JP2004051931A - 希土類珪酸塩蛍光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高輝度で且つ輝度劣化を一層低減させた希土類珪酸塩蛍光体を提供する。
【解決手段】希土類珪酸塩蛍光体の粒子径並びに粒子径分布を、中央粒子径が4〜9μmであり、粒径重量分布の4分位偏差値(QD)が0.25以下であり、かつ、粒径重量分布の10分位偏差値(DD)が0.42以下とする。
【選択図】図1
【解決手段】希土類珪酸塩蛍光体の粒子径並びに粒子径分布を、中央粒子径が4〜9μmであり、粒径重量分布の4分位偏差値(QD)が0.25以下であり、かつ、粒径重量分布の10分位偏差値(DD)が0.42以下とする。
【選択図】図1
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、蛍光膜にして高電流密度の電子線で励起して発光させた際、輝度劣化が少なく、特に投写型テレビジョンや高輝度ディスプレー管の蛍光膜用として推奨される希土類珪酸塩蛍光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン(TV)の大型化に伴い、投写型TVが普及し始めている。投写型TVはそれぞれ青(B)、緑(G)、赤(R)の蛍光体からなる蛍光面をもった7インチ程度の3つの小型ブラウン管(投射管)からの発光をレンズを用いて背面からスクリーン上に拡大投写してこれらを合成して1つの画像を再生するTVであり、そのための各色の小型ブラウン管は通常の一般のブラウン管に比べて50〜100倍の高い電流密度で動作させる。従って、投写型TVに使用される蛍光体には、一般に発光輝度が高いこと、できるだけ輝度と電流密度との関係においてリニアリティがある(γ特性が良好である)こと、長時間の電子線励起に対して劣化が少ない(輝度劣化が少ない)こと、蛍光面の温度が上昇しても輝度低下の少ない(温度特性が良好である)こと等の特性を有することが要求される。その上、近年は、ブラウン管の表示画像の高解像度化の要求が高まり、従来より各色電子ビームのスポット径を絞る必要が生じてきており、蛍光面に照射される電子ビームの電流密度が更に増え、蛍光体に対する負荷が大きくなって劣化し易いため、使用される蛍光体は従来より更に高輝度で且つ輝度劣化の少ない蛍光体が望まれるようになった。
【0003】
現在、投写管用の蛍光体としては、赤色としてY2O3:Eu蛍光体が、緑色としてY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体、Y3Al5O12:Tb蛍光体、Y2SiO5:Tb蛍光体、Zn2SiO4:Mn蛍光体等が、また、青色としてはZnS:Ag,Al蛍光体が主に用いられている。
【0004】
ところで、投写管用の緑色発光成分の蛍光体の中でも上記のY2SiO5:Tb蛍光体は発光色度が良好で発光効率が比較的高く、輝度−電流特性(γ特性)も優れており、また温度変化に対して輝度の変化が比較的少なく総合的に見てバランスの取れた蛍光体として有用視されてきた。
【0005】
しかし、このY2SiO5:Tbをはじめとする希土類珪酸塩蛍光体は、これを用いて実際の蛍光膜とした時の輝度劣化特性で見ると、必ずしも満足すべきものではなく、輝度向上と共に輝度劣化について一層の改善が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、輝度劣化を一層低減させた輝度維持率の高い希土類珪酸塩蛍光体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため、Y2SiO5:Tbをはじめとする希土類珪酸塩蛍光体の粉体特性、更に詳細に粒子径及び粒子径分布などと発光特性との関係について検討した結果、ある範囲の粒子径及び粒子径分布を持った下記構成の希土類珪酸塩蛍光体とすれば、これを用いた蛍光膜は輝度劣化が少なくなり、上記目的が達成されることがわかり、本発明に至った。本発明は下記の構成からなる。
【0008】
(1)中央粒子径が4〜9μmであり、粒径重量分布の4分位偏差値(QD)が0.25以下で、かつ、粒径重量分布の10分位偏差値(DD)が0.42以下であることを特徴とする希土類珪酸塩蛍光体。
(2)前記4分位偏差値(QD)が0.10〜0.20で、かつ、前記10分位偏差値(DD)が0.20〜0.35であることを特徴とする前記(1)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0009】
(3)前記蛍光体の組成式が(Ln1−x Ln’x)2SiO5で表されることを特徴とする前記(1)または(2)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
(但し、LnはY、La、Gd及びLuの中の少なくとも1種であり、Ln’はTb、Eu、Ceのうちの各少なくとも1種であり、xは1×10−3≦x≦2×10−1の範囲の数である。)
