JP2004046065A - 光学フィルム、積層偏光板、それらを用いた液晶表示装置および自発光型表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】透明フィルム(b)上に前記複屈折層(a)が積層され、かつ、下記数式(I)から(III)の全ての条件を満たす光学フィルムとする。
Δn(a)>Δn(b)×10 (I)
1<(nx−nz)/(nx−ny) (II)
0.0005≦Δn(a)≦0.5 (III)
上記(I)〜(III)中、Δn(a)およびΔn(b)は、前記複屈折層(a)および透明フィルム(b)の複屈折率である。また、nx、nyおよびnzは、前記複屈折層(a)におけるX軸、Y軸およびZ軸の屈折率であり、前記X軸は、前記複屈折層(a)の平面内において最大の屈折率を示す軸を、Y軸は、前記平面内で前記X軸に対し垂直な軸を、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学フィルム、その光学フィルムを積層した積層偏光板、それらを用いた液晶表示装置および自発光型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種液晶表示装置には、光学補償を目的として位相差板が使用されている。このような位相差板としては、例えば、光学的二軸位相差板があげられ、これらは主に、ロール間引張り延伸法、ロール間圧縮延伸法、テンター横一軸延伸法等の各種ポリマーフィルム延伸法等や(例えば、特許文献1参照。)、二軸延伸により異方性を持たせる方法等によって作製することができる(例えば、特許文献2参照。)。また、この他にも、正の光学異方性を持つ一軸延伸ポリマーフィルムと、面内の位相差値が小さい負の光学異方性を持つ二軸延伸ポリマーフィルムとを併用した位相差板や(特許文献3参照。)、前述のような延伸方法ではなく、例えば、ポリイミドの性質により、基板上で可溶性ポリイミドをフィルム化することによって、負の一軸性が付与された位相差板もある(例えば、特許文献4参照。)。
【0003】
前述のようなフィルム延伸技術等によれば、形成される延伸フィルムには、例えば、nx>ny>nzという光学特性を付与することができる。ここで、nx、ny、nzとは、前記フィルムにおけるX軸、Y軸およびZ軸の屈折率をそれぞれ示し、前記X軸とは、前記フィルム面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。このような光学特性を有する複屈折性フィルムは、例えば、液晶表示装置の液晶セルと偏光子との間に配置すれば、前記液晶表示装置の表示特性を広視野角化できるため、前記液晶セルの視角補償フィルムとして有用である。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−33719号公報
【特許文献2】
特開平3−24502号公報
【特許文献3】
特開平4−194820号公報
【特許文献4】
特表平8−511812号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような光学特性のフィルムであっても、液晶表示装置に使用した場合に、例えば、広い視野角におけるコントラストが優れるという効果を奏するが、一方では、虹ムラが発生するという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、例えば、液晶表示装置等の各種表示装置に使用した際に、虹ムラの発生等を防止し、より一層優れた表示特性を示す、負の複屈折性を有する光学フィルムの提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の光学フィルムは、複屈折層(a)と透明フィルム(b)とを含む光学フィルムであって、前記透明フィルム(b)の上に前記複屈折層(a)が積層され、かつ、下記数式(I)から(III)の全ての条件を満たすことを特徴とする光学フィルムである。
Δn(a)>Δn(b)×10 (I)
1<(nx−nz)/(nx−ny) (II)
0.0005≦Δn(a)≦0.5 (III)
前記数式(I)〜(III)中、Δn(a)は、前記複屈折層(a)の複屈折率であり、Δn(b)は、前記透明フィルム(b)の複屈折率であり、それぞれ下記数式で表され、前記数式(II)および下記数式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記複屈折層(a)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、nx’、ny’およびnz’は、前記透明フィルム(b)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記複屈折層(a)および前記透明フィルム(b)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
Δn(a)=[(nx+ny)/2]−nz
Δn(b)=[(nx’+ny’)/2]−nz’
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、透明フィルムの上に複屈折層が積層された光学フィルムが、前記数式(I)〜(III)の条件を全て満たすことによって、前述のような従来の問題を解決できることを見出し、本発明に至ったのである。つまり、前記数式(I)〜(III)の条件を満たす光学フィルムであれば、例えば、液晶表示装置等の各種表示装置に使用した際に、広い視野角におけるコントラストが優れるだけでなく、さらに、偏光解消による虹ムラの発生も防止でき、より一層優れた表示品位を得ることができる。また、このような光学フィルムは、後述するように、前記透明フィルム上に、直接、ポリイミドのようなポリマー材料を塗工すること等によって製造できるため、例えば、前記透明フィルム上に前記複屈折層を形成した後、前記複屈折層をあらためて他の基材等に転写する必要がなく、そのまま積層体として使用することができる。したがって、品質の均一性、作業性等にも優れるのである。このように、本発明の光学フィルムは、均一かつ透明で、nx>ny>nzという極めて優れた負複屈折性の光学特性を有することから、例えば、積層偏光板や、液晶パネル、液晶表示装置や自発光表示装置等の各種画像表示装置への使用に適する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の光学フィルムは、前述のように、複屈折層(a)と透明フィルム(b)とを含む光学フィルムであって、前記透明フィルム(b)の上に前記複屈折層(a)が積層されており、かつ、前記数式(I)から(III)の全ての条件を満たすことを特徴とする。
【0010】
本発明において、通常、前記複屈折層(a)で光学補償が行われるため、前記透明フィルム(b)の複屈折が光学補償を妨げないように、前記数式(I)を備えることが必要である。そして、この条件を満たすことによって、前述のような偏光解消による虹ムラが防止され、より一層優れた表示特性が得られるのである。また、さらに視覚補償や表示特性に優れる光学フィルムとなることから、前記Δn(a)とΔn(b)との関係は、例えば、Δn(a)>Δn(b)×15であることがより好ましく、特に好ましくはΔn(a)>Δn(b)×20である。
【0011】
また、本発明において、前記複屈折層(a)は、前記数式(II)を満たすことが必要である。本発明の光学フィルムが、1<(nx−nz)/(nx−ny)を満たせば、厚み方向における複屈折率が、フィルム面内の複屈折率よりも大きくなるため、例えば、液晶セルの光学補償に優れたものとなる。また、好ましくは、1<(nx−nz)/(nx−ny)≦100の範囲である。前記値が100以下であれば、例えば、本発明の光学フィルムを液晶表示装置に用いた場合に、十分なコントラスト比を得ることができ、視野角特性がより一層優れるからである。さらに、前記(nx−nz)/(nx−ny)の値は、光学補償に優れることから、例えば、1<(nx−nz)/(nx−ny)≦80の範囲がより好ましく、さらに好ましくは、1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦50である。また、垂直配向(VA)モードの液晶表示装置に使用する場合には、1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦30であることが特に好ましい。
