JP2004054048A - 光学部材及び光学部材用有機蒸着膜 - Google Patents
光学部材及び光学部材用有機蒸着膜 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】プラスチック基材と、無機蒸着膜及び有機蒸着膜より構成される多層反射防止膜を有する光学部材であって、前記有機蒸着膜が有機ケイ素化合物と、炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料としたものである光学部材である。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチック基材上に反射防止膜を有する光学部材及びかかる光学部材用の有機蒸着膜に関し、特に、視感反射率が小さく、視感透過率が高いという優れた反射防止性を有するだけでなく、光学部材における、耐衝撃性、密着性、耐熱性、耐摩耗性及び耐アルカリ性に優れ、生産性も良好な光学部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、プラスチック基材に、無機物質を蒸着してなる反射防止膜を設けた光学部材が知られている。かかる光学部材は優れた反射防止性、耐擦傷性を有している。
しかしながら、このような反射防止膜を有する光学部材は、耐衝撃性及び耐熱性が十分ではない。その課題を解決する方法として、例えば、特開昭63−141001号公報に記載されているように、プラスチック基材と反射防止膜との間に有機化合物よりなるプライマ−層を施すことが知られている。
また、特開平8−62401号公報には、有機金属化合物及び/または有機金属化合物に対する酸素ガスの相対的供給量を変化させるプラズマ重合法により、プラスチック基材上に、高屈折率層と低屈折率層との交互積層体からなる反射防止膜を施した光学部材が知られている。
【0003】
しかしながら、特開昭63−141001号公報の光学部材は、プライマ−液をプラスチック基材に塗布し、加熱して硬化させ、その後に反射防止膜を蒸着するため、プライマ−層の膜厚が、均一にならないことがあった。また、前記プライマ−層に関し、プライマ−層を施すのは大気中であり、反射防止膜を施すのは真空中であるため、反射防止膜とプライマ−層との間に異物が入りやすく、さらに最終製品を作るまでの時間が長いという課題を有していた。
また、特開平8−62401号公報の光学部材は、金属酸化物の蒸着膜からなる反射防止膜を有する光学部材よりも反射率が低く、さらに耐擦傷性も劣るものであった。
【0004】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、反射率が小さく、透過率が高いという優れた反射防止性を有するだけでなく、プラスチック基材上における、耐衝撃性、密着性、耐熱性、耐摩耗性及び耐アルカリ性に優れ、生産性も良好な光学部材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した目的は以下の手段により解決された。その手段とは、プラスチック基材と、無機蒸着膜及び有機蒸着膜より構成される多層反射防止膜を有する光学部材であって、前記有機蒸着膜が有機ケイ素化合物と、炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料とした光学部材である。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明では、プラスチック基材上に無機蒸着膜及び有機蒸着膜より構成される多層反射防止膜を有することを特徴とする。
無機蒸着膜は、無機酸化物を蒸着原料とし、従来、反射防止膜として用いられている二酸化ケイ素からなる膜、酸化チタンからなる膜、酸化ジルコニウムからなる膜、酸化ニオブからなる膜、酸化アルミニウムからなる膜、酸化タンタルからなる膜、酸化イットリウムからなる膜などが挙げられる。
【0007】
次に、本発明では有機蒸着膜が有機ケイ素化合物と、炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料としたものであることを特徴とし、有機蒸着膜で用いられる有機ケイ素化合物としては、下記一般式(I)に示される化合物が好ましく用いられる。
(X1〜X4は、それぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基、−OR1基(R1は炭素数1〜6の炭化水素基)、−COOR2基(R2は炭素数1〜6の炭化水素基)または、−NR3 2(R3は炭素数1〜6の炭化水素基))
前記R1〜R3の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ビニル基、アリル基、フェニル基等が挙げられる。
【0008】