(4)前記組成式におけるLnがYであることを特徴とする前記(3)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0010】
(5)前記組成式におけるLn’がTbであることを特徴とする前記(3)または(4)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
(6)前記蛍光体の粒子表面がアルカリ土類金属燐酸塩化合物で被覆されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0011】
(7)前記アルカリ土類金属燐酸塩化合物の被覆量がアルカリ土類金属に換算して蛍光体に対して50〜2000μg/gの範囲内にあることを特徴とする前記(6)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の物蛍光体は、次のようにして合成される。蛍光体原料としては、▲1▼母体の一構成成分である、Y、La、Gd及びLuの1種以上の酸化物もしくはこれらの硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、蓚酸塩等の希土類化合物、▲2▼母体の他の構成成分である、二酸化珪素等の珪素化合物、▲3▼付活剤成分であるTb、Eu及びCeの1種以上の酸化物もしくはこれらの硝酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物、蓚酸塩等の希土類化合物、更に必要に応じてこれにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のバロゲン化物やハロゲン化アンモニウム等をフラックスとして配合し、湿式又は乾式で充分に混合する。なお、上記蛍光体原料中、希土類化合物原料は一旦溶解してから混合し、蓚酸塩等で共沈させた後、珪素化合物及びフラックスと混合する方がより発光特性の良い蛍光体を得ることができる。また、上記▲1▼及び▲2▼の母体構成原料は粒子形状が球状のものとか粒径分布の狭い原料を使用することにより、得られる蛍光体の粒子形状(たとえば、球状、板状等)や粒度分布を改良し、また制御する事が容易となる。一方所望の中央粒子径4〜9μmを得るためには、目的粒子径に応じた所定粒子径を持つ原料Y2O3選択する必要がある。つまり小さな原料を選択すれば、小さい粒子径の希土類珪酸塩蛍光体を得ることが出来るし、大きい粒子径の原料を選択すれば、大きい粒子径の蛍光体を得ることができる。
【0013】
上記のような考えで選択された原料を所定量秤取し、この原料混合物をルツボ等の耐熱容器に充填し、中性雰囲気中もしくは還元雰囲気中で1000〜1700℃で1〜12時間で1回以上焼成する。但し、得られる蛍光体の発光輝度をより高め得る点で、少なくとも必ず一度は1300℃以上で焼成することが必要である。また、上記▲3▼の原料としてEuの化合物を用いる場合は、中性雰囲気もしくは空気中で焼成することが好ましい。焼成を終えた焼成物を粉砕し、薄い鉱酸で洗浄した後、水洗を行い更にボールミル等による分散処理を施した後、所望の粒度分布が得られる為に、不要な大粒子成分を水篩いや水簸等の湿式分級操作で除き、更に不要な小粒子成分は上記同様の水簸分級操作で除き、分布をシャープなものとする、また更に必要に応じて表面コートを施し、其の後乾燥させた後、メッシュにて乾式篩いを行うことにより本発明の希土類珪酸塩蛍光体が得られる。所定の分級処理を終えた蛍光体は、また必要に応じて更に400〜1600℃の温度範囲で、空気中等の酸化性雰囲気中においてアニールを行うことにより、一層輝度劣化の少ない高輝度の蛍光体を得ることが出来る。
【0014】
焼成し洗浄、分散処理、分級処理、表面コート処理等の処理を終えて得られた蛍光体は、粒子の中央粒径がおよそ4〜9μmの範囲にあり、また粒子重量分布の広がりの尺度を表す4分位偏差値(Quartil Deviation=QD)は0.25以下で、かつ、10分位偏差値(Decile Deviation=DD)ついては0.42以下となるような分級設計となっていた。上記の様にして得られた本発明の蛍光体を用い、蛍光膜を形成したところ、膜厚が薄く緻密な膜構造を有する蛍光膜が得られた。また、これを電流密度の高い電子線で刺激し発光させたときの輝度劣化は、従来の蛍光体を用いた場合よりも小さくなっている。なお、本発明における上記の粒子径はコールターカウンターを用いて測定し、重量換算で解析された値である。
【0015】
更に、得られた蛍光体の表面にCa、Zn及びMgの中の少なくとも1種以上のアルカリ土類金属の燐酸塩化合物を通常の方法で被覆し、この蛍光体を用いて蛍光膜を形成したところ、その塗膜構造は改善され、これを発光させたときの輝度劣化が一層少なくなり好ましい。このときのアルカリ土類燐酸塩化合物としてはアルカリ土類金属に換算して、蛍光体に対して50〜2000μg/gの範囲内にあることが好ましい。
【0016】
