JP2004017410A - ハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂の製造方法及び樹脂物品 - Google Patents

ハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂の製造方法及び樹脂物品 Download PDF

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高橋 康史
Hodaka Norimatsu
乗松 穂高
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Abstract

【課題】非晶質ポリオレフィン樹脂に薄膜被覆することにより、耐擦傷性および必要に応じて反射防止機能、防眩性、撥水性、親水性、防汚性等を付与して、非晶質ポリオレフィン樹脂基材の特性を生かした当該樹脂被覆物品とその製造方法を提供すること。
【解決手段】非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面を親水化処理し、次いで(A)多官能アクリレート、(B)アミノシランおよび(C)コロイダルシリカを含有するハードコート液を塗布した後、活性エネルギー線を照射してハードコート層を形成させる。ハードコート液中にさらに微粒子および/またはフルオロアルキルシランを添加することにより防眩性、撥水防汚性を付与することができる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は機能性ハードコート被覆で被覆した非晶質ポリオレフィン樹脂の製造方法及び前記樹脂物品に関する。
【0002】
【従来の技術】
非晶質ポリオレフィン樹脂は、その優れた特性から様々な用途に用いられている。例えば、特開平6−168625号公報記載のシクロペンテン系重合体からなるポリレフィン樹脂は電気絶縁性に優れ、吸水性が低いため、高湿度環境下でも寸法安定性に優れる特徴を有している。また、特開平10−152549号公報記載のノルボルネン系開環重合体からなる非晶質ポリオレフィン樹脂は透明性、耐水性、複屈折性等の光学特性に優れる特徴を有し、高い光学特性が要求される商品へ応用されている。具体的には、非晶質ポリオレフィン樹脂はディスプレイパネル等に使用される光学部品、電子部品、透明な自動車部品などに広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、非晶質ポリオレフィン樹脂は表面硬度が小さいため、外部からの応力に対して容易に傷が付きやすく、その結果、応用範囲が制限されている。
【0004】
また、非晶質ポリオレフィン樹脂は構造中に官能基を持たないため、機能性材料を被覆させたり、他の材料と接着させることが困難であり、基材の表面に被覆層が設けられない欠点があった。また、非晶質ポリオレフィン樹脂は表面エネルギーが小さいため、湿式塗布する場合に液がはじきやすく均一に塗布するのが難しい。そのため、非晶質ポリオレフィン樹脂を用いて各種の製品を作製する場合、基材の優位性を十分に発揮できない問題点があった。
【0005】
本発明の課題は、非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面に付着性の優れたハードコート層を被覆することにより、非晶質ポリオレフィン樹脂の耐擦傷性を高めることである。また本発明の課題は、非晶質ポリオレフィン樹脂に薄膜被覆することにより、反射防止機能、防眩性、撥水性、親水性および防汚性等を付与して、非晶質ポリオレフィン樹脂基材の特性を生かした当該樹脂被覆物品およびその製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面を親水化処理し、次いで(A)多官能アクリレート、(B)アミノシランおよび(C)コロイダルシリカを含有するハードコート液を塗布した後、活性エネルギー線を照射してハードコート層を形成させることを特徴とするハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品の製造方法である。
【0007】
本発明において、非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面は親水化処理される。親水化処理としては、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理、オゾン水洗浄、有機過酸化物処理が用いられる。この工程を行うことにより非晶質ポリオレフィン樹脂基材表面が酸化され、その上に被覆される被膜の密着性が改善される。更に基材表面の有機物汚れを除去できる。処理前には約90度の水滴接触角を有する樹脂基材の表面は、親水化処理により、60度以下の水滴接触角を有することが好ましい。親水化処理後の基材表面の元素組成をX線光電子分光法(XPS)で測定すると、親水化処理前に比べて酸素量が多く、その酸素は水酸基、カルボニル基、カルボキシル基の形で樹脂表面近傍にのみ導入されている。これらの官能基が被膜との結合部位となることにより、密着性の良好な被膜が形成できる。このときの樹脂表面での酸素原子の数と炭素原子の数の比(O/C)が0.05以上であれば、更に密着性が良好な被膜が形成できる。
【0008】
本発明におけるハードコート液は(A)多官能アクリレート、(B)アミノシランおよび(C)コロイダルシリカを含有する。以下各成分について説明する。(A)成分である多官能アクリレートとは、分子内に少なくとも2個の水酸基およびすくなくとも2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートである。なお本明細書において、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と、アクリレート又はメタクリレートを(メタ)アクリレートと、アクリル酸又はメタクリル酸を(メタ)アクリル酸という。多官能アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、テトレエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコーリジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、ポリ(ブタンジオール)ジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリイソプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びビスフェノールAジメタクリレートのようなジアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールモノヒドロキシトリアクリレート及びトリメチロールプロパントリエトキシトリアクリレートのようなトリアクリレート類;ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びジ‐トリメチロールプロパンテトラアクリレートのようなテトラアクリレート類;並びにペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレートのようなペンタアクリレート類を挙げることができる。多官能アクリレートは1種または2種類以上一緒に用いられる。
【0009】
(B)成分であるアミノシランはアミノ基または置換アミノ基を有するアルコキシシランである。好ましくは下記式(2)
Si(R(NHR)bNRH)4−a   (2)
ここで、Xは炭素数1〜6のアルコキシキル基であり、R、Rは同一もしくは異なる2価の炭化水素基でありRは水素原子または1価の炭化水素基であり、aは1〜3の整数であり、bは0または1〜6の整数で表される、
アミノ有機官能性シランである。式(2)中、aは2または3であることが好ましく、そしてbは0または1であることが好ましい。
式(2)で表されるアミノシランとしては、例えばn−(2−アミノエチルー3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン塩酸塩及びγ−アニリノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0010】
(C)成分であるコロイダルシリカは、例えば10〜50重量%のSiO(粒径1〜200nm、好ましくは1〜100nm)を有効成分とするコロイダルシリカゾルあるいは粒径1〜200nm、より好ましくは1〜100nmの範囲にあるSiOを含む複合酸化物微粒子に由来することができる。この複合酸化物はSiOと金属酸化物の複合物であり、金属酸化物としては、Al、Sn、Sb、Ta、Ce,La,Fe,Zn,W,Zr,Pd,In及びTiよりなる群から選ばれる1種もしくは2種以上の金属酸化物を挙げることができる。具体例はAl、SnO、Sb、CeO、Ta、La、Fe、ZnO、WO、ZrO、PdO、In及びTiOがある。SiOを含む複合酸化物微粒子として、チタンとケイ素の複合酸化物微粒子(TiO・SiO)、チタンとセリウムとケイ素の複合酸化物微粒子(TiO・CeO・SiO)、チタンと鉄とケイ素の複合酸化物微粒子(TiO・Fe・SiO)、チタンとジルコニウムとケイ素の複合酸化物微粒子(TiO・ZrO・SiO)、チタンとアルミニウムとケイ素の複合酸化物微粒子(TiO・Al・SiO)などを挙げることができる。これらの複合酸化物微粒子中にSiO成分が5モル%以上(モル比 金属:SiO=9.5:0.5 以上)含まれていることが好ましい。
【0011】
前記複合酸化物は溶媒への分散性を高めるために有機シラン化合物で表面改質しても良い。有機シラン化合物の使用量は、複合酸化物微粒子重量に対し、好ましくは20重量%以下である。表面処理は、処理に用いる有機シラン化合物が加水分解基をもったままで行っても、加水分解した後で行っても良い。
【0012】
かかる有機シラン化合物としては、例えばトリメチルメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルジメチルメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルジメチルメトキシシランのような単官能性シラン;ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメトキシジエトキシシランおよびβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシランのような二官能性シラン:メチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、およびβ−(3.4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランのような三官能性シラン;テトラエチルオルソシリケートおよびテトラメチルオルトシリケートのような四官能性シランを挙げることができる。複合酸化物をかかるシラン化合物で処理する際には、例えば水、アルコールあるいはその他の有機媒体中で行うことが好ましい。
【0013】
