JP2004050080A - 塗布装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】低コストで、しかも塗布領域に液体を正確に塗布することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】マスク4に形成された開口が基板1上の溝(塗布領域)に対向配置される。そして、その配置状態でノズル5から有機EL材料がマスク4に向けて吐出され、そのマスク4の開口を介して基板1に供給される。このため、基板1上のうち該開口に対向する溝に選択的に有機EL材料が塗布されるとともに、その溝以外の領域に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。すなわち、溝(塗布領域)に有機EL材料が正確に塗布される。また、マスク4に付着する有機EL材料については、マスク洗浄ユニット7が洗浄除去するため、マスク4を繰り返して使用することが可能となってランニングコストを低減させることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】マスク4に形成された開口が基板1上の溝(塗布領域)に対向配置される。そして、その配置状態でノズル5から有機EL材料がマスク4に向けて吐出され、そのマスク4の開口を介して基板1に供給される。このため、基板1上のうち該開口に対向する溝に選択的に有機EL材料が塗布されるとともに、その溝以外の領域に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。すなわち、溝(塗布領域)に有機EL材料が正確に塗布される。また、マスク4に付着する有機EL材料については、マスク洗浄ユニット7が洗浄除去するため、マスク4を繰り返して使用することが可能となってランニングコストを低減させることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウエハ、ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)の所定領域上に、フォトレジスト液、現像液および有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料などの液体を塗布する塗布装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の塗布装置として、例えば特開2002−75640号公報に記載された装置がある。この塗布装置は上記液体として有機EL材料を基板に塗布する装置である。この装置では、予め形成された溝にノズルを沿わせるように基板とノズルとを相対的に移動させてノズルからの有機EL材料を溝内に流し込んでおり、こうすることで基板の溝(塗布領域)への有機EL材料の塗布を実行している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように基板とノズルとを相対的に移動させることで塗布領域たる溝に有機EL材料を塗布する場合、基板とノズルとの相対的な位置ずれが生じていたり、ノズルから有機EL材料を吐出するタイミングがずれる等の要因により、有機EL材料が溝の周囲に塗布されてしまうことがある。
【0004】
ここで、本来的に塗布すべきでない有機EL材料が基板のエッジ部分に塗布されてしまう場合には、例えば特開平10−294248号公報に記載された基板端縁処理装置を塗布装置に装備させて余分な有機EL材料を洗浄除去するようにしてもよい。しかしながら、基板端縁処理装置を付加することで塗布装置のコストは高くなってしまう。また、エッジ部分の有機EL材料を洗浄する際に、洗浄液の飛沫などが溝に塗布された有機EL材料に飛散して性能に悪影響を及ぼしてしまうことがある。さらに、基板端縁処理装置を装備したとしても、洗浄除去することができるのは、基板エッジ部分に塗布されてしまった有機EL材料に限定され、汎用性に欠けるという問題もある。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、低コストで、しかも塗布領域に液体を正確に塗布することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板上の塗布領域に液体を塗布する塗布装置であって、上記目的を達成するため、塗布領域に対応する開口を有し、該開口が塗布領域に対向するように配置されるマスクと、マスクに向けて液体を供給することでマスクの開口を介して塗布領域に液体を選択的に塗布する液体供給手段と、マスクに付着した液体を除去する液体除去手段とを備えている。
【0007】
このように構成された発明では、液体供給手段から吐出された液体はマスクの開口を介して基板に供給されるため、その基板上のうち該開口に対向する塗布領域に選択的に液体が塗布され、その塗布領域以外の領域に液体が塗布されるのが確実に防止される。このように開口に対応した塗布領域に液体が正確に塗布される。また、液体供給手段から吐出された液体のうち開口から外れた液体はマスクに付着するが、この発明では液体除去手段によってマスクに付着している液体は除去される。このため、マスクに付着した液体がマスクから離れて基板に再付着して製品歩留りを低下させるという問題を未然に回避したり、マスクを繰り返して使用することが可能となってランニングコストを低減させることができる。
【0008】
このようにマスクに付着した液体を除去する液体除去手段としては、例えばマスクを洗浄する洗浄ユニットを設けたり、マスクの開口の周囲部分に付着した液体を回収除去する液体回収部を設けるようにしてもよく、また洗浄ユニットと液体回収部をともに設けるように構成してもよい。
【0009】
ここで、液体除去手段として洗浄ユニットを設けることで、この洗浄ユニットによりマスクを洗浄してマスクの繰り返し使用が可能となり、ランニングコストの低減に有利に作用する。この洗浄ユニットについては、例えば基板の外側に配設してもよく、開口の周囲部分が洗浄ユニットに位置するようにマスクを移動させて開口の周囲部分に付着している液体を除去するように構成してもよい。
【0010】
また、所定の周回軌道上を循環移動する無端ベルトの一部に開口を形成したものをマスクとして用いることができる。すなわち、開口が基板の塗布領域に対向する塗布位置まで無端ベルト(マスク)を移動させた後に、液体供給手段から液体が吐出されて塗布領域に選択塗布され、その塗布領域以外の領域に液体が塗布されるのを確実に防止することができる。また、このようにして塗布処理を行った場合、開口を形成したベルト部分では、その開口の周囲部分に液体が付着するが、塗布処理の完了に続いて無端ベルトを周回軌道に沿って移動させると、開口を形成したベルト部分が基板から離れてマスクに付着した液体がマスクから離れて基板に再付着するのを防止することができる。しかも、無端ベルトの移動により開口を形成したベルト部分は周回軌道上に配置された洗浄ユニットに搬送され、マスク洗浄される。そして、開口が基板の塗布領域に対向する塗布位置まで無端ベルト(マスク)を移動させることで塗布処理を再び実行することができる。このようにマスクを繰り返して使用することができる。
【0011】
上記のようにマスクが所定の移動経路に沿って移動する場合、その移動経路上に洗浄ユニットを配置し、移動しているマスクに対して液体を溶解する溶剤を吐出してマスクを洗浄するように構成してもよく、こうすることで洗浄ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、洗浄ユニットを、マスクに対して液体を溶解する溶剤を吐出してマスクを洗浄する溶剤吐出部と、マスクから洗浄物を回収する洗浄物回収部とで構成してもよく、こうすることでマスクに付着する液体を洗浄するとともに、その洗浄物(溶剤+液体)を確実に回収することができる。
【0013】
一方、液体除去手段として、塗布領域に対向して配置された開口の近傍に配置されてマスクの開口の周囲部分に付着した液体を回収除去する液体回収部を設けてもよい。上記のように液体供給手段から吐出された液体のうち開口から外れた液体はマスクの開口の周囲部分に付着するが、そのマスクを洗浄することなく長時間使用していると、開口の周囲部分に多量の液体が堆積し、やがて堆積物(液体)の一部がマスクから離れて基板に再付着して製品歩留りを低下させるという問題が発生するおそれがある。これに対し、この発明では、液体回収部がマスクの開口の周囲部分に付着した液体を回収除去するため、液体の堆積を未然に防止して上記問題を解消することができる。
【0014】
この液体回収部としては、マスクに付着している液体を回収除去できるものであれば、如何なる構成のものを採用してもよいのであるが、特にマスクに付着している液体を吸引除去するものを採用することで、液体を除去する際に該液体を基板側に飛散させることなく、確実に回収することができ、好適である。
