本発明者らは、透明高分子フィルム(b)の上にポリマーから形成された複屈折層(a)が積層されている本発明の光学フィルムが、前記式(1)〜(3)の条件を全て満たすことにより、虹ムラの発生を抑制でき、かつ前記複屈折層(a)を形成するポリマーの重量平均分子量が、特定の範囲内にあれば、クラックの発生、位相差のばらつきおよび外観不良を抑制することができることを見出し、本発明に至った。
本発明において、複屈折層(a)の複屈折率である△n(a)と、透明高分子フィルム(b)の複屈折率である△n(b)は、前記式(1)を満たすことが必要である。
通常、複屈折層(a)で光学補償が行われるため、透明高分子フィルム(b)の複屈折が光学設計において補償を妨げないように、上記の関係が必要となる。
前記△n(a)と△n(b)の関係は、△n(a)>△n(b)×15であれば、よりいっそう視覚補償の行われた光学フィルムを得ることができるので好ましい。さらに好ましくは、その関係は、△n(a)>△n(b)×20である。
なお、図1の概略図に、複屈折層(a)における屈折率(nx, ny, nz)の光軸方向の例を矢印で示す。屈折率nx, ny, nz は、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
また、本発明において、前記複屈折層(a)は、前記式(2)を満たすことが必要である。本発明の光学フィルムが、1<(nx−nz)/(nx−ny)を満たせば、厚み方向における複屈折率が、フィルム面内の複屈折率よりも大きくなるため、例えば、液晶セルの光学補償に優れたものとなる。
また、前記(nx−nz)/(nx−ny)の値は、(nx−nz)/(nx−ny)<100を満たせば、例えば、本発明の光学フィルムを液晶表示装置に用いた場合に、十分なコントラスト比を得ることができ、視野角特性がより一層優れ、好ましい。さらに、前記(nx−nz)/(nx−ny)の値は、光学補償に優れることから、例えば、1<(nx−nz)/(nx−ny)≦80の範囲が好ましく、より好ましくは、1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦50である。また、垂直配向(VA)モードの液晶表示装置に使用する場合には、1≦(nx−nz)/(nx−ny)≦30であることがさらに好ましい。
さらに、本発明において、前記複屈折層(a)の複屈折率(△n(a))の値は、前記式(3)を満たす、すなわち0.005〜0.5の範囲である必要がある。0.005以上の場合はより薄型の複屈折層を得ることが可能となり、0.5以下であれば位相差制御が容易であるからである。なお、生産性に優れた光学フィルムを得るためには、△n(a)の値は好ましくは0.01〜0.2、より好ましくは0.02〜0.15の範囲である。
本発明において、前記複屈折層(a)の厚みは、特に限定されないが、液晶表示装置の薄型化を図りつつ、視角補償機能に優れ、かつ均質なフィルムを提供する観点より、例えば0.1〜50μmであり、好ましくは0.5〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。
前記透明高分子フィルム(b)の厚さは、使用目的等に応じて適宜決定することができるが、強度や薄層化などの点より、透明高分子フィルム(b)の厚さは、例えば5〜500μmであり、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは15〜150μmの範囲である。
前記複屈折層(a)は、例えば、前記透明高分子フィルム(b)の片面または両面に積層されてもよく、その積層数は、1層でもよいし、2層以上でもよい。また、前記複屈折層(a)は、前記透明高分子フィルム(b)上に直接、積層されていてもよく、前記両者の間に別の層が配置されていてもよい。
前記透明高分子フィルム(b)は、例えば、単層体でもよく、2層以上の積層体でもよい。前記透明高分子フィルムが積層体の場合、例えば、強度、耐熱性、複屈折層の密着性の向上等、その目的に応じて、同種ポリマー層から構成されてもよいし、異種ポリマー層の積層体であってもよい。
前記複屈折層(a)の形成材料としては、最終的に、本発明の前記各条件を満たすものであれば特に制限されないが、前記条件の中でも前記条件(1)を満たすために、例えば、後述する透明高分子フィルムの材料に応じてその種類を選択することが好ましい。また、その選択の方法としては、例えば、前記形成材料を用いて複屈折層を形成した際の複屈折率が、相対的により一層高い値になるものを選択し、一方、後述するような透明高分子フィルム(b)の形成材料として、これを用いて透明高分子フィルムと形成した際の複屈折層が、相対的により一層低い値になるものを選択することが好ましい。
本発明で用いられる複屈折層(a)を形成するポリマーは、ジメチルホルムアミド溶媒によるポリエチレンオキサイドを標準試料として、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した重量平均分子量(Mw)が1万以上かつ40万以下の範囲にあるものである。この重量平均分子量が1万以上のポリマーを用いると、高い複屈折を有する複屈折層が得られ、さらにクラックの発生を防止でき、重量平均分子量が40万以下のポリマーを用いると、位相差のバラツキが防止されるからである。これは、ポリマー溶液を塗工して前記複屈折層(a)を形成する場合、重量平均分子量が40万以下のポリマーの溶液は粘度が高くなりすぎず、基材などへのポリマー溶液の塗工が容易になり、その結果、均一な複屈折層(a)が形成可能となるからである。また、重量平均分子量が40万以下のポリマーを用いてポリマー溶液を調製する場合は、ポリマーの可溶性が高いため、使用する溶媒量を少なくすることができる。その結果、塗工層の厚みを薄くすることができ、精密塗工が可能となる。複屈折層(a)を形成するポリマーの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは、1万以上30万以下、より好ましくは1万以上20万以下である。
