで、車両の移動状態量に応じて制動力を制御する場合、車両周辺の障害物との距離に応じて、制動力の増加勾配を変更するので、車両の移動を状況に応じて抑制することができる。
【0020】
請求項13に記載の発明では、前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止保持装置のいずれかの部位に異常状態が検出された場合に、該異常状態に応じて前記車両停止モードでの動作を継続するか、または中止するかを選択することができる。
【0021】
また、請求項14に記載の発明では、前記制動力付与手段は、第1作動信号に基づき車両の各車輪に第1の制動力を発生させると共に、該第1作動信号の発生が解除されたとき前記第1の制動力が0に変化する第1ブレーキ手段と、第2作動信号に基づき前記車両の少なくとも一部の車輪に第2の制動力を発生させるとともに、該第2作動信号の発生が解除されたとき前記第2の制動力を前記第2作動信号の発生の解除前の前記第2作動信号に基づく作動状態における値に保つ第2ブレーキ手段と、を備え、前記ブレーキ制御手段は、前記第1または第2ブレーキ手段のいずれか一方を作動させて前記車両停止モードでの動作を実行中に、該作動中のブレーキ手段に異常が発生したときには、他方のブレーキ手段に切り替えて前記車両停止モードでの動作を継続することができる。
【0022】
なお、前記移動状態量は、請求項15に記載のように、前記車両停止モードにおける前記車両の移動量、移動速度、または移動継続時間のいずれか1つであることを特徴とする。
【0023】
請求項16に記載の発明は、車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、ドライバが正しい手続きで前記車両に乗り込んだか否かを判定し、不正手続きによる乗車と判定されたとき、緊急情報を出力する盗難防止装置と、前記緊急情報に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、盗難防止装置により不正手続きでの乗車が検出されると、この検出結果に応じて制動力を制御して車両の移動を抑制することができ、車両の盗難防止効果を高めることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態の車両停止保持装置について、図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本第1実施形態の車両停止保持装置の全体構成図である。なお、車両VLの右前輪、左前輪、右後輪、左後輪をそれぞれ、FR、FL、RR、RLで表す。また、車両VLは、図示しないエンジンおよび変速機により前輪FR、FLが駆動される前輪駆動車である。
【0027】
本第1実施形態は、車両VLに搭載されている、ブレーキ制御ECU1と、第1ブレーキ手段としての油圧ブレーキ装置2と、油圧ブレーキ装置2と第1配管系統11および第2配管系統22でそれぞれダイアゴナル接続されている各車輪4FR、4RL、4FL、4RRと、第2ブレーキ手段としての電動パーキングブレーキ(以下、電動PKBという)3と、電動PKB3と後輪4RL、4RRのブレーキキャリパ(図示せず)とを接続するブレーキワイヤ31L、31Rと、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLと、各種電子機器の入出力信号を伝送する車内LANバス6と、各種センサからなるセンサ群7と、盗難防止ECU8とを備えている。
【0028】
ブレーキ制御ECU1は、コンピュータにより構成され、車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLからの各輪の車輪回転信号と、車内LANバス6を介して入力されるセンサ群7からの各種センサ信号とに基づき、後述する制御フローの処理手順により、油圧ブレーキ装置2または電動PKB3へのそれぞれのブレーキ作動信号(第1作動信号または第2作動信号)を決定し出力して、各車輪に制動力を発生させる。したがって、ブレーキ制御ECU1は本発明のブレーキ制御手段に相当する。
【0029】
なお、以下の説明で、「制動圧」または「制動力」は、いずれも同じ意味を示し、例えば、目標の制動力(または制動圧)として、減速度1G=10MPa(G:重力加速度、Pa:パスカル(圧力単位))により変換される制動の大きさを表すものとして用いる。
【0030】
図2は、第1ブレーキ手段としての油圧ブレーキ装置2の構成を示す図である。マスターシリンダ(以下、M/Cという)10は、ドライバにより図示しないブレーキペダルが踏み込まれるとその踏力に応じたM/C圧を発生し、それぞれ第1配管系統11および第2配管系統21を介して各車輪に備えられたW/C41FR、41RL及び41FL、41RRに伝達され、第1の制動力を発生するようになっている。
【0031】
以下では、第1配管系統11、特に、右前輪4FRに関わる配管系統を中心に説明するが、他の車輪および第2配管系統についても同様である。
【0032】
第1配管系統11には、右前輪4FRおよび左後輪4RLのそれぞれに対して、アンチスキッド制御などにおいて各W/C41FR、41RLの増圧および保持を調整する増圧制御弁14a、14bが設けられている。
【0033】
また、増圧制御弁14a、14bにそれぞれ並列に逆止弁141a、141bが設けられ、増圧制御弁14a、14bの遮断時にW/C圧が過剰となった場合に液流をM/C10側へ逃がすようになっている。
【0034】
この増圧制御弁14a、14bとW/C41FR、41RLとの間から伸びる減圧管路12にはABS制御におけるW/C41FR、41RLの減圧、保持を調整する減圧制御弁15a、15bが設けられている。
【0035】
この減圧管路12はリザーバ16と接続されている。このリザーバ16に貯溜されるブレーキ液は、モータ20により駆動されるポンプ17によって汲み上げられ第1配管系統11に吐出される。この吐出先は、増圧制御弁14a、14bと後述するマスタカット弁18との間となっている。
【0036】
モータ20は第2配管系統21におけるポンプ27も駆動している。なお、ポンプ17の吐出口には逆止弁171が設けられている。
【0037】
M/C10と増圧制御弁14a、14bとの間には、マスタカット弁(以下、SM弁という)18が配置されている。
【0038】
SM弁18は、非通電時は連通状態、通電時には図示方向の逆止弁による遮断状態となる2位置弁である。この遮断状態では、W/C41FR、41RL側の圧が逆止弁のばねによるクラッキング圧分M/C10側の圧よりも高くなったときにリリースされ、圧を逃がす構造となっている。
【0039】
このSM弁18には並列に逆止弁181が設けられており、M/C10側からW/C41FR、41RL側への流動のみが許容される。
【0040】
M/C10とSM弁18との間と、リザーバ16とは吸引管路13で接続されている。
【0041】
第1配管系統11のM/C10とSM弁18との間には油圧センサ30が設けられ、M/C10の発生圧を検出する。この圧力はM/C10の図示しないセカンダリ室の発生圧力であるが、第2配管系統が接続されるプライマリ室にも同圧が発生しているので、この油圧センサ30は実質的にM/C圧を検出する。
【0042】
また、増圧制御弁14a、14bとW/C41FR、41RLとの間にも油圧センサ19a、19bが設けられ、それぞれW/C圧を検出する。これらの油圧センサの出力信号は、ブレーキ制御ECU1に入力される。
【0043】