【0015】
さらに、液体供給手段として開口に沿って移動しながらマスクに向けて液体を吐出する液体吐出ノズルを用いる場合には、液体吐出ノズルの移動経路の延長線上に位置するマスク表面領域に多くの液体が付着する。そこで、このように構成された塗布装置では、液体回収部を液体吐出ノズルの移動経路の延長線上に配置してマスクに付着する液体を確実に除去するのが望ましい。また、液体回収部を液体吐出ノズルと一体的に移動させるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる塗布装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の塗布装置での基板、マスクおよびノズルの位置関係を模式的に示す図である。この塗布装置は、基板1上に形成された溝11に液体状の有機EL材料を塗布する有機EL塗布装置であり、各溝11が本発明の「塗布領域」に相当し、また有機EL材料が本発明の「液体」に相当している。
【0017】
この塗布装置では、基板1を載置するステージ2が設けられている。このステージ2はY方向にスライド自在で、しかも垂直軸に対してθ方向に回動自在となっている。また、ステージ2にはステージ駆動機構部21が接続されており、装置全体を制御する制御部3からの動作指令に応じてステージ駆動機構部21が作動することでステージ2をY方向に移動させたり、θ方向に回転させてステージ2上の基板1を位置決めすることができる。
【0018】
また、このステージ2の上方には、各溝11に対応した形状を有する開口42を無端ベルト41に1個形成してなるマスク4が配置されている。この無端ベルト41は4つのローラ43〜46に掛け渡されている。そして、制御部3からの駆動指令に応じてマスク駆動機構部47が作動すると、ローラ43が回転してマスク4を所定の周回軌道に沿って矢印方向Xに循環移動させる。このため、制御部3によってマスク駆動機構部47を制御することでマスク4に形成された開口42を図2に示すように基板1上の溝11に対向配置させることができる。また、開口42が基板1からX方向に離れた位置に移動させることも可能となっている。なお、図2においては、基板1と、マスク4と、次に説明するノズルとの位置関係を明らかにするため、これら基板1、マスク4およびノズルを上下方向Zにおいて実際より広く離間させた状態を図示している。
【0019】
また、マスク4が形成する周回ループの内側にノズル5が配設されている。このノズル5はノズル駆動機構部51と接続されており、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動することでノズル5をX方向に往復移動可能となっている。したがって、上記のようにして開口42が基板1上の溝11に対向する位置(塗布位置)にマスク4を位置決めした状態で、ノズル5をX方向に移動させると、ノズル5はマスク4の開口42に沿って移動することとなる。
【0020】
このノズル5は有機EL材料の供給部と配管接続されており、この供給部から圧送されてくる有機EL材料をマスク4に向けて吐出可能となっている。このため、図2に示すように塗布位置に位置決めされたマスク4に向けて有機EL材料を吐出させると、ノズル5から吐出された有機EL材料のうちマスク4の開口42を通過したものだけが基板1に塗布される。つまり、基板1の溝11に選択的に有機EL材料が塗布される。一方、マスク4の開口42以外に吐出されてきた有機EL材料はマスク4に付着することとなり、基板1への供給が阻止され、その結果、溝11以外の基板表面に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。
【0021】
そして、マスク4を塗布位置に固定したままノズル5をX方向に移動させると、X方向に延設された溝11に有機EL材料がライン状に塗布されていく。このときも、ノズル5から吐出された有機EL材料は開口42を通過したものだけが基板1に供給されて塗布されることから溝11に対して正確に有機EL材料を塗布することができる。このように、この実施形態では、ノズル5と供給部とにより基板1に向けて有機EL材料を供給しており、これらノズル5および供給部が本発明の「液体供給手段」として機能している。なお、図面中の符号52はノズル5の先端部に付着する有機EL材料を洗浄除去するためのノズル洗浄部であり、ノズル洗浄が必要となると、適宜マスク4に設けられたノズル洗浄用貫通孔48を介してノズル5の先端部をノズル洗浄部52に浸漬させてノズル洗浄を行う。
【0022】
上記のようにしてノズル5による塗布処理を実行した際、マスク4の開口42の周囲部分、特にノズル5の移動経路(図2中の矢印P)の延長線上に位置する部分49に余分な有機EL材料が付着しやすく、この有機EL材料をマスク4から除去することが望まれる。そこで、この実施形態では、マスク4の開口42の周囲部分49に付着する有機EL材料を専門的に除去する液体回収部6、6を周囲部分49に対応させて配設している。すなわち、図1に示すようにノズル5の移動範囲(X方向における基板サイズと同程度の範囲)の両端に液体回収部6、6がそれぞれ配置されている。
【0023】
図3は液体回収部の構成を示す斜視図である。この液体回収部6はマスク4の周回方向Xにおける下流側に配置されたものであり、図示を省略する液体吸引機構部と配管接続されている。そして、制御部3からの液体回収指令に応じて回収駆動機構部61(図1)が作動すると、液体吸引機構部から液体回収部6に対して負圧が与えられ、マスク4の開口42の周囲部分49を臨むように設けられた回収口62を介して周囲部分49から有機EL材料Lを吸引し、所定の回収タンクに回収除去する。なお、図3では下流側の液体回収部6のみを図示しているが、上流側の液体回収部6も全く同様の構成を有しており、上流側の周囲部分49から有機EL材料を吸引除去する。
【0024】
この実施形態では、マスク4に付着する有機EL材料を洗浄除去するために、マスク洗浄ユニット7がマスク4の周回方向Xにおける下流側(図1の右手側)、より詳しくは下流側の液体回収部6とローラ44との間に配置されている。以下、図4および図5を参照しつつマスク洗浄ユニットの構成について説明する。
【0025】
図4はマスク洗浄ユニットの構成を示す斜視図であり、図5は図4のマスク洗浄ユニットの断面図である。このマスク洗浄ユニット7は、これらの図に示すようにX方向における上流側に配設された溶剤吐出部71と、下流側に配設された洗浄物回収部72とで構成されている。この溶剤吐出部71は、マスク4を挟んで上下方向Zに対称配置された上部吐出部711と、下部吐出部712とを備えている。これら上部および下部吐出部711、712はともに同一構成を有している。すなわち、これらの吐出部711、712は図示を省略する溶剤供給部に配管接続されており、制御部3からの溶剤吐出指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動すると、溶剤供給部から有機EL材料を溶解する溶剤が吐出部711、712に圧送される。
【0026】
そして、この溶剤供給を受けた上部吐出部711では、図5に示すように本体711aの内部に形成された流路711bを介して溶剤が圧送され、吐出口711cからマスク4の内周面S1に吐出される。これによって、マスク4の内周面S1に付着している有機EL材料Lが洗浄される。また、この溶剤供給を受けた下部吐出部712においても、上部吐出部711と同様にして溶剤吐出が行われる。すなわち、下部吐出部712においても、図5に示すように本体712aの内部に形成された流路712bを介して圧送される溶剤が吐出口712cからマスク4の外周面S2に吐出される。これによって、マスク4の外周面S2に付着している有機EL材料が洗浄される。なお、この実施形態では、各吐出部711、712から吐出された溶剤ならびに溶解された有機EL材料、つまり洗浄物(溶剤+有機EL材料)がマスク4の内周面S1および外周面S2に沿って洗浄物回収部72に流れるように溶剤の吐出方向を調整している。
【0027】
この洗浄物回収部72は、図5に示すように、マスク4を挟んで上下方向Zに対称配置された上部回収部721と、下部回収部722とを備えている。これら上部および下部回収部721、722はともに同一構成を有している。すなわち、これらの回収部721、722は図示を省略する洗浄物吸引機構部に配管接続されており、制御部3からの洗浄物回収指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動すると、洗浄物吸引機構部から回収部721、722に対して負圧が与えられ、マスク4の内周面S1および外周面S2を臨むように設けられた回収口721a、722aを介してマスク4から洗浄物(溶剤+有機EL材料)を吸引し、所定の回収タンクに回収除去する。