前記形成材料としては、例えば、非液晶性ポリマーであることが好ましい。このような非液晶性ポリマーは、例えば、液晶性ポリマーとは異なり、基板の配向性に関係なく、それ自身の性質によりnx>nz、ny>nzという光学的一軸性を示す膜を形成する。このため、例えば、使用する基板としては、配向基板に限定されることもなく、例えば、未配向基板であっても、その表面に配向膜を塗布する工程や配向膜を積層する工程等を省略することができる。
本発明で用いられる非液晶性ポリマーとしては、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミドイミド及びポリエステルイミドからなる群から選ばれる少なくとも一種のポリマーが好ましい。これらのポリマーは、耐熱性、耐薬品性に優れ、剛性に富み、透明性に優れる等の理由から、二軸性フィルムの材料として適している。これらのポリマーは特に限定はなく、本発明の光学フィルムの特性を満足しうるものであれば、従来公知のポリマー材料を適宜使用でき、単独で又は任意の組み合せで用いることができる。
前記ポリイミドとしては、例えば、面内配向性が高く、有機溶剤に可溶なポリイミドが好ましい。具体的には、例えば、特表2000-511296号公報に開示された、9,9-ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記式(1)に示す繰り返し単位を1つ以上含むポリマーが使用できる。
前記式(1)中、R3〜R6は、水素、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。好ましくは、R3〜R6は、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン原子またはC1〜10アルキル基で置換されたフェニル基、およびC1〜10アルキル基からなる群からそれぞれ独立に選択される少なくとも一種類の置換基である。
前記式(1)中、Zは、例えば、C6〜20の4価芳香族基であり、好ましくは、ピロメリット基、多環式芳香族基、多環式芳香族基の誘導体、または、下記式(2)で表される基である。
前記式(2)中、Z'は、例えば、共有結合、C(R7)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C2H5)2基、または、NR8基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。また、wは、1から10までの整数を表す。R7は、それぞれ独立に、水素またはC(R9)3である。R8は、水素、炭素原子数1〜約20のアルキル基、またはC6〜20アリール基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。R9は、それぞれ独立に、水素、フッ素、または塩素である。
前記多環式芳香族基としては、例えば、ナフタレン、フルオレン、ベンゾフルオレンまたはアントラセンから誘導される4価の基があげられる。また、前記多環式芳香族基の置換誘導体としては、例えば、C1〜10のアルキル基、そのフッ素化誘導体、およびFやCl等のハロゲンからなる群から選択される少なくとも一つの基で置換された前記多環式芳香族基があげられる。
この他にも、例えば、特表平8-511812号公報に記載された、繰り返し単位が下記一般式(3)または(4)で示されるホモポリマーや、繰り返し単位が下記一般式(5)で示されるポリイミド等があげられる。なお、下記式(5)のポリイミドは、下記式(3)のホモポリマーの好ましい形態である。
前記一般式(3)〜(5)中、GおよびG'は、例えば、共有結合、CH2基、C(CH3)2基、C(CF3)2基、C(CX3)2基(ここで、Xは、ハロゲンである。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(CH2CH3)2基、および、N(CH3)基からなる群から、それぞれ独立して選択される基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。
前記式(3)および式(5)中、Lは、置換基であり、dおよびeは、その置換数を表す。Lは、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基であり、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。また、前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素があげられる。dは、0から2までの整数であり、eは、0から3までの整数である。
前記式(3)〜(5)中、Qは置換基であり、fはその置換数を表す。Qとしては、例えば、水素、ハロゲン、アルキル基、置換アルキル基、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基、アリール基、置換アリール基、アルキルエステル基、および置換アルキルエステル基からなる群から選択される原子または基であって、Qが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。前記置換アルキル基としては、例えば、ハロゲン化アルキル基があげられる。また前記置換アリール基としては、例えば、ハロゲン化アリール基があげられる。fは、0から4までの整数であり、gおよびhは、それぞれ0から3および1から3までの整数である。また、gおよびhは、1より大きいことが好ましい。