本発明に使用されるハードコート液は、多官能アクリレートの重合のための光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、ラジカル光重合開始剤、カチオン光重合開始剤などを用いることができる。ラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン]、[1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン]、[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピルケトン]、[2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン]、[1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン]、[2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン]、[ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド]、[2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1]を例示することができる。また、カチオン光重合開始剤としては、フェニル−[m−(2−ヒドロキシテトラデシクロ)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジアルキルヨードニウム,テトラキス(ペンタフルオロ フェニル)ボレート等が例示できる。
【0014】
光重合開始剤の量は、ハードコート組成物の多官能アクリレート100重量部に対し0.1〜30重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部である。
【0015】
本発明に使用されるハードコート液は、アミノシラン(B)の加水分解・縮重合のための加水分解触媒を含有することが好ましい。加水分解触媒としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、シュウ酸、アクリル酸、メタクリル酸、塩酸、硝酸、硫酸などの酸触媒や、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム水溶液などの塩基性触媒が用いられる。これらの中で水溶液の形の酸触媒例えば酢酸、(メタ)アクリル酸が好ましく用いられる。添加する酸触媒の量は、アミノシラン(B)100重量部に対して5〜30重量部であることが好ましい。
【0016】
本発明に使用されるハードコート液は、上記多官能アクリレート(A)100重量部に対し、好ましくはアミノ有機官能シラン(B)1.5〜50重量部、好ましくは8〜25重量部、コロイダルシリカ(C)(固形分)10〜150重量部、好ましくは40〜85重量部を含有する。この(A)〜(C)成分を含有するハードコート液を以下「基本ハードコート液」ということがある。
【0017】
本発明で得られるハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品に防眩性を与えるために、基本ハードコート液に、(D)成分として0.05μm(50nm)〜10μmの平均粒径を有する微粒子を含有させることができる。
【0018】
平均粒径0.05μm〜10μmの微粒子(D)としては金属または無機化合物からなる微粒子(D)が好ましく用いられる。微粒子(D)のより好ましい平均粒径は2〜10μmであり、さらに好ましい平均粒径は4〜8μmである。微粒子(D)の添加により特にディスプレイ用途では、周囲の光の映り込みを低減でき画像表示が鮮明になる。
【0019】
金属または無機化合物からなる微粒子(D)の材質としては、例えばSi,Al,Sn,Sb,Ta,Ce,La,Fe,Zn,W,In,Ti,Mgやその酸化物、それらの複合酸化物、あるいはCaCO,BaSO等を挙げることができる。これらは1種または2種以上組合せて使用することができる。これらのうち、SiOが最も好ましい。
【0020】
これらの微粒子(D)は、溶媒への分散性を高めるため有機シラン化合物や、有機化合物で表面改質して用いることができる。有機シラン化合物としては、コロイダルシリカの表面改質のために例示した有機シラン化合物とりわけ単官能シランが好ましく用いられる。
【0021】
平均粒径0.05μm(50nm)〜10μmの微粒子として、分散媒中に15〜60重量%の割合で分散させた製品が下記のように市販品として入手できる。シリカ微粒子としては、「サイロイドC803」(平均粒径 3.6μm、W.R.グレースジャパン製)、「サイリシア350」(平均粒径:3.9μm、富士シリシア化学(株)製)、「サイロスフェアC−1504」(平均粒径4μm、同上製)、「サイロスフェアC−1510」(平均粒径10μm、同上製)、「JA−450」(平均粒径4〜8μm、十条ケミカル(株)製)、「MP−3040」(平均粒径:0.30μm、日産化学工業(株)製)、「MP−4540」(平均粒径:0.45μm、日産化学工業(株)製)、「KE−W50」(平均粒径:0.50〜0.56μm、(株)日本触媒製)、「KE−E150」(平均粒径:1.40〜1.60μm、(株)日本触媒製)等が挙げられる。シリカ微粒子以外では、酸化チタン微粒子「パラジウム特性つや消し剤N」(平均粒径2〜5μm、大原パラジウム(株)製)、ステアリン酸カルシウム微粒子「パラジウム#1000」(平均粒径2〜5μm、大原パラジウム(株)製)などが挙げられる。
【0022】
これらの微粒子(D)は球状あるいは球状に近いほど好ましく、また中実粒子であっても多孔質粒子であってもよい。またその屈折率は微粒子(D)を除いた残余のハードコート液の光硬化物の屈折率と同じか小さい方が好ましい。こうすることにより膜厚ムラによる干渉ムラが低減され易くなる。
前述のコロイダルシリカ(C)はハードコート層の硬度を高める成分である。そして微粒子(D)はハードコート層の表面に所定の凹凸を形成して防眩性を付与する成分である。平均粒径の大きなコロイダルシリカ、例えば50nm〜200nmの平均粒径を有するコロイダルシリカは微粒子(D)としての働きを有する。従って本発明で使用するハードコート液が50nm〜200nmの平均粒径を有するコロイダルシリカ(C)を含有しておれば微粒子(D)を含有しなくても防眩性が得られる。
【0023】
防眩性を与えるために基本ハードコート液に微粒子(D)を前記多官能アクリレート(A)100重量部に対し、1.0〜150重量部、好ましくは3〜100重量部添加することが好ましい。微粒子(D)のさらに好適な含有量は微粒子(D)の平均粒径によって異なる。微粒子(D)の平均粒径が比較的に大きい場合、例えば2μmを超え10μm以下である場合には微粒子(D)の含有量は1.0〜40重量部が好ましく、3〜20重量部がより好ましい。微粒子(D)の平均粒径が比較的に小さい場合、例えば0.05μm(50nm)〜2μmである場合には微粒子(D)の含有量は20〜150重量部が好ましく、50〜100重量部がより好ましい。微粒子(D)を兼ねるコロイダルシリカ(D)のみが含有される場合のコロイダルシリカ(C)(固形分)の含有量は40〜185重量部、好ましくは60〜130重量部である。
【0024】
本発明で得られるハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品に撥水性を与えるために、ハードコート液に、(E)成分としてフルオロアルキルシランを含有させることができる。
フルオロアルキルシラン(E)としては下記式(3)
cRdSi(OR4−c−d   (3)
ここで、Rは炭素原子数1〜12のフッ素アルキル基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アリール基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、アシル基であり、cは1、2または3であり、dは0、1または2である。但し、c+dは1、2または3である、
で表されるフッ素含有シリコン化合物が好ましく用いられる。
【0025】
式(3)で表される化合物としては、例えば3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシランのようなフルオロアルキルトリアルコキシシラン;ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジエトキシシランのようなフルオロアルキルアルキルジアルコキシシランを挙げることができる。これらは単独であるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】
撥水性を与えるために基本ハードコート液にフルオロアルキルシラン(E)を前記多官能アクリレート(A)100重量部に対し、1.0〜20重量部添加することが好ましく、3〜15重量部添加することがより好ましい。
【0027】
基本ハードコート液に、上記微粒子(D)および上記フルオロアルキルシラン(E)をそれぞれ上記した量で添加することにより本発明で得られるハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品に防眩性および撥水性を与えることができる。
【0028】
本発明に使用されるハードコート液は物性調整剤としてエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートを1種類または複数個を含むことができる。エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートは、膜に可とう性を与え、膜の硬度を高め、または低エネルギーで硬化させるために付与することができる。この物性調整剤は、基本ハードコート液に、前記多官能アクリレート(A)100重量部に対し、10〜200重量部、好ましくは50〜150重量部添加することができる。
【0029】
また本発明に使用されるハードコート液は屈折率調整用微粒子を含有することができる。屈折率調整用微粒子は平均粒径が1〜100nmの無機酸化物の微粒子からなることが好ましい。例えば酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化タンタル、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム、酸化チタン、酸化チタン/酸化ジルコニウム複合酸化物、酸化チタン/酸化ジルコニウム/酸化ケイ素複合酸化物等の微粒子を挙げることができる。複合酸化物としては、酸化チタンを少なくとも50重量%含有するものが好ましい。
【0030】
屈折率調整用無機酸化物微粒子は溶媒への分散性を高めるため有機シラン化合物や、有機化合物で表面改質して用いることができる。有機シラン化合物としては、コロイダルシリカの表面改質のために例示した有機シラン化合物とりわけ単官能シランが好ましく用いられる。
【0031】
屈折率調整用微粒子は基本ハードコート液に、前記多官能アクリレート(A)100重量部に対し、1〜900重量部、好ましくは100〜400重量部添加することができ、基本ハードコート液によって得られるハードコート層の屈折率を0.01〜0.50高めることができる。ハードコート液中のコロイダルシリカ(C)またはハードコート液に必要に応じて添加する微粒子(D)として屈折率調整用微粒子に該当するものを使用する場合には、別に屈折率調整用微粒子を添加しなくてもハードコート層の屈折率を所定の値まで高めることができることがある。
【0032】
本発明のハードコート組成物は、好ましくは、上記の如き有効成分を所定量で含む液体媒体中分散液として調製される。
ハードコート組成物の調製中または調製後のエージング中に上記多官能アクリレート(A)とアミノ有機官能性シラン(B)とが反応する。多官能アクリレートとアミノ有機官能性シランとの反応では、アミノ有機官能性シランの第1または第2アミノ官能基が、多官能アクリレート単量体の(メタ)アクリレート2重結合のうち1または2以上へマイケル付加する。
この反応は室温から100℃の温度で実施することができる。反応に際し、多官能アクリレート及びアミノ有機官能性シランは単独、あるいは2種類以上一緒に用いることができる。
【0033】