上記増圧制御弁14a、14b、減圧制御弁15a、15bは2位置弁であり、ブレーキペダルの非操作時および通常ブレーキ時などの非通電(OFF)時には図示の弁体位置、すなわち、増圧制御弁は連通状態、減圧制御弁は遮断(カット)状態にある。
【0044】
また、SM弁18も通常の非通電時には図示の弁体位置、すなわち連通状態にある。
【0045】
これら各制御弁は、ブレーキ制御ECU1からの作動信号により動作する。また、ポンプ17、27を駆動するモータ20もブレーキ制御ECU1からのブレーキ作動信号により動作する。
【0046】
なお、これらの油圧ブレーキ装置2に対する各作動信号は、総じて第1作動信号に相当する。また、油圧ブレーキ装置2を制御停止(または、制御禁止)にするとは、第1作動信号を解除状態、すなわち0(非作動状態)にする、具体的には、増圧制御弁、減圧制御弁およびSM弁を全て非通電とし、かつ、モータ20の駆動電流を0とすることである。
【0047】
したがって、油圧ブレーキ装置2は、第1作動信号が解除されると、各輪のW/C圧は0に減圧され、第1の制動力が0になる。
【0048】
上記油圧ブレーキ装置2の自動ブレーキ動作、すなわちブレーキペダル操作に拘わらず、ブレーキ制御ECU1からの第1作動信号としての増圧、保持、減圧の各指令値に基づくブレーキ動作について説明する。なお、通常動作であるドライバのブレーキペダル操作に基づく動作や、アンチスキッド制御中における動作については説明を省略する。
【0049】
自動ブレーキ制御の増圧過程では、SM弁18をON(カット状態)に、かつ、減圧制御弁15aをOFF(カット状態)にするとともに、ポンプ17を駆動してリザーバ16よりブレーキ液を吸引して吐出圧を発生させた状態で、油圧センサ19aの検出値との比較を行いながら、増圧制御弁14aをOFF/ONのデューティー比制御により所定の変化勾配で、あるいは設定された目標の圧力までW/C圧を増圧する。このとき、必要に応じてM/C10から吸引管路13、リザーバ16を介してブレーキ液がポンプ17の吸引口に補充される。
【0050】
自動ブレーキ制御の減圧過程では、SM弁18をON(カット状態)に、かつ、増圧制御弁14aをON(カット状態)にするとともに、ポンプ17を駆動してリザーバ16よりブレーキ液を吸引して吐出圧を発生させた状態で、油圧センサ19aの検出値との比較を行いながら、減圧制御弁15aをON/OFFのデューティー比制御により所定の勾配で、あるいは設定された目標の圧力までW/C41FRよりブレーキ液を吸引してW/C圧を減圧する。
【0051】
なおこのとき、増圧制御弁14aおよびSM弁18がともにカット状態であるため、ポンプ17の吐出圧は増大するが、その圧がSM弁18の逆止弁のばねのクラッキング力より大きくなるとリリースされて圧力が低下する。
【0052】
自動ブレーキの保持過程では、SM弁18をON(カット状態)にし、増圧制御弁14aおよび減圧制御弁15bをともにカット状態にすることで、W/C圧を保持する。
【0053】
次に、第2ブレーキ手段である電動PKB3について説明する。
【0054】
電動PKB3は、ブレーキ制御ECU1からの第2作動信号により動作する図示しないモータおよびギア機構からなるアクチュエータがブレーキワイヤ31R、31Lを介して左右後輪4RR、4RLのブレーキキャリパを駆動することにより制動力、すなわち、第2の制動力を発生させる。
【0055】
電動PKB3のモータは第2作動信号に基づきデューティー駆動されて正転(制動力増加)または逆転(制動力減少)し、これにより第2の制動力の大きさが制御される。
【0056】
このとき、デューティー比に応じた制動力が発生し、目標の制動力となったら電動PKB3のモータがロックし、モータロックが検出されるとモータの駆動電流が遮断、すなわち、第2作動信号が解除されて、電動PKB3は制御停止(制御禁止)の状態となる。
【0057】
この電動PKB3の制御停止状態ではギア機構は動かないので、制動力は維持され、ロック状態となる。
【0058】
この電動PKB3の作動は、自動ブレーキ制御中にブレーキ制御ECU1からの第2作動信号によって行われる以外に、運転者により図示しないパーキングブレーキスイッチをON/OFF操作した場合にも、その操作信号に基づきブレーキ制御ECU1が電動PKB3の第2作動信号を出力することにより動作可能である。
【0059】
車輪速度センサは図2に示すように、各車輪の回転速度を検出する車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RLからなり、それぞれの出力信号は直接ブレーキ制御ECU1に入力される。
【0060】
なお車輪速度センサ5FR、5FL、5RR、5RL(以下、総称して車輪速度センサ5という)にホール素子による半導体式速度センサを用いることにより、低速度でも確実な車輪回転および回転方向を示すパルス信号が得られるので、停止状態からの移動状態でも正確な車速を検出することができる。
【0061】
この車輪速度センサ5は、本発明の移動状態量検出手段に相当する。
【0062】
センサ群7は、車両VLの前部および後部の例えばバンパに設けられたレーザレーダにより車両VLの前方および後方に存在する障害物までの距離xを計測する周辺監視センサ70と、ブレーキペダルの操作量を検出し操作量が所定値を超えた場合にON信号を出力するブレーキ操作量センサ71と、アクセルペダルの操作量を検出し操作量が所定値を超えた場合にON信号を出力するアクセル操作量センサ72と、変速機のシフトレバー位置を示すシフト位置信号を出力するシフト位置センサ73、ドライバがシートに着座している(ON)か否(OFF)かを検出する着座センサ74と、ドライバのシート背もたれの角度(シート角)を検出し、所定の角度以上倒されている場合にOFF信号を、そうでない場合にON信号を出力するシート角度センサ75と、ドアの開閉状態を検出するドア開閉センサ76と、ドライバによるステアリングの把持状態を検出し把持されていない場合にOFF信号を、そうでない場合にON信号を出力するハンドル把持センサ77と、ドライバにより操作され、後述する車両停止保持制御を開始するための信号を発生する開始操作スイッチ78と、後続車により追突されたときに車両VLの前後加速度の変化に応じて追突されたことを検出する追突センサ79と備えている。なお、上記各センサは、それぞれ、公知のものを用いることができ、詳細な説明は省略する。
【0063】
盗難防止ECU8は、コンピュータにより構成され、予め登録されたドライバでない者によるドア開閉操作またはエンジン始動操作やイグニッションキー部を損傷することによるエンジン始動操作等、正しい操作によらずに車両VLが移動されるような場合に、緊急情報を出力して車両VLに搭載された警報装置のブザーを作動させたり、車外の警備業者へ緊急通報のための通信を行ったりするものである。本実施形態では、この盗難防止ECU8からの緊急情報を車内LANバス6を介して後述するブレーキ制御ECU1へ入力し、車両停止保持制御を開始することができる。
【0064】
次に、以上のようなハードウェア構成を備える第1実施形態の車両停止保持装置において、ブレーキ制御手段としてのブレーキ制御ECU1が実行する制御フローについて説明する。
【0065】
図3は、本第1実施形態のメインフローチャートを示している。本フローチャートは、ブレーキ制御ECU1により、イグニッションオンとともに処理が始められ、所定の制御周期(例えば、5〜10ms)で繰り返し実行される。
【0066】
ステップS100でイニシャルチェックが行われる。このイニシャルチェックでは、油圧ブレーキ装置2および電動PKB3の各アクチュエータの動作チェックを行う。
【0067】