前記式(4)中、R10およびR11は、水素、ハロゲン、フェニル基、置換フェニル基、アルキル基、および置換アルキル基からなる群から、それぞれ独立に選択される基である。その中でも、R10およびR11は、それぞれ独立に、ハロゲン化アルキル基であることが好ましい。
前記式(5)中、M1およびM2は、同一であるかまたは異なり、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基、または、置換フェニル基である。前記ハロゲンとしては、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素があげられる。また、前記置換フェニル基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、およびC1-3ハロゲン化アルキル基からなる群から選択される少なくとも一種類の置換基を有する置換フェニル基があげられる。
前記式(3)に示すポリイミドの具体例としては、例えば、下記式(6)で表されるもの等があげられる。
さらに、前記ポリイミドとしては、例えば、前述のような骨格(繰り返し単位)以外の酸二無水物やジアミンを、適宜共重合させたコポリマーがあげられる。
前記酸二無水物としては、例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物があげられる。前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物、2,2'-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
前記ピロメリト酸二無水物としては、例えば、ピロメリト酸二無水物、3,6-ジフェニルピロメリト酸二無水物、3,6-ビス(トリフルオロメチル)ピロメリト酸二無水物、3,6-ジブロモピロメリト酸二無水物、3,6-ジクロロピロメリト酸二無水物等があげられる。前記ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記ナフタレンテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,3,6,7-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレン-テトラカルボン酸二無水物、2,6-ジクロロ-ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、チオフェン-2,3,4,5-テトラカルボン酸二無水物、ピラジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ピリジン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等があげられる。前記2,2'-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、2,2'-ジブロモ-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'-ジクロロ-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物等があげられる。
また、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物のその他の例としては、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,5,6-トリフルオロ-3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、4,4'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-2,2-ジフェニルプロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、4,4'-オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、3,3',4,4'-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4'-[4,4'-イソプロピリデン-ジ(p-フェニレンオキシ)]ビス(フタル酸無水物)、N,N-(3,4-ジカルボキシフェニル)-N-メチルアミン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物等があげられる。
これらの中でも、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,2'-置換ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましく、より好ましくは、2,2'-ビス(トリハロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、さらに好ましくは、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4',5,5'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物である。
前記ジアミンとしては、例えば、芳香族ジアミンがあげられ、具体例としては、ベンゼンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、ナフタレンジアミン、複素環式芳香族ジアミン、およびその他の芳香族ジアミンがあげられる。