一般式(I)で表せる具体的な化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメチルシラノール、ジメチルエトキシシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、メトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、テトラメトキシシラン、ジメチルジメチルアミノシラン、ジアセトキシメチルシラン、アリルジメチルシラン、トリメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、アセトキシトリメチルシラン、トリメトキシビニルシラン、ジエチルジメチルシラン、エチルトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノトリメトキシシラン、フェニルシラン、ジメチルジビニルシラン、3−ヒドロキシ−1−プロピニルトリメチルシラン、2−プロピニルオキシトリメチルシラン、ジメチルエトキシエチニルシラン、ジアセトキシジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、アリルオキシトリメチルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、イソプロペノキシトリメチルシラン、アセトキシメチルトリメチルシラン、N‐メチル−N‐トリメチルシリルアセトアミド、トリメチルプロピルシラン、ベンジルオキシトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、トリメチルシリルベンゾネート、ジメチルフェニルビニルシラン、プロピルトリエトキシシラン、トリプロピルシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシランなどの化合物が挙げられる。
【0009】
本発明における炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物は、酸素及び窒素を任意成分として含むことができ、具体的には次の▲1▼〜▲4▼に示す化合物を好適なものとして挙げることができる。
▲1▼炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物、
▲2▼酸素原子及び/または窒素原子を有する炭素数3〜12の有機化合物、
▲3▼エステル基を有する炭素数3〜12の有機化合物、
▲4▼エーテル基を有する炭素数3〜12の有機化合物
尚、これら▲1▼〜▲4▼に示す有機化合物は単独でもまた2種以上を混合して使用することもできる。
【0010】
上述の▲1▼〜▲4▼の具体的化合物としてはそれぞれ以下のものが挙げられる。
▲1▼炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ドデカン、2−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサンなどの化合物が挙げられる。
▲2▼酸素原子及び/または窒素原子を有する炭素数3〜12の有機化合物の具体例としては、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールなどのアルコ−ル化合物、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミドなどのアミド化合物、ε−カプロラクタムなどの化合物が挙げられる。
▲3▼エステル基を有する炭素数3〜12の有機化合物の具体例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、プロピオン酸メチルなどの化合物が挙げられる。
▲4▼エーテル基を有する炭素数3〜12の有機化合物の具体例としては、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ブチルビニルエーテル、1,2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセタールなどの化合物が挙げられる。
【0011】
前述した蒸着原料である有機ケイ素化合物と、炭素及び水素を必須成分とし、酸素及び窒素を任意成分とするケイ素非含有有機化合物との割合は、本発明で意図する物性を得る観点から、該有機化合物の流量50sccmに対し、有機ケイ素化合物の流量が50sccm〜500sccmの範囲が好ましい。
【0012】
本発明において、反射防止膜は無機酸化物を蒸着原料とする無機蒸着膜と、有機化合物を蒸着原料とする有機蒸着膜の膜構成を有するが、有機蒸着膜は、耐衝撃性を向上するとの観点から、基材側に最も近い位置に設けることが好ましく、さらには反射防止膜の最外層にも併せて設けることが特に好ましい。