【0012】
なお、図1の概略図に、複屈折層(a)10における屈折率(nx, ny, nz)の光軸方向を矢印で示す。屈折率nx, ny, nz は、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、図示のように、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
【0013】
さらに、本発明において、前記複屈折層(a)は、前記数式(III)の条件を満たすことが必要である。前記Δn(a)が、0.0005未満であれば、光学フィルムが厚型化し、0.5を超えると、光学フィルムの位相差制御が困難になるからである。前記屈折率は、より好ましくは0.005≦Δn(a)≦0.2であり、特に好ましくは0.02≦Δn(a)≦0.15である。
【0014】
本発明において、前記複屈折層(a)の厚みは、特に限定されないが、液晶表示装置の薄型化を図り、また、視角補償機能に優れ、かつ位相差が均一な光学フィルムを提供できることから、0.1〜50μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.5〜30μm、さらに好ましくは1〜20μmである。一方、前記透明フィルム(b)の厚みは、使用目的等に応じて適宜決定できるが、例えば、強度や薄層化等の点から、5〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは15〜150μmの範囲である。
【0015】
前記複屈折層(a)は、例えば、前記透明フィルム(b)の片面または両面に積層されてもよく、その積層数は、1層でもよいし、2層以上でもよい。また、前記透明フィルム(b)は、例えば、単層体でもよく、2層以上の積層体でもよい。前記透明フィルムが積層体の場合、例えば、強度、耐熱性、複屈折層の密着性の向上等、その目的に応じて、同種ポリマー層から構成されてもよいし、異種ポリマー層の積層体であってもよい。
【0016】
前記複屈折層(a)の形成材料としては、最終的に、本発明の前記各条件を満たすものであれば特に制限されないが、前記条件の中でも前記条件(I)を満たすために、例えば、後述する透明フィルムの材料に応じてその種類を選択することが好ましい。また、その選択の方法としては、例えば、前記形成材料を用いて複屈折層を形成した際の複屈折率が、相対的により一層高い値になるものを選択し、一方、後述するような透明フィルム(b)の形成材料として、これを用いて透明フィルムと形成した際の複屈折層が、相対的により一層低い値になるものを選択することが好ましい。
【0017】
前記形成材料としては、例えば、非液晶性材料、特に非液晶性ポリマーであることが好ましい。このような非液晶性材料は、例えば、液晶性材料とは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成する。このため、例えば、使用する基板としては、配向基板に限定されることもなく、例えば、未配向基板であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
【0018】
前記非液晶性ポリマーとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性、透明性に優れ、剛性にも富むことから、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド等のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、いずれか一種類を単独で使用してもよいし、例えば、ポリアリールエーテルケトンとポリアミドとの混合物のように、異なる官能基を持つ2種以上の混合物として使用してもよい。このようなポリマーの中でも、高透明性、高配向性、高延伸性であることから、ポリイミドが特に好ましい。
【0019】
前記ポリマーの分子量は、特に制限されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは2,000〜500,000の範囲である。
【0020】
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000−511296号公報に開示された、9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
【0021】
【化1】
【0022】
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
【0023】
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
【0024】
【化2】
【0025】
前記式(2)中、Z’は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
【0026】
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
【0027】
この他にも、例えば、特表平8−511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
【0028】
【化3】
【0029】
【化4】
【0030】
【化5】
【0031】
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG’は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
【0032】
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
【0033】
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
【0034】
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
【0035】
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、およびC1−3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
【0036】
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
【化6】
【0037】
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
【0038】
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0039】
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
【0040】
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4’−(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物)、4,4’−[4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
【0041】
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2’−置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2’−ビス(トリハロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
【0042】
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