すなわち、油圧ブレーキ装置2では、各電磁弁に実際に通電し、ブレーキ制御ECU1側でそれぞれの端子電圧のチェックを行うことで電磁弁の断線チェックを行ったり、油圧センサ30、19a、19b、29a、29bの検出値から油圧異常を判断して、故障個所の特定を行う。
【0068】
また、電動PKB3では、実際に通電したときの検出電流が正常か、電動PKBのモータが正常に回転しているか等を判定し、故障個所の特定を行う。なお、故障が発見された場合には、ブレーキ装置各部で異常動作の発生など致命的な状態にならないよう、故障診断の後、制御の禁止、代替制御への切り替え、警告灯の点灯などの処置ができるようシステム構成されている。
【0069】
ステップS110で、車輪速度センサ5、油圧ブレーキ装置2の各圧力センサセンサ、さらには、センサ群7の各種センサからの入力処理を行う。
【0070】
ステップS120で、アンチロックブレーキ(ABS)制御、車両VLの横加速度やヨーレートを検出してそれらが所定値以下となるよう、すなわち車体の安定性を確保できるよう各輪の制動力を制御する横滑り防止(VSC)制御、および車輪速度が車体速度より大きくなってスリップ量が所定値以上の場合にエンジン出力および制動力を制御してスリップ量を小さくするトラクション(TRC)制御が、それぞれ、走行状況に応じて行われ、それぞれブレーキ装置に対する目標制動力が制動要求値として設定される。なお、車体速度は、ブレーキ制御ECU1において、各車輪速度センサ5の検出値より、各輪の車輪速度および従動輪(前輪駆動車では左右後輪)の車輪速度より演算する。
【0071】
ステップS130で、後述するように、停止保持制御の制御モードを選択する。本第1実施形態では、各車輪速度センサ5の正常/異常状態に応じた移動量の演算モードの選択、および、第1ブレーキ手段としての油圧ブレーキ装置2および第2ブレーキ手段としての電動PKB3の正常/異常状態に応じた停止保持制御の制御モードを選択する。
【0072】
ステップS140で、選択された制御モードでの停止保持制御を、後述する制御フローに基づき行い、各ブレーキ装置の目標制動力を制動要求値として設定する。
【0073】
ステップS150で、発進のためにドライバによりアクセルペダルが踏み込まれると、停止保持制御の動作を中断して制動力を解除し、直ちにアクセルペダルの操作量(アクセル開度)に応じたエンジン出力を発生させる。
【0074】
ステップS160で、上記ステップS120で設定された制動要求値、およびステップS140で設定された停止保持制御における制動要求値のうち、最も大きい制動要求値が選択される。これにより、各ブレーキ制御システム間の調停が行われる。なお、油圧ブレーキ装置2に対する制動要求値と電動PKB3に対する制動要求値とはそれぞれ独立に扱うことにより、両者が同時に制動力を発生することができる。
【0075】
ステップS170で、イグニッションオン中のフェールセーフチェックを行う。すなわち、ブレーキ制御ECU1、油圧ブレーキ装置2、電動PKB3、およびその他各センサの状態を常時診断する。故障が検出されると、車両VLが危険な状態にならないよう所定の処置を行う。
【0076】
ステップS180では、ステップS160で選択された制動要求値が、油圧ブレーキ装置2に対するものであるときに、第1作動信号により第1の制動力が目標制動力となるよう制御される。
【0077】
ステップS185では、ステップS160で選択された制動要求値が、電動PKB3に対するものであるときに、第2作動信号により第2の制動力が目標制動力となるよう制御される。
【0078】
ステップS190では、TRC制御におけるエンジン出力制御など、アクセル操作と直接関連しないエンジン出力制御のためのエンジン出力指令値が出力される。
【0079】
次に、上記ステップS130での処理、すなわち図4および図5に示すフローチャートにしたがって実行される停止保持制御モードの選択処理について説明する。なお、このステップS130での処理に必要な、各車輪速度センサと制動力付与手段としての油圧ブレーキ装置2および電動PKB3との動作状態が正常か異常かに関する情報が、前回の制御周期でのステップS170でのフェールセーフ処理により得られている。
【0080】
ステップS200で、左後輪の車輪速度センサ5RLが正常か否かを判定し、YES(正常)ならばステップS202へ移行し、NO(異常)ならばステップS204へ移行する。
【0081】
ステップS202では、左後輪の車輪速度センサ5RLが正常である場合において、右後輪の車輪速度センサ5RRが正常か否かを判定し、YES(正常)ならばステップS210へ移行し、NO(NO)ならばステップS208へ移行する。
【0082】
ステップS204で、左後輪の車輪速度センサ5RLが異常である場合において、右後輪の車輪速度センサ5RRが正常か否かを判定し、YES(正常)ならばステップS212へ移行し、NO(異常)ならばステップS206へ移行する。
【0083】
ステップS206で、後輪の車輪速度センサ5RLおよび5RRがともに異常である場合において、前輪の車輪速度センサ5FLおよび5FRがともに正常であるか否かを判定し、YES(ともに正常)ならばステップS214へ移行し、NO(少なくとも一方が異常)ならばステップS216へ移行する。
【0084】
すなわち、左右後輪の車輪速度センサセンサ5RLおよび5RRがともに正常のときは、ステップS210で、車両VLの移動量の演算を、通常モード(後述するステップS402)で行うためのフラグを立てる。
【0085】
左後輪の車輪速度センサ5RLが正常で、右後輪の車輪速度センサ5RRが異常であるときは、ステップS208で、移動量の演算を、移動量演算バックアップ1モード(後述するステップS406)で行うためのフラグを立てる。
【0086】
左後輪の車輪速度センサ5RLが異常で、右後輪の車輪速度センサ5RRが正常であるときは、ステップS212で、移動量の演算を、移動量演算バックアップ2モード(後述するステップS410)で行うためのフラグを立てる。
【0087】
左右後輪の車輪速度センサ5RLおよび5RRがともに異常であるときは、左右前輪の車輪速度センサ5FLおよび5FRがともに正常ならば、移動量の演算を、ステップS214で、移動量演算バックアップ3モード(後述するステップS414)で行うためのフラグを立て、5FLまたは5FRの少なくとも1つが異常ならば、ステップS216で移動量演算を禁止するフラグを立てる。
【0088】
以上の、移動量演算モードの選択の後、ステップS218で、電動PKB3が正常か否かを判定する。電動PKB3が正常ならば、ステップS220で油圧ブレーキ装置2が正常か否かを判定する。
【0089】
正常、すなわち、電動PKB3および油圧ブレーキ装置2がともに正常のときは、ステップS226で、停止保持制御を通常制御モードで行うためのフラグを立てる。
【0090】
異常、すなわち、電動PKB3が正常かつ油圧ブレーキ装置2が異常であるときは、ステップS224で、停止保持制御を特殊制御2モードで行うためのフラグを立てる。
【0091】
一方、ステップS218で電動PKB3が異常と判定されたときも、ステップS222で油圧ブレーキ装置2が正常か否かが判定される。
【0092】
正常、すなわち、電動PKB3が異常かつ油圧ブレーキ装置2が正常であるときは、ステップS228で、停止保持制御を特殊制御1モードで行うためのフラグを立てる。
【0093】
異常、すなわち、電動PKB3および油圧ブレーキ装置2がともに異常であるときは、ステップS230で、停止保持制御を行わない制御禁止のためのフラグを立てる。
【0094】