また、有機蒸着膜の屈折率は1.42〜1.48の範囲であることが好ましい。二酸化ケイ素からなる層と同等の屈折率にすることによって、従来知られている二酸化ケイ素からなる低屈折率層を前記有機蒸着膜に置き換えることができ、耐衝撃性に良好な部材を得ることが可能である。
【0013】
有機蒸着膜を形成する方法としては、プラズマ法が好ましく用いられる。その理由は、プラズマエネルギーにより励起した粒子は、化学的に活性なエネルギーを持っており、このエネルギーを利用して基板上に有機材料の重合をくり返すことにより、密着性、耐衝撃性に優れた有機膜を形成することが可能となるからである。
プラズマ法においては、酸素ガス、窒素ガス、アルゴンガス及びこれらの混合ガスが用いられる。
酸素ガスは基板との密着性確保及び、耐衝撃性の向上に好適であり、好ましい流量は50sccm〜500sccmの範囲である。窒素ガスは同様に耐衝撃性向上に好適であり、好ましい流量の範囲は同様に50sccm〜500sccmの範囲である。一方、アルゴンガスは屈折率調整に好適であり、好ましい流量は50sccm〜500sccmの範囲である。該プラズマ法では、これらの混合ガスを用いることで、耐衝撃性向上と、屈折率調整を同時に行うことが可能であり特に好ましい。またこれらの混合ガスを用いる場合の好ましい流量は、酸素、アルゴン、窒素共に50sccm〜500sccmである。
プラズマ装置としては、特に制限されないが、例えば図1に示す装置が用いられ、好ましい真空度は、1.5×10−1Pa 〜 5.0×10−3Paである。また、RF(RadioFrequency)のパワ−は、プラズマ発生RF出力0.5KW〜6.0KW、プラズマ偏向コイル出力0.5A〜10.0Aの範囲であることが好ましい。
【0014】
本発明においては、多層反射防止膜が有機蒸着膜と無機蒸着膜が交互に積層されていることが好ましく、さらに、無機蒸着膜が酸化ニオブを蒸着原料とした膜と二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜を交互に蒸着したものが好ましい。具体的には、以下の構成のものが挙げられる。尚、ここでは第1層がプラスチック基板に最も近い層であり、第1の態様では第7層がプラスチック基板から最も遠い層であり、第2の態様では第5層がプラスチック基板から最も遠い層である。
好ましい第1の態様(反射防止膜)
第1層:有機蒸着膜(膜厚:0.01λ〜1.5λ)
第2層:酸化ニオブを蒸着原料とした膜(膜厚:0.01λ〜0.15λ)
第3層:二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜(膜厚:0.03λ〜1.5λ)
第4層:酸化ニオブを蒸着原料とした膜(膜厚:0.05λ〜0.25λ)
第5層:二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜(膜厚:0.01λ〜0.25λ)
第6層:酸化ニオブを蒸着原料とした膜(膜厚:0.05λ〜0.25λ)
第7層:有機蒸着膜(膜厚:0.15〜0.35λ)
好ましい第2の態様(反射防止膜)
第1層:有機蒸着膜(膜厚:0.01λ〜1.5λ)
第2層:酸化ニオブを蒸着原料とした膜(膜厚:0.01λ〜0.15λ)
第3層:二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜(膜厚:0.03λ〜0.25λ)
第4層:酸化ニオブを蒸着原料とした膜(膜厚:0.18λ〜0.6λ)
第5層:有機蒸着膜(膜厚:0.15λ〜0.35λ)
【0015】
また、前記無機蒸着膜が酸化タンタルを蒸着原料とした膜と二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜を交互に蒸着したものも好ましく、具体的には以下の構成のものが挙げられる。尚、第1の態様及び第2の態様と同様に、第1層がプラスチック基板に最も近い層であり、第5層がプラスチック基板から最も遠い層である。
好ましい第3の態様(反射防止膜)
第1層:有機蒸着膜(膜厚:0.01λ〜1.5λ)
第2層:酸化タンタルを蒸着原料とした膜(膜厚:0.01λ〜0.15λ)
第3層:二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜(膜厚:0.03λ〜0.25λ)
第4層:酸化タンタルを蒸着原料とした膜(膜厚:0.18λ〜0.6λ)
第5層:有機ケイ素化合物及び有機非金属化合物を蒸着原料とした有機蒸着膜(膜厚:0.15λ〜0.35λ)
【0016】