図1及び図2は希土類珪酸塩蛍光体の代表例である、(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体について、中央粒子径が6.0±0.5μmの範囲にあるもので、粒径重量分布が異なる蛍光体を用いて作られた蛍光膜について、粒径重量分布と輝度維持率との関係を見たグラフである。ここで図1は粒径重量分布の測定尺度を4分位偏差値(QD)で示したものであり、一方図2は粒径重量分布の測定尺度を10分位偏差値(DD)で示したものである。図1及び図2において、縦軸の輝度維持率は、それぞれの蛍光体からなる各蛍光膜の一部分の特定個所に加速電圧が27KVで電流密度が100μA/cm2である電子線を10分間連続照射して予め所定部の蛍光膜を強制劣化させておき、次にこの蛍光膜に加速電圧が20KVで電流密度が2μA/cm2である電子線を先の予め強制照射させていた部分と近接する未強制照射部分とに併せて照射し発光させ、予め強制照射を受け強制劣化させた部分の発光輝度(Br10)と強制照射を受けてない強制劣化していない部分の発光輝度(Br0)とをそれぞれ測定し、強制劣化させていない部分の発光輝度(Br0)に対する強制劣化させた部分の発光輝度(Br10)の割合を百分率で表した値{(Br10/Br0)×100}で示したものである。従って、この輝度維持率が大である程、その蛍光膜の輝度の劣化が少ないことになる。本発明において、蛍光体の発光輝度並びに輝度維持率に関する評価は全てこのように蛍光膜として評価したものである。
【0017】
なお、輝度維持率を測定するための蛍光膜は、酢酸バリウム水溶液(クッション液)の入った容器の底に2cm×2cmのガラス板を沈めておき、その中に所定量の蛍光体をカリ水ガラスを含む液で縣濁させたスラリーを投入し、攪拌後そのまま静置し、蛍光体をこのガラス板の一面に沈降させた後、沈降面上部のクッションを抜き取った後、乾燥しガラス板上に蛍光膜を形成して作製される。
【0018】
次にこのテストピース上の蛍光膜の一部分に加速電圧が27KVで電流密度が100μA/cm2である電子線を10分間連続照射して蛍光膜を強制劣化させた後、このテストピース上の蛍光膜に加速電圧が20KVで電流密度が2μA/cm2である電子線を照射して発光させ、テストピース上の蛍光膜の強制劣化させた部分の発光輝度(Br10)と強制劣化させていない部分の発光輝度(Br0)を輝度計を用いてそれぞれ測定した。
【0019】
図1からわかるように、粒径重量分布のQDがほぼ0.25以下の粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、加速電圧27KV、電流密度100μA/cm2の電子線を10分間照射して蛍光膜を強制劣化しても90%以上の実用的に満足する輝度維持率を維持しており、更に粒径重量分布のQDがほぼ0.10〜0.20である粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、この輝度維持率がほぼ98%であって殆ど輝度劣化が見られない。
【0020】
また、図2からわかるように、粒径重量分布のDDがほぼ0.42以下の粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、加速電圧27KV、電流密度100μA/cm2の電子線を10分間照射して蛍光膜を強制劣化しても90%以上の実用的に満足する輝度維持率を維持しており、更に粒径重量分布のDDがほぼ0.20〜0.35である粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、やはりこの輝度維持率がほぼ98%であってほとんど輝度劣化が見られない。一方、粒径重量分布のDDが0.20より小であるような粒径重量分布を持った蛍光体により蛍光膜を形成すると、電子線照射により蛍光膜が薄くなるためガラス基盤の膜焼けの現象が見られる場合があるので好ましくない。
【0021】
従って、蛍光膜形成のために用いる蛍光体の粒径重量分布のQDがほぼ0.25以下、より好ましくは0.10〜0.20であり、かつDDがほぼ0.42以下、より好ましくは0.20〜0.35であるような粒度分布を有する希土類珪酸塩蛍光体からなる蛍光膜は、従来の希土類珪酸塩蛍光体からなる蛍光膜に比べて輝度維持率の高い蛍光膜が得られる。
【0022】
なお、図1及び図2には組成式が(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体について、蛍光膜の輝度維持率とその蛍光膜形成のために用いられる蛍光体の粒径重量分布のQ.D.及びD.D.との関係について例示したが、組成式(Ln1−x Ln’x)2SiO5で表される(Y0.93Tb0.07)2SiO5以外の希土類珪酸塩蛍光体についても、蛍光膜の輝度維持率と各蛍光膜形成のために用いられる希土類珪酸塩蛍光体の粒径重量分布のQ.D.及びD.D.との間には図1並びに図2に示した関係とほぼ類似の相関関係にあることがわかった。
【0023】