次に、ステップS140での停止保持制御の制御フロー(図6)について説明する。
【0095】
ステップS300で、停止保持状態にあるか否かを判定する。具体的には、車速が0の状態が3秒以上経過しているかにより判定する。すなわち、このステップS300での処理が停止保持判定手段の機能に相当する。なお、停止保持状態は、ドライバの操作の結果もたらされるものであり、このステップでの処理は停止保持意志判定手段の機能に相当するとみなすことができる。
【0096】
ステップS300での判定の結果、NOであればメインフローに戻り、YESであればステップS310へ進む。
【0097】
ステップS310では、停止保持制御が初回であるかを判定し、初回であればステップS315で移動量をクリア(0にリセット)し、または、初回でなければそのまま、ステップS320へ進む。
【0098】
ステップS320では移動量を、次のように、図7に示すフローチャートにしたがって演算する。
【0099】
上記ステップS130の停止保持制御モード選択の処理において、選択された移動量演算モードのフラグに応じて、ステップS402、S406、S410、S414、S416のいずれかの処理が行われる。
【0100】
なお、各輪の移動量は、図3に示すメインルーチンの制御周期(演算周期)とはそれぞれ独立に演算される。すなわち、各輪の車輪速度センサにおいて、車輪の回転に伴い各センサにパルス出力があるたびに、そのパルス数を積算することにより各輪の移動量が演算される。
【0101】
ステップS400で通常演算モードが選択された場合は、移動量を従動輪である左右後輪の移動量の平均値として算出する(S402)。
【0102】
ステップS404で移動量演算バックアップ1モードが選択された場合は、移動量を、正常なセンサをもつ従動輪である左後輪の移動量により設定する。
【0103】
ステップS408で移動量演算バックアップ2モードが選択された場合は、移動量を、正常なセンサをもつ従動輪である右後輪の移動量により設定する。
【0104】
ステップS412で移動量演算バックアップ3モードが選択された場合は、移動量を、正常なセンサをもつ駆動輪である左右前輪の移動量の平均値として算出する。このように、駆動輪の移動量を用いる場合は、誤差を少なくするために片輪ではなく両輪の平均値としている。
【0105】
ステップS416では、前記ステップS216で設定された移動量演算禁止を表すフラグにより、移動量の演算を行わず、同時に、停止保持制御禁止のフラグを立てる。
【0106】
すなわち、このステップS416は、制動力付与手段に異常がなくても、車輪速度センサに異常があり移動量が演算できない場合にも、停止保持制御を行わないようにするため制御禁止のフラグを立てる操作である。
【0107】
以上により、ステップS320での移動量演算処理が行われる。
【0108】
次に、ステップS330で、停止保持制御における、制動開始を決める距離しきい値Lを、周辺監視センサ70により常時、計測値が出力されている障害物との距離xに応じて補正する。すなわち、距離しきい値Lは図8の線図に示すように、障害物との距離xに応じて大きくなるよう設定されている。なお、障害物との距離xが極めて小さい範囲では、距離しきい値Lを0とし、一方、障害物との距離xが大きい範囲では一定値に設定されている。
【0109】
なお、この距離しきい値Lは本発明の制動開始しきい値に相当する。
【0110】
制動開始距離しきい値Lが設定されると、ステップS340で、演算された車両VLの移動量(の絶対値)が、距離しきい値Lより大きいか否かを判定し、NOであればメインルーチンに戻り、移動量が距離しきい値Lより大きくなるまで繰り返される。
【0111】
移動量が距離しきい値Lより大きくなると、ステップS350で通常制御モードのフラグ(S226)が立っているか、ステップS370で特殊制御1モードのフラグ(S228)が立っているか、ステップS380で特殊制御2モードのフラグ(S224)が立っているかが、それぞれ図6に示す分岐条件で判定される。
【0112】
通常制御、特殊制御1および特殊制御2のいずれの場合でもない場合、すなわち、ステップS230またはS416で制御禁止のフラグが立てられた場合は、ステップS390で、電動PKB3及び油圧ブレーキ装置2に対して、制御禁止要求を出す。
【0113】
次に、通常制御モードでの処理内容(図9)について説明する。
【0114】
まず、ステップS351で距離しきい値Lが予め設定されている制動勾配しきい値Lslowより大きいか否かを判定する。判定の結果、YESならば、障害物までの距離xが長いので緩制動モードを選択してステップS352へ移行し、NOならば、障害物までの距離xが短いため急制動モードを選択してステップS356へ移行する。
【0115】
緩制動モードでは、ステップS352で、電動PKB3がロック状態か否かを、前回のステップS355の処理結果である状態フラグにより判定する。
【0116】
ロック状態であれば停止保持制御のルーチンに戻り、ロック状態でなければステップS353へ進む。
【0117】
ステップS353では、緩制動モードであるので電動PKB3を駆動するために発生すべき制動力(第2制動力)の目標値(目標制動力)を設定し、これを制動要求値とする。
【0118】
ステップS354では、電動PKB3のモータがロック状態になったか否かを、モータの回転が停止したかまたはモータ電流が所定値以上となったかにより判定し、NOならば停止保持制御のルーチンに戻って処理を繰り返し、YESならば、ステップ355に進む。
【0119】
ステップS355では、電動PKB3の動作状態のフラグをロックにするとともに、電動PKB3の作動信号(第2作動信号)を解除してロック状態を維持し、停止保持制御のルーチンに戻る。
【0120】
一方、ステップS351で急制動モードが選択されると、ステップS356で、油圧ブレーキ装置2を駆動するため、制動力の制御周期毎の増加勾配b1を設定し、これをもとに制動要求値を求める。これにより、制御周期毎に、目標制動力=目標制動力+b1と更新されて制動力が増加する。この増加勾配b1は、急制動となるような値が予め設定されている。
【0121】
ステップS357で車速が0であるかを判定し、NOであれば車両移動中であるので停止保持制御のルーチンに戻って繰り返し、YESであれば車両VLが停止したのでステップS358に進む。
【0122】
ステップS358では、停止保持のための制動力を、油圧ブレーキ装置2による第1制動力から電動PKB3による第2制動力へ切り替えるために、まず電動PKB3へ目標制動力を設定し、制動要求値とする。なお、このステップでは油圧ブレーキ装置2の制動力は解除しない。
【0123】
ステップ359で、電動PKB3による第2制動力が、車両VLを停止保持している油圧ブレーキ装置2による第1制動力相当の値になったか、または電動PKB3のモータがロックしたかを判定し、NOであれば停止保持制御のルーチン戻って繰り返し、YESならば油圧ブレーキ装置2への作動信号(第1作動信号)および電動PKB3への作動信号(第2作動信号)をともに解除するよう各制動要求値を設定する。これにより、第1制動力は0になり、一方第2制動力は解除されず、この第2制動力により車両VLは停止保持される。
【0124】
以上のように、通常制御モードでは、障害物との距離xが長いときには緩制動モードが選択されて、電動PKB3に比較的緩やかな増加勾配により制動力を発生させて車両VLを減速、停止および停止保持する。
【0125】