上記液体媒体としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルおよびエチレングリコールモノブチルエーテルのようなグリコール類;シクロヘキサノン、o−メチルシクロヘキサノン、m−メチルシクロヘキサノン、p−メチルシクロヘキサノンのような脂肪族環状ケトン類;酢酸エチル酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチルのような酢酸エステル類;メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールのようなアルコール類を挙げることができる。
【0034】
また、上記ハードコート液は、任意成分として、硬化被膜のレベリング剤、潤滑性付与剤を含有することができる。かかる剤としては、例えばポリオキシアルキレンとポリジメチルシロキサンの共重合体(ダウコーニング社のペイントアディティブ19)、ポリオキシアルキレンとフルオロカーボンとの共重合体が好ましく用いられる。かかる剤は、全液量に対して0.001〜10重量%で好ましく使用される。その他任意成分として酸化防止剤、耐候性付与剤、帯電防止剤、ブルーイング剤等を含有することもできる。
ハードコート液は、固形分濃度が例えば2〜50重量%に調整されて好ましく用いられる。
【0035】
ハードコート液は非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面、例えば30〜500μm厚みの非晶質ポリオレフィン樹脂フィルムの片側表面または両表面に塗布する。塗布は、例えばスピンコート法、フローコート法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、バーコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、はけ塗り法により行うことができる。塗布は、硬化後の膜厚が1.0〜10μmとなるような厚みで実施することが好ましい。1.0μmより小さいと膜の硬度が十分でなく、一方10μmより大きいと可とう性が低下する原因になる。
【0036】
しかし後述のようにハードコート層の下に下地ハードコート層を設ける場合にはハードコート層の硬化後の厚みを0.05〜1.5μmとすることができる。ハードコート層の表面は微小な凹凸を形成しているのでハードコート層の厚みは表面凹凸を含んだ平均的な厚みとして定義する。
【0037】
塗布後、塗膜を加熱するか、または紫外線、電子ビームのような活性エネルギー線を照射することによりハードコート層が形成される。加熱は50〜130℃で数秒〜5時間行われる。紫外線照射には高圧水銀灯、カーボンアーク灯等の各種紫外線ランプ、レーザ光等を用いることができる。紫外線の照射条件は、例えば、波長が200〜400nm程度で、照度が数10〜100mW/cm(波長365nm)程度の紫外線を総紫外線照射エネルギーが300〜3000(mJ/cm)になるように数秒〜30分間照射させる。
【0038】
ハードコート液の塗布後に、液体媒体は乾燥によりまたは照射の際に気化して除去される。そしてこの照射により、多官能アクリレート(A)の(メタ)アクリロイル基同士が光重合する。なおアミノシラン(B)(およびフルオロアルキルシラン(E))のアルコキシル基等の加水分解性基はハードコート組成物の調製中、エージング中、塗布後照射前または塗布後照射中の段階で加水分解および重縮合する。
【0039】
前記樹脂基材に対する前記ハードコート層の付着性をさら高めるために、樹脂基材表面とハードコート層の間にプライマー層を設けることができる。このプライマー層としては下記式(1)
nSi(R4−n     (1)
ここで、Rはメタクリロキシ基、アクリロキシ基、ビニル基、アリル基、アミノ基から選ばれる官能基を有する有機官能基であり、Rはアルコキシル基、アセトキシル基及び塩素から選ばれる1種もしくは複数の加水分解基であり、nは1〜3の整数である、
で表される有機珪素化合物を含むプライマー層用処理液を、親水化処理した非晶質ポリオレフィン樹脂表面に塗布し、乾燥することにより得られる。上記式(1)におけるRとしてアミノ基が好ましく用いられ、Rがアミノ基である珪素化合物とRがビニル基である珪素化合物との混合物、およびRがともにアミノ基である2種の珪素化合物の混合物が、更に付着性を高めるので、より好ましく用いられる。このプライマー層の好ましい厚みは2〜50nmである。プライマー層用処理液の溶媒としてはアルコール等の有機溶媒の他、水でもよい。プライマー層用処理液中の前記有機珪素化合物の濃度はプライマー層の厚みおよび塗布方法などによって決められるが、通常は0.2〜5重量%である。塗布方法は、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、ロールコート法、スピンコート法などいずれでもよい。
【0040】
このようにハードコート層が被覆された非晶質ポリオレフィン樹脂物品は優れた表面硬度を有するので耐擦傷性が向上する。そしてハードコート液に微粒子(D)を添加した場合には耐擦傷性に加えて防眩性が付与される。微粒子(D)はハードコート層中に微粒子の高さ(真球の場合の直径)の半分以上の深さで埋没しているのが好ましい。またハードコート層に撥水性機能を付与する場合にはハードコート層から突出した微粒子(D)の表面がハードコートの薄層で被覆されているのが好ましく、それにより上記機能が効果的に発揮される。微粒子(D)が半分以上の高さで埋没することにより、微粒子(D)のハードコート層からの欠落を有利に防止することができる。さらに微粒子(D)はハードコート層の外側表面に互いに隣接して、層厚み方向に重複せずに単粒子(単粒子層)として分布しているのが好ましい。ハードコート層の外側表面の表面粗さは10点平均粗さ(Rz)が6μm以下あることが好ましい。しかし、もし微粒子(D)全体がハードコート層中に埋没すると、防眩性が発揮できなくなるので、上記表面粗さは10点平均粗さ(Rz)で表して0.05μm以上であることが好ましい。この好ましい分布または表面粗さはハードコート層中における微粒子(D)の割合およびハードコート層の厚み等を適宜調節することによって達成することができる。
【0041】
前記樹脂基材と上記の微粒子(D)含有ハードコート層の間にさらに下地ハードコート層を設けることができる。この下地ハードコート層としては基本ハードコート液から得られるハードコート層を用いることができる。この下地ハードコート層の上に微粒子(D)含有ハードコート層が設けられる。ハードコート層の厚みは0.05〜1.5μmとすることが好ましく、下地ハードコート層の厚みはこの層の厚みとハードコート層の厚みの合計が好ましくは1.0〜10μmとなるように調節される。
【0042】
下地ハードコート層と併用する微粒子(D)含有ハードコート層のためのハードコート組成物には比較的に小さい平均粒径の微粒子(D)、例えば0.05μm(50nm)〜2μmの平均粒径のものを含有させることが好ましい。これにより、平均粒径の小さな微粒子(D)をハードコート層の中に埋め込ませしかも微粒子の一部分をハードコート層の表面に突出させて、均一な防眩性を容易に付与することができる。微粒子(D)の平均粒径(μm)に対するハードコート層厚み(μm)の比率が50〜95%であることがより好ましい。この場合には微粒子(D)がハードコート層内にその表面の一部をハードコート層の表面から突出させしかもその半分以上の高さで埋没しながら単粒子層として分布しやすくなり、強固で均一な防眩性が得られる。
【0043】
また基本ハードコート液にフルロアルキルシラン(E)を添加した場合には耐擦傷性に加えて撥水性が付与される。これにより水の付着や結露により影響を受けにくくなり、また汚れ付着や汚れ除去性が改善でき、端末表示機、光学機器の部材として応用できる。
【0044】
微粒子(D)およびフルロアルキルシラン(E)の両方を基本ハードコート液に添加することにより、防眩性が向上するとともに、防眩性付与に伴う微細凹凸表面への汚れ付着、汚れ除去性を改善できる。
【0045】
本発明におけるハードコート層の上に、少なくとも1層の無機膜層を20nm〜50μmの膜厚(2層以上の場合は合計膜厚)で形成させることができる。無機膜層の材質としては、Ti,Sn,In,Si,Al,W,Mo,Ag,Zn,Zr,Mg,Cr,Niからなる群より選ばれる少なくとの1種の金属、該金属の酸化物、および該金属の窒化物から選択される少なくとも一つの無機化合物が挙げられる。特に付着性の良い酸化物、窒化物、化合物としては、TiO,SiO、SiN、ITO(インジウム・スズ酸化物)、MgF、SiOその他としてSnO、TiN、ZrO,ZnS、Alが挙げられる。
【0046】
無機膜の被覆法としては、化学的気相成長法(CVD法)、物理的気相成長法(PVD法)が挙げられる。CVD法としては、プラズマCVD法、PVD法としては真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法が挙げられる。無機膜を設けることにより反射防止性、透明導電性または耐透湿性等を付与することができる。
【0047】
具体的な無機膜層の構成は例えば次のようなものを挙げることができる。
真空蒸着法によるTiO/SiOの積層膜の成膜(TiO層の上にSiO層を積層。2層反射防止性の付与)
プラズマCVD法によるSiOの成膜(耐透湿性の付与)
プラズマCVD法によるTiO/SiOの積層膜の成膜(TiOの上にSiO層を積層。反射防止性の付与)
プラズマCVD法によるSiO膜の成膜(単層反射防止性の付与)
スパッタリング法によるSiO膜の成膜(耐透湿性の付与)
スパッタリング法によるTiO/SiOの積層膜の成膜(TiO層の上にSiO層を積層。反射防止性の付与)
スパッタリング法によるITOの成膜(透明導電性の付与)
【0048】
本発明におけるハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品に反射防止性を付与するためにハードコート層の上に単層または多層の上記無機膜層を形成することができる。この場合には、ハードコート層を前述の屈折率調整用微粒子を含有するハードコート液により形成することができる。しかし、可視光域で光学的干渉を応用するため、単層または多層の反射防止無機膜層の下地層の膜厚は80〜250nmの範囲に膜厚を調整することが好ましい。従って1.0〜10μm厚みのハードコート層(屈折率調整用微粒子を含有しない)と単層または多層の反射防止無機膜層の間に、
(F)多官能アクリレート、
(G)下記式(4)
nSiZ4−n   (4)
ここでRはメタクリロキシ基、アクリロキシ基、ビニル基、アリル基およびアミノ基から選ばれる官能基を有する有機官能基であり、Zはアルコキシル基、アセトキシル基及び塩素から選ばれる1種もしくは複数種の加水分解性基であり、nは1、2または3である、
で表されるシラン化合物および
(H)屈折率調整用微粒子
を含有する液を塗布した後、硬化させて形成させた好ましくは80〜250nmの膜厚を有する屈折率調整層を設けることが好ましい。
【0049】
上記シラン化合物(G)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−[2−(ビニルベンジルアミノ)エチル]−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどを列挙することができる。これらの中で3−アミノプロピルトリエトキシシランおよび3−アミノプロピルトリメトキシシランが特に好ましく用いられる。
【0050】
上記多官能アクリレート(F)および屈折率調整用微粒子(H)は前述のそれぞれ多官能アクリレート(A)および屈折率調整用微粒子の説明で挙げたものを同様に使用することができる。屈折率調整用微粒子の含有量は屈折率調整層が反射防止無機膜層の下地層として要求される屈折率を有するように、上記液中に、多官能アクリレート(F)100重量部に対して1〜900重量部の範囲内で調節される。