【0043】
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o−、m−およびp−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼンおよび1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、および3,3’−ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8−ジアミノナフタレン、および1,5−ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリジン、および2,4−ジアミノ−S−トリアジン等があげられる。
【0044】
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−(9−フルオレニリデン)−ジアニリン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
【0045】
前記複屈折層(a)の形成材料である前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
【0046】
【化7】
【0047】
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
【0048】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖を有する低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
【0049】
前記式(7)中、qは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
【0050】
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
【0051】
【化8】
【0052】
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X’が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q’は、前記X’の置換数を表し、0から4までの整数であって、q’=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。
【0053】
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
【0054】
【化9】
【0055】
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
【0056】
【化10】
【0057】
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
【0058】
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p−テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0059】
【化11】
【0060】
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
【0061】
【化12】
【0062】
【化13】
【0063】
【化14】
【0064】
【化15】
【0065】
また、これらの他に、前記複屈折層(a)の形成材料である前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
【0066】
【化16】
【0067】
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1−3アルキル基およびC1−3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
【0068】
また、前記(22)中、AおよびA’は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
【0069】
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1−9アルコキシカルボニル基、C1−9アルキルカルボニルオキシ基、C1−12アリールオキシカルボニル基、C1−12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1−12アリールカルバモイル基、ならびに、C1−12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1−3アルキル基、C1−3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
【0070】
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
【0071】
【化17】
【0072】
前記式(23)中、A、A’およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
【0073】
一方、前記透明フィルム(b)の形成材料としては、最終的に、本発明の前記条件(I)を満たすものであれば、特に制限されないが、透明性に優れるポリマーが好ましく、また、後述するような延伸処理や収縮処理に適していることから、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開平2001−343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。具体例としては、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物等である。これらの形成材料の中でも、例えば、透明フィルムを形成した際の複屈折率を、相対的により一層低く設定できる材料が好ましく、具体的には、前述の側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物が好ましい。
【0074】
つぎに、本発明の光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムは、前記条件(I)〜(III)の条件を満たすものであれば、その製造方法は特に制限されないが、例えば、以下に示す第1の製造方法および第2の製造方法があげられる。
【0075】
前記第1の製造方法は、面内において一方向に収縮性を示す透明基板上に、直接、前記複屈折層の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、前記透明基板の収縮に伴い前記塗工膜を収縮させる方法である。このような方法によって、収縮した前記透明基板は前記透明フィルム(b)となり、収縮した前記塗工膜は前記複屈折層(a)となって、前記透明フィルム(b)上に、前記複屈折層(a)が直接固定化された本発明の光学フィルムが得られる。このように、前記透明フィルム(b)上に、前記複屈折層(a)が直接積層され、かつ、前記条件(I)〜(III)を全て満たす本発明であれば、例えば、従来のように、前記透明フィルム上の複屈折層を、他の基板に転写してから使用する必要がなく、そのまま視覚補償フィルム等として使用することができる。なお、前記基板の収縮性は、例えば、基板に予め加熱処理を施すこと等によって付与することができる。
【0076】
この方法によれば、まず、ポリイミドのような前記非液晶ポリマーは、その性質上、前記透明基板の配向の有無に関わらず、nx=ny>nzの光学特性を示すため、前記ポリマーから形成された前記塗工膜は、光学的一軸性を示す。つまり、厚み方向にのみ位相差を示す。そして、前記透明基板の収縮性によって、前記透明基板上の塗工膜も共に面方向において収縮するため、前記塗工膜は、さらに面内において屈折差が生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。さらに、例えば、透明基板の形成材料と複屈折層の形成材料とを、前述のように選択すること等によって、前記条件(I)を満たすことができる。