本発明の希土類珪酸塩蛍光体の中央粒径はおよそ4〜9μmとするのが好ましい。中央粒径がおよそ9μmより大である希土類珪酸塩蛍光体を用いた蛍光膜では、蛍光膜の初期輝度は向上する傾向にあるものの蛍光膜を形成する際の膜厚が目的の設計の膜厚より厚くなり、この蛍光膜に電子線を膜の観察面の裏側から照射した場合、膜の観察面側に取り出される発光が広がると言う問題を起こし、フォーカスが良くなく、そのため解像度が悪化し目的とする解像度特性が得られないので好ましくない。一方、中央粒径がおよそ4μmより小さい希土類珪酸塩蛍光体を蛍光膜として用いると、得られる蛍光膜の発光輝度が低下するので好ましくない。
【0024】
なお、本発明の蛍光体は(Ln1−xLn’x)2SiO5で表される組成式を有する希土類珪酸塩蛍光体からなるが、この組成を主相とし、これと例えば(Ln1−xLn’x)2Si2O7組成の様な結晶が不純物相として副生されていて両成分の混晶となっていても良く、これらの不純物相の含有量が全体のほぼ5モル%以下であれば、発光輝度や輝度維持率を低下させることが少ない。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明する。
〔実施例1〕
Y2O3(4μm) 21.0g
Tb4O7 2.6g
SiO2 6.1g
【0026】
上記の蛍光体原料を充分に混合し、アルミナルツボに詰めて還元雰囲気中において1600℃で2時間焼成した。得られた焼成物を粉砕、分級、水洗の各後処理を施した後、従来の方法によりこの蛍光体の表面に蛍光体に対して0.2重量%の燐酸カルシウムを被覆させて実施例1の希土類珪酸塩蛍光体を得た。
【0027】
このようにして製造された蛍光体はX線回折分析並びに化学分析によりその結晶の組成を調べたところ、その組成が(Y0.93Tb0.07)2SiO5である希土類珪酸塩蛍光体であった。
【0028】
また、この蛍光体をコールターカウンターで粒子径並びに粒径分布を測定したところ、中央粒径が6.0μmであり、粒径重量分布のQD及びDDがそれぞれ0.17及び0.30であった。
【0029】
この蛍光体を前述と同様の方法でガラス板のテストピース上に沈降塗布して蛍光膜を作製し、先に記載の輝度維持率評価法にて、評価を行ったところ輝度維持率は98%であり、ほとんど輝度劣化が起こっていなかった。
【0030】
〔実施例2〜10〕
希土類蛍光体の母体種、希土類原料とSiO2の投入割合の違い、及び希土類附活剤種等の違いの影響を見るため、表1に記載した内容にて所定の原料選択と添加量にて調製し、実施例1の処理操作と同様にして実施例2〜11の蛍光体を製造した。
【0031】
このようにして得られた各蛍光体の組成をX線回折分析並びに化学分析によりを調べた結果、並びにコールターカウンターにより求めた中央粒子径、粒径重量分布のQD及びDDを同じく表1に示す。
【0032】
〔比較例〕
得られた焼成物に分級処理を施さなかった以外は実施例1の蛍光体と同様にして、その組成(Y0.93Tb0.07)2SiO5である比較例の希土類珪酸塩蛍光体を製造した。この蛍光体の粒子径及び粒子径分布は、中央粒径が6.7μmでありQD及びDDがそれぞれ0.27及び0.45であった。この蛍光体の輝度維持率を実施例1の蛍光体と同様にして測定したところ、輝度維持率は85.0%であった。
【0033】
【表1】
表1から分かるように、蛍光体の結晶母体がYからGd,La,Lu等に変化しても、輝度維持率はYの場合に近い値を示しており、何れも85%を上回っている。またSiO2添加量、希土類附活剤の添加量の違いがある場合でも輝度維持率については、依然95%以上の高いレベルであることが示された。
これは蛍光体の粒径分布特性を本発明の様に設定すれば、実施例1と同様な効果が上がることを示している。従来は上記のような蛍光体の製作条件を変えても、95%程度の高レベルの値を得ることが出来なかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の蛍光体は上記の構成を採用することにより、良好な輝度と継続的に高電流密度の電子線にさらされてもで輝度劣化が抑制され、特に投写管蛍光面用の蛍光体として有用である。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希土類珪酸塩蛍光体の1例である、(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体の粒径重量分布の4分位偏差値(QD)とその蛍光体を用いた蛍光膜の輝度維持率との関係を例示する図である。
【0036】
【図2】本発明の希土類珪酸塩蛍光体の1例である、(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体の粒径重量分布の10分位偏差値(DD)とその蛍光体を用いた蛍光膜の輝度維持率との関係を例示する図である。
【産業上の利用分野】
本発明は、蛍光膜にして高電流密度の電子線で励起して発光させた際、輝度劣化が少なく、特に投写型テレビジョンや高輝度ディスプレー管の蛍光膜用として推奨される希土類珪酸塩蛍光体に関する。
【0002】
【従来の技術】