【0051】
この屈折率調整層はハードコート層と3次元的(縦、横、斜め)な結合が行われているので、ハードコート層との付着性が良好である。この屈折率調整層を設けることにより高い反射防止性能と膜強度を両立させることができる。屈折率調整層は微粒子(D)を含有させたハードコート層の上に設け、そして屈折率調整層の上にさらに単層または多層の反射防止膜層を設けることにより、膜強度を保ちながら反射防止性能および防眩性を付与することができる。またシラン化合物(G)としてアミノ基を有するものを使用した屈折率調整層は上述の下地ハードコート層と併用するハードコート層を兼用することができる。この場合、屈折率調整層兼ハードコート層は屈折率調整用微粒子、コロイダルシリカ(C)および微粒子(D)を含有する。もし屈折率調整用微粒子としてのおよび微粒子(D)としての各要件が一致するもの、例えば平均粒径100nmの酸化チタン微粒子は屈折率調整用微粒子兼微粒子(D)として使用することができる。
【0052】
本発明におけるハードコート層の上に、単層または多層の反射防止有機層、例えば1.30〜1.45の屈折率を有する単層の反射防止有機層を形成させることができる。また、ハードコート層の上に上述の屈折率調整層を設けその上に更に単層の反射防止有機層を設けることもできる。単層の反射防止有機層としては、下記式(5)
aRbSi(OR4−a−b  (5)
ここで、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数6〜12のアリル基またはハロゲン化アルキル基、炭素原子数5〜8のメタクリロキシアルキル基、炭素原子数2〜10のウレイドアルキレン基、芳香族ウレイドアルキレン基、芳香族アルキレン基、メルカプトアルキレン基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、アリル基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲ化アリル基であり、Rは水素原子もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基、アシル基、アルキルアシル基であり、aは1、2または3であり、bは0、1または2である、
で表される化合物、および前述のコロイダルシリカを含有するコーティング液を塗布、50〜130℃で数秒〜5時間加熱することにより硬化することにより得られる。この有機層に撥水性を付与するには、前述のフルオロアルキルシランを上記コーティング液に添加すればよい。
【0053】
各成分の配合割合は、上記式(5)で表される化合物100重量部に対し、コロイダルシリカ40〜900重量部が好ましく、250〜500重量部がより好ましい。上記有効成分を所定量含む液体媒体中分散液として調整される。撥水性を付与する場合は、上記式(5)で表される化合物100重量部に対し、フルオロアルキルシラン1〜20重量部が好ましく、3〜15重量部がより好ましく、コロイダルシリカ40〜900重量部が好ましく、250〜500重量部がより好ましい。
【0054】
本発明により得られるハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品の構造としては次のものが例示することができる。
単層として
(1)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層
(2)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層
(3)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/防眩ハードコート層
(4)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/防眩ハードコート層
(5)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/撥水ハードコート層
(6)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/撥水ハードコート層
(7)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/撥水・防眩ハードコート層
(8)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/撥水・防眩ハードコート層
無機膜付きとして
(9)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層/透明導電無機膜
(10)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層/透明導電無機膜
(11)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層/耐透湿無機膜
(12)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層/耐透湿無機膜
(13)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート/単層・多層反射防止無機膜
(14)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート/単層・多層反射防止無機膜
(15)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート(屈折率調整用微粒子含有)/単層・多層反射防止無機膜
(16)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート(屈折率調整用微粒子含有)/単層・多層反射防止無機膜
(17)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/防眩ハードコート(防眩微粒子含有)/単層・多層反射防止無機膜
(18)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/防眩ハードコート(防眩微粒子含有)/単層・多層反射防止無機膜
ハードコート層が2層のものとして
(19)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/下地ハードコート(厚膜)/小粒径微粒子含有防眩ハードコート(薄膜)
(20)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/下地ハードコート(厚膜)/小粒径微粒子含有防眩ハードコート(薄膜)
(21)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/下地ハードコート層(厚膜)/小粒径微粒子含有撥水・防眩ハードコート層(薄膜)
(22)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/下地ハードコート層(厚膜)/小粒径微粒子含有撥水・防眩ハードコート層(薄膜)
(23)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/下地ハードコート層(厚膜)/小粒径微粒子含有防眩ハードコート層(薄膜)/単層・多層反射防止膜
(24)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/下地ハードコート層(厚膜)/小粒径微粒子含有防眩ハードコート層(薄膜)/単層・多層反射防止膜
屈折率調整層および単層・多層反射防止無機または有機膜付きとして
(25)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層/屈折率調整層/単層反射防止有機膜
(26)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層/屈折率調整層/単層反射防止有機膜
(27)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層/屈折率調整層/撥水単層反射防止有機膜
(28)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層/屈折率調整層/撥水単層反射防止有機膜
(29)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層/屈折率調整層/単層・多層反射防止無機膜
(30)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層/屈折率調整層/単層・多層反射防止無機膜
(31)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/防眩ハードコート層/屈折率調整層/単層反射防止有機膜
(32)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/防眩ハードコート層/屈折率調整層/単層反射防止有機膜
(33)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/防眩ハードコート層/屈折率調整層/単層・多層反射防止無機膜
(34)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/防眩ハードコート層/屈折率調整層/単層・多層反射防止無機膜
(35)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/ハードコート層/撥水単層反射防止有機膜
(36)親水化処理ポリオレフィン樹脂基材/プライマー層/ハードコート層/撥水単層反射防止有機膜
【0055】
本発明において非晶質ポリオレフィン樹脂基材としては、結晶化を制御すべくポリマー主鎖に立体的に嵩高い官能基を導入した(6−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a‐オクタヒドロナフタレンの開環重合体の水素添加物)下記の「ゼオネックス」や「ゼオノア」(日本ゼオン(株)製の商品群名)、ノルボルネン樹脂系の「アートン」(JSR(株)製の商品群名)、エチレンーノルボルン付加共重合体やエチレン‐テトラシクロドデセン付加重合体である「アペル」(三井石油化学工業(株)製の商品群名)等を用いることができる(日本ゼオン(株):商品名ZEONEX(グレード:480、490K)、ZEONOR(グレード:1020R、1060R、1420R、1600R)、JSR(株):商品名「ARTON」 (グレード:G、F、FX、D)、三井石油化学工業(株):商品名「APO」、「アペル」(グレード:APS8009、APS5014、APS6518))。
【0056】
以上は非晶質ポリオレフィン樹脂基材そのものへの適用について説明したが、本発明はそれに限らず偏光フィルムおよび表示パネルのような非晶質ポリオレフィン樹脂加工品の非晶質ポリオレフィン樹脂表面に適用してもよい。
【0057】
本発明は、携帯電話導光板の光拡散処理膜、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニター、PDP、PDAの最表面処理)、タッチパネルモニターの最表面処理膜、携帯電話窓、高光学特性が要求される部位、自動車用透明部品などに用いられる。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面に付着性および耐湿性に優れたハードコート層が被覆されるので、被覆された非晶質ポリオレフィン樹脂物品の耐擦傷性が向上する。そしてハードコート層中に防眩用微粒子、フルオロアルキルシランを添加することにより、非晶質ポリオレフィン樹脂物品に防眩性、撥水性、防汚性が付与できる。さらにハードコート層の上に金属・金属酸化物・金属窒化物等の膜を強い付着性で被覆させることができ、それにより反射防止性、耐透湿性、透明電導性などを付与することができる。