また、障害物との距離xが短いときには急制動モードが選択されて、まず油圧ブレーキ装置2により所定の比較的急な増加勾配で制動力を増加させて車両VLを停止させる。車両停止した後は、電動PKB3の制動力を車両停止保持可能な大きさまで増加させた後に、電動PKB3の作動を解除するとともに油圧ブレーキ装置2の作動を解除して、車両停止保持を作動解除された電動PKB3の第2制動力のみにより行う。
【0126】
次に、電動PKB3が異常状態にあるときに実行される特殊制御1モードでの処理内容(図10)について説明する。
【0127】
まず、ステップS371で、上記ステップS351と同様、距離しきい値Lが予め設定されている制動勾配しきい値Lslowより大きいか否かを判定する。判定の結果、YESならば、障害物までの距離xが長いので緩制動モードを選択してステップS372へ移行し、NOならば、障害物までの距離xが短いため急制動モードを選択してステップS373へ移行する。
【0128】
ステップS372では、油圧ブレーキ装置2を緩制動モードで駆動するため、制動力の制御周期毎の増加勾配b2を設定して、この増加勾配b2を前回の目標制動力に加算することにより目標制動力を更新し、これを制動要求値とする。この増加勾配b2は、緩やかな増加勾配となるよう値が予め設定されている。
【0129】
一方、ステップS373では、油圧ブレーキ装置2を急制動モードで駆動するため、制動力の制御周期毎の増加勾配b1を設定して、この増加勾配b1を前回の目標制動力に加算することにより目標制動力を更新し、これを制動要求値とする。この増加勾配b1は、急な増加勾配となるよう値が予め設定されており、b1>b2の関係がある。
【0130】
上記目標制動力が設定されると、ステップS374で、車両停止状態(車速=0)か否かが判定され、NOであれば停止保持制御ルーチンへ戻って繰り返され、YESならばステップS375へ進む。
【0131】
ステップS375では、油圧ブレーキ装置2による停止保持制動が開始されてからの制動継続時間が所定値T1を越えたか否かを判定する。この所定値T1は、油圧ブレーキ装置2が備える各電磁弁のソレノイドへの連続通電による発熱を考慮して設計的に決まる安全時間である。この判定の結果、NOであれば停止保持制御のルーチンに戻って繰り返し、YESであれば、警報を出してドライバに注意を喚起する(ステップS376)。
【0132】
警報を出した後、ステップS377で、油圧ブレーキ装置2による制動継続時間が、所定値T2を越えたか否かを判定する。この所定値T2は、上記T1より大きい値であり、ソレノイドへの連続通電可能な限界時間である。
【0133】
制動継続時間がT2以下の場合には停止保持制御ルーチンへ戻り、制動継続時間がT2を越えたら、ステップS378で、油圧ブレーキ装置2の保護のため、第1作動信号を解除、すなわち第1制動力を解除し、停止保持制御ルーチンへ戻る。
【0134】
基本的にはソレノイドの連続通電可能時間の限界値は無限時間であることが望ましい。その場合には、ステップS374〜S378の処理は不要となる。
【0135】
次に、油圧ブレーキ装置2が異常状態にあるときに実行される特殊制御2モードでの処理内容(図11)について説明する。この特殊制御2モードは、上記通常制御モードにおける緩制動モードでの処理(ステップS352からS355)と同じである。
【0136】
まず、ステップS381で、上記ステップS352と同様、電動PKB3がロック状態か否かを、前回のステップS384の処理結果である状態フラグにより判定する。
【0137】
ステップS382では、電動PKB3を駆動するために発生すべき制動力(第2制動力)の目標値(目標制動力)を設定し、これを制動要求値とする。
【0138】
ステップS383では、電動PKB3のモータがロック状態になったか否かを、モータの回転が停止したかまたはモータ電流が所定値以上となったかにより判定し、NOならば停止保持制御のルーチンに戻って処理を繰り返し、YESならば、ステップ384に進む。
【0139】
ステップS384では、電動PKB3の動作状態のフラグをロックにするとともに、電動PKB3の作動信号(第2作動信号)を解除してロック状態を維持し、停止保持制御のルーチンに戻る。
【0140】
以上、停止保持制御では、図3のステップS140、詳しくは図6および図9ないし図11で示されるフローチャートにしたがった処理により、通常制御、特殊制御1および特殊制御2のいずれかのモードが選択されて、車両VLの停止保持のための油圧ブレーキ装置2または電動PKB3に対する目標制動力が設定される。
【0141】
このように設定された目標制動力に基づき、ステップS180で油圧ブレーキ装置2に目標制動力を発生するよう第1作動信号を出力し、あるいは、ステップS185で電動PKB3に目標制動力を発生するよう第2作動信号を出力する。
【0142】
なお、停止保持制御が継続中に、ドライバによりアクセルペダルが踏み込まれると、上述のように、ステップS150において、割り込みが発生し、停止保持制御が解除され車両VLはアクセル操作量に応じたエンジン出力により発進する。
【0143】
本第1実施形態によれば、車両VLが停止保持状態にある、またはドライバが停止保持意志を有する状態にあると判定された場合に、車両VLが何らかの理由で意図しない移動が発生すると、その移動量が距離しきい値Lより大きくなったら制動力を所定勾配で増加させることにより、停止保持中の車両移動を抑制することができる。
【0144】
このとき、距離しきい値Lを、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、小さくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には少ない移動量でも停止保持制御を開始させることができ、安全性を高めることができる。
【0145】
また、車両VLと周辺の障害物との距離xに応じて、距離xが小さいときは高応答特性を持つ油圧ブレーキ装置による急制動、距離xが大きいときはエネルギー効率の高い電動PKBによる緩制動を使い分けることができる。
【0146】
さらに、第1ブレーキ手段(油圧ブレーキ装置)に異常が発生した場合は、第2ブレーキ手段(電動PKB)により緩制動モードでの停止保持制御を行い、逆に第2ブレーキ手段に異常が発生した場合には、第1ブレーキ手段により急制動モードおよび緩制動モードでの停止保持制御を行うことができ、フェールセーフ性能を備えた車両停止保持装置を得ることができる。
【0147】
なお、車輪速度センサに異常が生じた場合は、その故障個所に応じて、2つの従動輪の車輪速度センサ出力の平均値を利用したり、正常動作している片方の車輪速度センサ出力を利用したり、あるいは、2つの駆動輪の車輪速度センサ出力の平均値を利用したりすることができる。
【0148】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の車両停止保持装置について説明する。本第2実施形態は、上述した図1の全体構成および図2の油圧ブレーキ装置2の構成と図3のメインフローチャートの処理内容は、前記第1実施形態と同じであるので、これらについては説明を省略する。
【0149】
本第2実施形態は、メインルーチンのステップS140での処理(停止保持制御)の一部のみが、上記第1実施形態と異なるので、以下、この異なる部分についてのみ説明し、同じステップには同一の符号を付して説明を省略する。
【0150】
図12は、第2実施形態の停止保持制御のルーチンを示したものである。
【0151】
ステップS300で、第1実施形態と同様、停止保持状態か(または停止保持意志状態か)の判定を行い、停止保持状態と判定されたら、ステップS332へ進む。