【0028】
さらに、この実施形態では、マスク4の内周面S1を撮像するための2つのCCDカメラ81、82が設けられており、各CCDカメラ81、82からの出力信号を画像処理部83に出力するように構成されている。そして、この画像処理部83はCCDカメラ81、82からの画像信号に対して所定の画像処理を施した後、画像処理後の画像データを制御部3に出力している。なお、この画像データを受け取った制御部3は後で詳述するアライメント処理を施してノズル5による塗布軌跡と、基板1上の溝11(塗布領域)とを正確に一致させて塗布処理の精度を高める。
【0029】
次に、上記のように構成された塗布装置の動作について、図6ないし図9を参照しつつ説明する。図6は図1の塗布装置の動作を示すフローチャートである。この塗布装置では、図示を省略する搬送ロボットにより未処理の基板1がステージ2上に載置される(ステップS1)と、制御部3がメモリ(図示省略)に予め記憶されているプログラムにしたがって装置各部を以下のように制御してアライメント処理(ステップS2)を実行する。
【0030】
図7はアライメント処理のフローチャートである。また、図8はアライメント処理の内容を示す模式図である。このアライメント処理は、ノズル5による塗布軌跡と基板1上の溝11(塗布領域)とを正確に一致させる処理である。
【0031】
このアライメント処理では、まず図8(a)に示すように、マスク4を試塗位置に位置させる(ステップS21)。この「試塗位置」とは、無端ベルト41のうち開口42が形成されていない部分が基板1と対向する位置である。そして、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5をX方向に往復移動させるとともに、マスク4に向けて有機EL材料を吐出させる(ステップS22)。これによって、塗布軌跡CLがマスク4の内周面上に形成される。そして、この塗布軌跡CLの光学像IclをCCDカメラ81、82で撮像する(ステップS23)。これによって、例えば図8(a)中の画像I81、I82に示すような塗布軌跡CLの光学像Iclが撮像されて制御部3のメモリに一時的に記憶される。
【0032】
次のステップS24では、制御部3からの駆動指令に応じてマスク駆動機構部47が作動してマスク4をX方向に移動させて塗布位置に位置決めする(同図(b))。また、このマスク移動に伴って塗布軌跡CLが形成されたベルト領域がマスク洗浄ユニット7に搬送されていくため、マスク移動とともに制御部3からの溶剤吐出指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動してマスク洗浄を実行する(ステップS25)。これによって、試し塗りのためにマスク4に形成された塗布軌跡CLは除去される。
【0033】
そして、塗布位置ではマスク4の開口42は基板1の溝(塗布領域)11と対向配置されているため、この溝11の光学像I11をCCDカメラ81、82で撮像する(ステップS26)。これによって、例えば図8(b)中の画像I81、I82に示すような溝(塗布領域)11の光学像I11が撮像されて制御部3のメモリに一時的に記憶される。なお、溝11と塗布軌跡CLとの相対関係の理解を容易にするため、各画像I81、I82に塗布軌跡CLを示す仮想線(1点鎖線)を付している。ここでは、溝11の光学像I11と塗布軌跡CLとが非平行となっており、塗布軌跡CLと溝11とが一致していないことがわかる。
【0034】
そこで、この実施形態では、図8(c)に示すように、制御部3が光学像I11、Iclの画像データに基づきθ方向における塗布軌跡CLに対する溝11の傾き量を演算により求めた(ステップS27)後、制御部3からの動作指令に応じてステージ駆動機構部21が作動してステージ2をθ方向に上記傾き量だけ回転させて塗布軌跡CLと溝11とが平行となるようにステージ2上の基板1を位置決めする(ステップS28)。また、単に基板1を回転位置決めするのみで塗布軌跡CLが溝11の中心からずれている場合には、さらにステージ2をY方向に移動させて塗布軌跡CLが溝11の中心に位置するように制御する。こうすることで、塗布軌跡CLと塗布領域たる溝11とを完全に一致させることができる。
【0035】
こうして、基板1のアライメント処理が完了すると、図6のステップS3に進んで塗布処理を実行する。図9は塗布処理のフローチャートである。この塗布処理では、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5をスタートポイント、つまり開口42と対向配置されている溝11の上流端部(図8(d)の左端)に対応する位置に位置決めする(ステップS31)。そして、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5を(+X)方向に移動させるとともに、マスク4に向けて有機EL材料を吐出させる(ステップS32)。このとき、ノズル5から吐出された有機EL材料のうちマスク4の開口42を通過したものだけが該開口42と対向する溝11に選択的に塗布される。そして、マスク4の開口42以外に吐出されてきた有機EL材料はマスク4に付着することとなり、基板1への供給が阻止され、その結果、溝11以外の基板表面に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。また、ノズル5の移動に伴って溝11に有機EL材料がライン状に塗布されていく。特に、本実施形態では、このライン塗布に先だってアライメント処理(ステップS2)を行うことでノズル5による塗布軌跡CLを溝11と完全に一致させているため、溝11に確実に、しかも精度良く有機EL材料を塗布することができる。
【0036】
また、この実施形態では、ライン塗布の際にマスク4の上流側周囲部分49(図2)に付着する有機EL材料Lを回収除去するために、上流側液体回収部6を作動させる(ステップS33)。ただし、上流側液体回収部6の作動によりノズル5から吐出される有機EL材料の流れが乱れると塗布精度に悪影響が及ぶため、この悪影響が及ばない範囲で上流側液体回収部6を作動させるのが望ましく、例えばノズル5が液体回収部6から所定距離だけ離れた位置を移動している間でのみ作動させるように制御すればよい。この点に関しては、後で説明する下流側液体回収部6においても全く同様である。
【0037】
そして、ノズル5が折り返し位置、つまりライン塗布処理中の溝11の下流端部(図8(d)の右端)に対応する位置にまで移動してくると、ステップS34で「YES」と判断されてノズル5の移動方向を反転させる。すなわち、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5を(−X)方向に移動させるとともに、マスク4への有機EL材料の吐出を継続させる(ステップS35)。このときも、ノズル5から吐出された有機EL材料のうちマスク4の開口42を通過したものだけが該開口42と対向する溝11に選択的に塗布される。もちろん、ノズル5を復動させる際に有機EL材料の吐出を停止させるようにしてもよいが、溝11への塗布量が比較的多い場合には本実施形態の如く往動のみならず復動時にもノズル5から有機EL材料を吐出させてライン塗布するのが望ましい。
【0038】
また、ノズル5の復動時においても、上流側と同様に、マスク4の下流側周囲部分49(図2)に付着する有機EL材料Lを回収除去するために、下流側液体回収部6を作動させる(ステップS36)。
【0039】
次に、ノズル5がスタートポイントに戻ってくると、ステップS37で「YES」と判断され、さらにステップS38で全ての塗布対象の溝11に有機EL材料を塗布したか否かを判断する。そして、このステップS38で「NO」と判断する、つまり未塗布の溝11が残っている間、制御部3からの動作指令に応じてステージ駆動機構部21が作動してステージ2をY方向に所定ピッチだけ移動させた(ステップS39)後、ステップS32に進み、次の溝11に対して上記一連のライン塗布を実行する。
【0040】
一方、ステップS38で「YES」と判断すると、塗布処理を終了し、図6のステップS4に進む。
【0041】
このステップS4では、制御部3からの駆動指令に応じてマスク駆動機構部47が作動してマスク4をX方向に移動させるとともに、搬送ロボットによりステージ2から処理済の基板1をアンロードし、次の処理装置に搬送する(ステップS5)。
【0042】