前記ベンゼンジアミンとしては、例えば、o-、m-およびp-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、1,4-ジアミノ-2-メトキシベンゼン、1,4-ジアミノ-2-フェニルベンゼンおよび1,3-ジアミノ-4-クロロベンゼンのようなベンゼンジアミンから成る群から選択されるジアミン等があげられる。前記ジアミノベンゾフェノンの例としては、2,2'-ジアミノベンゾフェノン、および3,3'-ジアミノベンゾフェノン等があげられる。前記ナフタレンジアミンとしては、例えば、1,8-ジアミノナフタレン、および1,5-ジアミノナフタレン等があげられる。前記複素環式芳香族ジアミンの例としては、2,6-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリジン、および2,4-ジアミノ-S-トリアジン等があげられる。
また、前記芳香族ジアミンとしては、これらの他に、4,4'-ジアミノビフェニル、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-(9-フルオレニリデン)-ジアニリン、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル、3,3'-ジクロロ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、2,2'-ジクロロ-4,4'-ジアミノビフェニル、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルエーテル、3,4'-ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4'-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4'-ジアミノジフェニルチオエーテル、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン等があげられる。
前記ポリエーテルケトンとしては、例えば、特開2001−49110号公報に記載された、下記一般式(7)で表されるポリアリールエーテルケトンがあげられる。
前記式(7)中、Xは、置換基を表し、qは、その置換数を表す。aは、フッ素原子Fの置換数を表す。Xは、例えば、ハロゲン原子、低級アルキル基、ハロゲン化アルキル基、低級アルコキシ基、または、ハロゲン化アルコキシ基であり、Xが複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、臭素原子、塩素原子およびヨウ素原子があげられ、これらの中でも、フッ素原子が好ましい。前記低級アルキル基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖の低級アルキル基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、および、tert−ブチル基が好ましく、特に好ましくは、メチル基およびエチル基である。前記ハロゲン化アルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基等の前記低級アルキル基のハロゲン化物があげられる。前記低級アルコキシ基としては、例えば、C1〜6の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基が好ましく、より好ましくはC1〜4の直鎖または分岐鎖のアルコキシ基である。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、および、tert−ブトキシ基が、さらに好ましく、特に好ましくはメトキシ基およびエトキシ基である。前記ハロゲン化アルコキシ基としては、例えば、トリフルオロメトキシ基等の前記低級アルコキシ基のハロゲン化物があげられる。
前記式(7)中、qおよびaは、0から4までの整数である。前記式(7)においては、q=0であり、かつ、ベンゼン環の両端に結合したカルボニル基とエーテルの酸素原子とが互いにパラ位に存在することが好ましい。
また、前記式(7)中、R1は、下記式(8)で表される基であり、mは、0または1の整数である。
前記式(8)中、X’は置換基を表し、例えば、前記式(7)におけるXと同様である。前記式(8)において、X'が複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。q'は、前記X'の置換数を表し、0から4までの整数であって、q'=0が好ましい。また、pは、0または1の整数である。bはフッ素原子Fの置換数を表し、0から4までの整数である。
前記式(8)中、R2は、2価の芳香族基を表す。この2価の芳香族基としては、例えば、o−、m−もしくはp−フェニレン基、または、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、o−、m−もしくはp−テルフェニル、フェナントレン、ジベンゾフラン、ビフェニルエーテル、もしくは、ビフェニルスルホンから誘導される2価の基等があげられる。これらの2価の芳香族基において、芳香族に直接結合している水素が、ハロゲン原子、低級アルキル基または低級アルコキシ基で置換されてもよい。これらの中でも、前記R2としては、下記式(9)〜(15)からなる群から選択される芳香族基が好ましい。
前記式(7)中、前記R1としては、下記式(16)で表される基が好ましく、下記式(16)において、R2およびpは前記式(8)と同義である。
さらに、前記式(7)中、nは重合度を表し、例えば、2〜5000の範囲であり、好ましくは、5〜500の範囲である。また、その重合は、同じ構造の繰り返し単位からなるものであってもよく、異なる構造の繰り返し単位からなるものであってもよい。後者の場合には、繰り返し単位の重合形態は、ブロック重合であってもよいし、ランダム重合でもよい。