本発明で使用するプラスチック基材の材質は、特に限定されず、例えば、メチルメタクリレ−ト単独重合体、メチルメタクリレ−トと1種以上の他のモノマ−との共重合体、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト単独重合体、ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−トと1種以上の他のモノマ−との共重合体、イオウ含有共重合体、ハロゲン含有共重合体、ポリカ−ボネ−ト、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリウレタン、ポリチオウレタンなどが挙げられる。
【0017】
本発明の光学部材は、反射防止膜を施す前に、基板表面をプラズマ処理することができる。プラズマ処理を行う理由は、基板表面にOH基を生成させ、基板と薄膜の密着力を向上させるためである。処理条件としては下記の範囲であることが好ましい。
プラズマ出力:プラズマ発生RF(Radio Frequency)出力 3.5KW〜5.0KW
プラズマ偏向コイル出力 4.0A〜10.0A
使用ガス 酸素 100sccm〜300sccm
処理時間 30sec〜180sec
【0018】
また、本発明の光学部材は、反射防止膜の下に、密着性を向上させるために、下地層として、後述するハイブリッド層形成の際に触媒作用のある金属、例えば、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、白金(Pt)、ニオブ(Nb)及びチタニウム(Ti)から選ばれる少なくとも1種類からなる層を施すことができる。特に好ましい下地層は、より良好な耐衝撃性を付与させるために、ニオブからなる金属層である。
【0019】
本発明の光学部材は、前記プラスチック基材と前記下地層との間に、硬化被膜を有しても良い。
硬化被膜としては、通常、金属酸化物コロイド粒子と下記一般式(II)
(R4)a (R5)bSi(OR6)4−(a+b) ・・・(II)
(式中、R4及びR5は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数2〜8のアルケニル基、炭素数6〜8のアリール基、炭素数1〜8のアシル基、ハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、フェニル基、メルカプト基、メタクリロキシ基及びシアノ基の中から選ばれる1種の有機基を示し、R6は炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアシル基及び炭素数6〜8のフェニル基の中から選ばれる1種の有機基を示し、a及びbは、それぞれ独立に0又は1の整数である)で表される有機ケイ素化合物とからなる組成物が使用される。
【0020】
前記金属酸化物コロイド粒子としては、例えば、酸化タングステン(WO3)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタニウム(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化ベリリウム(BeO)又は酸化アンチモン(Sb2O5)等が挙げられ、単独又は2種以上を併用することができる。
前記硬化被膜を作るコ−ティング液には、従来知られている方法で、液の調整を行うことができる。所望により、硬化触媒を含有させることができ、また塗布時における濡れ性を向上させ、硬化被膜の平滑性を向上させる目的で各種の有機溶剤や界面活性剤を含有させることもできる。さらに、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、老化防止剤等もコーティング組成物及び硬化被膜の物性に影響を与えない限り添加することができる。
【0021】
コ−ティング組成物の硬化は、熱風乾燥または活性エネルギー線照射によって行い、硬化条件としては、70〜200℃の熱風中にて行うことが好ましく、特には90〜150℃の範囲で行うことが好ましい。なお活性エネルギー線としては遠赤外線等があり、熱による損傷を低く抑えることができる。
また、コ−ティング組成物よりなる硬化膜を基材上に形成する方法としては、上述したコ−ティング組成物を基材に塗布する方法が挙げられる。塗布手段としてはディッピング法、スピンコーティング法、スプレー法等の通常行われる方法が適用できるが、面精度の観点からディッピング法、スピンコーティング法が特に好ましい。
【0022】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において得られた光学部材の物性評価は以下のようにして行った。
(1)視感透過率
プラスチックレンズの視感透過率Yは、両面に反射防止膜を有するプラスチックレンズをサンプルとして、日立分光光度計U−3410を用い測定した。
(2)視感反射率
プラスチックレンズの視感反射率Zは、両面に反射防止膜を有するプラスチックレンズをサンプルとして、日立分光光度計U−3410を用い測定した。