テレビジョン(TV)の大型化に伴い、投写型TVが普及し始めている。投写型TVはそれぞれ青(B)、緑(G)、赤(R)の蛍光体からなる蛍光面をもった7インチ程度の3つの小型ブラウン管(投射管)からの発光をレンズを用いて背面からスクリーン上に拡大投写してこれらを合成して1つの画像を再生するTVであり、そのための各色の小型ブラウン管は通常の一般のブラウン管に比べて50〜100倍の高い電流密度で動作させる。従って、投写型TVに使用される蛍光体には、一般に発光輝度が高いこと、できるだけ輝度と電流密度との関係においてリニアリティがある(γ特性が良好である)こと、長時間の電子線励起に対して劣化が少ない(輝度劣化が少ない)こと、蛍光面の温度が上昇しても輝度低下の少ない(温度特性が良好である)こと等の特性を有することが要求される。その上、近年は、ブラウン管の表示画像の高解像度化の要求が高まり、従来より各色電子ビームのスポット径を絞る必要が生じてきており、蛍光面に照射される電子ビームの電流密度が更に増え、蛍光体に対する負荷が大きくなって劣化し易いため、使用される蛍光体は従来より更に高輝度で且つ輝度劣化の少ない蛍光体が望まれるようになった。
【0003】
現在、投写管用の蛍光体としては、赤色としてY2O3:Eu蛍光体が、緑色としてY3(Al,Ga)5O12:Tb蛍光体、Y3Al5O12:Tb蛍光体、Y2SiO5:Tb蛍光体、Zn2SiO4:Mn蛍光体等が、また、青色としてはZnS:Ag,Al蛍光体が主に用いられている。
【0004】
ところで、投写管用の緑色発光成分の蛍光体の中でも上記のY2SiO5:Tb蛍光体は発光色度が良好で発光効率が比較的高く、輝度−電流特性(γ特性)も優れており、また温度変化に対して輝度の変化が比較的少なく総合的に見てバランスの取れた蛍光体として有用視されてきた。
【0005】
しかし、このY2SiO5:Tbをはじめとする希土類珪酸塩蛍光体は、これを用いて実際の蛍光膜とした時の輝度劣化特性で見ると、必ずしも満足すべきものではなく、輝度向上と共に輝度劣化について一層の改善が望まれていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、輝度劣化を一層低減させた輝度維持率の高い希土類珪酸塩蛍光体を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため、Y2SiO5:Tbをはじめとする希土類珪酸塩蛍光体の粉体特性、更に詳細に粒子径及び粒子径分布などと発光特性との関係について検討した結果、ある範囲の粒子径及び粒子径分布を持った下記構成の希土類珪酸塩蛍光体とすれば、これを用いた蛍光膜は輝度劣化が少なくなり、上記目的が達成されることがわかり、本発明に至った。本発明は下記の構成からなる。
【0008】
(1)中央粒子径が4〜9μmであり、粒径重量分布の4分位偏差値(QD)が0.25以下で、かつ、粒径重量分布の10分位偏差値(DD)が0.42以下であることを特徴とする希土類珪酸塩蛍光体。
(2)前記4分位偏差値(QD)が0.10〜0.20で、かつ、前記10分位偏差値(DD)が0.20〜0.35であることを特徴とする前記(1)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0009】
(3)前記蛍光体の組成式が(Ln1−x Ln’x)2SiO5で表されることを特徴とする前記(1)または(2)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
(但し、LnはY、La、Gd及びLuの中の少なくとも1種であり、Ln’はTb、Eu、Ceのうちの各少なくとも1種であり、xは1×10−3≦x≦2×10−1の範囲の数である。)
(4)前記組成式におけるLnがYであることを特徴とする前記(3)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0010】
(5)前記組成式におけるLn’がTbであることを特徴とする前記(3)または(4)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
(6)前記蛍光体の粒子表面がアルカリ土類金属燐酸塩化合物で被覆されていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0011】
(7)前記アルカリ土類金属燐酸塩化合物の被覆量がアルカリ土類金属に換算して蛍光体に対して50〜2000μg/gの範囲内にあることを特徴とする前記(6)記載の希土類珪酸塩蛍光体。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明の物蛍光体は、次のようにして合成される。蛍光体原料としては、▲1▼母体の一構成成分である、Y、La、Gd及びLuの1種以上の酸化物もしくはこれらの硝酸塩、炭酸塩、水酸化物、蓚酸塩等の希土類化合物、▲2▼母体の他の構成成分である、二酸化珪素等の珪素化合物、▲3▼付活剤成分であるTb、Eu及びCeの1種以上の酸化物もしくはこれらの硝酸塩、炭酸塩、塩化物、水酸化物、蓚酸塩等の希土類化合物、更に必要に応じてこれにアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のバロゲン化物やハロゲン化アンモニウム等をフラックスとして配合し、湿式又は乾式で充分に混合する。