また、上記マスク移動に伴って開口42が形成されたベルト領域がマスク洗浄ユニット7に搬送されていくため、マスク移動とともに制御部3からの溶剤吐出指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動してマスク洗浄を実行する(ステップS6)。これによって、開口42の周囲部分に付着した余剰の有機EL材料はマスク4から除去され、再利用が可能となる。
【0043】
以上のように、この実施形態によれば、ノズル5から吐出された有機EL材料をマスク4の開口42を介して基板1に供給して塗布するように構成しているため、その基板1上のうち該開口42に対向する溝11に選択的に有機EL材料を塗布することができ、その溝11以外の領域に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。したがって、この塗布装置を用いることで溝11に有機EL材料を正確に塗布することができる。
【0044】
また、ノズル5から吐出された有機EL材料のうち開口42から外れた有機EL材料はマスク4に付着するが、マスク4を洗浄するマスク洗浄ユニット7を設けているため、マスク4を繰り返して使用することが可能となってランニングコストを低減させることができる。このように、この実施形態ではマスク洗浄ユニット7が本発明の「液体除去手段」として機能している。
【0045】
また、この「液体除去手段」として、本実施形態では、塗布位置に位置決めされたマスク4の開口42の近傍に配置されてマスク4の開口42の周囲部分49に付着した有機EL材料を回収除去する液体回収部6を設けている。このため、以下のような作用効果も得られる。すなわち、この実施形態ではマスク洗浄ユニット7を設けていることから、全ての溝11に有機EL材料を塗布した後でマスク洗浄を実行してマスク4に付着している有機EL材料を洗浄除去するようにしてもよい。ここで、ノズル5が1回往復移動することでマスク4の開口42の周囲部分49に付着する有機EL材料の付着量が比較的少ないかもしれないが、マスク4が塗布位置に固定されたまま基板1がY方向にピッチ移動されるたびにノズル5が往復移動するため、開口42の周囲部分49に多量の有機EL材料が堆積し、やがて堆積物(有機EL材料)の一部がマスク4から離れて基板1に再付着して製品歩留りを低下させるという問題が発生するおそれがある。これに対し、この実施形態では、液体回収部6がマスク4の開口42の周囲部分49に付着した有機EL材料を回収除去するため、有機EL材料の堆積を未然に防止して上記問題を解消することができる。なお、上記実施形態では、ノズル5が往復移動するたびに液体回収部6を作動させて有機EL材料の回収除去を図っているが、液体回収部6の作動タイミングはこれに限定されるものではなく、ノズル5が複数回往復移動するたびに液体回収部6を作動させるようにしてもよい。
【0046】
また、液体回収部6としては、マスク4に付着している有機EL材料を回収除去できるものであれば、如何なる構成のものを採用してもよいのであるが、特に本実施形態では液体回収部6がマスク4に付着している有機EL材料を吸引除去するように構成されているため、マスク4に付着している有機EL材料を除去する際に該有機EL材料を基板1側に飛散させることなく、確実に回収することができ、好適である。
【0047】
さらに、上記実施形態では、所定の周回軌道上を循環移動する無端ベルト41の一部に開口42を形成したものをマスク4として用いているため、板状のマスクをマスク収容部と塗布位置との間でマスク搬送ロボットなどの搬送装置により往復搬送する場合に比べて装置構成を簡素化することができ、装置の小型化やコスト低減を図ることができる。また、上記のようにして塗布処理を行った場合、開口42を形成したベルト部分では、その開口42の周囲部分49に有機EL材料が付着するが、塗布処理の完了に続いて無端ベルト41を周回軌道に沿って移動させると、開口42を形成したベルト部分が基板1から離れてマスク4に付着した有機EL材料がマスク4から離れて基板1に再付着するのを防止することができる。しかも、無端ベルト41の移動により開口42を形成したベルト部分は周回軌道上に配置されたマスク洗浄ユニット7に搬送され、マスク搬送と同時にマスク洗浄を行うことができ、塗布装置のスループットを短縮することができる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、無端ベルト41に開口42を1個設けてなるマスク4を用いているが、開口42の個数や配設位置などについては特に限定されるものではなく、例えば複数個設けるようにしてもよい。そして、その開口42の個数に合わせて複数個のノズル5を配置して同時に移動し、塗布する構成としても良い。また、無端ベルト41を用いることが必須構成要件ではなく、例えば板状のマスクを使用して塗布処理を行う塗布装置に対しても本発明を適用することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、X方向に1ライン状の溝11がY方向に複数個形成された基板1に対して有機EL材料を塗布する塗布装置に対して本発明を適用しているが、X方向に2ライン以上の溝が形成された基板に有機EL材料を塗布する塗布装置や溝を設けることなく基板の所定の表面領域に直接有機EL材料を塗布する塗布装置などにも本発明を適用することができ、その塗布領域(上記溝や所定の表面領域)に対応した開口を有するマスクを用いればよい。
【0050】
また、上記実施形態では、液体除去手段として、液体回収部6およびマスク洗浄ユニット7を装備しているが、いずれか一方のみを装備するようにしてもよい。また、上記液体回収部6は固定配置されているが、例えば図10に示すようにノズル5に対して吸引チューブ63を取り付けてノズル5と一体的に移動可能としてもよい。この装置では、ノズル5の移動位置に応じて吸引チューブ63による有機EL材料の吸引・停止を制御することで開口42の周囲部分49に付着する有機EL材料を吸引回収することができる。
【0051】
さらに、本発明の適用対象は有機EL塗布装置に限定されるものではなく、半導体ウエハ、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板にフォトレジスト液、現像液、エッチング液などの塗布液を塗布する塗布装置に対して適用することができる。すなわち、本発明は液体を基板上の塗布領域に塗布する塗布装置全般に適用することができる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、液体供給手段から吐出された液体をマスクの開口を介して基板に供給するように構成しているので、その基板上のうち該開口に対向する塗布領域に選択的に液体を塗布することができ、その塗布領域以外の領域に液体が塗布されるのを確実に防止することができる。すなわち、このように開口に対応した塗布領域に液体を正確に塗布することができる。また、液体供給手段から吐出された液体のうち開口から外れ、マスクに付着した液体については、液体除去手段によってマスクから除去されるため、マスクに付着した液体がマスクから離れて基板に再付着するのを未然に防止して優れた製品歩留りで塗布処理を行うことができる。しかも、同じマスクを繰り返して使用することが可能となり、低ランニングコストで塗布処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる塗布装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の塗布装置での基板、マスクおよびノズルの位置関係を模式的に示す図である。
【図3】液体回収部の構成を示す斜視図である。
【図4】マスク洗浄ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】図4のマスク洗浄ユニットの断面図である。
【図6】図1の塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】アライメント処理のフローチャートである。
【図8】アライメント処理の内容を示す模式図である。
【図9】塗布処理のフローチャートである。
【図10】この発明にかかる塗布装置の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1…基板
4…マスク
5…ノズル(液体供給手段)
6…液体回収部(液体除去手段)
7…マスク洗浄ユニット(液体除去手段)
11…溝(塗布領域)
41…無端ベルト
42…開口
49…周囲部分
63…吸引チューブ(液体除去手段)
71…溶剤吐出部
72…洗浄物回収部