【0152】
ステップS332では、停止保持制御における制動開始を決める時間しきい値Tを、周辺監視センサ70により常時、計測値が出力されている障害物との距離xに応じて補正する。すなわち、時間しきい値Tは、上記距離しきい値Lの補正方法と同様、図13に示す線図の如く、障害物との距離xに応じて大きくなるよう設定されている。なお、障害物との距離xが極めて小さい範囲では、時間しきい値Tを0とし、一方、障害物との距離xが大きい範囲では一定値に設定されている。
【0153】
次に、ステップS342で、車両VLの移動時間が設定された時間しきい値Tより大きいか否かを判定し、NOであればメインルーチンに戻り、YESであれば、上記第1実施形態と同様、ステップS350以降へ進む。
【0154】
なお、ステップS342で用いる移動時間は、メインルーチンとは独立に、図14に示す移動時間演算ルーチンにしたがって算出される。このルーチンは、車両VLの駆動軸(変速機出力軸)の回転センサ(図示せず)に、駆動軸回転に伴うパルス出力が発生するたびに割り込み処理が行われる。
【0155】
すなわち、ステップS500で、停止保持制御状態にあるかを、ステップS300での判定結果に基づき判定する。NO、すなわち停止保持制御中でない場合は、直ちにこの割り込みルーチンを抜ける。
【0156】
YESでかつ停止保持制御中の初回の割り込みであれば、ステップS502で現在の時刻を移動開始時刻として記憶した後、この割り込みルーチンを抜け、また、YESで初回の割り込みでなければ、そのままステップS504へ進む。
【0157】
ステップS504では、前回の割り込み時刻と今回の割り込み時刻との差より割り込み間隔Δt1を算出する。
【0158】
ステップS506では、演算された割り込み間隔Δt1が所定値TWを超えているか否かを判定する。所定値を超えていれば、パルス間隔が非常に長くなり移動状態とみなすことが困難となるため、ステップS508で再度、現在の時刻を移動開始時刻として記憶する。
【0159】
ステップS510で、移動時間を、移動開始時刻から今回の割り込み時刻までの時間として算出し、割り込み処理を抜ける。
【0160】
このように算出される、移動時間、すなわち、停止保持状態または停止保持意志状態にあるときに車両VLが移動した場合の移動していた時間が、時間しきい値Tを超えたら、通常制御、特殊制御1または特殊制御2のいずれかの制御モードにより、車両VLを停止保持する制御を行う。
【0161】
本第2実施形態によれば、車両VLが停止保持状態にある、またはドライバが停止保持意志を有する状態にあると判定された場合に、車両VLが何らかの理由で意図しない移動が発生すると、その移動の継続時間が時間しきい値Tより大きくなったら制動力を所定勾配で増加させることにより、停止保持中の車両移動を抑制することができる。
【0162】
このとき、時間しきい値Tを、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、小さくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には移動開始後直ちに停止保持制御を開始させることができ、安全性を高めることができる。
【0163】
さらに、上記第1実施形態と同様、車両VLと周辺の障害物との距離xに応じて、距離xが小さいときは高応答特性を持つ油圧ブレーキ装置による急制動、距離xが大きいときはエネルギー効率の高い電動PKBによる緩制動を使い分けることができる。
【0164】
また、第1ブレーキ手段(油圧ブレーキ装置)に異常が発生した場合は、第2ブレーキ手段(電動PKB)により緩制動モードでの停止保持制御を行い、逆に第2ブレーキ手段に異常が発生した場合には、第1ブレーキ手段により急制動モードおよび緩制動モードでの停止保持制御を行うことができ、フェールセーフ性能を備えた車両停止保持装置を得ることができる。
【0165】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態の車両停止保持装置について説明する。本第3実施形態は、上述した図1の全体構成および図2の油圧ブレーキ装置2の構成は、前記第1実施形態と同じであるので、これらについては説明を省略する。
【0166】
本第3実施形態は、図15に示すインフローチャートが、次の点で、第1および第2実施形態と異なっている。
【0167】
すなわち、本第3実施形態では、停止保持制御モードの選択(ステップS130)を行わず、さらに、ステップS145で、停止保持制御の開始、実行を、移動速度の大きさに基づき判定するものである。以下、上記第1および第2実施形態と、同じ処理ステップには同一符号を付して説明を省略し、異なる処理ステップのみについて説明する。
【0168】
ステップS300で、第1および第2実施形態と同様、停止保持状態か(または停止保持意志状態か)の判定を行い、停止保持状態と判定されたら、ステップS334へ進む。
【0169】
ステップS334では、停止保持制御における制動開始を決める速度しきい値Vを、周辺監視センサ70により常時、計測値が出力されている障害物との距離xに応じて補正する。すなわち、速度しきい値Vは、上記距離しきい値Lや時間しきい値Tの補正方法と同様、図17に示す線図の如く、障害物との距離xに応じて大きくなるよう設定されている。なお、障害物との距離xが極めて小さい範囲では、速度しきい値Tを0とし、一方、障害物との距離xが大きい範囲では一定値に設定されている。
【0170】
次に、ステップS600で、車両VLの移動速度が設定された速度しきい値Vより大きいか否かを判定し、NOであればメインルーチンに戻って処理が繰り返され、YESであればステップS610へ進む。
【0171】
なお、ステップS600で用いる移動速度は、メインルーチンとは独立に、図18に示す移動速度演算ルーチンにしたがって算出される。このルーチンは、車両VLの駆動軸(変速機出力軸)の回転センサ(図示せず)に、駆動軸回転に伴うパルス出力が発生するたびに割り込み処理が行われる。
【0172】
すなわち、駆動軸の回転センサにパルス出力が発生すると、ステップS700で、今回のパルス発生の時刻と前回のパルス発生の時刻との差分Δtを算出する。
【0173】
次に、ステップS710で、移動速度を予め設定された定数KとΔtとの比、すなわち、移動速度=K/Δtにより算出する。ここで、Kは駆動軸1回転による車両VLの移動距離を回転センサの一周分の歯数、すなわち駆動軸1回転で発生するパルス数で除したものである。
【0174】
この処理が、駆動軸回転パルスが発生するたびに繰り返され、移動速度が算出される。
【0175】
このように算出された移動速度が、ステップS600で速度しきい値Vを超えたと判定されると、ステップS610で、油圧ブレーキ装置2の制動力の増加勾配(制御周期毎の増加量)Biを演算する。具体的には、図19に示すように、周辺監視センサ70により検出される障害物との距離xに応じて、障害物までの距離xが大きいほど勾配Biが小さくなるよう設定される。
【0176】
ステップS620では、目標制動力が油圧ブレーキ装置2の最大発生制動力(MAX)を超えているか否かを判定し、NOならばこのままステップS640へ進み、YESならばこれ以上制動力を増加させないようにステップS630で増加量Bi=0とした後、ステップS640へ進む。
【0177】
ステップS640では、油圧ブレーキ装置2の目標制動力を前回の目標制動力に増加勾配である増加量Biを加えた値で更新する。
【0178】
ステップS650で、制動要求値として更新された目標制動力を設定する。
【0179】