なお、上記蛍光体原料中、希土類化合物原料は一旦溶解してから混合し、蓚酸塩等で共沈させた後、珪素化合物及びフラックスと混合する方がより発光特性の良い蛍光体を得ることができる。また、上記▲1▼及び▲2▼の母体構成原料は粒子形状が球状のものとか粒径分布の狭い原料を使用することにより、得られる蛍光体の粒子形状(たとえば、球状、板状等)や粒度分布を改良し、また制御する事が容易となる。一方所望の中央粒子径4〜9μmを得るためには、目的粒子径に応じた所定粒子径を持つ原料Y2O3選択する必要がある。つまり小さな原料を選択すれば、小さい粒子径の希土類珪酸塩蛍光体を得ることが出来るし、大きい粒子径の原料を選択すれば、大きい粒子径の蛍光体を得ることができる。
【0013】
上記のような考えで選択された原料を所定量秤取し、この原料混合物をルツボ等の耐熱容器に充填し、中性雰囲気中もしくは還元雰囲気中で1000〜1700℃で1〜12時間で1回以上焼成する。但し、得られる蛍光体の発光輝度をより高め得る点で、少なくとも必ず一度は1300℃以上で焼成することが必要である。また、上記▲3▼の原料としてEuの化合物を用いる場合は、中性雰囲気もしくは空気中で焼成することが好ましい。焼成を終えた焼成物を粉砕し、薄い鉱酸で洗浄した後、水洗を行い更にボールミル等による分散処理を施した後、所望の粒度分布が得られる為に、不要な大粒子成分を水篩いや水簸等の湿式分級操作で除き、更に不要な小粒子成分は上記同様の水簸分級操作で除き、分布をシャープなものとする、また更に必要に応じて表面コートを施し、其の後乾燥させた後、メッシュにて乾式篩いを行うことにより本発明の希土類珪酸塩蛍光体が得られる。所定の分級処理を終えた蛍光体は、また必要に応じて更に400〜1600℃の温度範囲で、空気中等の酸化性雰囲気中においてアニールを行うことにより、一層輝度劣化の少ない高輝度の蛍光体を得ることが出来る。
【0014】
焼成し洗浄、分散処理、分級処理、表面コート処理等の処理を終えて得られた蛍光体は、粒子の中央粒径がおよそ4〜9μmの範囲にあり、また粒子重量分布の広がりの尺度を表す4分位偏差値(Quartil Deviation=QD)は0.25以下で、かつ、10分位偏差値(Decile Deviation=DD)ついては0.42以下となるような分級設計となっていた。上記の様にして得られた本発明の蛍光体を用い、蛍光膜を形成したところ、膜厚が薄く緻密な膜構造を有する蛍光膜が得られた。また、これを電流密度の高い電子線で刺激し発光させたときの輝度劣化は、従来の蛍光体を用いた場合よりも小さくなっている。なお、本発明における上記の粒子径はコールターカウンターを用いて測定し、重量換算で解析された値である。
【0015】
更に、得られた蛍光体の表面にCa、Zn及びMgの中の少なくとも1種以上のアルカリ土類金属の燐酸塩化合物を通常の方法で被覆し、この蛍光体を用いて蛍光膜を形成したところ、その塗膜構造は改善され、これを発光させたときの輝度劣化が一層少なくなり好ましい。このときのアルカリ土類燐酸塩化合物としてはアルカリ土類金属に換算して、蛍光体に対して50〜2000μg/gの範囲内にあることが好ましい。
【0016】
図1及び図2は希土類珪酸塩蛍光体の代表例である、(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体について、中央粒子径が6.0±0.5μmの範囲にあるもので、粒径重量分布が異なる蛍光体を用いて作られた蛍光膜について、粒径重量分布と輝度維持率との関係を見たグラフである。ここで図1は粒径重量分布の測定尺度を4分位偏差値(QD)で示したものであり、一方図2は粒径重量分布の測定尺度を10分位偏差値(DD)で示したものである。図1及び図2において、縦軸の輝度維持率は、それぞれの蛍光体からなる各蛍光膜の一部分の特定個所に加速電圧が27KVで電流密度が100μA/cm2である電子線を10分間連続照射して予め所定部の蛍光膜を強制劣化させておき、次にこの蛍光膜に加速電圧が20KVで電流密度が2μA/cm2である電子線を先の予め強制照射させていた部分と近接する未強制照射部分とに併せて照射し発光させ、予め強制照射を受け強制劣化させた部分の発光輝度(Br10)と強制照射を受けてない強制劣化していない部分の発光輝度(Br0)とをそれぞれ測定し、強制劣化させていない部分の発光輝度(Br0)に対する強制劣化させた部分の発光輝度(Br10)の割合を百分率で表した値{(Br10/Br0)×100}で示したものである。従って、この輝度維持率が大である程、その蛍光膜の輝度の劣化が少ないことになる。本発明において、蛍光体の発光輝度並びに輝度維持率に関する評価は全てこのように蛍光膜として評価したものである。
【0017】