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体ウエハ、ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板(以下、単に「基板」という)の所定領域上に、フォトレジスト液、現像液および有機EL(エレクトロルミネッセンス)材料などの液体を塗布する塗布装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の塗布装置として、例えば特開2002−75640号公報に記載された装置がある。この塗布装置は上記液体として有機EL材料を基板に塗布する装置である。この装置では、予め形成された溝にノズルを沿わせるように基板とノズルとを相対的に移動させてノズルからの有機EL材料を溝内に流し込んでおり、こうすることで基板の溝(塗布領域)への有機EL材料の塗布を実行している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように基板とノズルとを相対的に移動させることで塗布領域たる溝に有機EL材料を塗布する場合、基板とノズルとの相対的な位置ずれが生じていたり、ノズルから有機EL材料を吐出するタイミングがずれる等の要因により、有機EL材料が溝の周囲に塗布されてしまうことがある。
【0004】
ここで、本来的に塗布すべきでない有機EL材料が基板のエッジ部分に塗布されてしまう場合には、例えば特開平10−294248号公報に記載された基板端縁処理装置を塗布装置に装備させて余分な有機EL材料を洗浄除去するようにしてもよい。しかしながら、基板端縁処理装置を付加することで塗布装置のコストは高くなってしまう。また、エッジ部分の有機EL材料を洗浄する際に、洗浄液の飛沫などが溝に塗布された有機EL材料に飛散して性能に悪影響を及ぼしてしまうことがある。さらに、基板端縁処理装置を装備したとしても、洗浄除去することができるのは、基板エッジ部分に塗布されてしまった有機EL材料に限定され、汎用性に欠けるという問題もある。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、低コストで、しかも塗布領域に液体を正確に塗布することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板上の塗布領域に液体を塗布する塗布装置であって、上記目的を達成するため、塗布領域に対応する開口を有し、該開口が塗布領域に対向するように配置されるマスクと、マスクに向けて液体を供給することでマスクの開口を介して塗布領域に液体を選択的に塗布する液体供給手段と、マスクに付着した液体を除去する液体除去手段とを備えている。
【0007】
このように構成された発明では、液体供給手段から吐出された液体はマスクの開口を介して基板に供給されるため、その基板上のうち該開口に対向する塗布領域に選択的に液体が塗布され、その塗布領域以外の領域に液体が塗布されるのが確実に防止される。このように開口に対応した塗布領域に液体が正確に塗布される。また、液体供給手段から吐出された液体のうち開口から外れた液体はマスクに付着するが、この発明では液体除去手段によってマスクに付着している液体は除去される。このため、マスクに付着した液体がマスクから離れて基板に再付着して製品歩留りを低下させるという問題を未然に回避したり、マスクを繰り返して使用することが可能となってランニングコストを低減させることができる。
【0008】
このようにマスクに付着した液体を除去する液体除去手段としては、例えばマスクを洗浄する洗浄ユニットを設けたり、マスクの開口の周囲部分に付着した液体を回収除去する液体回収部を設けるようにしてもよく、また洗浄ユニットと液体回収部をともに設けるように構成してもよい。
【0009】
ここで、液体除去手段として洗浄ユニットを設けることで、この洗浄ユニットによりマスクを洗浄してマスクの繰り返し使用が可能となり、ランニングコストの低減に有利に作用する。この洗浄ユニットについては、例えば基板の外側に配設してもよく、開口の周囲部分が洗浄ユニットに位置するようにマスクを移動させて開口の周囲部分に付着している液体を除去するように構成してもよい。
【0010】
また、所定の周回軌道上を循環移動する無端ベルトの一部に開口を形成したものをマスクとして用いることができる。すなわち、開口が基板の塗布領域に対向する塗布位置まで無端ベルト(マスク)を移動させた後に、液体供給手段から液体が吐出されて塗布領域に選択塗布され、その塗布領域以外の領域に液体が塗布されるのを確実に防止することができる。また、このようにして塗布処理を行った場合、開口を形成したベルト部分では、その開口の周囲部分に液体が付着するが、塗布処理の完了に続いて無端ベルトを周回軌道に沿って移動させると、開口を形成したベルト部分が基板から離れてマスクに付着した液体がマスクから離れて基板に再付着するのを防止することができる。しかも、無端ベルトの移動により開口を形成したベルト部分は周回軌道上に配置された洗浄ユニットに搬送され、マスク洗浄される。そして、開口が基板の塗布領域に対向する塗布位置まで無端ベルト(マスク)を移動させることで塗布処理を再び実行することができる。このようにマスクを繰り返して使用することができる。
【0011】
上記のようにマスクが所定の移動経路に沿って移動する場合、その移動経路上に洗浄ユニットを配置し、移動しているマスクに対して液体を溶解する溶剤を吐出してマスクを洗浄するように構成してもよく、こうすることで洗浄ユニットのコンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、洗浄ユニットを、マスクに対して液体を溶解する溶剤を吐出してマスクを洗浄する溶剤吐出部と、マスクから洗浄物を回収する洗浄物回収部とで構成してもよく、こうすることでマスクに付着する液体を洗浄するとともに、その洗浄物(溶剤+液体)を確実に回収することができる。
【0013】
一方、液体除去手段として、塗布領域に対向して配置された開口の近傍に配置されてマスクの開口の周囲部分に付着した液体を回収除去する液体回収部を設けてもよい。上記のように液体供給手段から吐出された液体のうち開口から外れた液体はマスクの開口の周囲部分に付着するが、そのマスクを洗浄することなく長時間使用していると、開口の周囲部分に多量の液体が堆積し、やがて堆積物(液体)の一部がマスクから離れて基板に再付着して製品歩留りを低下させるという問題が発生するおそれがある。これに対し、この発明では、液体回収部がマスクの開口の周囲部分に付着した液体を回収除去するため、液体の堆積を未然に防止して上記問題を解消することができる。
【0014】
この液体回収部としては、マスクに付着している液体を回収除去できるものであれば、如何なる構成のものを採用してもよいのであるが、特にマスクに付着している液体を吸引除去するものを採用することで、液体を除去する際に該液体を基板側に飛散させることなく、確実に回収することができ、好適である。
【0015】
さらに、液体供給手段として開口に沿って移動しながらマスクに向けて液体を吐出する液体吐出ノズルを用いる場合には、液体吐出ノズルの移動経路の延長線上に位置するマスク表面領域に多くの液体が付着する。そこで、このように構成された塗布装置では、液体回収部を液体吐出ノズルの移動経路の延長線上に配置してマスクに付着する液体を確実に除去するのが望ましい。また、液体回収部を液体吐出ノズルと一体的に移動させるようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる塗布装置の一実施形態を示す図である。また、図2は図1の塗布装置での基板、マスクおよびノズルの位置関係を模式的に示す図である。この塗布装置は、基板1上に形成された溝11に液体状の有機EL材料を塗布する有機EL塗布装置であり、各溝11が本発明の「塗布領域」に相当し、また有機EL材料が本発明の「液体」に相当している。
【0017】
この塗布装置では、基板1を載置するステージ2が設けられている。このステージ2はY方向にスライド自在で、しかも垂直軸に対してθ方向に回動自在となっている。また、ステージ2にはステージ駆動機構部21が接続されており、装置全体を制御する制御部3からの動作指令に応じてステージ駆動機構部21が作動することでステージ2をY方向に移動させたり、θ方向に回転させてステージ2上の基板1を位置決めすることができる。
【0018】
また、このステージ2の上方には、各溝11に対応した形状を有する開口42を無端ベルト41に1個形成してなるマスク4が配置されている。この無端ベルト41は4つのローラ43〜46に掛け渡されている。そして、制御部3からの駆動指令に応じてマスク駆動機構部47が作動すると、ローラ43が回転してマスク4を所定の周回軌道に沿って矢印方向Xに循環移動させる。このため、制御部3によってマスク駆動機構部47を制御することでマスク4に形成された開口42を図2に示すように基板1上の溝11に対向配置させることができる。また、開口42が基板1からX方向に離れた位置に移動させることも可能となっている。なお、図2においては、基板1と、マスク4と、次に説明するノズルとの位置関係を明らかにするため、これら基板1、マスク4およびノズルを上下方向Zにおいて実際より広く離間させた状態を図示している。