(3)耐衝撃性
レンズ中心部厚さ(CT)2.0mmのレンズを作製してFDA(Food and Drug Administration)で定められているドロップボールテストを行い、レンズが破損するまでのドロップボール重量を測定した。
(4)密着性
プラスチックレンズの表面に剃刀にて1mm×1mmの升目を100個作成し、升目上にセロハンテープを貼り、一気にテープをはがし、残った升目の数で評価した。表中、残った升目の数/100で記載した。
100/100は剥離しない目の数が100個であることを意味する。
【0023】
(5)耐摩耗性
プラスチックレンズの表面にスチールウールにて1kgf/cm2の荷重をかけ、10ストローク擦り、表面状態により以下の基準で評価した。
UA:殆ど傷なし
A:細い傷数本あり
B:細い傷多数、太い傷数本あり
C:細い傷多数、太い傷多数あり
D:殆ど膜がはがれた状態
(6)耐熱性
プラスチックレンズをドライオーブンで60℃から、5℃づつ上昇させて1時間加熱し、クラックの発生温度を測定した。
(7)耐アルカリ性
プラスチックレンズをNaOH10%水溶液に20℃、1時間浸漬し、表面状態により以下の基準で評価した。
UA:殆ど変化なし
A:点状に膜のはがれた個所が数個ある状態
B:点状に膜のはがれた個所が全面にある状態
C:点状に膜のはがれた個所が全面にあり、面状にはがれた個所が数個ある状態
D:殆ど全面の膜がはがれた状態
【0024】
実施例1
ガラス製容器に、コロイダルシリカ(スノ−テックス−40、日産化学)90重量部、有機ケイ素化合物のメチルトリメトキシシラン81.6重量部、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン176重量部、0.5N塩酸2.0重量部、酢酸20重量部、水90重量部を加えた液を、室温にて8時間攪拌後、室温にて16時間放置して加水分解溶液を得た。この溶液に、イソプロピルアルコ−ル120重量部、n−ブチルアルコ−ル120重量部、アルミニウムアセチルアセトン16重量部、シリコ−ン系界面活性剤0.2重量部、紫外線吸収剤0.1重量部を加え、室温にて8時間攪拌後、室温にて24時間熟成させコ−ティング液を得た。
アルカリ水溶液で前処理したプラスチック基板(素材:ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト、屈折率1.50、中心厚2.0mm、レンズ度数0.00)を、前記コーティング液の中に浸漬させ、浸漬終了後、引き上げ速度20cm/分で引き上げたプラスチック基板を120℃で2時間加熱して硬化膜(ハードコートA層)を形成した。その後、図1に示す装置にて、プラズマ発生RF(Radio Frequency)出力4.5KW、プラズマ偏向コイル出力6.5A、使用ガスとして酸素300sccm、処理時間60secの条件でプラズマ前処理を行った。
次に、ハードコートA層の上に、第1表に示した条件で第1層〜第7層からなる反射防止膜を形成して、プラスチックレンズを得た。評価結果を第1表に示す。第1表に示すように、視感反射率が0.82%、視感透過率99.0%、耐衝撃性テストのドロップボ−ルの質量は36g、密着性テストは100/100,耐熱性テストは95℃で、耐摩耗性、耐アルカリ性は『UA』であった。
なお、表中LS:530(商品名:信越化学工業(株))は、メチルトリメトキシシランを示す。
【0025】
実施例2〜6
反射防止膜を第1表に示した条件で第1層〜第7層からなる反射防止膜を形成した以外は、実施例1と同様にして光学部材を作成した。その結果を第1表に示す。このようにして得られた光学部材は、実施例1同様、視感反射率、視感透過率、耐衝撃性、密着性、耐摩耗性及び耐アルカリ性に優れたレンズであった。
【0026】
比較例1
第1表に示すように第1層及び第7層を、実施例1で設けた有機蒸着膜の代わりに、二酸化ケイ素からなる膜を施し、プラズマ前処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして光学部材を製造し、同様の評価を行った。その結果を第1表に示す。耐衝撃性テストにおけるドロップボ−ルの重量は14gで耐熱性は70℃であった。
【0027】
比較例2
第1表に示すように第1層及び第7層を、実施例1で設けた2成分からなる有機蒸着膜の代わりに、有機ケイ素化合物からなる1成分の有機蒸着膜を施した以外は、実施例1と同様にして光学部材を製造し、同様の評価を行った。その結果を第1表に示す。耐衝撃性テストにおけるドロップボ−ルの重量は14gで耐熱性は70℃であった。
【0028】
比較例3
第1表に示すように第1層及び第7層を、実施例1で設けた2成分からなる有機蒸着膜の代わりに、ヘキサンからなる1成分の有機蒸着膜を施した以外は、実施例1と同様にして光学部材を製造し、同様の評価を行った。その結果を第1表に示す。耐衝撃性テストにおけるドロップボ−ルの重量は14g、耐熱性は70℃、耐擦傷性は『B』で、耐アルカリ性は『B』であった。