【0077】
前述のように、前記非液晶ポリマーは光学的一軸性を示す性質を有することから、基板の配向性を利用する必要がない。このため、前記透明基板としては、配向性基板、非配向性基板の両方が使用できる。また、例えば、複屈折による位相差を生じるものでもよいし、複屈折による位相差を生じないものでもよい。前記複屈折による位相差を生じる透明基板としては、例えば、延伸フィルム等があげられ、厚み方向の屈折率が制御されたもの等も使用できる。前記屈折率の制御は、例えば、ポリマーフィルムを熱収縮性フィルムと接着し、さらに加熱延伸する方法等によって行うことができる。
【0078】
前記透明基板は、面内において一方向に収縮性を持たせるため、例えば、面内のいずれか一方向において、延伸しておくことが好ましい。このように、予め延伸しておくことによって、前記延伸方向と反対方向に収縮力が発生する。この透明基板の面内の収縮差を利用して、塗工膜の非液晶材料に面内の屈折率差を付与するのである。具体的な条件を以下に示す。
【0079】
延伸前の前記透明基板の厚みは、特に制限されないが、例えば、10〜200μmの範囲であり、好ましくは20〜150μmの範囲であり、特に好ましくは30〜100μmの範囲である。そして、延伸倍率に関しては、前記延伸後の透明基板上に形成される複屈折層が光学的二軸性(nx>ny>nz)を示す範囲であれば特に限定されない。
【0080】
前記透明基板上に、前記複屈折層の形成材料を塗工する方法としては、特に限定されないが、例えば、前述のような非液晶性ポリマーを加熱溶融して塗工する方法や、前記非液晶ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗工する方法等があげられる。その中でも、作業性に優れることから、前記ポリマー溶液を塗工する方法が好ましい。
【0081】
前記ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、例えば、前記非液晶性ポリマー5〜50重量部であることが好ましく、より好ましくは10〜40重量部である。
【0082】
前記ポリマー溶液の溶媒としては、前記非液晶性ポリマー等の形成材料を溶解できれば特に制限されず、前記形成材料の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0083】
前記ポリマー溶液は、例えば、必要に応じて、さらに、安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
【0084】
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記形成材料の配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
【0085】
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
【0086】
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマー材料に対して、例えば、0〜50質量%であり、好ましくは、0〜30質量%である。
【0087】
前記ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
【0088】
そして、前記透明基板上の塗工膜に、加熱処理を施すことによって、前記透明基板を収縮させる。この透明基板の収縮に伴って、前記塗工膜が収縮することによって、複屈折層(a)が形成されるのである。前記加熱処理の条件としては、特に制限されず、例えば、透明基板の材料の種類等によって適宜決定できるが、例えば、加熱温度は、25〜300℃の範囲であり、好ましくは50〜200℃の範囲であり、特に好ましくは60〜180℃の範囲である。
【0089】
前記加熱処理後において、前記複屈折層(a)中に残存する前記ポリマー溶液の溶媒は、その量に比例して光学フィルムの光学特性を経時的に変化させるおそれがあるため、その残存量は、例えば、5%以下が好ましく、より好ましくは2%以下であり、さらに好ましくは0.2%以下である。
【0090】
一方、前記第2の製造方法は、透明基板上に、直接、前記複屈折層の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、前記透明基板と前記塗工膜とを共に延伸する方法である。このような方法によって、延伸した前記透明基板は前記透明フィルム(b)となり、同様に延伸した前記塗工膜は前記複屈折層(a)となって、前記透明フィルム(b)上に、前記複屈折層(a)が直接固定化された本発明の光学フィルムが得られる。この光学フィルムも、前記第1の製造方法によって得られる光学フィルムと同様の効果が得られる。なお、この製造方法において、複屈折層(a)の形成材料の塗工は、前記第1の製造方法と同様にして行うことができる。
【0091】
この方法によれば、前記第1の製造方法と同様に、ポリイミドのような前記非液晶ポリマーは、その性質上、前記透明基板の配向の有無に関わらず、nx=ny>nzの光学特性を示すため、前記ポリマーから形成された前記塗工膜は、光学的一軸性を示す。そして、前記透明基板と前記塗工膜との積層体を、面内の一方向に共に延伸することによって、前記塗工膜は、さらに面内において屈折差を生じ、光学的二軸性(nx>ny>nz)を示すようになるのである。
【0092】
前記透明基板と塗工膜との積層体の延伸方法は、特に制限されないが、例えば、長手方向に一軸延伸する自由端縦延伸、フィルムの長手方向を固定した状態で、幅方向に一軸延伸する固定端横延伸、長手方向および幅方向の両方に延伸を行う逐次または同時二軸延伸等の方法があげられる。
【0093】
そして、前記積層体の延伸は、例えば、前記透明基板と前記塗工膜との両方を共に引っ張ることによって行ってもよいが、例えば、以下の理由から、前記透明基板のみを延伸することが好ましい。前記透明基板のみを延伸した場合、この延伸により前記透明基板に発生する張力によって、前記透明基板上の前記塗工膜が間接的に延伸される。そして、積層体を延伸するよりも、単層体を延伸する方が、通常、均一な延伸となるため、前述のように透明基板のみを均一に延伸すれば、これに伴って、前記透明基板上の前記塗工膜も均一に延伸できるためである。
【0094】
延伸の条件としては、特に制限されず、例えば、透明基板や前記複屈折層の形成材料の種類等に応じて適宜決定できる。具体例としては、延伸倍率は、1倍より大きく5倍以下が好ましく、より好ましくは、1倍より大きく4倍以下であり、特に好ましくは1倍より大きく3倍以下である。
【0095】
この第2の製造方法によって光学フィルムを製造する場合においても、例えば、透明基板の形成材料と複屈折層(a)の形成材料とを、前述のように選択すること等によって、前記条件(I)を満たすことができる。
【0096】
前記第1および第2の製造方法以外にも、本発明の光学フィルムを製造する方法としては、例えば、面内の一方向に応力を加えた前記透明基板上で、前記複屈折層(a)の形成材料を薄層化する方法がある。
【0097】
また、この他にも、例えば、一方向から風等を吹き付けて、透明フィルム(b)上で前記形成材料を薄層化する方法、異方性を持たせた透明フィルム(b)上に前記形成材料を塗工する方法等がある。
【0098】
本発明の光学フィルムは、さらに、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方を有することが好ましい。これによって、本発明の光学フィルムと、他の光学層や液晶セル等の他部材との接着が容易になるとともに、本発明の光学フィルムの剥離を防止することができるからである。したがって、前記接着剤層や粘着剤層は、光学フィルムの最外層に積層されることが好ましく、また、光学フィルムの一方の最外層でもよいし、両方の最外層に積層されてもよい。