なお、輝度維持率を測定するための蛍光膜は、酢酸バリウム水溶液(クッション液)の入った容器の底に2cm×2cmのガラス板を沈めておき、その中に所定量の蛍光体をカリ水ガラスを含む液で縣濁させたスラリーを投入し、攪拌後そのまま静置し、蛍光体をこのガラス板の一面に沈降させた後、沈降面上部のクッションを抜き取った後、乾燥しガラス板上に蛍光膜を形成して作製される。
【0018】
次にこのテストピース上の蛍光膜の一部分に加速電圧が27KVで電流密度が100μA/cm2である電子線を10分間連続照射して蛍光膜を強制劣化させた後、このテストピース上の蛍光膜に加速電圧が20KVで電流密度が2μA/cm2である電子線を照射して発光させ、テストピース上の蛍光膜の強制劣化させた部分の発光輝度(Br10)と強制劣化させていない部分の発光輝度(Br0)を輝度計を用いてそれぞれ測定した。
【0019】
図1からわかるように、粒径重量分布のQDがほぼ0.25以下の粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、加速電圧27KV、電流密度100μA/cm2の電子線を10分間照射して蛍光膜を強制劣化しても90%以上の実用的に満足する輝度維持率を維持しており、更に粒径重量分布のQDがほぼ0.10〜0.20である粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、この輝度維持率がほぼ98%であって殆ど輝度劣化が見られない。
【0020】
また、図2からわかるように、粒径重量分布のDDがほぼ0.42以下の粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、加速電圧27KV、電流密度100μA/cm2の電子線を10分間照射して蛍光膜を強制劣化しても90%以上の実用的に満足する輝度維持率を維持しており、更に粒径重量分布のDDがほぼ0.20〜0.35である粒径分布をもった蛍光体からなる蛍光膜の場合、やはりこの輝度維持率がほぼ98%であってほとんど輝度劣化が見られない。一方、粒径重量分布のDDが0.20より小であるような粒径重量分布を持った蛍光体により蛍光膜を形成すると、電子線照射により蛍光膜が薄くなるためガラス基盤の膜焼けの現象が見られる場合があるので好ましくない。
【0021】
従って、蛍光膜形成のために用いる蛍光体の粒径重量分布のQDがほぼ0.25以下、より好ましくは0.10〜0.20であり、かつDDがほぼ0.42以下、より好ましくは0.20〜0.35であるような粒度分布を有する希土類珪酸塩蛍光体からなる蛍光膜は、従来の希土類珪酸塩蛍光体からなる蛍光膜に比べて輝度維持率の高い蛍光膜が得られる。
【0022】
なお、図1及び図2には組成式が(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体について、蛍光膜の輝度維持率とその蛍光膜形成のために用いられる蛍光体の粒径重量分布のQ.D.及びD.D.との関係について例示したが、組成式(Ln1−x Ln’x)2SiO5で表される(Y0.93Tb0.07)2SiO5以外の希土類珪酸塩蛍光体についても、蛍光膜の輝度維持率と各蛍光膜形成のために用いられる希土類珪酸塩蛍光体の粒径重量分布のQ.D.及びD.D.との間には図1並びに図2に示した関係とほぼ類似の相関関係にあることがわかった。
【0023】
本発明の希土類珪酸塩蛍光体の中央粒径はおよそ4〜9μmとするのが好ましい。中央粒径がおよそ9μmより大である希土類珪酸塩蛍光体を用いた蛍光膜では、蛍光膜の初期輝度は向上する傾向にあるものの蛍光膜を形成する際の膜厚が目的の設計の膜厚より厚くなり、この蛍光膜に電子線を膜の観察面の裏側から照射した場合、膜の観察面側に取り出される発光が広がると言う問題を起こし、フォーカスが良くなく、そのため解像度が悪化し目的とする解像度特性が得られないので好ましくない。一方、中央粒径がおよそ4μmより小さい希土類珪酸塩蛍光体を蛍光膜として用いると、得られる蛍光膜の発光輝度が低下するので好ましくない。
【0024】
なお、本発明の蛍光体は(Ln1−xLn’x)2SiO5で表される組成式を有する希土類珪酸塩蛍光体からなるが、この組成を主相とし、これと例えば(Ln1−xLn’x)2Si2O7組成の様な結晶が不純物相として副生されていて両成分の混晶となっていても良く、これらの不純物相の含有量が全体のほぼ5モル%以下であれば、発光輝度や輝度維持率を低下させることが少ない。
【0025】
【実施例】
次に実施例により本発明を説明する。
〔実施例1〕
Y2O3(4μm) 21.0g
Tb4O7 2.6g
SiO2 6.1g
【0026】
上記の蛍光体原料を充分に混合し、アルミナルツボに詰めて還元雰囲気中において1600℃で2時間焼成した。得られた焼成物を粉砕、分級、水洗の各後処理を施した後、従来の方法によりこの蛍光体の表面に蛍光体に対して0.2重量%の燐酸カルシウムを被覆させて実施例1の希土類珪酸塩蛍光体を得た。
【0027】
このようにして製造された蛍光体はX線回折分析並びに化学分析によりその結晶の組成を調べたところ、その組成が(Y0.93Tb0.07)2SiO5である希土類珪酸塩蛍光体であった。