【0059】
【発明の実施の形態】
以下に実施例をあげて本発明の実施の形態を具体的に説明する。
実施例および比較例で用いた基材、親水化処理方法、無機膜層の形成法、各種コート液の調製法、塗布法、紫外線硬化方法、評価方法等は次の通りである。
非晶質ポリレフィン樹脂基材
非晶質ポリオレフィン樹脂は、以下のシクロオレフィンポリマーを用いた。
(A1、A2) 日本ゼオン(株)製のノルボルネン系モノマーを原料とするものであり、商品名ZEONEX(ゼオネックス)(グレード490Kとグレード480)を用いた。これらを射出成形して100mm×150mm、厚み2mmの基材A1(グレード490K)および基材A2(グレード480)を得た。
(B1) 日本ゼオン(株)製のジシクロペンタジエンの開環重合水添ポリマーでであり、商品名ZEONOR(ゼオノア)のグレード1600Rを用いた。これらを射出成形して100mm×150mm、厚み2mmの基材B1(グレード1600R)を得た。
(C1、C2) JSR(株)製のノルボルネン系モノマーを原料とするものであり、商品名ARTON(アートン)のグレードGとグレードFを用いた。これらを射出成形して100mm×150mm、厚み2mmの基材C1(グレードG)および基材C2(グレードF)を得た。
(D1、D2) 三井化学(株)製の環状オレフィンとエチレンの共重合体(エチレン・テトラシクロデセン共重合体)であり、商品名アペル(アペル)のグレーAPL6013TとグレードAPL5014DPを用いた。これらを射出成形して100mm×150mm、厚み2mmの基材D1(グレーAPL6013T)および基材D2(グレードAPL5014DP)を得た。
(E1) 三井石油化学工業(株)製(商品名「APO」)を用いた。これを射出成形して100mm×150mm、厚み2mmの基材E1を得た。
【0060】
親水化処理
<コロナ処理>
前記非晶質ポリオレフィン樹脂基材に信光電気計装(株)製のコロナ放電表面改質装置「コロナマスター」PS−1M型を用いて出力が最高約14000ボルトの可変電圧、約15kHzの周波数のコロナ放電処理を毎秒5mmまたは毎秒100mmの速度で実施し、非晶質ポリオレフィン樹脂基材表面の水の接触角が35〜60度となるようにした。
<プラズマ処理>
前記基材にヤマト科学(株)製プラズマリアクター型式PR−501Aを用いて、13.56MHzの高周波(出力100〜200W)、使用ガスは酸素(流速100ml/min)の条件でプラズマ処理を2分間実施し、樹脂基材表面の水の接触角が25度となるようにした。
<オゾン水洗浄処理>
前記基材に(株)ササクラ製のオゾン水発生装置OM−2を用いて、オゾン水に基材を室温で4分間浸漬する条件で処理を行い、樹脂基材表面の水の接触角が45度となるようにした。
<UVオゾン照射処理>
前記基材に(株)サムコインターナショナル研究所製のUVランプ(品番:SGL−18W18S−SA1)を用いてランプ直下のUV照度が20mW/cmとなるように、基材上にUV照射を行うと、基材上ではオゾンが発生し、基材表面の油などの汚れを分解する。UVオゾン照射処理を2分間、5分間または15分間実施し、樹脂基材表面の水の接触角が13〜60度となるようにした。
【0061】
Figure 2004017410
Figure 2004017410
【0062】
プライマー層用処理液の調製
下記の有機珪素化合物の1種または2種を、2種の場合は合計で、0.4〜1.4質量%含むエタノール溶液を調製し、さらにアルコキシル基が加水分解するのに必要な量の水を添加し、十分に攪拌して塗布液とした。
使用した有機珪素化合物:3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン
【0063】
ハードコート液1(活性エネルギーシリコーンハードコート)の調製
多官能アクリレートとして1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12.4g、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン1.6g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸4.0g、光重合開始剤としてベンゾフェノンを0.8g、コロイダルシリカとして「NPC−ST−30」(日産化学工業(株)製、n−プロピルセロソルブ中に平均粒20nmのシリカ微粒子を分散。シリカ含有量30重量%)を26.0g、膜に可撓性を与えかつ膜の硬度を高めるためのエポキシアクリレートとして「エポキシエステル3002M」(共栄社化学(株)製)を5.0g、酢酸ブチル14.5gを添加する。次に、フローコントロール剤[ペインタッド19ダウコーニングアジア(株)製]を0.1g添加する。その後、2−メトキシプロパノールを100g添加し、撹拌し均質に分散させて、耐擦傷性を付与するためのハードコート液1が得られた。
【0064】
ハードコート液2(防眩性付与ハードコート)の調製
多官能アクリレートとしてポリエチレングリコールジアクリレート16.0g、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン1.0g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸4.0g、光重合開始剤としてイソプロピルベンゾインエーテルを0.8g、コロイダルシリカとして「IPA−ST−ZL」(日産化学工業(株)製、イソプロパノール中に平均粒径80〜100nmのシリカ微粒子を分散。シリカ含有量30重量%)を45.0g、次に、膜の硬度を高めかつ低エネルギーで膜を硬化させるための、ウレタンアクリレートとして「UA−306H」(共栄社化学(株)製、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートのウレタンプレポリマー)を1.0g、フローコントロール剤を0.1g添加する。その後、2−メトキシプロパノールを100g添加する。その後、前記溶液に平均粒径が6μmの結晶質シリカ微粒子を0.8g(ハードコート有効成分の2重量%)添加し、撹拌し均質に分散させる。これにより防眩性および耐擦傷性を付与するためのハードコート液2が得られた。
【0065】
ハードコート液3(撥水性付与ハードコート)の調製
多官能アクリレートとして1,4−ブタンジオールジアクリレート17g、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン8.0g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸4.0g、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを0.8g、コロイダルシリカとして「IPA−ST」(日産化学工業(株)製、イソプロパノール中に平均粒径10〜20nmのシリカ微粒子を分散。シリカ含有量30重量%)を20.0g、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシランを9.0g添加し,反応させた後で、酢酸ブチル14.5gを添加する。次に、フローコントロール剤を0.1g添加する。その後、2−メトキシプロパノールを100g添加する。これにより撥水性および耐擦傷性を付与するためのハードコート液3が得られた。
【0066】
ハードコート液4(撥水性および防眩性付与ハードコート)の調製
多官能アクリレートとしてトリメチロールプロパントリアクリレート12.4g、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン2.6g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸4.0g、光重合開始剤としてベンゾフェノンを0.8g、コロイダルシリカとして「IPA−ST−ZL」(日産化学工業(株)製)を26.0g、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシランを9.0g添加し反応させた後で、酢酸ブチル14.5gを添加する。次に、フローコントロール剤を0.1g添加する。その後、2−メトキシプロパノールを100g添加する。その後、前記溶液に平均粒径が6μmのシリカ微粒子を0.8g(ハードコート有効成分の2重量%)添加し、撹拌し均質に分散させる。これにより防眩性、撥水性および耐擦傷性を付与するためのハードコート液4が得られた。
【0067】
ハードコート液5(比較例)の調製
多官能アクリレートとして1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12.4g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸4.0g、光重合開始剤としてベンゾフェノンを0.8g、コロイダルシリカとして「NPC−ST−30」(日産化学工業(株)製、n−プロピルセロソルブ中に平均粒20nmのシリカ微粒子を分散。シリカ含有量30重量%)を26.0g、酢酸ブチル14.5gを添加する。次に、フローコントロール剤を0.1g添加する。その後、2−メトキシプロパノールを100g添加し、撹拌し均質に分散させる。これにより耐擦傷性を付与するためのハードコート液5が得られた。
【0068】
ハードコート液6(防眩性付与ハードコート)の調製
多官能アクリレート(A)として1,6−ヘキサンジオールジアクリレート100gに対し、アミノシラン(B)としてγ―アミノプロピルトリメトキシシラン10g、2−メトキシプロパノール50g、酢酸5g、コロイダルシリカ(C)として平均粒子径10〜20nmの「IPA−ST」(有効成分:30重量%、日産化学工業(株)製)を140g、微粒子(D)としてアモルファスシリカ微粒子の分散液「KE−W50」(粒径:0.50〜0.56μm、有効成分:15重量部、(株)日本触媒製)を500g添加し、撹拌し、その後、光開始剤としてベンゾフェノンを5g、フローコントロール剤を0.1g添加してハードコート液6を得た。
【0069】
ハードコート液7(活性エネルギー線硬化型下地ハードコート)の調製
多官能アクリレートとして1,6−ヘキサンジオールジアクリレート12.4g、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン2.6g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸0.4g、コロイダルシリカとして(平均粒子径20〜30nm)の「MA−ST−M」(有効成分:40wt% 日産化学工業(株)製)を20.0g、エポキシアクリレートとして「エポキシエステル3002M」(共栄社化学(株)製)を5.0g、酢酸ブチル14.5gを添加する。次に、光重合開始剤としてベンゾフェノンを0.8g、フローコントロール剤を0.1g添加する。その後、2−メトキシプロパノールを100g添加し、撹拌し均質に分散させてハードコート液7を得た。
【0070】
屈折率調整層用液1の調製
多官能アクリレートとして1,4−ブタンジオールジアクリレート12.4g、3−アクロキシプロピルトリメトキシシラン1.0g、2−メトキシプロパノール6.3g、酢酸4.0g、光重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンを0.8g、コロイダルシリカとして「NPC−ST−30」(日産化学工業(株)製、n−プロピルセロソルブ中に平均粒20nmのシリカ微粒子を分散。シリカ含有量30重量%)を20.0gを添加する。次に、フローコントロール剤を0.1g添加する。