【0099】
前記接着層の材料としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製感圧接着剤や、ゴム系感圧接着剤等が使用できる。また、これらの材料に、微粒子を含有させて光拡散性を示す層としてもよい。これらの中でも、例えば、吸湿性や耐熱性に優れる材料が好ましい。このような性質であれば、例えば、液晶表示装置に使用した場合に、吸湿による発泡や剥離、熱膨張差等による光学特性の低下や、液晶セルの反り等を防止でき、高品質で耐久性にも優れる表示装置となる。
【0100】
本発明の光学フィルムは、前述のように、単独で使用してもよいし、必要に応じて他の光学部材と組合せて積層体として、各種光学用途に供することができる。具体的には、光学補償用部材として、特に視覚補償部材として有用である。前記他の光学部材としては、特に制限されないが、例えば、以下に示す偏光子等があげられる。
【0101】
本発明の積層偏光板は、光学フィルムと偏光子とを含む積層偏光板であって、前記光学フィルムが、前記本発明の光学フィルムであることを特徴する。
【0102】
このような偏光板の構成は、前記本発明の光学フィルムを有していれば、特に制限されないが、例えば、図2または図3に示すようなものが例示できる。図2および図3は、それぞれ本発明の積層偏光板の例を示す断面図であり、両図において同一部分には同一符号を付している。なお、本発明の偏光板は、以下の構成に限定されるものではなく、さらに他の光学部材等を含んでいてもよい。
【0103】
図2に示す積層偏光板20は、前記本発明の光学フィルム1、偏光子2および二つの透明保護層3を有し、偏光子2の両面に透明保護層3がそれぞれ積層されており、一方の透明保護層3にさらに光学フィルム1が積層されている。なお、光学フィルム1は、前述のように複屈折層(a)と透明フィルム(b)との積層体であるため、いずれの表面が透明保護層3に面してもよい。
【0104】
なお、透明保護層は、同図に示すように偏光子の両側に積層してもよいし、いずれか一方の面のみに積層してもよい。また、両面に積層する場合には、例えば、同じ種類の透明保護層を使用しても、異なる種類の透明保護層を使用してもよい。
【0105】
一方、図3に示す積層偏光板30は、前記本発明の光学フィルム1、偏光子2および透明保護層3を有し、偏光子2の両面に光学フィルム1および透明保護層3がそれぞれ積層されている。
【0106】
そして、光学フィルム1は、前述のように複屈折層(a)と透明フィルム(b)との積層体であるため、いずれの表面が偏光子に面してもよいが、例えば、以下のような理由から、光学フィルム1の透明フィルム(b)側が偏光子2に面するように配置することが好ましい。このような構成であれば、光学フィルム1の透明フィルム(b)を、積層偏光板における透明保護層として兼用できるからである。すなわち、偏光子の両面に透明保護層を積層する代わりに、前記偏光子の一方の面には透明保護層を積層し、他方の面には、透明フィルムが面するように光学フィルムを積層することによって、前記透明フィルムが偏光子の他方の透明保護層の役割も果たすのである。このため、より一層薄型化された偏光板を得ることができる。
【0107】
前記偏光子としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
【0108】
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
【0109】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
【0110】
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[(nx+ny)/2−nz]・d
【0111】
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
【0112】
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μl、より好ましくは5〜150μmの範囲である
【0113】
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0114】
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
【0115】
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
【0116】
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
【0117】
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0118】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
【0119】
各構成物同士(光学フィルム、偏光子、透明保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、前述と同様の粘着剤や接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。また、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。また、湿度や熱等によっても剥がれにくく、光透過率や偏光度に優れる偏光板を形成できることから、さらに、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のPVA系ポリマーの水溶性架橋剤を含む接着剤が好ましい。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
【0120】
また、本発明の光学フィルムは、前述のような偏光子の他にも、例えば、各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等、従来公知の光学部材と組合せて使用することもできる。前記位相差板としては、例えば、ポリマーフィルムを一軸延伸または二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子の塗工膜等があげられる。前記拡散制御フィルムとしては、例えば、拡散、散乱、屈折を利用したフィルムがあげられ、これらは、例えば、視野角の制御や、解像度に関わるギラツキや散乱光の制御等に使用することができる。前記輝度向上フィルムとしては、例えば、コレステリック液晶の選択反射と1/4波長板(λ/4板)とを用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等が使用できる。また、前記光学フィルムは、例えば、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せることもできる。
【0121】
本発明の積層偏光板は、実用に際して、前記本発明の光学フィルムの他に、さらに他の光学層を含んでもよい。前記光学層としては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等の形成に使用される、従来公知の各種光学層があげられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。このような光学層をさらに含む積層偏光板は、例えば、光学補償機能を有する一体型偏光板として使用することが好ましく、例えば、液晶セル表面に配置する等、各種画像表示装置への使用に適している。
【0122】
以下に、このような一体型偏光板について説明する。
【0123】
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
【0124】
前記反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
【0125】
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