【0028】
また、この蛍光体をコールターカウンターで粒子径並びに粒径分布を測定したところ、中央粒径が6.0μmであり、粒径重量分布のQD及びDDがそれぞれ0.17及び0.30であった。
【0029】
この蛍光体を前述と同様の方法でガラス板のテストピース上に沈降塗布して蛍光膜を作製し、先に記載の輝度維持率評価法にて、評価を行ったところ輝度維持率は98%であり、ほとんど輝度劣化が起こっていなかった。
【0030】
〔実施例2〜10〕
希土類蛍光体の母体種、希土類原料とSiO2の投入割合の違い、及び希土類附活剤種等の違いの影響を見るため、表1に記載した内容にて所定の原料選択と添加量にて調製し、実施例1の処理操作と同様にして実施例2〜11の蛍光体を製造した。
【0031】
このようにして得られた各蛍光体の組成をX線回折分析並びに化学分析によりを調べた結果、並びにコールターカウンターにより求めた中央粒子径、粒径重量分布のQD及びDDを同じく表1に示す。
【0032】
〔比較例〕
得られた焼成物に分級処理を施さなかった以外は実施例1の蛍光体と同様にして、その組成(Y0.93Tb0.07)2SiO5である比較例の希土類珪酸塩蛍光体を製造した。この蛍光体の粒子径及び粒子径分布は、中央粒径が6.7μmでありQD及びDDがそれぞれ0.27及び0.45であった。この蛍光体の輝度維持率を実施例1の蛍光体と同様にして測定したところ、輝度維持率は85.0%であった。
【0033】
【表1】
表1から分かるように、蛍光体の結晶母体がYからGd,La,Lu等に変化しても、輝度維持率はYの場合に近い値を示しており、何れも85%を上回っている。またSiO2添加量、希土類附活剤の添加量の違いがある場合でも輝度維持率については、依然95%以上の高いレベルであることが示された。
これは蛍光体の粒径分布特性を本発明の様に設定すれば、実施例1と同様な効果が上がることを示している。従来は上記のような蛍光体の製作条件を変えても、95%程度の高レベルの値を得ることが出来なかった。
【0034】
【発明の効果】
本発明の蛍光体は上記の構成を採用することにより、良好な輝度と継続的に高電流密度の電子線にさらされてもで輝度劣化が抑制され、特に投写管蛍光面用の蛍光体として有用である。
【0035】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希土類珪酸塩蛍光体の1例である、(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体の粒径重量分布の4分位偏差値(QD)とその蛍光体を用いた蛍光膜の輝度維持率との関係を例示する図である。
【0036】
【図2】本発明の希土類珪酸塩蛍光体の1例である、(Y0.93Tb0.07)2SiO5蛍光体の粒径重量分布の10分位偏差値(DD)とその蛍光体を用いた蛍光膜の輝度維持率との関係を例示する図である。
Claims (7)
- 中央粒子径が4〜9μmであり、粒径重量分布の4分位偏差値(QD)が0.25以下で、かつ、粒径重量分布の10分位偏差値(DD)が0.42以下であることを特徴とする希土類珪酸塩蛍光体。
- 前記4分位偏差値(QD)が0.10〜0.20で、かつ、前記10分位偏差値(DD)が0.20〜0.35であることを特徴とする請求項1記載の希土類珪酸塩蛍光体。
- 前記蛍光体の組成式が(Ln1−x Ln’x)2SiO5で表されることを特徴とする請求項1または2記載の希土類珪酸塩蛍光体。
(但し、LnはY、La、Gd及びLuの中の少なくとも1種であり、Ln’はTb、Eu、Ceのうちの各少なくとも1種であり、xは1×10−3≦x≦2×10−1の範囲の数である。) - 前記組成式におけるLnがYであることを特徴とする請求項3記載の希土類珪酸塩蛍光体。
- 前記組成式におけるLn’がTbであることを特徴とする請求項3または4記載の希土類珪酸塩蛍光体。
- 前記蛍光体の粒子表面がアルカリ土類金属燐酸塩化合物で被覆されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の希土類珪酸塩蛍光体。
- 前記アルカリ土類金属燐酸塩化合物の被覆量がアルカリ土類金属に換算して蛍光体に対して50〜2000μg/gの範囲内にあることを特徴とする請求項6記載の希土類珪酸塩蛍光体。
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JP2006257353A (ja) * | 2005-03-18 | 2006-09-28 | Fujikura Ltd | 粉末状蛍光体とその製造方法、発光デバイス及び照明装置 |
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- 2002-07-23 JP JP2002245954A patent/JP2004051931A/ja active Pending
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