【0071】
その後、2−メトキシプロパノールを100g添加し、撹拌し均質に分散させる。その液に「オプトレイク1130F2A8」(TiOおよびSiOからなる複合酸化物微粒子(平均粒径約10nm)をメタノール中に分散させたもの、触媒化成製、TiOとSiOのモル比は80:20。複合酸化物含有量30重量%)を30g添加した。このようにして成膜後の屈折率がハードコート層のそれよりも高い層を形成するための屈折率調整層用液1を得た。
【0072】
低屈折率用コート液8(熱硬化型ハードコート)の調製
平均粒子径20nmのコリダルシリカとして「スノーテックス O−40」(日産化学工業(株)製: 不揮発分40%)150g,メチルトリメトキシシラン183gを反応させた後、イソプロピルアルコール648g、酢酸18g、酢酸ナトリウム1gおよびフローコントロール剤として「ペイントアディティブ19」(ダウコーニング社製)を0.1g加え、撹拌して低屈折率用コート液8を得た。
【0073】
低屈折率用コート液9(撥水性付与熱硬化型ハードコート液)の調製
平均粒子径80〜100nmのコロイダルシリカとして「IPA−ST−ZL」(日産化学工業(株)製: 不揮発分30%)600g、メチルトリメトキシシラン86gおよびパーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン4.3gを反応させた後、イソプロピルアルコール645g、酢酸18g、酢酸ナトリウム2gおよびフローコントロール剤として「ペイントアディティブ19」(ダウコーニング社製)を0.1g加え撹拌して低屈折率用コート液9を得た。
【0074】
塗布法および硬化法
プライマー層用処理液は親水化処理を実施した樹脂(実施例)又は親水化処理をしていない基材(比較例)に対して、ディッピング法で前記塗布液を塗布し、自然乾燥させて、厚み10nmのプライマー層を形成した。
上記ハードコート液1〜4、6、7はバーコート法により、ハードコート液5はスピナー法によりそれぞれ塗布し、その後に出力120W/cmの紫外線ランプにより総紫外線照射エネルギーが1000(mJ/cm)になるように1秒〜30秒間照射して塗布膜を硬化した。なおこの総紫外線照射エネルギー値は積算光量計(型式:UIT−102 ウシオ電機株式会社製)で測定した。また屈折率調整層用液1はフレキソ印刷法により塗布し、上記と同様に塗布膜を紫外線硬化させた。
低屈折率用コート液8および9はスピン法で塗布し、塗布膜を80℃で30分間加熱して硬化させた。
【0075】
評価方法
以下に示す各実施例で得られた非晶質ポリオレフィン樹脂基材を被覆した被膜の評価方法は次の通りである。
(a)付着性試験:碁盤目試験JIS K5400に準拠して行った。すなわち、ニチバン(株)製のセロハンテープをハードコート被膜上に貼り付けた後に、勢い良く引き剥がす方法で、耐湿試験前(初期)と耐湿試験(50℃、95%RHの槽内に10日間)後の被膜の密着性(易接着性)および耐透湿性を評価し、ハードコート被膜の100個のます目のうち剥がれたます目の数によって次の基準で判定した。
剥がれたます目の数 0−−−−−−「剥離なし」
剥がれたます目の数 1〜5−−−−「極一部で剥離」
剥がれたます目の数 6〜50−−−「部分的に剥離」
剥がれたます目の数 51〜99−−「剥離大」
剥がれたます目の数 100−−−−「全面剥離」
(b)耐湿試験1:雰囲気温度50℃、相対湿度95%RHの槽内に10日間放置して行った。
耐湿試験2:雰囲気温度60℃、相対湿度95%RHの槽内に1000時間放置して行った。
(c)キズ付き性(耐擦傷性):市販のスチールウール(#0000)で10回表面を擦り、キズ付きかたを目視で判定した。判定基準は以下の4段階で行った。
1…キズなし、2…わずかにキズあり、3…キズ多数、4…膜が剥れるほどキズつく。
(d)汚れ性試験:市販のワックスを付けた後で、綿製の無塵布で拭き取り、ワックスの拭き跡が汚れとして残る程度を目視で確認して防汚性を評価した。
(e)接触角測定:0.1ccの純水滴との接触角を測定した。接触角が大きいほど防汚性が高いことを表している。
(f)光学特性測定:JIS R3212に準拠して可視光線透過率(%)および曇価(%)を測定した。曇価が高いほど防眩性が高いことを表している。
【0076】
実施例1
前記非晶質ポリレフィン基材B1に前記コロナ放電処理を毎秒5mmの速度で実施し、非晶質ポリオレフィン基材表面の水の接触角が40度となるようにした。
次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシラン 0.2質量%およびビニルトリエトキシシラン 1.0質量%含むエタノール溶液から調製したプライマー層用処理液を使用して、コロナ放電処理を実施した樹脂基材の表面に厚み10nmのプライマー層を形成した。その上に、前記ハードコート液1を用いて3μmの厚みのハードコート被膜を形成した。
次いで、成膜直後(初期)と耐湿試験1(40℃、95%RH、10日間)および耐湿試験2(60℃、95%RH、1000時間)後の被膜の付着性を評価した。初期、耐湿試験1の後および耐湿試験2の後の付着性はいずれも「剥離なし」で良好であった。上記の付着性を評価したサンプルとは別のサンプルを作製して、キズ付き性を評価した。キズ付き性試験では「キズなし」であった。なお、非晶質ポリレフィン基材B1自体の耐擦傷性はキズ付き性試験で「キズ多数」であった。
【0077】
実施例2〜5
実施例1における基材B1およびコロナ放電処理5mm/sに代えて、それぞれ、
実施例2では基材A1を使用し、前記プラズマ処理を実施して樹脂基材表面の水の接触角が25度となるようにし、
実施例3では基材C2を使用し、前記オゾン水洗浄処理時間を4分間行って基材表面の水の接触角が45度となるようにし、
実施例4では基材C1を使用し、前記UVオゾン照射時間を15分間行って基材表面の水の接触角が15度となるようにし、
実施例5では基材E1を使用し、前記UVオゾン照射時間を5分間行って基材表面の水の接触角が約45度となるようにし、
それ以外は、実施例1と同様の方法でプライマー層及びハードコート液1から被膜を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性とキズ付き性を評価したところ、実施例2〜5のいずれも初期、耐湿試験1後および耐湿試験2の後の付着性はいずれも「剥離なし」で良好であった。またいずれの実施例もキズもなかった。
【0078】
実施例6
前記非晶質ポリレフィン基材D2を用い、実施例1と同様の方法で基材D2表面をコロナ放電で親水化処理をした(水滴接触角が35度)。
次いで、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを0.8質量%と3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%含むエタノール溶液から調製したプライマー層用処理液を使用して、親水化処理した樹脂基材の表面に厚み10nmのプライマー層を形成した。その上に、前記ハードコート液1を用いて3μmの厚みのハードコート被膜を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。初期及び耐湿試験1および2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。
【0079】
実施例7〜16
実施例6における基材D2ならびにプライマー層用処理液の原料 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.8質量%および3−アミノプロピルトリメトキシシラン 0.2質量%に代えて、それぞれ、
実施例7では基材D1を使用し、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.1%とビニルトリメトキシシラン1.0%とし、
実施例8では基材B1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.3%とN−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン0.7%とし、
実施例9では基材B1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.7%とビニルトリエトキシシラン0.3%とし、
実施例10では基材C2を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.04%とビニルトリエトキシシラン0.36%とし、
実施例11では基材D1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.01%とビニルトリエトキシシラン1.0%とし、
実施例12では基材B1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.0%とビニルトリエトキシシラン1.0%とし、
実施例13では基材B1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.0002%とビニルトリエトキシシラン1.0%とし、
実施例14では基材B1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.04%とビニルトリエトキシシラン0.36%とし、
実施例15では基材C1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.04%とビニルトリエトキシシラン0.36%とし、
実施例16では基材D1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.04%とビニルトリエトキシシラン0.36%とし、
それ以外は、実施例1と同様の方法でプライマー層及びハードコート液1から被膜を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。初期、耐湿試験1および耐湿試験2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。
【0080】
実施例17
前記非晶質ポリレフィン基材C1の表面を毎秒100mmの速度でコロナ放電することにより親水化処理をし、非晶質ポリオレフィン基材表面の水の接触角が58度となった。
次いで、3−アミノプロピルトリエトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液を調製し、さらに加水分解性基が加水分解するのに必要な量の水を添加し、十分攪拌してプライマー層用処理液とした。
親水化処理した基材表面に上記の塗布液を用いて実施例1と同様の方法で厚み10nmのプライマー層を形成し、その上に実施例1と同様の方法でハードコート液1から被膜を形成した。
【0081】
実施例18
実施例17で用いた基材C1および3−アミノプロピルトリエトキシシラン0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液に代えて、基材B1および3−アミノプロピルトリエトキシシランを0.4質量%とビニルトリエトキシシランを0.04質量%含むエタノール溶液を用いる他は実施例17と同様の方法でプライマー層及びハードコート液1から被膜を形成した。
実施例17および実施例18で得られた被膜についてさらに実施例1と同様の方法で付着性を評価した。初期、耐湿試験1および耐湿試験2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。
実施例1〜18についての上記結果を表1〜表4にまとめて示す。
【0082】
実施例19