【0019】
また、マスク4が形成する周回ループの内側にノズル5が配設されている。このノズル5はノズル駆動機構部51と接続されており、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動することでノズル5をX方向に往復移動可能となっている。したがって、上記のようにして開口42が基板1上の溝11に対向する位置(塗布位置)にマスク4を位置決めした状態で、ノズル5をX方向に移動させると、ノズル5はマスク4の開口42に沿って移動することとなる。
【0020】
このノズル5は有機EL材料の供給部と配管接続されており、この供給部から圧送されてくる有機EL材料をマスク4に向けて吐出可能となっている。このため、図2に示すように塗布位置に位置決めされたマスク4に向けて有機EL材料を吐出させると、ノズル5から吐出された有機EL材料のうちマスク4の開口42を通過したものだけが基板1に塗布される。つまり、基板1の溝11に選択的に有機EL材料が塗布される。一方、マスク4の開口42以外に吐出されてきた有機EL材料はマスク4に付着することとなり、基板1への供給が阻止され、その結果、溝11以外の基板表面に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。
【0021】
そして、マスク4を塗布位置に固定したままノズル5をX方向に移動させると、X方向に延設された溝11に有機EL材料がライン状に塗布されていく。このときも、ノズル5から吐出された有機EL材料は開口42を通過したものだけが基板1に供給されて塗布されることから溝11に対して正確に有機EL材料を塗布することができる。このように、この実施形態では、ノズル5と供給部とにより基板1に向けて有機EL材料を供給しており、これらノズル5および供給部が本発明の「液体供給手段」として機能している。なお、図面中の符号52はノズル5の先端部に付着する有機EL材料を洗浄除去するためのノズル洗浄部であり、ノズル洗浄が必要となると、適宜マスク4に設けられたノズル洗浄用貫通孔48を介してノズル5の先端部をノズル洗浄部52に浸漬させてノズル洗浄を行う。
【0022】
上記のようにしてノズル5による塗布処理を実行した際、マスク4の開口42の周囲部分、特にノズル5の移動経路(図2中の矢印P)の延長線上に位置する部分49に余分な有機EL材料が付着しやすく、この有機EL材料をマスク4から除去することが望まれる。そこで、この実施形態では、マスク4の開口42の周囲部分49に付着する有機EL材料を専門的に除去する液体回収部6、6を周囲部分49に対応させて配設している。すなわち、図1に示すようにノズル5の移動範囲(X方向における基板サイズと同程度の範囲)の両端に液体回収部6、6がそれぞれ配置されている。
【0023】
図3は液体回収部の構成を示す斜視図である。この液体回収部6はマスク4の周回方向Xにおける下流側に配置されたものであり、図示を省略する液体吸引機構部と配管接続されている。そして、制御部3からの液体回収指令に応じて回収駆動機構部61(図1)が作動すると、液体吸引機構部から液体回収部6に対して負圧が与えられ、マスク4の開口42の周囲部分49を臨むように設けられた回収口62を介して周囲部分49から有機EL材料Lを吸引し、所定の回収タンクに回収除去する。なお、図3では下流側の液体回収部6のみを図示しているが、上流側の液体回収部6も全く同様の構成を有しており、上流側の周囲部分49から有機EL材料を吸引除去する。
【0024】
この実施形態では、マスク4に付着する有機EL材料を洗浄除去するために、マスク洗浄ユニット7がマスク4の周回方向Xにおける下流側(図1の右手側)、より詳しくは下流側の液体回収部6とローラ44との間に配置されている。以下、図4および図5を参照しつつマスク洗浄ユニットの構成について説明する。
【0025】
図4はマスク洗浄ユニットの構成を示す斜視図であり、図5は図4のマスク洗浄ユニットの断面図である。このマスク洗浄ユニット7は、これらの図に示すようにX方向における上流側に配設された溶剤吐出部71と、下流側に配設された洗浄物回収部72とで構成されている。この溶剤吐出部71は、マスク4を挟んで上下方向Zに対称配置された上部吐出部711と、下部吐出部712とを備えている。これら上部および下部吐出部711、712はともに同一構成を有している。すなわち、これらの吐出部711、712は図示を省略する溶剤供給部に配管接続されており、制御部3からの溶剤吐出指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動すると、溶剤供給部から有機EL材料を溶解する溶剤が吐出部711、712に圧送される。
【0026】
そして、この溶剤供給を受けた上部吐出部711では、図5に示すように本体711aの内部に形成された流路711bを介して溶剤が圧送され、吐出口711cからマスク4の内周面S1に吐出される。これによって、マスク4の内周面S1に付着している有機EL材料Lが洗浄される。また、この溶剤供給を受けた下部吐出部712においても、上部吐出部711と同様にして溶剤吐出が行われる。すなわち、下部吐出部712においても、図5に示すように本体712aの内部に形成された流路712bを介して圧送される溶剤が吐出口712cからマスク4の外周面S2に吐出される。これによって、マスク4の外周面S2に付着している有機EL材料が洗浄される。なお、この実施形態では、各吐出部711、712から吐出された溶剤ならびに溶解された有機EL材料、つまり洗浄物(溶剤+有機EL材料)がマスク4の内周面S1および外周面S2に沿って洗浄物回収部72に流れるように溶剤の吐出方向を調整している。
【0027】
この洗浄物回収部72は、図5に示すように、マスク4を挟んで上下方向Zに対称配置された上部回収部721と、下部回収部722とを備えている。これら上部および下部回収部721、722はともに同一構成を有している。すなわち、これらの回収部721、722は図示を省略する洗浄物吸引機構部に配管接続されており、制御部3からの洗浄物回収指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動すると、洗浄物吸引機構部から回収部721、722に対して負圧が与えられ、マスク4の内周面S1および外周面S2を臨むように設けられた回収口721a、722aを介してマスク4から洗浄物(溶剤+有機EL材料)を吸引し、所定の回収タンクに回収除去する。
【0028】
さらに、この実施形態では、マスク4の内周面S1を撮像するための2つのCCDカメラ81、82が設けられており、各CCDカメラ81、82からの出力信号を画像処理部83に出力するように構成されている。そして、この画像処理部83はCCDカメラ81、82からの画像信号に対して所定の画像処理を施した後、画像処理後の画像データを制御部3に出力している。なお、この画像データを受け取った制御部3は後で詳述するアライメント処理を施してノズル5による塗布軌跡と、基板1上の溝11(塗布領域)とを正確に一致させて塗布処理の精度を高める。
【0029】
次に、上記のように構成された塗布装置の動作について、図6ないし図9を参照しつつ説明する。図6は図1の塗布装置の動作を示すフローチャートである。この塗布装置では、図示を省略する搬送ロボットにより未処理の基板1がステージ2上に載置される(ステップS1)と、制御部3がメモリ(図示省略)に予め記憶されているプログラムにしたがって装置各部を以下のように制御してアライメント処理(ステップS2)を実行する。
【0030】
図7はアライメント処理のフローチャートである。また、図8はアライメント処理の内容を示す模式図である。このアライメント処理は、ノズル5による塗布軌跡と基板1上の溝11(塗布領域)とを正確に一致させる処理である。
【0031】
このアライメント処理では、まず図8(a)に示すように、マスク4を試塗位置に位置させる(ステップS21)。この「試塗位置」とは、無端ベルト41のうち開口42が形成されていない部分が基板1と対向する位置である。そして、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5をX方向に往復移動させるとともに、マスク4に向けて有機EL材料を吐出させる(ステップS22)。これによって、塗布軌跡CLがマスク4の内周面上に形成される。そして、この塗布軌跡CLの光学像IclをCCDカメラ81、82で撮像する(ステップS23)。これによって、例えば図8(a)中の画像I81、I82に示すような塗布軌跡CLの光学像Iclが撮像されて制御部3のメモリに一時的に記憶される。