【0029】
比較例4
第1表に示すように第1層及び第7層を、実施例4で設けた2成分からなる有機蒸着膜の代わりに、酢酸ビニルからなる1成分の有機蒸着膜を施した以外は、実施例1と同様にして光学部材を施した。その結果を第1表に示す。耐衝撃性テストにおけるドロップボ−ルの重量は14g、耐熱性は70℃、耐擦傷性は『B』で、耐アルカリ性は『B』であった。
【0030】
【表1】
*1 DGAC;ジエチレングリコ−ルビスアリルカ−ボネ−ト
*2 LS:530;メチルトリメトキシシラン(商品名:信越化学工業(株))
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、耐衝撃性、密着性、耐摩耗性及び耐アルカリ性に優れた光学部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用されるプラズマCVD装置の概略図である。
【符号の説明】
1:プラズマプロセスガス導入口
2:プラズマ発生用RFコイル
3:炭化水素モノマー導入口
4:シリコン系モノマー導入口
5:プラズマ室
6:プラズマ偏光コイル
7:成膜上面用
8:基板保持用ドーム
9:基板
10:基板回転軸
11:成膜下面用
12:排気系へ接続
Claims (20)
- プラスチック基材と、無機蒸着膜及び有機蒸着膜より構成される多層反射防止膜を有する光学部材であって、前記有機蒸着膜が有機ケイ素化合物と、炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物とを蒸着原料としたものである光学部材。
- 前記有機蒸着膜が、ガスプラズマの雰囲気下、有機ケイ素化合物と、炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物とを同時に蒸着させてなる請求項1記載の光学部材。
- 前記ガスプラズマが、反応性ガスプラズマ、非反応性ガスプラズマ及び反応性ガスと非反応性ガスとの混合プラズマから選ばれる1種である請求項2記載の光学部材。
- 前記ガスプラズマが、酸素ガスプラズマである請求項3に記載の光学部材。
- 前記ガスプラズマが、酸素ガス及びアルゴンガスの混合プラズマである請求項3に記載の光学部材。
- 前記ガスプラズマが、酸素ガス、アルゴンガス及び窒素ガスの混合プラズマである請求項3に記載の光学部材。
- 前記有機ケイ素化合物がメチルトリアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、トリメチルアルコキシシラン、テトラアルコキシシランから選ばれる1種である請求項7記載の光学部材。
- 前記ケイ素非含有有機化合物が、炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物、酸素原子及び/または窒素原子を有する炭素数3〜12の有機化合物、エステル基を有する炭素数3〜12の有機化合物、エーテル基を有する炭素数3〜12の有機化合物から選ばれる少なくとも1種の有機化合物である請求項1記載の光学部材。
- 前記ケイ素非含有有機化合物が、炭素数5〜12の飽和炭化水素化合物である請求項9記載の光学部材。
- 前記ケイ素非含有有機化合物が、酢酸ビニルである請求項9記載の光学部材。
- 前記無機蒸着膜が、酸化ニオブ及び二酸化ケイ素を蒸着原料としたものである請求項1〜11のいずれかに記載の光学部材。
- 前記有機蒸着膜が前記プラスチック基材に最も近い位置に設けられた請求項1〜12のいずれかに記載の光学部材。
- 前記有機蒸着膜が前記プラスチック基材に最も近い位置及び最も遠い位置に設けられた請求項13に記載の光学部材。
- 前記多層反射防止膜が高屈折率層と低屈折率層の交互積層体からなり、前記有機蒸着膜が低屈折率層である請求項1記載の光学部材。
- 前記多層反射防止膜が有機蒸着膜と無機蒸着膜が交互に積層されてなる請求項14記載の光学部材。
- 前記無機蒸着膜が酸化ニオブを蒸着原料とした膜と二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜を交互に蒸着したものである請求項16記載の光学部材。
- 前記無機蒸着膜が酸化タンタルを蒸着原料とした膜と二酸化ケイ素を蒸着原料とした膜を交互に蒸着したものである請求項16記載の光学部材。
- ガスプラズマの雰囲気下、有機ケイ素化合物と炭素及び水素を必須成分とするケイ素非含有有機化合物を同時に蒸着させてなる光学部材用有機蒸着膜。
- 屈折率が1.42〜1.48の範囲である請求項19の光学部材用
有機蒸着膜。
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