本第3実施形態によれば、車両VLが停止保持状態にある、またはドライバが停止保持意志を有する状態にあると判定された場合に、車両VLが何らかの理由で意図しない移動が発生すると、その移動速度が速度しきい値Vより大きくなったら制動力を所定勾配で増加させることにより、停止保持中の車両移動を抑制することができる。
【0180】
このとき、速度しきい値Vを、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、小さくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には小さな移動速度でも停止保持制御を開始させることができ、安全性を高めることができる。
【0181】
さらに、制動力の増加勾配を、車両VLと周辺の障害物との距離xが小さくなるに応じて、大きくなるよう設定することにより、距離xが小さい場合には大きな増加勾配、すなわち制動力を急激に増加させることにより、移動距離を短くして車両を停止させることができる。
【0182】
(他の実施形態)
〔1〕上記各実施形態では、ブレーキ制御ECU1は停止保持制御を開始するための判定条件として、ステップS300(図6、図12または図16)において、車両停止状態(車速=0)が3秒経過したか否かにより判定することとしたが、これに限らず、次のように種々変更することができる。
【0183】
(a)シフト位置センサ73からの信号に基づき、変速機のシフトレバー位置が、車輪に駆動力を発生しないPまたはNポジションにあるときに、車両停止状態、または、ドライバの車両停止保持意志を表している状態であるとして、停止保持制御を開始、あるいは実行するように設定することができる。なお、ステップS300でこのように判定するすることで、シフトレバー位置が上記以外、すなわちD、2、またはLポジションにあるときには停止保持制御モードに入らないようにすることができる。
【0184】
(b)ドライバにより開始操作スイッチ78が操作された場合に、このスイッチ操作信号に応じて、停止保持制御を開始するように設定してもよい。この場合、開始操作スイッチ78の操作信号は、ドライバの車両停止保持意志そのものを表している。
【0185】
(c)エンスト(エンジンストップ)状態で、ブレーキ操作量センサ71の検出値によりブレーキが踏み込まれていると判定される場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0186】
(d)ドア開閉センサ76により少なくとも1つのドアが開状態にあるか、または、シート角度センサ75よりON信号、すなわちシート背もたれが所定角度以上倒されているか、または、着座センサ74からOFF信号すなわち着座されていない状態であるかのいずれかが認められた場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0187】
(e)アクセル操作量センサ72の検出値よりアクセルが踏み込まれていないと判定され、ハンドル把持センサ77からのOFF信号によりドライバがステアリングを把持していないと判定され、かつ、ブレーキ操作量センサ74の検出値によりブレーキが踏み込まれていないと判定される場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0188】
(f)車速が0であるときに、追突センサ79からの出力から、後続車によって追突されたと判定される場合に、ドライバが車両VLを停止保持したいと意図する状態であるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0189】
(g)盗難防止装置としての盗難防止ECU8により、ドライバが正しい手続きや正しい操作によって車両に乗り込んでいないと判定される場合に、所有者が車両を停止保持したいと意図する状態にあるとみなして、車両停止保持制御を行うようにしてもよい。
【0190】
〔2〕上記各実施形態において、制動力付与手段としての第1ブレーキ手段は、図2に示す油圧ブレーキ装置2を用いる例を示したが、これ以外にも、マスタシリンダに与える加圧力を、通常のブレーキペダルの踏力によって与えるとともに、他の制御された油圧機構によってペダル踏力とは独立に与える、すなわちブレーキペダル操作がないときにもマスタシリンダの加圧が可能な、いわゆるハイドローリック・ブースタを用いてもよい。
【0191】
さらに、第1ブレーキ手段として、油圧によらず、各輪毎に電動モータを備え、この電動モータの駆動により直接ブレーキキャリパをブレーキディスクへ押し付けて制動力を発生させる電動ブレーキ装置を用いてもよい。
【0192】
いずれの場合も、作動信号に基づいて第1の制動力を発生させ、この作動信号が解除されると制動力も解除(制動力=0)される第1ブレーキ手段として機能し、制動力を高応答で発生させることができる。
【0193】
なお、これら第1ブレーキ手段は、熱エネルギーの観点から電磁弁等の連続動作を避ける必要があり、その意味で長時間の制動力発生にはふさわしくない。一方、第2ブレーキ手段としての電動PKB3は、モータをロック位置まで駆動して制動力を発生させたのち、モータの作動信号を解除してモータを停止させても発生した制動力は維持されるので、応答性は低いが、熱エネルギーの問題はなく、エネルギー効率も高いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の油圧ブレーキ装置の構成を示す図である。
【図3】第1および第2実施形態のブレーキ制御ECUの処理手順を示すメインフローチャートである。
【図4】停止保持制御モード選択の処理手順を示すフローチャートの一部である。
【図5】停止保持制御モード選択の処理手順を示すフローチャートの一部である。
【図6】第1実施形態の停止保持制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】移動量演算の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】制動開始距離しきい値と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【図9】停止保持制御における通常制御モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【図10】停止保持制御における特殊制御1モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【図11】停止保持制御における特殊制御2モードでの処理手順を示すフローチャートである。
【図12】第2実施形態の停止保持制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図13】制動開始時間しきい値と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【図14】移動時間の演算手順を示すフローチャートである。
【図15】第3実施形態のブレーキ制御ECUの処理手順を示すメインフローチャートである。
【図16】第3実施形態の停止保持制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図17】制動開始速度しきい値と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【図18】移動速度の演算手順を示すフローチャートである。