【0032】
次のステップS24では、制御部3からの駆動指令に応じてマスク駆動機構部47が作動してマスク4をX方向に移動させて塗布位置に位置決めする(同図(b))。また、このマスク移動に伴って塗布軌跡CLが形成されたベルト領域がマスク洗浄ユニット7に搬送されていくため、マスク移動とともに制御部3からの溶剤吐出指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動してマスク洗浄を実行する(ステップS25)。これによって、試し塗りのためにマスク4に形成された塗布軌跡CLは除去される。
【0033】
そして、塗布位置ではマスク4の開口42は基板1の溝(塗布領域)11と対向配置されているため、この溝11の光学像I11をCCDカメラ81、82で撮像する(ステップS26)。これによって、例えば図8(b)中の画像I81、I82に示すような溝(塗布領域)11の光学像I11が撮像されて制御部3のメモリに一時的に記憶される。なお、溝11と塗布軌跡CLとの相対関係の理解を容易にするため、各画像I81、I82に塗布軌跡CLを示す仮想線(1点鎖線)を付している。ここでは、溝11の光学像I11と塗布軌跡CLとが非平行となっており、塗布軌跡CLと溝11とが一致していないことがわかる。
【0034】
そこで、この実施形態では、図8(c)に示すように、制御部3が光学像I11、Iclの画像データに基づきθ方向における塗布軌跡CLに対する溝11の傾き量を演算により求めた(ステップS27)後、制御部3からの動作指令に応じてステージ駆動機構部21が作動してステージ2をθ方向に上記傾き量だけ回転させて塗布軌跡CLと溝11とが平行となるようにステージ2上の基板1を位置決めする(ステップS28)。また、単に基板1を回転位置決めするのみで塗布軌跡CLが溝11の中心からずれている場合には、さらにステージ2をY方向に移動させて塗布軌跡CLが溝11の中心に位置するように制御する。こうすることで、塗布軌跡CLと塗布領域たる溝11とを完全に一致させることができる。
【0035】
こうして、基板1のアライメント処理が完了すると、図6のステップS3に進んで塗布処理を実行する。図9は塗布処理のフローチャートである。この塗布処理では、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5をスタートポイント、つまり開口42と対向配置されている溝11の上流端部(図8(d)の左端)に対応する位置に位置決めする(ステップS31)。そして、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5を(+X)方向に移動させるとともに、マスク4に向けて有機EL材料を吐出させる(ステップS32)。このとき、ノズル5から吐出された有機EL材料のうちマスク4の開口42を通過したものだけが該開口42と対向する溝11に選択的に塗布される。そして、マスク4の開口42以外に吐出されてきた有機EL材料はマスク4に付着することとなり、基板1への供給が阻止され、その結果、溝11以外の基板表面に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。また、ノズル5の移動に伴って溝11に有機EL材料がライン状に塗布されていく。特に、本実施形態では、このライン塗布に先だってアライメント処理(ステップS2)を行うことでノズル5による塗布軌跡CLを溝11と完全に一致させているため、溝11に確実に、しかも精度良く有機EL材料を塗布することができる。
【0036】
また、この実施形態では、ライン塗布の際にマスク4の上流側周囲部分49(図2)に付着する有機EL材料Lを回収除去するために、上流側液体回収部6を作動させる(ステップS33)。ただし、上流側液体回収部6の作動によりノズル5から吐出される有機EL材料の流れが乱れると塗布精度に悪影響が及ぶため、この悪影響が及ばない範囲で上流側液体回収部6を作動させるのが望ましく、例えばノズル5が液体回収部6から所定距離だけ離れた位置を移動している間でのみ作動させるように制御すればよい。この点に関しては、後で説明する下流側液体回収部6においても全く同様である。
【0037】
そして、ノズル5が折り返し位置、つまりライン塗布処理中の溝11の下流端部(図8(d)の右端)に対応する位置にまで移動してくると、ステップS34で「YES」と判断されてノズル5の移動方向を反転させる。すなわち、制御部3からの動作指令に応じてノズル駆動機構部51が作動してノズル5を(−X)方向に移動させるとともに、マスク4への有機EL材料の吐出を継続させる(ステップS35)。このときも、ノズル5から吐出された有機EL材料のうちマスク4の開口42を通過したものだけが該開口42と対向する溝11に選択的に塗布される。もちろん、ノズル5を復動させる際に有機EL材料の吐出を停止させるようにしてもよいが、溝11への塗布量が比較的多い場合には本実施形態の如く往動のみならず復動時にもノズル5から有機EL材料を吐出させてライン塗布するのが望ましい。
【0038】
また、ノズル5の復動時においても、上流側と同様に、マスク4の下流側周囲部分49(図2)に付着する有機EL材料Lを回収除去するために、下流側液体回収部6を作動させる(ステップS36)。
【0039】
次に、ノズル5がスタートポイントに戻ってくると、ステップS37で「YES」と判断され、さらにステップS38で全ての塗布対象の溝11に有機EL材料を塗布したか否かを判断する。そして、このステップS38で「NO」と判断する、つまり未塗布の溝11が残っている間、制御部3からの動作指令に応じてステージ駆動機構部21が作動してステージ2をY方向に所定ピッチだけ移動させた(ステップS39)後、ステップS32に進み、次の溝11に対して上記一連のライン塗布を実行する。
【0040】
一方、ステップS38で「YES」と判断すると、塗布処理を終了し、図6のステップS4に進む。
【0041】
このステップS4では、制御部3からの駆動指令に応じてマスク駆動機構部47が作動してマスク4をX方向に移動させるとともに、搬送ロボットによりステージ2から処理済の基板1をアンロードし、次の処理装置に搬送する(ステップS5)。
【0042】
また、上記マスク移動に伴って開口42が形成されたベルト領域がマスク洗浄ユニット7に搬送されていくため、マスク移動とともに制御部3からの溶剤吐出指令に応じて洗浄駆動機構部73(図1)が作動してマスク洗浄を実行する(ステップS6)。これによって、開口42の周囲部分に付着した余剰の有機EL材料はマスク4から除去され、再利用が可能となる。
【0043】
以上のように、この実施形態によれば、ノズル5から吐出された有機EL材料をマスク4の開口42を介して基板1に供給して塗布するように構成しているため、その基板1上のうち該開口42に対向する溝11に選択的に有機EL材料を塗布することができ、その溝11以外の領域に有機EL材料が塗布されるのを確実に防止することができる。したがって、この塗布装置を用いることで溝11に有機EL材料を正確に塗布することができる。
【0044】
また、ノズル5から吐出された有機EL材料のうち開口42から外れた有機EL材料はマスク4に付着するが、マスク4を洗浄するマスク洗浄ユニット7を設けているため、マスク4を繰り返して使用することが可能となってランニングコストを低減させることができる。このように、この実施形態ではマスク洗浄ユニット7が本発明の「液体除去手段」として機能している。
【0045】
また、この「液体除去手段」として、本実施形態では、塗布位置に位置決めされたマスク4の開口42の近傍に配置されてマスク4の開口42の周囲部分49に付着した有機EL材料を回収除去する液体回収部6を設けている。このため、以下のような作用効果も得られる。すなわち、この実施形態ではマスク洗浄ユニット7を設けていることから、全ての溝11に有機EL材料を塗布した後でマスク洗浄を実行してマスク4に付着している有機EL材料を洗浄除去するようにしてもよい。ここで、ノズル5が1回往復移動することでマスク4の開口42の周囲部分49に付着する有機EL材料の付着量が比較的少ないかもしれないが、マスク4が塗布位置に固定されたまま基板1がY方向にピッチ移動されるたびにノズル5が往復移動するため、開口42の周囲部分49に多量の有機EL材料が堆積し、やがて堆積物(有機EL材料)の一部がマスク4から離れて基板1に再付着して製品歩留りを低下させるという問題が発生するおそれがある。これに対し、この実施形態では、液体回収部6がマスク4の開口42の周囲部分49に付着した有機EL材料を回収除去するため、有機EL材料の堆積を未然に防止して上記問題を解消することができる。なお、上記実施形態では、ノズル5が往復移動するたびに液体回収部6を作動させて有機EL材料の回収除去を図っているが、液体回収部6の作動タイミングはこれに限定されるものではなく、ノズル5が複数回往復移動するたびに液体回収部6を作動させるようにしてもよい。