さらに、前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの末端は、p-テトラフルオロベンゾイレン基側がフッ素であり、オキシアルキレン基側が水素原子であることが好ましく、このようなポリアリールエーテルケトンは、例えば、下記一般式(17)で表すことができる。なお、下記式において、nは前記式(7)と同様の重合度を表す。
前記式(7)で示されるポリアリールエーテルケトンの具体例としては、下記式(18)〜(21)で表されるもの等があげられ、下記各式において、nは、前記式(7)と同様の重合度を表す。
また、これらの他に、前記ポリアミドまたはポリエステルとしては、例えば、特表平10−508048号公報に記載されるポリアミドやポリエステルがあげられ、それらの繰り返し単位は、例えば、下記一般式(22)で表すことができる。
前記式(22)中、Yは、OまたはNHである。また、Eは、例えば、共有結合、C2アルキレン基、ハロゲン化C2アルキレン基、CH2基、C(CX3)2基(ここで、Xはハロゲンまたは水素である。)、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、および、N(R)基からなる群から選ばれる少なくとも一種類の基であり、それぞれ同一でもよいし異なってもよい。前記Eにおいて、Rは、C1-3アルキル基およびC1-3ハロゲン化アルキル基の少なくとも一種類であり、カルボニル官能基またはY基に対してメタ位またはパラ位にある。
また、前記(22)中、AおよびA'は、置換基であり、tおよびzは、それぞれの置換数を表す。また、pは、0から3までの整数であり、qは、1から3までの整数であり、rは、0から3までの整数である。
前記Aは、例えば、水素、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、OR(ここで、Rは、前記定義のものである。)で表されるアルコキシ基、アリール基、ハロゲン化等による置換アリール基、C1-9アルコキシカルボニル基、C1-9アルキルカルボニルオキシ基、C1-12アリールオキシカルボニル基、C1-12アリールカルボニルオキシ基およびその置換誘導体、C1-12アリールカルバモイル基、ならびに、C1-12アリールカルボニルアミノ基およびその置換誘導体からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記A’は、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基、フェニル基および置換フェニル基からなる群から選択され、複数の場合、それぞれ同一であるかまたは異なる。前記置換フェニル基のフェニル環上の置換基としては、例えば、ハロゲン、C1-3アルキル基、C1-3ハロゲン化アルキル基およびこれらの組み合わせがあげられる。前記tは、0から4までの整数であり、前記zは、0から3までの整数である。
前記式(22)で表されるポリアミドまたはポリエステルの繰り返し単位の中でも、下記一般式(23)で表されるものが好ましい。
前記式(23)中、A、A'およびYは、前記式(22)で定義したものであり、vは0から3の整数、好ましくは、0から2の整数である。xおよびyは、それぞれ0または1であるが、共に0であることはない。
本発明の透明高分子フィルム(b)は、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを用いることができる。例えば、後述するように、透明高分子フィルム(b)が偏光子用保護フィルムであれば、本発明の光学フィルムが偏光板の保護フィルムを兼ねることが可能となり、好ましい。
一方、前記透明高分子フィルム(b)の形成材料としては、最終的に、本発明の前記条件(1)を満たすものであれば、特に制限されないが、透明性に優れるポリマーが好ましく、また、後述するような延伸処理や収縮処理に適していることから、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。
さらに、前記透明高分子フィルム(b)の形成材料としては、例えば、特開平2001−343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。具体例としては、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物等である。これらの形成材料の中でも、例えば、透明フィルムを形成した際の複屈折率を、相対的により一層低く設定できる材料が好ましく、具体的には、前述の側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物が好ましい。
透明高分子フィルム(b)は、異方性をもたせるための処理をされてもよく、例えば予め延伸されてもよい。延伸方法としては、テンター横延伸や、長軸方向の延伸倍率が短軸方向の延伸倍率よりも小さい二軸延伸が好ましい。二軸延伸は全テンター方式による同時二軸延伸、ロールーテンター法による逐次二軸延伸のいずれでも良い。延伸倍率は、延伸方法によって異なるが、例えば前記高分子フィルムを1〜200%延伸する。延伸時の加熱温度は、使用する高分子フィルムのガラス転移点(Tg)や添加物の種類などに応じて適宜選択されるが、例えば80〜250℃、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは140〜200℃である。特に、用いる高分子フィルムのTg付近またはTg以上であるのがよい。
この他にも、例えば、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物、液晶ポリマー等も使用できる。
また、透明高分子フィルム(b)が、後記するような、ポリビニルアルコール系フィルムを含む偏光子であれば、本発明の光学フィルムが偏光板を兼ねることが可能となり、好ましい。