前記非晶質ポリレフィン基材B1を用い、実施例1と同様の方法で非晶質ポリオレフィン樹脂基材表面をコロナ放電で毎秒5mmの速度で親水化処理をした(水滴接触角が40度)。
次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液を調製し、さらに加水分解性基が加水分解するのに必要な量の水を添加し、十分攪拌して塗布液とした。
上記の塗布液を用いて実施例1と同様の方法で厚み10nmの第一次被膜を形成した。その後、実施例1と同様の方法でハードコート液2から被膜(膜厚3μm)を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。初期、耐湿試験1および2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。
また、光学特性(可視光透過率、曇価)および表面水滴接触角を測定したところ、可視光透過率が91%、曇価が13%であり、表面水滴接触角が85度であり、防眩性が優れていた。
【0083】
実施例20〜21
実施例19における基材B1およびハードコート液2の使用に代えて、それぞれ、
実施例20では基材C1を使用し、ハードコート液3を使用し、
実施例21では基材D1を使用し、ハードコート液4を使用し、
それ以外は、実施例19と同様の方法で親水化処理、プライマー層(厚み10nm)及びハードコート層(厚み3μm)を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。実施例20および21のいずれも、初期、耐湿試験1および2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、実施例20および21のいずれも、キズはなかった。実施例20については、表面水滴接触角が102度であり、撥水性が優れていた。また実施例21については、可視光透過率が92%、曇価が14であり、表面水滴接触角が105度であり、防眩性および撥水性が優れていた。
【0084】
実施例22
前記非晶質ポリレフィン基材B1に前記コロナ放電処理を毎秒5mmの速度で実施し、非晶質ポリオレフィン基材表面の水の接触角が40度となるように親水化処理をした。
次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液を調製し、さらに加水分解性基が加水分解するのに必要な量の水を添加し、十分攪拌して塗布液とした。上記の塗布液を用いて実施例1と同様の方法で厚み10nmのプライマー層を形成した。その後、実施例1と同様の方法でハードコート液1から被膜(膜厚3μm)を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。初期、耐湿試験1および2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。
また、光学特性は可視光透過率が91%、曇価が0.1%であり、表面水滴接触角が85度であった。
【0085】
実施例23〜25
実施例22における基材B1およびハードコート液1の使用に代えて、それぞれ、
実施例23では基材B1を使用し、ハードコート液2を使用し、
実施例24では基材C2を使用し、ハードコート液3を使用し、
実施例25では基材D1を使用し、ハードコート液4を使用し、
それ以外は、実施例22と同様の方法で親水化処理、プライマー層(厚み10nm)及びハードコート層(厚み3μm)を形成した。
実施例22と同様の方法で被膜の付着性、キズ付き性、光学特性および表面水滴接触角を評価した。実施例23〜25のいずれについても、初期及び耐湿試験1および2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。キズ付き性を評価したが、いずれもキズはなかった。実施例23については曇価が13%であり優れた防眩性を示し、実施例24については表面水滴接触角が102度であり優れた撥水性を示し、実施例25については曇価が14%であり表面水滴接触角が105度であり優れた防眩性および撥水性を示した。
【0086】
以下の実施例26〜33はプライマー層のない実施例である。
実施例26
実施例1におけるプライマー層の形成を行わなかった他は実施例1と同じ基材B1を使用し実施例1と同様に親水化処理およびハードコート液1からハードコート被膜を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。初期及び耐湿試験1後にも全く被膜の剥離は生じず、耐湿試験2後には極一部に剥離が生じた。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。また、光学特性は可視光透過率が91%、曇価が0.1%であり、表面水滴接触角が86度であった。
【0087】
実施例27〜33
実施例26における基材B1、コロナ放電処理(5mm/s)およびハードコート液1の使用に代えて、それぞれ、
実施例27では基材B1を使用し、コロナ放電処理(5mm/s)を行い、ハードコート液2を使用し、
実施例28では基材C2を使用し、コロナ放電処理(5mm/s)を行い、ハードコート液3を使用し、
実施例29では基材D1を使用し、コロナ放電処理(5mm/s)を行い、ハードコート液4を使用し、
実施例30では基材B1を使用し、UVオゾン照射処理(15分)を行い、ハードコート液1を使用し、
実施例31では基材B1を使用し、UVオゾン照射処理(5分)を行い、ハードコート液1を使用し、
実施例32では基材B1を使用し、UVオゾン照射処理(2分)を行い、ハードコート液1を使用し、
実施例33では基材B1を使用し、コロナ放電処理(100mm/s)を行い、ハードコート液1を使用し、
それ以外は、実施例26と同様の方法でハードコート層(厚み3μm)を形成した。
実施例26と同様の方法で被膜の付着性、キズ付き性、光学特性および表面水滴接触角を評価した。実施例27〜33のいずれについても、初期及び耐湿試験1後にも全く被膜の剥離は生じず、耐湿試験2後には極一部に剥離が生じた。キズ付き性を評価したが、いずれもキズはなかった。実施例27については曇価が13%であり優れた防眩性を示し、実施例28については表面水滴接触角が103度であり優れた防汚性を示し、実施例29については曇価が14%であり表面水滴接触角が104度であり優れた防眩性および防汚性を示した。
実施例19〜33についての上記結果を表5〜表8にまとめて示す。
【0088】
比較例1
非晶質ポリレフィン基材B1の表面にハードコート液5をスピナー法により塗布し、その後に紫外線を照射してハードコート層(厚み3μm)を形成した。
実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価したところ、初期の付着性は「全面剥離」であった。この結果から、耐湿試験、耐擦傷性評価は行わなかった。
【0089】
比較例2
前記非晶質ポリレフィン基材B1を用い、実施例1と同様の方法で基材B1の表面をコロナ放電(5mm/s)で親水化処理をした(水滴接触角が40度)。この親水化処理済みの基材の表面にハードコート液5をスピナー法により塗布し、その後に紫外線を照射してハードコート層(厚み3μm)を形成した。
実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価したところ、初期の付着性は「全面剥離」であった。
【0090】
比較例3
前記非晶質ポリレフィン基材B1を用い、実施例1と同様の方法で基材B1の表面をコロナ放電(5mm/s)で親水化処理をした(水滴接触角が40度)。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.3質量%とビニルトリエトキシシランを1.1質量%含むエタノール溶液から調製したプライマー層用処理液を使用して、親水化処理した樹脂基材の表面に厚み10nmのプライマー層を形成した。その上に、ハードコート液5をスピナー法により塗布し、その後に紫外線を照射してハードコート層(厚み3μm)を形成した。
実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価したところ、初期の付着性は「全面剥離」であった。
【0091】
比較例4
非晶質ポリレフィン基材B1の表面にハードコート液1をバーコート法により塗布し、その後に紫外線を照射してハードコート層(厚み3μm)を形成した。実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価したところ、初期の付着性は「全面剥離」であった。
【0092】
比較例5
3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液から調製したプライマー層用処理液を使用して、非晶質ポリレフィン基材B1の表面に厚み10nmのプライマー層を形成した。その上に、ハードコート液1をバーコート法により塗布し、その後に紫外線を照射してハードコート層(厚み3μm)を形成した。
実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価したところ、初期の付着性は「全面剥離」であった。
比較例1〜5についての上記結果を表9にまとめて示す。
【0093】
実施例34〜41
非晶質ポリレフィン基材として、実施例34〜40に応じて、それぞれB1(実施例34)、A1(実施例35)、C2(実施例36)、C1(実施例37)、E1(実施例38)、D2(実施例39)、D1(実施例40)およびB1(実施例41)を用い、この表面に前記コロナ放電処理を毎秒5mmの速度で実施し、非晶質ポリオレフィン基材表面の水の接触角が35〜40度となるようにした。ついで実施例1と同様の方法でハードコート液1からハードコート被膜(膜厚3μm)を形成した。
次いで、このハードコート被膜の上にそれぞれ実施例34〜40に応じて真空蒸着によるTiO /SiO積層無機膜層(実施例34)、プラズマCVDによるSiOの無機膜層(実施例35)、プラズマCVDでTiOとSiOの積層無機膜層(実施例36)、プラズマCVDによるSiOの無機膜層(実施例37)、スパッタリングによるSiOの無機膜層(実施例38)、スパッタリングによるSiNの無機膜層(実施例39)、スパッタリングによるTiO/SiOの積層無機膜層(実施例40)およびスパッタリングによるITOの無機膜層(実施例41)を形成させた。
実施例26と同様の方法で被膜の付着性、キズ付き性および光学特性を評価した。実施例34〜41のいずれについても、初期及び耐湿試験1後にも全く被膜の剥離は生じず、耐湿試験2後には極一部に剥離が生じた。キズ付き性を評価したが、いずれもキズはなかった。
また実施例34,36、40はいずれも5%の可視光反射率を示し、実施例1の試料について同様に測定した可視光反射率9%よりも小さな値であり、優れた反射防止性能を示している。実施例35,37、38および39はいずれも優れた耐透湿性を示し、また実施例41は優れた透明導電性を示した。
【0094】
実施例42
実施例1と同様の方法で非晶質ポリレフィン基材B1の表面をコロナ放電(5mm/s)で親水化処理をした(水滴接触角が40度)。3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液から調製したプライマー層用処理液を使用して、親水化処理済みの基材B1の表面に厚み10nmのプライマー層を形成した。そしてその上に、実施例1と同様の方法でハードコート液1からハードコート被膜(膜厚3μm)を形成した。次いで、このハードコート被膜の上に真空蒸着によるTiO /SiO積層無機膜層(厚み100nm/100nm)を形成させた。
実施例26と同様の方法で被膜の付着性、キズ付き性および光学特性を評価した。初期、耐湿試験1後および耐湿試験2後にも全く被膜の剥離は生じなかった。キズ付き性を評価したが、いずれもキズはなかった。また可視光反射率は5%であり、優れた反射防止性能を示している。