【0126】
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0127】
また、前述のように偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
【0128】
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
【0129】
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
【0130】
つぎに、本発明の積層偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層された偏光板の一例を説明する。
【0131】
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D−BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
【0132】
以上のような本発明の各種偏光板は、例えば、本発明の積層偏光板と、さらに2層以上の光学層とを積層した光学部材であってもよい。
【0133】
このように2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
【0134】
前述のような各種偏光板は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記偏光板の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記偏光板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記偏光板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような層は、偏光板のいずれの表面に形成してもよく、例えば、偏光板における前記位相差板の露出面に形成してもよい。
【0135】
このように偏光板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、セパレータによって前記表面をカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを一層以上設ける方法等によって形成できる。
【0136】
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記偏光板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
【0137】
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
【0138】
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
【0139】
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0140】
以上のような本発明の光学フィルムや偏光板、各種光学部材(光学層を積層した各種偏光板)を形成する偏光フィルム、透明保護層、光学層、粘着剤層等の各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で適宜処理することによって、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
【0141】
本発明の光学フィルムや偏光板は、前述のように、液晶表示装置等の各種装置の形成に使用することが好ましく、例えば、本発明の光学フィルムや偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
【0142】
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のもの等、種々のタイプの液晶セルが使用できる。これらの中でも、本発明の光学フィルムや偏光板は、特にVA(垂直配向;Vertical Alighned)セルの光学補償に非常に優れているので、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして非常に有用である。
【0143】
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
【0144】
また、液晶セルの両面に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものでもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適当な部品を、適当な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0145】
さらに、本発明の液晶表示装置は、液晶パネルを含み、前記液晶パネルとして、本発明の液晶パネルを使用する以外は、特に制限されない。光源を含む場合、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
【0146】
図4の断面図に、本発明の液晶パネルの一例を示す。図示のように、液晶パネル40は、液晶セル21、光学フィルム1、偏光子2および透明保護層3を有しており、液晶セル21の一方の面に光学フィルム1が積層されており、光学の他方の面に、偏光子2および透明保護層が、この順序で積層されている。前記液晶セルは、二枚の液晶セル基板の間に、液晶が保持された構成となっている(図示せず)。また、光学フィルム1は、前述のように複屈折層(a)と透明フィルム(b)の積層体であり、前記複屈折層側が液晶セルに面しており、透明フィルム側が偏光子2に面している。
【0147】
本発明の液晶表示装置は、視認側の光学フィルム(偏光板)の上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
【0148】
なお、本発明の光学フィルムや偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、PDP、FED等の自発光型表示装置にも使用できる。自発光型フラットディスプレイに使用する場合は、例えば、本発明の複屈折性光学フィルムの面内位相差値Δndをλ/4にすることで、円偏光を得ることができるため、反射防止フィルターとして利用できる。
【0149】
以下に、本発明の偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の光学フィルムまたは偏光板を有する表示装置であり、このEL装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
【0150】
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の偏光子や光学フィルムは、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
【0151】
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
【0152】
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0153】
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
【0154】
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
【0155】
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の光学フィルム(偏光板等)が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の光学フィルムを配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
【0156】