【図19】制動力増加勾配と車両−障害物間距離との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…ブレーキ制御ECU、2…油圧ブレーキ装置(第1ブレーキ手段)、
21、22…配管系統、3…電動PKB(第2ブレーキ手段)、
31…ブレーキワイヤ、4…車輪、5…車輪速度センサ、
6…車内LANバス、70…周辺監視センサ、71…ブレーキ操作量センサ、72…アクセル操作量センサ、73…シフト位置センサ、74…着座センサ、
75…シート角度センサ、76…ドア開閉センサ、
77…ハンドル把持センサ、78…開始操作スイッチ、79…追突センサ、
8…盗難防止ECU。
Claims (16)
- ドライバに車両の停止保持意志がある状態で、前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、
前記移動状態量に応じて、各輪に与える制動力の大きさを制御する、または/および、複数の制動力付与手段を切り替えて作動させる停止保持制御を行う手段と、
を備えることを特徴とする車両停止保持装置。 - 車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、
ドライバの前記車両の停止保持意志状態を判定する停止保持意志判定手段と、
前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、
前記停止保持意志状態と判定されているとき、検出された前記移動状態量に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、
を備えることを特徴とする車両停止保持装置。 - 前記停止保持意志判定手段は、
前記車両の停止状態が所定時間経過していること、
前記停止保持制御の開始スイッチが操作されること、
変速機のシフト位置が、該変速機を非駆動状態とする位置に設定されていること、
エンジンの非動作中にブレーキペダルが踏まれていること、
前記車両の停車中に後続車により追突されたこと、または、
前記ドライバによる非走行意志を表す操作が検出されたこと、
の少なくとも1つを検出することにより判定することを特徴とする請求項2に記載の車両停止保持装置。 - 前記ドライバによる非走行意志を表す操作は、シート背もたれを倒す操作、ドアを開く操作、前記シートからの離脱操作、ハンドルの把持開放操作、またはアクセルペダルまたはブレーキペダルの踏み込み開放操作の少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の車両停止保持装置。
- 車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、
前記車両の停止保持状態を判定する停止保持判定手段と、
前記車両の移動状態を表す移動状態量を検出する移動状態量検出手段と、
前記停止保持状態と判定されているとき、検出された前記移動状態量に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、
を備えることを特徴とする車両停止保持装置。 - 前記移動状態量検出手段は、前記車両の移動量、移動継続時間または移動速度の少なくともいずれか1つを検出することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。
- 前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止モードにおいて、前記移動状態量の大きさに応じて、前記制動力を増加させることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。
- 前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止モードにおいて、前記移動状態量の大きさに応じて、前記制動力の増加勾配を変更することを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。
- 前記制動力付与手段は、第1作動信号に基づき車両の各車輪に第1の制動力を発生させると共に、該第1作動信号の発生が解除されたとき前記第1の制動力が0に変化する第1ブレーキ手段と、第2作動信号に基づき前記車両の少なくとも一部の車輪に第2の制動力を発生させるとともに、該第2作動信号の発生が解除されたとき前記第2の制動力を前記第2作動信号の発生の解除前の前記第2作動信号に基づく作動状態における値に保つ第2ブレーキ手段と、を備え、
前記ブレーキ制御手段は、前記移動状態量の大きさに応じて、前記第1または第2ブレーキ手段の作動を切り替えることを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。 - 前記ブレーキ制御手段は、前記検出された移動状態量が予め設定した制動開始しきい値を超えたときに前記車両停止モードでの動作を開始することを特徴とする請求項2ないし9のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。
- 前記車両と周辺の障害物との距離を検出する周辺監視手段を更に備え、
前記ブレーキ制御装置は、前記検出された障害物との距離に応じて、前記制動開始しきい値を補正することを特徴とする請求項10に記載の車両停止装置。 - 前記車両と周辺の障害物との距離を検出する周辺監視手段を更に備え、
前記ブレーキ制御装置は、前記車両停止モードにおいて、前記検出された障害物との距離に応じて、前記制動力の増加勾配を変更することを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。 - 前記ブレーキ制御手段は、前記車両停止保持装置のいずれかの部位に異常状態が検出された場合に、該異常状態に応じて前記車両停止モードでの動作を継続するか、または中止するかを選択すること特徴とする請求項2ないし12のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。
- 前記制動力付与手段は、第1作動信号に基づき車両の各車輪に第1の制動力を発生させると共に、該第1作動信号の発生が解除されたとき前記第1の制動力が0に変化する第1ブレーキ手段と、第2作動信号に基づき前記車両の少なくとも一部の車輪に第2の制動力を発生させるとともに、該第2作動信号の発生が解除されたとき前記第2の制動力を前記第2作動信号の発生の解除前の前記第2作動信号に基づく作動状態における値に保つ第2ブレーキ手段と、を備え、
前記ブレーキ制御手段は、前記第1または第2ブレーキ手段のいずれか一方を作動させて前記車両停止モードでの動作を実行中に、該作動中のブレーキ手段に異常が発生したときには、他方のブレーキ手段に切り替えて前記車両停止モードでの動作を継続することを特徴とする請求項2ないし6のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。 - 前記移動状態量は、前記車両停止モードにおける前記車両の移動量、移動速度、または移動継続時間のいずれか1つであることを特徴とする請求項2ないし14のいずれか1つに記載の車両停止保持装置。
- 車両の各輪に制動力を与える制動力付与手段と、
ドライバが正しい手続きで前記車両に乗り込んだか否かを判定し、不正手続きによる乗車と判定されたとき、緊急情報を出力する盗難防止装置と、
前記緊急情報に応じて前記制動力を制御する車両停止モードで動作するブレーキ制御手段と、
を備えることを特徴とする車両停止保持装置。
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