実施例34〜42についての上記結果を表10及び表11にまとめて示す。
【0095】
実施例43
非晶質ポリレフィン基材C1に前記コロナ放電処理を毎秒100mmの速度で実施し、基材表面の水の接触角が58度となるように親水化処理をした。
次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液を調製し、さらに加水分解性基が加水分解するのに必要な量の水を添加し、十分攪拌して塗布液とした。上記の塗布液を用いて実施例1と同様の方法で厚み10nmのプライマー層を形成した。その後、実施例1と同様の方法でハードコート液1から膜厚3μmのハードコート被膜(屈折率1.53)を形成した。次いで、前記ハードコート被膜の上に前記屈折率調整用液1を塗布し、その後、実施例1と同じ条件で硬化して、膜厚が110nmで屈折率が1.72の屈折率調整層を形成した。その上に低屈折率用コート液8を塗布し、80℃で1時間加熱し、硬化させ、膜厚が100nmで屈折率が1.41の低屈折率層を形成した。得られた積層被膜の付着性を評価した。初期、耐湿試験1後および耐湿試験2後にも被膜の剥離がなく付着性に問題はなかった。実施例1と同様に前記キズ付き性、光学特性をそれぞれ評価したところ、キズはなく、可視光線透過率が94%、曇価が0.1%であった。そして可視光反射率を測定したところ5%であり、実施例1の試料について同様に測定した可視光反射率9%よりも小さな値であり、優れた反射防止性能を示している。
【0096】
実施例44
実施例43で使用した低屈折率用コート液8の代わりに低屈折率用コート液9(撥水性付与熱硬化型ハードコート液、硬化後の屈折率1.41)を使用したこと以外は実施例43と同様にして親水化処理済みの基材C1の上にプライマー層、ハードコート被膜および屈折率調整層および低屈折率層被膜を形成した。
【0097】
実施例45
実施例43で使用したハードコート液1の代わりにハードコート液2(防眩性付与ハードコート液)を使用したこと以外は実施例43と同様にして親水化処理済みの基材C1の上にプライマー層、ハードコート被膜および屈折率調整層および低屈折率層被膜を形成した。
【0098】
実施例44および45で得られた被膜の付着性、キズ付き性および光学特性について実施例43と同様に評価した。初期及び耐湿試験1,2後にも被膜の剥離がなく付着性に問題はなく、キズ付き性についてもキズはなかった。実施例44および45はともに5%の可視光反射率を有し優れた反射防止性能を示した。また実施例44について汚れ性試験および表面水滴接触角を測定したところそれぞれ「汚れ残しなし」および103度であり、優れた防汚性を示した。また実施例45は優れた防眩性を示した。
【0099】
実施例46
実施例43において低屈折率用コート液8を使用して低屈折率層を形成する代わりに真空蒸着によるSiOの低屈折率無機層を形成した他は実施例43と同様に親水化処理済みの基材C1の上に、プライマー層、ハードコート被膜、屈折率調整層および低屈折率無機層を形成した。初期及び耐湿試験1,2後にも被膜の剥離がなく付着性に問題はなかった。キズ付き性についてはキズはなく、光学特性について、5%の可視光反射率を有し優れた反射防止性能を示した。
【0100】
実施例47
実施例43において形成した屈折率調整層を形成せずにハードコート被膜の上に直接低屈折率用コート液9を塗布し加熱硬化させる他は実施例43と同様に、親水化処理済みの基材C1の上に、プライマー層、ハードコート被膜および低屈折率層被膜を形成した。初期及び耐湿試験1,2後にも被膜の剥離がなく付着性に問題はなかった。また6%の可視光反射率を有し優れた反射防止性能を示した。また表面水滴接触角は103度であり優れた防汚性を示した。キズ付き性についてはキズはなかった。
【0101】
実施例48
非晶質ポリレフィン基材C1に前記コロナ放電処理を毎秒100mmの速度で実施し、基材表面の水の接触角が58度となるように親水化処理をした。次いで、3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.2質量%とビニルトリエトキシシランを1.0質量%含むエタノール溶液を調製し、さらに加水分解性基が加水分解するのに必要な量の水を添加し、十分攪拌して塗布液とした。上記の塗布液を用いて実施例1と同様の方法で厚み10nmのプライマー層を形成した。その後、地ハードコート層として前記ハードコート液7を塗布し、その後、実施例1と同じ条件で硬化することにより、4μmの厚みの下地ハードコート層を形成した。その下地ハードコート層の上にハードコート液6をスピナー法で塗布し、その後、同様に光硬化させることにより、0.15μmの厚みのハードコート層を形成した。その上に真空蒸着によるTiO /SiO積層無機膜層を形成させた。ハードコート液6で使用した微粒子(D)の粒径が実施例19のそれよりも小さいので、光の拡散状態が均一であり均一な防眩性が得られることが観察された。また6%の可視光反射率を有し優れた反射防止性能を示した。
実施例43〜48についての上記結果を表12及び表13にまとめて示す。
【0102】
実施例49
実施例6における基材D2ならびにプライマー層用処理液の原料 3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 0.8質量%および3−アミノプロピルトリメトキシシラン 0.2質量%に代えて、基材B1を使用し、3−アミノプロピルトリエトキシシラン1.0%とし、それ以外は、実施例1と同様の方法でプライマー層及びハードコート液1から被膜を形成した。
さらに実施例1と同様の方法で被膜の付着性を評価した。初期、耐湿試験1および耐湿試験2の後にも全く被膜の剥離は生じなかった。実施例1と同様の方法でキズ付き性を評価したが、キズはなかった。この結果を表3及び表4にまとめて示す。
ただし、前記実施例と比較例において記載のないデータも表中には入れている場合もある。
【0103】
【表1】
Figure 2004017410
【0104】
【表2】
Figure 2004017410
【0105】
【表3】
Figure 2004017410
【0106】
【表4】
Figure 2004017410
【0107】
【表5】
Figure 2004017410
【0108】
【表6】
Figure 2004017410
【0109】
【表7】
Figure 2004017410
【0110】
【表8】
Figure 2004017410
【0111】
【表9】
Figure 2004017410
【0112】
【表10】
Figure 2004017410
【0113】
【表11】
Figure 2004017410
【0114】
【表12】
Figure 2004017410
【0115】
【表13】
Figure 2004017410

Claims (14)

  1. 非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面を親水化処理し、次いで(A)多官能アクリレート、(B)アミノシランおよび(C)コロイダルシリカを含有するハードコート液を塗布した後、活性エネルギー線を照射してハードコート層を形成させることを特徴とするハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品の製造方法。
  2. 前記親水化処理した非晶質ポリオレフィン樹脂基材の表面に、前記ハードコート液塗布の前に、有機珪素化合物を含むプライマー層用処理液を塗布してプライマー層を被覆する請求項1記載の製造方法。
  3. 前記プライマー層用処理液の有機珪素化合物は、下記式(1)
    nSi(R4−n     (1)
    ここで、Rはメタクリロキシ基、アクリロキシ基、ビニル基、アリル基、アミノ基から選ばれる官能基を有する有機官能基であり、Rはアルコキシル基、アセトキシル基及び塩素から選ばれる1種もしくは複数の加水分解基であり、nは1〜3の整数である、
    で表される請求項2記載の製造方法。
  4. 前記(B)アミノシランは、下記式(2)
    Si(R(NHR)bNRH)4−a   (2)
    ここで、Xは炭素原子数1〜6のアルコキシル基であり、R、Rは同一もしくは異なる2価の炭化水素基であり、Rは水素原子または1価の炭化水素基であり、aは1〜3の整数であり、bは0または1〜6の整数である、
    で表される請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ハードコート液は、さらに0.05〜10μmの平均粒径を有する微粒子および/またはフルオロアルキルシランを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 前記フルオロアルキルシランは下記式(3)
    cRdSi(OR4−c−d   (3)
    ここで、Rは炭素原子数1〜12のフッ素アルキル基であり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、アリール基、アルケニル基、ハロゲン化アルキル基またはハロゲン化アリール基であり、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基、アシル基であり、cは1、2または3であり、dは0、1または2である。但し、c+dは1、2または3である、
    で表される請求項5記載の製造方法。
  7. 前記ハードコート液はさらに重合開始剤、加水分解触媒および物性調節剤の少なくとも1種を含有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記物性調節剤はエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートおよびポリエステル(メタ)アクリレートの1種または複数種からなる請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記ハードコート層の上に金属またはその無機化合物からなる無機膜層を形成させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記無機膜層はTi,Sn,In,Si,Al,W,Mo,Ag,Zn,Zr,Mg,CrおよびNiからなる群より選ばれる少なくとの1種の金属、該金属の酸化物、および該金属の窒化物から選択される少なくとも一つの無機化合物を真空蒸着法、プラズマCVD法、スパッタリング法またはイオンプレーティング法により形成される請求項9に記載の製造方法。
  11. 前記無機膜層は単層または多層の反射防止層である請求項9または10に記載の製造方法。
  12. 前記ハードコート層の上に単層または多層の有機反射防止層を形成させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記ハードコート層と前記反射防止層との間に、
    (J)多官能アクリレート、
    (K)下記式(4)
    nSiZ4−n   (4)
    ここでRはメタクリロキシ基、アクリロキシ基、ビニル基、アリル基およびアミノ基から選ばれる官能基を有する有機官能基であり、Zはアルコキシル基、アセトキシル基及び塩素から選ばれる1種もしくは複数種の加水分解性基であり、nは1、2または3である、
    で表されるシラン化合物および
    (L)屈折率調整用微粒子
    を含有する液を塗布した後、硬化させて形成させた屈折率調整層を設ける請求項11または12に記載の製造方法。
  14. 請求項1〜13のいずれか1項に記載された製造方法により製造されたハードコート被覆非晶質ポリオレフィン樹脂物品。
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