本発明の光学フィルムの製造は、例えば、以下に示すようにして行うことができる。まず透明高分子フィルム(b)の上に、複屈折層(a)を形成する前記所定のポリマーを塗工して複屈折層(a)前駆層を形成する。透明高分子フィルムは、前記のように延伸処理されていてもよい。塗工方法としては、特に限定されないが、例えば、前述のようなポリマーを加熱溶融して塗布する方法や、前記ポリマーを溶媒に溶解させたポリマー溶液を塗布する方法等があげられる。その中でも、作業性に優れ、光学異方性制御の点から、前記ポリマー溶液を塗布する方法が好ましい。
前記ポリマーの塗工工程により、製造される複屈折層(a)の厚みを調節することができる。例えば、前記ポリマー溶液を塗布する方法においては、透明高分子フィルム(b)の面積(cm2)あたりの前記ポリマーの塗工量を調節して、複屈折層(a)の厚みを調節することができる。
ポリマー溶液の溶媒としては、ポリマーを溶解させることができるものであれば特に制限はなく、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。
前記ポリマー溶液の粘度は、塗工が容易な粘度が好ましい。塗工が容易であれば、前記したように均一な複屈折層(a)の形成が可能となるからである。その粘度は、例えば、0.1〜12Pa・s、好ましくは1〜10Pa・s、より好ましくは1〜5Pa・sである。
前記ポリマー溶液における前記ポリマーの濃度は、特に制限されないが、用いる非液晶性ポリマーの重量平均分子量を考慮に入れて、溶液の粘度が前記の範囲になるように調整されることが好ましい。前記ポリマーの濃度は、溶媒100重量部に対して、例えば、前記ポリマー5〜50重量部であり、好ましくは10〜40重量部である。
前記ポリマー溶液は、例えば、必要に応じて、さらに安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記ポリマー溶液は、例えば、前記ポリマーの配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記ポリマーに対して、例えば、0〜50重量%であり、好ましくは、0〜30重量%である。
また塗工処理は、スピンコート法やロールコート法、フローコート法やプリント法、ディップコート法や流延成膜法、バーコート法やグラビア印刷法等の適宜な方法で行うことができる。塗工に際しては、必要に応じポリマー層の重畳方式なども採ることができる。
また、前記ポリマーを塗工する際に、透明高分子フィルム(b)上に一方向に応力を加えながら塗工したり、透明高分子フィルム(b)に対して一方向から風などを送りながら塗工してもよい。
次いで、前記前駆層を固化させて透明高分子フィルム(b)上に複屈折層(a)を有する光学フィルムを形成する。固化の方法としては、塗工後、自然乾燥(風乾)又は例えば25〜180℃、好ましくは80〜170℃、より好ましくは60〜150℃で加熱する方法がある。乾燥または加熱の時間は、その温度や、前駆層への溶媒の使用の有無、その溶媒の種類等により決定されるが、例えば0.5〜30分、好ましくは1〜20分、より好ましくは1〜15分、行うことができる。
本発明の光学フィルムを製造する方法においては、前記高分子フィルムと複屈折層との積層体を延伸する工程をさらに含んでもよい。
前記積層体の延伸方法としては、特に制限されず、例えば、固定端延伸や、従来公知の方法が適用できる。テンター横延伸や、長軸方向の延伸倍率が短軸方向の延伸倍率よりも小さい二軸延伸が好ましい。二軸延伸は全テンター方式による同時二軸延伸、ロールーテンター法による逐次二軸延伸のいずれでも良い。延伸倍率は、延伸方法によって異なるが、例えば前記積層体を1〜200%延伸する。延伸時の加熱温度は、使用する高分子透明フィルムのガラス転移点(Tg)や添加物の種類などに応じて適宜選択されるが、例えば80〜250℃、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは140〜200℃である。特に、用いる高分子フィルムのTg付近またはTg以上であるのがよい。
また、本発明の光学フィルムの前記製造方法は、例えば、以下に示すように変更することができる。透明高分子フィルム(b)の代わりに、例えば基材を用いる以外は、前記製造方法と同様に行う。そして、基材の上に直接形成された複屈折層(a)を、さらに透明高分子フィルム(b)と対向するように接着させ、前記基材のみを剥離する工程を行ってもよい。このように透明高分子フィルム(b)に前記複屈折層(a)を転写して、前記基材を剥離することによって形成された前記複屈折層(a)と前記透明高分子フィルム(b)との積層体を製造し、本発明の光学フィルムを得ることもできる。
前記基材としては、適宜な材料を用いることができ限定されるものではない。例えば、ガラス転移点(Tg)の低い高分子フィルム、弾性率の高い高分子フィルム、材料との線膨張が同等もしくはそれより大きい基材、熱伝達率が高い基材、アスペクト比が高い基材、厚みの薄い基材などが挙げられる。前記基材に伸縮性を持たせるには、基材の固定なしに乾燥し、全方位に収縮性を持たせる方法、少なくとも一方向以上固定しそれ以外に収縮性をもたせる方法、金属ベルトの線膨張を利用する方法、フィルム搬送時にテンター固定で収縮制御する方法、事前に基材を膨張させて乾燥により収縮率を上げる方法、基材に乾燥工程前に延伸をかけて、硬化収縮させる方法、基材に乾燥工程中あるいは工程後に延伸をかける方法などを用いることができる。その方法は限定されるものではない。
前記基材の厚さは、使用目的等に応じて適宜決定することができるが、強度や薄層化などの点より、例えば5〜500μmであり、好ましくは10〜200μm、より好ましくは15〜150μmの範囲であるのがよい。