前記位相差板および光学フィルム(偏光板等)は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
【0157】
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
【0158】
【実施例】
以下、実施例および比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、光学フィルムの特性は以下の方法で評価した。
【0159】
(位相差値Δnd、配向軸精度の測定)
位相差計(王子計測機器社製、商品名KOBRA21ADH)を用いて測定した。
【0160】
(屈折率測定)
王子計測機器社製の商品名KOBRA21ADHを用いて、590nmにおける屈折率を測定した。
【0161】
(膜厚測定)
アンリツ製商品名デジタルマイクロメーターK−351C型を使用して測定した。
【0162】
(実施例1)
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル(TFMB)とから合成された下記式(6)で表される重量平均分子量(Mw)70,000のポリイミドを、シクロヘキサノンに溶解して、15質量%のポリイミド溶液を調製した。なお、ポリイミドの調製等は、文献(F. Li et al. Polymer40 (1999) 4571−4583)の方法を参照した。一方、厚み80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを、固定端横延伸によって175℃で1.3倍の横延伸して、厚み75μmの延伸TACフィルムを作製した。そして、この延伸TACフィルム上に前記ポリイミド溶液を塗工し、これを100℃で10分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.0006の延伸TACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0163】
【化18】
【0164】
(実施例2)
下記式(18)で表されるポリエーテルケトン(Mw:500,000)をメチルイソブチルケトンに溶解し、20wt%のワニスを調製した。このワニスを、実施例1と同様の延伸TACフィルム上に塗工し、これを100℃で10分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.0006の延伸TACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み10μm、Δn(a)約0.02のポリエーテルケトンフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0165】
【化19】
【0166】
(実施例3)
4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物と、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルとから合成されたポリイミド(Mw:30,000)を、シクロペンタノンに溶解して、20質量%ポリイミド溶液を調製した。この溶液を、厚み80μmの未延伸TACフィルム上に塗布し、130℃で5分乾燥した後、150℃で縦一軸延伸により10%の延伸を行った。その結果、完全透明で平滑な、厚み80μm、Δn(b)約0.0006のTACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み5μm、Δn(a)約0.025のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0167】
(実施例4)
2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物と、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとから合成されたポリイミド(Mw:100,000)をシクロヘキサノンに溶解し、15質量%ポリイミド溶液を調製した。この溶液を、厚み80μmの未延伸TACフィルム上に塗布し、130℃で5分乾燥した後、150℃で縦一軸延伸により10%の延伸を行った。その結果、完全透明で平滑な、厚み80μm、Δn(b)約0.0006のTACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0168】
(実施例5)
イソブテンおよびN−メチルマレイミドからなる交互共重合体(N−メチルマレイミド含量50モル%)75重量部と、アクリルニトリルの含量が28質量%であるアクルロニトリル−スチレン共重合体25重量部とを塩化メチレンに溶解し、固形分濃度15質量%のポリマー溶液を得た。このポリマー溶液を、ガラス板上に配置したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に流延し、室温で60分放置した。前記PETフィルム上に形成されたポリマーフィルムをはがし、これを100℃で10分、140℃で10分、さらに160℃で30分乾燥することによって透明フィルム(b)を得た。このフィルムの面内位相差値Δnd=(nx−ny)・dは1nm、厚み方向の位相差値Rth=(nx−nz)・dは、4nmであった。
【0169】
このようにして得た透明フィルム(b)上に、実施例1と同様のポリイミド溶液を塗布し、100℃で5分乾燥した後、130℃で10%縦一軸延伸をした。その結果、完全透明で平滑な、厚み50μm、Δn(b)約0.001の混合樹脂フィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.035のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0170】
(実施例6)
実施例1と同様のポリイミドを、メチルイソブチルケトンに溶解して、25質量%のポリイミド溶液を調製した。この溶液を、実施例1と同様の延伸TACフィルム上に塗工し、160℃で5分間乾燥を行った。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.0006の延伸TACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0171】
(実施例7)
実施例1と同様のポリイミド溶液を、厚み80μmの未延伸TACフィルム上に塗工し、100℃で10分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み80μm、Δn(b)約0.0006のTACフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み4μm、Δn(a)約0.025のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。このフィルムは、nx≒ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0172】
(比較例1)
Δnが約0.002のポリノルボルネン系樹脂フィルム(JSR社製、商品名ARTONフィルム)を、固定端横延伸によって、175℃で1.3倍に延伸し、厚み80μmのフィルムを得た。このフィルムの複屈折率を評価したところ、nx>ny>nzの複屈折特性を持つ光学フィルムであった。
【0173】
(比較例2)
実施例1と同様のポリイミド溶液を、ガラス板上に塗工し、100℃で10分間乾燥して、ポリイミドフィルムを形成した。その後、前記ガラス板から前記ポリイミドフィルムを剥離し、厚み7μm、Δn約0.04の、完全透明で平滑なフィルムを得た。このフィルムは、nx≒ny>nzの複屈折特性を持つ光学フィルムであった。
【0174】
(比較例3)
厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、固定端横延伸によって175℃で1.3倍に横延伸して、厚み75μmの延伸PETフィルムを作製した。そして、この延伸PETフィルム上に実施例1と同様のポリイミド溶液を塗工し、これを150℃で5分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.08のPETフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み6μm、Δn(a)約0.04のポリイミドフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0175】
(比較例4)
実施例3と同様のワニスを、比較例3と同様の延伸PETフィルム上に塗工し、150℃で5分間乾燥した。その結果、完全透明で平滑な、厚み75μm、Δn(b)約0.08の延伸PETフィルム(透明フィルム(b))の上に、厚み10μm、Δn(a)約0.035のポリエーテルケトンフィルム(複屈折層(a))が積層された光学フィルムが得られた。この光学フィルムは、nx>ny>nzの光学特性を持つ複屈折層を有する光学フィルムであった。
【0176】
前記実施例および比較例で得られた光学フィルムの複屈折層について、Δnd=(nx−ny)×d、Rth=(nx−nz)×d、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)、厚み、および配向軸精度をそれぞれ測定した。実施例5以外の複屈折層については、得られた各光学フィルムから複屈折層を剥離して、前記複屈折層単独で測定を行った。実施例5の複屈折層についての測定は、実施例5で使用した透明フィルム(b)の代わりにTACフィルムを使用し、同様の条件で作製した光学フィルムの複屈折層を剥離して行った。その結果を表1に示す。
【0177】
【0178】
前記表1に示すように、各実施例の光学フィルムは、前記条件(I)、(II)および(III)を全て満たしていたのに対して、比較例1〜比較例4は、条件(I)を満たしていなかった。
【0179】
(表示特性の評価)
そして、前記実施例1〜7および比較例1〜4で得られた光学フィルムを、市販の偏光板(日東電工(株)製、商品名「HEG1425DU」)と、アクリル系粘着剤を介して積層し、光学補償層一体型の積層偏光板を作製した。なお、前記偏光板と、前記光学フィルムの透明フィルム(b)基材とが面するように積層した。さらに、この積層偏光板を液晶セルのバックライト側に、前記偏光板が外側になるように接着して液晶表示装置を作製した。
【0180】
そして、これらの液晶表示装置の表示特性を評価した。その結果、前記各実施例の光学フィルムを用いた場合、正面と斜視の広い視野角範囲において、コントラストと表示の均質性に優れるだけでなく、さらに虹ムラの発生も抑制された。各実施例の中でも、特に、条件(II)が100以下である実施例1〜実施例6の光学フィルムの場合は、虹ムラの発生が十分に回避され、極めて優れた表示品位を示した。これに対して、前記各比較例の光学フィルムを用いた場合、いずれも、偏光解消による虹ムラが生じ、表示内容が確認できなかった。以上の結果から、前記条件(I)〜(III)を全て満たす本発明の光学フィルムであれば、比較例とは全く異なり、虹ムラが抑制された表示特性に極めて優れる液晶表示装置を提供できると言える。
【0181】
【発明の効果】
以上のように、前記条件(I)〜(III)の全てを満たす本発明の光学フィルムによれば、nx>ny>nzの光学特性を持つ、薄型で、透明な、極めて優れた光学的性質を有するため、例えば、正面と斜視の広い視角範囲におけるコントラストが優れるだけでなく、虹ムラの発生も抑制された表示品位に優れる薄型の液晶表示装置や自発光型表示装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における光軸方向を示す斜視図である。
【図2】本発明の積層偏光板の一例の断面図である。
【図3】本発明の積層偏光板のその他の一例の断面図である。
【図4】本発明の液晶パネルの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 光学フィルム
2 偏光子
3 保護層
10 複屈折層(a)
20、30 積層偏光板
21 液晶セル
40 液晶パネル
Claims (13)
- 複屈折層(a)と透明フィルム(b)とを含む光学フィルムであって、前記透明フィルム(b)の上に前記複屈折層(a)が積層され、かつ、下記数式(I)から(III)の全ての条件を満たすことを特徴とする光学フィルム。
Δn(a)>Δn(b)×10 (I)
1<(nx−nz)/(nx−ny) (II)
0.0005≦Δn(a)≦0.5 (III)
前記数式(I)〜(III)中、Δn(a)は、前記複屈折層(a)の複屈折率であり、Δn(b)は、前記透明フィルム(b)の複屈折率であり、それぞれ下記数式で表され、前記数式(II)および下記数式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記複屈折層(a)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、nx’、ny’およびnz’は、前記透明フィルム(b)におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記複屈折層(a)および前記透明フィルム(b)の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
Δn(a)=[(nx+ny)/2]−nz
Δn(b)=[(nx’+ny’)/2]−nz’ - 前記透明フィルム(b)上に、直接、前記複屈折層(a)が積層されている請求項1記載の光学フィルム。
- 複屈折層(a)を形成する材料が、非液晶性材料である請求項1または2記載の光学フィルム。
- 前記非液晶性材料が、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアミドイミドおよびポリエステルイミドからなる群から選択される少なくとも一種のポリマー材料である請求項3に記載の光学フィルム。
- 収縮性を有する透明フィルム(b)上に、直接、前記複屈折層(a)の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、前記透明フィルム(b)の収縮に伴い前記塗工膜を収縮させることにより得られる請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 加熱により前記透明フィルム(b)を収縮させる請求項5記載の光学フィルム。
- 透明フィルム(b)上に、直接、前記複屈折層(a)の形成材料を塗工して塗工膜を形成し、前記透明フィルム(b)と前記塗工膜とを共に延伸することによって得られる請求項1から4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- さらに、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学フィルム。
- 最外層に、接着剤層および粘着剤層の少なくとも一方が積層された請求項8記載の光学フィルム。
- 光学フィルムと偏光子とを含む積層偏光板であって、前記光学フィルムが、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルムである積層偏光板。
- 液晶セルおよび光学部材を含み、前記液晶セルの少なくとも一方の表面に前記光学部材が配置された液晶パネルであって、前記光学部材が、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルムまたは請求項10記載の積層偏光板である液晶パネル。
- 液晶パネルを含む液晶表示装置であって、前記液晶パネルが請求項11記載の液晶パネルである液晶表示装置。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学フィルムおよび請求項10記載の積層偏光板の少なくとも一つを含む自発光型表示装置。
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