【0046】
また、液体回収部6としては、マスク4に付着している有機EL材料を回収除去できるものであれば、如何なる構成のものを採用してもよいのであるが、特に本実施形態では液体回収部6がマスク4に付着している有機EL材料を吸引除去するように構成されているため、マスク4に付着している有機EL材料を除去する際に該有機EL材料を基板1側に飛散させることなく、確実に回収することができ、好適である。
【0047】
さらに、上記実施形態では、所定の周回軌道上を循環移動する無端ベルト41の一部に開口42を形成したものをマスク4として用いているため、板状のマスクをマスク収容部と塗布位置との間でマスク搬送ロボットなどの搬送装置により往復搬送する場合に比べて装置構成を簡素化することができ、装置の小型化やコスト低減を図ることができる。また、上記のようにして塗布処理を行った場合、開口42を形成したベルト部分では、その開口42の周囲部分49に有機EL材料が付着するが、塗布処理の完了に続いて無端ベルト41を周回軌道に沿って移動させると、開口42を形成したベルト部分が基板1から離れてマスク4に付着した有機EL材料がマスク4から離れて基板1に再付着するのを防止することができる。しかも、無端ベルト41の移動により開口42を形成したベルト部分は周回軌道上に配置されたマスク洗浄ユニット7に搬送され、マスク搬送と同時にマスク洗浄を行うことができ、塗布装置のスループットを短縮することができる。
【0048】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、無端ベルト41に開口42を1個設けてなるマスク4を用いているが、開口42の個数や配設位置などについては特に限定されるものではなく、例えば複数個設けるようにしてもよい。そして、その開口42の個数に合わせて複数個のノズル5を配置して同時に移動し、塗布する構成としても良い。また、無端ベルト41を用いることが必須構成要件ではなく、例えば板状のマスクを使用して塗布処理を行う塗布装置に対しても本発明を適用することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、X方向に1ライン状の溝11がY方向に複数個形成された基板1に対して有機EL材料を塗布する塗布装置に対して本発明を適用しているが、X方向に2ライン以上の溝が形成された基板に有機EL材料を塗布する塗布装置や溝を設けることなく基板の所定の表面領域に直接有機EL材料を塗布する塗布装置などにも本発明を適用することができ、その塗布領域(上記溝や所定の表面領域)に対応した開口を有するマスクを用いればよい。
【0050】
また、上記実施形態では、液体除去手段として、液体回収部6およびマスク洗浄ユニット7を装備しているが、いずれか一方のみを装備するようにしてもよい。また、上記液体回収部6は固定配置されているが、例えば図10に示すようにノズル5に対して吸引チューブ63を取り付けてノズル5と一体的に移動可能としてもよい。この装置では、ノズル5の移動位置に応じて吸引チューブ63による有機EL材料の吸引・停止を制御することで開口42の周囲部分49に付着する有機EL材料を吸引回収することができる。
【0051】
さらに、本発明の適用対象は有機EL塗布装置に限定されるものではなく、半導体ウエハ、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板にフォトレジスト液、現像液、エッチング液などの塗布液を塗布する塗布装置に対して適用することができる。すなわち、本発明は液体を基板上の塗布領域に塗布する塗布装置全般に適用することができる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、液体供給手段から吐出された液体をマスクの開口を介して基板に供給するように構成しているので、その基板上のうち該開口に対向する塗布領域に選択的に液体を塗布することができ、その塗布領域以外の領域に液体が塗布されるのを確実に防止することができる。すなわち、このように開口に対応した塗布領域に液体を正確に塗布することができる。また、液体供給手段から吐出された液体のうち開口から外れ、マスクに付着した液体については、液体除去手段によってマスクから除去されるため、マスクに付着した液体がマスクから離れて基板に再付着するのを未然に防止して優れた製品歩留りで塗布処理を行うことができる。しかも、同じマスクを繰り返して使用することが可能となり、低ランニングコストで塗布処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明にかかる塗布装置の一実施形態を示す図である。
【図2】図1の塗布装置での基板、マスクおよびノズルの位置関係を模式的に示す図である。
【図3】液体回収部の構成を示す斜視図である。
【図4】マスク洗浄ユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】図4のマスク洗浄ユニットの断面図である。
【図6】図1の塗布装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】アライメント処理のフローチャートである。
【図8】アライメント処理の内容を示す模式図である。
【図9】塗布処理のフローチャートである。
【図10】この発明にかかる塗布装置の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
1…基板
4…マスク
5…ノズル(液体供給手段)
6…液体回収部(液体除去手段)
7…マスク洗浄ユニット(液体除去手段)
11…溝(塗布領域)
41…無端ベルト
42…開口
49…周囲部分
63…吸引チューブ(液体除去手段)
71…溶剤吐出部
72…洗浄物回収部
Claims (11)
- 基板上の塗布領域に液体を塗布する塗布装置において、
前記塗布領域に対応する開口を有し、該開口が前記塗布領域に対向するように配置されるマスクと、
前記マスクに向けて前記液体を供給することで前記マスクの開口を介して前記塗布領域に前記液体を選択的に塗布する液体供給手段と、
前記マスクに付着した前記液体を除去する液体除去手段と
を備えたことを特徴とする塗布装置。 - 前記液体除去手段は、前記マスクを洗浄する洗浄ユニットを備える請求項1記載の塗布装置。
- 前記洗浄ユニットは前記基板の外側に配設されており、しかも、
前記マスクは移動自在となっており、前記マスクを移動させることで前記開口を前記塗布領域に対向する塗布位置に位置させたり、前記開口の周囲部分を前記洗浄ユニットに移動可能となっている請求項2記載の塗布装置。 - 前記マスクは所定の周回軌道上を循環移動する無端ベルトの一部に前記開口を形成したものであり、
前記洗浄ユニットは前記周回軌道上に配置されている請求項3記載の塗布装置。 - 前記洗浄ユニットは、移動している前記マスクに対して前記液体を溶解する溶媒を吐出して前記マスクを洗浄する請求項3または4記載の塗布装置。
- 前記洗浄ユニットは、前記マスクに対して前記液体を溶解する溶剤を吐出して前記マスクを洗浄する溶剤吐出部と、前記マスクから洗浄物を回収する洗浄物回収部とを備える請求項2ないし5のいずれかに記載の塗布装置。
- 前記液体除去手段は、前記塗布領域に対向して配置された前記開口の近傍に配置されて前記マスクの前記開口の周囲部分に付着した液体を回収除去する液体回収部を備える請求項1ないし6のいずれかに記載の塗布装置。
- 前記液体回収部は前記マスクに付着している液体を吸引除去する請求項7記載の塗布装置。
- 前記液体供給手段は、前記開口に沿って移動しながら前記マスクに向けて前記液体を吐出する液体吐出ノズルを備えており、
前記液体回収部は前記液体吐出ノズルの移動経路の延長線上に配置されている請求項7または8記載の塗布装置。 - 前記液体供給手段は、前記開口に沿って移動しながら前記マスクに向けて前記液体を吐出する液体吐出ノズルを備えており、しかも、
前記液体回収部は前記液体吐出ノズルと一体的に移動可能となっている請求項7または8記載の塗布装置。 - 前記液体供給手段は前記液体として有機EL材料を吐出する請求項1ないし10のいずれかに記載の塗布装置。
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- 2002-07-22 JP JP2002212154A patent/JP2004050080A/ja not_active Abandoned
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