次に、本発明の光学フィルムは、フィルム単独または必要に応じて他の複屈折フィルム等と組合せた積層体として各種の光学用途、具体的には、各種液晶表示素子の光学補償部材として利用することができる。例えば、工業的に製造されているヨウ素系や染料系の偏光板(または偏光子)と本発明の光学フィルムとを組み合わせることにより、液晶表示素子の複屈折性を補償、調整する機能を有する積層偏光板とすることができる。
本発明の光学フィルムと任意に組み合わせて用いる偏光板は、特に限定されないが、その基本的な構成は、偏光子の片側または両側に、保護層(フィルム)を積層したものである。
前記偏光子(偏光フィルム)としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、好ましくはヨウ素または二色性染料を吸着配向させたPVA系フィルムである。また、前記偏光フィルムの厚みは、通常、1〜80μmの範囲であるが、これには限定されない。
前記保護層(フィルム)としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物、液晶ポリマー等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
また、前記保護層としては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムが挙げられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth={[(nx+ny)/2]-nz}・d
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、例えば、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、例えば、前述のような透明樹脂100重量部あたり2〜70重量部の範囲であり、好ましくは5〜50重量部の範囲である。
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
各構成物同士(光学フィルム、偏光子、透明保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、前述と同様の粘着剤や接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。
なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。特に限定されず、例えば、アクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマー等の接着剤等を使用した従来公知の方法が採用できる。
偏光板と光学フィルムとを積層して積層偏光板を形成する場合、両者を接着層や粘着層等の適宜な接着手段を用いて積層することができるが、これに限定されるものではない。例えば、まず偏光板の保護層として用いられるトリアセチルセルロース等のポリマーフィルムを透明高分子フィルム(b)として用い、この上に複屈折層(a)を形成した光学フィルムを製造する。その後、トリアセチルセルロース等の保護フィルムを偏光子の片面と接着し、偏光子の他方の面には前記光学フィルムを接着する。偏光子と前記光学フィルムの複屈折層(a)が向かいあうように配置すれば、光学フィルムの透明高分子フィルム(b)を偏光板の片側の保護フィルムとして使用できる。
図2は、本発明の光学フィルムと偏光子から構成される積層偏光板の構成の一例を示す図である。図2に示すように、この積層偏光板は、光学フィルム(1)と保護フィルム(3)の間に、偏光子(2)が配置される。
図3は、本発明の光学フィルムと偏光子と2つの保護フィルムから構成される積層偏光板の構成の一例を示す図である。図3に示すように、偏光子(2)の両面に保護フィルム(3)がそれぞれ配置されて偏光板(11)が構成され、一方の保護フィルム(3)上に、さらに本発明の光学フィルム(1)が配置されている。
積層に用いられる接着剤(粘着剤)としては、特に限定はなく、例えばアクリル系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系等の透明な感圧接着剤など、適宜な接着剤を用いることができる。光学フィルム等の光学特性の変化を防止する点より、硬化や乾燥の際に高温のプロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。また加熱や加湿条件下に剥離等を生じないものが好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムは、前述のように、各種位相差板、拡散制御フィルム、輝度向上フィルム等と組合せて用いることもできる。位相差板としては、ポリマーを一軸延伸したもの、二軸延伸したもの、Z軸配向処理したもの、液晶性高分子を塗布したもの等が挙げられる。拡散制御フィルムは、視野角を制御するための拡散、散乱、屈折を利用したフィルムや、解像度に関わるギラツキ、散乱光等を制御する拡散、散乱、屈折を利用したフィルム等を用いることができる。輝度向上フィルムは、コレステリック液晶の選択反射とλ/4板を用いた輝度向上フィルムや、偏光方向による異方性散乱を利用した散乱フィルム等を用いることができる。また、ワイヤーグリッド型偏光子と組合せて用いてもよい。
本発明による積層偏光板は、各種液晶表示装置の形成などに好ましく用いることができるが、その適用に際しては、必要に応じ接着層や粘着層を介して、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルムなどの他の光学層の1層または2層以上を積層することができる。
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
前記反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
また、前述のように偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
つぎに、本発明の光学フィルムや積層偏光板等に、さらに輝度向上フィルムが積層された光学フィルムや積層偏光板等の一例を説明する。
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
前記の2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
本発明の光学フィルムや積層偏光板等は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記光学フィルムや積層偏光板等の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記光学フィルムや積層偏光板等の表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記光学フィルムや積層偏光板等の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記光学フィルムや積層偏光板等の所定面に移着する方式等によって行うことができる。
光学フィルムや積層偏光板等に設けた粘(接)着層が表面に露出する場合には、その粘(接)着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着カバーすることが好ましい。このセパレータは、前記透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成できる。
なお、上記の光学フィルムや積層偏光板を構成する偏光子や透明保護フィルム、粘(接)着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式等の適宜な方式により紫外線吸収能を持たせたもの等であってもよい。
本発明の光学フィルムや積層偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができ、例えば、偏光板を液晶セルの片側又は両側に配置してなる反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。液晶表示装置を形成する液晶セルは任意であり、例えば薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック型やスーパーツイストネマチック型に代表される単純マトリクス駆動型のものなどの適宜なタイプの液晶セルを用いたものであってよい。
例えばSTN(Super Twisted Nematic)セル、TN(Twisted Nematic)セル、IPS(In-Plane Switching)セル、VA(Vertical Aligned)セル、OCB(Optically Aligned Birefringence)セル、HAN(Hybrid Aligned Nematic)セル、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)セル、強誘電・反強誘電セル及びこれらに規則正しい配向分割を行ったもの、ランダムな配向分割を行った物等の各種のセルが含まれる。本発明の複屈折フィルムは、VA(Vertical Aligned)セルの光学補償に非常に優れている。
図4は、本発明の光学フィルムと、液晶セルと、偏光子と、保護フィルムとから構成される液晶表示装置の一例を示す図である。図4に示すように、本発明の光学フィルム(1)は、液晶セル(21)と偏光子(2)の間に配置される。偏光子(2)の、光学フィルムと接する面とは異なる面上に、保護フィルム(3)が配置される。
なお、本発明の光学フィルムは、VA(Vertical Aligned)セルの光学補償に非常に優れているので、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして、最も好適に用いることができる。
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
また、液晶セルの両側に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものであってもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
また、本発明の光学フィルム(複屈折フィルム)や積層偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型表示装置にも使用できる。自発光型フラットディスプレイに使用する場合は、例えば、本発明の光学フィルムの複屈折層の面内位相差値Δndをλ/4にすることで、円偏光を得ることができるため、反射防止フィルターとして利用できる。
以下に、本発明の積層偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明の光学フィルムまたは積層偏光板を有する表示装置であり、このEL装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の積層偏光板や光学フィルムは、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の光学フィルム(偏光板等)が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の光学フィルムを配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
前記位相差板および光学フィルム(偏光板等)は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。